特許第6876537号(P6876537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876537ステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876537
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/12 20060101AFI20210517BHJP
   C03C 8/04 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C03C3/12
   C03C8/04
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-119594(P2017-119594)
(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2019-1692(P2019-1692A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091834
【弁理士】
【氏名又は名称】室田 力雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
【審査官】 大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−110975(JP,A)
【文献】 特表2016−513370(JP,A)
【文献】 特開2016−103547(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102898024(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0162727(US,A1)
【文献】 特開平10−029834(JP,A)
【文献】 特開2010−057893(JP,A)
【文献】 特開2005−052208(JP,A)
【文献】 特開2008−024558(JP,A)
【文献】 特開2015−048287(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101164942(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%表示で、
TeO :40〜60%、
Bi :4〜25%、
WO :4〜25%、
ZnO :2〜25%、
MgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で0〜20%、
を含有し、且つPbO、Vを含有しないことを特徴とするステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物。
【請求項2】
質量%表示で、
TeO :45〜60%、
Bi :4〜20%、
WO :4〜20%、
ZnO :2〜20%、
MgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で0〜10%、
を含有し、且つPbO、Vを含有しないことを特徴とする請求項1に記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物。
【請求項3】
質量%表示で、
TeO :48〜55%、
Bi :10〜18%、
WO :8〜18%、
ZnO :2〜15%、
MgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で2〜5%、
を含有し、且つPbO、Vを含有しないことを特徴とする請求項2に記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物。
【請求項4】
質量%表示で、
LiO、NaO、KOの内の少なくとも1種以上を合計で7%以下含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物。
【請求項5】
質量%表示で、
、Alの内の少なくとも1種以上を合計で10%以下含有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物。
【請求項6】
質量%表示で、
CuO、CoOの内の少なくとも1種以上を合計で10%以下含有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温での封着に使用される封着用ガラス組成物に関するものであり、更に詳しくは、魔法瓶、携帯用保温ボトル、ランチジャー等のステンレス鋼製真空二重容器を低温で真空封着でき、真空を良好に保持できる封着用ガラス組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステンレス製真空二重容器の作製は、ステンレス製の二重容器を真空炉にて加熱しながら、排気孔より内外容器間のガスを真空排気する、いわゆる脱ガス処理を実施した後、更に高温処理して排気孔に設置したガラスをフローさせ、排気孔を塞ぐ、いわゆる封着処理を実施することによりなされている。
真空封着には真空炉を使用する必要がある。しかし真空炉における伝熱は輻射のみであり、一般的に温度の炉内ばらつきが大きくなる傾向にある。
