(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
FT−IR法(フーリエ変換型赤外分光法)で測定した表面水分分析において、水素結合OH基及び孤立OH基のピークは、温度を室温から900℃加熱後のピークの高さが室温時に比べいずれも50%以上であって、900℃加熱後も前記ピークを有することを特徴とするジルコニア粉末。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の実施例で1nm以上かつ20nm以下の正方晶ジルコニア透明分散液を作製した例があるが、なぜ高分散したかの理由は記述されておらず、複雑な製造方法・手順であり、ジルコニアのOH基については全く触れられていない。
【0007】
特許文献2は微粒子状含水金属酸化物、即ち結晶性が悪いことからジルコニアの屈折率を有していないと考えられる。また、反応法についてもゾルゲル反応でジルコニアを作製しており、反応法が複雑でコストもかかり、量産には適さないという問題があった。
【0008】
また、特許文献4内で特許文献1〜3の問題点が指摘されており、特許文献1等のジルコニア分散液の透明性が不十分と書かれている。
【0009】
特許文献3は分散性を向上させたジルコニア粉であるが、ジルコニア製造後に再解砕する複雑な工程のためコストがかかる、また電子材料用原料向けであり、実施例で示される分散状態では光学用としては適さない。
【0010】
特許文献4は処理剤を使用して給油量(実
効表面積)を改善した粉を得ている。製造法が複雑で処理剤を用いているので不純物による性能劣化やコストアップという問題が生じている。
【0011】
また、熱処理の温度が低いので結晶性が悪いことから屈折率が低いと推測される。
【0012】
一般にジルコニア(粒子)の有機溶媒中の分散には
図1、
図2に示すように分散剤としてシランカップリング剤が使われる。
【0013】
ジルコニア粒子表面には水分が存在している。この水分は大気中の水分がジルコニア表面に吸着した水分である。この吸着水分はジルコニア製造工程において焼成後、室温に冷却、大気中に露出することで吸着する。シランカップリング剤のアルコキシ基がジルコニア表面の水と反応することでOH基となる(
図1参照)。ジルコニア(ZrO
2)粒子表面には孤立OH基があり、最表面には水素結合OH基がある。シランカップリング剤のOH基とZrO
2表面の水素結合OH基が結合することでシランカップリング剤がジルコニア(粒子)をコートし(
図2参照)、有機溶媒中でジルコニア(粒子)が分散する。
【0014】
しかし、実際の分散ではボールミル、ビーズミルなどで溶媒中の粉にエネルギーを加えなければならず、加えられるエネルギーによりシランカップリング剤とジルコニアの結合が切れ分散性が阻害される可能性がある。つまり、結合がより強力になれば有機溶媒での分散性が良くなると考えられる。
【0015】
即ち、ジルコニア(粒子)表面に強力に結合しているOH基があれば分散性が良くなり、ジルコニアの粒子径が小さくなり、結果として屈折率が上がる。
【0016】
そこで本発明においては、高温でもジルコニア粒子表面に存在している強力なOH基があり、かつZrO
2純度の高いジルコニア粉末およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のジルコニア粉末は以下の構成により達成することができる。
【0018】
(1)FT−IR法(フーリエ変換型赤外分光法)で測定した表面水分分析において、水素結合OH基及び孤立OH基のピークは、温度を室温から900℃まで昇温速度(400℃±10℃)/hrで昇温し900℃に5分間保持した後のジルコニア表面のZrに結合している孤立OH基と、該孤立OH基と水素結合している水分子中の水素結合OH基の各ピークの高さが、室温時の孤立OH基と水素結合OH基の各ピークの高さに比べ何れも50%以上あることを特徴とするジルコニア粉末。
【0019】
(2)BET一点法で測定した比表面積が50〜120m
2/gの範囲であることを特徴とする上記(1)に記載のジルコニア粉末。
【0020】
(3)タッチパネルフィルム材用の高屈折率材であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のジルコニア粉末。
【0021】
(4)LED封止材用の高屈折率材であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載のジルコニア粉末。
