【文献】
IT企業が「退社時間の見える化」をアナログ手法で行う理由−「CTCの働き方改革」,マイナビニュース,日本,株式会社マイナビ,2017年 1月12日,[online],[令和3年2月19日検索],URL,https://news.mynavi.jp/article/20170122-ctc/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ネットワークを介して接続された管理者装置とユーザ端末とを備え、管理者装置からユーザ端末に送信される、色彩及び/又は形状ごとに異なる退勤時刻が示された複数種類のカードを模した所定のカード情報に基づいて、ユーザ端末を使用するユーザの勤務時間を管理するための勤務時間管理システムであって、
管理者装置が、
前記カード情報として、ユーザごとに配付する当月内で使用できる前記カードの種類と枚数を含む所定情報を設定する配付カード情報設定手段と、
前記配付カード情報設定手段で設定されたカード情報を、該当するユーザが使用する前記ユーザ端末に送信する配付カード情報送信手段と、
前記ユーザ端末から送信される、当日に使用される前記カード情報を受信する使用カード情報受信手段と、
前記使用カード情報受信手段で受信された前記カード情報を、ユーザ毎に管理する使用カード情報管理手段と、を備え、
前記ユーザ端末が、
前記管理者装置から送信される、ユーザごとに配付される当月内で使用可能な前記カード情報を受信する配付カード情報受信手段と、
前記配付カード情報受信手段で受信された前記カード情報の種類と枚数を記憶する配付カード情報記憶手段と、
前記配付カード情報記憶手段に記憶された前記カード情報のうち、所定の選択操作に応じて、当日に使用される1枚の前記カード情報を選択し、前記管理者装置に送信する使用カード情報送信手段と、
前記配付カード情報記憶手段に記憶された前記カード情報のうち、前記使用カード情報送信手段により送信されたカード情報を削除する使用カード情報削除手段と、を備え、
前記ユーザ端末を使用するユーザが、
前記配付カード情報記憶手段に記憶された複数の前記カード情報を1日に1枚ずつ使用して、前記使用カード情報送信手段により送信されたカード情報に示された退勤時刻までに当日の業務を終了することにより、前記カード情報に示された退勤時刻によって規定される業務時間の範囲内で当月の業務を終了することができる
ことを特徴とする勤務時間管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る勤務時間管理方法及び勤務時間管理システムの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここで、以下に示す本発明の勤務時間管理システムは、プログラム(ソフトウェア)の命令によりコンピュータで実行される処理,手段,機能によって実現される。プログラムは、コンピュータの各構成要素に指令を送り、以下に示す本発明に係る所定の処理や機能等を行わせることができる。すなわち、本発明における各処理や手段,機能は、プログラムとコンピュータとが協働した具体的手段によって実現される。
【0013】
なお、プログラムの全部又は一部は、例えば、磁気ディスク,光ディスク,半導体メモリ,その他任意のコンピュータで読取り可能な記録媒体により提供され、記録媒体から読み出されたプログラムがコンピュータにインストールされて実行される。また、プログラムは、記録媒体を介さず、通信回線を通じて直接にコンピュータにロードし実行することもできる。また、本発明に係る勤務時間管理システムは、単一の情報処理装置(例えば1台のパーソナルコンピュータ等)で構成することもでき、複数の情報処理装置(例えば複数台のサーバコンピュータ群等)で構成することもできる。
【0014】
[勤務時間管理方法]
まず、
図1〜6を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る勤務時間管理方法について説明する。
本実施形態に係る勤務時間管理方法は、色彩ごとに異なる退勤時刻が示された複数種類のカード1と、カード1を回収する回収箱20a(
図3参照)を用いて勤務時間を管理する方法である。なお、後述するように、異なる退勤時刻が示された複数種類のカードの種別を区別する手段として、色彩以外に、形状、模様であってもよく、またそれらの任意の組み合わせによってカード種別を区別するようにしてもよい。
図1は、本発明の一実施形態に係る勤務時間管理方法で使用されるカードの一例を示す説明図である。
【0015】
[カード]
同図に示すように、本実施形態で使用するカード1は、例えば免許証サイズや名刺サイズ,トランプカードサイズなど、所定の大きさに形成された紙製や樹脂製のカード部材で構成されている。
各カードの片面又は両面には、カードを使用するユーザである勤労者の退勤時刻を示す数字が、カード面の中心に大きく表示・印字されるとともに、カード面のほぼ全体が、退勤時刻に合わせた異なる色彩で彩色されるようになっている。
具体的には、
図1に示す例では、カード1は、青色の18時カード1a,黄色の20時カード1b,赤色の22時カード1cの3種類のカードから構成されている。
なお、カードの種類は上記した種類に限らず、業種業態や企業独自の施策等に応じて任意に設計することができる。
【0016】
18時カード1aは、退勤時刻「18時(午後6時)」を示す数字「18」がカード面の中央に大きく描かれ、その数字及び数字の周囲のほぼ全体が「青色」で彩色されている。「青色」は信号機の青信号に対応した「進め」の意味であり、「18時」は、例えば「定時」などの推奨される退勤時刻であることを意味している。
20時カード1bは、退勤時刻「20時(午後8時)」を示す数字「20」がカード面に描かれ、数字及び数字の周囲が「黄色」で彩色されている。「黄色」は信号機の黄信号に対応した「注意」の意味であり、「20時」は注意が必要となる退勤時刻であることを意味している。
【0017】
22時カード1cは、退勤時刻「22時(午後10時)」を示す数字「22」がカード面に描かれ、数字及び数字の周囲が「赤色」で彩色されている。「赤色」は信号機の黄信号に対応した「止まれ」の意味であり、「22時」は可能な限り止める(少なくする)べき退勤時刻であることを意味している。
また、上記の各カード1a〜1cには、
図1に示すように、各ユーザが自己の氏名等を記入する欄が設けられており、使用したカード1を回収箱20a(
図3参照)に返却する際に、使用したカード1に氏名等を記入できるようになっている。なお、氏名等は、予めカード1に印字・刻印等されていても良く、また、氏名等の情報を予め2次元コードに変換してカード1に印字等しても良い。
【0018】
