(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876523
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】建物の施工管理支援システム、建物の施工管理支援方法、および建物の施工管理支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20210517BHJP
G06Q 10/06 20120101ALI20210517BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q10/06
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-103157(P2017-103157)
(22)【出願日】2017年5月24日
(65)【公開番号】特開2018-198019(P2018-198019A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】長沼 大輔
(72)【発明者】
【氏名】友近 利昭
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 ▲高▼志
【審査官】
塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−050098(JP,A)
【文献】
特開2014−211710(JP,A)
【文献】
特開平09−026995(JP,A)
【文献】
特開2015−088141(JP,A)
【文献】
特開2001−262829(JP,A)
【文献】
特開2016−211260(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0074608(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0050871(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の施工管理を支援する建物の施工管理支援システムであって、
前記建物を構成する各部材について、位置、形状、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日を設定するとともに、施工管理の基準となる基準日として設定する設定手段と、
前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工完了日以後のものを、前記基準日において施工が完了している施工完了部材として抽出する施工完了部材抽出手段と、
前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日以後で前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工開始予定日以後で前記施工完了予定日よりも前のものを、前記基準日において予定通りに順調に施工中である施工順調部材として抽出する施工順調部材抽出手段と、
前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日以後で前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工開始予定日よりも前のものを、前記基準日において予定を繰り上げて施工中である施工繰上部材として抽出する施工繰上部材抽出手段と、
前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日よりも前でかつ前記施工開始予定日以後のものを抽出して、前記基準日において施工が遅延している施工遅延部材とするとともに、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工完了予定日以後のものを、前記基準日において施工が遅延している施工遅延部材として抽出する施工遅延部材抽出手段と、
前記施工完了部材、前記施工順調部材、施工繰上部材、および前記施工遅延部材を、三次元の仮想空間上に立体的かつ視覚的に互いに識別可能に表示する表示手段と、を備えることを特徴とする建物の施工管理支援システム。
【請求項2】
前記設定手段は、前記各部材について、当該部材を構築するのに必要な施工費を設定し、
前記施工完了部材の施工費の総額を、出来高として算出する出来高算出手段をさらに備え、
前記表示手段は、当該出来高を表示することを特徴とする請求項1に記載の建物の施工管理支援システム。
【請求項3】
建物の施工管理を支援する建物の施工管理支援方法であって、
前記建物を構成する各部材について、位置、形状、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日を設定する第1の手順と、
施工管理の基準となる基準日を設定する第2の手順と、
前記各部材のうち前記基準日において施工が完了しているものを施工完了部材として抽出するとともに、前記各部材のうち前記基準日において予定通りに順調に施工中であるものを施工順調部材として抽出し、前記各部材のうち前記基準日において予定を繰り上げて施工中であるものを施工繰上部材として抽出し、前記各部材のうち前記基準日において施工が遅延しているものを施工遅延部材として抽出する第3の手順と、
前記施工完了部材、前記施工順調部材、前記施工繰上部材、および前記施工遅延部材を、三次元の仮想空間上に立体的かつ視覚的に互いに識別可能に表示する第4の手順と、を備え、
前記第3の手順では、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工完了日以後のものを抽出して、施工完了部材とし、
前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日以後で前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工開始予定日以後で前記施工完了予定日よりも前のものを抽出して、施工順調部材とし、
