(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0012】
本発明の加工装置は、前述のとおり、加工対象物を保持する加工テーブルと、前記加工テーブルを直線的に移動させる移動機構と、前記移動機構を覆うとともに互いに重なり合う複数のカバー要素を有し、前記加工テーブルの移動に伴って伸縮する保護カバーと、前記加工テーブルに伴って前記保護カバーに対して前記加工テーブルが移動する方向に相対的に移動し、前記複数のカバー要素の上面をスライドするスライド部材とを備えることを特徴とする。
この加工装置であれば、加工テーブルが移動すると、スライド部材が、複数の保護カバーに対して加工テーブルが移動する方向に相対的に移動して、複数のカバー要素の上面をスライドするので、加工対象物により生じた加工屑が保護カバーの上面に載っていたとしても、スライド部材が加工屑を押し除けることになる。したがって、保護カバーを構成する複数のカバー要素の上面に加工屑が溜まらないようにすることができる。その結果、カバー要素の間に加工屑が侵入しにくくなり、保護カバー又は移動機構の動作不良や故障の要因を減少させることができる。そして、装置の稼働率の低下を抑制して、装置の生産性を向上させることができる。
【0013】
この加工装置では、加工対象物の加工により生じた加工屑を集めて一挙に廃棄するために、加工屑を収容する加工屑収容部をさらに備えたものがある。
この構成において、加工テーブルの移動に伴ってスライド部材が加工屑を加工屑収容部に確実に押し出すことができるためには、前記移動機構は、前記加工屑収容部に対して前記加工テーブルを進退移動させるものであり、前記加工テーブルの進退移動により、前記スライド部材の前記加工屑収容部側の先端を、最も前記加工屑収容部側の前記カバー要素の上面又はそれよりも前記加工屑収容部側に位置する状態まで移動させることが望ましい。つまり、前記加工テーブルが最も前記加工屑収容部側に移動した状態で、前記スライド部材が最も前記加工屑収容部側に位置する前記カバー要素の上面又はそれよりも前記加工屑収容部側に位置していることが望ましい。
【0014】
互いに隣接する前記カバー要素において、前記加工テーブル側に位置するカバー要素は前記加工テーブルとは反対側に位置するカバー要素の上に重なっていることが望ましい。
この構成であれば、加工テーブルが移動して保護カバーが縮む際に、スライド部材によって押された加工屑がカバー要素間に侵入しない構成にできる。逆の配置構成の場合には、加工テーブルが移動して保護カバーが縮むとスライド部材によって押された加工屑がカバー要素間に押し込まれてしまう恐れがある。
【0015】
前記スライド部材は、前記カバー要素の上面を覆うシート状をなすものであることが望ましい。
この構成であれば、加工テーブルの移動に伴って保護カバーが縮む際にスライド部材によって加工屑を押し出すことができるとともに、スライド部材によってカバー要素及びそれらの隙間を覆うことができる。その結果、カバー要素の上面に加工屑が載りにくくなり、カバー要素間に加工屑が侵入することを一層防ぐことができる。
【0016】
保護カバーの両側に落ちる加工屑を好適に排出するためには、加工装置は、前記保護カバーの両側において前記加工テーブルの移動方向に沿って設けられ、前記加工屑を排出するための加工屑排出部と、前記加工屑排出部の内部において前記加工屑排出部の排出側に向かって流体を噴射する流体噴射機構をさらに備えることが望ましい。
ここで、加工屑排出部の具体的な実施の態様としては、加工テーブルの移動方向に沿って形成された溝形状をなすものが考えられる。この溝形状が平坦な内側面及び平坦な底面から構成される場合には、当該平坦な内面に加工屑が貼り付いてしまい、排出されにくくなってしまう。この問題を好適に解決するためには、溝形状をなす加工屑排出部において、その底面部が曲面状の内面を有することが望ましい。この構成であれば、加工屑排出部の内面と加工屑との接触面積を平坦な内面の場合に比べて小さくすることができ、加工屑が貼り付き難くなり、その結果、加工屑を容易に排出できるようになる。