以上のようなカード1によって、カード1を所定の場所に掲示することで、カード1を使用した本人及び周囲の人間が、そのカード使用者の当日の「退勤時刻」が一目で認識できるようになる。
ここで、本実施形態では、上記のような3種類のカード1を、使用者が使用する権利を有し、使用するか否かがユーザの裁量に委ねられる「権利型カード」又は「裁量型カード」と呼ぶ。これ以外に、本実施形態では、後述する「追加カード」(
図5参照)や、「義務型カード」(
図9参照)も用いることができる。
また、このようなカード1には、適宜、名称・愛称などを付けて使用・運用することができる。
【0019】
なお、既に述べたとおり、以上のようなカード1のデザインや形状・大きさ等は特に限定されるものではない。
例えば、カード面の数字や彩色は、カード1の少なくとも片面に備えられていれば良い。カード1の両面に数字・彩色があれば、いずれの面からも「退勤時刻」が認識できることから好ましいが、片面に、例えば勤労者が勤務する企業の社名やマークなどを表すことも可能である。
また、カード面に表す彩色は、上記の色以外でもよく、また、彩色を省略することもできる。すなわち、カード面には、少なくとも退勤時刻を示す数字や表示が表されて、カードを使用した際に、本人及び周囲に「本時の退勤時刻は〇〇時」だと認識させることができるものであれば良い。また、色彩の代わりに、模様を用いてもよく、退勤時刻ごとに適したイラスト等を用いて周囲に認識させるようにしても良い。
また、カード1の形状や大きさも、矩形の免許証サイズなどに限定されず、例えば楕円形や星形など各種の形状や、大きさも認識しやすい任意のサイズとすることができる。
【0020】
そして、以上のようなカード1は、次のようにして用いることができる。
まず、カード1は、
図2に示すように、カード1を使用するユーザである勤労者の上司などの所定の管理者が、ユーザごとに当月内で使用できるカードの種類と枚数を定めて配付する。
所定枚数・種類のカード1が配付されたユーザは、配付されたカードのうち1枚を選択して、
図3に示すように、当日の業務開始時に所定の場所に掲示し、掲示したカードに示された退勤時刻までに当日の業務を終了する。
そして、上記のようなカード1を使用・掲示したユーザは、
図3に示すように、前日に掲示したカードを、翌日に所定の回収箱20aに返却する。
このようにすることで、各ユーザは、自己に配付された複数のカード1を、1日に1枚ずつ使用することにより、配付された全てのカード1に示された退勤時刻によって規定される所定の業務時間の範囲内で、当月の業務を終了することができるようになる。
【0021】
[カード運用]
以下、本実施形態におけるカード1を使用した勤務時間管理方法の具体的な運用について説明する。
まず、カード1の基本セットとして、
図1に示すように、(1)18時カード1a(青色):20枚(デフォルトカードとして1枚の場合もある)、(2)20時カード1b(黄色):8枚、(3)22時カード1c(赤色):2枚、合計30枚を、ユーザの人数分だけ用意する。それぞれ、(1)18時カード1a:18時までに退社予定、(2)20時カード1b:20時までに退社予定、(3)22時カード1c:22時までに退社予定、であることを示している。
なお、「デフォルトカード」とは、18時カード1aのように使用が推奨されているカードについては、複数枚を配付せず、1枚のカード1aを繰り返し使用できるようにするものである。この場合、デフォルトカード(カード1a)は、翌日の返却は不要となる。
【0022】
これらのカード1は、
図2に示すように、カード1を使用するユーザである勤労者の上司や所属長などが、各ユーザに対して、当月内で使用できるカードの種類と枚数を定めて、例えば、当月の月初め(毎月第1営業日)や前月の月末(最終営業日)などに配付する。
管理者は、各ユーザの業務内容に職位・職歴などに応じて、当該ユーザの当月の業務時間・残業時間を勘案して、また、前月のカード1の使用状況などを考慮して(
図5参照)、ユーザ毎に上限の残業時間を規定した所定の種類・枚数のカード1を配付する。
これによって、例えば上述した基本セットの場合には、「20時カード1b:8枚」と「22時カード1c:2枚」を全て使用したとしても、最大の残業時間(観察時間)は、約35時間程度に規定されることになる。
【0023】
ユーザは、自己に配付された当月分の複数のカード1の中から、任意の1枚を選択し、
図3に示すように、当日の業務開始時に所定の場所、例えばデスクトップPC(ユーザ端末30a〜30n)の上などに掲示する。
そして、当日は、掲示したカード1に記載された時刻(例えば「18時」,「22時」など)までに退社できるように業務を遂行する。
なお、当日にカード1で掲示・宣言した時刻までに退社できない場合、カード1を差し換え(例えば「18時カード1a」を「22時カード1c」に差し替え)ても良いことにする。但し、差し替えは、手持ちのカード1の範囲内とし、手持ちのカード1が残っていない場合にはできないこととする。
【0024】
その後、翌日(翌営業日)には、ユーザは前日に掲示したカード1を、自身の氏名を記載した上で、
図3に示すように、管理者席などに設置された回収箱20aに格納・返却する。
本実施形態に係る格納箱20aは、
図3に示すように、色別の仕切り・格納スペースが設けられており、ユーザは自己が掲示したカード1の色に対応した仕切りにカード1を格納する。
そして、カード1を返却したユーザは、当日使用分のカード1として、所有する残りのカード1の中から新しい1枚を選択して、上述と同様に、自席のPCなどの所定の場所にカード1を掲示する。
なお、前日に掲示したカード1が、上述したデフォルトカード(18時カード1a:青色)の場合には、回収箱20aに返却せず、繰り返し使用することができる。
以上のような運用を繰り返すことで、各ユーザは、自己に配付された複数のカード1を、1日に1枚ずつ使用して日々の業務を遂行することで、配付された手持ちのカード1の退勤時刻によって規定される所定の業務時間の範囲内で、当月の業務を終了できることになる。
【0025】
上記のような運用が通常の基本パターンであるが、例えば、繁忙期や突発的なトラブル対応等で、ユーザが保有する(青色以外の)カード1が足りなくなったような場合には、ユーザが管理者に申請することで、新たなカードを入手することができる。
本実施形態では、上述した基本セット(青:20枚・黄色:8枚・赤色2枚)の他に、
図4に示すように、追加カード2を用意している。
同図に示す例では、追加カード2は、追加20時カード1b(黄色+黒色):6枚と、追加22時カード1c(赤色+黒色):6枚の、最大12枚の追加カード2を、ユーザの申請に応じて管理者が発行・配付できるようにしている。
追加カード2は、
図4に示すように、追加されたカードであることが認識できるように、本来の色(黄色又は赤色)とともに、追加であることを示す色(黒色)を合わせて彩色するようにしてある。
