(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リング状の保持部材と、該保持部材を挾み両側に該保持部材と同心に配設されたリングギアと、前記保持部材の両側に該保持部材と前記リングギアとの間に前記保持部材と同心に配設されたベアリングと、前記リングギアの中央部に該リングギアと一体に設けられた偏向光学部材と、前記リングギアそれぞれに対応して設けられた偏向モータと、該偏向モータの回転力を前記リングギアに伝達する駆動伝達手段とを具備し、前記ベアリングの外輪が前記保持部材、前記リングギアのいずれか一方に形成された外輪嵌合部と嵌合固定され、前記ベアリングの内輪が前記保持部材、前記リングギアのいずれか他方に形成された内輪嵌合部と嵌合固定され、両側の前記リングギアがそれぞれ独立して回転可能に前記保持部材に支持され、前記各偏向モータにより前記リングギアと一体に前記偏向光学部材を独立して回転可能とした偏向装置。
前記リングギアの前記保持部材に対向した面にリング状の溝が形成され、該溝の内縁部が前記保持部材側に突出し、前記内輪嵌合部を形成し、前記保持部材外縁が前記リングギア側に突出し、前記外輪嵌合部を形成した請求項1に記載の偏向装置。
前記リングギアの前記保持部材に対向した面にリング状の溝が形成され、該溝の外縁部が前記保持部材側に突出し、前記外輪嵌合部を形成し、前記保持部材内縁が前記リングギア側に突出し、前記内輪嵌合部を形成した請求項1に記載の偏向装置。
前記リングギアがタイミングプーリであり、前記偏向モータの出力軸に駆動タイミングプーリが設けられ、前記リングギアと前記駆動タイミングプーリ間にタイミングベルトが設けられ、前記リングギアは前記タイミングベルトを介し前記偏向モータによって回転される請求項1〜請求項3に記載の偏向装置。
測距光を発する発光素子と、前記測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光する受光部と、前記反射測距光を受光し、受光信号を発生する受光素子とを有し、該受光素子からの前記受光信号に基づき測定対象物の測距を行う測距部と、測距光軸上に設けられ、該測距光軸を偏向する光軸偏向部と、前記測距光軸の偏角を検出する射出方向検出部と、前記光軸偏向部の偏向作用及び前記測距部の測距作用を制御する演算制御部とを具備し、前記光軸偏向部は、請求項1〜請求項6のいずれか1つであり、前記演算制御部は、前記射出方向検出部が検出した偏角に基づき前記測定対象物の水平角、鉛直角を測定し、前記測距部からの距離値及び前記水平角、鉛直角から、前記測定対象物の3次元座標を求める様構成した測量機。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0018】
先ず、
図1に於いて、本発明に係る偏向装置を具備する測量機1について説明する。
【0019】
前記測量機1は、支持装置としての三脚2を介して設置される。図中、Oは前記測量機1の光軸を示しており、更に光軸が偏向されていない状態(基準光軸)を示している。又、
図1中、7はターゲット又は測定対象物としてのプリズムを示し、該プリズム7はポール8の所定位置(例えば、下端から既知の距離)に設けられている。
【0020】
前記測量機1は、回転台5を介して前記三脚2に取付けられている。前記回転台5は、レバー6を有し、該レバー6の操作により、前記測量機1を上下方向(鉛直方向)、又は横方向(水平方向)に回転させることができ、又所要の姿勢で固定することも可能となっている。
【0021】
図2により前記測量機1について説明する。
【0022】
前記測量機1は、測距光射出部11、受光部12、測距演算部13、撮像部14、射出方向検出部15、モータドライバ16、姿勢検出部17、通信部18、演算制御部19、記憶部20、撮像制御部21、画像処理部22、表示部25を具備し、これらは筐体9に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部11、前記受光部12、前記測距演算部13等は測距部30を構成する。
【0023】
前記測距光射出部11は射出光軸26を有し、該射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、前記射出光軸26上に偏向光学部材としての第1反射鏡29が設けられ、受光光軸31上に偏向光学部材としての第2反射鏡32が設けられ、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32とによって、前記射出光軸26は、前記受光光軸31と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡29と前記第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。
【0024】
