(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0011】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0012】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0013】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0014】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0015】
(実施の形態)
本実施の形態について、MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型の書き換え可能な不揮発性メモリを有する半導体装置を例に説明する。
【0016】
不揮発性メモリとは、書き込み動作および消去動作とも電気的に書き換え可能な不揮発性メモリの一種であり、電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリとも呼ばれる。本実施の形態に係る不揮発性メモリは、MONOS型トランジスタから構成される。
【0017】
MONOS型トランジスタの書き込み動作および消去動作には、例えば、ファウラーノルドハイム(FN)型トンネル現象が利用される。なお、ホットエレクトロンやホットホールを用いて書き込み動作や消去動作させることも可能である。
【0018】
<半導体装置の構造>
以下、実施の形態の半導体装置CHP1の構造を、図面を参照して説明する。
図1および
図2は、実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
図2は、実施の形態の半導体装置の要部断面図のうち、ゲート絶縁膜GIMの周辺を拡大して示す拡大断面図である。なお、
図2では、理解を簡単にするため、層間絶縁膜IL1などMONOS型トランジスタMC上の部分、および、シリサイド膜CSの図示を省略している。
【0019】
図1に示すように、実施の形態の半導体装置CHP1は、メモリ形成領域MRを有し、図示しないが、メモリ形成領域MRには不揮発性メモリセルがアレイ状に形成されている。
【0020】
なお、図示はしないが、半導体装置CHP1は、主回路形成領域も有する。前記主回路形成領域には、高速動作を可能とするために大きな電流駆動力を必要とする低耐圧MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)が形成されている。
【0021】
このような低耐圧MISFETが形成される領域としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の形成領域などが考えられる。低耐圧MISFETは、例えば、1.5V程度の電源電圧で動作する。
【0022】
また、図示しないが、主回路形成領域には、高耐圧MISFETが形成されている。このような高耐圧MISFETが形成される領域としては、例えば、アナログ回路の形成領域やI/O回路が形成されている領域などが考えられる。高耐圧MISFETは、例えば、5V程度の電源電圧で動作する。
【0023】
図1に示すように、メモリ形成領域MRには、
図1に示す不揮発性メモリのメモリセルが形成されており、このメモリセルはMONOS型トランジスタMCから構成されている。
【0024】
図1に示すように、半導体装置CHP1は、半導体基板SBを有し、半導体基板SBの主面としての上面PSには、素子を分離する素子分離領域STIが形成されている。また、素子分離領域STIによって分離された活性領域が、メモリ形成領域MRとなっている。
【0025】
すなわち、メモリ形成領域MRは、半導体基板SBの上面PSの一部の領域である。メモリ形成領域MRにおいて、半導体基板SBの上面PS側には、p型ウェルPWMが形成されている。また、p型ウェルPWMの上層部、すなわちチャネル領域を形成する部分には、p型半導体領域VMGが形成されている。
【0026】
なお、「p型」とは、主要な電荷担体が正孔(ホール)である導電型を意味する。
【0027】
次に、
図1に示すMONOS型トランジスタMCについて説明する。MONOS型トランジスタMCは、p型ウェルPWMと、p型半導体領域VMGと、ゲート絶縁膜GIMと、ゲート電極CGと、サイドウォールスペーサSWと、n
-型半導体領域LDMと、n
+型半導体領域NDMとを有している。
【0028】
すなわち、不揮発性メモリは、ゲート電極CGおよびゲート絶縁膜GIMにより構成されている。不揮発性メモリは、半導体基板SBとゲート電極CGとの間に電圧が印加され、半導体基板SBのp型ウェルPWM、すなわち、p型半導体領域VMGから、ゲート絶縁膜GIMに電子が注入されることにより、データが書き込まれる。
【0029】
また、不揮発性メモリは、半導体基板SBとゲート電極CGとの間に電圧が印加され、半導体基板SBのp型ウェルPWM、すなわち、p型半導体領域VMGから、ゲート絶縁膜GIMにホールが注入されることにより、データが消去される。
【0030】
なお、「n
-型」および「n
+型」とは、主要な電荷担体が電子であり、p型とは反対の導電型を意味する。
【0031】
図1に示すように、半導体基板SBの上面PS側には、p型ウェルPWMが形成され、p型ウェルPWM上には、絶縁膜部IFPからなるゲート絶縁膜GIMが形成されている。すなわち、ゲート絶縁膜GIMは、半導体基板SBの上面PSに形成されている。そして、ゲート絶縁膜GIM上には、導電膜CF1からなるゲート電極CGが形成されている。ゲート電極CG、すなわち導電膜CF1は、好ましくはポリシリコン膜からなる。
【0032】
ゲート電極CGの両側面には、LDD(Lightly Doped Drain)構造を形成するため、例えば絶縁膜からなる側壁部としてのサイドウォールスペーサSWが形成されている。サイドウォールスペーサSW下に位置する部分のp型ウェルPWMの上層部には、n
-型半導体領域LDMが形成されており、平面視において、n
-型半導体領域LDMの外側に位置する部分のp型ウェルPWMの上層部には、n
+型半導体領域NDMが形成されている。
【0033】
n
+型半導体領域NDMは、n
-型半導体領域LDMと接触しており、n
+型半導体領域NDMにおける不純物濃度は、n
-型半導体領域LDMにおける不純物濃度よりも高い。また、ゲート絶縁膜GIMの直下に位置する部分のp型ウェルPWMの上層部には、チャネル領域が形成されている。ゲート電極CGの上面、および、n
+型半導体領域NDMの上面には、低抵抗化を図るため、シリサイド膜CSが形成されている。
【0034】
サイドウォールスペーサSWは、MONOS型トランジスタMCの半導体領域であるソース領域およびドレイン領域をLDD構造にするために形成されたものである。すなわち、MONOS型トランジスタMCのソース領域およびドレイン領域の各々は、n
-型半導体領域LDMおよびn
+型半導体領域NDMより形成されている。
【0035】
この際、ゲート電極CG下の部分のソース領域、および、ゲート電極CGの端部下の部分のドレイン領域をn
-型半導体領域LDMとすることで、ゲート電極CGの端部下における電界集中を抑制することができる。
【0036】
図2に示すように、ゲート絶縁膜GIMは、絶縁膜部IFPからなる。絶縁膜部IFPは、半導体基板SBの上面PSに形成された絶縁膜IF1と、絶縁膜IF1上に形成された電荷蓄積部ECPと、電荷蓄積部ECP上に形成された絶縁膜IF2とにより構成されている。
【0037】
さらに、電荷蓄積部ECPは、電荷蓄積膜EC1と、電荷蓄積膜EC1上に形成された絶縁膜IFEと、絶縁膜IFE上に形成された電荷蓄積膜EC2とからなる。
【0038】
絶縁膜IF1は、ボトム酸化膜としての絶縁膜である一方、絶縁膜IF2は、トップ酸化膜としての絶縁膜である。また、電荷蓄積膜EC1は、電荷を蓄積する第1電荷蓄積部であり、電荷蓄積膜EC2は、電荷を蓄積する第2電荷蓄積部である。
【0039】
また、
図1および
図2に示すように、電荷蓄積膜EC1は、下層絶縁膜としての電荷蓄積膜EC11と、上層絶縁膜としての電荷蓄積膜EC12とを有する2層構造である。
【0040】
絶縁膜IF1は、シリコンおよび酸素を含有する絶縁膜であり、好ましくは酸化シリコンからなる。電荷蓄積膜EC1は、シリコンおよび窒素を含有する絶縁膜であり、好ましくは窒化シリコンからなる。絶縁膜IFEは、シリコンおよび酸素を含有する絶縁膜であり、好ましくは酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる。電荷蓄積膜EC2は、シリコンおよび窒素を含有する絶縁膜であり、好ましくは窒化シリコンからなる。絶縁膜IF2は、シリコンおよび酸素を含有する絶縁膜であり、好ましくは酸化シリコンからなる。
【0041】
また、電荷蓄積膜EC12は、電荷蓄積膜EC11よりも膜密度(原子密度)の低い窒化シリコン膜、または、電荷蓄積膜EC11よりも酸素密度の高い窒化シリコン膜である。なお、膜密度が低い窒化シリコン膜は、膜中に酸素が取り込まれやすく、結果として酸素密度の高い窒化シリコン膜となる。
【0042】
以上より、後述の
図30に示すように、絶縁膜IF1、絶縁膜IFEおよび絶縁膜IF2の各々のバンドギャップは、電荷蓄積膜EC11、電荷蓄積膜EC12および電荷蓄積膜EC2のいずれのバンドギャップよりも大きい。そして、電荷蓄積膜EC11、電荷蓄積膜EC12および電荷蓄積膜EC2のいずれのバンドギャップ中にも不純物準位などの電子トラップ位置が存在している。その結果、電荷蓄積膜EC11、電荷蓄積膜EC12および電荷蓄積膜EC2に電荷を蓄積することができる。
【0043】
なお、本実施の形態に係る電荷蓄積膜EC12の膜厚THE12は、電荷蓄積膜EC11の膜厚THE11に比して、できるだけ小さいことが好ましい。詳細は後述するが、窒化シリコン膜の膜密度が高いと、不純物や空隙に由来するエネルギー的に浅い電子トラップ位置の数が少ない。そのため、絶縁膜IF1を通過して、半導体基板SBへ漏れるトンネル確率が少なくなり、データ保持特性に優れる。従って、電荷保持部ECPの中で、膜密度の高い電荷蓄積膜EC11の割合を電荷蓄積膜EC12よりも大きくすることで、データ保持特性を向上させることができる。
【0044】
また、電荷蓄積膜EC2の膜厚THE2は、電荷蓄積膜EC1の膜厚THE1よりも大きくすることが好ましい。これにより、絶縁膜IFEを電荷蓄積部ECPの厚さ方向の中央位置よりも半導体基板SB側に配置することができる。
【0045】
絶縁膜IFEを設ける主目的は、データ保持特性を向上させることである。一方、データ保持特性とトレードオフの関係にあるのが、電荷の注入効率である。本実施の形態におけるメモリセルは、電荷蓄積部ECPの中で電荷蓄積膜EC1の膜厚THE1を電荷蓄積膜EC2の膜厚THE2よりも相対的に小さくすることにより、絶縁膜IFEを設けた場合においても、基板側から電荷蓄積膜EC2に電荷を注入する際の効率を向上させることができる。