【0026】
このような追加カード2を使用することで、例えば、上述した基本セットの「20時カード1b:8枚」と「22時カード1c:2枚」を全て使用し、更に追加カード2の「20時追加カード2a:6枚」と「22時追加カード2b:6枚」を全て使用したとしても、最大の残業時間(観察時間)は、約66時間程度に規定されることになる。
なお、このような追加カード2については、
図5に示すように、各ユーザの前月のカード1や追加カード2の使用状況を考慮して、翌月のカード1の種類・枚数を決定・調整・変更することができる。
【0027】
例えば、
図5に示す例では、ユーザAの場合、前月は「青カード(18時カード1a)」のみが使用されていることから、翌月には「赤カード(22時カード1c)」を基本セット2枚から4枚(22時追加カード2bを2枚追加)まで使用できるようにする。
また、ユーザBの場合、前月の「赤カード(22時カード1c)」の使用枚数が多かった(2枚使用)ので、翌月は「赤カード(22時カード1c)」の枚数を減らす(1枚にする)ようにする。
また、ユーザCの場合、前月に「赤カード(22時カード1c)」を合計4枚(22時追加カード2bを2枚使用)していることから、翌月は「赤カード(22時カード1c)」を配付しないようにする。
また、ユーザDの場合、前月の「赤カード(22時カード1c)」の使用枚数が少なかった(1枚使用)ので、翌月には「赤カード(22時カード1c)」を基本セット2枚から4枚(22時追加カード2bを2枚追加)まで使用できるようにする。
【0028】
以上が、カード1(及び追加カード2)を使用した基本的な勤務時間管理方法の運用パターンであるが、派生的な運用方法として、例えば以下のような内容を採用・追加することができる。
例えば、上記のようなカード1,2に、2次元コードを付加し、それを回収箱20aなどにおいて読み取ることができる。
このようにすると、回収箱20aにカード1,2が返却されて格納されると、回収箱20aに備えられた2次元コード読取装置が、カード1,2に印字された2次元コードの情報を自動的に読み取って、読み取ったデータを使用・管理することができる。
【0029】
具体的には、2次元コードから取得される情報として、少なくとも退社時刻とユーザに関する情報を含む場合、これらの情報を管理者装置20に送信する。
管理者装置20では、取得された情報を、例えばダッシュボード化(業務スタイルの定量的な分析等)して、管理者に提供することができる。具体的な例として、カード種別に基づいてユーザの退勤履歴を色分けして管理者に提供することで、所定の期間におけるユーザの労働時間の配分を可視化することができる。また、「長時間労働の抑制」や「人員配置の最適化」等といった主題を設定して、収集したデータを機械学習等の周知技術で解析するようにしても良く、管理者が改善したい課題(例えば長時間労働等)の該当者に特有のパターンを抽出して施策の検討材料としても良い。
この場合、当該ユーザの他のデータと組み合わせて分析しても良く、また、例えばユーザの健康に関するデータと結合させて分析できるようにすること可能である。なお、当該ユーザの他のデータの例として、有給取得数等の勤怠情報、人事評価や異動履歴等の人事情報、PCログイン時刻やWebログ等の行動データ等が挙げられるが、これらに限定するものではない。
【0030】
なお、このようなカード1,2を介した情報の取得は、2次元コードの読取だけに限られず、他の手段によっても良い。例えば、カード面の色や記載された文字やバーコード等の読み取りによって実現することもできる。
また、回収箱20aには、自動裁断(シュレッダー)機能を備えることもでき、情報を読み取った後は自動的にカード1,2を裁断するようにしても良い。
【0031】
また、ユーザ毎のカード1,2の前月の利用実績に基づいて、カード1,2の種類毎の印刷枚数を制御することができる。例えば、管理者が定める限度の範囲内でカード1を利用したユーザは、デフォルトの枚数(青:20枚又は1枚、黄:8枚、赤:2枚)のカード1が印刷される設定となるが、限度を超えて(追加カード2を)利用したユーザについては、予め設定されたパターン(青:20枚又は1枚のみ)で印刷されるように制御しても良い。
さらに、ユーザ端末30において、ユーザ自身が、自己が使用するカード1,2の2次元コード等を読み取るようにしても良く、読み取った情報とユーザの情報(ユーザID等)を紐づけて記憶し、例えば「Outlook」(登録商標)などのユーザの予定表アプリに退社予定時間を自動登録(ユーザが選択したカードの色彩を反映した予定を自動登録できるようにしても良い)することや、ユーザの位置情報や現在の予定等を管理するツールに情報を連携できるようにしたり、プロジェクト管理ツールに連携させることもできる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係るカード1を用いた勤務時間管理方法によれば、各ユーザが、自己に配付された複数のカード1を、1日に1枚ずつ使用することにより、配付された全てのカード1に示された退勤時刻によって規定される所定の業務時間の範囲内で、当月の業務を終了することができるようになる。
これによって、以下のような働き方改善とそれによる生産性の向上を図ることができるようになる。
【0033】
まず、管理者が、勤労者である各ユーザの業務時間の限度(例えば当月の残業上限)のみを定めることで、規制・介入を最小限にした「総量合意」を得ることできる。
また、管理者とユーザが合意した総量の範囲内であれば、時間をどのように配分するかはユーザ個々人の裁量となり、ユーザが自分自身で業務時間をコーディネートする「セルフコントロール」を促進させることができる。
さらに、各ユーザが、自身の退社予定時刻をカードにより職場内で「見える化」し、また、カードを翌日に管理者の回収ボックスに格納することで、職場での「コミュニケーション」のトリガーとなり、ユーザと管理者、部下と上司、被雇用者と雇用者との間で「コミュニケーション」を促進・活発化させることができるようになる。
【0034】
なお、上述した本実施形態では特に図示していないが、勤務時間管理方法で使用可能なカードとしては、
図1に示したカード1(権利型カード)及びカード2(追加カード)の他に、更に別のカードを使用することもでき、例えば、ユーザが当月中に必ず使用しなければならない「義務型カード」を(
図9参照)も用いることができる。
この義務型カードとしては、ユーザに定時前の早帰りを促す「15時カード」や「12時カード」,「10時カード」などがある。このような義務型カードが配付されたユーザは、配付されたカードを当月内に必ず使用しなければならず、強制的に早帰りなどを行わせることができるようになる。