前記発光素子27はパルスレーザ光線を発し、前記測距光射出部11は、前記発光素子27から発せられたパルスレーザ光線を測距光23として射出する。
【0025】
前記受光部12について説明する。該受光部12には、測定対象物(即ち、プリズム7)からの反射測距光24が入射する。前記受光部12は、前記受光光軸31を有し、該受光光軸31には、上記した様に、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32によって偏向された前記射出光軸26が合致する。尚、該射出光軸26と前記受光光軸31とが合致した状態を測距光軸40とする(
図1参照)。
【0026】
偏向された前記射出光軸26上に、即ち前記受光光軸31上に光軸偏向部35が配設される。該光軸偏向部35の中心を透過する真直な光軸は、前記基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部35によって偏向されなかった時の前記射出光軸26又は前記受光光軸31と合致する。
【0027】
前記光軸偏向部35を透過し、入射した前記受光光軸31上に結像レンズ34が配設され、又受光素子33、例えばフォトダイオード(PD)が設けられている。前記結像レンズ34は、前記反射測距光24を前記受光素子33に結像する。
【0028】
前記測距光射出部11より発せられた前記測距光23は、前記光軸偏向部35によって測定対象物に向って偏向され、前記プリズム7に照射される。
【0029】
該プリズム7で反射された反射測距光24は前記光軸偏向部35により前記受光光軸31と合致する様に偏向され、前記受光部12に入射する。
【0030】
前記反射測距光24は前記結像レンズ34によって、前記受光素子33に結像する。該受光素子33は前記反射測距光24を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部13に入力される。該測距演算部13は、受光信号に基づき測定点迄の測距を行う。
【0031】
前記撮像部14は、前記測量機1の前記基準光軸Oと平行な撮像光軸38を有し、前記光軸偏向部35による最大偏角(例えば±20゜)より大きい画角、例えば50°の画角を有するカメラであり、前記測量機1の測定範囲を含む画像データを取得する。前記撮像光軸38と前記射出光軸26及び前記基準光軸Oとの位置関係は既知となっている。又、前記撮像部14は、動画像、又は連続画像が取得可能である。
【0032】
前記撮像部14の撮像素子39は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸38を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。
【0033】
前記射出方向検出部15は、前記光軸偏向部35による前記測距光軸40の偏向角、偏向方向を検出し、検出結果は前記演算制御部19に入力する。
【0034】
前記モータドライバ16は、前記演算制御部19からの制御信号に基づき、前記光軸偏向部35の偏向動作を行うモータ(後述)の駆動を行う。
【0035】
前記姿勢検出部17は、前記測量機1(前記筐体9)の水平に対する傾斜を検出し、検出信号を前記演算制御部19に入力する。尚、該姿勢検出部17としては、特許文献4に開示された姿勢検出部を使用することができる。
【0036】
前記通信部18は、リモートコントローラ(図示せず)により遠隔操作を行う場合は、リモートコントローラとのデータ通信を可能とするものである。
【0037】
前記記憶部20には、前記撮像部14で取得した画像、前記測距演算部13からの測距データ、前記射出方向検出部15で取得される射出方向のデータ、偏向角のデータ、前記姿勢検出部17で検出される傾斜データ等のデータ類が格納される。
【0038】
又、前記記憶部20には、測定を実行する為の測定シーケンスプログラム、前記光軸偏向部35の射出方向を演算する為のプログラム、前記姿勢検出部17からの傾斜検出結果に基づき測距データを補正する為の補正プログラム等の各種プログラムが格納されている。
【0039】
前記演算制御部19は、前記撮像部14、前記測距部30、前記光軸偏向部35等の作動を制御すると共に前記記憶部20に格納されているプログラムに基づき測距を実行し、画像処理を行い、射出方向の偏角を演算し、測距結果の補正を行う。
【0040】
前記撮像制御部21は、前記撮像部14の撮像を制御する。前記撮像制御部21は、前記撮像部14が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、該動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと前記測量機1で測定するタイミングとの同期を取っている。前記演算制御部19は画像と測距データとの関連付けも実行する。
【0041】
