特許第6876589号(P6876589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876589異常検知装置及び異常検知方法並びに異常検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876589
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】異常検知装置及び異常検知方法並びに異常検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20210517BHJP
【FI】
   G06N20/00 130
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-190778(P2017-190778)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-67069(P2019-67069A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】塩入 健
(72)【発明者】
【氏名】下田平 寛
【審査官】 桜井 茂行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−081767(JP,A)
【文献】 特開2017−102765(JP,A)
【文献】 特開2010−165195(JP,A)
【文献】 特開2015−035118(JP,A)
【文献】 特開2017−033472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定信号のデジタルデータを保管するデータ保管部(4)と、
前記デジタルデータについて正常か異常かを識別する識別部(5)と、を備えた異常検知装置(1)であって、
前記識別部は、
前記データ保管部に保管されたデジタルデータについて予め決められた特徴量を抽出するデジタル信号処理器(11)と、
前記デジタル信号処理器による特徴量の抽出結果に基づいて前記デジタルデータについて正常か否かを仮判定する仮判定器(12)と、
前記仮判定器で正常ではないと仮判定されたデジタルデータを機械学習にて正常か異常かを識別する機械学習分類器(13)と
正常もしくは異常のラベルを付した教師データを保管する教師データ保管部(17)と、
正常もしくは異常のラベルを付した分類器チューニング用データを保管する分類器チューニング用データ保管部(15)と、
前記分類器チューニング用データ保管部の正常のラベルを付した分類器チューニング用データの前記機械学習分類器の出力値と、前記仮判定器で正常と仮判定したデジタルデータの前記機械学習分類器の出力値との比較結果に基づいて前記分類器チューニング用データ保管部に保存される正常のラベルを付した分類器チューニング用データを更新する分類器チューニング用データ更新部(14)と、
前記分類器チューニング用データ保管部の更新された正常のラベルを付した分類器チューニング用データのうち、前記機械学習分類器の出力値が予め設定された閾値以上である分類器チューニング用データを正常のラベルを付した教師データとして前記教師データ保管部に追加保管する教師データ更新部(16)と、
前記教師データ更新部により更新された正常のラベルを付した教師データを用いて前記機械学習分類器を更新する機械学習分類器更新部(18)とを備えたことを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
被測定信号のデジタルデータを保管し、前記デジタルデータについて正常か異常かを識別する異常検知方法であって、
前記保管されたデジタルデータについて予め決められた特徴量を抽出するステップと、
前記特徴量の抽出結果に基づいて前記デジタルデータについて正常か否かを仮判定するステップと、
前記仮判定の処理により正常ではないと仮判定されたデジタルデータを機械学習にて正常か異常かを識別するステップと
正常もしくは異常のラベルを付した教師データを保管するステップと、
正常もしくは異常のラベルを付した分類器チューニング用データを保管するステップと、
正常のラベルを付した分類器チューニング用データの前記機械学習による出力値と、前記仮判定の処理で正常と仮判定したデジタルデータの前記機械学習による出力値との比較結果に基づいて正常のラベルを付した分類器チューニング用データを更新するステップと、
更新された正常のラベルを付した分類器チューニング用データのうち、前記機械学習による出力値が予め設定された閾値以上である分類器チューニング用データを正常のラベルを付した教師データとして追加保管するステップと、
