【実施例】
【0084】
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を以下に示す。ただし本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0085】
<実施例1>
実施例1では、金属−炭素粒子複合材を次の手順で製造した。
【0086】
炭素粒子としての鱗片状黒鉛粒子と、バインダーとしてのポリエチレンオキサイドの3質量%水溶液及びポリビニルアルコールの10質量%水溶液と、溶剤としてのイソプロピルアルコール及び水と、分散剤と表面調整剤とを混合容器内に入れてディスパーによりこれらを撹拌混合して、塗工液を得た。塗工液の粘度は25℃で1000mPa・sであった。
【0087】
鱗片状黒鉛粒子の最長軸方向の平均長さは300μmであり、鱗片状黒鉛粒子の平均アスペクト比は30であった。塗工液に含まれる鱗片状黒鉛粒子の含有量は、バインダーと鱗片状黒鉛粒子との合計質量に対して90質量%であった。
【0088】
アルミニウム箔(Al箔)の帯状条材の塗工予定表面に塗工液をロールtoロール方式のグラビアコーター(詳述するとダイレクトグラビアコーター)により塗工速度2m/minで層状に塗工し、これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。
【0089】
アルミニウム箔の条材の材質はJIS(日本工業規格)アルミニウム合金番号1N30(以下、単に「A1N30」と記する)であり、その厚さは50μm及びその幅は300mmであった。また、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面はアルミニウム箔の条材の厚さ方向の片側の表面であった。
【0090】
そして、塗工箔の条材を乾燥炉内に通過させることにより、鱗片状黒鉛粒子層中の溶剤を鱗片状黒鉛粒子層から蒸発除去した。鱗片状黒鉛粒子層の鱗片状黒鉛粒子の塗工量は80g/m
2であった。
【0091】
次いで、塗工箔の条材を正方形状(その寸法:横50mm×縦50mm)に切断し、これにより塗工箔の条材から正方形状の塗工箔を複数切り出した。そして、塗工箔を12枚積層することで積層体を形成した。
【0092】
次いで、加圧加熱焼結装置としての放電プラズマ焼結装置(SPS装置)により真空雰囲気中にて積層体をその厚さ方向(即ち塗工箔の積層方向)に加圧しながら所定の焼結条件で加熱することにより積層体を焼結した。これにより、金属−炭素粒子複合材としてのアルミニウム−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。複合材の厚さは1mmであった。また、複合材中の鱗片状黒鉛粒子の体積含有率は、複合材の体積に対して40体積%であった。
【0093】
この焼結に適用した焼結条件は次のとおりであった。
【0094】
焼結温度は620℃、焼結温度の保持時間(即ち焼結時間)は3時間、室温からの昇温速度は20℃/min、積層体への加圧力は20MPa、真空度は3Paであった。また、積層体を室温から焼結温度620℃まで加熱する途中で昇温を一旦停止することで、積層体からのバインダーの除去を行った。この際に適用したバインダーの除去条件は次のとおりであった。
【0095】
バインダーを除去するための積層体の加熱温度は450℃、その保持時間は30minであった。
【0096】
複合材は、金属マトリックスとしてのアルミニウムが鱗片状黒鉛粒子間に十分に浸透しており、複合材の内部に空隙が殆ど存在しておらず、複合材の密度は複合材の理論密度の99%であり、複合材の焼結状態は良好であった。
【0097】
また、複合材の平面方向の熱伝導率は442W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも高かった。
【0098】
また、複合材をその厚さ方向に切断した断面について1.5mm(複合材の平面方向)×1.0mm(複合材の厚さ方向)の視野範囲を光学顕微鏡(倍率:75倍)により撮影した断面組織写真を用いて、アルミニウム層の平均厚さと鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さを上述の実施形態に記載の定義に従ってそれぞれ算出した。その結果、アルミニウム層の平均厚さは52μm、鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さは33μmであった。したがって、Xは0.63であった。
【0099】
また、複合材から50mm×10mmの曲げ加工試験片(厚さ1mm)を切り出し、当該試験片について曲げ半径3mmの90°曲げ加工をしたところ、試験片のアルミニウム層及び鱗片状黒鉛粒子分散層について組織的な剥離や破断は見られなかった。