【0017】
また、加工装置では、前記加工テーブルに保持された前記加工対象物に向かって流体を供給する流体供給機構と、前記加工テーブル及び前記保護カバーの間に設けられ、前記前記加工対象物の加工に生じた加工屑を受ける受け板部材とをさらに備えるものがある。流体供給機構により供給される流体としては、切削水、冷却水又は洗浄水などである。ここで、受け板部材は、前記流体とともに前記加工屑を所定方向に排出するための排出溝を有している。なお、供給される流体としては、気体を含んだものでもよい。気体と液体とを混合させて噴射することによって、勢い良く噴射させることが容易となる。
この構成において、受け板部材の排出溝を流れる流体の流速を増して、加工屑が排出溝の排出側に溜まることを防ぐためには、前記排出溝の排出側における内面が、その開口側から底部側に向かうに連れて溝幅を小さくする傾斜面又は曲面を有していることが望ましい。
【0018】
前記受け板部材の排出溝の排出側に加工屑が溜まることをより一層防ぐためには、前記受け板部材は、排出側に向かって下方に傾斜していることが望ましい。
【0019】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る加工装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0020】
<加工装置の全体構成>
本実施形態の加工装置100は、
図1に示すように、加工対象物である封止済基板Wを切断することによって複数の製品Pに個片化する切断装置である。この切断装置100は、基板供給モジュールAと基板切断モジュールBと検査モジュールCとを、それぞれ構成要素として備える。各構成要素(各モジュールA〜C)は、それぞれ他の構成要素に対して着脱可能かつ交換可能である。
【0021】
基板供給モジュールAには、基板供給モジュールAには基板供給機構1が設けられる。被切断物に相当する封止済基板Wが、基板供給機構1から搬出され、移送機構(図示なし)によって基板切断モジュールBに移送される。
【0022】
図1に示す切断装置100は、ツインカットテーブル方式のものである。したがって、基板切断モジュールBには、2個の切断用テーブル(加工テーブル)2A、2Bが設けられる。切断用テーブル2Aには切断用治具3Aが取り付けられる。切断用テーブル2Bには切断用治具3Bが取り付けられる。切断用テーブル2Aは、移動機構4Aによって
図1のY方向に移動可能であり、かつ、回転機構5Aによってθ方向に回動可能である。切断用テーブル2Bは、移動機構4Bによって
図1のY方向に移動可能であり、かつ、回転機構5Bによってθ方向に回動可能である。
【0023】
また、基板切断モジュールBには、位置合わせ用のカメラ(図示なし)が設けられる。位置合わせ用のカメラは独立してX方向に移動可能である。基板切断モジュールBには、切断機構として2個のスピンドル6A、6Bが設けられる。切断装置100は、2個のスピンドル6A、6Bが設けられるツインスピンドル構成の切断装置である。スピンドル6A、6Bは、独立してX方向とZ方向とに移動可能である。
【0024】
この基板切断モジュールBの動作の一例は次のとおりである。切断用テーブル2Aでの切断は、当該切断用テーブル2Aと2個のスピンドル6A、6Bとを相対的に移動させることによって、封止済基板Wを切断して個片化する。また、切断用テーブル2Bでの切断は、当該切断用テーブル2Bと、2個のスピンドル6A、6Bとを相対的に移動させることによって、封止済基板Wを切断して個片化する。スピンドル6Aの回転刃61A及びスピンドル6Bの回転刃61Bは、Y方向とZ方向とを含む面内において回転することによって各テーブル2A、2Bに保持された封止済基板Wを切断する。なお、切断用テーブル2Aでの切断処理と、切断用テーブル2Bでの切断処置は、交互に行われる。
【0025】
