特許第6876510号(P6876510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876510
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】鉄骨造の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20210517BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20210517BHJP
   E04B 1/30 20060101ALN20210517BHJP
【FI】
   E04B1/24 L
   E04B1/58 508S
   E04B1/58 508P
   !E04B1/30 E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-95502(P2017-95502)
(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公開番号】特開2018-193676(P2018-193676A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】高谷 真次
(72)【発明者】
【氏名】原 健二
(72)【発明者】
【氏名】澤本 佳和
(72)【発明者】
【氏名】久保田 淳
(72)【発明者】
【氏名】中井 武
(72)【発明者】
【氏名】茜 絢也
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−226888(JP,A)
【文献】 特開昭62−072839(JP,A)
【文献】 特開2002−356910(JP,A)
【文献】 特開2004−169298(JP,A)
【文献】 特開2011−153412(JP,A)
【文献】 特開2002−364068(JP,A)
【文献】 特開2009−209592(JP,A)
【文献】 特開平04−106256(JP,A)
【文献】 特開平08−113983(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104912199(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104294921(CN,A)
【文献】 米国特許第06073405(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱部とダイアフラムとを有し、第1方向に沿って延びる柱と、
前記第1方向に交差する第2方向に沿って延びており、その一端が前記柱に固定されていると共に、前記第1方向に沿って互いに離間する上梁フランジ及び下梁フランジが梁ウェブによって互いに連結されている梁と、
前記第1方向における前記梁の前記上梁フランジの側及び前記下梁フランジの側の少なくとも一方側に設けられ、前記柱及び前記梁に固定されている補強部と、を備え、
前記補強部は、
前記第1方向及び前記第2方向を含む面に沿って広がっており、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に沿って配列されている複数の第1ウェブと、
前記第1方向に交差する面に沿って広がっているフランジと、を有し、
前記第1ウェブは、前記第1方向における前記梁側の第1端部と、前記第1方向における前記第1端部とは反対側の第2端部とを含み、
それぞれの前記第1ウェブの前記第1端部は、前記補強部が前記上梁フランジの側に配置されている場合に前記上梁フランジに溶接固定され、前記補強部が前記下梁フランジの側に配置されている場合に前記下梁フランジに溶接固定されており、
前記フランジは、それぞれの前記第1ウェブの前記第2端部に固定されると共に前記ダイアフラムに固定されている、鉄骨造の接合構造。
【請求項2】
前記第1ウェブは、前記第2方向における前記柱側の端部である基端部を有し、
前記基端部は、前記柱から離間する、請求項1に記載の鉄骨造の接合構造。
