特許第6876539号(P6876539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876539
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】耐圧容器
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/26 20110101AFI20210517BHJP
   F16J 12/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   B60R21/26
   F16J12/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-120296(P2017-120296)
(22)【出願日】2017年6月20日
(65)【公開番号】特開2019-1436(P2019-1436A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】花野 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】庄内 周一
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−184559(JP,A)
【文献】 国際公開第03/022645(WO,A1)
【文献】 独国特許発明第102005047768(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
F16J 12/00
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の筒状容器の開口部が金属製の閉塞部材で閉塞された耐圧容器の閉塞構造であって、
前記閉塞部材が閉塞部を有しており、前記閉塞部が、第1面と、第1面とは厚さ方向反対側の第2面、および第1面と第2面の間の周面部を有し、前記開口部と同じ形状で、かつ前記開口部内に挿入できる大きさのものであり、
前記閉塞構造が、
前記筒状容器の開口部の内側に、前記第2面が前記筒状容器の内部に面するように挿入された前記閉塞部材と、
前記筒状容器の開口部側の周壁部が、前記閉塞部材の閉塞部の第1面と周面部の境界にある第1環状角部に当接されるように変形された環状変形部と、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分が外側から溶接された溶接部を有しているものである、耐圧容器の閉塞構造。
【請求項2】
金属製容器の筒状開口部が金属製の閉塞部材で閉塞された耐圧容器の閉塞構造であって、
前記閉塞部材が閉塞部を有しており、前記閉塞部が、第1面と、第1面とは厚さ方向反対側の第2面、および第1面と第2面の間の周面部を有し、前記筒状開口部と同じ形状で、かつ前記筒状開口部内に挿入できる大きさのものであり、
前記閉塞構造が、
前記筒状開口部の内側に、前記第2面が前記金属製容器の内部に面するように挿入された前記閉塞部材と、
前記筒状開口部の周壁部が前記閉塞部材の閉塞部の第1面と周面部の境界にある第1環状角部に当接されるように変形された環状変形部と、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分が外側から溶接された溶接部を有しているものである、耐圧容器の閉塞構造。
【請求項3】
ガス排出口を有するハウジング内にガス源が充填され、着火電流によって作動する点火器を含む部品が前記ハウジングの開口部に収容されたガス発生器であり、
少なくとも点火器カラーを備えた点火器が固定された前記開口部において、請求項1または2記載の耐圧容器の閉塞構造が使用されているものである、ガス発生器。
【請求項4】
請求項1記載の耐圧容器の閉塞構造の形成方法であって、
前記筒状容器の開口部の内側に前記閉塞部材を閉塞部の第2面が内側で第1面が外側になるように挿入する工程、
前記筒状容器の開口部側の周壁部を前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部に当接するまで変形させて環状変形部を形成する工程、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、耐圧容器の閉塞構造の形成方法。
【請求項5】
請求項2記載の耐圧容器の閉塞構造の形成方法であって、
前記筒状開口部の内側に前記閉塞部材を閉塞部の第2面が内側で第1面が外側になるように挿入する工程、
前記筒状開口部の周壁部を前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部に当接するまで変形させて環状変形部を形成する工程、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、耐圧容器の閉塞構造の形成方法。
【請求項6】
請求項1記載の耐圧容器の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法であって、
予めガス排出口が形成された筒状容器にガス源および必要に応じて他の部品を収容配置する工程、
前記筒状容器の第1端開口部から、前記閉塞部を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器を挿入する工程、
前記筒状容器の第1端開口部側の周壁部を前記点火器カラーの閉塞部の第1環状角部に当接するまで変形させて第1環状変形部を形成させる工程、
前記点火器カラーの第1環状角部と前記第1環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、ガス発生器の製造方法。
【請求項7】
請求項2記載の耐圧容器の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法であって、
予めガス排出口が形成された金属製容器内にガス源、点火器および必要に応じて他の部品を収容配置する工程、
前記金属製容器の筒状開口部の内側に前記閉塞部を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器を、前記閉塞部の第2面が内側で第1面が外側になるように挿入する工程、
前記金属製容器の筒状開口部の周壁部を前記点火器カラーの第1環状角部に当接するまで内側に変形させて環状変形部を形成させる工程、