前記表示部25は、前記撮像部14により取得した画像を表示し、測定状況、測距データ等を表示する。尚、該表示部25はタッチパネルとされ、操作部としても機能する。
【0042】
前記光軸偏向部35について説明する。
【0043】
前記光軸偏向部35は、1対のプリズム偏向盤36a,36b及び該プリズム偏向盤36a,36bを個別に回転する偏向モータ37a,37bを有する。
【0044】
前記プリズム偏向盤36a,36bは平行であり、該プリズム偏向盤36a,36bの軸心は、前記基準光軸Oと合致し、前記プリズム偏向盤36a,36bは前記基準光軸Oを中心に回転する。
【0045】
前記プリズム偏向盤36a,36bそれぞれは偏向光学部材(後述)として、平行に配列された複数の棒状の光学プリズムを有している。全ての光学プリズムは断面が3角形(楔形状)のガラスの光学部材であり、同一の屈折特性を有している。
【0046】
前記プリズム偏向盤36a,36bそれぞれの回転位置、該プリズム偏向盤36a,36b間の相対回転角によって、前記プリズム偏向盤36a,36bを透過する前記測距光軸40の偏向方向、偏向角が決定される。従って、前記プリズム偏向盤36a,36bそれぞれの回転位置を制御することで、前記測距光軸40を任意の位置にある測定対象物に向けることができ、測定対象物の測距、測角を行うことができる。
【0047】
更に、前記測距光23を射出しつつ、前記プリズム偏向盤36a,36bを個別に回転すれば、前記測距光23を任意のパターンでスキャンさせることができ、パルス毎に測距を行えば、スキャン軌跡に沿って点群データを取得することができ、レーザスキャナとして測定を行うこともできる。
【0048】
図3〜
図6を参照して、前記光軸偏向部35を具体的に説明する。
【0049】
リング形状の保持部材41の左右両側に前記プリズム偏向盤36a,36bが設けられる。
【0050】
先ず、前記プリズム偏向盤36aについて説明する。
【0051】
前記保持部材41には、両側からベアリング嵌合孔42が穿設され、内周の中央に断面矩形のベアリング受け凸部43が形成され、外輪嵌合部が形成される。又、前記保持部材41の外周には、取付け用フランジ44が形成されている。
【0052】
前記ベアリング嵌合孔42にベアリング45が嵌合され、該ベアリング45の外輪が前記ベアリング受け凸部43に当接する。該外輪の外周面は前記ベアリング嵌合孔42の内周面と接着され、該外輪の側面は、前記ベアリング受け凸部43の側面と接着され、前記ベアリング45の外輪は前記保持部材41に固定される。
【0053】
リングギア46が前記保持部材41と同心に、且つ該保持部材41と対向して配設される。前記リングギア46は、外周面にギア歯が刻設されたタイミングプーリとなっている。前記リングギア46の前記保持部材41側の側面(内側面)には、前記リングギア46と同心の円環溝が刻設され、該円環溝の内縁は、内輪嵌合部を形成する。更に、該内輪嵌合部は、前記ベアリング45の内輪と嵌合する軸部47となっている。又、前記ベアリング45の外輪の周囲には、隙間48が形成され、前記リングギア46は前記ベアリング45の外輪とは非接触となっている。
【0054】
前記軸部47は前記ベアリング45の内輪に接着され、該内輪と前記リングギア46とは固定され、一体に回転する様になっている。
【0055】
前記リングギア46に円環溝を刻設することで、前記リングギア46の内縁がリング状に突出する。更に、内縁を前記軸部47とすることで、前記リングギア46に別途軸部を形成することなく、即ち、前記リングギア46の軸長(厚み)を増すことなく、前記リングギア46をベアリング45によって回転自在に支持することができる。更に、前記ベアリング45の一部が前記円環溝に収納されるので、前記プリズム偏向盤36aの軸長(厚み)を極めて短くすることができる。
【0056】
前記ベアリング45の内輪の内部に、偏向光学部材が設けられる。該偏向光学部材は、奇数の複数本(図示では3本)の光学プリズム50,51,52から構成される。該光学プリズム50,51,52は、紙面に対して垂直方向に延出する棒状の光学部材であり、3本の光学プリズム50,51,52は平行に配設される。又、前記光学プリズム50,51,52の材質は一般的に光学ガラスが用いられる。
【0057】
前記光学プリズム50,51,52が集合した外形形状は、前記ベアリング45の内輪に嵌合する円形状となっている。又前記光学プリズム50,51,52のそれぞれは、前記軸部47の端面、又は前記ベアリング45の内輪に接着され又は、前記軸部47の端面と前記ベアリング45の内輪の両方に接着され、前記光学プリズム50,51,52は前記リングギア46と一体化される。
【0058】
前記光学プリズム50,51,52を前記ベアリング45の内輪に直接嵌合する構造であるので、前記光学プリズム50,51,52の厚みの一部が、前記ベアリング45の厚みに吸収される。従って、前記光学プリズム50,51,52を含む前記プリズム偏向盤36aの軸長を極めて短くすることができる。