この「義務型カード」の運用については、
図9を参照しつつ後述する。
【0035】
[勤務時間管理システム]
次に、
図6〜16を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る勤務時間管理システム10について説明する。
本実施形態に係る勤務時間管理システム10は、上述した(物理的な)カード1を用いた勤務時間管理方法をコンピュータシステム上で実施するためのものであり、カード1を用いた勤務時間管理方法を電子化・デジタル化した形態として捉えることができる。
したがって、以下に示す本実施形態の勤務時間管理システム10は、上述したカード1を用いた勤務時間管理方法とともに併用して実施することが望ましいが、物理的なカード1を使用することなく、単独のコンピュータシステムとして実施することもできる。
【0036】
具体的には、勤務時間管理システム10は、管理者装置20からユーザ端末30に送信される、色彩ごとに異なる退勤時刻が示された複数種類のカードを模した所定のカード情報に基づいて、ユーザ端末30を使用するユーザの勤務時間を管理するためのシステムを構成している。なお、既に述べたように、異なる退勤時刻が示された複数種類のカードの種別を区別する手段として、色彩以外に、形状、模様であってもよく、またそれらの任意の組み合わせによってカード種別を区別するようにしてもよいので、前記カード情報は、例えば、形状ごとに異なる退勤時刻が示された複数種類のカードを模したものでよく、同様に、模様ごとに異なる退勤時刻が示された複数種類のカードを模したものとしてもよい。
図6に、本発明の一実施形態に係る勤務時間管理システム10の機能構成を示す。
同図に示す本発明の一実施形態に係るシステムは、上述したカード1を用いた勤務時間管理方法を、ネットワークを介して接続される複数の情報処理装置によって実行するために、管理者装置20と、ユーザ端末30(30a〜30n)を備えた勤務時間管理システム10として構成されている(
図3参照)。
この勤務時間管理システム10を構成する管理者装置20及びユーザ端末30は、例えばインターネットや社内LAN等の所定のネットワークを介して、相互にデータ通信可能に接続される。
【0037】
[管理者装置20]
管理者装置20は、例えば1又は2以上のサーバコンピュータや、クラウドコンピューティングサービス上に構築された1又は2以上の仮想サーバからなるサーバシステム等によって構成することができる。
この管理者装置20には、図示しないOS(Operating System)やDBMS(DataBase Management System)などが備えられ、サーバコンピュータとして運用されるようになっている。
【0038】
また、管理者装置20には、Webサーバプログラムなどのミドルウェア上で稼働するソフトウェアが実装されるようになっている。
また、管理者装置20には、データベース等として実装される記憶手段(DWH:データウェアハウス)が備えられ、後述するカード情報記憶手段26となるデータベースを構成するとともに、本発明に係る勤務時間管理システム10の運用に必要となる所定の情報を取得・蓄積する記憶手段が備えられる。
記憶手段には、各種の情報リソースとして、後述するカード情報やユーザ情報などが記憶されるとともに、本実施形態に係る管理者装置20に必要となる所定の情報が格納され、管理者装置20の運用に伴って随時必要な情報が読み出されて、記憶・更新される。
【0039】
そして、以上のような管理者装置20は、具体的には、
図6に示すように、配付カード情報設定手段21,配付カード情報送信手段22,使用カード情報受信手段23,使用カード情報管理手段24,アラート情報送信手段25,カード情報記憶手段26として機能するように構成されている。
配付カード情報設定手段21は、上述した(物理的な)カード1を模した所定のカード情報として、ユーザごとに配付する当月内で使用できるカードの種類と枚数を含む所定情報を設定する手段である(後述する
図7〜8参照)。
ここで、ユーザごとに設定されるカード情報としては、ユーザを識別・特定するためのユーザ情報(ユーザIDや氏名等)と、当該ユーザが当月内で使用できるカードの種類・枚数を示す情報(テキスト情報やカードを示す画像情報等)などである。
【0040】
配付カード情報送信手段22は、配付カード情報設定手段21で設定されたカード情報を、該当するユーザが使用するユーザ端末30に送信する手段である。
この配付カード情報送信手段22は、毎月の所定の日時、例えば、当月の月初め(毎月第1営業日)や前月の月末などに、所定のカード情報を該当するユーザが使用するユーザ端末30に送信する。
使用カード情報受信手段23は、ユーザ端末30から送信される、当日に使用されるカード情報を受信する手段である。
【0041】
使用カード情報管理手段24は、使用カード情報受信手段23で受信されたカード情報を、ユーザ毎に管理する手段である。
具体的には、使用カード情報管理手段24は、ユーザ毎に、当該ユーザを特定するための所定のユーザ情報と、当該ユーザが使用するユーザ端末30から送信されるカード情報と、当該ユーザの現在の状況を示す所定のステータス情報とを当日毎に管理して、一又は二以上のユーザの情報として一覧表示可能に出力する(後述する
図10及び11参照)。
【0042】
アラート情報送信手段25は、当日に使用されるカード情報を、所定時刻までにユーザ端末30から受信しない場合に、該当するユーザ端末30に所定のアラート情報を送信する手段である。
カード情報記憶手段26は、上記のような各手段21〜25によってユーザ端末30との間で送受信されるカード情報を含む各種の情報・データを記憶する記憶手段である。
以上のような管理者装置20の各手段21〜26によって実行される勤務時間管理のための処理・動作の詳細については、
図6〜16を参照しつつ後述する。
【0043】
[ユーザ端末30]
ユーザ端末30(30a〜30n)は、上述した管理者装置20とデータ通信可能に接続される、例えばPC、タブレット端末、スマートフォン等で構成される情報処理装置である。
具体的には、本実施形態に係るユーザ端末30は、配付カード情報受信手段31,配付カード情報記憶手段32,使用カード情報送信手段33,使用カード情報削除手段34として機能するように構成されている。
【0044】
配付カード情報受信手段31は、上述した管理者装置20から送信される、ユーザごとに配付される当月内で使用可能なカード情報を受信する手段である。
配付カード情報記憶手段32は、配付カード情報受信手段31で受信されたカード情報の種類と枚数を記憶する記憶手段である。
使用カード情報送信手段33は、配付カード情報記憶手段32に記憶されたカード情報のうち、ユーザ端末30への所定の選択操作に応じて、当日に使用される1枚のカード情報を選択して管理者装置20に送信する手段である。