前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日以後で前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工開始予定日よりも前のものを抽出して、施工繰上部材とし、
前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日よりも前でかつ前記施工開始予定日以後のものを抽出して、施工遅延部材とするとともに、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工完了予定日以後のものを抽出して、施工遅延部材とすることを特徴とする建物の施工管理支援方法。
【請求項4】
前記第1の手順では、前記各部材について、当該部材を構築するのに必要な施工費を設定し、
前記第3の手順では、前記施工完了部材の施工費の総額を出来高として算出し、
前記第4の手順では、当該出来高を表示することを特徴とする請求項3に記載の建物の施工管理支援方法。
【請求項5】
建物の施工管理を支援する建物の施工管理支援プログラムであって、
コンピュータに、
請求項3または4に記載の建物の施工管理支援方法を実行させることを特徴とする建物の施工管理支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の施工管理を支援する建物の施工管理支援システム、建物の施工管理支援方法、および建物の施工管理支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、三次元の仮想空間上に建物のデジタルモデルを作成し、この建物を構成する部材に名称、形状、仕様などの属性情報を紐付けることで、建物の設計や施工を支援する、BIM(Building Information Modeling)が知られている。
特許文献1では、ベース図面とこのベース図面に割り当てる割り当て図面とのそれぞれについて、通り芯の検索範囲を設定してその範囲内について通り芯を検索するステップS1〜S8と、ベース図面および割り当て図面の縮尺や縦横比を考慮して、ベース図面および割り当て図面の通り芯同士が一致するように、座標軸の位置調整を行なうステップS9と、を備える施工情報管理方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−118535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、建物を構成する部材に建物の工程や施工費についての情報が紐付けられておらず、建物構築の進捗状況を把握することが困難であった。
【0005】
本発明は、建物構築の進捗状況を容易に把握できる、建物の施工管理支援システム、建物の施工管理支援方法、および建物の施工管理支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の建物の施工管理支援システムは、建物の施工管理を支援する建物の施工管理支援システム(例えば、後述の建物の施工管理支援システム1)であって、前記建物(例えば、後述の建物30)を構成する各部材について、位置、形状、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日を設定するとともに、施工管理の基準となる基準日として設定する設定手段(例えば、後述の設定手段10)と、前記各部材のうち前記基準日において施工が完了しているものを、施工完了部材(例えば、後述の施工完了部材31)として抽出する施工完了部材抽出手段(例えば、後述の施工完了部材抽出手段11)と、前記各部材のうち前記基準日において予定通りに順調に施工中であるものを、施工順調部材(例えば、後述の施工順調部材32)として抽出する施工順調部材抽出手段(例えば、後述の施工順調部材抽出手段12)と、前記各部材のうち前記基準日において予定を繰り上げて施工中であるものを、施工繰上部材(例えば、後述の施工繰上部材33)として抽出する施工繰上部材抽出手段(例えば、後述の施工繰上部材抽出手段13)と、前記各部材のうち前記基準日において施工が遅延しているものを、施工遅延部材(例えば、後述の施工遅延部材34)として抽出する施工遅延部材抽出手段(例えば、後述の施工遅延部材抽出手段14)と、前記施工完了部材、前記施工順調部材、施工繰上部材、および前記施工遅延部材を、三次元の仮想空間上に立体的かつ視覚的に互いに識別可能に表示する表示手段(例えば、後述の表示手段16)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、建物を構成する各部材の名称、位置、形状の情報については、例えば、設定手段により、三次元の仮想空間上において建物を立体的に設計できるBIM(Building Information Modeling)ソフトウエアから取り込んで設定してもよい。
また、建物を構成する各部材の施工費、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日などの情報については、例えば、設定手段により、建物の工程管理を支援するソフトウエアから取り込んで設定してもよい。
また、表示手段として、例えば、BIM(Building Information Modeling)ソフトウエアを用いて、三次元の仮想空間上に部材の位置や形状を立体的に表示してもよい。
【0008】
この発明によれば、基準日を設定することで、この基準日において施工が完了している施工完了部材、基準日において予定通りに順調に施工中である施工順調部材、基準日において予定を繰り上げて施工中である施工繰上部材、および、基準日において施工が遅延している施工遅延部材が、三次元の仮想空間上に立体的かつ視覚的互いに識別可能に表示される。よって、建物構築の進捗状況を視覚的に容易に把握でき、施工管理が容易となる。