更新された正常のラベルを付した教師データを用いて前記機械学習を更新するステップとを含むことを特徴とする異常検知方法。
【請求項3】
コンピュータを、
被測定信号のデジタルデータを保管するデータ保管部(4)と、
前記データ保管部に保管されたデジタルデータについて予め決められた特徴量を抽出するデジタル信号処理器(11)と、
前記デジタル信号処理器による特徴量の抽出結果に基づいて前記デジタルデータについて正常か否かを仮判定する仮判定器(12)と、
前記仮判定器で正常ではないと仮判定されたデジタルデータを機械学習にて正常か異常かを識別する機械学習分類器(13)と、
正常もしくは異常のラベルを付した教師データを保管する教師データ保管部(17)と、
正常もしくは異常のラベルを付した分類器チューニング用データを保管する分類器チューニング用データ保管部(15)と、
前記分類器チューニング用データ保管部の正常のラベルを付した分類器チューニング用データの前記機械学習分類器の出力値と、前記仮判定器で正常と仮判定したデジタルデータの前記機械学習分類器の出力値との比較結果に基づいて前記分類器チューニング用データ保管部に保存される正常のラベルを付した分類器チューニング用データを更新する分類器チューニング用データ更新部(14)と、
前記分類器チューニング用データ保管部の更新された正常のラベルを付した分類器チューニング用データのうち、前記機械学習分類器の出力値が予め設定された閾値以上である分類器チューニング用データを正常のラベルを付した教師データとして前記教師データ保管部に追加保管する教師データ更新部(16)と、
前記教師データ更新部により更新された正常のラベルを付した教師データを用いて前記機械学習分類器を更新する機械学習分類器更新部(18)として機能させるための異常検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイク、振動センサ、光学センサなどの各種センサで観測した波形を分析し、その変化から異常を検知する異常検知装置及び異常検知方法並びに異常検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば機械の振動や動作音、ベルトコンベアの振動、ベアリングの磨耗などの機器の異常を検知するにあたって、例えばマイク、振動センサ、光学センサなどの各種センサで観測した波形を分析し、その変化から異常を検知する場合には、電気的または機械的の高速過渡現象から低速繰り返し現象まで幅広い信号の解析が必要である。
【0003】
従来、この種の各種センサからの被測定信号の異常を検知する場合には、被測定信号の特徴を数値化した複数種類の特徴量と特徴量ごとの閾値を予め設計しておき、被測定信号のデジタルデータから複数種類の特徴量を抽出し、抽出した各特徴量ごとに閾値と比較し、これらの比較結果から何れかの特徴量において閾値を超えるものがあれば被測定信号を異常と判定するのが一般的であった。例えばデジタルデータに変換された被測定信号の所定の信号成分のみをデジタルフィルタによって取り出し、この取り出した信号成分のピーク値を特徴量として抽出し、抽出した特徴量(ピーク値)が閾値以上であれば被測定信号を異常と判定する。
【0004】
ここで、下記特許文献1には、特徴量を用いた方法として、測定対象物の測定領域における反射光の分光分布のピーク波長を特徴量として抽出し、抽出した特徴量と、あらかじめ取得した特徴量と変位との関係に基づいて、測定領域の変位を算出する変位測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5701837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば正弦波や方形波のような規則的な信号は、オシロスコープ、デジタルメータ、周波数計でその特性を簡単に解析することができる。しかしながら、突発的な機械振動、雷サージ、騒音、センサ信号のような単発信号、雑音、歪などを含む不規則信号の解析には、非常に煩雑な計算作業を要するという問題があった。
【0007】
そして、上述した複数種類の特徴量を抽出し、抽出した各特徴量をそれぞれに対応する閾値と比較する方法では、閾値自体にバラツキがあるため誤判定を招くおそれがあった。また、特徴量を抽出して閾値と比較する方法では、解析する信号に特化しており、汎用性が低いという課題があった。
【0008】