使用カード情報削除手段34は、配付カード情報記憶手段32に記憶されたカード情報のうち、使用カード情報送信手段33によって管理者装置20に送信されたカード情報を削除する手段である。
【0045】
そして、以上のような各手段31〜34を備えるユーザ端末30を使用することにより、ユーザは、配付カード情報記憶手段32に記憶された複数のカード情報を1日に1枚ずつ使用して、使用カード情報送信手段33により送信されたカード情報に示された退勤時刻までに当日の業務を終了するように業務を遂行する。
これによって、当月に管理者装置20から配付・送信されたカード情報に示された退勤時刻によって規定される業務時間の範囲内で、当月の業務を終了することができるようになる。
以上のようなユーザ端末30の各手段31〜34によって実行される勤務時間管理のための処理・動作の詳細についても、
図6〜16を参照しつつ後述する。
【0046】
[動作]
次に、以上のような本実施形態に係る勤務時間管理システム10における具体的な処理・動作(勤務時間管理方法の実施)について、
図6〜15を参照して説明する。
本システムの運用は、まず、管理者装置20から、各ユーザ端末30に、当該ユーザに対して設定された所定の枚数・種類のカード(基本セット又は他のセット(特別セット等))を示すカード情報のデータが送信される(配付カード情報送信手段22)ことで開始される。
配付カード情報の送信に先立って、管理者装置20では、ユーザごとに配付する当月内で使用できるカードの種類と枚数を含む所定のカード情報が設定される(配付カード情報設定手段21)。
【0047】
配付カード情報の設定は、管理者装置20を操作する管理者が、管理者装置20の表示手段に表示される一覧情報を介して行うことができる。
図7に、管理者装置20で出力・表示されるカード情報の設定画面を示す。
同図に示すように、管理者装置20では、管理対象となる複数のユーザのユーザID・氏名・カード種別を関連付けて設定・記憶するための設定画面が生成・表示されるようになっている。これらの情報は、カード情報記憶手段26に予め記憶されている。
【0048】
具体的には、
図7の例では、ユーザ情報(ユーザID・氏名)ごとに、「カード種別」として、「継続」(前月と同じ),「基本セット」(
図1参照),「S1〜S5」(基本セット以外のセット:例えばペナルティセットA/B/C・・など),「設定」(新しいカードセットの設定)が選択可能な一覧表示として出力・表示される。
また、
図7に示す設定画面では、ユーザの一覧表示の近傍に、入力操作可能なアイコンとして、「レコメンド」,「送信」,「分析」,「履歴」,「印刷」,「設定」等のボタン画像が表示され、それぞれ、入力操作に応じて対応する処理・動作が行われるようになっている。
また、
図7の設定画面の右下には、各ユーザへの配付カード情報をいつまでに送信・配付すべきかのアラート情報が表示される。
【0049】
したがって、管理者装置20を操作する管理者は、
図7に示すような設定画面に従い、表示された管理対象ユーザ一覧を見ながら、ユーザレコードごとに、送信するカードデータの種類(カード種別)を選択する。選択されたカード種別が示すカード情報は、「送信」ボタンが押下されることで、該当するユーザのユーザ端末30に配付カード情報として送信される(配付カード情報送信手段22)。
また、「レコメンド」ボタンが押下されると、各ユーザの前月実績(又は任意に設定された所定の期間の実績)に基づいて、配付するカードの種類・枚数が自動的に選択され、レコメンド結果が管理者装置20に出力・提示される。管理者がレコメンド結果を承認すれば、そのレコメンド結果に示された種類・枚数のカード情報が、そのまま該当する各ユーザ端末30に送信されるようになる。なお、レコメンド結果を出力するために用いる履歴データや前提条件等は、管理者が任意に設計することができ、例えば、後述する年間の繁閑の予定に基づいて、配布するカードの種類・枚数が自動的に選択されるようにしても良い。
【0050】
また、対象ユーザレコードに表示される「履歴」ボタンが押下されると、前月又は所定の期間の実績データ(例えば、実績を示す数値や分析後のグラフ等)が表示され、管理者はそれを参照しながら配付するカードの種類・枚数を検討することができる。これは、ユーザにどのカードセットを配付したら良いのか迷ったような場合に有益となる。
さらに、対象ユーザレコードに表示される「設定」ボタンが押下されると、当該ユーザに対して新規のカードセットを作成・設定できる新規パターン作成画面が表示される。
【0051】
図8に、そのようなカードセットの新規パターン作成画面の一例を示す。
同図に示す例では、
図1に示したカード1の3種類のカード1a〜1cに対応したカードを示す画像と、各カードの枚数を設定する「+/−」ボタンが選択可能に表示され、選択されたカードの種類・枚数に対応する「最大観察時間」(残業時間)が算出されて出力・表示されるようなる。なお、「最大観察時間」(残業時間)の算出は、管理者装置の図示しない総量演算手段において実行される。
そして、「確定」ボタンが押下されることで、選択されたカードの種類・枚数が、当該ユーザへの配付カード情報として設定され、ユーザ端末30に送信される。
【0052】
また、カードセットの新規パターンとしては、上記のような3種類のカード1a〜1c以外の他のカードについても設定することができる。
図9に、そのような他のカードセットの新規パターン作成画面の一例を示す。
同図に示す例では、ユーザに配付されるカード情報として、
図1に示したカード1(権利型カード)の他に、ユーザが当月中に必ず使用しなければならない「義務型カード」を設定できるようになっている。
具体的には、義務型カードとして、ユーザに定時前の早帰りを促す「15時カード」,「12時カード」,「10時カード」について、所定枚数を設定・配付できるようになっている。
【0053】
このような義務型カードについても、「確定」操作によってカード情報がユーザ端末30に送信され、受信したユーザは、配付された義務型カードを当月内に必ず使用しなければならず、強制的に早帰りなどを行わせることができるようになる。
例えば、「15時カード」(ゴールドカード)を1枚配付されたユーザは、当月内に1回は「15時退社」が義務付けられることになり、プレ金(プレミアム・フライデー)の日などに、「15時カード」を使用して15時には退勤しなければならないことになる。
【0054】
このように、本実施形態に係る勤務時間管理方法において使用できるカードの性質は、ユーザ側にカード使用の可否が委ねられる「裁量権型カード」(
図1参照)だけでなく、ユーザ側に当該カードの使用が義務付けられる「義務型カード」がある。