【0059】
前記光学プリズム50,51,52の数、大きさについては、特に制限はないが、前記プリズム偏向盤36aの軸心、即ち基準光軸Oが通過する中央の光学プリズム51については、前記測距光23の光束が分割されない様、前記光学プリズム51の幅(
図6(A)に於いて高さ)が前記測距光23の光束の直径より大きいことが好ましい。
【0060】
又、前記リングギア46の内径については、充分な光量の前記反射測距光24が得られる様に設定される。
【0061】
尚、上記説明では、光学プリズムの材質を光学ガラスとしたが、前記測距光23が透過する中央部分のみを光学ガラスとし、前記反射測距光24が入射する他の部分は合成樹脂材料のフレネルレンズで構成してもよい。
【0062】
前記取付け用フランジ44の前記プリズム偏向盤36a側の側面(図中、左側面)にはモータ基板55が固着され、該モータ基板55に前記偏向モータ37aが取付けられる。
【0063】
該偏向モータ37aの出力軸56に駆動タイミングプーリ57が固着される。該駆動タイミングプーリ57と前記リングギア46とにタイミングベルト58が掛回される。前記駆動タイミングプーリ57は前記リングギア46に対して小径となっている。
【0064】
前記取付け用フランジ44は、前記光軸偏向部35を支持する為の構造部材に固定される。例えば、前記筐体9に固定される。従って、前記保持部材41は構造部材に支持され、前記プリズム偏向盤36a,36bはそれぞれ前記ベアリング45,45を介して前記保持部材41に回転自在に支持される。
【0065】
前記偏向モータ37aを駆動すると、前記出力軸56を介して前記駆動タイミングプーリ57が回転され、該駆動タイミングプーリ57の回転は、前記リングギア46に伝達される。更に、前記駆動タイミングプーリ57は前記リングギア46に対して小径であり、回転は減速して伝達される。
【0066】
前記プリズム偏向盤36bの構成は、前記プリズム偏向盤36aと対称の構成であるので、以下、説明を省略する。更に、
図3、
図4では、前記偏向モータ37a,37b、前記駆動タイミングプーリ57は、光軸偏向部の軸心に対して180°の位置に設けられているが、他の部材に干渉しない位置であればよく、90°の位置でも60°の位置でもよい。
【0067】
以上述べた如く、前記プリズム偏向盤36aは前記取付け用フランジ44に対して回転自在に支持され、同様に前記プリズム偏向盤36bも前記取付け用フランジ44に回転自在に支持される。従って、前記プリズム偏向盤36a,36bは相互に干渉されることなく、自在に回転し得る。
【0068】
前記偏向モータ37a,37bとしては、回転角度の制御が行えるモータが使用される。例えば、パルスモータが用いられ、駆動パルス数を制御することで回転を制御し、又回転角をパルス数によって検出する。或は、前記偏向モータ37a,37bにエンコーダを取付け、エンコーダからの検出信号に基づき回転角、回転速度等を制御してもよい。
【0069】
前記偏向モータ37a,37bを個別に制御することで、前記プリズム偏向盤36a,36bを個別に任意の方向に、任意の回転速度で回転することができ、前記測距光軸40を任意の方向に、任意の速さで偏向することができる。
【0070】
前記タイミングベルト58による回転の伝達は、ギア同士を直接噛合させた場合に比べバックラッシが少なく、更に前記駆動タイミングプーリ57と前記リングギア46間は減速されているので、前記偏向モータ37aによる回転駆動の分解能、回転精度は高められる。
【0071】
更に、上記した様に前記光軸偏向部35による最大偏角を±10゜と設定した場合、1つのプリズム偏向盤36aでは180゜の回転で最大の偏角量は20゜となる。従って、前記プリズム偏向盤36aの回転誤差は、偏角の誤差にすると1/9となる。従って、高精度で偏角の制御が行える。
【0072】
尚、前記リングギア46を回転させる為の駆動伝達手段として、タイミングプーリ、タイミングベルトを用いたが、タイミングプーリ、タイミングベルトに代え、前記リングギア46にピニオンギアを噛合させ、駆動伝達手段とし、ギア結合により、前記ピニオンギアにより直接前記リングギア46を回転させる様にしてもよい。この場合も、バックラッシ等の誤差の影響が減少するので高精度の偏角精度が得られる。
【0073】
前記光軸偏向部35の作用について説明する。
【0074】
前記演算制御部19は、前記偏向モータ37a,37bの回転方向、回転速度、前記偏向モータ37a,37b間の回転比を制御すること、前記偏向モータ37a,37bを正逆回転すること等で、前記光軸偏向部35による多様な偏向作用を制御することができる。
【0075】