前記閉塞部材の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、ガス発生器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧容器の閉塞構造、前記耐圧容器の閉塞構造を使用したガス発生器、前記耐圧容器の閉塞構造の形成方法、前記耐圧容器の閉塞構造を使用したガス発生器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種技術分野においては、外側からの防湿のための気密性と、内側の圧力からの耐圧性が求められる容器が必要になる場合がある。例えば、車両に搭載されるエアバッグ装置で使用するガス発生器の場合は、容器(ハウジング)の開口部から必要な部品を入れた後、閉塞部材や点火器カラーを備えた点火器およびOリングなどを使用して前記開口部を閉塞することで、外部からの湿気の侵入を防止し、作動時に生じたガスがガス排出口の他からは漏れないようにされている。
【0003】
特許文献1の図1には、筒状ハウジング10を有するガス発生器1が示されている。筒状ハウジング10の一端部側には点火器16が配置され、点火器16は金属製の点火器カラー17と樹脂18により固定されている。
さらに図1に示されているとおり、筒状ハウジング10の一端部側は、金属製の点火器カラー17と筒状ハウジング10が互いに密接されるように半径方向内側にかしめられていると共に、Oリングも配置されることで気密性と耐圧性の両方が高められている。
【0004】
特許文献2の図1には、筒状ハウジング12を有するインフレータ14が示されている。筒状ハウジング12の一端部側には点火器32が配置されており、点火器カラーを有する点火器32と筒状ハウジング12の間には、端部24側が閉塞され、反対側端部が開口された厚さの小さな筒状部材が配置されている。
筒状ハウジング12と点火器32は、筒状ハウジング12の点火器12の点火器カラーと半径方向に対向する部分を内側方向にかしめ、筒状ハウジング12と厚さの小さな筒状部材の両方を点火器カラーに当接させることで気密性と耐圧性の両方が高められているものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−184559号公報
【特許文献2】US 8,702,125 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した従来技術とは全く異なる方法によって、気密性と耐圧性の両方が高められた、耐圧容器の閉塞構造、前記耐圧容器の閉塞構造を使用したガス発生器、前記耐圧容器の閉塞構造の形成方法、前記耐圧容器の閉塞構造を使用したガス発生器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(第1実施形態)は、金属製の筒状容器の開口部が金属製の閉塞部材で閉塞された耐圧容器の閉塞構造であって、
前記閉塞部材が閉塞部を有しており、前記閉塞部が、第1面と、第1面とは厚さ方向反対側の第2面、および第1面と第2面の間の周面部を有し、前記開口部と同じ形状で、かつ前記開口部内に挿入できる大きさのものであり、
前記閉塞構造が、
前記筒状容器の開口部の内側に、前記第2面が前記筒状容器の内部に面するように挿入された前記閉塞部材と、
前記筒状容器の開口部側の周壁部が、前記閉塞部材の閉塞部の第1面と周面部の境界にある第1環状角部に当接されるように変形された環状変形部と、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分が外側から溶接された溶接部を有しているものである、耐圧容器の閉塞構造を提供する。
【0008】
金属製の筒状容器の幅方向の断面形状は特に制限されるものではなく、円形、楕円形、多角形などにすることができる。
金属製の筒状容器と金属製の閉塞部材のそれぞれの金属は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
金属製の筒状容器の金属の硬度と金属製の閉塞部材の金属の硬度(例えば、ビッカース硬さ)は、金属製の筒状容器の金属の硬度よりも金属製の閉塞部材の硬度が高いものでも低いものでもよく、金属製の閉塞部材の硬度が低いものでも本発明の効果を得ることができる。
【0009】
第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造は、閉塞部材、環状変形部および閉塞部材の第1環状角部と環状変形部の接触部分が外側から溶接された溶接部を有しているものである。
金属製の閉塞部材は閉塞部を有しているものであり、閉塞部は、第1面と、第1面とは厚さ方向反対側の第2面、および第1面と第2面の間の周面部を有しており、前記開口部と同じ形状で、かつ前記開口部内に挿入できる大きさのものであればよい。
金属製の閉塞部材は、閉塞対象となる開口部の状態に応じて、板状のもの、板状のものよりも厚さの大きな塊状のもの、塊状または厚い板状のものの一部から軸方向外側に突き出された部分を有しているものを使用することができ、これらの形態では閉塞部材と閉塞部が一致している。
また、塊状または厚い板状のものの一部から半径方向外側に突き出された板状部分(環状突出部分)を有している実施形態にすることができ、この場合には前記環状突出部分が閉塞部となる。
環状変形部は、筒状容器の開口部側の周壁部が内側に折り曲げられた部分、筒状容器の開口部側の周壁部が縮径された部分などである。
【0010】
溶接部は、溶接自体により閉塞構造の耐圧性を維持するよりも、筒状容器と閉塞部材との間の隙間をシールすることと、閉塞部材が内側からの圧力を受けたとき、環状変形部に対してせん断応力を発生させることで、曲げ応力が発生して環状変形部の形状が回復する(変形前の形状に戻る)ことによる閉塞部材の脱落を防止するものである。
したがって、閉塞部材の固定機能は、かしめなどによって形成される環状変形部で発現され、シール機能は溶接部によって発現されることになるが、第1環状角部に対応する筒状容器に溶接部を形成し、第1環状角部を筒状容器と共に溶接することで、荷重がかかったとき、溶接部ではせん断応力が発生し、それ以外の箇所に溶接するよりも耐荷重が増加する。
例えば、図10(a)に示すように閉塞部材400(但し、断面図から把握される角部、つまり第1環状角部に相当する部分は環状の曲面となっている)が、筒状容器410のかしめ部411と、筒状容器410と閉塞部材400の周面401との溶接部415において固定されている閉塞構造の場合には、内側から圧力が加えられると、溶接部415がまず破壊する。またかしめ部分411には曲げ応力が発生する。
一般にせん断応力>曲げ応力の関係があることから、溶接部で破壊が発生した後、図10(b)に示すようにかしめ部311が外側に押し広げられるように変形して閉塞部材400が脱落するので、せん断によるかしめ部411の破壊よりも耐荷重が低い。