【請求項3】
前記梁は、前記第1方向に沿って延びる補強ウェブを、有し、
前記補強部は、前記第2方向における前記補強部の前記柱とは反対側の先端部を含み、
前記補強ウェブは、前記先端部に対応する位置に設けられる、請求項1又は2に記載の鉄骨造の接合構造。
【請求項4】
前記第1ウェブは、前記第2方向における前記第1ウェブの前記柱とは反対側の第3端部をさらに含み、
前記補強部は、
前記第2方向に交差する面に沿って広がっており、それぞれの前記第1ウェブの前記第3端部に固定されている第2ウェブ、を更に有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の鉄骨造の接合構造。
【請求項5】
前記フランジは、当該フランジに対応する前記ダイアフラムと一体的に形成されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の鉄骨造の接合構造。
【請求項6】
前記第1方向及び前記第2方向を含む面に沿って広がっている補強部材を、更に備え、
前記柱の内部には充填材が充填されており、
前記梁は、前記第1方向及び前記第2方向を含む面に沿って広がっており、その一端が前記柱に固定されているウェブを有しており、
前記補強部材は、前記柱の内部において、前記ウェブが固定された前記柱の内面に前記ウェブに対向するように固定されており、
前記補強部材には、複数の貫通孔が形成されており、前記貫通孔には前記充填材が充填されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の鉄骨造の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨造の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜5には、柱に梁が固定された鉄骨造の接合構造について開示されている。このような鉄骨造の接合構造においては、柱と梁との接合部に、柱が延びる方向及び梁が延びる方向を含む面に沿って広がる1枚のウェブが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−257005号公報
【特許文献2】特開2004−169298号公報
【特許文献3】特開2002−356910号公報
【特許文献4】特開2002−201719号公報
【特許文献5】特開平11−81460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような鉄骨造の接合構造が用いられるもの(例えば建物)が大規模になるに従って、柱と梁との接合部における許容荷重の向上が望まれている。また、接合部には、周期的なくりかえし荷重(特に長周期)といった種々の荷重にも耐えることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、柱と梁との接合部の耐荷重性を向上させ得る鉄骨造の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る鉄骨造の接合構造は、複数の柱部とダイアフラムとを有し第1方向に沿って延びる柱と、第1方向に交差する第2方向に沿って延びており、その一端が柱に固定されている梁と、第1方向における梁の少なくとも一方側に設けられ、柱及び梁に固定されている補強部と、を備え、補強部は、第1方向及び第2方向を含む面に沿って広がっており、第1方向及び第2方向に交差する第3方向に沿って配列されている複数の第1ウェブと、第1方向に交差する面に沿って広がっているフランジと、を有し、第1ウェブは、第1方向における第1ウェブの梁側の第1端部と、第1方向における第1端部とは反対側の第2端部とを含み、それぞれの第1ウェブの第1端部は、梁に固定されており、フランジは、それぞれの第1ウェブの第2端部に固定されると共にダイアフラムに固定されている。
【0007】