【0009】
請求項
1に記載の建物の施工管理支援システムは、前記施工完了部材抽出手段は、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工完了日以後のものを抽出して、施工完了部材とし、前記施工順調部材抽出手段は、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日以後で前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工開始予定日以後で前記施工完了予定日よりも前のものを抽出して、施工順調部材とし、前記施工繰上部材抽出手段は、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日以後で前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工開始予定日よりも前のものを抽出して、施工繰上部材とし、前記施工遅延部材抽出手段は、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日よりも前でかつ前記施工開始予定日以後のものを抽出して、施工遅延部材とするとともに、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工完了予定日以後のものを抽出して、施工遅延部材とすることを特徴とする。
【0010】
請求項
2に記載の建物の施工管理支援システムは、前記設定手段は、前記各部材について、当該部材を構築するのに必要な施工費を設定し、前記施工完了部材の施工費の総額を、出来高として算出する出来高算出手段(例えば、後述の出来高算出手段15)をさらに備え、前記表示手段は、当該出来高を表示することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、施工完了部材の施工費の総額を出来高として算出して表示したので、建物構築の進捗状況を視覚的だけではなく、金額面でも容易に把握できる。
【0012】
請求項
3に記載の建物の施工管理支援方法は、建物の施工管理を支援する建物の施工管理支援方法であって、前記建物を構成する各部材について、位置、形状、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日を設定する第1の手順(例えば、後述のステップS1)と、施工管理の基準となる基準日を設定する第2の手順(例えば、後述のステップS2)と、前記各部材のうち前記基準日において施工が完了しているものを施工完了部材として抽出するとともに、前記各部材のうち前記基準日において予定通りに順調に施工中であるものを施工順調部材として抽出し、前記各部材のうち前記基準日において予定を繰り上げて施工中であるものを、施工繰上部材として抽出し、前記各部材のうち前記基準日において施工が遅延しているものを施工遅延部材として抽出する第3の手順(例えば、後述のステップS3)と、前記施工完了部材、前記施工順調部材、前記施工繰上部材、および前記施工遅延部材を、三次元の仮想空間上に立体的かつ視覚的に互いに識別可能に表示する第4の手順(例えば、後述のステップS4)と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、請求項1と同様の効果がある。
【0014】
請求項
3に記載の建物の施工管理支援方法は、前記第3の手順では、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工完了日以後のものを抽出して、施工完了部材とし、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日以後で前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工開始予定日以後で前記施工完了予定日よりも前のものを抽出して、施工順調部材とし、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日以後で前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工開始予定日よりも前のものを抽出して、施工繰上部材とし、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工開始日よりも前でかつ前記施工開始予定日以後のものを抽出して、施工遅延部材とするとともに、前記各部材のうち、前記基準日が前記実際の施工完了日よりも前でかつ前記施工完了予定日以後のものを抽出して、施工遅延部材とすることを特徴とする。
【0015】
請求項
4に記載の建物の施工管理支援方法は、前記第1の手順では、前記各部材について、当該部材を構築するのに必要な施工費を設定し、前記第3の手順では、前記施工完了部材の施工費の総額を出来高として算出し、前記第4の手順では、当該出来高を表示することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、請求項
2と同様の効果がある。
【0017】
請求項
5に記載の建物の施工管理支援プログラムは、建物の施工管理を支援する建物の施工管理支援プログラムであって、コンピュータに、上述の建物の施工管理支援方法を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建物構築の進捗状況を容易に把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建物の施工管理支援システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】前記実施形態に係る建物の施工管理支援システムが適用される建物の各部材について、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日の時系列のパターン(その1)である。