検査モジュールCには検査用テーブル7が設けられる。検査用テーブル7には、封止済基板Wを切断して個片化された複数の製品Pからなる集合体が載置される。複数の製品Pは、検査用のカメラ(図示なし)によって検査され、良品と不良品とに選別される。良品はトレイ8に収容される。
【0026】
なお、本実施形態においては、切断装置100の動作、封止済基板Wの搬送、封止済基板Wの切断、製品Pの検査など、すべての動作や制御を行う制御部CTLを基板供給モジュールA内に設けている。これに限らず、制御部CTLを他のモジュール内に設けてもよい。
【0027】
<基板切断モジュールBの具体的な構成>
次に、本実施形態の切断装置100において、基板切断モジュールBの具体的な構成について以下に説明する。なお、切断用テーブル2A側の装置構成と、切断用テーブル2B側の装置構成とは実質的に同一であるため、以下では、切断用テーブル2B側の構成を詳細に説明する。また、便宜上、
図2の左右方向を切断装置100切断モジュールB)の前後方向として説明する。ただし、これらの方向は単に説明の便宜上のものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0028】
切断装置100の基板切断モジュールBは、
図2に示すように、封止済基板2を保持する上述した切断用テーブル2Bと、それら切断用テーブル2BをY方向に直線的に移動させる上述した移動機構4Bと、移動機構4Bに対応して設けられ、移動機構4Bを保護するための保護カバー10と、封止済基板2の切断により生じた端材などの加工屑Sを収容する加工屑収容部11とを備えている。
【0029】
移動機構4Bは、切断用テーブル2Bの下側に設けられて、Y方向に延びるボールねじ機構41により切断用テーブル2Bを直線的に往復移動させるものである。具体的に移動機構4Bは、ボールねじ機構41と、当該ボールねじ機構41を駆動するサーボモータなどの駆動源42と、切断用テーブル2Bを支持するとともにボールねじ機構41によりY方向に移動するスライダ43とを有している。ここでボールねじ機構41は、固定台枠44に収容されて回転自在に支持されている。また、加工屑収容部11となる廃棄箱は、移動機構4Bにおける切断用テーブル2Bの移動範囲の外側に設けられている。これにより、移動機構4Bは、切断用テーブル2Bを加工屑収容部11に対して進退移動させることになる。
【0030】
保護カバー10は、切断用テーブル2Bと移動機構4Bとの間に設けられ、移動機構4Bの少なくとも上方を覆った状態で伸縮するものである。本実施形態では、切断用テーブル2Bに対してY方向の一方側(切断用テーブル2Bの前側)に設けられた第1の保護カバー10Aと、切断用テーブル2Bに対してY方向の他方側(切断用テーブル2Bの後側)に設けられた第2の保護カバー10Bとからなる。
【0031】
第1の保護カバー10Aは、移動機構4B(具体的にはボールねじ機構41)を収容する固定台枠44の前壁部と切断用テーブル2Bを支持するスライダ43の前壁部との間に設けられている。具体的に第1の保護カバー10Aは、切断用テーブル2Bよりも前側に位置するボールねじ機構41を覆うものであり、ボールねじ機構41の少なくとも上方を覆う蛇腹要素10A1と、当該蛇腹要素10A1の上面に設けられてボールねじ機構41の上方を覆う複数のカバー要素10A2とを有している。これら複数のカバー要素10A2は、平面視において矩形状の平板状をなすものである。そして、互いに隣接する2つのカバー要素10A2において、切断用テーブル2B側(後側)に位置するカバー要素10A2は切断用テーブル2Bとは反対側(前側)に位置するカバー要素10A2の上に重なっている。これらのカバー要素10A2は、切断用テーブル2Bが移動することによって、互いにスライドする。そして、第1の保護カバー10Aは、切断用テーブル2Bが前側に移動すると縮み、切断用テーブル2Bが後側に移動すると伸びる。
【0032】