また、特許文献1の図1のガス発生器1の場合には、金属製点火器カラー17の角部(上記第1環状角部に相当する角部)は断面図から把握される角部に曲面が形成されていないため、大きな荷重がかかったとき、前記角部がかしめ部に対して食い込むことで、せん断応力がかかる。上記のようにせん断応力>曲げ応力であるため耐荷重が大きく、荷重がかかっても特許文献の図1に示す状態が維持され、本件図10(a)から図10(b)に示すような変化にはならない。しかし、点火器カラー17の角部をかしめ部に食い込ませるためには、点火器カラー17を構成する金属を硬度の高い部材にする必要があり、材料コストが高くなる。
【0011】
本発明の第1実施形態では、上記した閉塞部材の第1環状角部と金属容器の環状変形部の溶接部が、金属製点火器カラーを硬度の高い素材で形成したときと同様に機能して、溶接部にせん断応力を生じさせている。そのため、かしめ部に食い込むような角部を閉塞部材に形成する必要がなく(角部の形状の加工精度が緩和され)、閉塞部材の加工方法に対する選択肢が増える。この「加工精度が緩和され」るとは、角部に曲面や平面が多少形成されていても耐荷重がせん断応力並みに維持されるという意味である。
なお、上記した溶接部において第1環状角部は溶融しているため、せん断応力の発現は溶接部によるものであり、特許文献1の図1のガス発生器1における固定構造とは異なるものである。
【0012】
本発明(第2実施形態)は、金属製容器の筒状開口部が金属製の閉塞部材で閉塞された耐圧容器の閉塞構造であって、
前記閉塞部材が閉塞部を有しており、前記閉塞部が、第1面と、第1面とは厚さ方向反対側の第2面、および第1面と第2面の間の周面部を有し、前記筒状開口部と同じ形状で、かつ前記筒状開口部内に挿入できる大きさのものであり、
前記閉塞構造が、
前記筒状開口部の内側に、前記第2面が前記金属製容器の内部に面するように挿入された前記閉塞部材と、
前記筒状開口部の周壁部が前記閉塞部材の閉塞部の第1面と周面部の境界にある第1環状角部に当接されるように変形された環状変形部と、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分が外側から溶接された溶接部を有しているものである、耐圧容器の閉塞構造を提供する。
【0013】
第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造は、第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造とは容器の形状および構造が異なるだけであり、閉塞構造自体は同じものである。
第2実施形態の耐圧容器は、一つの筒状開口部を有していればよいが、複数の筒状開口部を有していてもよい。
第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造は、複数の筒状開口部があるときは、それらの一部または全部に形成されている。
筒状開口部は、容器本体から外側に突き出された形状のもののほか、容器本体から外側に突き出されることなく、容器内側に形成された凹部内に形成された形状のものでもよい。
また筒状開口部は、容器本体と直接に接続されているもののほか、他部材を介して容器本体と接続されたものでもよい。
【0014】
本発明は、ガス排出口を有するハウジング内にガス源が充填され、着火電流によって作動する点火器を含む部品が前記ハウジングの開口部に収容されたガス発生器であり、
少なくとも点火器カラーを備えた点火器が固定された前記開口部において、請求項1または2記載の耐圧容器の閉塞構造が使用されているものである、ガス発生器を提供する。
【0015】
本発明のガス発生器は、ガス発生剤のみをガス発生源とするパイロ式ガス発生器、ガス発生剤とアルゴン、ヘリウムなどをガス発生源とするハイブリッドインフレータなどに適用することができる。
ガス発生器の形態に応じて、ハウジングは筒状のものやディスク状のものなどがある。ディスク状のハウジングは、筒状ハウジングよりも長さ(L)が短く、直径(D)が大きなもの(即ち、筒状ハウジングよりもL/Dが小さいもの)である。
【0016】
ガス発生器が筒状ハウジングを使用している場合には、筒状ハウジングとして、ガス排出口が形成された第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造を使用することができる。この形態では、一端側または両端側において第1実施形態の閉塞構造を使用することができる。
例えば、一端側開口部が金属製カラー(閉塞部材)を備えた点火器が固定されることで閉塞され、他端側開口部が板状の閉塞部材で閉塞され、周壁部に複数のガス排出口を有している形態のガス発生器を挙げることができる。
前記一端開口部側では、金属製カラーの第1環状角部(軸方向反対側が第2環状角部となる)と筒状ハウジングの接触部分が溶接されることで、第1実施形態の閉塞構造が形成されている。
前記他端開口部側では、板状の閉塞部材の第1環状角部(軸方向反対側が第2環状角部となる)と筒状ハウジングの接触部分が溶接されることで、第1実施形態の閉塞構造が形成されている。
【0017】
ガス発生器がディスク状ハウジングを使用している場合には、ディスク状ハウジングとして、ガス排出口が形成された第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造を使用することができる。
例えば、天板、天板と軸方向反対側の底板、天板と底板の間のガス排出口を有する周壁部からなるハウジングにおいて、底板の筒状開口部が金属製カラー(閉塞部材)を備えた点火器で閉塞された形態のガス発生器を挙げることができる。
前記筒状開口部では、金属製カラーの第1環状角部(軸方向反対側が第2環状角部となる)と筒状ハウジングの接触部分が溶接されることで、第2実施形態の閉塞構造が形成されている。
【0018】
本発明は、上記した第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造の形成方法であって、
前記筒状容器の開口部の内側に前記閉塞部材を閉塞部の第2面が内側で第1面が外側になるように挿入する工程、
前記筒状容器の開口部側の周壁部を前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部に当接するまで変形させて環状変形部を形成する工程、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、耐圧容器の閉塞構造の形成方法を提供する。
【0019】
第1工程における閉塞部材の閉塞部の挿入位置は、第2工程における変形部分の長さを考慮して、開口部から少し内側の位置になるように挿入する。
第2工程における変形方法は、図10(a)に示すように完全に折り曲げる方法、特許文献1の図1に示すように縮径する方法を適用することができる。具体的な変形方法としては、ローリングかしめ方法などを適用することができる。
