【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(第1実施形態)は、金属製の筒状容器の開口部が金属製の閉塞部材で閉塞された耐圧容器の閉塞構造であって、
前記閉塞部材が閉塞部を有しており、前記閉塞部が、第1面と、第1面とは厚さ方向反対側の第2面、および第1面と第2面の間の周面部を有し、前記開口部と同じ形状で、かつ前記開口部内に挿入できる大きさのものであり、
前記閉塞構造が、
前記筒状容器の開口部の内側に、前記第2面が前記筒状容器の内部に面するように挿入された前記閉塞部材と、
前記筒状容器の開口部側の周壁部が、前記閉塞部材の閉塞部の第1面と周面部の境界にある第1環状角部に当接されるように変形された環状変形部と、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分が外側から溶接された溶接部を有しているものである、耐圧容器の閉塞構造を提供する。
【0008】
金属製の筒状容器の幅方向の断面形状は特に制限されるものではなく、円形、楕円形、多角形などにすることができる。
金属製の筒状容器と金属製の閉塞部材のそれぞれの金属は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
金属製の筒状容器の金属の硬度と金属製の閉塞部材の金属の硬度(例えば、ビッカース硬さ)は、金属製の筒状容器の金属の硬度よりも金属製の閉塞部材の硬度が高いものでも低いものでもよく、金属製の閉塞部材の硬度が低いものでも本発明の効果を得ることができる。
【0009】
第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造は、閉塞部材、環状変形部および閉塞部材の第1環状角部と環状変形部の接触部分が外側から溶接された溶接部を有しているものである。
金属製の閉塞部材は閉塞部を有しているものであり、閉塞部は、第1面と、第1面とは厚さ方向反対側の第2面、および第1面と第2面の間の周面部を有しており、前記開口部と同じ形状で、かつ前記開口部内に挿入できる大きさのものであればよい。
金属製の閉塞部材は、閉塞対象となる開口部の状態に応じて、板状のもの、板状のものよりも厚さの大きな塊状のもの、塊状または厚い板状のものの一部から軸方向外側に突き出された部分を有しているものを使用することができ、これらの形態では閉塞部材と閉塞部が一致している。
また、塊状または厚い板状のものの一部から半径方向外側に突き出された板状部分(環状突出部分)を有している実施形態にすることができ、この場合には前記環状突出部分が閉塞部となる。
環状変形部は、筒状容器の開口部側の周壁部が内側に折り曲げられた部分、筒状容器の開口部側の周壁部が縮径された部分などである。
【0010】
溶接部は、溶接自体により閉塞構造の耐圧性を維持するよりも、筒状容器と閉塞部材との間の隙間をシールすることと、閉塞部材が内側からの圧力を受けたとき、環状変形部に対してせん断応力を発生させることで、曲げ応力が発生して環状変形部の形状が回復する(変形前の形状に戻る)ことによる閉塞部材の脱落を防止するものである。
したがって、閉塞部材の固定機能は、かしめなどによって形成される環状変形部で発現され、シール機能は溶接部によって発現されることになるが、第1環状角部に対応する筒状容器に溶接部を形成し、第1環状角部を筒状容器と共に溶接することで、荷重がかかったとき、溶接部ではせん断応力が発生し、それ以外の箇所に溶接するよりも耐荷重が増加する。
例えば、
図10(a)に示すように閉塞部材400(但し、断面図から把握される角部、つまり第1環状角部に相当する部分は環状の曲面となっている)が、筒状容器410のかしめ部411と、筒状容器410と閉塞部材400の周面401との溶接部415において固定されている閉塞構造の場合には、内側から圧力が加えられると、溶接部415がまず破壊する。またかしめ部分411には曲げ応力が発生する。
一般にせん断応力>曲げ応力の関係があることから、溶接部で破壊が発生した後、
図10(b)に示すようにかしめ部311が外側に押し広げられるように変形して閉塞部材400が脱落するので、せん断によるかしめ部411の破壊よりも耐荷重が低い。
また、特許文献1の
図1のガス発生器1の場合には、金属製点火器カラー17の角部(上記第1環状角部に相当する角部)は断面図から把握される角部に曲面が形成されていないため、大きな荷重がかかったとき、前記角部がかしめ部に対して食い込むことで、せん断応力がかかる。上記のようにせん断応力>曲げ応力であるため耐荷重が大きく、荷重がかかっても特許文献の
図1に示す状態が維持され、本件
図10(a)から
図10(b)に示すような変化にはならない。しかし、点火器カラー17の角部をかしめ部に食い込ませるためには、点火器カラー17を構成する金属を硬度の高い部材にする必要があり、材料コストが高くなる。
【0011】
本発明の第1実施形態では、上記した閉塞部材の第1環状角部と金属容器の環状変形部の溶接部が、金属製点火器カラーを硬度の高い素材で形成したときと同様に機能して、溶接部にせん断応力を生じさせている。そのため、かしめ部に食い込むような角部を閉塞部材に形成する必要がなく(角部の形状の加工精度が緩和され)、閉塞部材の加工方法に対する選択肢が増える。この「加工精度が緩和され」るとは、角部に曲面や平面が多少形成されていても耐荷重がせん断応力並みに維持されるという意味である。