【0100】
<実施例2>
実施例1で用いた塗工液と同じ塗工液を準備した。また、金属箔の条材として次の構成のアルミニウム箔の条材を準備した。
【0101】
アルミニウム箔の条材の材質はA1N30であり、その厚さは15μm及びその幅は300mmであった。また、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面はアルミニウム箔の条材の厚さ方向の片側の表面であった。
【0102】
次いで、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に塗工液を実施例1と同じ塗工方法で塗工し、これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。
【0103】
そして、塗工箔の条材を乾燥炉内に通過させることにより、鱗片状黒鉛粒子層中の溶剤を鱗片状黒鉛粒子層から蒸発除去した。鱗片状黒鉛粒子層の鱗片状黒鉛粒子の塗工量は25g/m
2であった。
【0104】
次いで、塗工箔の条材から実施例1と同じ寸法及び形状の塗工箔を複数切り出した。そして、塗工箔を40枚積層することで積層体を形成した。
【0105】
次いで、積層体を実施例1と同じ焼結装置及び焼結条件で焼結し、これにより、アルミニウム−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。複合材の厚さは1mmであった。また、複合材中の鱗片状黒鉛粒子の体積含有率は、複合材の体積に対して40体積%であった。
【0106】
複合材は、金属マトリックスとしてのアルミニウムが鱗片状黒鉛粒子間に十分に浸透しており、複合材の内部に空隙が殆ど存在しておらず、複合材の密度は複合材の理論密度の99%であり、複合材の焼結状態は良好であった。
【0107】
また、複合材の平面方向の熱伝導率は436W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも高かった。
【0108】
また、複合材のアルミニウム層の平均厚さと鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さを実施例1と同じ方法でそれぞれ算出したところ、アルミニウム層の平均厚さは16μm、鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さは10μmであった。したがって、Xは0.63であった。
【0109】
また、複合材から実施例1と同じ寸法及び形状の曲げ加工試験片を切り出し、当該試験片について実施例1と同じ曲げ加工条件で曲げ加工をしたところ、試験片のアルミニウム層及び鱗片状黒鉛粒子分散層について組織的な剥離や破断は見られなかった。
【0110】
<実施例3>
実施例1で用いた塗工液と同じ塗工液を準備した。また、金属箔の条材として次の構成のアルミニウム箔の条材を準備した。
【0111】
アルミニウム箔の条材の材質はA1N30であり、その厚さは20μm及びその幅は300mmであった。また、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面はアルミニウム箔の条材の厚さ方向の片側の表面であった。
【0112】
次いで、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に塗工液を実施例1と同じ塗工方法で塗工し、これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。
【0113】
そして、塗工箔の条材を乾燥炉内に通過させることにより、鱗片状黒鉛粒子層中の溶剤を鱗片状黒鉛粒子層から蒸発除去した。鱗片状黒鉛粒子層の鱗片状黒鉛粒子の塗工量は10g/m
2であった。
【0114】
次いで、塗工箔の条材から実施例1と同じ寸法及び形状の塗工箔を複数切り出した。そして、塗工箔を40枚積層することで積層体を形成した。
【0115】
次いで、積層体を実施例1と同じ焼結装置及び焼結条件で焼結し、これにより、アルミニウム−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。複合材の厚さは1mmであった。また、複合材中の鱗片状黒鉛粒子の体積含有率は、複合材の体積に対して17体積%であった。
【0116】
複合材は、金属マトリックスとしてのアルミニウムが鱗片状黒鉛粒子間に十分に浸透しており、複合材の内部に空隙が殆ど存在しておらず、複合材の密度は複合材の理論密度の99%であり、複合材の焼結状態は良好であった。
【0117】