【0046】
また、絶縁膜IFEの膜厚THIEは、電荷蓄積膜EC1の膜厚THE1よりも小さくし、電荷蓄積部ECPの中で絶縁膜IFEの膜厚THIEを相対的に小さくすることが好適である。これにより、半導体基板SBから、電荷蓄積膜EC2に、電子またはホールを、絶縁膜IF1、電荷蓄積膜EC1および絶縁膜IFEをトンネルさせて容易に注入することができる。
【0047】
なお、絶縁膜IFEの膜厚THIEは、絶縁膜IF1の膜厚TH1よりも小さい。これにより、ボトム酸化膜としての絶縁膜IF1の厚さを確保することができる。また、ボトム酸化膜としての絶縁膜IF1の膜厚TH1は、半導体基板SBから電荷蓄積膜EC1へのホールのダイレクト・トンネル消去動作を可能にするため、2nm程度が好ましい。
【0048】
以上の観点から、絶縁膜IFEの膜厚THIEは0.1〜0.5nm、電荷蓄積膜EC1の膜厚THE1は1.5〜2.0nm、電荷蓄積膜EC2の膜厚THE2は6nm程度が好ましい。また、電荷蓄積膜EC1を構成する電荷蓄積膜EC11の膜厚THE11は1.0〜2.0nm、電荷蓄積膜EC12の膜厚THE12は0.1〜0.5nmであることが好ましい。
【0049】
詳細は後述するが、絶縁膜IFEを十分に形成するため、電荷蓄積膜EC11の膜厚THE11を1.0nm、電荷蓄積膜EC12の膜厚THE12を0.5nm、絶縁膜IFEの膜厚THIEを0.5nmとするのがより好適である。
【0050】
また、
図1に示すように、半導体基板SB上には、MONOS型トランジスタMCを覆うように、絶縁膜SNFが形成されている。絶縁膜SNFは、好ましくは窒化シリコンなどからなる。
【0051】
絶縁膜SNF上には、層間絶縁膜IL1が形成されている。層間絶縁膜IL1は、好ましくは、酸化シリコンからなる絶縁膜、または、窒化シリコンからなる絶縁膜と酸化シリコンからなる絶縁膜との積層膜などからなる。層間絶縁膜IL1の上面は平坦化されている。
【0052】
層間絶縁膜IL1にはコンタクトホールCNTが形成され、そのコンタクトホールCNT内に、導体膜からなるプラグPGが埋め込まれている。プラグPGは、コンタクトホールCNTの底部、および、側壁上すなわち側面上に形成された薄いバリア導体膜と、このバリア導体膜上にコンタクトホールCNTを埋め込むように形成された主導体膜と、により形成されている。
【0053】
図1では、図面の簡略化のために、プラグPGを構成するバリア導体膜および主導体膜を一体化して示す。なお、プラグPGを構成するバリア導体膜は、好ましくは、チタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、またはそれらの積層膜とすることができ、プラグPGを構成する主導体膜は、好ましくはタングステン(W)膜とすることができる。
【0054】
プラグPGは、n
+型半導体領域NDM上に形成されており、図示は省略するが、ゲート電極CG上にも形成されている。そして、プラグPGは、n
+型半導体領域NDMと、電気的に接続されており、図示は省略するが、ゲート電極CGとも、電気的に接続されている。
【0055】
プラグPGが埋め込まれた層間絶縁膜IL1上には、層間絶縁膜IL2が形成され、層間絶縁膜IL2に形成された配線溝には、好ましくは銅(Cu)を主導電材料とする埋込配線としてのダマシン配線として、第1層目の配線ML1が形成されている。
【0056】
また、第1層目の配線上には、ダマシン配線として、上層の配線も形成されているが、ここではその図示および説明は省略する。また、第1層目の配線およびそれよりも上層の配線は、ダマシン配線に限定されず、配線用の導電膜をパターニングして形成することもでき、好ましくはタングステン(W)配線またはアルミニウム(Al)配線などとすることもできる。
【0057】
<不揮発性メモリの動作>
本実施の形態における半導体装置は上記のように構成されており、以下に、この半導体装置に含まれるメモリセル(不揮発性メモリセル)の動作について説明する。
【0058】
図3は、不揮発性メモリのメモリアレイ構造と動作条件(1セル/1トランジスタ)の一例を示す説明図である。
図3において、セルトランジスタCT1〜CT8のそれぞれは、
図1に示すMONOS型トランジスタMCから構成されるメモリセルに対応している。セルトランジスタCT1〜CT4の各々のゲート電極は、ワード線WL1に接続され、セルトランジスタCT5〜CT8の各々のゲート電極は、ワード線WL2に接続されている。
【0059】
セルトランジスタCT1およびセルトランジスタCT5の各々のソース領域は、ソース線SL1に接続され、セルトランジスタCT2およびセルトランジスタCT6の各々のソース領域は、ソース線SL2に接続されている。また、セルトランジスタCT3およびセルトランジスタCT7の各々のソース領域は、ソース線SL3に接続され、セルトランジスタCT4およびセルトランジスタCT8の各々のソース領域は、ソース線SL4に接続されている。
【0060】
セルトランジスタCT1およびセルトランジスタCT5の各々のドレイン領域は、データ線DL1に接続され、セルトランジスタCT2およびセルトランジスタCT6の各々のドレイン領域は、データ線DL2に接続されている。また、セルトランジスタCT3およびセルトランジスタCT7の各々のドレイン領域は、データ線DL3に接続され、セルトランジスタCT4およびセルトランジスタCT8の各々のドレイン領域は、データ線DL4に接続されている。
【0061】
セルトランジスタCT1、セルトランジスタCT2、セルトランジスタCT5およびセルトランジスタCT6の各々のバックゲートは、ウェルWE1に接続され、セルトランジスタCT3、セルトランジスタCT4、セルトランジスタCT7およびセルトランジスタCT8の各々のバックゲートは、ウェルWE2に接続されている。
【0062】
図3では、説明を簡単にするため、メモリセルが2行4列に配列されている場合を示しているが、これに限定されるわけでなく、実際は、さらに多くのメモリセルがマトリクス状に配置され、メモリアレイを構成している。また、同一ウェルおよび同一ワード線上のメモリセル配列は、
図3において、例えばセルトランジスタCT1およびセルトランジスタCT2の2列構成であるが、8ビット(1バイト)構成の場合、同一ウェル上に8列のセルトランジスタが形成されている。この場合、メモリセルの消去および書き込みは、1バイト単位で行われる。
【0063】
次に、
図3を用いて、1セル1トランジスタ型のメモリセルの消去、書き込みおよび読み出し動作を説明する。
【0064】
まず、消去動作から説明する。例えば、データを消去するメモリセル(選択メモリセル)として、セルトランジスタCT1およびセルトランジスタCT2に蓄積されたデータを消去する場合を考える。選択されたウェルWE1の電位を1.5V、ワード線WL1の電位を−8.5V、ソース線SL1およびソース線SL2の電位を1.5V、データ線DL1およびデータ線DL2をフローティング(
図3ではFと表記)にする。その結果、セルトランジスタCT1およびセルトランジスタCT2の電荷蓄積膜に蓄積された電荷が半導体基板側に引き抜かれ、データが消去される。
【0065】
この際、消去を行わない他のメモリセル(非選択メモリセル)としてのセルトランジスタCT3〜CT8については、選択しないウェルWE2の電位を−8.5V、ワード線WL2の電位を1.5V、ソース線SL3およびソース線SL4の電位を1.5V、データ線DL3およびデータ線DL4の電位をフローティングにする。これにより、セルトランジスタCT3〜CT8の電荷蓄積膜に蓄積された電荷が逃げないようにして消去されないようにする。
【0066】
次に、書き込み動作について説明する。例えば、データを書き込むメモリセル(選択メモリセル)として、セルトランジスタCT1にデータを書き込む場合を考える。選択されたウェルWE1の電位を−10.5V、ワード線WL1の電位を1.5V、ソース線SL1の電位を−10.5V、データ線DL1をフローティングにする。すると、セルトランジスタCT1の電荷蓄積膜に電荷が注入され、データの書き込みが行われる。
【0067】
この際、書き込みを行わない他のセルトランジスタ(非選択メモリセル)CT2〜CT8については、選択しないウェルWE2の電位を−10.5V、ワード線WL2の電位を−10.5V、ソース線SL2〜SL4の電位を1.5V、データ線DL2〜DL4の電位をフローティングにする。これにより、セルトランジスタCT2〜CT8の電荷蓄積膜に電荷が注入されないようにする。
【0068】
次に、読み出し動作について説明する。例えば、セルトランジスタCT1にデータ“0”が書き込まれトランジスタの閾値電圧が高くなっており、セルトランジスタCT2がデータ“1”となってトランジスタの閾値電圧が低くなっているとする。セルトランジスタCT1およびセルトランジスタCT2のデータを読み出す場合、選択されたウェルWE1の電位を−2V、ワード線WL1の電位を0V、ソース線SL1およびソース線SL2の電位を0V、データ線DL1およびデータ線DL2の電位を1.0Vにする。これにより、セルトランジスタCT1およびセルトランジスタCT2のデータを読み出す。この場合、セルトランジスタCT1の閾値電圧は高く、セルトランジスタCT2の閾値電圧は低くなっているので、データ線DL1の電位は変わらず、データ線DL2の電位は下がる。
【0069】
また、読み出しを行わない他のセルトランジスタCT3〜CT8については、選択しないウェルWE2の電位を−2V、ワード線WL2の電位を−2V、ソース線SL3およびソース線SL4の電位を0V、データ線DL3およびデータ線DL4の電位を0Vにして、セルトランジスタCT3〜CT8がオンしないようにする。読み出し時に非選択メモリセルのバックゲート電位を下げることにより、メモリセルに選択トランジスタが不要となる。
【0070】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0071】
図4および
図5は、実施の形態の半導体装置の製造工程の一部を示すプロセスフロー図である。
図6〜
図21は、実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図5は、
図4のステップS4に含まれる工程を示す。
図7〜
図10、
図12〜
図14、
図16および
図18は、実施の形態の半導体装置の要部断面図のうち、ゲート絶縁膜GIMが形成される領域の周辺を拡大して示す拡大断面図である。なお、
図7〜
図10、
図12〜
図14、
図16および
図18では、理解を簡単にするため、層間絶縁膜IL1などMONOS型トランジスタMC上の部分、および、シリサイド膜CSの図示を省略している。
【0072】