この鉄骨造の接合構造では、第1方向における梁の少なくとも一方側には、柱及び梁に固定されている補強部が設けられている。このため、梁が例えば第1方向に沿った荷重により撓もうとするときに、梁は補強部を介して柱に支えられる。つまり、補強部に掛かる荷重は、補強部を介して柱に伝わる。この鉄骨造の接合構造では、補強部が複数の第1ウェブを有しているため、荷重は各ウェブを介して柱に伝わる。すなわち、荷重は複数のウェブによって分散されながら柱に伝わる。従って、梁から柱に伝わる荷重が一箇所に集中しないので、柱と梁との接合部における最大応力が低減される。これにより、鉄骨造の接合構造は、接合部の耐荷重性が向上する。
【0008】
本発明の一形態に係る鉄骨造の接合構造では、梁は、第1方向に沿って延びる補強ウェブを、有し、補強部は、第2方向における補強部の柱とは反対側の先端部を含み、補強ウェブは、先端部に対応する位置に設けられてもよい。梁が補強部によって支持されるとき、梁は補強部から反力を受ける。この反力は、梁において、補強部の先端部に固定された箇所にて最も大きくなり得る。この構造によれば、先端部に対応する位置に補強ウェブが設けられているので、梁は補強部から受ける反力に充分に対抗することができる。これにより、接合部の耐荷重性がさらに向上する。
【0009】
本発明の一形態に係る鉄骨造の接合構造では、第1ウェブは、第2方向における第1ウェブの柱とは反対側の第3端部をさらに含み、補強部は、第2方向に交差する面に沿って広がっており、それぞれの第1ウェブの第3端部に固定されている第2ウェブ、を更に有してもよい。第2ウェブによれば、補強部の小口における剛性が高まる。従って、接合部の耐荷重性がいっそう向上する。
【0010】
本発明の一形態に係る鉄骨造の接合構造では、フランジは、当該フランジに対応するダイアフラムと一体的に形成されていてもよい。この構成によれば、より簡単な構成で、接合部の耐荷重性を向上させることができる。
【0011】
本発明の一形態に係る鉄骨造の接合構造は、第1方向及び第2方向を含む面に沿って広がっている補強部材を、更に備え、柱の内部には充填材が充填されており、梁は、第1方向及び第2方向を含む面に沿って広がっており、その一端が柱に固定されているウェブを有しており、補強部材は、柱の内部において、ウェブが固定された柱の内面にウェブに対向するように固定されており、補強部材には、複数の貫通孔が形成されており、貫通孔には充填材が充填されていてもよい。この構成によれば、補強部材は、梁のウェブが固定された柱の内面にウェブに対向するように固定されている。このため、梁が例えば第1方向に沿った荷重により撓むと、補強部材も柱を介して梁の撓みに伴って移動しようとする。そこで、補強部材は、充填材の中に埋もれており、更に、補強部材の貫通孔にも充填材が充填されている。このため、充填材による抵抗によって補強部材の移動が規制される。これにより、梁は、補強部材により支えられている。よって、この鉄骨造の接合構造によれば、柱と梁との接合部の強度がさらに向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、柱と梁との接合部において許容可能な荷重を向上させ得る鉄骨造の接合構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る鉄骨造の接合構造の斜視図である。
図2図1の鉄骨造の接合構造の平面図である。
図3図1の鉄骨造の接合構造の正面図である。
図4図1の部分拡大図である。
図5図1の鉄骨造の接合構造の側面図である。
図6図1の鉄骨造の接合構造の作用効果を説明する図である。
図7図1の鉄骨造の接合構造の変形例を示す図である。
図8図1の鉄骨造の接合構造の変形例を示す図である。
図9図1の鉄骨造の接合構造の変形例を示す図である。
図10図1の鉄骨造の接合構造の変形例を示す図である。
図11図1の鉄骨造の接合構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1に示されるように、鉄骨造の接合構造1は、柱2と、梁3と、鉛直ハンチ(補強部)4と、を備えている。柱2は、例えば鉛直方向(第1方向、Z軸方向)に沿って延びている。以下、柱2が延びる方向を柱方向と称する。梁3は、柱方向に交差する(ここでは、直交する)方向(第2方向、X軸方向)に沿って延びている。以下、梁3が延びる方向を梁方向と称する。梁3は、柱2に固定されている。鉛直ハンチ4は、柱2及び梁3の接合部に設けられている。以下、柱2、梁3、及び鉛直ハンチ4のそれぞれについて詳細に説明する。