また、複合材の平面方向の熱伝導率は320W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも高かった。
【0118】
また、複合材のアルミニウム層の平均厚さと鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さを実施例1と同じ方法でそれぞれ算出したところ、アルミニウム層の平均厚さは21μm、鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さは4μmであった。したがって、Xは0.1
9であった。
【0119】
また、複合材から実施例1と同じ寸法及び形状の曲げ加工試験片を切り出し、当該試験片について実施例1と同じ曲げ加工条件で曲げ加工をしたところ、試験片のアルミニウム層及び鱗片状黒鉛粒子分散層について組織的な剥離や破断は見られなかった。
【0120】
<実施例4>
実施例1で用いた塗工液と同じ塗工液を準備した。また、金属箔の条材として次の構成のアルミニウム箔の条材を準備した。
【0121】
アルミニウム箔の条材の材質はA1N30であり、その厚さは15μm及びその幅は300mmであった。また、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面はアルミニウム箔の条材の厚さ方向の片側の表面であった。
【0122】
次いで、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に塗工液を実施例1と同じ塗工方法で塗工し、これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。
【0123】
そして、塗工箔の条材を乾燥炉内に通過させることにより、鱗片状黒鉛粒子層中の溶剤を鱗片状黒鉛粒子層から蒸発除去した。鱗片状黒鉛粒子層の鱗片状黒鉛粒子の塗工量は36g/m
2であった。
【0124】
次いで、塗工箔の条材から実施例1と同じ寸法及び形状の塗工箔を複数切り出した。そして、塗工箔を33枚積層することで積層体を形成した。
【0125】
次いで、積層体を実施例1と同じ焼結装置及び焼結条件で焼結し、これにより、アルミニウム−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。複合材の厚さは1mmであった。また、複合材中の鱗片状黒鉛粒子の体積含有率は、複合材の体積に対して50体積%であった。
【0126】
複合材は、金属マトリックスとしてのアルミニウムが鱗片状黒鉛粒子間に十分に浸透しており、複合材の内部に空隙が殆ど存在しておらず、複合材の密度は複合材の理論密度の99%であり、複合材の焼結状態は良好であった。
【0127】
また、複合材の平面方向の熱伝導率は522W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも高かった。
【0128】
また、複合材のアルミニウム層の平均厚さと鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さを実施例1と同じ方法でそれぞれ算出したところ、アルミニウム層の平均厚さは16μm、鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さは15μmであった。したがって、Xは0.94であった。
【0129】
また、複合材から実施例1と同じ寸法及び形状の曲げ加工試験片を切り出し、当該試験片について実施例1と同じ曲げ加工条件で曲げ加工をしたところ、試験片のアルミニウム層及び鱗片状黒鉛粒子分散層について組織的な剥離や破断は見られなかった。
【0130】
<実施例5>
実施例1で用いた塗工液と同じ塗工液を準備した。また、金属箔の条材として次の構成の銅箔(Cu箔)の条材を準備した。
【0131】
銅箔の条材の材質はC1020であり、その厚さは50μm及びその幅は300mmであった。また、銅箔の条材の塗工予定表面は銅箔の条材の厚さ方向の片側の表面であった。
【0132】
次いで、銅箔の条材の塗工予定表面に塗工液を実施例1と同じ塗工方法で塗工し、これにより、銅箔の条材の塗工予定表面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。
【0133】
そして、塗工箔の条材を乾燥炉内に通過させることにより、鱗片状黒鉛粒子層中の溶剤を鱗片状黒鉛粒子層から蒸発除去した。鱗片状黒鉛粒子層の鱗片状黒鉛粒子の塗工量は80g/m
2であった。
【0134】
次いで、塗工箔の条材から実施例1と同じ寸法及び形状の塗工箔を複数切り出した。そして、塗工箔を12枚積層することで積層体を形成した。
【0135】