本実施の形態においては、メモリ形成領域MRにnチャネル型のMONOS型トランジスタMCを形成する場合について説明するが、導電型を逆にしてpチャネル型のMONOS型トランジスタMCを形成することもできる。
【0073】
まず、
図6に示すように、半導体基板SBを用意する(
図4のステップS1)。このステップS1では、例えばホウ素(B)などのp型の不純物を導入した、好ましくは1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するシリコン単結晶からなる半導体基板SBを用意する。この際、半導体基板SBは、略円盤形状をした半導体ウエハの状態になっている。
【0074】
次に、
図6に示すように、素子分離領域STIを形成する(
図4のステップS2)。このステップS2では、好ましくは、STI(Shallow Trench Isolation)法またはLOCOS(Local Oxidation of Silicon)法を用いて素子分離領域STIを形成する。以下では、STI法を用いて素子分離領域STIを形成する方法について、説明する。
【0075】
このSTI法では、まず、半導体基板SBにフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して素子分離溝を形成する。そして、素子分離溝を埋め込むように半導体基板SB上に、好ましくは酸化シリコン膜からなる絶縁膜を形成し、その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法により、半導体基板SB上に形成された不要な絶縁膜を除去する。これにより、素子分離溝内にのみ絶縁膜を埋め込んだ素子分離領域STIを形成することができる。
【0076】
次に、
図6および
図7に示すように、p型ウェルPWMを形成する(
図4のステップS3)。
【0077】
このステップS3では、まず、
図6および
図7に示すように、好ましくはパターニングされたレジスト膜(図示せず)をマスクにしたイオン注入法により、例えばホウ素(B)などのp型の不純物を、半導体基板SBに導入する。
【0078】
このステップS3では、次に、
図6および
図7に示すように、半導体基板SBに、例えばヒ素(As)などのn型の不純物、または、ホウ素(B)などのp型の不純物をイオン注入することにより、メモリ形成領域MRにおいて、p型ウェルPWMの上層部、すなわちチャネル領域を形成する部分にp型半導体領域VMGを形成する。
【0079】
この時のp型不純物イオンの打ち込みエネルギーは、好ましくは20keV程度であり、ドーズ量は、好ましくは1.5×10
13cm
-2程度とすることができる。この際、イオン注入される不純物の種類、または、イオン注入の条件を調整することにより、MONOS型トランジスタMCの閾値電圧を調整することができる。
【0080】
なお、「n型」とは、主要な電荷担体が電子であり、p型とは反対の導電型を意味する。
【0081】
次に、
図8〜
図14に示すように、絶縁膜部IFPを形成する(
図4のステップS4)。
【0082】
特に、本実施の形態にあっては、
図4のステップS4の工程は、半導体基板SBの上面PSに絶縁膜IF1を形成する工程(
図5のステップS21)と、絶縁膜IF1上に電荷蓄積膜EC11を形成する工程(
図5のステップS22)と、電荷蓄積膜EC11上に電荷蓄積膜EC12aを形成する工程(
図5のステップS23)と、を含む。続いて、
図4のステップS4の工程は、電荷蓄積膜EC12a上に絶縁膜IFEを形成する工程(
図5のステップS24)と、絶縁膜IFE上に電荷蓄積膜EC2aを形成する工程(
図5のステップS25)と、電荷蓄積膜EC2a上に絶縁膜IF2を形成する工程(
図5のステップS26)と、を含む。
【0083】
まず、
図8に示すように、絶縁膜IF1を形成する(
図5のステップS21)。このステップS21では、メモリ形成領域MRにおいて、半導体基板SBの上面PSに、すなわち、p型ウェルPWM上に絶縁膜IF1を形成する。
【0084】
絶縁膜IF1は、シリコンおよび酸素を含有する絶縁膜であり、好ましくは酸化シリコンからなる。好適には、絶縁膜IF1を、ISSG(In Situ Steam Generation)酸化法により形成することができる。
【0085】
ISSG酸化法とは、減圧した熱処理チャンバ内に水素と酸素を直接導入し、例えば、800〜1100℃の温度に加熱したシリコンからなる半導体基板の表面でラジカル酸化反応をさせることにより、半導体基板の表面に酸化シリコンからなる酸化膜を形成する方法である。
【0086】
ISSG酸化法における酸化力は、ラジカル酸化反応を用いるため、例えば熱酸化法などにおける酸化力に比べて高い。したがって、ISSG酸化法を用いることにより、緻密で良質な膜質の酸化シリコンからなる絶縁膜IF1を形成することができる。前述の通り、絶縁膜IF1の膜厚TH1は、2nm程度である。
【0087】
次に、
図9に示すように、電荷蓄積膜EC11を形成する(
図5のステップS22)。このステップS22では、メモリ形成領域MRにおいて、絶縁膜IF1上に電荷蓄積膜EC11を形成する。
【0088】
電荷蓄積膜EC11は、シリコンおよび窒素を含有する絶縁膜であり、好ましくは窒化シリコンからなる。電荷蓄積膜EC11は、以下に説明するALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法により形成する。
【0089】
ALD法とは、例えば、第一前駆体ガスの分子を化学吸着させて1原子層を形成する工程と、余剰の第一前駆体ガスの分子を除去する工程と、第二前駆体ガスの分子を第一前駆体ガスの分子と反応させて、生成物による膜を形成する工程と、余剰の第二前駆体ガスの分子を除去する工程とを順次に繰返す(ALDサイクル)ことによって、1原子層ずつ積み上げて成膜する方法である。
【0090】
ステップS22におけるALD法の概略について説明する。まず、半導体基板SBを500℃〜600℃に加熱し、半導体基板SB上に、第1の反応ガスであるジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスを供給し、半導体基板SBの絶縁膜IF1上に十分吸着させた後、未吸着のジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスを半導体基板SB上より除去する。
【0091】
次に、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスと反応する第2の反応ガスであるアンモニア(NH
3)ガスを半導体基板SB上に供給し、半導体基板SBの絶縁膜IF1上に吸着したジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスと反応させて、絶縁膜IF1上に窒化シリコン膜を形成する。この後、未反応のアンモニア(NH
3)ガスを半導体SB上より除去する。
【0092】
以上の第1の反応ガスの供給と除去、第2の反応ガスの供給と除去を所定回数繰り返すことにより、絶縁膜IF1上に均質で高密度の窒化シリコンからなる電荷蓄積膜EC11を制御性よく形成することができる。前述の通り、電荷蓄積膜EC11の膜厚THE11は、1.0〜2.0nm程度である。
【0093】
また、電荷蓄積膜EC11は、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により形成することができ、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスとアンモニア(NH
3)ガスとを原料ガスとして用いたLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition:減圧化学気相成長)法により形成することもできる。あるいは、電荷蓄積膜EC11を、例えばシラン(SiH
4)ガスとアンモニアガスとを原料ガスとして用いたLPCVD法により形成することもできる。
【0094】
但し、薄膜生成においては、同じ温度で比較した場合、LPCVD法よりもALD法の方が窒化シリコンの生成反応が効率よく起こり、例えば、塩素等が膜中に残存しにくくなることから、均質で膜密度の高い窒化シリコン膜を形成することができる。その結果、LPCVD法よりもALD法の方が均一な薄膜形成を行うことができる。従って、電荷蓄積膜EC11は、ALD法によって形成することが好適である。
【0095】
次に、
図10に示すように、電荷蓄積膜EC12aを形成する(
図5のステップS23)。
【0096】
ここで、電荷蓄積膜EC12aとは、酸化処理前の電荷蓄積膜EC12のことである。本実施の形態に係る絶縁膜IFEは、次のステップS24にて、電荷蓄積膜の一部(表層部)を酸化することにより生成することから、酸化されて絶縁膜IFEになる部分と酸化されず絶縁膜IFEの下に電荷蓄積膜EC12として残存する部分とを含む酸化処理前の電荷蓄積膜を電荷蓄積膜EC12aと表すこととした。
【0097】
このステップS23では、メモリ形成領域MRにおいて、電荷蓄積膜EC11上に電荷蓄積膜EC12aを形成する。
【0098】
電荷蓄積膜EC12aは、シリコンおよび窒素を含有する絶縁膜であり、好ましくは窒化シリコンからなる。電荷蓄積膜EC12は、以下の手順によりALD法により形成する。
【0099】
まず、半導体基板SBをステップS22よりも低温である400℃〜500℃に加熱し、半導体基板SB上に、第1の反応ガスであるジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスを供給し、半導体基板SBの電荷蓄積膜EC11上に十分吸着させた後、未吸着のジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスを半導体基板SB上より除去する。
【0100】
次に、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスと反応する第2の反応ガスであるアンモニア(NH
3)ガスを半導体基板SB上に供給し、半導体基板SBの電荷蓄積膜EC11上に吸着したジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスと反応させて、電荷蓄積膜EC11上に窒化シリコン膜を形成する。この後、未反応のアンモニア(NH
3)ガスを半導体SB上より除去する。
【0101】
以上の第1の反応ガスの供給と除去、第2の反応ガスの供給と除去を所定回数繰り返すことにより、電荷蓄積膜EC11上に均質で高密度の窒化シリコンからなる電荷蓄積膜EC12aを制御性よく形成することができる。電荷蓄積膜EC12aの膜厚THE12aは、0.2〜1.0nm程度である。
【0102】