また、製造ラインなどの物品検査に適用した場合、各特徴量ごとの閾値を緩く設定して異常の検知精度を上げようとすると、本来正常と判定すべき良品までも異常と誤判定するおそれがあった。しかも、誤判定が多くなると、良品を無駄にする割合も増え、製品の歩留りが悪化して生産効率が極端に低下するおそれがあった。
【0009】
このため、監視機器や製造装置などでは、常に状態監視を行う必要があり、誤報はできるだけ少なく、より正確に異常を検知することができる異常検知装置の提供が望まれていた。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、解析の対象に依存せず、従来より正確に異常の検知を行うことができる異常検知装置及び異常検知方法並びに異常検知プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された異常検知装置は、被測定信号のデジタルデータを保管するデータ保管部4と、
前記デジタルデータについて正常か異常かを識別する識別部5と、を備えた異常検知装置1であって、
前記識別部は、
前記データ保管部に保管されたデジタルデータについて予め決められた特徴量を抽出するデジタル信号処理器11と、
前記デジタル信号処理器による特徴量の抽出結果に基づいて前記デジタルデータについて正常か否かを仮判定する仮判定器12と、
前記仮判定器で正常ではないと仮判定されたデジタルデータを機械学習にて正常か異常かを識別する機械学習分類器13と
正常もしくは異常のラベルを付した教師データを保管する教師データ保管部17と、
正常もしくは異常のラベルを付した分類器チューニング用データを保管する分類器チューニング用データ保管部15と、
前記分類器チューニング用データ保管部の正常のラベルを付した分類器チューニング用データの前記機械学習分類器の出力値と、前記仮判定器で正常と仮判定したデジタルデータの前記機械学習分類器の出力値との比較結果に基づいて前記分類器チューニング用データ保管部に保存される正常のラベルを付した分類器チューニング用データを更新する分類器チューニング用データ更新部14と、
前記分類器チューニング用データ保管部の更新された正常のラベルを付した分類器チューニング用データのうち、前記機械学習分類器の出力値が予め設定された閾値以上である分類器チューニング用データを正常のラベルを付した教師データとして前記教師データ保管部に追加保管する教師データ更新部16と、
前記教師データ更新部により更新された正常のラベルを付した教師データを用いて前記機械学習分類器を更新する機械学習分類器更新部18とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項に記載された異常検知方法は、被測定信号のデジタルデータを保管し、前記デジタルデータについて正常か異常かを識別する異常検知方法であって、
前記保管されたデジタルデータについて予め決められた特徴量を抽出するステップと、
前記特徴量の抽出結果に基づいて前記デジタルデータについて正常か否かを仮判定するステップと、
前記仮判定の処理により正常ではないと仮判定されたデジタルデータを機械学習にて正常か異常かを識別するステップと
正常もしくは異常のラベルを付した教師データを保管するステップと、
正常もしくは異常のラベルを付した分類器チューニング用データを保管するステップと、
正常のラベルを付した分類器チューニング用データの前記機械学習による出力値と、前記仮判定の処理で正常と仮判定したデジタルデータの前記機械学習による出力値との比較結果に基づいて正常のラベルを付した分類器チューニング用データを更新するステップと、
更新された正常のラベルを付した分類器チューニング用データのうち、前記機械学習による出力値が予め設定された閾値以上である分類器チューニング用データを正常のラベルを付した教師データとして追加保管するステップと、
更新された正常のラベルを付した教師データを用いて前記機械学習を更新するステップとを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項に記載された異常検知プログラムは、コンピュータを、
被測定信号のデジタルデータを保管するデータ保管部4と、
前記データ保管部に保管されたデジタルデータについて予め決められた特徴量を抽出するデジタル信号処理器11と、
前記デジタル信号処理器による特徴量の抽出結果に基づいて前記デジタルデータについて正常か否かを仮判定する仮判定器12と、
前記仮判定器で正常ではないと仮判定されたデジタルデータを機械学習にて正常か異常かを識別する機械学習分類器13と、
正常もしくは異常のラベルを付した教師データを保管する教師データ保管部17と、
正常もしくは異常のラベルを付した分類器チューニング用データを保管する分類器チューニング用データ保管部15と、