また封着処理の前に脱ガス処理として300〜320℃の温度にて約90分間保持する必要がある。しかし、この際ガラス中に結晶の核が発生し、封着処理の際に前記核を中心として結晶析出が促進される傾向にあり、結晶析出が促進されるとフロー性が悪化する。結晶析出促進の傾向は、脱ガス温度が高く、脱ガス時間が長いほど顕著となるので、脱ガス中の温度の炉内ばらつきにより、結晶析出の度合い、ひいてはフロー性にばらつきが生じる。
また封着処理中の温度、時間も結晶析出の度合い、フロー性に影響する。そして封着処理中の温度ばらつきも封着性能に大きく影響を及ぼす。よって封着性能のばらつきを抑制するには、ガラスを結晶析出し難くすると共に、低融化させることなどが必要となる。
従来から、例えばSUS304を使用したステンレス鋼製真空二重容器の真空封着には、ステンレス鋼の鋭敏化を防ぐため、低温にて封着可能な鉛ガラスが用いられている。
しかしながら、鉛ガラスは鉛成分を主成分とするため、人体、環境、その他の点において悪影響を持つので、鉛成分を含まないガラスが望まれている。
このような経緯から、近年、鉛ガラスの代替として、ビスマス系ガラスを適用させようとする試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−128574号公報
【特許文献2】特開2006−321665号公報
【特許文献3】特開2008−24558号公報
【特許文献4】特開平10−29834号公報
【特許文献5】特開2015−44728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、封着用途として500℃以下の温度で焼成可能なビスマス系ガラス組成物が開示されている。
しかしながら特許文献1に開示されているガラス組成物は、選択した組成によって非結晶性のガラスであったり、結晶性のガラスとなったりするため、安定性に欠け、ガラスのフロー性に課題が生じ得る。
特許文献2には、500℃まで結晶化ピークが発生しないビスマス系無鉛ガラス組成物が開示されている。また特許文献3には、金属製真空二重容器の真空封着用に適したビスマス系の封着用無鉛ガラス組成物が開示されている。
しかしながら特許文献2、3で開示されているガラス組成物は、TeOを含んでいないため、Bi量を多くして低融化をした場合、結晶化に改善すべき問題がある。
特許文献4には、TeO−WO−ZnO系ガラスが開示されている。
しかしながら、この特許文献4のガラスにはアルカリ金属、酸化ビスマスが含まれておらず、低融化に改善すべき問題がある。
特許文献5には、やはりTeO系ガラスが開示されている。
しかしながら、この特許文献5のガラスには、WOが含まれておらず、結晶化及び低融化に改善すべき問題がある。
【0005】
そこで本発明は上記した従来技術の問題点を解消し、脱ガス及び真空封着等の焼成時において結晶析出が少なく、ステンレス鋼製真空二重容器の真空封着を550℃以下の低温で良好に且つ歩留まりよく行うことができ、また接着性に優れたステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は従来技術の問題点に鑑みて種々検討、実験を重ねた結果、テルル系ガラスにおいて、550℃以下の低温の封着処理温度において、結晶を析出し難く、確実に封着することに優れた組成範囲を見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物はステンレス鋼製の内外容器間を排気孔により真空排気し、内外容器間の真空を保持する目的で排気孔を真空封着するのに用いることができる。
【0007】
即ち、本発明のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物は、質量%表示で、TeO:40〜60%、Bi:4〜25%、WO:4〜25%、ZnO:2〜25%、MgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で0〜20%、を含有し、且つPbO、Vを含有しないことを第1の特徴としている。
また本発明のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物は、上記第1の特徴に加えて、質量%表示で、TeO:45〜60%、Bi:4〜20%、WO:4〜20%、ZnO:2〜20%、MgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で0〜10%、を含有し、且つPbO、Vを含有しないことを第2の特徴としている。
また本発明のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物は、上記第2の特徴に加えて、質量%表示で、TeO:48〜55%、Bi:10〜18%、WO:8〜18%、ZnO:2〜15%、MgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で2〜5%、を含有し、且つPbO、Vを含有しないことを第3の特徴としている。
また本発明のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物は、上記第1〜第3の何れかの特徴に加えて、質量%表示で、LiO、NaO、KOの内の少なくとも1種以上を合計で7%以下含有することを第4の特徴としている。