また、電荷蓄積膜EC12aは、電荷蓄積膜EC11と同様に、例えばCVD法により形成することもでき、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスとアンモニア(NH
3)ガスとを原料ガスとして用いたLPCVD法により形成することもできる。あるいは、電荷蓄積膜EC12aを、例えばシラン(SiH
4)ガスとアンモニアガスとを原料ガスとして用いたLPCVD法により形成することができる。
【0103】
但し、前述の通り、LPCVD法よりもALD法の方が均一な薄膜形成を行うことができることから、電荷蓄積膜EC12aは、ALD法によって形成することが好適である。
【0104】
なお、以上のように、ステップS22で形成する電荷蓄積膜EC11の成膜温度よりもステップS23で形成する電荷蓄積膜EC12aの成膜温度の方が低いため、電荷蓄積膜EC12aは、電荷蓄積膜EC11よりも膜密度(原子密度)の低い絶縁膜として形成される。また、前述の通り、膜密度が低い窒化シリコン膜は、膜中に酸素が取り込まれやすく、結果として酸素密度の高い窒化シリコン膜となる。
【0105】
次に、
図11および
図12に示すように、水を含む処理液を用いた液処理、すなわち湿式処理により、絶縁膜IFEを形成する(
図5のステップS24)。このステップS24では、メモリ形成領域MRにおいて、電荷蓄積膜EC12a上に、絶縁膜IFEを形成する。
【0106】
絶縁膜IFEは、シリコンおよび酸素を含有する絶縁膜であり、好ましくは酸化シリコンまたは酸窒化シリコンからなる。以下では、枚葉式の液処理装置を用いて、半導体基板を1枚ずつ液処理、すなわち湿式処理する方法について説明する。
【0107】
まず、ステップS23が行われた後の半導体基板SBを、液処理装置(図示せず)に設けられたウエハステージ(図示せず)により保持する。次に、ウエハステージとともに半導体基板SBを回転させた状態で、液処理装置に設けられたノズル(図示せず)から半導体基板SBの上面PSに、好ましくは30秒程度、処理液として、好ましくは室温すなわち23℃に維持された純水を供給する。
【0108】
そして、供給された処理液により、例えば窒化シリコンからなる電荷蓄積膜EC12aの上面を液処理、すなわち湿式処理することにより、電荷蓄積膜EC12aの一部(表層部)を酸化して、膜厚THIEを有する絶縁膜IFEを形成する。この際、
図11および
図12に示すように、電荷蓄積膜EC12aのうち、酸化されなかった部分が電荷蓄積膜EC12として絶縁膜IFEの下に残存する。
【0109】
このような液処理により形成される絶縁膜IFEの膜厚THIEは少なくとも1原子層以上に相当する大きさであって、0.1〜0.5nm程度である。従って、酸化処理前の電荷蓄積膜EC12aの膜厚THE12aを0.2〜1.0nmとした場合、酸化されずに絶縁膜IFEの下に残存する電荷蓄積膜EC12の膜厚THE12が0.1〜0.5nm程度となる。電荷蓄積膜EC11上に残存する電荷蓄積膜EC12および電荷蓄積膜EC11によって、電荷蓄積膜EC1が形成される。
【0110】
そして、処理液の供給を停止した後、好ましくは20秒程度、さらに半導体基板SBを回転して振り切り乾燥し、乾燥処理を行う。その後、半導体基板SBの回転を停止し、半導体基板SBをウエハステージから取り外す。
【0111】
ここで、水を含む処理液とは、酸化膜を形成するための処理液である。処理液として純水を用いる場合、半導体基板SBに上面PSに供給される処理液の温度を、室温すなわち23℃以上で、かつ、100℃以下とすることができる。また、純水の定義であるが、室温における純水の比抵抗を、好適には、10MΩcm以上とすることができ、より好適には、18MΩcm以上とすることができる。
【0112】
なお、例えば、絶縁膜IFEを大気中で放置することによる自然酸化法、あるいは、熱酸化法またはCVD法により形成することも考えられる。しかしながら、前者では24時間程度の処理時間が必要となり半導体装置の製造工程におけるスループットが低下する。後者では、酸化膜の膜厚が数nm以上となり、薄い酸化膜の形成が難しいという問題がある。
【0113】
一方、上記の液処理により形成される絶縁膜IFEの膜厚THIEは、少なくとも1原子層以上に相当する大きさであって、0.1〜0.5nm程度である一方で、トンネル現象により電子またはホールが通過できる上限の膜厚よりも小さい。また、絶縁膜IFEの膜厚THIEは、電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12からなる電荷蓄積膜EC1の膜厚THE1よりも小さい。
【0114】
これにより、半導体基板SBから電荷蓄積膜EC2に電子またはホールを容易に注入することができ、かつ、注入された電子またはホールが電荷蓄積膜EC2から半導体基板SBに逃げないようにすることができる。
【0115】
以上より、ステップS24では、上記した液処理により、短時間で膜厚制御性よく極薄の絶縁膜IFEを形成することができる。
【0116】
また、処理液により半導体基板SBを液処理することにより、電荷蓄積膜EC12aの上面に付着した異物を除去することができ、その結果、電荷蓄積膜EC12の上面を滑らかにすることができる。そのため、MONOS型トランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0117】
なお、酸化膜を形成するための処理液として、後述する変形例で説明するように、オゾン(O
3)水、過酸化水素(H
2O
2)水を含む処理液など、水を含む各種の処理液を用いることができる。
【0118】
上記した例では、枚葉式の液処理装置を用いて、半導体基板を1枚ずつ液処理、すなわち湿式処理する方法について説明した。しかし、枚葉式の液処理装置に代え、バッチ式の液処理装置を用いて、複数の半導体基板を同時に液処理、すなわち湿式処理してもよい。
【0119】
次に、
図13に示すように、電荷蓄積膜EC2aを形成する(
図5のステップS25)。このステップS25では、メモリ形成領域MRにおいて、絶縁膜IFE上に、電荷蓄積膜EC2aを形成する。
【0120】
ここで、電荷蓄積膜EC2aとは、酸化処理前の電荷蓄積膜EC2のことである。本実施の形態に係る絶縁膜IF2は、次のステップS26にて、電荷蓄積膜の一部(表層部)を酸化することにより生成することから、酸化されて絶縁膜IF2になる部分と酸化されず絶縁膜IF2の下に電荷蓄積膜EC2として残存する部分とを含む酸化処理前の電荷蓄積膜を電荷蓄積膜EC2aと表すこととした。
【0121】
電荷蓄積膜EC2aは、シリコンおよび窒素を含有する絶縁膜であり、好ましくは窒化シリコンからなる。電荷蓄積膜EC2aを、例えばCVD法により形成することができ、好適には、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスとアンモニア(NH
3)ガスとを原料ガスとして用いたLPCVD法により650℃程度で形成することができる。
【0122】
あるいは、電荷蓄積膜EC2aは、例えば、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスとアンモニア(NH
3)ガスとを原料ガスとして用いたALD法、または、シラン(SiH
4)ガスとアンモニアガスとを原料ガスとして用いたLPCVD法により形成することもできる。
【0123】
電荷蓄積膜EC2aの膜厚THE2aは、好ましくは9nm程度であり、このような膜厚の窒化シリコン膜を形成する場合、成膜速度および膜質の観点から、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスとアンモニア(NH
3)ガスとを原料ガスとして用いたLPCVD法が好適である。
【0124】
次に、
図14に示すように、絶縁膜IF2を形成する(
図5のステップS26)。このステップS26では、メモリ形成領域MRにおいて、電荷蓄積膜EC2上に、絶縁膜IF2を形成する。
【0125】
絶縁膜IF2は、シリコンおよび酸素を含有する絶縁膜であり、好ましくは酸化シリコンからなる。好適には、絶縁膜IF2を、ウェット酸化法などの熱酸化法、または、ISSG酸化法により形成することができる。ウェット酸化法は、酸素ガスに脱イオン水蒸気を加えたガス中で熱処理を行う方法である。あるいは、好適には、絶縁膜IF2を、HTO(High Temperature Oxide)法により形成することができる。
【0126】
本実施の形態にあっては、例えば窒化シリコンからなる電荷蓄積膜EC2aの上面を酸化処理することにより、電荷蓄積膜EC2aの一部(表層部)を酸化して、膜厚TH2を有する絶縁膜IF2を形成する。この際、
図14に示すように、電荷蓄積膜EC2aのうち、酸化されなかった部分が電荷蓄積膜EC2として絶縁膜IF2の下に残存する。
【0127】
このような酸化処理により形成される絶縁膜IF2の膜厚TH2は3nm程度である。従って、酸化処理前の電荷蓄積膜EC2aの膜厚THE2aを9nm程度とした場合、酸化されずに絶縁膜IF2の下に残存する電荷蓄積膜EC2の膜厚THE2が、6nm程度となる。
【0128】
これにより、緻密で良質な膜質の酸化シリコンからなる絶縁膜IF2を形成することができる。
【0129】
以上のようにして、半導体基板SBの上面PSに、絶縁膜IF1と、電荷蓄積膜EC11と、電荷蓄積膜EC12と、絶縁膜IFEと、電荷蓄積膜EC2と、絶縁膜IF2と、を含む絶縁膜部IFPを形成することができる。また、絶縁膜部IFPには、電荷蓄積膜EC1と、絶縁膜IFEと、電荷蓄積膜EC2とからなる電荷蓄積部ECPが形成されている。
【0130】
次に、
図15および
図16に示すように、導電膜CF1を形成する(
図4のステップS5)。このステップS5では、メモリ形成領域MRにおいて、絶縁膜部IFP上に、ゲート電極用の導電膜CF1を形成する。
【0131】
好適には、導電膜CF1は、多結晶シリコン膜、すなわちポリシリコン膜からなる。このような導電膜CF1を、CVD法などを用いて形成することができる。導電膜CF1の膜厚を、絶縁膜部IFPを覆うのに十分な程度の大きさとすることができる。また、導電膜CF1の成膜時は導電膜CF1をアモルファスシリコン膜として成膜してから、その後の熱処理でアモルファスシリコン膜を多結晶シリコン膜とすることもできる。
【0132】
導電膜CF1として、例えばリン(P)またはヒ素(As)などのn型の不純物を導入して低抵抗率としたものを用いることが、好ましい。
【0133】
不純物は、導電膜CF1の成膜時または成膜後に導入することができる。導電膜CF1の成膜時に不純物を導入する場合には、導電膜CF1の成膜用のガスにドーピングガスを含ませることで、不純物が導入された導電膜CF1を成膜することができる。
【0134】
一方、シリコン膜の成膜後に不純物を導入する場合には、意図的には不純物を導入せずにシリコン膜を成膜した後に、このシリコン膜に不純物をイオン注入法などで導入することにより、不純物が導入された導電膜CF1を形成することができる。