【0022】
上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のジルコニア粉末の製造方法であって、
水酸化ジルコニウムなどのジルコニア前駆体を高温の水蒸気雰囲気下で(例えば、加熱温度:室温から300℃〜700℃、昇温時間:3hr、保持時間:0〜5hr以内で)加熱処理することを特徴とするジルコニア粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ジルコニア粉末の粒子表面に強固なOH基を持つことで、有機溶媒中に高分散化し得ることから、高い屈折率となりうるジルコニア粉末を提供することができる。
【0024】
また、本発明によれば、従来法より簡易に、コストが安く、大量生産可能で、品質が高いジルコニア粉末を作製することができる、上記特性を有するジルコニア粉末の製造方法を提供することができる。
【0025】
本発明のジルコニア粉末によれば、上記特性を有することにより、静電容量型タッチパネルのフィルムセンサ等に光学調整層としてコーティングされるナノ分散塗料に好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0028】
一般的に酸化物の粉は空気中の水分を吸着しているので水分を含んでいる。FT−IR法を用いてジルコニアの表面に結合している化学基を評価することができる。ジルコニアには孤立OH基と水素結合OH基と呼ぶOH基が存在している(
図2参照)。本発明では、高温下でOH基が存在しているかによってOH基の結合の強さを評価しており、本発明のジルコニアは900℃という高温下でもOH基が存在している。一般的に製造されているジルコニアより強力に結合しているOH基を有することから、上記した発明の効果を有効に奏することができるものである。即ち、ジルコニア粉末の粒子表面に強固なOH基を持つことで、有機溶媒中に高分散化し得ることができ、高い屈折率となりうるジルコニアを得ることができる点で優れている。
【0029】
(1)ジルコニアの組成
本発明の酸化ジルコニウム(ジルコニア;ZrO
2)は、不純物0.1wt%未満、好ましくは0.01wt%未満と高純度な点で優れている。純粋なZrO
2は高い屈折率を持つ材料である。即ち純度の高いジルコニアほどジルコニア本来の高屈折率を利用できる。また、不純物元素によって発色する事もあり透明性を求める光学材料では純度の高いジルコニアが好ましい。本発明のジルコニア純度は不純物測定による差数法で求められ、不純物としては、例えばSiO
2、TiO
2、Fe
2O
3、Na
2O,CaO等が挙げられる。なおZrO
2と結晶構造や化学的振る舞いが酷似しているHfO
2は不純物には含まない。不純物はジルコニアをフッ化水素、硫酸で加熱溶解する酸溶解法や、ジルコニアに炭酸ナトリウムを加え加熱融解するアルカリ融解法などで溶液にし、ICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法
)にて測定できる。このように不純物の少ない本発明のジルコニアは単斜晶の結晶構造を有する。
【0030】
(2)「水素結合OH基」と「孤立OH基」の定義
孤立OH基はジルコニア表面のZrと結合しているOH基である。水素結合OH基とは孤立OH基のOと水素結合している水分子中のOH基のことを指す。
【0031】
(3)FT−IR法での表面水分分析
本発明のジルコニア粉末は、FT−IR法(フーリエ変換型赤外分光法)で測定した表面水分分析において、水素結合OH基及び孤立OH基のピークは、温度を室温(25±5℃の範囲)から900℃加熱後のピークの高さが室温時に比べいずれも50%以上であり、好ましくは70%以上である。かかる構成要件を満足することにより、ZrO
2純度の高い透明分散液の作製が容易になるという点で優れている。さらに有機溶媒中に高分散化しうるジルコニア(酸化ジルコニウム)粉末を得ることができる。これにより、スマートフォンやタブレットに広く使用される静電容量型タッチパネルのフィルムセンサに光学調整層としてコーティングされるナノ分散塗料に好適に利用することができる点で優れている。一方、900℃加熱後の水素結合OH基及び孤立OH基のピークの高さが室温時の水素結合OH基及び孤立OH基のピークの高さに比べ50%未満の場合には、分散液製造時に分散化しにくいため製造コスト等の点で好ましくない。
【0032】
(3a)FT−IR法での表面水分分析の測定