前記分類器チューニング用データ保管部の正常のラベルを付した分類器チューニング用データの前記機械学習分類器の出力値と、前記仮判定器で正常と仮判定したデジタルデータの前記機械学習分類器の出力値との比較結果に基づいて前記分類器チューニング用データ保管部に保存される正常のラベルを付した分類器チューニング用データを更新する分類器チューニング用データ更新部14と、
前記分類器チューニング用データ保管部の更新された正常のラベルを付した分類器チューニング用データのうち、前記機械学習分類器の出力値が予め設定された閾値以上である分類器チューニング用データを正常のラベルを付した教師データとして前記教師データ保管部に追加保管する教師データ更新部16と、
前記教師データ更新部により更新された正常のラベルを付した教師データを用いて前記機械学習分類器を更新する機械学習分類器更新部18として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被測定信号が規則的信号、突発的信号、不規則信号であっても、解析の対象に依存せず、従来より正確に異常の検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る異常検知装置のブロック構成図である。
図2】機械学習分類器の識別境界値を設定する際のフローチャートである。
図3】機械学習分類器の更新時のフローチャートである。
図4】機械学習分類器の識別境界値を更新する際のフローチャートである。
図5】運用時のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
まず、本実施の形態で用いられる用語の定義について説明する。「異常」とは、正常とは異なる状態であり、正常な状態から値が外れている状態を意味するものである。また、「異常検知」とは、他の大多数のデータとは振る舞いが異なるデータを見つけること、他に比べて特異なデータを見つけ出すこと、珍しいパターンを見つけること、正常な状態から外れている状態のデータを見つけること等を意味するものである。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態の異常検知装置1は、例えば各種センサからの信号の変化から異常検知を行うものであり、信号入力部2、A/D変換部3、データ保管部4、識別部5を備えて概略構成される。
【0021】
信号入力部2は、例えばマイク、振動センサ、光学センサ等の各種センサからのアナログ信号を被測定信号として入力してA/D変換部3に出力する。
【0022】
なお、本実施の形態における被測定信号は、例えば正弦波や方形波のような規則的な信号だけでなく、突発的な機械振動、雷サージ、騒音等の信号、不規則な雑音、歪等の信号を含む。
【0023】
A/D変換部3は、信号入力部2からの被測定信号をデジタルデータに変換してデータ保管部4に出力する。
【0024】
データ保管部4は、A/D変換部3にてA/D変換された被測定信号のデジタルデータを保管する。
【0025】
識別部5は、データ保管部4に保管された被測定信号のデジタルデータについて正常か異常かを識別するものであり、デジタル信号処理器11、仮判定器12、機械学習分類器13、分類器チューニング用データ更新部14、分類器チューニング用データ保管部15、教師データ更新部16、教師データ保管部17、機械学習分類器更新部18を含む。
【0026】
デジタル信号処理器11は、データ保管部4に保管された被測定信号のデジタルデータについて、予め設計された複数種類の特徴量を抽出する処理を行う。
【0027】
デジタル信号処理器11にて抽出される各特徴量は、例えば下記(1)〜(4)に示すように、被測定信号のデジタルデータにどのような特徴があるかを数値化したものであり、予め人手によって様々なものが設計される。
【0028】
(1)デジタルフィルタ(バンドパスフィルタ)にて被測定信号のデジタルデータから急峻な変化を示す信号成分のみを取り出し、取り出した信号成分のピークの振幅値を被測定信号の特徴量として抽出する。
(2)高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)にて被測定信号のデジタルデータの周波数の特異点を被測定信号の特徴量として抽出する。
(3)微分器にて被測定信号のデジタルデータの傾きの変化を被測定信号の特徴量として抽出する。
(4)メディアンフィルタにて被測定信号のデジタルデータから隣り合う3点を比較して検出した中央の振幅値を検出し、検出した中央の振幅値を元の振幅値から差し引いた振幅値を被測定信号の特徴量として抽出する。