次いで、放電プラズマ焼結装置により真空雰囲気中にて積層体をその厚さ方向に加圧しながら所定の焼結条件で加熱することにより積層体を焼結した。これにより、金属−炭素粒子複合材としての銅−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。複合材の厚さは1mmであった。また、複合材中の鱗片状黒鉛粒子の体積含有率は、複合材の体積に対して40体積%であった。
【0136】
複合材は、金属マトリックスとしての銅が鱗片状黒鉛粒子間に十分に浸透しており、複合材の内部に空隙が殆ど存在しておらず、複合材の密度は複合材の理論密度の99%であり、複合材の焼結状態は良好であった。
【0137】
また、複合材の平面方向の熱伝導率は530W/(m・K)であり、銅の熱伝導率よりも高かった。
【0138】
また、複合材の銅層の平均厚さと鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さを実施例1と同じ方法でそれぞれ算出したところ、銅層の平均厚さは53μm、鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さは33μmであった。したがって、Xは0.62であった。
【0139】
また、複合材から実施例1と同じ寸法及び形状の曲げ加工試験片を切り出し、当該試験片について実施例1と同じ曲げ加工条件で曲げ加工をしたところ、試験片の銅層及び鱗片状黒鉛粒子分散層について組織的な剥離や破断は見られなかった。
【0140】
<比較例1>
実施例1で用いた塗工液と同じ塗工液を準備した。また、金属箔の条材として次の構成のアルミニウム箔の条材を準備した。
【0141】
アルミニウム箔の条材の材質はA1N30であり、その厚さは6μm及びその幅は300mmであった。また、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面はアルミニウム箔の条材の厚さ方向の片側の表面であった。
【0142】
次いで、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に塗工液を実施例1と同じ塗工方法で塗工し、これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。
【0143】
そして、塗工箔の条材を乾燥炉内に通過させることにより、鱗片状黒鉛粒子層中の溶剤を鱗片状黒鉛粒子層から蒸発除去した。鱗片状黒鉛粒子層の鱗片状黒鉛粒子の塗工量は10g/m
2であった。
【0144】
次いで、塗工箔の条材から実施例1と同じ寸法及び形状の塗工箔を複数切り出した。そして、塗工箔を100枚積層することで積層体を形成した。
【0145】
次いで、積層体を実施例1と同じ焼結装置及び焼結条件で焼結し、これにより、アルミニウム−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。複合材の厚さは1mmであった。また、複合材中の鱗片状黒鉛粒子の体積含有率は、複合材の体積に対して40体積%であった。
【0146】
複合材は、金属マトリックスとしてのアルミニウムが鱗片状黒鉛粒子間に十分に浸透しており、複合材の内部に空隙が殆ど存在しておらず、複合材の密度は複合材の理論密度の99%であり、複合材の焼結状態は良好であった。
【0147】
また、複合材の平面方向の熱伝導率は438W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも高かった。
【0148】
また、複合材のアルミニウム層の平均厚さと鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さを実施例1と同じ方法でそれぞれ算出したところ、アルミニウム層の平均厚さは6μm、鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さは4μmであった。したがって、Xは0.67であった。
【0149】
また、複合材から実施例1と同じ寸法及び形状の曲げ加工試験片を切り出し、当該試験片について実施例1と同じ曲げ加工条件で曲げ加工をしたところ、試験片のアルミニウム層及び鱗片状黒鉛粒子分散層について組織的な剥離と破断が見られた。
【0150】
<比較例2>
実施例1で用いた塗工液と同じ塗工液を準備した。また、金属箔の条材として次の構成のアルミニウム箔の条材を準備した。
【0151】
アルミニウム箔の条材の材質はA1N30であり、その厚さは15μm及びその幅は300mmであった。また、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面はアルミニウム箔の条材の厚さ方向の片側の表面であった。