前記射出方向検出部15は、前記偏向モータ37a,37bに入力する駆動パルスをカウントすることで、前記偏向モータ37a,37bの回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記偏向モータ37a,37bの回転角を検出する。又、前記射出方向検出部15は、前記偏向モータ37a,37bの回転角に基づき、前記プリズム偏向盤36a,36bの回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部15は、前記光学プリズム50,51,52の屈折率と前記プリズム偏向盤36a,36bの回転位置とに基づき、各パルス光毎の測距光の偏角、射出方向を演算し、演算結果は測距結果に関連付けられて前記演算制御部19に入力される。
【0076】
又、前記測距光23の偏角、射出方向から測定点の水平角、鉛直角を演算し、測定点について、水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、測定対象物の3次元データを求めることができる。
【0077】
更に、前記偏向モータ37a,37bの駆動の制御で、回転速度を変えて回転すること、正逆回転すること等、前記プリズム偏向盤36a,36bを連続的に回転させつつ前記測距光23を射出させることで多様なスキャン態様で、該測距光23のスキャンを実行できる。
【0078】
前記光軸偏向部35の偏向作用、スキャン作用について、
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)を参照して説明する。
【0079】
尚、
図6(A)、
図6(B)、
図6(C)に於いて、プリズム偏向盤36aの光学プリズムについては、符号を50a,51aとし、プリズム偏向盤36bの光学プリズムについては、符号を50b,51bとする。
【0080】
尚、
図6(A)では説明を簡略化する為、前記プリズム偏向盤36a,36bについて、前記光学プリズム50,52と前記光学プリズム51とを分離して示している。又、
図6(A)は、前記プリズム偏向盤36aの光学プリズム50a,51aと前記プリズム偏向盤36bの光学プリズム50b,51bが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏角(例えば、±20゜)が得られる。又、最小の偏角は、前記プリズム偏向盤36a,36bのいずれか一方が180゜回転した位置であり、前記プリズム偏向盤36a,36b間で前記光学プリズム50a,51aと50b,51bの相互の光学作用が相殺され、偏角は0゜となる。従って、該プリズム偏向盤36a,36bを経て射出、受光されるパルスレーザ光線の光軸(前記測距光軸40)は前記基準光軸Oと合致する。
【0081】
前記発光素子27から前記測距光23が発せられ、該測距光23は前記投光レンズ28で平行光束とされ、前記光学プリズム51a,51bを透過して前記プリズム7に向けて射出される。又、前記光学プリズム51a,51bによって所要の方向に偏向されて射出される(
図6(A))。
【0082】
前記プリズム7で反射された前記反射測距光24は、前記光学プリズム50a,50b,52a,52bを透過して入射され、前記結像レンズ34により前記受光素子33に集光される。
【0083】
前記反射測距光24が前記光学プリズム50a,50b,52a,52bを透過することで、前記反射測距光24の光軸は、前記受光光軸31と合致する様に偏向される(
図6(A))。
【0084】
前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bの回転位置の組合わせにより、射出する測距光の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
【0085】
又、前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとの位置関係を固定した状態で、前記偏向モータ37a,37bにより、前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとを一体に回転すると、前記光学プリズム51a,51bを透過した測距光が描く軌跡は前記測距光軸40を中心とした円となる。
【0086】
従って、前記発光素子27よりレーザ光線を発光させつつ、前記光軸偏向部35を回転させれば、前記測距光23を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、前記プリズム偏向盤36a,36bは一体に回転していることは言う迄もない。
【0087】
次に、
図6(B)は前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとを相対回転させた場合を示している。前記プリズム偏向盤36aにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記プリズム偏向盤36bにより偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記プリズム偏向盤36a,36bによる光軸の偏向は、該プリズム偏向盤36a,36b間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