【0029】
仮判定器12は、予め複数種類の特徴量ごとに識別境界値(閾値)が設定されており、デジタル信号処理器11にて抽出された被測定信号の各特徴量と対応する識別境界値(閾値)とを比較し、その比較結果に基づいて被測定信号のデジタルデータが正常か仮異常かを各特徴量ごとに仮判定する処理を行う。なお、「仮異常」とは、正常ではない状態であり、被測定信号のデジタルデータが正常か異常か疑わしい状態を意味する。
【0030】
機械学習分類器13は、データ保管部4に保管された被測定信号のデジタルデータに応じて識別境界値(閾値)を設定する機能を有し、コンピュータに学習能力を持たせるための方法論である機械学習により、仮判定器12で仮異常(正常ではない)と仮判定された被測定信号のデジタルデータが正常か異常かを識別する。
【0031】
なお、機械学習分類器13の初期状態の識別境界値(閾値)は、被測定信号のデジタルデータを用いて設定される。具体的には、予め分類器チューニング用データ保管部15に保管された正常のラベルを付した分類器チューニング用データに基づいて教師データ更新部16にて更新された教師データ保管部17の教師データを用いて機械学習分類器更新部18によって初期状態の識別境界値(閾値)が設定される。
【0032】
機械学習分類器13としては、例えばサポートベクトルマシン(support vector machine; SVM )、ニューラルネットワーク(neural network)、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network)等が用いられる。
【0033】
サポートベクトルマシンは、2つのクラスのデジタルデータ(正常データ、異常データ)を分離するための最適な識別境界値(閾値)を見つけるアルゴリズムである。
【0034】
ニューラルネットワークは、人間の脳の神経回路の仕組みを模したモデルであり、コンピュータで学習させることにより様々な問題を解決できる。但し、モデルの設計にノウハウが必要である。また、多層化した場合に、学習に時間がかかることが難点だが、計算機能力の向上と、学習アルゴリズムの進化、多量のデジタルデータの有効活用により多層化したモデルが登場している。
【0035】
畳み込みニューラルネットワークは、畳み込み層などの特徴的な機能を持った層から構成されるもので、特に画像認識で有効である。畳み込み層は、画像中のエッジ抽出などの特徴抽出の役割を持つ。
【0036】
分類器チューニング用データ更新部14は、分類器チューニング用データ保管部15の正常のラベルを付した分類器チューニング用データの機械学習分類器13の尤度(出力値)と、仮判定部12で正常と仮判定した被測定信号のデジタルデータの機械学習分類器13の尤度(出力値)との比較結果に基づいて、分類器チューニング用データ保管部15に保存されている正常のラベルを付した分類器チューニング用データを更新する。
【0037】
さらに説明すると、分類器チューニング用データ更新部14は、分類器チューニング用データ保管部15の正常のラベルを付した分類器チューニング用データの機械学習分類器13の尤度(出力値)のうちの最大値と、仮判定器12で正常と仮判定した被測定信号のデジタルデータの機械学習分類器13の尤度(出力値)とを比較し、仮判定器12で正常と仮判定した被測定信号のデジタルデータの尤度(出力値)の方が大きければ、仮判定器12で正常と仮判定した被測定信号のデジタルデータを、正常のラベルを付した分類器チューニング用データとして分類器チューニング用データ保管部15に追加保存してデータを更新する。
【0038】
分類器チューニング用データ保管部15は、仮判定器12の判定結果または機械学習分類器13の機械学習による判定結果に基づいて被測定信号のデジタルデータに正常もしくは異常のラベルを付した分類器チューニング用データをメモリに保管する。この分類器チューニング用データ保管部15のメモリに保管される分類器チューニング用データは、分類器チューニング用データ更新部14によって更新される。
【0039】
教師データ更新部16は、分類器チューニング用データ保管部15の正常のラベルを付した分類器チューニング用データのうち、機械学習分類器13の尤度(出力値)が予め設定された識別境界値(閾値)以上である分類器チューニング用データを正常のラベルを付した教師データとして教師データ保管部17に追加保管してデータを更新する。
【0040】
また、教師データ更新部16は、機械学習分類器13の尤度(出力値)が大きい順に所定の数(例えば分布しているデータの1/10程度)の正常のラベルを付した分類器チューニング用データを正常のラベルを付した教師データとして教師データ保管部17に追加保管してデータを更新する。