【0016】
柱2は、複数の柱部21と、ダイアフラム22と、ガセットプレート23と、を有している。柱部21は、柱方向に沿って延びている。柱部21は、柱方向における両端が開口された四角形筒状を呈している。複数の柱部21は、柱方向に沿って配列されている。
【0017】
ダイアフラム22は、柱方向において互いに隣接する柱部21の間に配置されている。つまり、ダイアフラム22は、柱方向において互いに隣接する柱部21に挟まれている。ダイアフラム22は、互いに隣接する柱部21に固定されている。ダイアフラム22は、板状を呈している。ダイアフラム22は、柱方向に交差する(ここでは、直交する)面(X−Y面)に沿って広がっている。柱方向において互いに隣接するダイアフラム22間の距離は、700mm程度である。
【0018】
図2に示されるように、ダイアフラム22の外縁は、柱方向から見た場合に、四角形状を呈している。ダイアフラム22の外縁は、柱方向から見た場合に、柱部21の外縁を含んでいる。柱方向から見た場合に、ダイアフラム22の外縁と柱部21の外縁とは平行である。ダイアフラム22には、貫通孔22aが形成されている。ダイアフラム22の貫通孔22aは、柱方向から見た場合に、柱部21の内部に位置している。貫通孔22aは、柱方向から見た場合に、例えば円形状を呈している。以上のように構成された柱2は、中空状を呈している。柱2は、その内部に充填材25が充填されている。充填材25は、例えばコンクリートである。
【0019】
図3に示されるように、ガセットプレート23は、柱2の外面に固定されている。具体的には、ガセットプレート23は、板状を呈している。ガセットプレート23は、柱方向及び梁方向を含む面(X−Z面)に沿って広がっている。梁方向におけるガセットプレート23の基端部は、柱2の外面に固定されている。ガセットプレート23は、ダイアフラム22に固定されている。具体的には、柱方向におけるガセットプレート23の上端部及び下端部は、互いに隣接するダイアフラム22のそれぞれに固定されている。柱方向におけるガセットプレート23の幅は、梁方向におけるガセットプレート23の基端よりも先端が短くなっている。ガセットプレート23には、複数の貫通孔23aが形成されている。
【0020】
鉄骨造の接合構造1は、鋼板ジベル24(補強部材)を更に備えている。鋼板ジベル24は、柱2の内部において、柱2の内面21aに固定されている。鋼板ジベル24は、ガセットプレート23(及び後述する梁ウェブ31)が固定された柱2の内面21aに固定されている。具体的には、鋼板ジベル24は、板状を呈している。鋼板ジベル24は、柱方向及び梁方向を含む面に沿って広がっている。鋼板ジベル24は、柱方向に沿って延びている。鋼板ジベル24は、梁方向における基端部が柱2の内面21aに固定されている。鋼板ジベル24は、梁方向においてガセットプレート23(及び後述する梁ウェブ31)に対向するように固定されている。鋼板ジベル24には、複数の貫通孔24aが形成されている。複数の貫通孔24aは、柱方向に沿って配列されている。鋼板ジベル24は、充填材25の中に埋もれている。貫通孔24aにも充填材25が充填されている。
【0021】
図4に示されるように、梁3は、梁ウェブ31(ウェブ)と、上梁フランジ32と、下梁フランジ33と、補強ウェブ34と、を有している。梁ウェブ31は、板状を呈している。梁ウェブ31は、柱方向及び梁方向を含む面に沿って広がっている。梁ウェブ31は、梁方向に沿って延びている。柱方向における梁ウェブ31の幅は、互いに隣接しているダイアフラム22間の距離よりも短い。柱方向における梁ウェブ31の幅は、600mm程度である。梁ウェブ31の厚さは、12mm程度である。
【0022】
