【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度総務省「ミリ波帯による高速移動用バックホール技術の研究開発 ウ 高速鉄道環境でのシステム統合技術及び鉄道環境試験技術の開発 (ウ)−2 ユーザー向け列車内伝搬測定」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の基地局選択技術では、複数の基地局の中から、端末にとって無線通信の安定性に問題がある基地局が選択される場合があった。
【0005】
図8は、鉄道の車両(客車)内の無線環境の説明図である。
図9は、
図8に示される鉄道車両内における、従来の基地局選択技術の説明図である。
図8及び
図9には、鉄道車両内の天井に設けられた2台の基地局(BSID1,BSID2)が示されている。また、乗客が座席に座って端末を使用している。一方の基地局(BSID1)は、もう一方の基地局(BSID2)よりも、端末から遠い場所に存在する。したがって、基地局(BSID2)は、基地局(BSID1)よりも、端末に近い場所に存在する。
【0006】
ミリ波帯の電波(以下、ミリ波と称する)は、人体により遮蔽されやすい伝搬特性を有する。このため、鉄道車両内において、通路上の人によってミリ波の伝搬路が遮られたりする。
図8の例では、端末−基地局(BSID1)間のミリ波の伝搬路は、通路上の人が端末−基地局(BSID1)間を通り抜けるための時間が端末−基地局(BSID2)間よりも長いので、端末−基地局(BSID2)間よりも遮蔽される時間が長い。これに対して、端末−基地局(BSID2)間のミリ波の伝搬路は、通路上の人が端末−基地局(BSID2)間を通り抜けるための時間が端末−基地局(BSID1)間よりも短いので、端末−基地局(BSID1)間よりも遮蔽される時間が短い。
【0007】
また、ミリ波は、直進性が強く、壁等の反射物により反射する伝搬特性を有する。このため、鉄道車両内のミリ波の伝搬特性として、ミリ波の多重反射が発生することにより、ミリ波の伝搬損失が大きく変動するとともに、ミリ波の伝搬損失が自由空間よりも小さくなる特徴を有する。
図9の例では、端末は、当該端末から遠い場所に存在する基地局(BSID1)からのミリ波の強度の変動のピークを受信し、一方、当該端末に近い場所に存在する基地局(BSID2)からのミリ波の変動のボトムを受信する無線環境に在る。このため、端末において、端末−基地局(BSID1)間の伝搬損が端末−基地局(BSID2)間の伝搬損よりも小さいために、基地局(BSID1)からの受信RSSIが基地局(BSID2)からの受信RSSIよりも大きくなる。この場合、従来の基地局選択技術では、受信RSSIが大きい方の「端末から遠い場所に存在する基地局(BSID1)」を、当該端末が接続する基地局に選択する。しかし、当該端末が接続する基地局に選択された基地局(BSID1)は、当該端末に近い場所に存在する基地局(BSID2)よりも、当該端末にとって無線通信の安定性が悪い基地局である。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、複数の基地局の中から端末にとってより無線通信が安定する基地局に接続することを図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一態様は、端末装置と複数の基地局装置とを備える無線通信システムの前記端末装置において、前記基地局装置から送信されるビーム毎に無線品質を測定する基地局サーチ部と、各前記基地局装置に対して所定の無線品質を満たす接続可能ビームの個数を算出し、前記接続可能ビームの個数の多さの度合いを表す基地局選択指標を前記基地局装置毎に生成する基地局選択指標生成部と、前記基地局選択指標及び各前記基地局装置の現在の端末接続数に基づいて前記複数の基地局装置の中から自端末装置の接続先に選択された基地局装置に対して無線により通信の接続を行う通信制御部と、を備え、各前記基地局装置の現在の端末接続数は、各前記基地局装置から送信されるビームが有する無線信号に含めて送信され、前記端末装置は、前記無線信号から各前記基地局装置の現在の端末接続数を取得する、端末装置