【0041】
教師データ保管部17は、機械学習分類器13を更新するためのメモリを有し、仮判定器12の判定結果または機械学習分類器13の機械学習による判定結果に基づいて被測定信号のデジタルデータに正常もしくは異常のラベルを付した教師データを保管する。この教師データ保管部17のメモリに保管される教師データは、教師データ更新部16によって更新される。
【0042】
機械学習分類器更新部18は、教師データ更新部17により更新された正常のラベルを付した教師データを用いて機械学習分類器13の識別境界値(閾値)を更新する。
【0043】
次に、上記のように構成される異常検知装置による異常検知方法について説明する。なお、被測定信号の異常検知を行うにあたっては、後述する第1の学習課程を実行する。そして、各種センサからの被測定信号が信号入力部2に入力されると、この被測定信号はA/D変換部3にてデジタルデータに変換された後、データ保管部4に保管される。
【0044】
次に、デジタル信号処理器11は、データ保管部4に保管された被測定信号のデジタルデータについて、予め設計された複数種類の特徴量を抽出する。
【0045】
次に、仮判定器12は、デジタル信号処理器11にて抽出された各特徴量について、個々に対応する識別境界値(閾値)と比較して被測定信号が正常か否かを仮判定する。仮判定器12は、被測定信号を正常と仮判定すると正常判定信号を出力し、被測定信号を仮異常と仮判定すると仮異常判定信号を出力する。
【0046】
次に、機械学習分類器13は、被測定信号のデジタルデータに応じて識別境界値(閾値)を設定し、仮判定器13から仮異常判定信号が入力されると、仮異常と仮判定された被測定信号のデジタルデータを機械学習にて正常か異常かを識別する。機械学習分類器13は、仮異常と仮判定された被測定信号のデジタルデータの尤度(出力値)が規定以上、すなわち、最新の識別境界値(閾値)以上であれば異常と判定して異常判定信号を出力し、最新の識別境界値(閾値)未満であれば正常と判定して正常判定信号を出力する。
【0047】
さらに機械学習分類器13による機械学習の動作を第1の学習課程、第2の学習課程、第3の学習課程、運用過程に場合分けして図2図5を参照しながら説明する。なお、機械学習を行うにあたっては、事前準備として、正常と異常の箇所を含む被測定信号のデジタルデータを取得し、正常の箇所の被測定信号のデジタルデータに正常のラベルを付し、異常の箇所の被測定信号のデジタルデータに異常のラベルを付す。そして、正常と異常のラベルを付したデジタルデータから一部を取り出し、学習用データとしてデータ保管部4に保管し、残りをチューニング用データとして分類器チューニング用データ保管部15に保管する。
【0048】
[第1の学習課程]
図2に示す第1の学習課程は、機械学習分類器13の識別境界値(閾値)を設定する課程である。第1の学習課程では、学習条件、収束条件、繰り返し回数、学習率などを学習停止条件として設定する(ST1)。そして、データ保管部4に保管された学習用データを第1の学習データとし、この第1の学習データを用いて機械学習する(ST2)。そして、学習停止条件を満たしているか否かを判別し(ST3)、学習停止条件を満たしていると判定すると(ST3−Yes)、第1の学習課程を終了する。学習停止条件を満たしていないと判定すると(ST3−No)、条件を変えて再度データ保管部4に保管された学習用データを用いて機械学習する(ST2)。この機械学習の結果、正常のレベルを付した教師データを用いて識別境界値(閾値)を設定する。
【0049】
[第2の学習課程]
図3に示す第2の学習課程は、機械学習分類器13を更新する課程である。第2の学習課程では、正常と判定した被測定信号のデジタルデータを正常データとし、この正常データを用いて機械学習する(ST11)。そして、機械学習した正常データの尤度(出力値)が最新の識別境界値(閾値)以上か否かを判別する(ST12)。尤度(出力値)が識別境界値(閾値)以上であると判定すると(ST12−Yes)、その正常データを分類器チューニング用データ更新部14が分類器チューニング用データとして分類器チューニング用データ保管部15のデータベースに追加保管する(ST13)。尤度(出力値)が識別境界値(閾値)以上でないと判定すると(ST12−No)、第2の学習課程を終了する。
【0050】
[第3の学習課程]