【0088】
従って、前記プリズム偏向盤36aとプリズム偏向盤36bとを逆向きに同期して等速度で往復回転させた場合、前記プリズム偏向盤36a,36bを透過した測距光は、直線状にスキャンされる。従って、前記プリズム偏向盤36aと前記プリズム偏向盤36bとを逆向きに等速度で往復回転させることで、
図6(B)に示される様に、測距光を合成偏向C方向に直線の軌跡で往復スキャンさせることができる。
【0089】
更に、
図6(C)に示される様に、前記プリズム偏向盤36aの回転速度に対して遅い回転速度で前記プリズム偏向盤36bを回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ測距光が回転されるので、測距光のスキャン軌跡は、スパイラル状となる。
【0090】
又、前記プリズム偏向盤36a、前記プリズム偏向盤36bの回転方向、回転速度を個々に制御することで、測距光のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心とした照射方向(半径方向のスキャン)とし、或は水平、垂直方向とする等、種々のスキャンパターンが得られる。
【0091】
前記測距光23をスキャンさせる過程で、各パルス毎に測距データ、測角データを取得すれば、点群データが取得でき、本実施例の測量機1をレーザスキャナとして使用することができる。
【0092】
図1に示す様に、前記光軸偏向部35により光軸を偏向し、前記測距光軸40を前記プリズム7に視準させ、視準した時の測距を行い、視準方向を前記射出方向検出部15で測定すれば、前記測量機1をトータルステーションの機能で使用することができる。
【0093】
更に、本実施例では、ポール8を移動し、別の測定点に設置した場合の前記プリズム7の視準については、前記プリズム偏向盤36a,36bの回転だけでよく、前記測量機1の回転は必要ない。従って、瞬時に他の測定点への視準が可能である。
【0094】
又、本実施例では、測距光軸を水平、鉛直の2方向に高速で偏向可能であり、任意のパターンで高速で連続したスキャンが可能であり、更にスキャンパターンの変更により、スキャン密度の変更、スキャン中に特定の測定点へ光軸を固定すること等多様な測定が可能である。
【0095】
前記光軸偏向部35については種々変更が可能である。
【0096】
図7は、該光軸偏向部35の他の実施例を示している。
【0097】
該他の実施例では、保持部材41を挾み、プリズム偏向盤36aとプリズム偏向盤36bが設けられる構造は同じであるが、他の実施例ではベアリング45の内輪を保持部材41に固定し、前記ベアリング45の外輪をリングギア46に固定している。
【0098】
前記保持部材41はリング状に形成され、孔の内縁がそれぞれ前記プリズム偏向盤36a,36b側に突出し、軸部61を形成し、該軸部61は前記ベアリング45の内輪と嵌合する内輪嵌合部となっている。該内輪嵌合部は、前記内輪と接着され、該内輪に固定されている。
【0099】
前記リングギア46の内側面には、円環溝62が刻設される。該円環溝62の外縁はリング状の突条63となっており、該突条63は前記ベアリング45の外輪と嵌合する外輪嵌合部となっている。該外輪嵌合部と前記ベアリング45の外輪とは接着により固定されている。尚、前記円環溝62は、内径側が深溝となっており、前記ベアリング45の内輪とは接触しない様になっている。
【0100】
前記円環溝62の内縁64は、内側に更に突出し、該内縁64には、光学プリズム50,51,52が接着等によって固定されている。
【0101】
従って、前記リングギア46は前記保持部材41に対して自在に回転可能であり、更に、前記偏向モータ37aにより駆動タイミングプーリ57、タイミングベルト58を介して前記リングギア46が回転され、前記光学プリズム50,51,52は前記リングギア46と一体に回転される。
【0102】
而して、前記プリズム偏向盤36aは前記偏向モータ37aによって独立して回転され、前記プリズム偏向盤36bは前記偏向モータ37bによって独立して回転される。
【0103】
他の実施例に於いても、前記プリズム偏向盤36a,36bを個別に回転制御することで、任意のパターンで高速で連続したスキャンが可能であり、更にスキャンパターンの変更により、スキャン密度の変更、スキャン中に特定の測定点へ光軸を固定すること等多様な測定が可能である。
【0104】
如上の如く、本実施例に於ける前記光軸偏向部35では、部品点数を少なくでき、安価に製造できる。更に小型、薄型であることから、ハンディタイプの測定機器への応用も可能である。