【
図3】前記実施形態に係る建物の各部材について、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日の時系列のパターン(その2)である。
【
図4】前記実施形態に係る建物の施工管理支援システムの表示装置であるモニタ画面の一例である。
【
図5】前記実施形態に係る建物の施工管理支援システムの表示装置であるモニタ画面の別の例である。
【
図6】前記実施形態に係る建物の施工管理支援システムにより建物の施工管理の支援を行う手順のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る建物の施工管理支援システム1の構成を示すブロック図である。
建物の施工管理支援システム1は、建物の施工管理作業を支援するものである。この建物の施工管理支援システム1は、入力装置2、表示装置3、演算処理装置4、および記憶装置5を備える。
【0021】
入力装置2は、演算処理装置4に情報を入力する装置であり、キーボードやマウスのほか、タッチパネルなどがある。
表示装置3は、入力装置2で入力された情報や演算処理装置4から出力された情報を表示する装置であり、例えばモニタである。
【0022】
記憶装置5は、種々の情報を記憶する装置であり、例えばハードディスクである。
演算処理装置4は、コンピュータであり、記憶装置5に記憶されたプログラムを読み出して、動作制御を行うOS(Operating System)上に展開して実行するものである。
【0023】
演算処理装置4は、設定手段10、施工完了部材抽出手段11、施工順調部材抽出手段12、施工繰上部材抽出手段13、施工遅延部材抽出手段14、出来高算出手段15、および表示手段16を備える。
【0024】
設定手段10は、建物を構成する各部材について、名称、位置、形状、当該部材を構築するのに必要な施工費、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日を設定し、記憶装置5に記憶させる。
また、設定手段10は、入力装置2により特定の日にちが入力されると、この日にちを施工管理の基準となる基準日として設定して、記憶装置5に記憶させる。
【0025】
施工完了部材抽出手段11は、各部材のうち基準日において施工が完了しているものを、施工完了部材として抽出する。具体的には、施工完了部材抽出手段11は、各部材のうち、基準日が実際の施工完了日以後のものを抽出して、施工完了部材とする。
【0026】
例えば、各部材について、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日を時系列に並べると、
図2および
図3に示すように、パターンA、パターンB、パターンC、パターンD、パターンE、パターンFの6通りがある。
図2および
図3のパターンA〜Fに示すように、基準日が実際の施工完了日以後となる場合、当該部材は施工完了部材となる。
【0027】
施工順調部材抽出手段12は、各部材のうち基準日において、予定通りに順調に施工中であるものを、施工順調部材として抽出する。
【0028】
具体的には、施工順調部材抽出手段12は、各部材のうち、基準日が実際の施工開始日以後で実際の施工完了日よりも前で、かつ、施工開始予定日以後で施工完了予定日よりも前のものを抽出して、施工順調部材とする。これは、基準日において施工中であり、かつ、予定された施工期間中であれば、施工が順調であると判定するものである。
例えば、
図2および
図3のパターンA、C、D、Fに示すように、基準日が実際の施工開始日以後で実際の施工完了日よりも前でかつ施工開始予定日以後で施工完了予定日よりも前となる場合、当該部材は施工順調部材となる。
【0029】
施工繰上部材抽出手段13は、各部材のうち基準日において、予定を繰り上げて施工中であるものを、施工繰上部材として抽出する。
【0030】
具体的には、施工繰上部材抽出手段13は、各部材のうち、基準日が実際の施工開始日以後で実際の施工完了日よりも前で、かつ、施工開始予定日よりも前のものを抽出して、施工繰上部材とする。これは、基準日において施工中であり、かつ、予定された施工期間よりも前であれば、予定を繰り上げて早期に施工していると判定するものである。
例えば、
図2および
図3のパターンD〜Fに示すように、基準日が実際の施工開始日以後で実際の施工完了日よりも前でかつ施工開始予定日よりも前となる場合、当該部材は施工繰上部材となる。
【0031】
施工遅延部材抽出手段14は、各部材のうち基準日において施工が遅延しているものを、施工遅延部材として抽出する。
【0032】
具体的には、施工遅延部材抽出手段14は、各部材のうち、基準日が実際の施工開始日よりも前でかつ施工開始予定日以後のものを抽出して、施工遅延部材とする。これは、基準日において、施工開始予定日が経過しているにもかかわらず、実際の施工が開始されておらず、未着手であるため、遅延していると判定するものである。
例えば、
図2のパターンA〜Cに示すように、基準日が実際の施工開始日よりも前でかつ施工開始予定日以後となる場合、当該部材は施工遅延部材となる。
【0033】
また、施工遅延部材抽出手段14は、各部材のうち、基準日が実際の施工完了日よりも前でかつ施工完了予定日以後のものを抽出して、施工遅延部材とする。これは、基準日において、施工完了予定日が経過しているにもかかわらず、実際の施工が完了していないため、遅延していると判断するものである。
例えば、
図2および
図3のパターンA、B、Fに示すように、基準日が実際の施工完了日よりも前でかつ施工完了予定日以後となる場合、当該部材は施工遅延部材となる。
【0034】
出来高算出手段15は、施工完了部材の施工費の合計額を出来高として算出する。
表示手段16は、施工完了部材、施工順調部材、施工繰上部材、および施工遅延部材を、表示装置3に表示するとともに(
図4および