【0135】
なお、pチャネル型のMONOS型トランジスタを形成する場合には、例えばホウ素(B)などのp型の不純物を導入して低抵抗率としたものを用いることが、好ましい。
【0136】
次に、
図17および
図18に示すように、メモリ形成領域MRにおいて、導電膜CF1および絶縁膜部IFPをパターニングする(
図4のステップS6)。
【0137】
このステップS6では、まず、半導体基板SBの上面PS上にレジスト膜(図示せず)を塗布した後、フォトリソグラフィ技術を使用することにより、レジスト膜をパターニングする。レジスト膜は、メモリ形成領域MRのうち、ゲート電極CGを形成する領域に配置された部分の導電膜CF1が、レジスト膜により覆われ、メモリ形成領域MRのうち、ゲート電極CGを形成する領域以外の領域に配置された部分の導電膜CF1が、レジスト膜から露出するように、パターニングされる。
【0138】
このステップS6では、次に、
図17および
図18に示すように、パターニングされたレジスト膜(図示せず)をマスクとして用いて、導電膜CF1および絶縁膜部IFPを、好ましくはドライエッチングなどによりエッチングしてパターニングする。あるいは、導電膜CF1をドライエッチングによりエッチングしてパターニングした後、絶縁膜部IFPをウェットエッチングによりエッチングしてパターニングしてもよい。
【0139】
これにより、メモリ形成領域MRにおいて、導電膜CF1からなるゲート電極CGが形成され、ゲート電極CGと半導体基板SBのp型ウェルPWMとの間の部分の絶縁膜部IFPからなるゲート絶縁膜GIMが形成される。
【0140】
すなわち、ゲート電極CGは、メモリ形成領域MRにおいて、半導体基板SBのp型ウェルPWM上に、ゲート絶縁膜GIMを介して形成される。その後、パターニングされたレジスト膜(図示せず)を、好ましくはアッシングにより除去する。
【0141】
次に、
図19に示すように、n
-型半導体領域LDMを形成する(
図4のステップS7)。このステップS7では、まず、
図19に示すように、メモリ形成領域MRにおいて、ゲート電極CGをマスクとして用いて、例えばヒ素(As)またはリン(P)などのn型の不純物を、半導体基板SBに、イオン注入法により導入する。
【0142】
これにより、メモリ形成領域MRにおいて、平面視において、ゲート電極CGを挟んで両側に位置する部分のp型ウェルPWMの上層部に、n
-型半導体領域LDMがそれぞれ形成される。n
-型半導体領域LDMは、ゲート電極CGの両側面にそれぞれ整合して形成される。
【0143】
なお、pチャネル型のMONOS型トランジスタを形成する場合には、メモリ形成領域MRにおいて、ゲート電極CGをマスクとして用いて、例えばホウ素(B)などのp型の不純物を、半導体基板SBに、イオン注入法により導入する。
【0144】
次に、
図20に示すように、サイドウォールスペーサSWを形成する(
図4のステップS8)。
【0145】
このステップS8では、まず、半導体基板SBの上面PS全面に、サイドウォールスペーサ用の絶縁膜を形成する。絶縁膜は、好ましくは、酸化シリコンからなる絶縁膜、窒化シリコンからなる絶縁膜、または、それらの積層膜などからなる。この際、メモリ形成領域MRでは、絶縁膜は、n
-型半導体領域LDMの上面、ゲート絶縁膜GIMの側面、ならびに、ゲート電極CGの側面および上面に、形成される。
【0146】
このステップS8では、次に、
図20に示すように、絶縁膜を、好ましくは異方性エッチングによりエッチバックして、メモリ形成領域MRにおいて、ゲート電極CGの側面に選択的に絶縁膜を残すことにより、ゲート電極CGの側面に、絶縁膜からなるサイドウォールスペーサSWを形成する。これにより、後述するステップS9で形成されるn
+型半導体領域NDMは、ゲート電極CGと電気的に絶縁されることになる。
【0147】
次に、
図20に示すように、n
+型半導体領域NDMを形成する(
図4のステップS9)。このステップS9では、メモリ形成領域MRにおいて、ゲート電極CGおよびサイドウォールスペーサSWをマスクとして用いて、例えばヒ素(As)またはリン(P)などのn型の不純物を、半導体基板SBに、イオン注入法により導入する。
【0148】
これにより、メモリ形成領域MRにおいて、平面視において、サイドウォールスペーサSWを挟んでゲート電極CGと反対側に位置する部分のp型ウェルPWMの上層部に、n
+型半導体領域NDMが形成される。n
+型半導体領域NDMは、メモリ形成領域MRにおいて、サイドウォールスペーサSWに整合して形成される。
【0149】
これにより、
図20に示すように、メモリ形成領域MRにおいて、p型ウェルPWMと、p型半導体領域VMGと、ゲート絶縁膜GIMと、ゲート電極CGと、サイドウォールスペーサSWと、n
-型半導体領域LDMと、n
+型半導体領域NDMと、により、MONOS型トランジスタMCが形成される。また、MONOS型トランジスタMCにより、不揮発性メモリとしてのメモリセルが形成される。
【0150】
なお、pチャネル型のMONOS型トランジスタを形成する場合には、メモリ形成領域MRにおいて、ゲート電極CGおよびサイドウォールスペーサSWをマスクとして用いて、例えばホウ素(B)などのp型の不純物を、半導体基板SBに、イオン注入法により導入する。
【0151】
次に、
図21に示すように、シリサイド膜CS、絶縁膜SNF、層間絶縁膜IL1およびプラグPGを形成する(
図4のステップS10)。
【0152】
このステップS10では、まず、
図21に示すように、シリサイド膜CSを形成する。半導体基板SBの上面PS全面に、n
+型半導体領域NDM、ゲート電極CG、および、サイドウォールスペーサSWを覆うように、金属膜を形成する。
【0153】
金属膜は、例えば、コバルト(Co)膜、ニッケル(Ni)膜、または、ニッケル白金合金膜などからなり、スパッタリング法などを用いて形成することができる。そして、半導体基板SBに熱処理を施すことによって、n
+型半導体領域NDMおよびゲート電極CGの各々の上層部を、金属膜と反応させる。その後、未反応の金属膜を除去する。
【0154】
このようないわゆるサリサイド(Salicide:Self-Aligned Silicide)プロセスを行うことによって、
図21に示すように、n
+型半導体領域NDMおよびゲート電極CGの各々の上に、シリサイド膜CSがそれぞれ形成される。シリサイド膜CSは、例えばコバルトシリサイド層、ニッケルシリサイド層、または、白金添加ニッケルシリサイド層とすることができる。
【0155】
このステップS10では、次に、
図21に示すように、絶縁膜SNFを形成する。半導体基板SBの上面PS全面に、n
+型半導体領域NDM、ゲート電極CG、および、サイドウォールスペーサSWを覆うように、絶縁膜SNFを形成する。絶縁膜SNFは、好ましくは窒化シリコンからなる。絶縁膜SNFを、好ましくはCVD法により形成することができる。
【0156】
このステップS10では、次に、
図21に示すように、絶縁膜SNF上に、層間絶縁膜IL1を形成する。層間絶縁膜IL1は、好ましくは、酸化シリコンからなる絶縁膜、または、窒化シリコンからなる絶縁膜と酸化シリコンからなる絶縁膜との積層膜などからなる。層間絶縁膜IL1を、例えばCVD法により形成した後、層間絶縁膜IL1の上面を平坦化する。
【0157】
このステップS10では、次に、
図21に示すように、層間絶縁膜IL1を貫通するプラグPGを形成する。まず、フォトリソグラフィを用いて層間絶縁膜IL1上に形成したレジストパターン(図示せず)をエッチングマスクとして、層間絶縁膜IL1をドライエッチングすることにより、層間絶縁膜IL1にコンタクトホールCNTを形成する。次に、コンタクトホールCNT内に、例えば導電体部として、タングステン(W)などからなる導電性のプラグPGを形成する。
【0158】
プラグPGを形成するには、好ましくは、コンタクトホールCNTの内部を含む層間絶縁膜IL1上に、例えば、チタン(Ti)膜、窒化チタン(TiN)膜、またはそれらの積層膜からなるバリア導体膜を形成する。
【0159】
それから、このバリア導体膜上に、例えばタングステン(W)膜などからなる主導体膜を、コンタクトホールCNTを埋めるように形成し、層間絶縁膜IL1上の不要な主導体膜およびバリア導体膜をCMP法またはエッチバック法などによって除去する。これにより、プラグPGを形成することができる。なお、図面の簡略化のために、
図21では、プラグPGを構成するバリア導体膜および主導体膜を一体化して示してある。
【0160】
コンタクトホールCNT、および、それに埋め込まれたプラグPGは、n
+型半導体領域NDM上に形成され、図示は省略するが、ゲート電極CG上などにも形成される。コンタクトホールCNTの底部では、例えばn
+型半導体領域NDM上のシリサイド膜CSの一部が露出され、図示は省略するが、ゲート電極CG上のシリサイド膜CSの一部も露出される。
【0161】
次に、
図21に示すように、層間絶縁膜IL2および配線ML1を形成する(
図4のステップS11)。
【0162】
このステップS11では、まず、
図21に示すように、プラグPGを形成した層間絶縁膜IL1上に、好ましくは酸化シリコンからなる層間絶縁膜IL2を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL2に配線溝を形成する。その後、配線溝内を含む層間絶縁膜IL2上に銅(Cu)膜を形成する。
【0163】
その後、配線溝の内部以外の層間絶縁膜IL2上に露出している銅膜を、好ましくはCMP法で研磨して除去することにより、層間絶縁膜IL2に形成された配線溝内にだけ銅膜を残す。これにより、配線ML1を形成することができる。このようにして、本実施の形態の半導体装置を形成することができる。
【0164】
なお、本実施の形態では、銅膜よりなる配線ML1を形成する例について説明したが、例えば、アルミニウム(Al)膜よりなる配線ML1を形成してもよい。
【0165】
<検討例の説明>
本願発明者が検討した検討例の半導体装置について説明する。
【0166】
図22は、検討例1の半導体装置の要部断面図のうち、ゲート絶縁膜GIMの周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図23は、検討例1の半導体装置の電荷蓄積部における電子トラップ位置の分布を模式的に示す断面図である。
図24は、検討例1の半導体装置の書込状態におけるエネルギー分布を示すバンド図である。
【0167】
図25は、検討例2の半導体装置の要部断面図のうち、ゲート絶縁膜GIMの周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図26は、検討例2の半導体装置の電荷蓄積部における電子トラップ位置の分布を模式的に示す断面図である。