このような「義務型カード」は、例えば、「15時退社必須!」(ゴールドカード)のカードを設けて、月に所定の枚数を必ず消費しなければならないようにすれば、ユーザに早帰りを義務付けることで、「メリハリ」のうち「メリ」の部分をコントロールできるようなり、生産性向上などに資することができる。
【0055】
なお、以上のような管理者向けのカード配付設定画面は、所定のタイミング、例えば毎月の第1営業日の所定の時刻に、管理者が管理者装置20にログインした後に、管理者装置20において自動で起動・表示されるようにすることができる。
また、管理者が配付の操作を所定の時刻までに完了させない場合は、管理者装置20は、所定のアラート情報を自動生成して、管理者装置20の表示画面に出力・表示させることができる。
さらに、アラート通知後も、管理者が所定の期限までにカード配付操作を行わない場合には、他の人間、例えば管理者が予め選任・登録した第2の配付操作者(代行承認者等)に配付操作の権限を自動的に移行するようにすることもできる。
また、予め管理者によって設定された配付カード情報を、所定の日時(毎月の第1営業日の所定の時刻等)に予約配信するように設定することもできる。
【0056】
配付カード情報を送信・配付した管理者装置20では、各ユーザのユーザ端末30から送信される、当日に使用されるカード情報が受信されるとともに(使用カード情報受信手段23)、受信された当日使用のカード情報が、ユーザ毎に管理される(使用カード情報管理手段24)。
まず、管理者装置20では、既に出社したユーザの情報を、例えば社員証による入館履歴データと連携することで受信して、出社しているユーザの人数,氏名,拠点等の情報を記憶・管理することができる。
【0057】
これによって、管理者装置20では、
図10に示すように、管理対象となる複数のユーザ情報として、複数のユーザが当日に使用するカード情報と、前日の実績、各ユーザの現在の状況を示す所定のステータス情報とを一覧表示された表示画面として出力・表示することができる(使用カード情報管理手段24)。
同図の例では、管理対象となる各ユーザについて、当日使用するカード情報の有無や前日実績,現在の状況(ステータス)が一目で分かるようになり、カードを選択済みのユーザ数や、出社しているにもかかわらず当日使用するカードを未選択のユーザ情報を把握・抽出することができる。
また、当日及び前日のカード情報には、ユーザが付加した感情や体調を図示したアイコン(顔マーク)やテキスト情報(一言メッセージ)が併せて出力・表示される。
【0058】
また、このようにユーザの出社状況やカード情報の選択の有無を示すユーザ情報は、例えば
図11に示すように、管理者装置20の表示手段において、複数のユーザが当日使用するカード情報として、ステータスバーに表示させることができる。
そして、管理者装置20では、以上のように生成・出力されるユーザ情報に基づき、当日に使用されるカード情報を、所定時刻までにユーザ端末30から受信しない場合には、該当するユーザ端末30に所定のアラート情報を送信することができる(アラート情報送信手段25)。
【0059】
アラート情報は、毎日一回又は数回、所定の時刻を過ぎた後に、カード情報が未選択(未送信)のユーザに対して、カード選択を促す所定のメッセージ等を、管理者装置20から自動送信することができる。
あるいは、出社して自身のIDでユーザ端末30にログインしたユーザに対して、ログイン時刻から所定の時間が経過しても当日カード情報を選択・送信しないユーザのユーザ端末30に、カード情報の選択を促す所定のアイコン(例えば猫のキャラクター等)を自動表示させるようにしても良い。
以上のような機能を備えることで、例えば管理者が数日間不在となり(例:2日間の集合研修等)、ユーザの近くにいなくても、管理者はPC端末等(スマートフォン,スマートグラス等でも可)さえあれば、管理対象となるユーザの状況を把握することができる。
【0060】
一方、複数の各ユーザ端末30では、管理者装置20から送信された配付カード情報が受信され(配付カード情報受信手段31)、受信されたカード情報のデータは、配付カード情報記憶手段32に記憶・保持される。
そして、このように記憶・保持されたカード情報は、ユーザ端末30の表示手段において、視認可能に出力・表示される。
図12〜14は、ユーザ端末30で出力・表示されるカード情報の表示画面である。
これらの図に示すように、ユーザ端末30に表示されるカード情報は、例えば「カードホルダー」のようなアイコン35で関連付けられ、アイコン35をクリック等すると、当該ユーザが当月内で使用可能なカードを一覧表示させることができる。
【0061】
カードの一覧表示は、
図12〜14に示すように、
図1に示す3種類のカード1a〜1cに対応したカードのカード面と枚数を表した画像と、配付されたカードの種類・枚数や、残り枚数などを示す文字などが、一覧で表示されるようになっている。これによって、ユーザは、自己が保有する当月内で使用可能なカードの種類・枚数を一目で認識・把握することができるようになる。
なお、このようなカードの一覧表示は、ユーザがユーザ端末30を操作して、「カードホルダー」アイコン35をクリックするまで、未開封を示す注意マークや色などで報知・強調等することができる。
【0062】
そして、ユーザがユーザ端末30を入力操作することで、一覧表示されたカード画像の中から1枚のカード画像をクリック操作等で選択することができ、カード画像が選択されて「確定」(送信)ボタンが押下されると、選択されたカード情報及び関連データ(カードに示される退社時刻や当該カードが何枚目であるか等)が、ユーザ情報とともに管理者端末に送信される。なお、カードの送信処理は、例えば画面表示されているカード画像をドラッグ移動して「管理者ボックス」(図示せず)に入れることで確定させるようにしても良く、また、その他の所定の操作で確定させることもできる。
【0063】
また、カードを選択・送信する際には、
図13に示すように、例えば所定のメッセージ登録やアイコンを選択して、送信されるカード情報に付加することができる。
このような付加情報としては、
図10に示したように、ユーザの感情や体調などを示すアイコン(例えば:元気の笑顔マーク・悩みマーク・体調ぐったりマーク等)や、所定テキスト文字数以内の一言メッセージなどを付加・送信させることができる。
なお、上記のような感情や体調を示すアイコン登録は、ユーザが自ら選択(宣言)するパターン以外に、例えば、当該ユーザの出社・入館時等に撮像される映像(公知の顔認証技術等)に基づいて、ユーザのコンディションを表すアイコンをシステムが生成したりレコメンドすることもできる。
【0064】
選択・確定された当日使用するカード情報は、上記のような付加情報を含めて、管理者装置20に送信される(使用カード情報送信手段33)。