上梁フランジ32は、柱方向における梁ウェブ31の上端部に固定されている。下梁フランジ33は、柱方向における梁ウェブ31の下端部に固定されている。上梁フランジ32及び下梁フランジ33は、柱方向において互いに対向している。上梁フランジ32及び下梁フランジ33は、板状を呈している。上梁フランジ32及び下梁フランジ33は、柱方向に交差する面に沿って広がっている。上梁フランジ32及び下梁フランジ33は、梁方向に沿って延びている。柱方向及び梁方向に交差する(ここでは、直交する)横方向(第3方向、Y軸方向)における上梁フランジ32及び下梁フランジ33の幅は、250mm程度である。上梁フランジ32及び下梁フランジ33の厚さは、25mm程度である。このように、梁3は、H型の断面となるように構成されている。
【0023】
補強ウェブ34は、鉛直ハンチ4の先端部4a(後述する)に対応する位置に設けられている。つまり、補強ウェブ34は、梁方向において柱2から所定距離離れた位置に設けられている。図5に示されるように、補強ウェブ34は、梁方向から見た場合に、横方向における梁ウェブ31の両側に設けられている。補強ウェブ34は、板状を呈している。補強ウェブ34は、梁方向に交差する(ここでは、直交する)面(Y−Z面)に沿って広がっている。補強ウェブ34は、柱方向に沿って延びている。それぞれの補強ウェブ34は、横方向における梁ウェブ31側の端部が梁ウェブ31に固定されている。柱方向における補強ウェブ34の上端部は、上梁フランジ32に固定され、下端部は下梁フランジ33に固定されている。補強ウェブ34は、例えば溶接によって梁ウェブ31、上梁フランジ32及び下梁フランジ33に固定されている。
【0024】
再び図4に示されるように、梁方向における梁3の梁端3a(一端)は、柱2に固定されている。具体的には、梁3は、上梁フランジ32が、柱2のダイアフラム22に対向するように配置されている。梁方向における梁ウェブ31の基端31aは、横方向から見た場合に、ガセットプレート23と重なるように配置されている。そして、梁方向における梁ウェブ31の基端(一端)31aは、ガセットプレート23の貫通孔23aを介して、例えばボルトによってガセットプレート23に固定されている。つまり、梁ウェブ31の基端31aは、ガセットプレート23を介して、柱2の外面に固定されている。また、上梁フランジ32の柱2側の基端は、柱2のダイアフラム22に固定されている。上梁フランジ32は、例えば溶接によってダイアフラム22に固定されている。
【0025】
鉛直ハンチ4は、柱方向における梁3の下側に設けられている。鉛直ハンチ4は、一対の鉛直ハンチウェブ41(複数の第1ウェブ)と、鉛直ハンチフランジ43(フランジ)と、を有している。
【0026】
鉛直ハンチウェブ41は、横方向に沿って配列されている。鉛直ハンチウェブ41は、横方向において互いに対向している。鉛直ハンチウェブ41は、板状を呈している。鉛直ハンチウェブ41は、柱方向及び梁方向を含む面に沿って広がっている。梁方向から見た場合に、鉛直ハンチウェブ41は、横方向における梁ウェブ31の両側に配置されている。梁方向から見た場合に、鉛直ハンチウェブ41は、横方向において梁ウェブ31から同間隔離れている。
【0027】
鉛直ハンチウェブ41は、横方向から見た場合に、四角形状を呈している。鉛直ハンチウェブ41は、上端部41a(第1端部)と、下端部41b(第2端部)と、先端部41c(第3端部)と、基端部41d(第4端部)と、を含んでいる。上端部41aは、柱方向における鉛直ハンチウェブ41の梁3側の上辺である。下端部41bは、柱方向における上端部41aとは反対側の下辺である。先端部41cは、梁方向における鉛直ハンチウェブ41の柱2とは反対側の端部である。基端部41dは、梁方向における鉛直ハンチウェブ41の柱2側の端部である。
【0028】
鉛直ハンチフランジ43は、柱方向における鉛直ハンチウェブ41の梁3とは反対側に配置されている。鉛直ハンチフランジ43は、板状を呈している。鉛直ハンチフランジ43は、柱方向に交差する面に沿って広がっている。鉛直ハンチフランジ43は、鉛直ハンチウェブ41の下端部41bに固定されている。鉛直ハンチフランジ43は、例えば溶接によって鉛直ハンチウェブ41の下端部41bに固定されている。鉛直ハンチフランジ43は、梁方向における柱2側の基端部が、上述した上梁フランジ32が固定されたダイアフラム22に隣接しているダイアフラム22に対向している。