図27は、検討例2の半導体装置の書込状態におけるエネルギー分布を示すバンド図である。
【0168】
(検討例1)
検討例1の半導体装置では、ゲート絶縁膜GIMは、半導体基板SBの上面PSに形成された絶縁膜IF1と、絶縁膜IF1上に形成された電荷蓄積膜EC100と、電荷蓄積膜EC100上に形成された絶縁膜IF2と、を含む。電荷蓄積膜EC100により、電荷蓄積部ECP100が形成される。
【0169】
絶縁膜IF1は、好ましくは酸化シリコンからなり、電荷蓄積膜EC100は、好ましくは窒化シリコンからなり、絶縁膜IF2は、好ましくは酸化シリコンからなる。したがって、ゲート絶縁膜GIMは、ONO(Oxide−Nitride−Oxide)膜とも称される構造を有する。
【0170】
電荷蓄積膜EC100のバンドギャップ中において、絶縁膜IF1と絶縁膜IF2との界面付近には、不純物準位などからなる電子トラップ位置ET100が形成されている。
【0171】
ボトム酸化膜としての絶縁膜IF1の膜厚TH1は、好ましくは2nm程度と小さく、半導体基板SBから電荷蓄積膜EC100へのホールのダイレクト・トンネル消去動作を可能にしている。
【0172】
また、電荷蓄積膜EC100の膜厚THE100は、例えば16nmであり、トップ酸化膜としての絶縁膜IF2の膜厚TH2は、例えば3nm程度である。
【0173】
検討例1の半導体装置では、電荷蓄積部ECP100が1層の電荷蓄積膜EC100からなる。このような場合、ホールが絶縁膜IF1を直接トンネルして消去動作を行う動作、すなわちダイレクト・トンネル消去動作を可能とするためには、絶縁膜IF1の膜厚TH1を好ましくは2nm程度に小さくする必要がある。
【0174】
しかし、このように膜厚TH1を小さくすると、電荷蓄積膜EC100のうち絶縁膜IF1との界面付近に形成される電子トラップ位置ET100と、半導体基板SBの上面との距離が短くなる。そのため、書込み状態、すなわち電子注入後のデータ保持時に電子が電荷蓄積膜EC100から半導体基板SBにトンネルしやすく、データ保持特性を向上させることができない。
【0175】
そのため、検討例1の半導体装置の適用範囲は、例えば、85℃の使用温度で、10年のデータ保持期間および10万回のデータ書き換え回数を可能とする、いわゆる民生品用途に限られる。また、検討例1の半導体装置では、消去状態においては、電荷蓄積膜EC100から半導体基板SBにホールがトンネルして逃げやすい。
【0176】
(検討例2)
一方、検討例2の半導体装置では、
図27に示すように、電荷蓄積部ECPが、2層の電荷蓄積膜EC101および電荷蓄積膜EC2と、その間に配置された絶縁膜IFEとからなる。絶縁膜IFEは、好ましくは酸化シリコンからなる。
【0177】
電荷蓄積膜EC101は、好ましくは400℃程度の低温でのALD法により形成している。また、電荷蓄積膜EC2は、好ましくは600℃程度の高温でのLPCVD法により形成している。
【0178】
また、絶縁膜IFEは、電荷蓄積膜EC101の上面を液処理、すなわち湿式処理することにより、電荷蓄積膜EC101の一部を酸化して形成している。それ以外は、上記検討例1と同様である。
【0179】
図27に示すように、絶縁膜IF1、絶縁膜IFEおよび絶縁膜IF2の各々のバンドギャップは、それぞれ絶縁膜からなる電荷蓄積膜EC101および電荷蓄積膜EC2のいずれのバンドギャップよりも大きい。
【0180】
また、電荷蓄積膜EC101のバンドギャップ中において、絶縁膜IF1との界面付近には、不純物準位などからなる電子トラップ位置ET101が形成されている。同様に、電荷蓄積膜EC2のバンドギャップ中において、絶縁膜IFEとの界面付近には、不純物準位などからなる電子トラップ位置ET2が形成されている。
【0181】
従って、検討例2では、電荷蓄積膜EC101中に形成された電子トラップ位置ET101、および、電荷蓄積膜EC2中に形成された電子トラップ位置ET2に、電子からなる電荷を蓄積することができる。
【0182】
また、検討例2の半導体装置において、絶縁膜IF1の膜厚TH1を2.0nmとし、電荷蓄積膜EC101の膜厚THE101を1.5nmとし、絶縁膜IFEの膜厚THIEを0.5nmとすると、これらの膜厚の合計である、電荷蓄積膜EC2と半導体基板SBとの距離DSTを4.0nmとすることができる。一方、検討例1の半導体装置において、電荷蓄積膜EC100と半導体基板SBとの距離は、絶縁膜IF1の膜厚TH1に等しく、2nm程度である。
【0183】
検討例2の電子トラップ位置ET2に蓄積された電荷は、検討例1の電子トラップ位置ET100に蓄積された電荷に比べて、書込み状態、すなわち電子注入後のデータ保持時に半導体基板SBにトンネルしにくいことから、検討例2の半導体装置は検討例1の半導体装置に比べてデータ保持特性を向上させることができる。
【0184】
また、絶縁膜IFEの膜厚THIEは、電荷蓄積膜EC101の膜厚THE101よりも小さい。これにより、電荷蓄積部ECPの中で絶縁膜IFEの膜厚THIEを相対的に小さくすることができる。そのため、半導体基板SBから、電荷蓄積膜EC2に、電子またはホールを、絶縁膜IF1、電荷蓄積膜EC101および絶縁膜IFEをトンネルさせて容易に注入することができる。
【0185】
さらに、電荷蓄積膜EC2の膜厚THE2は、電荷蓄積膜EC101の膜厚THE101よりも大きく、電荷蓄積部ECPの中で電荷蓄積膜EC101の膜厚THE101を相対的に小さくすることができる。これにより、データを消去する際に、半導体基板SBのp型ウェルPWMから電荷蓄積膜EC2にホールを注入する効率を向上させることができる。
【0186】
すなわち、絶縁膜IFEを設け、電荷蓄積膜EC101の膜厚THE101を小さくすることにより、半導体基板SBの上面PSから電荷蓄積膜EC2の下面までの距離DSTを、データ保持特性を向上させつつ、電子およびホールの注入効率を向上させることが可能な、適度な距離に調整することができる。
【0187】
具体的には、検討例1において半導体基板SBの上面から2nm程度離れた位置に配置されていた電子トラップ位置を、検討例2では、半導体基板SBの上面から4nm程度離れた位置まで遠ざけることができる。そのため、書込み状態、すなわち電子注入後のデータ保持時に電子が電荷蓄積膜EC2から半導体基板SBにトンネルしにくく、検討例2の半導体装置は検討例1の半導体装置に比べてデータ保持特性を向上させることができる。
【0188】
ここで、検討例2では、絶縁膜IFEをできるだけ薄く形成する必要があるため、電荷蓄積膜EC101の一部(表層部)を酸化して絶縁膜IFEを形成する。そのため、電荷蓄積膜EC101を膜密度が低く、ある程度酸化されやすい窒化シリコン膜として形成していた。その結果、電荷蓄積膜EC101にはエネルギー的に浅い電子トラップ位置がある程度多く形成される(例えば、電子トラップ位置ET101s)。
【0189】
その結果、電子トラップ位置ET101sに捕獲された電子が、直接トンネル効果によって絶縁膜IF1を通過して、半導体基板SBへと漏れてしまい、データ保持特性が低下してしまう現象が検討例2の半導体装置で発生することがわかった。このため、浅い電子トラップ位置ET101sができるだけ形成されないようにすることが望ましい。
【0190】
一方で、電荷蓄積膜EC101の膜密度を高めると、窒化シリコン膜中の不純物や空隙に由来するエネルギー的に浅い電子トラップ位置ET101sの数が減少し、上記問題は解消する。しかしながら、電荷蓄積膜EC101の膜密度が高くなると、窒化シリコン膜の空隙が減少し、電荷蓄積膜EC101が酸化されにくくなるという副次的な効果を生じる。従って、電荷蓄積膜EC101の膜密度を高めた場合には、絶縁膜IFEを十分に形成することができなくなり、その結果、絶縁膜IFEと電荷蓄積膜EC2との界面付近に形成される電子トラップ位置ET2が減少し、データ保持特性が低下してしまうという問題が生じてしまう。
【0191】
<本実施の形態の主要な特徴>
以下、本実施の形態に係る半導体装置について、検討例と比較しながら説明する。
【0192】
(半導体装置の構造)
図28は、本実施の形態に係る半導体装置の要部断面図のうち、ゲート絶縁膜GIMの周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図29は、本実施の形態に係る半導体装置の電荷蓄積部における電子トラップ位置の分布を模式的に示す断面図である。
図30は、本実施の形態に係る半導体装置の書込状態におけるエネルギー分布を示すバンド図である。
【0193】
以上に説明した検討例1および検討例2に対して、本実施の形態に係る半導体装置では、
図28に示すように、電荷蓄積部ECPにおいて、電荷蓄積膜EC1を電荷蓄積膜EC11および蓄積膜EC11上に形成された電荷蓄積膜EC12(EC12a)の2層構造とする。そして、電荷蓄積膜EC12aは、電荷蓄積膜EC11よりも膜密度の低い、または、電荷蓄積膜EC11よりも酸素密度の高い絶縁膜として形成する。
【0194】
従って、半導体基板SBに最も近い電荷蓄積膜EC11の膜密度を高めることで、電荷蓄積膜EC11におけるエネルギー的に浅い電子トラップ位置を減らすことができる。その結果、エネルギー的に浅い電子トラップ位置に捕獲された電子が、直接トンネル効果によって絶縁膜IF1を通過して、半導体基板SBへと漏れるという事態を防止し、データ保持特性を向上することができる。
【0195】
特に、後述する
図33に示すように、本実施の形態の電荷蓄積膜EC11は検討例2の電荷蓄積膜EC101よりも膜密度(原子密度)の高い窒化シリコン膜からなる。その結果、電荷蓄積膜EC11を構成する窒化シリコン膜中の不純物や空隙に由来するエネルギー的に浅い電子トラップ位置の数は、検討例2の電荷蓄積膜EC101に比べて減少している。
【0196】
従って、検討例2の半導体装置に比べて、半導体基板SBに最も近い電荷蓄積膜EC11に捕獲された電子が、絶縁膜IF1を通過して、半導体基板SBへ漏れるといった事態を防止することができる。その結果、本実施の形態の半導体装置は、検討例2の半導体装置に比べて、データ保持特性を向上させることができる。
【0197】
仮に、電荷蓄積膜EC12に存在するエネルギー的に浅い電子トラップ位置に電子が捕獲された場合であっても、電荷蓄積膜EC11の分だけ半導体基板SBよりも距離が離れているため、トンネル現象により絶縁膜IF1を通過して半導体基板SBへ漏れる可能性を低減させることができ、検討例2に比べてデータ保持特性を向上させることができる。
【0198】
一方で、
図28に示すように、本実施の形態の電荷蓄積膜EC12a(EC12)は、電荷蓄積膜EC11よりも膜密度が低いので、空隙の多い、酸化されやすい窒化シリコン膜として形成される。従って、電荷蓄積膜EC12aの一部(表層部)を酸化して絶縁膜IFEを十分に形成することができる。その結果、絶縁膜IFEと電荷蓄積膜EC2との界面付近に形成される電子トラップ位置ET2の数を十分に確保することができ、データ保持特性を向上させることができる。