であって、前記基地局選択指標及び各前記基地局装置の現在の端末接続数に基づいて、前記複数の基地局装置の中から自端末装置の接続先にする基地局装置を選択する基地局選択部をさらに備え、前記基地局選択部は、各前記基地局装置に対して所定期間における無線品質の測定結果の評価を行い、当該評価の結果が所定の基地局優先条件を満足する前記基地局装置を、前記基地局選択指標及び各前記基地局装置の現在の端末接続数に基づく基地局装置の選択結果よりも優先して自端末装置の接続先に選択する、端末装置である。
【0010】
(
6)本発明の一態様は、端末装置と複数の基地局装置とを備える無線通信システムの基地局選択方法であって、前記端末装置が、前記基地局装置から送信されるビーム毎に無線品質を測定する基地局サーチステップと、前記端末装置が、各前記基地局装置に対して所定の無線品質を満たす接続可能ビームの個数を算出し、前記接続可能ビームの個数の多さの度合いを表す基地局選択指標を前記基地局装置毎に生成する基地局選択指標生成ステップと、
各前記基地局装置が、各前記基地局装置の現在の端末接続数を、各前記基地局装置から送信されるビームが有する無線信号に含めて送信するステップと、前記端末装置が、前記無線信号から各前記基地局装置の現在の端末接続数を取得するステップと、前記端末装置が、前記基地局選択指標
及び各前記基地局装置の現在の端末接続数に基づいて前記複数の基地局装置の中から自端末装置の接続先に選択された基地局装置に対して無線により通信の接続を行う通信制御ステップと、を含む基地局選択方法である。
【0011】
(
7)本発明の一態様は、端末装置と複数の基地局装置とを備える無線通信システムの前記端末装置のコンピュータに、前記基地局装置から送信されるビーム毎に無線品質を測定する基地局サーチ機能と、各前記基地局装置に対して所定の無線品質を満たす接続可能ビームの個数を算出し、前記接続可能ビームの個数の多さの度合いを表す基地局選択指標を前記基地局装置毎に生成する基地局選択指標生成機能と、前記基地局選択指標
及び各前記基地局装置の現在の端末接続数に基づいて前記複数の基地局装置の中から自端末装置の接続先に選択された基地局装置に対して無線により通信の接続を行う通信制御機能と、を実現させ
、各前記基地局装置の現在の端末接続数は、各前記基地局装置から送信されるビームが有する無線信号に含めて送信され、前記端末装置のコンピュータに、前記無線信号から各前記基地局装置の現在の端末接続数を取得する機能、をさらに実現させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の基地局の中から端末にとってより無線通信が安定する基地局に接続することを図ることができるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。
図1において、無線通信システム1は、端末装置10と複数の基地局装置30−1、・・・、30−Nとを備える。Nは2以上の整数である。無線通信システム1は、例えば、
図8に示されるように鉄道車両(客車)内に備えられる。鉄道車両(客車)内において、複数の基地局装置30−1、・・・、30−N(以下、特に区別しないときは「基地局装置30」と称する)は、例えば
図8に示されるように鉄道車両内の天井に設置される。また、端末装置10は、例えば
図8に示されるように鉄道車両内で、乗客が座席に座って使用される。
【0015】
基地局装置30は、指向性を有する複数のビームを送信することができる。端末装置10は、基地局装置30に無線により接続して通信を行う。本実施形態では、無線通信システム1が無線通信に利用する電波の一例としてミリ波を挙げて説明する。
【0016】
図2は、本実施形態に係る端末装置10の概略の構成例を示すブロック図である。
図2において、端末装置10は、無線部11と、基地局サーチ部12と、基地局選択指標生成部13と、通信制御部14と、基地局選択部15と、記憶部16と、を備える。無線部11は、端末装置10のアンテナ(図示せず)を介して、無線信号を送受する。基地局サーチ部12は、基地局装置30から送信されるビーム毎に無線品質を測定する。
【0017】