【0152】
次いで、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に塗工液を実施例1と同じ塗工方法で塗工し、これにより、アルミニウム箔の条材の塗工予定表面に鱗片状黒鉛粒子層が形成された塗工箔の条材を得た。
【0153】
そして、塗工箔の条材を乾燥炉内に通過させることにより、鱗片状黒鉛粒子層中の溶剤を鱗片状黒鉛粒子層から蒸発除去した。鱗片状黒鉛粒子層の鱗片状黒鉛粒子の塗工量は80g/m
2であった。
【0154】
次いで、塗工箔の条材から実施例1と同じ寸法及び形状の塗工箔を複数切り出した。そして、塗工箔を20枚積層することで積層体を形成した。
【0155】
次いで、積層体を実施例1と同じ焼結装置及び焼結条件で焼結し、これにより、アルミニウム−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。複合材の厚さは1mmであった。また、複合材中の鱗片状黒鉛粒子の体積含有率は、複合材の体積に対して70体積%であった。
【0156】
複合材は、金属マトリックスとしてのアルミニウムが鱗片状黒鉛粒子間にあまり浸透しておらず、複合材の内部において鱗片状黒鉛粒子間とアルミニウム箔間にそれぞれ空隙が存在しており、複合材の焼結状態はあまり良くなく、複合材の熱伝導率を測定することができなかった。
【0157】
また、複合材のアルミニウム層の平均厚さと鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さを実施例1と同じ方法でそれぞれ算出したところ、アルミニウム層の平均厚さは16μm、鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さは33μmであった。したがって、Xは2.1であった。
【0158】
また、複合材から実施例1と同じ寸法及び形状の曲げ加工試験片を切り出し、当該試験片について実施例1と同じ曲げ加工条件で曲げ加工をしたところ、試験片のアルミニウム層及び鱗片状黒鉛粒子分散層について組織的な剥離と破断が見られた。
【0159】
<比較例3>
実施例1で用いた鱗片状黒鉛粒子と同じ鱗片状黒鉛粒子を準備した。また、アルミニウムペーストを準備した。アルミニウムペーストは、鱗片状アルミニウム粉末にミネラルスピリット及び脂肪酸が添加された、アルミニウムの固形分が70質量%のものであった。
【0160】
次いで、鱗片状黒鉛粒子61gとアルミニウムペースト160gと10%ポリスチレン−クメン溶液100gとを混合、混練及び分散してペースト状にした。そして、このペースト状物をドクターブレード法によりPETシート上にシート成形し、その後、1日の間、風乾した。次いで、PETシートを剥がすことによりアルミニウム粉末−鱗片状黒鉛粒子のグリーンシートを製作した。グリーンシートの厚さは1mmであった。
【0161】
次いで、グリーンシートから実施例1と同じ寸法及び形状のシート素片を複数切り出した。そして、シート素片を10枚積層することで積層体を形成した。
【0162】
次いで、積層体を実施例1と同じ焼結装置及び焼結条件で焼結し、これにより、アルミニウム−鱗片状黒鉛粒子複合材を得た。複合材の厚さは1mmであった。また、複合材中の鱗片状黒鉛粒子の体積含有率は、複合材の体積に対して40体積%であった。
【0163】
複合材は、金属マトリックスとしてのアルミニウムが鱗片状黒鉛粒子間に十分に浸透しており、複合材の内部に空隙が殆ど存在しておらず、複合材の密度は複合材の理論密度の99%であり、複合材の焼結状態は良好であった。
【0164】
また、複合材の平面方向の熱伝導率は440W/(m・K)であり、アルミニウムの熱伝導率よりも高かった。なお、この複合材では、複合材の平面方向とは積層体の焼結時に積層体を加圧した方向に垂直な方向を意味する。
【0165】
また、複合材では、金属マトリックスとしてのアルミニウム中に複合材の平面方向に配向した鱗片状黒鉛粒子が三次元的にランダムに分散しており、アルミニウム層の平均厚さ及び鱗片状黒鉛粒子分散層の平均厚さをそれぞれ定義することができなかった。
【0166】
また、複合材から実施例1と同じ寸法及び形状の曲げ加工試験片を切り出し、当該試験片について実施例1と同じ曲げ加工条件で曲げ加工をしたところ、アルミニウムマトリックス組織、及びアルミニウム/鱗片状黒鉛粒子界面について組織的な剥離と破断が見られた。
【0167】
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0168】
【表1】
【0169】
なお、同表中の「曲げ加工試験の評価」欄における符号の意味は次のとおりである。
【0170】
○:良好
×:不良(破断)