第3工程における溶接は、第1環状角部と環状変形部の接触部分が溶接できるのであれば、環状変形部に対して、軸方向に対して斜め方向から、軸方向の正面から、軸方向に直交する方向から溶接することができる。
溶接方法は、レーザー溶接、電子ビーム溶接などを適用することができる。
【0020】
本発明は、上記した第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造の形成方法であって、
前記筒状開口部の内側に前記閉塞部材を閉塞部の第2面が内側で第1面が外側になるように挿入する工程、
前記筒状開口部の周壁部を前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部に当接するまで変形させて環状変形部を形成する工程、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、耐圧容器の閉塞構造の形成方法を提供する。
【0021】
第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造の形成方法は、第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造の形成方法とは、容器形状が異なるため閉塞部材の取り付け位置が異なるが、同じ工程にて実施することができる。
【0022】
本発明は、上記した第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法であって、
予めガス排出口が形成された筒状容器にガス源および必要に応じて他の部品を収容配置する工程(第1工程)、
前記筒状容器の第1端開口部から、前記閉塞部を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器を挿入する工程(第2工程)、
前記筒状容器の第1端開口部側の周壁部を前記点火器カラーの閉塞部の第1環状角部に当接するまで変形させて第1環状変形部を形成させる工程(第3工程)、
前記点火器カラーの第1環状角部と前記第1環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程(第4工程)を有している、ガス発生器の製造方法を提供する。
【0023】
第1工程における必要に応じて配置される他の部品は、フィルタ、リテーナなどである。
第2工程における閉塞部となる部分を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器の挿入位置は、第3工程における変形部分の長さを考慮して、開口部から少し内側の位置になるように挿入する。
第3工程における変形方法は、図10(a)に示すように完全に折り曲げる方法、特許文献1の図1に示すように縮径する方法を適用することができる。具体的な変形方法としては、ローリングかしめ方法などを適用することができる。
第4工程における溶接は、点火器カラーの第1環状角部と第1環状変形部との接触部分が溶接できるのであれば、第1環状変形部に対して、軸方向に対して斜め方向から、軸方向の正面から、軸方向に直交する方向から溶接することができる。
溶接方法は、レーザー溶接、電子ビーム溶接などを適用することができる。
なお、第1工程にて使用する筒状容器は、筒状容器のいずれか一端開口部が閉塞されたもの、筒状容器のいずれか一端開口部にガス排出口を有する部品(カップ形状のディフューザ部)が溶接などの方法で固定されたものでもよい。カップ形状のディフューザ部は、金属製のカップの周壁部および底面部の一方または両方にガス排出口が形成されているものである。
【0024】
本発明は、第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法であって、
予めガス排出口が形成された金属製容器内にガス源、点火器および必要に応じて他の部品を収容配置する工程、
前記金属製容器の筒状開口部の内側に前記閉塞部を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器を、前記閉塞部の第2面が内側で第1面が外側になるように挿入する工程、
前記金属製容器の筒状開口部の周壁部を前記点火器カラーの第1環状角部に当接するまで内側に変形させて環状変形部を形成させる工程、
前記閉塞部材の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、ガス発生器の製造方法を提供する。
【0025】
第2実施形態の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法は、第1実施形態の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法とは、容器形状が異なるため閉塞部材の取り付け位置が異なるが、同じ工程にて実施することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の耐圧容器の閉塞構造は、内側からの圧力を受けたときでも閉塞構造が維持されるため、製品の信頼性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(a)は本発明の閉塞構造を含む耐圧容器の軸X方向の部分断面図、(b)は(a)の部分拡大断面図、(c)は(a)とは別実施形態の部分拡大断面図、(d)はさらに(a)、(b)とは別実施形態の部分拡大断面図。
図2図1とは別実施形態の部分断面図。
図3図1図2とは別実施形態の断面図。
図4図1図3とは別実施形態の断面図。
図5】本発明の閉塞構造を含むガス発生器の実施形態を示す軸方向断面図。
図6】本発明の閉塞構造を含むガス発生器の別実施形態を示す軸方向断面図。
図7】本発明の閉塞構造を含むガス発生器のさらに別実施形態を示す軸方向の部分断面図。
図8】本発明の閉塞構造を含むガス発生器のさらに別実施形態を示す軸方向の部分断面図。
図9】本発明の閉塞構造を含むガス発生器のさらに別実施形態を示す軸方向断面図。
図10】(a)は従来技術の閉塞構造を示す部分断面図、(b)は(a)が内側から圧力を受けたときの状態を示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(1)図1図2に示す閉塞構造を含む耐圧容器
図1に示す耐圧容器(閉塞構造を含む筒状容器)10は、閉塞部材13、環状変形部15および溶接部17からなる閉塞構造を有している。
耐圧容器10は、第1端開口部11aと、軸X方向反対側の第2端開口部(図示せず)と、周壁部12を有している。
耐圧容器10は、幅方向の断面形状が円形であり、鉄、ステンレスなどの金属からなるものである。
【0029】
板状の閉塞部材(閉塞部)13は、第1面13aと、第1面13aとは厚さ方向反対側の第2面13b、および第1面13aと第2面13bの間の周面部13cを有しているものである。