図5参照)、出来高も表示するものである。具体的には、表示手段16は、施工完了部材、施工順調部材、施工繰上部材、および施工遅延部材を、三次元の仮想空間上に立体的かつ視覚的に互いに識別可能に表示する。
【0035】
例えば、
図4は、表示装置3であるモニタの画面20の一例である。
この画面20の右側には、3階建ての建物30が三次元の仮想空間上に立体的に表示されている。具体的には、建物30の1階床、1階柱、2階梁、2階床、2階柱、および3階梁は、施工完了部材31であり、実線で表示されている。また、建物30の3階床は、施工順調部材32であり、実線で表示されて斜線でハッチングされている。また、建物30の3階柱は、施工遅延部材34であり、破線で表示されている。
【0036】
また、画面20の左上には、基準日(2016年7月23日)が表示されている。
また、画面20の左上には、施工遅延部材34である3階柱が未着手であること、施工順調部材32である3階床が順調に施工中であること、施工完了部材31である3階梁が施工完了であることが示されている。
また、画面20の左上には、基準日における出来高も表示されている。
【0037】
また、画面20の左下には、3階柱、3階床、3階梁について、それぞれ、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、実際の施工完了日、施工費が示されている。
この画面20を見るだけで、基準日において、3階柱の構築が遅延していることが理解可能となっている。
【0038】
また、例えば、
図5は、表示装置3であるモニタの画面20の別の例である。
この画面20の右側には、3階建ての建物30が三次元の仮想空間上に立体的に表示されている。具体的には、建物30の1階床、1階柱、2階梁、2階床、2階柱、および3階梁は、施工完了部材31であり、実線で表示されている。また、建物30の3階床は、施工順調部材32であり、実線で表示されて斜線でハッチングされている。また、建物30の3階柱は、施工繰上部材33であり、実線で表示されてドットでハッチングされている。
【0039】
また、画面20の左上には、基準日(2016年7月23日)が表示されている。
また、画面20の左上には、施工遅延部材34である3階柱が繰り上げて施工中であること、施工順調部材32である3階床が順調に施工中であること、施工完了部材31である3階梁が施工完了であることが示されている。
また、画面20の左上には、基準日における出来高も表示されている。
【0040】
また、画面20の左下には、3階柱、3階床、3階梁について、それぞれ、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、実際の施工完了日、施工費が示されている。
この画面20を見るだけで、基準日において、3階柱の構築が繰り上げて施工していることが理解可能となっている。
【0041】
以上の建物の施工管理支援システム1により建物の施工管理の支援を行う手順について、
図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0042】
まず、ステップS1では、設定手段10により、建物を構成する各部材について、名称、位置、形状、施工費、施工開始予定日、施工完了予定日、実際の施工開始日、および実際の施工完了日を設定して、記憶装置5に記憶させる。
【0043】
ステップS2では、設定手段10により、施工管理の基準となる基準日を設定する。
ステップS3では、施工完了部材抽出手段11により、基準日において施工が完了している施工完了部材を抽出する。また、施工順調部材抽出手段12により、基準日において順調に施工中である施工順調部材を抽出する。また、施工繰上部材抽出手段13により、基準日において予定を繰り上げて早期に施工中である施工繰上部材を抽出する。また、施工遅延部材抽出手段14により、基準日において施工が遅延している施工遅延部材を抽出する。また、出来高算出手段15により出来高を算出する。
【0044】
ステップS4では、表示手段16により、施工完了部材、施工順調部材、施工繰上部材、および施工遅延部材を、三次元の仮想空間上に立体的かつ視覚的に互いに識別可能に表示する。また、表示手段16により、出来高を表示する。
【0045】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)基準日を設定することで、この基準日において施工が完了している施工完了部材31、基準日において順調に施工している施工順調部材32、基準日において繰り上げて施工している施工繰上部材33、および、基準日において施工が遅延している施工遅延部材34が、モニタの画面20に視覚的互いに識別可能に表示される。よって、建物30の構築の進捗状況を視覚的に容易に把握でき、施工管理が容易となる。
【0046】
(2)施工完了部材の施工費の総額である出来高を算出して、モニタの画面20にこの出来高を表示したので、建物30の構築の進捗状況を視覚的だけではなく、金額面でも容易に把握できる。
【0047】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、施工完了部材、施工順調部材、および施工遅延部材を、実線や破線で表示したり、ハッチングとして斜線やドットを用いることで、視覚的に互いに識別可能に表示したが、これに限らず、各部材を、表示色を異ならせたり半透明で表示したりすることで、視覚的に互いに識別可能に表示してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…建物の施工管理支援システム 2…入力装置 3…表示装置
4…演算処理装置 5…記憶装置
10…設定手段 11…施工完了部材抽出手段 12…施工順調部材抽出手段
13…施工繰上部材抽出手段 14…施工遅延部材抽出手段 15…出来高算出手段
16…表示手段 20…モニタの画面
30…建物 31…施工完了部材 32…施工順調部材
33…施工繰上部材 34…施工遅延部材