FT−IR測定は株式会社島津製作所製;フーリエ変換赤外分光光度計IRTracer−100を使用して測定を行った。ジルコニア前駆体を焼成して作製したジルコニア粉を加熱真空拡散反射装置(株式会社エス・ティ・ジャパン製;Heat Chamber Type−1000℃)のサンプル容器内に入れる。その後、真空ポンプで10
−3Pa以下まで真空にした後、室温でのFT−IR測定を行う。測定完了後真空状態を維持しつつ、昇温速度(400℃±10℃)/hrで900℃まで昇温し、900℃で5分間温度保持後、900℃でのFT−IR測定を行う。なお、FT−IR測定は、上記した分析機器や装置に何ら制限されるものではなく、同様のFT−IR法での表面水分分析の測定を行い得る分析機器や装置であれば使用可能である。
【0033】
900℃加熱後の水素結合OH基及び孤立OH基のピーク高さが室温時の水素結合OH基及び孤立OH基のピークの高さに比べいずれも50%未満であると、分散時に生じる熱エネルギーや機械的エネルギーによってジルコニアから孤立OH基や水素結合OH基が脱離する。孤立OH基や水素結合OH基の脱離によって透明分散液を製造時にシランカップリング剤とジルコニアが結合しないためにシランカップリング剤が有効に働かず、透明分散液の製造が困難になる。ピーク高さ比の評価方法は室温(25±5℃の範囲)と900℃でのFT−IRスペクトルを測定し、孤立OH基は波数が3700cm
−1付近の吸光度のピーク高さ比で評価している。一方、水素結合OH基は900℃では波数が3600cm
−1付近の吸光度のピーク高さを、室温ではジルコニア表面の吸着水分によりピークが隠れてしまうため900℃のピーク高さ位置と同じ3600cm
−1付近の波数における吸光度の値をピーク高さとしてピーク高さ比を求めている。各ピーク高さは、各ピークの最高点の吸光度の値とする(
図3〜
図5参照)。
【0034】
(4)BET一点法で測定した比表面積SSA(specific surface area)
本発明のジルコニア粉末は、BET一点法で測定した比表面積が50〜130m
2/gの範囲が好ましく、50〜110m
2/gの範囲がより好ましい。上記した比表面積が50m
2/g以上であれば、高屈折率を有する酸化ジルコニウムの密度を上げることができ、光学調整層を高屈折率化することができ、フィルムセンサの主材料であるITOを不可視化することができる。一方、上記した比表面積が130m
2/g以下であれば、ジルコニア粉末(粒子)の凝集を抑制することができ、高分散性のジルコニア粉末(粒子)を提供することができ
る。上記した観点から、ジルコニア粉末(粒子)の上記した比表面積は、好ましくは50〜130m
2/g、より好ましくは50〜110m
2/gの範囲である。
【0035】
(4a)BET一点法での比表面積の測定
ジルコニア粉末の比表面積は、気体吸着法(BET一点法)で測定している。サンプル自身の細孔や表面に付着している水分等を除去するために真空脱気加熱処理をおこなう。その後、液体窒素中に浸し、窒素ガスを供給することにより粒子表面に窒素分子が物理吸着することを基にその時の圧力と吸着量を測ることで比表面積を得る。使用機器はガス吸着式細孔分布測定器NOVA2000である。(測定範囲;0.01m
2/g〜、吸着ガス;N
2、Ar、CO
2、前処理;真空脱気加熱(〜250℃))。なお、気体吸着法(BET一点法)の測定は、上記した機器に何ら制限されるものではなく、同様の気体吸着法(BET一点法)の測定を行い得る機器であれば使用可能である。
【0036】
(5)ジルコニアの産業上利用性
本発明のジルコニアは、有機溶媒中に高分散化し得ることで、高い屈折率となりうることから、静電容量型タッチパネルのフィルムセンサ等に光学調整層としてコーティングされるナノ分散塗料に好適に利用することができる。こうした有機系の分散では分散剤としてシランカップリング剤を使用することができる。
【0037】
シランカップリング剤は
図1、
図2に示すように水との反応でアルコキシ基がOH基に変化し、シランカップリング剤のOH基とジルコニア(粒子)表面のOH基が水素結合で結合し、有機溶媒中で分散剤として作用することが知られている。
図1は、シランカップリング剤のアルコキシ基が水と反応し、シランカップリング剤にOH基ができるときの模式図である。
図2は、
図1で得られたランカップリング剤のOH基がジルコニア粒子表面の水素結合OH基と水素結合することにより有機溶媒中で分散剤として機能する様子を表した模式図である。