第2の保護カバー10Bは、移動機構4B(具体的にはボールねじ機構41)を収容する固定台枠44の後壁部と切断用テーブル2Bを支持するスライダ43の後壁部との間に設けられている。具体的に第2の保護カバー10Bは、切断用テーブル2Bよりも後側に位置するボールねじ機構41を覆うものであり、第1の保護カバー10Aと同様に、ボールねじ機構41の少なくとも上方を覆う蛇腹要素10B1と、当該蛇腹要素10B1の上面に設けられてボールねじ機構41の上方を覆う複数のカバー要素10B2とを有している。これら複数のカバー要素10B2は、平面視において矩形状の平板状をなすものである。そして、互いに隣接する2つのカバー要素10B2において、切断用テーブル2B側(前側)に位置するカバー要素10B2は切断用テーブル2Bとは反対側(後側)に位置するカバー要素10B2の上に重なっている。これらのカバー要素10B2は、切断用テーブル2Bが移動することによって、互いにスライドする。そして、第2の保護カバー10Bは、切断用テーブル2Bが後側に移動すると縮み、切断用テーブル2Bが前側に移動すると伸びる。
【0033】
<受け板部材13における加工屑Sの滞留の防止>
本実施形態の基板切断モジュールBは、切断用テーブル2Bに保持された封止済基板Wに向かって切削水を供給する流体供給機構12と、切断用テーブル2B及び保護カバー10の間に設けられ、切削水とともに加工屑Sを受ける受け板部材13とをさらに備えている。
【0034】
流体供給機構12は、高速回転する回転刃61Bによって発生する摩擦熱を抑えるために切削水を噴射する切削水用ノズル121と、当該切削水用ノズル121に切削水を供給する供給管122を有している。切削水用ノズル121は、スピンドル6Bに設けられてもよいし、スピンドル6Bとは別に設けてもよい。
【0035】
受け板部材13の上面には、特に
図3に示すように、切削水とともに加工屑Sを所定方向に排出するための排出溝13Mが形成されている。この排出溝13Mは、切断用テーブル2Bから流れ出た切削水を受けて排出するものであり、平面視において切断用テーブル2Bを含む上部開口を有するものである。本実施形態の排出溝13Mは、加工屑収容部11側(切断用テーブル2Bの後側)に排出するように形成されている。
【0036】
この受け板部材13において排出溝13Mの排出側は、その上部開口側から底部側に向かうに連れて溝幅が小さくなる構成とされている。具体的には、排出溝13Mの排出側における内面が、その上部開口側から底部側に向かうに連れて溝幅を小さくする傾斜面又は曲面を有している。
【0037】
本実施形態では、受け板部材13の排出側の側面13xは相寄る方向(内側)に傾斜して排出溝13Mが排出端部13aに行くに連れて窄まっている。そして、この窄まっている部分において底面13yと側面13xとの角部13rがR形状(部分円形状)をなす湾曲面(例えば曲率半径は100〜200mm程度)とされている。尚、この湾曲面の曲率半径は特に限定しないが、例えば100〜200mm程度の範囲にすることで受け板部材13の加工が容易になる。この構成により、受け板部材13の排出溝13Mを流れる切削水は、排出側において流速が速くなる。また、受け板部材13は、排出側に向かって下方に傾斜している。これによっても受け板部材13の排出溝13Mにおける水の流速、特に排出側での水の流速を速くすることができる。
【0038】
<保護カバー10Bにおける加工屑Sの滞留の防止>
そして、この基板切断モジュールBは、第2の保護カバー10Bの上面に留まる加工屑Sを第2の保護カバー10Bから加工屑収容部11に押し出すための構成を有している。
【0039】
具体的に基板切断モジュールBは、
図2、
図4及び
図5に示すように、切断用テーブル2Bの移動に伴って、第2の保護カバー10Bにおける複数のカバー要素10B2の上面をスライドするスライド部材14を備えている。
【0040】