【0029】
ここで、鉛直ハンチ4は、先端部4aを含んでいる。この先端部4aは、鉛直ハンチウェブ41の先端部41cと鉛直ハンチフランジ43の先端部43cとを含む。先端部4aは、梁方向における鉛直ハンチ4の柱2とは反対側の端部である。鉛直ハンチ4の先端部4aは、梁方向において柱2から所定距離離れている。鉛直ハンチ4の先端部4aは、補強ウェブ34の位置に対応している。柱方向における鉛直ハンチ4の幅は、100mm程度である。梁方向における鉛直ハンチ4の幅は、300mm程度である。
【0030】
鉛直ハンチ4は、柱2及び梁3に固定されている。具体的には、鉛直ハンチフランジ43は、梁方向における柱2側の基端部がダイアフラム22に固定されている。鉛直ハンチフランジ43は、例えば溶接によってダイアフラム22に固定されている。なお、柱方向における鉛直ハンチフランジ43の梁側の面には、溶接する際に生じ得る溶融金属の梁側への浸入を抑制するための板49が設けられている。柱方向における上梁フランジ32と鉛直ハンチフランジ43との距離は、柱方向において互いに隣接するダイアフラム22間の距離と同じである。
【0031】
鉛直ハンチ4は、梁3に固定されている。より具体的には、鉛直ハンチウェブ41の上端部41aは、梁3に固定されている。更に具体的には、鉛直ハンチウェブ41の上端部41aは、梁3の下梁フランジ33に固定されている。鉛直ハンチウェブ41は、例えば溶接によって下梁フランジ33に固定されている。
【0032】
以上説明したように、鉄骨造の接合構造1では、柱方向における梁3の下側には、柱2及び梁3に固定されている鉛直ハンチ4が設けられている。このため、梁3が例えば柱方向に沿った荷重により撓もうとするときに、梁3は鉛直ハンチ4を介して柱2に支えられる。この際、鉛直ハンチ4に掛かる荷重は、鉛直ハンチ4の各部材に伝わって分散される。鉄骨造の接合構造1では、鉛直ハンチ4が一対の鉛直ハンチウェブ41を有しているため、鉛直ハンチ4が1枚の鉛直ハンチウェブを有している場合に比べて、鉛直ハンチ4に掛かる荷重がよりよく分散される。つまり、柱2と梁3との接合部における最大応力が低減される。これにより、接合部の耐荷重性を向上させることができる。
【0033】
また、鉛直ハンチ4が、柱方向における梁3の下側に設けられているため、縦配管との干渉を抑制することができる。これにより、縦配管の位置を変更する必要がなくなる。
【0034】
また、鉛直ハンチ4が、柱方向における梁3の下側に設けられているため、例えば、梁方向における柱2の梁3とは反対側にも他の梁が固定されている場合であって、梁3と当該他の梁との高さの差が所定値(例えば、150mm程度)よりも小さい場合であっても、新たなダイアフラム22を設ける必要がなくなる。これにより、鉛直ハンチ4だけで当該高さの差を処理することができる。また、コストを削減すると共に設計の自由度を広げることができる。また、全体の材料の量を下げることができる。
【0035】
以下、鉛直ハンチ4に掛かる荷重が分散される効果について詳細に説明する。図6の(a)に示されるように、比較例に係る鉄骨造の接合構造100は、鉛直ハンチ101を備えている。鉛直ハンチ101は、1枚の鉛直ハンチウェブ102を有している。鉄骨造の接合構造100において、梁103に柱方向に沿った荷重Nが掛かった場合に、この荷重Nは鉛直ハンチ101に伝わる。鉛直ハンチ101に伝わった荷重Nは、鉛直ハンチウェブ102を介して鉛直ハンチフランジ105まで分散される。図6の(a)のグラフG1は、横方向に沿った荷重の分布を概略的に示す。この際、横方向における鉛直ハンチウェブ102に掛かる荷重分布F1(グラフG1参照)は、鉛直ハンチウェブ102付近でピークに達し、鉛直ハンチウェブ102から離れると共に低下する。
【0036】