図4に示す第3の学習課程は、機械学習分類器13の識別境界値(閾値)を更新する課程である。第3の学習課程では、学習条件、収束条件、繰り返し回数、学習率などを学習停止条件として設定する(ST21)。また、第2の学習課程で追加保管された分類器チューニング用データ保管部15のチューニング用データに基づいて教師データ更新部16が教師データ保管部17のデータベースを更新し、更新した教師データを第2の学習データとし、機械学習分類器更新部18が第2の学習データに基づいて機械学習分類器13の識別境界値(閾値)を更新する(ST22)。そして、更新された第2の学習データを機械学習し(ST23)、学習停止条件を満たしているか否かを判別し(ST24)、学習停止条件を満たしていると判定すると(ST24−Yes)、第3の学習課程を終了する。学習停止条件を満たしていないと判定すると(ST24−No)、条件を変えて再度教師データ保管部17に保管された教師データ(第2の学習データ)を機械学習する(ST23)。
【0051】
[運用過程]
図5に示す運用過程は、仮判定器12で仮異常と仮判定された被測定信号のデジタルデータを機械学習にて正常か異常かを識別する課程である。運用過程では、仮異常と仮判定された被測定信号のデジタルデータを検査データとし、この検査データの入力により機械学習分類器13から出力される尤度(出力値)が最新の識別境界値(閾値)以上か否かを判別する(ST31)。そして、尤度(出力値)が識別境界値(閾値)以上であれば(ST31−Yes)、「異常」と判定する(ST32)。また、尤度(出力値)が識別境界値(閾値)以上でなければ(ST31−No)、「正常」と判定する(ST33)。
【0052】
ところで、本実施の形態では、図1に示すように、各種センサから信号入力部2に入力される被測定信号(アナログ信号)をA/D変換部3にてデジタルデータに変換する構成としているが、被測定信号のデジタルデータが信号入力部2に入力される場合には、A/D変換部3の構成を省くことができる。
【0053】
また、異常検知装置1が備える構成要素(信号入力部2、A/D変換部3、データ保管部4、識別部5の各部)は、演算処理装置、記憶装置などを備えたコンピュータで構成し、各構成要素の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。
【0054】
このように、本実施の形態では、各種センサからの被測定信号について、予め設計される複数種類の特徴量を抽出し、抽出した各特徴量と対応する識別境界値(閾値)との比較に基づいて被測定信号を正常と仮異常とに仮判定する。そして、仮異常と仮判定された被測定信号については、機械学習を用いた統計モデリングによるデータ解析によって正常と異常とに識別する。これにより、各種センサからの被測定信号が規則的信号、突発的信号、不規則信号であっても、解析の対象に依存せず、従来より正確に異常の検知を行うことができる。
【0055】
また、本実施の形態を例えば製造ラインの物品検査に適用した場合には、運用しながら機械学習分類器の識別境界値(閾値)を更新して被測定信号の異常の有無を検知することができる。しかも、正常か異常か疑わしい被測定信号を仮異常と仮判定した後、この仮異常と仮判定した被測定信号の最終的な判定を機械学習を用いて行うので、正常と異常が分布する境界部分において正常を異常と誤判定する割合が減る。その結果、従来のように各特徴量ごとの識別境界値(閾値)を緩く設定して異常の検知精度を上げても、本来正常と判定すべき良品を異常と誤判定する割合が減り、良品を無駄にすることも少なくなり、製品の歩留りが悪化して生産効率が極端に低下するおそれもない。
【0056】
[応用例]
本実施の形態の異常検知装置及び異常検知方法並びに異常検知プログラムは、例えば製造ラインや加工機器の振動を検知して異常(故障)を予測する場合、統計モデリング技術にて正常動作範囲内にあるかを判定して機械の異常検知する場合、機械の動作音やドアの開閉などの生活音や環境音認識を行う場合、ベルトコンベアの振動を検知してベアリングの摩耗を検出する場合、窓やドアの震度を検知してピッキング等の不審な動作を検出する場合、車の音を検知して悪戯や窃盗を検出する場合などで被測定信号の異常の検知を行う際に応用することができる。
【0057】
以上、本発明に係る異常検知装置及び異常検知方法並びに異常検知プログラムの最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 異常検知装置
2 信号入力部
3 A/D変換部
4 データ保管部
5 識別部
11 デジタル信号処理器
12 仮判定器
13 機械学習分類器
14 分類器チューニング用データ更新部
15 分類器チューニング用データ保管部
16 教師データ更新部
17 教師データ保管部
18 機械学習分類器更新部
図1
図2
図3
図4
図5