また本発明のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物は、上記第1〜第4の何れかの特徴に加えて、質量%表示で、B、Alの内の少なくとも1種以上を合計で10%以下含有することを第5の特徴としている。
また本発明のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物は、上記第1〜第5の何れかの特徴に加えて、質量%表示で、CuO、CoOの内の少なくとも1種以上を合計で10%以下含有することを第6の特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物によれば、ガラス成分の種類と含有量とを所定の範囲としたので、焼成時に結晶析出し難く、フロー性に優れ、550℃以下での低温で確実に封着することができるステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物を現に提供でき、保温性を良好に保つのに好適である。
また請求項2に記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物によれば、上記請求項1の構成による作用効果に加えて、含有量を更に限定した範囲にすることにより、更に結晶析出し難いステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物を提供できる。
また請求項3に記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物によれば、上記請求項2の構成による作用効果に加えて、含有量をより一層限定した範囲にすることにより、より一層結晶析出し難いステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物を提供できる。
【0009】
また請求項4に記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物によれば、上記請求項1〜3の何れかの構成による作用効果に加えて、質量%表示で、LiO、NaO、KOの内の少なくとも1種以上を合計で7%以下含有することにより、焼成時に更に低温で結晶析出し難く、フロー性に優れ、550℃以下での低温で容易、確実に封着することができるステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物を現に提供することができる。
また請求項5に記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物によれば、上記請求項1〜4の何れかの構成による作用効果に加えて、質量%表示で、B、Alの内の少なくとも1種以上を合計で10%以下含有することにより、焼成時により低温で結晶析出し難く、フロー性に優れ、550℃以下での低温で容易、確実に封着することができるステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物を現に提供することができる。
また請求項6に記載のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物によれば、上記請求項1〜5の何れかの構成による作用効果に加えて、質量%表示で、CuO、CoOの内の少なくとも1種以上を合計で10%以下含有することにより、より一層、焼成時に低温で結晶析出し難く、フロー性に優れ、550℃以下での低温で容易、確実に封着することができるステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物を現に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態であるステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物は、ステンレス鋼製真空二重容器を低温焼成で真空封着し、真空を良好に保持できる無鉛ガラス組成物として好適である。
以下、本実施形態に係るステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物について、各成分含有量の限定理由等について説明する。なお、以下は全て質量%表示とする。
【0011】
TeOは本発明のガラスを形成する酸化物であり、40〜60%の範囲で含有させる。
TeOが40%未満の場合、ガラスが得られないおそれがあり、また得られたとしてもガラスの成形性が悪いおそれがある。
またTeOが60%を超える場合、ガラスは得られるが、封着が不安定になるおそれがあり、好ましくない。
TeOの含有量は、ガラスの成形性、軟化温度等を考慮すると、45〜60%であることが好ましく、48〜55%であることが更に好ましく、50〜52%であることが最も好ましい。
【0012】
Biはガラス状態を安定させ、且つ低融化に必須の成分であり、4〜25%の範囲で含有させる。
Biが4%未満では、ガラスの軟化点が高くなり、フロー性が悪化する。
またBiが25%を超えると、ガラスが不安定となり、焼成時に結晶が析出し易くなり、フロー性が悪化し、封着不良が発生する。
Biの含有量は、ガラスの成形性、軟化点等を考慮すると、4〜20%であることが好ましく、10〜18%であることが更に好ましく、14〜16%であることが最も好ましい。