基地局選択指標生成部13は、各基地局装置30に対して所定の無線品質を満たす接続可能ビームの個数を算出し、接続可能ビームの個数の多さの度合いを表す基地局選択指標を基地局装置30毎に生成する。接続可能ビームは、基地局装置30が送信するビームであって、端末装置10が当該基地局装置30との間で無線により接続することができるビームである。所定の無線品質を満たす接続可能ビームは、基地局装置30が送信する接続可能ビームであって、端末装置10が当該基地局装置30との間の無線通信において当該所定の無線品質を満たすことができる接続可能ビームである。無線品質として、RSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)、SINR(Signal to Interference Noise power Ratio:信号対干渉雑音電力比)、CINR(Carrier to Interference and Noise power Ratio:搬送波対干渉波及び雑音電力比)などを適用してもよい。所定の無線品質は、例えば、一つのビームにより所定のスループット(例えば、毎秒1ギガビット)以上が得られるRSSI閾値である。
【0018】
基地局選択指標は、接続可能ビームの個数の多さの度合いを表す情報である。基地局選択指標は、接続可能ビーム数であってもよく、又は、接続可能ビーム数の多さを段階的に表すレベル(例えば、「多」、「中」及び「少」の3段階、若しくは、レベル1からレベル10までの10段階など)であってもよい。
【0019】
通信制御部14は、端末装置10の無線通信の制御を行う。通信制御部14は、基地局選択指標に基づいて複数の基地局装置30の中から自端末装置10の接続先に選択された基地局装置30に対して無線により通信の接続を行う。基地局選択部15は、基地局選択指標に基づいて、複数の基地局装置30の中から自端末装置10の接続先にする基地局装置30を選択する。記憶部16は、データを格納する。
【0020】
端末装置10として、スマートフォンやタブレット型のコンピュータ(タブレットPC)等の携帯通信端末装置を適用してもよい。
【0021】
図3は、本実施形態に係る基地局装置30の概略の構成例を示すブロック図である。
図3において、基地局装置30は、無線部31と、ビーム制御部32とを備える。無線部31は、基地局装置30のアンテナ(図示せず)を介して、無線信号を送受する。ビーム制御部32は、基地局装置30のアンテナから送信されるビームの制御を行う。
【0022】
次に
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係る基地局選択方法を説明する。
図4は、本実施形態に係る基地局選択方法の概略フローチャートである。
図5は、本実施形態に係る無線通信システム1の動作のシーケンスチャートである。
【0023】
(ステップS1) 端末装置10の基地局サーチ部12は、N台の基地局装置30−1、・・・、30−Nの各々を対象にして、基地局装置30から送信されるビーム毎に無線品質を測定する。ステップS1について、
図5を参照して詳細に説明する。端末装置10の基地局サーチ部12は、ステップS1のステップS1−1からステップS1−3までを、N台の基地局装置30−1、・・・、30−Nに対して順次実行する。
【0024】
(ステップS1−1) 端末装置10の基地局サーチ部12は、基地局装置30に対して、全ビームを送信するように要求する。
【0025】
(ステップS1−2) 基地局装置30のビーム制御部32は、端末装置10からの要求に応じて、全ビームを順次又は一斉に送信するように、ビームの送信を制御する。これにより、基地局装置30は、全ビームを順次又は一斉に送信する。基地局装置30から送信されるビームは、基地局識別子(基地局ID)及びビーム識別子(ビームID)を含むリファレンス信号又はビーコン等の無線信号を有するビームである。これにより、あるビームがどの基地局装置30から送信されたどのビームであるのかを識別することができる。
【0026】