これに対して、本実施形態の鉄骨造の接合構造1では、図6の(b)に示されるように、鉛直ハンチ4は、一対の鉛直ハンチウェブ41を有している。同様に、鉄骨造の接合構造1において、梁3に柱方向に沿った荷重Nが掛かった場合には、この荷重Nは鉛直ハンチ4に伝わる。鉛直ハンチ4に伝わった荷重Nは、一対の鉛直ハンチウェブ41を介して鉛直ハンチフランジ43まで分散される。図6の(b)のグラフG2は、横方向に沿った荷重の分布を概略的に示す。この際、横方向における鉛直ハンチウェブ41に掛かる荷重分布F2(グラフG2参照)は、鉛直ハンチウェブ41付近でピークに達し、鉛直ハンチウェブ41から離れると共に低下する。すなわち、荷重Nの大きさが比較例(図6の(a))と同じであるとするならば、本実施形態においては、荷重分布F2のピークは、荷重分布F1のピークの半分になると予想される。従って、荷重分布F2のピーク値は、荷重分布F1のピーク値よりも小さい。このように、本実施形態の鉄骨造の接合構造1では、柱2と梁3との接合部に発生する最大荷重が低減される。
【0037】
また、鉄骨造の接合構造1では、梁3は、柱方向に沿って延びる補強ウェブ34を、有し、鉛直ハンチ4は、梁方向における鉛直ハンチ4の柱2とは反対側の先端部4aを含み、補強ウェブ34は、先端部4aに対応する位置に設けられている。この構造によれば、先端部41cに対応する位置に補強ウェブ34が設けられているので、梁3は鉛直ハンチ4から受ける反力に充分に対抗することができる。これにより、接合部の耐荷重性がさらに向上する。
【0038】
また、鉄骨造の接合構造1は、柱方向及び梁方向を含む面に沿って広がっている鋼板ジベル24を、更に備え、柱2の内部には充填材25が充填されており、梁3は、柱方向及び梁方向を含む面に沿って広がっており、その基端31aが柱2に固定されている梁ウェブ31を有しており、鋼板ジベル24は、柱2の内部において、梁ウェブ31が固定された柱2の内面21aに梁ウェブ31に対向するように固定されており、鋼板ジベル24には、複数の貫通孔24aが形成されており、貫通孔24aには充填材25が充填されている。この構成によれば、鋼板ジベル24は、梁3の梁ウェブ31が固定された柱2の内面21aに梁ウェブ31に対向するように固定されている。このため、梁3が例えば柱方向に沿った荷重により撓むと、鋼板ジベル24も柱2を介して梁3の撓みに伴って移動しようとする。そこで、鋼板ジベル24は、充填材25の中に埋もれており、更に、鋼板ジベル24の貫通孔24aにも充填材25が充填されている。このため、充填材25による抵抗によって鋼板ジベル24の移動が規制される。これにより、梁3は、鋼板ジベル24により支えられている。よって、鉄骨造の接合構造1によれば、柱2と梁3との接合部の強度が向上される。また、この構成によれば、梁ウェブ31の基端31aも曲げ耐力に寄与する。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0040】
例えば、図7に示されるように、変形例1に係る接合構造1Aは、鉛直ハンチ4Aを備えている。鉛直ハンチ4Aは、柱方向における梁3の上側に設けられていてもよい。また、変形例2に係る接合構造1Bは、鉛直ハンチ4,4Aを備えている。図8に示されるように、鉛直ハンチ4,4Aは、柱方向における梁3の両側に設けられていてもよい。つまり、鉛直ハンチは、柱方向における梁3の少なくとも一方側に設けられている。
【0041】
また、図9に示されるように、変形例3に係る接合構造1Cは、鉛直ハンチ4Cを備えている。鉛直ハンチ4Cは、鉛直ハンチウェブ44(第2ウェブ)を更に有していてもよい。具体的には、鉛直ハンチウェブ44は、板状を呈している。鉛直ハンチウェブ44は、梁方向に交差する面に沿って広がっている。鉛直ハンチウェブ44は、鉛直ハンチウェブ41の先端部41cに固定されている。鉛直ハンチウェブ44は、例えば溶接によって鉛直ハンチウェブ41の先端部41cに固定されている。鉛直ハンチウェブ44は、梁3に固定されている。具体的には、柱方向における鉛直ハンチウェブ44の上端部は、例えば溶接によって下梁フランジ33に固定されている。鉛直ハンチウェブ44は、鉛直ハンチフランジ43に固定されている。具体的には、鉛直ハンチウェブ44は、梁方向における鉛直ハンチフランジ43の柱2とは反対側の先端部に例えば溶接によって固定されている。鉛直ハンチウェブ44によれば、鉛直ハンチ4Cの小口における剛性が高まる。従って、接合部の耐荷重性がいっそう向上する。なお、鉛直ハンチウェブ44は、梁3及び鉛直ハンチフランジ43に固定されていなくてもよい。