当日使用するカード情報が送信されると、
図14に示すように、ユーザ端末30のカードの一覧情報には、送信されたカード情報に対応するカード画像に「本日のカード」を示すテキスト情報と、付加されたアイコン画像などが表示される。これによって、ユーザは、自らが選択した当日使用するカード情報を一目で認識・把握することができるようになる。
また、当日使用するカード情報が送信されると、配付カード情報記憶手段32に記憶されたカード情報のうち、送信されたカード情報が削除され(使用カード情報削除手段34)、使用されたカードに対応するカード情報として、カードの残り枚数データが1枚減算される。
【0065】
また、これに伴って、ユーザにより当日使用のカードが選択・確定された後は、ユーザの「カードホルダー」のカードの一覧表示画像から、該当するカード画像や残り枚数の文字も1枚減らされる。
あるいは、選択・使用されたカード画像は、グレーなどの色に変更したり、「消費済み」や「本日のカード」のテキストなどをカード画像に重ねて表示しても良い。
このように、選択・使用されたカードは、データの削除や無効化・選択不能化などの処理がなされるようになっており、一度使用されたカードが再度選択されたり使用されたりできないようになっており、カードの使い回しといったことが確実に防止・排除されるようになる。
なお、選択されたカードを無効化等する処理をしない限り、当日に別のカードを追加で送信できないように制御することもできる。
【0066】
以上のような動作を繰り返すことで、各ユーザは、ユーザ端末30を介して、自己に配付された複数のカード情報を、1日に1枚ずつ管理者装置20に送信して日々の業務を遂行することで、配付された手持ちのカード情報の退勤時刻によって規定される所定の業務時間の範囲内で、当月の業務を終了できることになる。
これによって、
図1に示した物理的なカード1を使用した勤務時間管理方法と同様に、無駄な長時間労働・残業時間を削減して、業務の効率化・生産性の向上を図ることができるようになる。
また、勤務時間管理システム10によれば、ユーザが遠隔地で業務を行っている場合(例えば顧客先常駐のユーザなど)や、管理者が遠隔地にいる場合など、管理者とユーザとが離れた場所にいて日々の業務を行うような場合でも、管理者装置20とユーザ端末30とがネットワークを介して接続されている限り、本発明に係る勤務時間管理方法を実現することができるようになる
【0067】
[カード提供計画の立案]
以上のような勤務時管理方法及び勤務時間管理システム10においては、管理者が各ユーザに配付・送信するカード(カード情報)は、
図1,
図12に示す基本セットを前提として、各ユーザの前月のカードの使用状況やレコメンド情報等を勘案・考慮して、管理者がカードの枚数・種類を決定していた。
本実施形態の勤務時間管理システム10では、より長期的なスパン・長期視点に立ったカードの提供計画を立案することにより、各ユーザに配付すべきカード(カード情報)を決定することもできる。
【0068】
図15は、本実施形態に係る勤務時間管理システム10において、各ユーザに配付されるカードの提供計画を立案するプロセスを模式的に示す説明図である。
同図に示すプロセスでは、本発明に係る勤務時管理方法及び勤務時間管理システム10で配付されるカード(カード情報)によって規定される業務時間(総量合意)を、月単位以外で、所定の期間(例えば年間や6ヶ月など)で設定できるようにする。
その目的は、例えば企業の各事業部の特徴(繁忙期、すなわち、年間の繁閑の予定はそれぞれ異なる)を踏まえて、長期視点で働き方を改善していくことで、「メリ」と「ハリ」をバランスよく設定した長期の波動を作り出していくことである。例えば、ある事業部においては、年末年始が「ハリ」の時期であると予測できるのであれば、その前や後に「メリ」が生じるような環境を作り出さなければ、通年にわたって「ハリ」が継続してしまう状況になり、労働時間の上限超過につながってしまう。
【0069】
そこで、本実施形態では、
図15に示すように、予め長期波動のパターンを設定し、その内容に従って、上述したカード(カード情報)の組み合わせをレコメンドして管理者に提示するものである。なお、細かい調整は管理者が管理者装置20の画面を見ながら管理者自身が調整できるようにする。
長期波動パターン設定方法は、直感的に操作できるようにする。例えば、管理者装置20の表示手段(ディスプレイ)において、波動(デフォルトは直線でも良い)を示して、管理者が指(マウス等でも良い)で波動線を移動させて感覚的に望ましい波動を調整できるようにしても良く、その結果(座標等)に応じて具体的な数値(例えば月ごとの上限時間)を波動線の各頂点付近に表示しても良い。
【0070】
また、管理者の好みに応じて、波動線ではなく、グラフ棒の伸び縮みを操作してメリハリのイメージを作成できるようにしても良い。
期間は月単位で指定しても良いし、日単位で指定(1か月の中の波動を作成)するようにしても良い。
なお、期間の上限を超えないように制御する必要がある。例えば、管理者が選択した期間における、法定の、あるいは当該企業が独自に定める残業時間の上限を自動計算し、管理者が長期波動を作っていく中で、上限を超える時点でアラートを出して、波動線が動かないように制御することや、選択中の波動線は動くが隣接する月次の頂点が自動的に下がるようにしても良い。
【0071】
なお、波動線を新たに作成する際は、波動(デフォルトは直線でも良い)を示して、管理者が指(マウス等でも良い)で波動線を移動させて感覚的に望ましい波動を調整する以外で、過去に作成したパターンを履歴から呼び出して画面に表示させ、その履歴をさらに調整できるようにしても良い。また、過去の実績データ(例えば実際の残業時間でも良いし、カード種別ごとの使用実績に基づく換算値でも良い)を波動線に変換し、それをさらに調整できるようにしても良い。
そして、予め登録してあるカード情報(種類、枚数等)と長期波動(各点に関連付く時刻情報+月情報等)をインプットとして、カード設計案を出力する(レコメンド機能)。
【0072】
図15に示す例では、ユーザA向けのカード提供計画として、4月〜9月の6カ月間における長期波動パターンについて、例えば「過去5カ月の勤務時間実績」と「閑散期/繁忙期」,「平準型/高変動型」等の情報を入力し、観察時間(残業時間)が月間で45〜100時間の範囲となるようにしてカード設計案を生成・出力した場合である。
この例では、閑散期の4月:青1枚・黄9枚・赤5枚、5月:青1枚・黄0枚・赤0枚、6月:青1枚・黄1枚・赤0枚となっており、繁忙期の7月:青1枚・黄10枚・赤10枚、8月:青1枚・黄15枚・赤15枚・・・というカード設計案が生成されている。
このように、本実施形態の勤務時間管理システム10では、長期視点に立ったカードの提供計画を生成・提示することができるものである。