【0013】
WOは結晶化を防止する成分であり、4〜25%の範囲で含有させる。
WOが4%未満では、WO添加による効果が不十分となり、結晶が析出し易くなる。
またWOが25%を越えると、軟化点が高くなり、フロー性が悪化する。
WOの含有量は、ガラスの成形性、軟化点等を考慮すると、4〜20%であることが好ましく、8〜18%であることが更に好ましく、10〜15%であることが最も好ましい。
【0014】
ZnOはガラスを低融化し、ガラスの成形性を上げる成分であり、2〜25%の範囲で含有させる。
ZnOが2%未満では、結晶が析出し易くなる。
またZnOが25%を超えると、ガラスが不安定となり、焼成時に結晶が析出し易くなる。
ZnOの含有量は、ガラスの成形性等を考慮すると、2〜20%であることが好ましく、2〜15%であることが更に好ましく、5〜15%であることが最も好ましい。
【0015】
MgO、CaO、SrO、BaOは低融化すると共に、ガラスを安定させ、結晶析出を抑制させる効果がある成分である。よってMgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で0〜20%含有させることができる。
勿論、含有させなくても良いが、含有させる場合は20%、好ましくは10%まで含有させることができる。
MgO、CaO、SrO、BaOが合計で20%を超える場合は、ガラスが得られない、或いはガラスが得られたとしても結晶が析出し易くなる。
ガラスの安定化の効果を良好に得るには、MgO、CaO、SrO、BaOの内の少なくとも1種以上を合計で2〜5%含有させるのがより好ましい。
【0016】
LiO、NaO、KOはガラスを低融化させる成分である。含有させなくても良いが、含有させる場合は、LiO、NaO、KOの内の少なくとも1種以上を合計で7%以下含有させることができる。
LiO、NaO、KOを合計で7%を超えて含有させた場合、ガラスが得られない、或いは得られたとしても結晶が析出し易くなる。
封止温度をより低温にするためには、LiO、NaO、KOの内の少なくとも1種以上を合計で2〜5%含有させることが好ましい。
【0017】
、Alはガラスを安定させる成分である。含有させなくても良いが、含有させる場合は、少なくとも1種以上を合計で10%以下含有させることができる。
、Alを合計で10%を超えて含有させた場合、ガラスは得られるが、ガラスの軟化点が高くなり、目標となる温度でフローしない。
ガラスをより安定化させるためには、B、Alの内の少なくとも1種以上を合計で2〜6%含有させることが好ましい。
【0018】
CuO、CoOはガラスを低融化させ、ステンレス鋼との密着性を向上させる成分である。含有させなくても良いが、含有させる場合は、少なくとも1種以上を合計で10%以下含有させることができる。
CuO、CoOを合計で10%を超えて含有させた場合、ガラスが得られない、或いは得られたとしても結晶が析出し易くなる。
ステンレス鋼との密着性を向上させる観点から、CuO、CoOの内の少なくとも1種以上を合計で3〜9%含有させることが好ましい。
【0019】
また上記成分に加えて、ガラス製造時の安定性の向上、結晶化の抑制、熱膨張係数を調整する目的で、Fe、SiO、TiO、ZrOを合計で0.01〜5%、好ましくは0.01〜1%加えることができる。
【0020】
酸化鉛(PbO)と酸化バナジウム(V)は含有させない。
ここで「含有させない」との表現について、本明細書においては酸化鉛(PbO)と酸化バナジウム(V)を有効成分とする原料は使用しないとの意味であり、ガラスを構成する各成分の原料、その他に由来する微量分が混入したものを排除するものではない。言い換えれば、不純物として含有しているものまで本発明の範囲に入らないと言う意味ではない。
【0021】
本発明のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物は、460℃以下のガラス軟化点Ts、室温から300℃の範囲において120〜180×10−7/℃の平均熱膨張係数αを有し、ステンレス鋼製真空二重容器の真空封着に好適である。
本発明の封着用ガラスは、例えば球、半球、おはじき状、或いは前記に類似した形状で使用することができる。
【実施例】
【0022】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0023】
(ガラスの製造)
原料としては、酸化テルル、酸化ビスマス、酸化タングステン、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酸化ケイ素、ホウ酸、水酸化アルミニウム、酸化銅、酸化コバルト等を用いた。
表1〜表6に示すように、実施例1〜40及び比較例1〜2に示すガラス組成となるように原料を調合、混合した。
そして、その混合物を白金るつぼに入れ、850〜950℃の温度で1時間溶融した後、双ロール法で急冷してガラスフレークを得ると共に、予め加熱しておいたカーボン板に流し出してブロックを作製した。
その後、ブロックは予想されるガラス転移点Tgより約50℃高い温度に設定した電気炉に入れ、徐冷を行った。
作製したガラスフレークを900〜1000℃の温度範囲で再溶融し、適当な粘度となるまで温度を下げて滴下し、直径約5mm、高さ約2mm、重量約180mgの半球状の成形体を成形した。
【0024】
(評価)