【0038】
通常のジルコニアでは表面OH基は加熱などのエネルギー印加により消失する。
【0039】
シランカップリング剤がジルコニアに対し分散剤として作用しても、分散処理時に発生する熱や機械的エネルギーによりジルコニア表面のOH基が消失、シランカップリング剤がジルコニアに作用しない可能性がある。
【0040】
一方、本発明のジルコニア粉末は、その(粒子)表面に熱などのエネルギーに強い強力なOH基があることでシランカップリング剤とジルコニア粉末が強力に結合し、有機溶媒での分散性が非常に良くなる。分散性が良くなることでジルコニア粉末の二次粒子径が小さくなり、結果として屈折率が上がる(高屈折率となる)。即ち、孤立OH基や水素結合OH基が熱などのエネルギー印加に強いとボールミルなどの分散時により生じるエネルギーでもシランカップリング剤はジルコニア粉末(粒子)と結合したままで分散剤が表面から離れにくくなることで、シランカップリング剤が効率良く分散に有効に作用することができる(
図2参照)。
【0041】
このように本発明の(製造方法で作製した)ジルコニアは900℃で加熱しても赤外光の波長の波数3700cm
−1に確認される吸着水の吸光度に対し50%以上のピーク強度を持つ強い孤立OH基、水素結合OH基を粒子表面に付与することにより、分散剤とこのOH基が良く反応することで簡単に分散させることができる。
【0042】
(II)ジルコニアの製造方法
上記した本発明のジルコニアの製造方法は、湿式反応で得られるジルコニア前駆体(水酸化ジルコニウム、シュウ酸ジルコニウムなど)を高温の過熱水蒸気(過熱水蒸気:沸点より高い温度の乾いた水蒸気と定義される。水を沸騰させ発生した飽和蒸気を、さらに加熱した高温の蒸気などとも定義されている)雰囲気下で加熱処理することを特徴とするものである。かかる構成を有することにより、上記した発明の効果を有効に奏することができる。即ち、簡易にコストが安くて、大量生産可能で、品質が高い、上記した特性を有するジルコニア粉末を作製することができる点で優れている。
【0043】
本発明のジルコニアの製造方法は、既存の湿式反応で得られる不純物を除去した水酸化物等のジルコニア前駆体を高温の過熱水蒸気下で加熱処理する。加熱処理条件のうち、高温の過熱蒸気温度(加熱温度)は、好ましくは250℃以上、より好ましくは300〜800℃、さらに好ましくは300〜700℃、特に好ましくは400〜700℃の範囲とするのが望ましい。高温の過熱蒸気温度(加熱温度)が250℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上であれば、ZrO
2の結晶性の点で好ましい。800℃以下、好ましくは700℃以下であれは、ZrO
2の一次粒子径が大きくなるのを効果的に抑制し、透明分散液の作製がより簡易に、コストが安く、大量生産可能で、品質が高いジルコニア粉末を作製することができる点で好ましい。また加熱処理条件のうち、高温の過熱水蒸気下での加熱処理の時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは1〜5時間、さらに好ましくは1〜3時間の範囲とするのが望ましい。加熱処理の時間が1時間以上であれば、ZrO
2の結晶性の点で好ましい。加熱処理の時間が1時間以上であれば、ZrO
2の一次粒子径が小さくできるため、透明分散液の作製がより簡易に、コストが安く行える。また、過熱水蒸気下での加熱処理は、昇温時間を2〜4時間、保持時間を0〜5時間の範囲で行ってもよい。かかる過熱水蒸気下での加熱処理も、ZrO
2の結晶性の点で好ましい。昇温時間を2〜4時間で、保持時間が0〜5時間の範囲であれば、ZrO
2の一次粒子径が小さくできるため、透明分散液の作製がより簡易に、コストが安く行える。高温の過熱水蒸気下での上記した前駆体の加熱は、容器(加熱容器ないし加熱装置)中でもよく、加熱装置はバッチ式電気炉や連続炉等の既存の装置を適宜用いることができる。
【0044】
加熱処理後は酸化ジルコニウムを必要に応じて粉砕、解砕し、粒度の調整を行う。粉砕は、通常工業的に使用されるスタンプミル、ハンマーミル、ローラーミル、ジェットミル、媒体ミル、振動ミル、及びボールミル等を使用することができる。調整後の粒度、即ち一次粒子の凝集体として測定される平均粒子径で0.1〜2μmに調整される。これら粒子径はヘキサメタリン酸Na水溶液中で超音波分散したスラリーをレーザー回折散乱法等で測定できる。但し、本発明では、これらの粉砕方法に何ら制限されるものではなく、従来公知の各種の粉砕方法を適宜利用することができることは言うまでもない。