【0199】
このように、本実施の形態では、電荷蓄積膜EC11の膜密度を高くしたことにより電荷蓄積膜EC11における浅い電子トラップ位置を減らしたことと、電荷蓄積膜EC12a(EC12)の膜密度を低くしたことにより絶縁膜IFEを十分に形成することができたこととで、データ保持特性を向上させることができる。
【0200】
なお、
図10および
図12に示すように、本実施の形態にあっては、電荷蓄積膜EC1としての膜厚THE1を確保すると共に、絶縁膜IFEを十分に形成するために、電荷蓄積膜EC11の膜厚THE11を1.0nmとし、酸化前の電荷蓄積膜EC12aの膜厚THE12aを1.0nmとする。その結果、電荷蓄積膜EC12aの一部(表層部)が酸化された結果、膜厚THIE0.5nmの絶縁膜IFEが形成され、残存する電荷蓄積膜EC12の膜厚THE12が0.5nmとなるのが好適である。
【0201】
(閾値電圧の変化率)
次に、本実施の形態の半導体装置閾値電圧の変化率について、検討例2の半導体装置と対比しながら説明する。
【0202】
図31は、検討例2および本実施の形態の半導体装置における閾値電圧の変化率を説明するためのグラフである。
図31の横軸は、データ保持期間を示し、縦軸は、書込時および消去時のメモリセルの閾値電圧を示す。
【0203】
検討例2の半導体装置では、前述の通り、浅い電子トラップ位置ET101sが存在するため、書き込み状態、すなわち、電子注入後のデータ保持時に、トンネル現象により電子が電荷蓄積膜EC101から半導体基板SBに漏れやすい。従って、データ保持期間の経過に伴って閾値電圧が変化する割合、すなわち、変化率が大きくなる。
【0204】
その結果、
図31に示すように、検討例2の半導体装置では、所定のデータ保持期間経過後においても、書込時および消去時のメモリセルの閾値電圧の差を一定以上に確保するため、書込電圧を高くして電荷蓄積膜EC101および電荷蓄積膜EC2に十分な電子を注入しておく必要がある。
【0205】
一方、本実施の形態に係る半導体装置にあっては、電荷蓄積膜EC11は検討例2の電荷蓄積膜EC101よりも膜密度(原子密度)の高い窒化シリコン膜からなる。その結果、電荷蓄積膜EC11を構成する窒化シリコン膜中の不純物や空隙に由来するエネルギー的に浅い電子トラップ位置の数は、検討例2の電荷蓄積膜EC101に比べて減少している。
【0206】
従って、半導体基板SBに最も近い電荷蓄積膜EC11に捕獲された電子が、絶縁膜IF1を通過して、半導体基板SBへ漏れるトンネル確率が小さくなるため、閾値電圧の変化率を小さくすることができる。
【0207】
その結果、
図31に示すように、本実施の形態に係る半導体装置にあっては、検討例2に比べて、書込電圧を低下させることができる。
【0208】
(成膜温度による膜質制御)
以下、本実施の形態に係る電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの製造工程について詳細に説明する。
【0209】
図32は、ALD法による電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの成膜温度の時間変化を表すグラフである。
【0210】
前述のように、本実施の形態にあっては、電荷蓄積膜EC1を電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12(EC12a)の2層とし、半導体基板SBに最も近い電荷蓄積膜EC11を電荷蓄積膜EC12aよりも膜密度の高い絶縁膜として形成する。すなわち、一部(表層部)を酸化して絶縁膜IFEを形成する電荷蓄積膜EC12aを電荷蓄積膜EC11よりも膜密度の低い絶縁膜として形成する。
【0211】
一般に、ALD法においては、成膜温度または反応ガスの流量により、形成される膜の膜密度を変化させることができる。そこで、本実施の形態では、電荷蓄積膜EC11の成膜温度と電荷蓄積膜EC12aの成膜温度とを変化させることとした。成膜温度を高くすると、半導体基板SBに吸着したジクロロシランガスとアンモニアガスとの反応性が向上し、高密度な膜を形成することができる。
【0212】
具体的には、
図32に示すように、電荷蓄積膜EC12aを形成するステップS23よりも高温条件下で電荷蓄積膜EC11を形成する(
図5のステップS22)。その後、電荷蓄積膜EC11を形成するステップS22よりも低温条件下で電荷蓄積膜EC12aを形成する(
図5のステップS23)。以上より、電荷蓄積膜EC11を電荷蓄積膜EC12aよりも膜密度の高い絶縁膜として形成することができる。
【0213】
なお、成膜温度については、電荷蓄積膜EC12aと電荷蓄積膜EC11との膜密度の差をつけるために、電荷蓄積膜EC12aを形成するステップS23の成膜温度を500℃以下とし、電荷蓄積膜EC11を形成するステップS22の成膜温度は、電荷蓄積膜EC12aを形成するステップS23よりも25℃以上高温であることが好ましい。さらに、絶縁膜IFEを十分に形成するために、電荷蓄積膜EC11を形成するステップS22の成膜温度を500℃〜600℃、電荷蓄積膜EC12aを形成するステップS23の成膜温度を400℃〜500℃とすることが好適である。
【0214】
また、本実施の形態では、同一のALD装置内でステップS22およびステップS23を行う。具体的には、
図32に示すように、ALD装置に半導体基板SBを搬入し、半導体基板SBの温度を500℃〜600℃という条件下でALD法により窒化シリコン膜からなる電荷蓄積膜EC11を形成する(
図5のステップS22)。
【0215】
その後、半導体基板SBの温度を低下させ、400℃〜500℃という条件下で、ALD法により窒化シリコン膜からなる電荷蓄積膜EC12aを形成する(
図5のステップS23)。最後に、半導体基板SBの温度を低下させ、ALD装置から半導体基板SBを搬出する。
【0216】
以上のように、同一のALD装置内で電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aを連続形成することで、半導体装置のスループットを向上し、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0217】
(膜密度と酸化量の関係)
ここで、ALD法における成膜温度による膜密度の変化と酸化量との関係について確認した。具体的には、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光)のスペクトルを測定し、SiO
2のピーク強度から表面の酸化量を比較した。
【0218】
図33には、左から、液処理した検討例2の電荷蓄積膜EC101、液処理した本実施の形態の電荷蓄積膜EC11、液処理前の本実施の形態の電荷蓄積膜EC12a(未処理)、および、液処理した本実施の形態の電荷蓄積膜EC12aの各表面の酸化量の相対値を夫々示す。ここで、酸化量の相対値とは、液処理した検討例2の電荷蓄積膜EC101のXPSスペクトル中のSiO
2のピーク強度を1として、他のピーク強度と比較したものである。
【0219】
図33に示すように、液処理した電荷蓄積膜EC11の酸化量(
図33の左から2番目)が、液処理した電荷蓄積膜EC12a(
図33の右端)の酸化量に比べて小さくなっている。電荷蓄積膜EC12aを構成する窒化シリコン膜は、膜密度が高ければ高いほど、空隙や不純物が少なく、酸化されにくくなる。従って、
図33の結果は、電荷蓄積膜EC11を電荷蓄積膜EC12aよりも高い成膜温度で形成したことにより、電荷蓄積膜EC11が電荷蓄積膜EC12aよりも高い膜密度で形成されたことを反映している。
【0220】
一方で、上記結果から、電荷蓄積膜EC11は酸化されにくいため、電荷蓄積膜EC11の上面を液処理したとしても、絶縁膜IFEを十分に形成することができないということがわかる。
【0221】
なお、
図33に示すように、液処理した電荷蓄積膜EC12a(
図33の右端)の酸化量は、液処理した検討例2の電荷蓄積膜EC101の酸化量とほぼ同じである。従って、
電荷蓄積膜EC12aの膜密度は、検討例2の電荷蓄積膜EC101と同等であり、電荷蓄積膜EC12aの上面を液処理することによって、絶縁膜IFEを十分に形成することができるということがわかる。
【0222】
なお、
図33の右から2番目に、参考として液処理を行っていない電荷蓄積膜EC12aの値を示したが、XPS測定時に大気曝露したことにより、電荷蓄積膜EC12aの表面が多少酸化されたものと考えられる。
【0223】
<変形例の説明>
(変形例1)
変形例1は、上記実施の形態の電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの成膜条件に対する変形例である。
図34は、変形例1の半導体装置の製造方法において、ALD法による電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの成膜温度の時間変化を表すグラフである。
【0224】
上記実施の形態にあっては、同一のALD装置内で電荷蓄積膜EC11の形成(ステップS22)と電荷蓄積膜EC12aの形成(ステップS23)とを連続して行っている。それに対して、
図34に示すように、変形例1では、ステップS22において半導体基板SBに電荷蓄積膜EC11を形成した後に、一旦半導体基板SBをALD装置から搬出する。その後、半導体基板SBを同一のALD装置、または、別のALD装置に搬入し、ステップS23を行い、電荷蓄積膜EC12aを形成している。
【0225】
この際、ステップS22の後に搬出した半導体基板SBを、好ましくは窒素ガス等の不活性ガス中で保管した後に、ステップS23を行う装置に搬入することによって、電荷蓄積膜EC11の表面汚染を最小限に留めることもできる。
【0226】
但し、電荷蓄積膜EC11の表面汚染を防止し、電荷蓄積膜EC11とEC12aとの界面から不純物や空隙を排除するという観点から、本実施の形態のように、真空を破らずに電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aを連続形成することが好適である。
【0227】
(変形例2)
変形例2は、上記実施の形態および変形例1の電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの成膜条件に対する変形例である。ここでは、上記実施の形態の変形例として説明する。
【0228】
図35は、変形例2の半導体装置の製造方法において、ALD法による電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの成膜温度の時間変化を表すグラフである。