このスライド部材14は、例えば切断用テーブル2Bを支持するスライダ43に設けられて、切断用テーブル2Bとともに移動するものである。つまり、スライド部材14の移動量は、切断用テーブル2Bの移動量と同一である。そして、スライド部材14は、切断用テーブル2Bが加工屑収容部11側(後側)に移動するのに伴って第2の保護カバー10Bに対して切断用テーブル2Bが移動する方向(後方向)に相対的に移動する。これにより、スライド部材14は複数のカバー要素10B2の上面をスライドする。
【0041】
スライド部材14は、カバー要素10B2の上面を覆うシート状をなすものである。具体的にスライド部材14は、平面視において概略矩形状をなすものであり、その一辺部がスライダ43に固定されている。なお、前記一辺部が固定される部材は、切断用テーブル2Bとともに移動する部材であればスライダ43に限られない。また、スライド部材14は、カバー要素10B2の幅方向全体又は略全体を覆うものである。ここで、「略全体を覆う」とは、カバー要素10B2の上面の幅方向両端部において端材などの加工屑Sが載らない程度のスペースを残して覆うことである。
【0042】
そして、スライド部材14は、切断用テーブル2Bが最も加工屑収容部11側(後側)に移動した状態(
図5参照)で、スライド部材14が最も加工屑収容部11側(後側)に位置するカバー要素10B2の上面又はそれよりも加工屑収容部11側に位置している。なお、
図5では、スライド部材14が第2の保護カバー10Bよりも加工屑収容部11側に位置する例を示している。つまり、スライド部材14は、切断用テーブル2Bが最も加工屑収容部11側(後側)に移動した状態で、第2の保護カバー10Bの上面全体又は略全体を覆うことになる。
【0043】
また、スライド部材14の材質は例えば塩化ビニルなどの樹脂であり、自重により変形して少なくとも自由端部である先端部14aは、カバー要素10B2の上面に接触する。スライド部材14は、カバー要素10B2の上面でスライドする際にそのスライドによる受ける摩擦力によって屈曲変形することなく、また、加工屑Sを移動方向に向かって押し出すことができる強度を有している。
【0044】
スライド部材14の先端部14aは、
図4では、平面視において切断用テーブル2Bの移動方向に直交する方向に平行な先端辺を有するものであるが、前記移動方向から傾斜した方向に延びる先端辺を有するものであってもよいし、中央部が外側に突出した三角形状又は台形状をなすものであってもよい。
【0045】
また、受け板部材13との関係で言えば、本実施形態のスライド部材14は、切断用テーブル2Bの移動方向(Y方向)において、受け板部材13の排出端部13aよりも外側(加工屑収容部11側)に延び出ている。なお、切断用テーブル2Bが最も加工屑収容部11側に移動した状態(第2の保護カバー10Bが最も縮んだ状態)で、スライド部材14が最も加工屑収容部11側に位置するカバー要素10B2の上面又はそれよりも加工屑収容部11側に位置していれば、受け板部材13の排出端部13aよりも外側に延び出ていなくてもよい。
【0046】
<スライド部材14の動作>
次にこの切断用テーブル2Bの移動に伴うスライド部材14の動作について
図6を参照して説明する。
図6(a)に示すように、第2の保護カバー10Bが伸びた状態で、そのカバー要素10B2の上面に加工屑Sが載っているとする。なお、この加工屑Sは、切断により飛散してカバー要素10B2の上面に載った加工屑S、又は、切削液とともに排出溝13Mから流れ出てカバー要素10B2の上面に載った加工屑Sなどである。
【0047】
図6(b)に示すように、切断用テーブル2Bが加工屑収容部11側(後側)に移動すると、スライド部材14が切断用テーブル2Bとともに加工屑収容部11側に移動する。このとき、スライド部材14は、カバー要素10B2に対して切断用テーブル2Bが移動する方向に相対的に移動する。これにより、スライド部材14は、カバー要素10B2の上面に載っている加工屑Sを押しながら、複数のカバー要素10B2の上面をスライドする。
【0048】
そして、