【0045】
本方法により、900℃昇温、昇温速度(400℃±10℃)/hr、保持時間5分後のジルコニア表面のZrに結合している孤立OH基と、該孤立OH基と水素結合している水分子中の水素結合OH基の各ピークの高さが室温時に比べ何れも50%以上あることを特徴とするジルコニアが製造できることが確認できた。そのメカニズムの詳細は解明されていないが、以下のような現象が起こっていると考えている。即ち、ジルコニア前駆体が水酸化物の場合、加熱により酸化物へと変化する温度は400℃付近であり、この際に十分なH
2O蒸気が存在すると、反応性の高い酸化物新生面にその後の加熱においても表面から脱離しない強く結合したOH基が形成され、十分なH
2O蒸気が存在しない場合、酸化物新生面は空気中の窒素、酸素などの作用により表面が安定化し、その後に吸着するOH基は上記の表面から脱離しない強く結合したOH基とは異なり弱い結合しか形成できないため、その後の温度上昇による熱振動で脱離が進んでいるものと推測している。
【0046】
なお、上記した既存の湿式反応で得られる不純物を除去した水酸化物等のジルコニア前駆体は、例えば、以下の先行特許資料に記載の方法により作製することができる。但し、本発明では、これらの製造方法に何ら制限されるものではなく、従来公知の各種の製造方法を適宜利用することができることは言うまでもない。
【0047】
先行特許資料;特開2007−15898号公報参照
(III)ジルコニアの用途
本発明のジルコニアの用途の1つはタッチパネルなどに使用されるフィラーに使われる。即ち、本発明のジルコニアは、タッチパネルフィルム材用の高屈折率材となり得るものである。本発明のジルコニアは、有機溶媒中で分散処理されて透明な分散液にさせた後、分散液を樹脂などと混合し塗料(ナノ分散塗料等)として利用される。フィルムセンサなどで光学調整層として当該塗料を塗る(塗布、形成する)ことで、フィルムセンサの主原料である透明電極を不可視化する機能(透明性を高める機能)を有効かつ効果的に発揮し得る点で優れている。
【0048】
また本発明のジルコニアの用途の1つは、LED(light emitting diode:発光ダイオード)の封止材として使用されている。即ち、本発明のジルコニアは、LED封止材用の高屈折率材となり得るものである。本発明のジルコニアを分散処理後有機溶媒中で分散処理されて透明な分散液にさせた後、LEDの封止材用樹脂に配合することによって、LEDの封止材樹脂の屈折率を高めて、LEDからの発光をより効率的に取り出すことができ、LEDから発光する光の輝度を格段に向上させることができる点で優れている。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されることはない。
【0050】
「孤立OH基、水素結合OH基の評価」
実施例1、2及び比較例1でそれぞれ得られたジルコニア(ZrO
2)について、下記の装置および方法により評価を行った。日本工業規格:JIS K 0117「赤外分光分析方法通則」に準拠し、FT−IR装置(株式会社島津製作所社製 IRTracer−100)、加熱真空拡散反射(株式会社エス・ティ・ジャパン製 Heat Chamber Type−900℃)を用いて吸光スペクトルを測定した。
【0051】
実施例1
先行特許資料 特開2007−15898号公報の実施例1にあるような既存にある湿式反応でジルコニア前駆体である水酸化ジルコニウムを作製後、加熱水蒸気炉(新熱工業株式会社製)を用いて400℃の高温の過熱水蒸気雰囲気下で3時間、加熱処理し、粉砕により粒径調整することにより、BET一点法で測定した比表面積(SSA)が110m
2/gのジルコニア(ZrO
2)粉末を得た。また、得られたジルコニア(ZrO
2)粉末の平均粒子径(一次粒子の凝集体として測定される平均粒子径)は1μmであった。
【0052】
FT−IR測定は株式会社島津製作所製;フーリエ変換赤外分光光度計IRTracer−100を使用して測定を行った。加熱処理(焼成)して作製したジルコニア粉を加熱真空拡散反射装置(株式会社エス・ティ・ジャパン製;Heat Chamber Type−1000℃)のサンプル容器内に入れた。その後、真空ポンプで10
−3Pa以下まで真空にした後、室温でのFT−IR測定を行った。測定完了後真空状態を維持しつつ、昇温速度400℃/hrで900℃まで昇温し、900℃で5分間温度保持後、900℃でのFT−IR測定を行った。