なお、上記した溶接部において第1環状角部は溶融しているため、せん断応力の発現は溶接部によるものであり、特許文献1の
図1のガス発生器1における固定構造とは異なるものである。
【0012】
本発明(第2実施形態)は、金属製容器の筒状開口部が金属製の閉塞部材で閉塞された耐圧容器の閉塞構造であって、
前記閉塞部材が閉塞部を有しており、前記閉塞部が、第1面と、第1面とは厚さ方向反対側の第2面、および第1面と第2面の間の周面部を有し、前記筒状開口部と同じ形状で、かつ前記筒状開口部内に挿入できる大きさのものであり、
前記閉塞構造が、
前記筒状開口部の内側に、前記第2面が前記金属製容器の内部に面するように挿入された前記閉塞部材と、
前記筒状開口部の周壁部が前記閉塞部材の閉塞部の第1面と周面部の境界にある第1環状角部に当接されるように変形された環状変形部と、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分が外側から溶接された溶接部を有しているものである、耐圧容器の閉塞構造を提供する。
【0013】
第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造は、第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造とは容器の形状および構造が異なるだけであり、閉塞構造自体は同じものである。
第2実施形態の耐圧容器は、一つの筒状開口部を有していればよいが、複数の筒状開口部を有していてもよい。
第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造は、複数の筒状開口部があるときは、それらの一部または全部に形成されている。
筒状開口部は、容器本体から外側に突き出された形状のもののほか、容器本体から外側に突き出されることなく、容器内側に形成された凹部内に形成された形状のものでもよい。
また筒状開口部は、容器本体と直接に接続されているもののほか、他部材を介して容器本体と接続されたものでもよい。
【0014】
本発明は、ガス排出口を有するハウジング内にガス源が充填され、着火電流によって作動する点火器を含む部品が前記ハウジングの開口部に収容されたガス発生器であり、
少なくとも点火器カラーを備えた点火器が固定された前記開口部において、請求項1または2記載の耐圧容器の閉塞構造が使用されているものである、ガス発生器を提供する。
【0015】
本発明のガス発生器は、ガス発生剤のみをガス発生源とするパイロ式ガス発生器、ガス発生剤とアルゴン、ヘリウムなどをガス発生源とするハイブリッドインフレータなどに適用することができる。
ガス発生器の形態に応じて、ハウジングは筒状のものやディスク状のものなどがある。ディスク状のハウジングは、筒状ハウジングよりも長さ(L)が短く、直径(D)が大きなもの(即ち、筒状ハウジングよりもL/Dが小さいもの)である。
【0016】
ガス発生器が筒状ハウジングを使用している場合には、筒状ハウジングとして、ガス排出口が形成された第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造を使用することができる。この形態では、一端側または両端側において第1実施形態の閉塞構造を使用することができる。
例えば、一端側開口部が金属製カラー(閉塞部材)を備えた点火器が固定されることで閉塞され、他端側開口部が板状の閉塞部材で閉塞され、周壁部に複数のガス排出口を有している形態のガス発生器を挙げることができる。
前記一端開口部側では、金属製カラーの第1環状角部(軸方向反対側が第2環状角部となる)と筒状ハウジングの接触部分が溶接されることで、第1実施形態の閉塞構造が形成されている。
前記他端開口部側では、板状の閉塞部材の第1環状角部(軸方向反対側が第2環状角部となる)と筒状ハウジングの接触部分が溶接されることで、第1実施形態の閉塞構造が形成されている。
【0017】
ガス発生器がディスク状ハウジングを使用している場合には、ディスク状ハウジングとして、ガス排出口が形成された第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造を使用することができる。
例えば、天板、天板と軸方向反対側の底板、天板と底板の間のガス排出口を有する周壁部からなるハウジングにおいて、底板の筒状開口部が金属製カラー(閉塞部材)を備えた点火器で閉塞された形態のガス発生器を挙げることができる。
前記筒状開口部では、金属製カラーの第1環状角部(軸方向反対側が第2環状角部となる)と筒状ハウジングの接触部分が溶接されることで、第2実施形態の閉塞構造が形成されている。
【0018】
本発明は、上記した第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造の形成方法であって、
前記筒状容器の開口部の内側に前記閉塞部材を閉塞部の第2面が内側で第1面が外側になるように挿入する工程、
前記筒状容器の開口部側の周壁部を前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部に当接するまで変形させて環状変形部を形成する工程、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、耐圧容器の閉塞構造の形成方法を提供する。