図6(c)に示すように、切断用テーブル2Bが最も加工屑収容部11側(後側)に移動した状態で、スライド部材14の先端部14aは、最も加工屑収容部11側に位置するカバー要素10B2の上面を超えて加工屑収容部11側に位置する。これにより、スライド部材14により押された加工屑Sは、カバー要素10B2の上面から加工屑収容部11に押し出されて加工屑収容部11に収容される。
【0049】
これらの押し出し動作は、切断用テーブル2Bが加工屑収容部11に対して進退移動する度に繰り返し行われる。なお、この加工屑収容部11に対する進退移動は、封止済基板Wの切断処理に伴って行われるものであってもよいし、封止済基板Wの切断処理が終了した後に行われるものであってもよい。
【0050】
<保護カバー10Bの両側に落ちた加工屑Sの排出>
また、本実施形態の基板切断モジュールBは、
図2及び
図7に示すように、第2の保護カバー10Bの幅方向(X方向)両側に落ちる加工屑Sを外部(加工屑収容部11)に排出するための加工屑排出部15と、当該加工屑排出部15の内部において排出側に向かって流体である水を噴射する流体噴射機構16とをさらに備えている。
【0051】
加工屑排出部15は、第2の保護カバー10Bの幅方向両側において切断用テーブル2Bの移動方向(Y方向)に沿って設けられている。この加工屑排出部15は、切断用テーブル2Bの移動方向に沿った直線状をなす溝形状をなすものである。そして、加工屑排出部15は、
図7に示すように、その溝断面において底面部が曲面状の内面を有している。なお、加工屑排出部15は、その溝断面において全体が曲面状の内面を有するものであってもよい。本実施形態では、ツインカットテーブル方式であり、並列に2つの第2の保護カバー10Bが設けられているところ、2つの第2の保護カバー10Bの間には1つの加工屑排出部15を設けて兼用している。
【0052】
流体噴射機構16は、加工屑排出部15の切断用テーブル2B側(前側)から加工屑収容部11側(後側)に向かって水を噴射するものであり、加工屑排出部15の内部に設けられた噴射ノズル161と、当該噴射ノズル161に洗浄水を供給する供給管162とを備えている。なお、第2の保護カバー10Bの両側だけでなく、第1の保護カバー10Aの両側にも加工屑排出部15を延長して設けてもよい。ここで、噴射ノズル161による水の噴射は、例えば封止済基板Wの切断処理中に常時行うものであってもよいし、当該切断処理中に間欠的に行うものであってもよいし、切断処理が終了した後に行うものであってもよい。
【0053】
<本実施形態の効果>
本実施形態の切断装置100によれば、切断用テーブル2Bが移動すると、スライド部材14が、第2の保護カバー10Bに対して切断用テーブル2Bが移動する方向に相対的に移動して、複数のカバー要素10B2の上面をスライドするので、封止済基板Wから生じた加工屑Sが保護カバー10Bの上面に載っていたとしても、スライド部材14が加工屑Sを押し除けることになる。したがって、保護カバー10Bを構成する複数のカバー要素10B2の上面に加工屑Sが溜まらないようにすることができる。その結果、カバー要素10B2の間に加工屑Sが侵入しにくくなり、保護カバー10B又は移動機構4Bの動作不良や故障の要因を減少させることができる。そして、切断装置100の稼働率の低下を抑制して、装置の生産性を向上させることができる。
【0054】
本実施形態では、移動機構4Bが加工屑収容部11に対して切断用テーブル2Bを進退移動させるものであり、切断用テーブル2Bが最も加工屑収容部11側に移動した状態で、スライド部材14が最も加工屑収容部11側に位置する前記カバー要素10B2の上面又はそれよりも加工屑収容部11側に位置しているので、スライド部材14がそれらよりも内側に位置している場合に比べて、切断用テーブル2Bの移動に伴ってスライド部材14が加工屑Sを加工屑収容部11に確実に押し出すことができる。また、封止済基板Wの切断により生じた加工屑Sを加工屑収容部11に集めて一挙に廃棄することができる。
【0055】
