【実施例1】
【0026】
図4は打撃エネルギーと地表面沈下量の事例の説明図、
図5は同事例の締固めエネルギーと沈下ひずみの関係を示す説明図である。
【0027】
実際の締固めエネルギーと沈下量の関係として、埋立地盤での重錘落下締固め工法の事例(土質工学会、粗粒材料の現場締固めの評価に関するシンポジューム1990.11の「表−5 地盤改良による地表面沈下量」参照)がある。
【0028】
【表1】
【0029】
表1に示すように、事例にて施工された重錘落下締固め工法やバイブロタンパー工法の沈下ひずみは10%程度である。
【0030】
ここでは、締固めエネルギーが300tm/m
2で沈下量が127cmの例(
図4)を取り上げる。改良対象層厚が10mであるので、1m
3当たり30tm/m
3で、沈下ひずみは0.127となる。実験で得られた小型土槽と中型土槽の締固めエネルギーと沈下ひずみのデータと、事例のデータを表2に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示す小型土槽を用いた実験では、直径600mmの塩化ビニル製の土槽の中央に拡径装置(直径114mm程度)を設置し、その周囲に厚さ400mmの飽和砂層を造成し、その後ランマー(JIS A1210)により規定回数の衝撃力を加え、砂面の沈下量を計測した。落下回数500回の平均沈下量は25mmであり、沈下ひずみ(沈下量/対象層厚)は0.062(6.2%)程度になった。
【0033】
また、中型土槽を用いた実験では、直径1000mmの鋼製土槽の中央に拡径装置を備えた鋼管(直径100mm)を埋め込み、その周囲に厚さ800mmの飽和砂層を造成した。その後10cmごと鋼管を引き抜いてランマー(JIS A1210)により規定回数の衝撃力を加え、最終的に鋼管を引き抜いた。各段階で砂面の沈下量を計測した。沈下形状を考慮した体積換算から平均沈下量を算出した結果、11mmとなり、沈下ひずみ(沈下量/対象層厚)は0.014(1.4%)が得られた。
【0034】
次に、事例にて施工された工法の仕様設定方法(設計方法)を説明する。
(1)横軸に締固めエネルギー(振動及ランマーの落下等による衝撃締固め)をとり、縦軸に沈下ひずみ(沈下量/対象層厚)をとり、表2に示すデータをプロットする。プロットすると、
図5に示すようになり、締固めエネルギーの増加により沈下ひずみも増大していることが判る。
(2)地盤ごと(岩砕地盤・砂礫地盤、砂地盤(粗砂・細砂)、細粒分の多い地盤)に概略の範囲で回帰線を引く。
(3)
図3に示すように、締固めの対象地盤が、どの種類に入るかを確認し、必要な改良率(=置換率)a
Sを設定する。
【0035】
改良率a
Sは、原理的に沈下ひずみ(沈下量S/層厚H)と同等、即ち、原地盤の間隙比をe
0、改良後の間隙比をe
1とすれば、(1+e
0)の体積の地盤にΔe=e
0−e
1に相当する砂・砕石等を圧入して、締め固めるので、改良率(置換率)a
Sは、a
S=Δe/(1+e
0)で与えられ、また、沈下ひずみ(S/H)は、S/H=Δe/(1+e
0)であり、よって、改良率a
Sは、沈下ひずみ(S/H)と同等であるので、(2)で設定した回帰線から、所定の沈下を発生させるための締固めエネルギーが求まる。
【0036】
つまり、沈下ひずみS/H=Δe/(1+e
0)が改良率(置換率)a
Sと同義であることを利用して、材料を圧入しない「一次締固め」と、材料を圧入する「二次締固め」の改良率a
Sを連動させることを基本とした設計手法であって、(2)で設定した回帰線から、所定の沈下を発生させるための締固めエネルギーを求める。
(4)この締固めエネルギーを満足させるために、振動エネルギー或いは衝撃エネルギーの仕様(振動であれば振動時間、衝撃であればランマーの落下高さや回数、打設のピッチ等)を決定する。
(5)この仕様で一次締固めを行い、所定の沈下量を満足できるかを確認する。
(6)所定の沈下量を満足できない場合は、さらに増し打ちを行う。或いは、二次締固めにおいて、改良率を少し増加させる。
(7)その後で、材料砂の圧入を伴う二次締固めを実施する。
【0037】
図5に示すように、締固めエネルギーと沈下ひずみの関係を見ると、材料砂の圧入を伴わない衝撃締固めにおいては、沈下ひずみは最大10%程度であり、先端に設置した衝撃付与装置で締固めを行った場合の沈下ひずみ(沈下量/対象層厚)は、締固めエネルギーが相対的に小さいことにより、2〜6%程度である。材料砂の圧入を伴う二次締固めの前に、このような一次締固めを行うことで、その後に施工する圧入締固めの変位を低減できると共に、改良率を低減することも可能である。
【実施例2】
【0038】
実施例2は、例えば、φ150mmのケーシング内部に重さ40kgの重錘を0.3m落下させ、その衝撃をケーシング側面に設置した載荷板で地盤中に衝撃を与える事例である。
【0039】
この場合の締固めエネルギーE
Cは、Proctor(プロクター)の定義より、次式(1)で表される。
【0040】
E
C=W
R・H・N
B・N
L/V …式(1)
ここで、E
Cは1m
3当りの締固めエネルギーであり、W
Rは重錘の質量(40kg=400N)であり、Hは落下高さ(30cm=0.3m)であり、N
Bは1層当りの打撃回数(例えば30回)であり、N
Lは層の数(深度2mを15cmずつ締固めで、例えば14回)であり、Vは体積(1m×1m×深度2m=2m
3)である。
【0041】
即ち、この実施例2における締固めエネルギーE
Cは、
E
C=400
N×0.3
m×(30×14)回/2m
3
=25200(m・N/m
3)=25.2m・kN/m
3=25.2(Jk/m
3)
そして、実施例1の
図5において、例えば、沈下ひずみ0.03を達成するためには、1m
2当りで24kJ/m
3が必要となる。これにより、
図6に示すように、1m
2当り、1本を打設する必要があり、そのピッチは、1.0mとなる。