板状の閉塞部材(閉塞部)13の平面形状は、筒状容器10の第1端開口部11aと同じ円形で、かつ第1端開口部11a内に挿入できる大きさのものである。
板状の閉塞部材13は鉄またはステンレスなどの金属からなるものであり、耐圧容器10の硬さ(ビッカース硬さ)よりも高い方が好ましいが、耐圧容器10の硬さ(ビッカース硬さ)と同等以下であっても本発明の効果を得ることができる。例えば、耐圧容器10の硬さ(ビッカース硬さ)を100%としたとき、板状の閉塞部材13の硬さ(ビッカース硬さ)は、好ましくは10%〜270%の範囲から選択することができ、より好ましくは60%〜160%の範囲から選択することができる。
板状の閉塞部材13は、第2面13bが耐圧容器10の内側を向き、第1面13aが外側を向き、周面部13cが耐圧容器10の内壁面12aに当接された状態で、環状変形部15を形成する前は、第1端開口部11aから板状の閉塞部材13の厚さ程度だけ内側に挿入配置されている。
【0030】
環状変形部(かしめ部)15は、耐圧容器10の第1端開口部11a側の周壁部12が内側にかしめられた部分であり、閉塞部材13の第1面13aと周面部13cの境界にある第1環状角部14と第1面13aの両方に当接されるようにかしめられている。
【0031】
溶接部17は、閉塞部材13の第1環状角部14と環状変形部15の接触部分が外側から溶接された部分である。第1環状角部14の軸X方向反対側が第2環状角部となる。
溶接部17は、図1(b)〜(d)に示す実施形態にすることができる。
図1(b)の実施形態は、閉塞部材13の第1環状角部14と環状変形部15の接触部分が図1(a)の耐圧容器10の軸Xに対して斜め方向に溶接されている形態である。環状変形部(かしめ部)15の角部から第1環状角部14まで溶接されている。
図1(c)の実施形態は、閉塞部材13の第1環状角部14と環状変形部15の接触部分が図1(a)の耐圧容器10の軸Xと同一方向に溶接されている形態である。環状変形部(かしめ部)15の平面部から第1環状角部14まで溶接されている。
図1(d)の実施形態は、閉塞部材13の第1環状角部14と環状変形部15の接触部分が図1(a)の耐圧容器10の軸Xと直交する方向に溶接されている形態である。第1端開口部11a側の周壁部12から第1環状角部14まで溶接されている。
図1(b)〜(c)の実施形態は、いずれも溶接後の第1環状角部14は角がない状態になっている。
【0032】
図1に示す耐圧容器10では、内側から閉塞部材13の第2面13bに対して圧力が加えられたとき、溶接部17にせん断応力を生じさせる。つまり環状変形部15に対して曲げ応力が発生する場合と比較して耐荷重に優れており、環状変形部15が図10(b)に示す状態になることはなく、閉塞構造が維持される。なお、図1に示す実施形態では、Oリングが図示されていないが、Oリングは使用してもよいし、不要にすることもできる。
【0033】
次に図1に示す耐圧容器10の閉塞構造の形成方法を説明する。
第1工程にて、耐圧容器10の第1端開口部11aの内側に、第2面13bが内側で第1面13aが外側になるように閉塞部材(閉塞部)13を挿入する。
このとき、次工程における環状変形部15の形成長さ(かしめ加工による折り曲げ長さ)を考慮して、閉塞部材13の挿入位置を調整する。内壁面12aに閉塞部材13の挿入深さを決める突起状や段状のストッパを形成してもよい。
【0034】
第2工程にて、耐圧容器10の第1端開口部11a側の周壁部12を閉塞部材13の第1面13aと第1環状角部14の両方に当接するまでかしめて、環状変形部15を形成させる。
かしめ方法は、特開2017−39412号公報に記載のローリングかしめ具を使用したローリングかしめ方法のほか、特開2007−223485号公報の段落番号0037、0038、特開2008−241186号公報の段落番号0035も記載されたローリングかしめ方法を適用することができる。
【0035】
第3工程にて、閉塞部材13の第1環状角部14と環状変形部15の接触部分を外側から溶接する(溶接部17)。
溶接方法は、レーザー溶接、電子ビーム溶接などを適用することができる。
溶接部17は図1(b)に示す実施形態であるが、図1(c)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0036】
図2に示す耐圧容器(閉塞構造を含む筒状容器)10Aは、閉塞部材25、環状変形部15および溶接部17からなる閉塞構造を有している。
閉塞部材25は、円形の基板部26と、基板部26から垂設された円柱部27を有している。
基板部26は、第2面26bが耐圧容器10Aの内側を向き、第1面26aが外側を向き、周面部26cが耐圧容器10Aの内壁面12aに当接された状態で、第1端開口部11aから基板部26の厚さ相当程度だけ内側に挿入配置されている。
【0037】
環状変形部(かしめ部)15は、耐圧容器10Aの第1端開口部11a側の周壁部12が内側にかしめられた部分であり、閉塞部材25の基板部26の第1面26aと周面部26cの境界にある第1環状角部24と第1面26aの両方に当接されるようにかしめられている。
溶接部17は図1(b)に示す実施形態であるが、図1(c)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0038】
図2に示す耐圧容器10Aでは、内側から閉塞部材25(基板部26)の第2面26bに対して圧力が加えられたとき、溶接部17に対してせん断応力を生じさせる。このせん断応力は環状変形部15に対する曲げ応力よりも耐荷重が優れており、環状変形部15が図10(b)に示す状態になることはなく、閉塞構造が維持される。
図2の耐圧容器10Aの閉塞構造は、図1の耐熱容器10と同様にして形成することができる。
【0039】
(2)図3図4に示す耐圧容器
図3に示す耐圧容器30では、閉塞部材40、環状変形部45および溶接部47からなる閉塞構造を有している。
図3に示す耐圧容器30は、天板31、天板31の軸X方向反対側の底板32、天板31と底板32の間の周壁部33からなる容器本体と、底板32の中心部分に形成された筒状開口部35を有している。
図3に示す実施形態では、容器本体と筒状開口部35が一体に成形されているが、容器本体と筒状開口部35を別部材にして、底板32の穴から別部材の筒状開口部35が挿入配置された状態で、接触部分が溶接、圧入、リテーナなどを使用した固定方法で一体化された実施形態でもよい。
耐圧容器30は、内部に部品を配置するため、天板31側と底板32側に二分割できるようにすることもでき、その場合には、二つを合わせたあとで溶接して一体化して使用する。
筒状開口部35は、筒状壁部36と先端開口部37を有している。
耐圧容器30は、天板31側および底板32側の平面形状が円形であり、鉄、ステンレスなどの金属からなるものである。