本実施形態では、第2の保護カバー10Bの互いに隣接するカバー要素10B2において、切断用テーブル2B側に位置するカバー要素10B2が、切断用テーブル2Bとは反対側に位置するカバー要素10B2の上に重なっているので、切断用テーブル2Bが移動して保護カバー10Bが縮む際に、スライド部材14によって押された加工屑Sがカバー要素10B2間に侵入しない構成にできる。
【0056】
本実施形態では、スライド部材14がカバー要素10B2の上面を覆うシート状をなすものであり、切断用テーブル2Bの移動に伴って保護カバー10Bが縮む際にスライド部材14によって加工屑Sを押し出すことができるとともに、スライド部材14によってカバー要素10B2及びそれらの隙間を覆うことができるので、カバー要素10B2の上面に加工屑Sが載りにくくなり、カバー要素10B2間に加工屑Sが侵入することを好適に防ぐことができる。
【0057】
本実施形態では、保護カバー10Bの両側に加工屑排出部15を設け、当該加工屑排出部15の内部において排出側に向かって流体を噴射する流体噴射機構16を設けているので、保護カバー10Bの両側に落ちる加工屑Sを好適に排出することができる。また、加工屑排出部15が溝形状であり、その底面部が曲面状の内面を有するので、加工屑排出部15の内面と加工屑Sとの接触面積を平坦な内面の場合に比べて小さくすることができ、加工屑Sが貼り付き難くなり、その結果、加工屑Sを容易に排出できるようになる。
【0058】
本実施形態では、受け板部材13の排出溝13Mの排出側における内面が、その開口側から底部側に向かうに連れて溝幅を小さくする傾斜面又は曲面を有しているので、排出溝13Mを流れる流体の流速を増して、加工屑Sが排出溝13Mの排出側に溜まることを防ぐことができる。また、排出溝13Mの排出側における内面が曲面を有する場合には、加工屑Sとの接触面積を平坦な内面の場合に比べて小さくすることができ、加工屑Sが貼り付き難くなり、加工屑Sが排出溝13Mの排出側に溜まることをより一層防ぐことができる。さらに、受け板部材13が排出側に向かって下方に傾斜しているので、受け板部材13の排出溝13Mの排出側に加工屑Sが溜まることをより一層防ぐことができる。
【0059】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、スライド部材の裏面に凹凸形状を形成することによって、カバー要素との接触面積を小さくしてもよい。なお、凹凸形状としては、スライド部材のスライド方向の沿って延びる凸条部とすることや、複数の凸部を点在させることなどが考えられる。この構成であれば、スライド部材のスライドをスムーズにすることができる。
【0060】
また、スライド部材はシート状のものの他に、カバー要素の幅方向両端部に亘って延びる例えば棒状をなすスライド部と、加工テーブル側に固定されて前記スライド部を支持する支持フレーム部とを有するものであってもよい。この構成であってもカバー要素との接触面積を小さくすることができ、スライド部材のスライドをスムーズにすることができる。
【0061】
また、保護カバーは、複数のカバー要素であるカバープレートを互いに重ね合わせた構成の他に、複数のカバー部材を有するテレスコピックカバーであってもよい。
【0062】
さらに、加工屑排出部の底面部の内面は、湾曲形状の他に、加工屑との接触面積を小さくする曲面を有するものであれば良い。
【0063】
その上、前記実施形態では、ツインカットテーブル方式であって、ツインスピンドル構成の切断装置を説明したが、これに限らず、シングルカットテーブル方式であって、シングルスピンドル構成の切断装置や、シングルカットテーブル方式であって、ツインスピンドル構成の切断装置などであってもよい。
【0064】
加えて、本発明の加工装置は、切断以外の加工を行うものであってもよく、例えば切削や研削などのそのほかの機械加工を行うものであってもよい。
【0065】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。