【0042】
また、図10に示されるように、変形例4に係る接合構造1Dは、鉛直ハンチ4Dを備えている。鉛直ハンチ4Dは、縦ウェブ(第3ウェブ)45を更に有していてもよい。具体的には、縦ウェブ45は、板状を呈している。縦ウェブ45は、梁方向に交差する面に沿って広がっている。縦ウェブ45は、鉛直ハンチウェブ41の基端部41dに固定されている。縦ウェブ45は、例えば溶接によって鉛直ハンチウェブ41の基端部41dに固定されている。縦ウェブ45は、鉛直ハンチウェブ41の基端部41dに固定されている。縦ウェブ45は、例えば溶接によって鉛直ハンチウェブ441の基端部41dに固定されている。縦ウェブ45は、梁3に固定されている。具体的には、柱方向における縦ウェブ45の上端部は、下梁フランジ33に固定されている。縦ウェブ45は、例えば溶接によって下梁フランジ33に固定されている。縦ウェブ45は、鉛直ハンチフランジ43に固定されている。具体的には、縦ウェブ45は、梁方向における鉛直ハンチフランジ43の柱2側の基端部に固定されている。縦ウェブ45は、例えば溶接によって鉛直ハンチフランジ43に固定されている。この構成によれば、鉛直ハンチ4Dの小口における剛性がさらに高まる。従って、接合部の耐荷重性がいっそう向上する。なお、縦ウェブ45は、梁3及び鉛直ハンチフランジ43に固定されていなくてもよい。
【0043】
また、図11に示されるように、変形例5に係る接合構造1Eは、ダイアフラム22Aを備えている。ダイアフラム22Aは、鉛直ハンチフランジ43と、ダイアフラム22とが一体的に形成されたものであり、鉛直ハンチフランジ部22bと、ダイアフラム部22cとを含む。この構成によれば、より簡単な構成で、接合部の耐荷重性を向上させることができる。
【0044】
また、柱部21の形状は限定されない。柱部21は、例えば円筒状を呈していてもよい。また、ダイアフラム22の形状は限定されない。ダイアフラム22の外縁は、柱方向から見た場合に、例えば円形状を呈していてもよい。また、貫通孔22aの形状は限定されない。貫通孔22aは、柱方向から見た場合に、例えば四角形状を呈していてもよい。また、柱方向から見た場合に、ダイアフラム22の外縁は柱2の外縁を含まなくてもよい。柱方向から見た場合に、ダイアフラム22の外縁は柱2の外縁と一致していてもよい。また、柱方向から見た場合に、ダイアフラム22の外縁と柱部21の外縁とは平行でなくてもよい。また、充填材25の材料としては、コンクリート以外の様々の材料が採用されてもよい。
【0045】
また、柱2は、鉛直方向に沿って延びていなくてもよい。柱2は、鉛直方向に対して傾いた方向に沿って延びていてもよい。
【0046】
また、梁3は、柱方向に直交する方向に沿って延びていなくてもよい。梁3は、柱方向に対して傾いた方向に沿って延びていてもよい。
【0047】
また、柱2は、その内部に充填材25が充填されていなくてもよい。柱2は、その内部が中空でもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…鉄骨造の接合構造、2…柱、21…柱部、21a…内面、22…ダイアフラム、24…鋼板ジベル(補強部材)、24a…貫通孔、25…充填材、3…梁、3a…梁端、31…梁ウェブ、31a…基端、34…補強ウェブ、4…鉛直ハンチ(補強部)、4a…先端部、41…鉛直ハンチウェブ(第1ウェブ)、41a…上端部(第1端部)、41b…下端部(第2端部)、41c…先端部(第3端部)、41d…基端部(第4端部)、43…鉛直ハンチフランジ(フランジ)、44…鉛直ハンチウェブ(第2ウェブ)、45…縦ウェブ(第3ウェブ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11