【0053】
得られた各温度の吸光スペクトルを
図3に示す。
図3より、3600cm
−1、3700cm
−1付近にあるOH基ピークである水素結合OH基のピークと孤立OH基のピークは、室温(25℃)から900℃に加熱してもいずれのピーク高さも、室温時の水素結合OH基と孤立OH基の各ピークの高さに比べ、いずれも80%近く残っていることが確認できた。
【0054】
水素結合OH基及び孤立OH基のピーク高さ比が50%未満であると、分散時に生じる熱エネルギーや機械的エネルギーによってジルコニアから孤立OH基や水素結合OH基が脱離する。孤立OH基や水素結合OH基の脱離によって透明分散液を製造時にシランカップリング剤とジルコニアが結合しないためにシランカップリング剤が有効に働かず、透明分散液の製造が困難になる。
【0055】
実施例2
先行特許資料 特開2007−15898号公報の実施例1にあるような既存にある湿式反応でジルコニア前駆体である水酸化ジルコニウムを作製後、加熱水蒸気炉(新熱工業株式会社製)を用いて500℃の高温の過熱水蒸気雰囲気下で3時間、加熱処理し、粉砕により粒径調整することにより、BET一点法で測定した比表面積(SSA)が60m
2/gのジルコニア(ZrO
2)を得た。また、得られたジルコニア(ZrO
2)粉末の平均粒子径(一次粒子の凝集体として測定される平均粒子径)は1μmであった。
【0056】
FT−IR測定は株式会社島津製作所製;フーリエ変換赤外分光光度計IRTracer−100を使用して測定を行った。加熱処理(焼成)して作製したジルコニア粉を加熱真空拡散反射装置(株式会社エス・ティ・ジャパン製;Heat Chamber Type−1000℃)のサンプル容器内に入れた。その後、真空ポンプで10
−3Pa以下まで真空にした後、室温でのFT−IR測定を行った。測定完了後真空状態を維持しつつ、昇温速度400℃/hrで900℃まで昇温し、900℃で5分間温度保持後、900℃でのFT−IR測定を行った。
【0057】
得られた各温度の吸光スペクトルを
図4に示す。
図4より、3600cm
−1、3700cm
−1付近にあるOH基ピークである水素結合OH基のピークと孤立OH基のピークは、室温(25℃)から900℃に加熱してもいずれのピーク高さも、室温時の水素結合OH基と孤立OH基の各ピークの高さに比べ、いずれも70%近く残っていることが確認できた。
【0058】
比較例1
先行特許資料 特開2007−15898号公報の実施例1にあるような既存にある湿式反応でジルコニア前駆体である水酸化ジルコニウムを作製後、乾燥器を使用して120℃で20時間乾燥後、電気炉(旭株式会社製 ハイテンプオーブンHP−60)を用いて大気雰囲気下、400℃で3時間焼成し、粉砕により粒径調整することにより、BET一点法で測定した比表面積(SSA)が110m
2/gのジルコニア(ZrO
2)を得た。また、得られたジルコニア(ZrO
2)粉末の平均粒子径(一次粒子の凝集体として測定される平均粒子径)は1μmであった。
【0059】
FT−IR測定は株式会社島津製作所製;フーリエ変換赤外分光光度計IRTracer−100を使用して測定を行った。焼成して作製したジルコニア粉を加熱真空拡散反射装置(株式会社エス・ティ・ジャパン製;Heat Chamber Type−1000℃)のサンプル容器内に入れた。その後、真空ポンプで10
−3Pa以下まで真空にした後、室温でのFT−IR測定を行った。測定完了後真空状態を維持しつつ、昇温速度400℃/hrで900℃まで昇温し、900℃で5分間温度保持後、900℃でのFT−IR測定を行った。
【0060】
得られた各温度の吸光スペクトルを
図5に示す。
図5より、3600cm
−1、3700cm
−1付近にあるOH基ピークである水素結合OH基のピークと孤立OH基のピークは、室温(25℃)から900℃に加熱するといずれのピークも消失したことが確認できた(いずれのピーク高さも、室温時の水素結合OH基と孤立OH基の各ピークの高さに比べ、いずれも数%で残っていないことが確認できた)。
【0061】
【表1】
【0062】
注)表1中の「900℃/25℃ OH基ピーク比」では、FT−IR法で測定した表面水分分析において、水素結合OH基及び孤立OH基のピークは、温度を室温から900℃加熱後のピークの高さが室温時に比べ50%以上ある場合を「○」とし、50%未満の場合を「×」としている。