【0040】
板状の閉塞部材(閉塞部)40は、第1面40aと、第1面40aとは厚さ方向反対側の第2面40b、および第1面40aと第2面40bの間の周面部40cを有しているものである。
板状の閉塞部材40の平面形状は、筒状開口部35の先端開口部37と同じ円形で、かつ先端開口部37内に挿入できる大きさのものである。
板状の閉塞部材40は鉄またはステンレスなどの金属からなるものであり、耐圧容器30の硬さ(ビッカース硬さ)よりも高い方が好ましいが、耐圧容器30の硬さ(ビッカース硬さ)と同等以下であっても本発明の効果を得ることができる。例えば、耐圧容器30の硬さ(ビッカース硬さ)を100%としたとき、板状の閉塞部材40の硬さ(ビッカース硬さ)は、好ましくは10%〜270%の範囲から選択することができ、より好ましくは60%〜160%の範囲から選択することができる。
【0041】
板状の閉塞部材40は、第2面40bが耐圧容器30の内側を向き、第1面40aが外側を向き、周面部40cが筒状壁部35の内壁面35aに当接された状態で、環状変形部45を形成する前は、先端開口部37から板状の閉塞部材40の厚さ相当程度だけ内側に挿入配置されている。
【0042】
環状変形部(かしめ部)45は、筒状開口部35の先端開口部37側の筒状壁部36が内側にかしめられた部分であり、閉塞部材40の第1面40aと周面部40cの境界にある第1環状角部44と第1面40aの両方に当接されるようにかしめられている。
【0043】
溶接部47は、閉塞部材40の第1環状角部44と環状変形部45の接触部分が外側から溶接された部分である。
溶接部47は図1(c)に示す実施形態であるが、図1(b)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0044】
図3に示す耐圧容器30では、内側から閉塞部材40の第2面40bに対して圧力が加えられたとき、溶接部47にせん断応力を生じさせる。このせん断応力は環状変形部45に対する曲げ応力よりも耐荷重が優れており、環状変形部45が図10(b)に示す状態になることはなく、閉塞構造が維持される。
なお、図3に示す実施形態では、Oリングが図示されていないが、Oリングは使用してもよいし、不要にすることもできる。
【0045】
次に図3に示す耐圧容器30の閉塞構造の形成方法を説明する。
第1工程にて、耐圧容器30の底板32から突き出された環状開口部35の先端開口部37内側に、閉塞部材40を第2面40bが内側で第1面40aが外側になるように挿入する。
このとき、次工程における環状変形部45の形成長さを考慮して、閉塞部材40の挿入位置を調整する。内壁面35aに閉塞部材40を決める突起状や段状のストッパを形成してもよい。
【0046】
第2工程にて、筒状開口部35の先端開口部37側の筒状壁部36を閉塞部材40の第1環状角部44と第1面40aの両方に当接するまでかしめて、環状変形部45を形成させる。
かしめ方法は、上記と同様のローリングかしめ方法を適用することができる。
【0047】
第3工程にて、閉塞部材40の第1環状角部44と環状変形部45の接触部分を外側から溶接する(溶接部47)。第1環状角部44の軸X方向反対側が第2環状角部となる。
溶接方法は、レーザー溶接、電子ビーム溶接などを適用することができる。
溶接部47は図1(c)に示す実施形態であるが、図1(b)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0048】
図4に示す耐圧容器30Aは、図3の耐圧容器30とは筒状開口部の形成位置が異なるほかは同じものである。
筒状開口部35は、底板32に形成された凹部39内に形成されているため、図3に示す耐圧容器30のように底板32から突き出された構造ではない。
【0049】
(3)図5に示すガス発生器
図5に示すガス発生器100は、本発明の閉塞構造を有していることを除いて、特開2011−225069号公報の図1に示すガス発生器10と同じものである。
図5に示すガス発生器100は、筒状ハウジング101の両端開口部において本発明の閉塞構造が適用されている。
【0050】
第1端開口部100aには、点火器カラー111を備えた点火器110が配置されている。
点火器カラー111は、第2面111bが内側に面し、第1面111aが外側に面しており、周面部111cが筒状ハウジング101の内壁面101aに当接されている。
筒状ハウジング101と点火器カラー111は、点火器カラー111の硬さ>筒状ハウジング101硬さの関係と、点火器カラー111の硬さ<筒状ハウジング101硬さの関係のいずれであっても本発明の効果を得ることができる。
筒状ハウジング101の第1端開口部100a側が内側にかしめられることで第1環状変形部102が形成されている。第1環状変形部102は、点火器カラー111の第1面111aと第1面111aと周面部111cの境界部である第1環状角部112に当接されるように折り曲げられている。
第1環状変形部102と第1環状角部112の接触部分は、外側から溶接されている(溶接部115)。溶接部115は図1(b)に示す実施形態であるが、図1(c)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0051】
第1端開口部100aと軸方向反対側の第2端開口部100b側には、板状の閉塞部材(閉塞部)120が配置されている。
閉塞部材120は、第2面120bが内側に面し、第1面120aが外側に面しており、周面部120cが筒状ハウジング101の内壁面101aに当接されている。
筒状ハウジング101の第2端開口部100b側が内側にかしめられることで第2環状変形部103が形成されている。第2環状変形部103は、閉塞部材120の第1面120aと第1面120aと周面部120cの境界部である第1環状角部122に当接されるように折り曲げられている。
第2環状変形部103と第1環状角部122の接触部分は、外側から溶接されている(溶接部125)。溶接部125は図1(b)に示す実施形態であるが、図1(c)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0052】
次に図5に示すガス発生器100の製造方法を説明する。
第1工程にて、ガス排出口が形成された筒状ハウジング101の第2端開口部100bの内側に、第2面120bが内側になり、第1面120aが外側になり、周面部120cが筒状ハウジングの内壁面101aに当接されるように金属製の板状閉塞部材120を挿入する。
【0053】
第2工程にて、筒状ハウジング101の第2端開口部100b側の周壁部101を閉塞部材120の第1面120aと第1環状角部122に当接するまでかしめて、第2環状変形部103を形成させる。