【0073】
以上のような本実施形態に係る勤務時間管理システム10を構成する管理者装置20及びユーザ端末30のハードウェア構成の一例は
図16に示すとおりであり、CPU101,RAM102,ROM103,HDD104,入力装置105及び表示装置106を含む情報処理装置によって構成される。これらの構成要素はシステムバスで接続され、システムバスを介してデータのやり取りが行われる。CPU(Central Processing Unit)101は、中央処理装置ともいい、コンピュータの中心的な処理を行う部位であり、各装置の制御やデータの計算/加工を行う。RAM(Random Access Memory)102は、メモリ装置の一種で、データの消去・書き換えが可能なものであり、ROM(Read Only Memory)103は、半導体などを用いたメモリ装置の一種で、データ書き込みは製造時1回のみで、利用時には記録されたデータの読み出しのみできるものである。HDD(Hard Disk Drive)104は、磁性体の性質を利用し、情報を記録し読み出す補助記憶装置である。入力装置105は、ユーザがコンピュータに対して操作指示を行うため、あるいは、文字等を入力するために使用され、具体的には、キーボード,マウス等で構成される。表示装置106は、例えば液晶ディスプレイ等で構成され、タッチパネル機能を有するものであってもよい。この他、図示しない通信機能も有し、この通信機能により他の端末との通信が可能となる。
【0074】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、以下のような変更実施・改良実施等が可能である。
【0075】
ユーザが選択したカードに対応した退社予定時刻に関する情報に基づいて、ユーザの「Outlook」(登録商標)予定表に退社スケジュールを自動登録する。ユーザの位置情報や現在の予定等を管理するツールにも情報(+感情アイコン等を付加しても良い)を登録する。ユーザがかかわるプロジェクトのメンバーやプロジェクトリーダーなど、予め設定した範囲に属するメンバーにも情報を送信する。つまり、関連するメンバーの退社予定時刻やコンディションに関する情報をメンバー間で共有できるようにしても良い。なお、プロジェクトリーダーがプロジェクト進捗等の状況に応じて、ユーザが既に選択したカードとは別の種類のカードに変更するように要請できるようにしても良い。その場合、要請した理由や対象ユーザ等に関する情報は履歴として記憶され、所定の期間内に管理者に報告レポートとして送信される。
また、ユーザがいったん確定したカードを当日内に別のカードと差し替える場合は、消費済みのグレーに変色したカードを所定の操作で復活させると同時に、別のカードを選択して再度管理者に送信しなければならない。管理者が許可の操作をすると、新たに選択したカードが有効となって、「Outlook」予定表登録などの処理を再度実行する。
【0076】
管理者端末で、ユーザごとの実績データを分析するようにしても良いし、複数のユーザを選択して分析(比較など)できるようにしても良い。
また、所定の権限を持つ管理者であれば、ユーザの健康データと結合させてデータ分析できるようにしても良い(例えば、基本セットの範囲内で業務するようになってから、血糖値などの数値が改善された等)。あるいは、ユーザが特定されないように情報を加工してデータ分析結果を管理者に表示するようにしても良い。基本セットの範囲内で業務をしているにもかかわらず、健康データが悪化しているユーザがいれば、健康管理室などに情報を連携するようにしても良いし、部室長にヒアリング対象として通知しても良い。例えば、原因は夜遊びや副業か、それとも人間関係や家庭事情などか、というユーザの体調やメンタルに影響する、業務時間以外の要素を特定するトリガーにすることできる。
【0077】
また、AI(人工知能)分析によって、休職者やメンタル要注意ユーザ等の特定や時期の推定をしても良い。これによって、例えば、あるプロジェクトに関して、将来のある時点で大量の休職者が発生することが予想された場合、事前にケアすることや予備メンバーの確保等、対策を講じることができる。
カードの運用について、アプリ版と紙媒体版を併用しても良く、その場合、ユーザごとにどちらの運用で行うかを予め設定しておく。
【0078】
カード基本セットの範囲内で当月の業務時間を調整できたユーザに対して、毎月ポイントを付与しても良く、所定のポイント数に達した場合に、社内カフェ(フレッシュジュース1回分等)や提携するジム・カルチャースクール(夕方クラスの割引)等で使用できる電子通貨と交換できるようにしても良いし、募金に使えるようにしても良い。例えば、予め社内で募金のプロジェクトをいくつか(国内、海外、子供、動物、限定なし)用意しておき、ユーザが付与されたポイントの蓄積場所をそれらの募金プロジェクトのいずれかに指定できるようにしても良く、蓄積されたポイントを所定のレートで会社が換算して、会社から募金するようにしても良い。なお、ポイントの付与単位は、事業部単位であっても良く、ポイント蓄積数のランキングを毎月(毎年)公開するようにしても良い。また、逆に、カードの追加申請があった場合は、蓄積されたポイントから減らすようにしても良い。
【0079】
分析機能として、ユーザがカードを切り替えたタイミングや回数を分析できるようにすると良い。管理者が設定した所定のタイミングや回数で切り替えたユーザを抽出できるようにしても良い。
例えば、あるユーザが朝に青カードを選択し、午前のうちに黄色カードに切り替え、さらに19時に赤カードに切り替えたようなケースを切り出して、面談や観察等で、ユーザがカードを切り替えた要因を特定できるようにする。これによって、例えば自己管理や仕事の段取りが苦手なことが要因なのか、それとも担当業務(例えばコール対応など)の特性が影響して自身で時間をコントロールし難いのか、などを特定するトリガーとすることができる。
また、管理者は「高パフォーマー(仕事の効率が良いユーザ)」や「低パフォーマー(仕事の効率が相対的に良くないユーザ)」等といった主題を設定して、機械学習等の周知技術によって、管理者が取り組みたい課題(例えば時間管理や仕事の効率が相対的に低いユーザをどのように高パフォーマーに転換できるか、といった課題)の該当者に特有のパターンを抽出して施策の検討材料としても良い。
【0080】
また、上述した実施形態では、管理者装置及びユーザ端末として、デスクトップPCのように、比較的大きな装置・画面の情報処理装置で構成される場合を示しているが、本発明に係る管理者装置・ユーザ端末は、例えばスマートフォンやタブレット端末携帯電話機,タブレット端末,スマートグラス等のウェアラブル端末の表示手段のように、比較的小さな情報処理装置で構成することも勿論可能である。