【0019】
第1工程における閉塞部材の閉塞部の挿入位置は、第2工程における変形部分の長さを考慮して、開口部から少し内側の位置になるように挿入する。
第2工程における変形方法は、
図10(a)に示すように完全に折り曲げる方法、特許文献1の
図1に示すように縮径する方法を適用することができる。具体的な変形方法としては、ローリングかしめ方法などを適用することができる。
第3工程における溶接は、第1環状角部と環状変形部の接触部分が溶接できるのであれば、環状変形部に対して、軸方向に対して斜め方向から、軸方向の正面から、軸方向に直交する方向から溶接することができる。
溶接方法は、レーザー溶接、電子ビーム溶接などを適用することができる。
【0020】
本発明は、上記した第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造の形成方法であって、
前記筒状開口部の内側に前記閉塞部材を閉塞部の第2面が内側で第1面が外側になるように挿入する工程、
前記筒状開口部の周壁部を前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部に当接するまで変形させて環状変形部を形成する工程、
前記閉塞部材の閉塞部の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、耐圧容器の閉塞構造の形成方法を提供する。
【0021】
第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造の形成方法は、第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造の形成方法とは、容器形状が異なるため閉塞部材の取り付け位置が異なるが、同じ工程にて実施することができる。
【0022】
本発明は、上記した第1実施形態の耐圧容器の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法であって、
予めガス排出口が形成された筒状容器にガス源および必要に応じて他の部品を収容配置する工程(第1工程)、
前記筒状容器の第1端開口部から、前記閉塞部を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器を挿入する工程(第2工程)、
前記筒状容器の第1端開口部側の周壁部を前記点火器カラーの閉塞部の第1環状角部に当接するまで変形させて第1環状変形部を形成させる工程(第3工程)、
前記点火器カラーの第1環状角部と前記第1環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程(第4工程)を有している、ガス発生器の製造方法を提供する。
【0023】
第1工程における必要に応じて配置される他の部品は、フィルタ、リテーナなどである。
第2工程における閉塞部となる部分を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器の挿入位置は、第3工程における変形部分の長さを考慮して、開口部から少し内側の位置になるように挿入する。
第3工程における変形方法は、
図10(a)に示すように完全に折り曲げる方法、特許文献1の
図1に示すように縮径する方法を適用することができる。具体的な変形方法としては、ローリングかしめ方法などを適用することができる。
第4工程における溶接は、点火器カラーの第1環状角部と第1環状変形部との接触部分が溶接できるのであれば、第1環状変形部に対して、軸方向に対して斜め方向から、軸方向の正面から、軸方向に直交する方向から溶接することができる。
溶接方法は、レーザー溶接、電子ビーム溶接などを適用することができる。
なお、第1工程にて使用する筒状容器は、筒状容器のいずれか一端開口部が閉塞されたもの、筒状容器のいずれか一端開口部にガス排出口を有する部品(カップ形状のディフューザ部)が溶接などの方法で固定されたものでもよい。カップ形状のディフューザ部は、金属製のカップの周壁部および底面部の一方または両方にガス排出口が形成されているものである。
【0024】
本発明は、第2実施形態の耐圧容器の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法であって、
予めガス排出口が形成された金属製容器内にガス源、点火器および必要に応じて他の部品を収容配置する工程、
前記金属製容器の筒状開口部の内側に前記閉塞部を有する金属製の点火器カラーを備えた点火器を、前記閉塞部の第2面が内側で第1面が外側になるように挿入する工程、
前記金属製容器の筒状開口部の周壁部を前記点火器カラーの第1環状角部に当接するまで内側に変形させて環状変形部を形成させる工程、
前記閉塞部材の第1環状角部と前記環状変形部の接触部分を外側から溶接する工程を有している、ガス発生器の製造方法を提供する。
【0025】
第2実施形態の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法は、第1実施形態の閉塞構造を含むガス発生器の製造方法とは、容器形状が異なるため閉塞部材の取り付け位置が異なるが、同じ工程にて実施することができる。