このとき、かしめ工程における第2環状変形部103の形成長さ(かしめ加工による折り曲げ長さ)を考慮して、閉塞部材120の挿入位置を調整する。内壁面101aに閉塞部材120の挿入深さを決める突起状または段状のストッパを形成してもよい。
かしめ方法は、上記同様のローリングかしめ方法を適用することができる。
【0054】
第3工程にて、第1端開口部100a側から筒状ハウジング101内にガス発生剤、点火器、筒状フィルタ、リテーナを収容配置する。
【0055】
第4程にて、筒状ハウジング101の第1端開口部100aの内側に、第2面111bが内側になり、第1面111aが外側になり、周面部111cが筒状ハウジングの内壁面101aに当接されるように金属製の点火器カラー111を備えた点火器110を挿入する。
このとき、かしめ工程における第1環状変形部102の形成長さを考慮して、点火器110(点火器カラー111)の挿入位置を調整する。内壁面101aに点火器カラー111の挿入深さを決める突起状または段状のストッパを形成してもよい。
【0056】
第5工程にて、筒状ハウジング101の第1端開口部100a側の周壁部101を点火器カラー111の第1面111aと第1環状角部112に当接するまでかしめて、第1環状変形部102を形成させる。
【0057】
第6工程にて、点火器カラー111の第1環状角部112と第1環状変形部102の接触部分を外側から溶接し(溶接部115)、点火器カラー111の第1環状角部112と第1環状変形部102の接触部分を外側から溶接する(溶接部125)。
溶接方法は、レーザー溶接、電子ビーム溶接などを適用することができる。
溶接部115と溶接部125は図1(b)に示す実施形態であるが、図1(c)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
なお、第1工程にて使用する筒状ハウジング101は、予め周壁部にガス排出口が形成されたものを使用することができるほか、筒状ハウジング101の第2端開口部100bにガス排出口を有する部品(カップ形状のディフューザ部)が溶接などの方法で固定されたものでもよい。カップ形状のディフューザ部は、金属製のカップの周壁部および底面部の一方または両方にガス排出口が形成されているものである。また深絞り工法によって周壁部101と閉塞部材120が一体に形成されたハウジングを使用してもよい。
第1工程にてカップ形状のディフューザ部が第2端開口部100bに固定されたものを使用するときや、閉塞部材120が周壁部101と一体になったハウジングを使用する場合は、第1工程と第2工程は省略する。
【0058】
(4)図6に示すガス発生器
図6に示すガス発生器150は、本発明の閉塞構造を有していることを除いて、特開2014−184427号公報の図1に示すガス発生器10と同じものである。
図6に示すガス発生器150は、第1筒状ハウジング151の一端側開口部において本発明の閉塞構造が適用されている。
【0059】
第1端部側の開口部には、点火器カラー160を備えた点火器が配置されている。
第1筒状ハウジング151と点火器カラー160は、点火器カラー160の硬さ>筒状ハウジング151硬さの関係と、点火器カラー160の硬さ<筒状ハウジング151硬さの関係のいずれであっても本発明の効果を得ることができる。
点火器カラー160は、半径方向外側に突き出された閉塞部となる突出環状部161を有している。突出環状部161は、第2面161bが第1筒状ハウジング151の内側に面し、第1面161aが外側に面しており、周面部161cが第1筒状ハウジング151の内壁面151aに当接されている。
第1筒状ハウジング151の第1端開口部側が内側にかしめられることで環状変形部152が形成されている。環状変形部152は、点火器カラーの突出環状部161の第1面161aと、第1面161aと周面部161cの境界部である第1環状角部163の両方に当接されるようにかしめられている。
環状変形部152と第1環状角部163の接触部分は、外側から溶接されている(溶接部155)。
溶接部155は図1(b)に示す実施形態であるが、図1(c)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0060】
(5)図7に示すガス発生器
図7に示すガス発生器200は、本発明の閉塞構造を有していることを除いて、特開2014−94614号公報の図1に示す、ガス発生源としてガス発生剤と加圧ガスを併用したガス発生器10と同じものである。
図7に示すガス発生器200は、第1筒状ハウジング201の一端側開口部において本発明の閉塞構造が適用されている。
【0061】
第1端開口部200a側には、点火器カラー211を備えた点火器210が配置されている。
第1筒状ハウジング201と点火器カラー211は、点火器カラー211の硬さ>筒状ハウジング201硬さの関係と点火器カラー211の硬さ<筒状ハウジング201硬さの関係のいずれであっても本発明の効果を得ることができる。
点火器カラー211は、第2面211bが第1筒状ハウジング201の内側に面し、第1面211aが外側に面しており、周面部211cが第1筒状ハウジング201の内壁面201aに当接されている。
筒状ハウジング201の第1端開口部200a側が内側にかしめられることで環状変形部202が形成されている。環状変形部202は、点火器カラー211の第1面211aと、第1面211aと周面部211cの境界部である第1環状角部212に当接されるようにかしめられている。
環状変形部202と第1環状角部212の接触部分は、外側から溶接されている(溶接部215)。
溶接部215は図1(b)に示す実施形態であるが、図1(c)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0062】
(6)図8に示すガス発生器
図8に示すガス発生器250は、本発明の閉塞構造を有していることを除いて、特開2015−74413号公報の図1に示すガス発生器10と同じものである。
図8に示すガス発生器250は、筒状ハウジング251の一端側開口部において本発明の閉塞構造が適用されている。
【0063】
第1端開口部250a側には、点火器カラー261を備えた点火器260が配置されている。
筒状ハウジング251と点火器カラー261は、点火器カラー261の硬さ>筒状ハウジング251硬さの関係と点火器カラー261の硬さ<筒状ハウジング251硬さの関係のいずれであっても本発明の効果を得ることができる。
点火器カラー261は、点火器260側の大径部262と、大径部262と接している小径部263を有しており、大径部262と小径部263の外径差(大径部262の外径>小径部263の外径)による環状段差面264を有している。大径部262の環状段差面264側には環状角部265が形成されている。