実施例1〜40、比較例1〜2について、下記の方法によりガラス粉末の結晶化温度、ガラスブロックの熱膨張係数αを測定すると共に、ガラスのフロー性を判定した。
結果を表1〜表6に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
【表6】
【0031】
(1)ガラス転移点Tg、軟化点Ts、結晶化温度、結晶化の判定
ガラスフレークを乳鉢で粉砕し、ガラス粉末を得た。そのガラス粉末約60〜80mgを白金セルに充填し、DTA測定装置(リガク社製Thermo Plus TG8120)を用いて、室温から20℃/分で昇温させて、ガラス転移点(℃)、軟化点(℃)、結晶化温度(℃)が検出されるかを測定した。
結晶化については、DTA測定装置で検出された結晶化温度が、焼成温度上限550℃未満のものを△、550℃以上のものを○、検出されなかったものを◎として判定した。
【0032】
(2)熱膨張係数α
得られたガラスブロックを約5×5×15mmに切り出し、研磨して測定用のサンプルとした。TMA測定装置を用いて、室温から10℃/分で昇温したときに得られる熱膨張曲線から、50℃と300℃の2点に基づく熱膨張係数(×10−7/℃)を求めた。
【0033】
(3)ガラスのフロー性
得られた半球状の成形体をSUS製板の上に置き、焼成温度480℃、保持時間20分で焼成し、そのフローした直径を測定し、5.5mm以下のものを×、5.5mm超〜7mm以下のものを△、7mm超〜10mm以下のものを○、10mm超のものを◎と判定した。
【0034】
(実施例1)
原料としては、酸化テルル、酸化ビスマス、酸化タングステン、酸化亜鉛を用い、所定の割合になるよう調合、混合し、該混合物を白金るつぼに入れ、950℃の温度で1時間溶融した後、双ロール法で急冷してガラスフレークを得ると共に、予め加熱しておいたカーボン板に流し出してブロックを作製した。その後、ブロックは予想されるガラス転移点より約50℃高い温度に設定した電気炉に入れ、徐冷を行った。
できたガラスフレークを乳鉢で粉砕し、ガラス粉末を得、約80mgを白金セルに充填し、DTA測定装置を用いて、室温から20℃/分で昇温させて、ガラス転移点、軟化点、結晶化温度を測定したところ、それぞれ355℃、412℃、558℃であった。またガラスブロックから切り出したサンプルの50℃と300℃の2点に基づく熱膨張係数αを求めたところ、146×10−7/℃であった。
作製したガラスフレークを1000℃で再溶融し、適当な粘度となるまで温度を下げて滴下して得た半球状の成形体を480℃で20分焼成し、フロー径を測定したところ8.3mmで、判定は○であった。
実施例2〜40も同様にして測定、評価した。
【0035】
(比較例1)
原料としては、酸化ビスマス、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸、水酸化アルミニウム、酸化銅、酸化コバルトを用い、所定の割合になるよう調合、混合し、該混合物を白金るつぼに入れ、950℃の温度で1時間溶融した後、双ロール法で急冷してガラスフレークを得ると共に、予め加熱しておいたカーボン板に流し出してブロックを作製した。その後、ブロックは予想されるガラス転移点より約50℃高い温度に設定した電気炉に入れ、徐冷を行った。
できたガラスフレークを乳鉢で粉砕し、ガラス粉末を得、約80mgを白金セルに充填し、DTA測定装置を用いて、室温から20℃/分で昇温させて、ガラス転移点、軟化点、結晶化温度を測定したところ、それぞれ353℃、423℃、518℃であった。
またガラスブロックから切り出したサンプルの50℃と300℃の2点に基づく熱膨張係数αを求めたところ、110×10−7/℃であった。
作製したガラスフレークを1000℃で再溶融し、適当な粘度となるまで温度を下げて滴下して得た半球状の成形体を480℃で20分焼成し、フロー径を測定したところ5.5mmで、評価は×であった。
【0036】
(比較例2)
原料としては、酸化ビスマス、酸化亜鉛、炭酸バリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、酸化ケイ素、水酸化アルミニウムを用い、所定の割合になるよう調合、混合し、該混合物を白金るつぼに入れ、950℃の温度で1時間溶融した後、双ロール法で急冷してガラスフレークを得ると共に、予め加熱しておいたカーボン板に流し出してブロックを作製した。その後、ブロックは予想されるガラス転移点より約50℃高い温度に設定した電気炉に入れ、徐冷を行った。
できたガラスフレークを乳鉢で粉砕し、ガラス粉末を得、約80mgを白金セルに充填し、DTA測定装置を用いて、室温から20℃/分で昇温させて、ガラス転移点、軟化点を測定したところ、それぞれ372℃、439℃であった。なお、結晶化温度は検出されなかった。
またガラスブロックから切り出したサンプルの50℃と300℃の2点に基づく熱膨張係数αを求めたところ、101×10−7/℃であった。
作製したガラスフレークを1000℃で再溶融し、適当な粘度となるまで温度を下げて滴下して得た半球状の成形体を480℃で20分焼成し、フロー径を測定したところ5.2mmで、評価は×であった。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のステンレス鋼製真空二重容器封着用無鉛ガラス組成物は、ステンレス鋼製真空二重容器製造の産業において大いに利用できる。