図36は、変形例2の半導体装置の製造方法において、ALD法による電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの成膜において、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスおよびアンモニア(NH
3)ガスの流量の時間変化を表すグラフである。
【0229】
上記実施の形態と同様に、電荷蓄積膜EC12aは、電荷蓄積膜EC11よりも膜密度(原子密度)の低い絶縁膜として形成する。そこで変形例2では、
図5に示す電荷蓄積膜EC11を成膜するステップS22と、電荷蓄積膜EC12aを成膜するステップS23とにおいて、成膜温度を一定にする代わりに、反応ガスの流量を変化させることとした。
【0230】
具体的には、
図35に示すように、ALD法による電荷蓄積膜EC11の成膜および電荷蓄積膜EC12aの成膜において、温度400℃〜600℃の任意の温度を選択し、その温度で一定となるようにする。
【0231】
その上で、
図36に示すように、ALD法による成膜において、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスの流量および供給時間を、電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aで等しくする一方で、電荷蓄積膜EC11では電荷蓄積膜EC12aに比べてアンモニア(NH
3)ガスの流量を多く、また、アンモニアガスの供給時間を長くする。
【0232】
その結果、半導体基板SB上に吸着したジクロロシランガスとアンモニアガスとの反応において、ジクロロシランガスにアンモニアガスが衝突しやすくなり、未反応のジクロロシランが減少するので、電荷蓄積膜EC11は、窒化シリコン膜としての膜密度が高くなる。
【0233】
従って、反応ガスの流量をコントロールすることにより膜密度を制御でき、電荷蓄積膜EC12aよりも膜密度の高い電荷蓄積膜EC11を形成することができる。
【0234】
なお、形成される膜の膜密度は、流量変化に比べて、温度変化による影響の方が大きい。従って、変形例2よりも、上記実施の形態の方が膜密度を制御性よく変化させることができる。
【0235】
(変形例3)
変形例3は、上記実施の形態、変形例1ならびに変形例2の電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの成膜条件に対する変形例である。ここでは、上記実施の形態の変形例として説明する。
【0236】
図37は、変形例3の半導体装置の製造方法において、ALD法による電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの成膜温度の時間変化を表すグラフである。
図38は、変形例3の半導体装置の製造方法において、ALD法による電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aの成膜において、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスおよびアンモニア(NH
3)ガスの流量の時間変化を表すグラフである。
【0237】
前述の通り、上記実施の形態では成膜温度を、変形例2では反応ガスの流量を、夫々変化させたが、成膜温度および反応ガスの流量の両方を変化させることもできる。従って、変形例3では、電荷蓄積膜EC11を成膜するステップS22と電荷蓄積膜EC12aを成膜するステップS23とでは、成膜温度および反応ガスの流量の両方を変化させている。
【0238】
具体的には、
図37に示すように、ALD装置に半導体基板SBを搬入し、半導体基板SBの温度を500℃〜600℃という条件下でALD法により窒化シリコン膜からなる電荷蓄積膜EC11を形成する(
図5のステップS22)。
【0239】
その後、半導体基板SBの温度を低下させ、400℃〜500℃という条件下で、ALD法により窒化シリコン膜からなる電荷蓄積膜EC12aを形成する(
図5のステップS23)。最後に、半導体基板SBの温度を低下させ、ALD装置から半導体基板SBを搬出する。
【0240】
ここで、
図38に示すように、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)ガスの流量および供給時間を、電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12aで等しくする一方で、電荷蓄積膜EC11では電荷蓄積膜EC12aに比べてアンモニア(NH
3)ガスの流量を多く、また、アンモニアガスの供給時間を長くする。
【0241】
その結果、電荷蓄積膜EC11の成膜時には、半導体基板SB上に吸着したジクロロシランガスとアンモニアガスとの反応において、ジクロロシランガスにアンモニアが衝突しやすく、また高温により反応しやすくなり、未反応のジクロロシランが減少し、窒化シリコン膜としての膜密度が高くなる。
【0242】
以上のように、成膜温度および反応ガスの流量の両方を変化させることで、形成される膜の膜密度をより制御性よく変化させることができる。従って、変形例3では、電荷蓄積膜EC12aよりも膜密度の高い電荷蓄積膜EC11を上記実施の形態および変形例2に比べてより効果的に制御性良く形成することができる。
【0243】
(変形例4)
変形例4は、上記実施の形態の電荷蓄積部ECPの構成に対する変形例である。
【0244】
図39は、変形例4の半導体装置の要部断面図のうち、ゲート絶縁膜GIMの周辺を拡大して示す拡大断面図である。
図40は、変形例4の半導体装置の書込状態におけるエネルギー分布を示すバンド図である。
図41は、変形例4の半導体装置の製造工程中の断面図である。
図42は、変形例4の半導体装置の要部断面図のうち、ゲート絶縁膜GIMの周辺を拡大して示す拡大断面図である。
【0245】
前述の通り、
図16に示す上記実施の形態では、電荷蓄積部ECPが、電荷蓄積膜EC11および電荷蓄積膜EC12からなる電荷蓄積膜EC1と、絶縁膜IFEと、電荷蓄積膜EC2とからなる。それに対して、
図39に示すように、変形例4の半導体装置では、電荷蓄積部ECP11が、電荷蓄積膜EC11と、絶縁膜IFEと、電荷蓄積膜EC2とからなり、電荷蓄積膜EC12を有しない構成となる。すなわち、絶縁膜IF1とIFEとの間に位置する電荷蓄積膜として、電荷蓄積膜EC12aよりも膜密度の高い窒化シリコン膜からなる電荷蓄積膜EC11のみが存在する。
【0246】
ここで、変形例4の半導体装置の製造方法について説明する。
図5に示すステップS24において、上記実施の形態では、絶縁膜IFEを電荷蓄積膜EC12aの一部(表層部)を酸化して絶縁膜IFEを形成する。一方、変形例4では電荷蓄積膜EC12aを全て酸化して絶縁膜IFEを形成する点が相違点である。
【0247】
具体的には、窒化シリコンからなる電荷蓄積膜EC12aの上面を液処理、すなわち湿式処理することにより、電荷蓄積膜EC12aの全部を酸化して、膜厚THIEを有する絶縁膜IFEを形成する。この際、絶縁膜IFEの下には、未酸化の電荷蓄積膜EC12aは残存せず、電荷蓄積膜EC11のみが存在する。
【0248】
このような液処理により形成される絶縁膜IFEの膜厚THIEは少なくとも1原子層以上に相当する大きさであって、0.1〜0.5nm程度である。従って、酸化処理前の電荷蓄積膜EC12aの膜厚THE12aを0.1〜0.5nmとすれば、酸化処理によって電荷蓄積膜EC12aが全て酸化される。
【0249】
すなわち、酸化処理前には電荷蓄積膜EC12aが存在する一方で、酸化処理後には、絶縁膜IF1と絶縁膜IFEとの間に位置する電荷蓄積膜として、電荷蓄積膜EC12aよりも膜密度の高い窒化シリコン膜からなる電荷蓄積膜EC11のみが存在する。
【0250】
以上より、変形例4では、絶縁膜IFEが、電荷蓄積膜EC11よりも膜密度の低い電荷蓄積膜EC12aを酸化することにより形成されているので、十分に酸化された絶縁膜IFEとして形成される。従って、上記実施の形態と同様に、絶縁膜IFEと電荷蓄積膜EC2との界面付近に形成される電子トラップ位置ET2の数を十分に確保することができ、データ保持特性を向上させることができる。
【0251】
また、上記実施の形態と同様に、電荷蓄積膜EC11の膜密度を高くしたことで、電荷蓄積膜EC11におけるエネルギー的に浅い電子トラップ位置を減らしたことにより、半導体基板SBに最も近い電荷蓄積膜EC11に捕獲された電子が、絶縁膜IF1を通過して、半導体基板SBへ漏れるといった事態を防止することができる。
【0252】
ここで、上記実施の形態では、電荷蓄積膜EC11よりも膜密度の低い電荷蓄積膜EC12が存在するため、電荷蓄積膜EC12に存在するエネルギー的に浅い電子トラップ位置に電子が捕獲され、半導体基板SBに漏れる可能性があった。一方、変形例4の半導体装置では電荷蓄積膜EC11よりも膜密度の低い電荷蓄積膜EC12が存在しないため、上記の可能性を排除することができる。従って、変形例4は、上記実施の形態よりも、データ保持特性をさらに向上させることができる。
【0253】
また、変形例4の半導体装置の製造方法にあっては、電荷蓄積膜EC12aを全て酸化して絶縁膜IFEを形成することから、電荷蓄積膜EC12aの膜厚THE12aに応じた絶縁膜IFEを形成することができる。具体的には、
図41に示すように、成膜する電荷蓄積膜EC12aの膜厚を変化させることで(
図41中左から
図41中右、
図5のステップS23)、電荷蓄積膜EC12aの膜厚と同じ膜厚の絶縁膜IFEを形成することができる(
図5のステップS24)。その結果、
図42に示すように、絶縁膜IFEの膜厚THIEを制御することができる(
図42中左から右)。
【0254】
またさらに、下層の電荷蓄積膜EC11は膜密度が高く、酸化されにくいため、液処理によって上層の電荷蓄積膜EC12aのみを選択的に酸化することができる。従って、電荷蓄積膜EC11および絶縁膜IFEを膜厚制御性良く形成することができる。
【0255】
以上より、変形例4の半導体装置の製造方法は、要求された特性に合わせて膜厚を設定しやすい。その結果、上記実施の形態に比して、データ保持特性を向上させやすい。
【0256】
(変形例5)
上記実施の形態の半導体装置の製造方法では、処理液として純水を用いて半導体基板SBを液処理することにより、電荷蓄積膜EC12aの上面を酸化し、絶縁膜IFEを形成したが、変形例5として、オゾン水、過酸化水素水を含む処理液を用いて半導体基板SBを液処理し、絶縁膜IFEを形成することもできる。変形例5の半導体装置の構造は、上記実施形態に係る半導体装置の構造と同様である。
【0257】
しかしながら、オゾン水や過酸化水素水は酸化力が大きいため、薄い絶縁膜IFEを制御性良く形成するためには、本実施の形態のように純水を用いた液処理を行うことが好ましい。