大径部262の外周面と内壁面251aの第1当接面と小径部263の外周面と内壁面251aの第2当接面の間は縮径加工されており、第1当接面と第2当接面の外径差から環状段差斜面部(環状変形部)266が形成されている。
点火器カラーの大径部262の外周面は、筒状ハウジング251の内壁面251aに当接されている。また小径部263は内壁面251aと僅かな隙間を形成している。
環状段差斜面部(環状変形部)266は環状角部265に当接されている。
環状段差斜面部(環状変形部)266と環状角部265の接触部分は、外側から溶接されている(溶接部255)。
溶接部255は図1(b)に示す実施形態であるが、図1(c)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0064】
(7)図9に示すガス発生器
図9に示すガス発生器300は、本発明の閉塞構造を有していることを除いて、特開2012−140028号公報の図2図1の部分断面図)に示すガス発生器1と同じものである。
図9に示すガス発生器300は、ディフューザシェル311とクロージャシェル312からなるハウジング310の底板314側において本発明の閉塞構造が適用されている。
【0065】
底板314の中心部の穴には内筒部材315が配置されており、内筒部材315の内側には点火器カラー321を備えた点火器320が配置されている。
ハウジング310と点火器カラー321は、点火器カラー321の硬さ>筒状ハウジング310硬さの関係と点火器カラー321の硬さ<筒状ハウジング310硬さの関係のいずれであっても本発明の効果を得ることができる。
内筒部材315は第1端開口部側が天板313に固定されて閉塞されており、反対側の第2端開口部側が底板314から少し外側に突き出されている。本実施形態では、内筒部材315が図3図4に示す実施形態における筒状開口部35となるものである。
【0066】
点火器カラー321は、図6に示す点火器カラー160と同様に、半径方向外側に突き出された突出環状部322を有している。
突出環状部322は、内側に面した第2面322b、外側に面した第1面322a、第1面322aと第2面322bの間の周面部322c、第1面322aと周面部322cとの間の第1環状角部324を有しており、周面部322cは内筒部材315に形成された環状段差面に嵌め込まれている。
【0067】
内筒部材315の外側に突き出された開口部側は内側にかしめられて環状変形部325が形成されており、環状変形部325は、突出環状部322の第1面322aと第1環状角部324の両方に当接されている。
環状変形部325と第1環状角部324の接触部は外側から溶接されている(溶接部326)。
溶接方法は、レーザー溶接、電子ビーム溶接などを適用することができる。
溶接部326は図1(b)に示す実施形態であるが、図1(c)、図1(d)に示す実施形態でもよい。
【0068】
次に図9に示すガス発生器300の製造方法を説明する。
第1工程にて、内筒部材315が取り付けられたディフューザシェル311にガス発生剤、筒状フィルタ、リテーナなどの必要な部品などを収容配置する。
その後、ディフューザシェル311とクロージャシェル312を組み合わせてハウジング310を形成した後、接触部分を溶接する。
【0069】
第2工程にて、内筒部材315の第2端開口部から、伝火薬や点火器カラー321を備えた点火器320を挿入する。このとき、点火器カラー321の突出環状部322の第2面322bが内側になり、かつ内筒部材315の段差面に当接されており、第1面322aが外側になり、周面部322cが内筒部材315の内壁面に当接されるように挿入する。
【0070】
第3工程にて、点火器カラー321の突出環状部322の第1面322aと第1環状角部324に当接するまで内筒部材315の第2端開口部の周壁部を内側にかしめて、環状変形部325を形成する。
かしめ方法は、上記同様のローリングかしめ方法を適用することができる。
【0071】
第4工程にて、点火器カラー321の突出環状部322の第1環状角部324と環状変形部325の接触部分を外側から溶接する(溶接部326)。
溶接方法は、レーザー溶接、電子ビーム溶接などを適用することができる。
【実施例】
【0072】
実施例1、比較例1
図1(a)に示す閉塞構造を有する筒状の耐圧容器(実施例1)と図10(a)に示す筒状の耐圧容器(比較例1)を用意した。なお、実施例1と比較例1の閉塞部材13および400は、同程度の角部を有し、筒状容器10、410と閉塞部材13、400の硬度差が異なっているものを使用した。また実施例1と比較例1は、溶接の位置が異なるほかは全く同一の耐圧容器であり、溶接条件も同じにした。
実施例1および比較例1の筒状の耐圧容器の反対側の開口部から、筒状の耐圧容器の内径と近似した金属棒を押し込んだときの環状変形部15または環状変形部411の状態を観察した。
結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1から明らかなとおり、実施例1の耐圧容器は、耐圧容器と閉塞部材の硬さの差に拘わらず、常にせん断モードでの破壊を維持できたことから、内側からの大きな荷重に対して比較例1の容器よりも高い閉塞機能を発揮できることが確認できた。
比較例1の耐圧容器は、閉塞部材400に角部を有しており、閉塞部材の硬さ>耐圧容器の硬さの関係であるときは、閉塞部材の角部が環状変形部に食い込むことによりせん断モードを維持できたが、閉塞部材の硬さ<耐圧容器の硬さの関係であるときは、閉塞部材の角部が環状変形部に食い込むことができずに曲げモードになった。このため比較例1では、実施例1よりも耐荷重が低くなった。つまり実施例1において十分な耐圧性能を確保するためには、角部を形成した上で、閉塞部材の硬さ>耐圧容器の硬さの関係を満たすようにすることが必須であることになる。
本発明では、閉塞部材の硬さ>耐圧容器の硬さの関係だけでなく、閉塞部材の硬さ<耐圧容器の硬さの関係であっても高い耐圧性能を発揮できるため、原価の高い硬い金属に代えて、原価の安い軟らかい金属も使用できるようになり、材質の選択肢や部材などに対する加工方法の選択肢が増えて製造コストの低下もできるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の耐圧容器は、各技術分野において内側から圧力が加えられるような用途の耐圧容器として利用することができ、特に自動車に搭載されるエアバッグ装置のガス発生器においてハウジングを含む閉塞構造に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
10、10A、30、30A 耐圧容器
100、150、200、250、300 ガス発生器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10