(ステップS1−3) 端末装置10の基地局サーチ部12は、ビームを順次に又は一斉に受信する。基地局サーチ部12は、受信した各ビームから基地局ID及びビームIDを取得する。また、基地局サーチ部12は、受信した各ビームについての無線品質を測定する。ここでは、無線品質の測定項目の一例として、受信したビームのRSSI(受信RSSI)を測定する。基地局サーチ部12は、受信した各ビームについて、基地局IDとビームIDと受信RSSIの組を記憶部16に書き込む。これにより、記憶部16は、基地局サーチ部12が受信した各ビームについての基地局IDとビームIDと受信RSSIの組を格納する。
【0027】
なお、端末装置10の基地局サーチ部12は、基地局装置30に対して、ビーム送信方法として、全ビームを順次に送信するか又は全ビームを一斉に送信するかを指定してもよい。基地局装置30のビーム制御部32は、端末装置10から指定されたビーム送信方法により全ビームを送信するように、ビームの送信を制御する。
【0028】
説明を
図4に戻す。
(ステップS2) 端末装置10の基地局選択指標生成部13は、各基地局装置30に対して所定のRSSI閾値を満たす接続可能ビームの個数を算出し、接続可能ビームの個数の多さの度合いを表す基地局選択指標を基地局装置30毎に生成する。ここでは、基地局選択指標の一例として、接続可能ビーム数を生成する。ステップS2について、
図5を参照して詳細に説明する。
【0029】
(ステップS2−1) 端末装置10の基地局選択指標生成部13は、記憶部16から基地局IDとビームIDと受信RSSIの組を順次読み出す。
【0030】
(ステップS2−2) 端末装置10の基地局選択指標生成部13は、受信RSSIがRSSI閾値以上である組のビームIDを検索し、検索されたビームIDの個数(接続可能ビーム数)を基地局ID毎に集計する。これにより、同じ基地局装置30から送信された全ビームのうち受信RSSIがRSSI閾値以上であるビームの個数(接続可能ビーム数)が算出される。基地局選択指標生成部13は、基地局IDと接続可能ビーム数の組を記憶部16に書き込む。これにより、記憶部16は、
図6に例示されるように、各基地局装置30についての基地局IDと接続可能ビーム数の組を格納する。
図6の例は、基地局装置30の台数Nが4の場合である。
【0031】
説明を
図4に戻す。
(ステップS3) 端末装置10の基地局選択部15は、接続可能ビーム数に基づいて、N台の基地局装置30−1、・・・、30−Nの中から自端末装置10の接続先にする基地局装置30を選択する。ここでは、基地局選択方法の一例として、接続可能ビーム数が最大である基地局装置30を端末装置10の接続先にする基地局装置30に選択する。ステップS3について、
図5を参照して詳細に説明する。
【0032】
(ステップS3−1) 端末装置10の基地局選択部15は、記憶部16から基地局IDと接続可能ビーム数の組を順次読み出す。基地局選択部15は、接続可能ビーム数の最大値を検索し、検索された最大の接続可能ビーム数が属する組の基地局IDを取得する。基地局選択部15は、該取得した基地局IDの基地局装置30を自端末装置10の接続先にする基地局装置30に選択する。
図6の例では、最大の接続可能ビーム数「10」が属する組の基地局ID「BSID2」の基地局装置30が端末装置10の接続先にする基地局装置30に選択される。
【0033】
(ステップS3−2) 端末装置10の基地局選択部15は、該選択された基地局装置30の基地局IDを、自端末装置10の接続先にする基地局装置30の基地局IDとして記憶部16に書き込む。これにより、記憶部16は、自端末装置10の接続先にする基地局装置30の基地局IDを格納する。
【0034】
説明を
図4に戻す。
(ステップS4) 端末装置10の通信制御部14は、自端末装置10の接続先に選択された基地局装置30に対して無線により通信の接続を行う。具体的には、通信制御部14は、自端末装置10の接続先にする基地局装置30の基地局IDを記憶部16から読み出す。通信制御部14は、該読み出した基地局IDを使用して、当該基地局IDの基地局装置30に対して無線により接続要求を行う。これにより、端末装置10と当該基地局IDの基地局装置30との間で無線により通信の接続が行われる。
【0035】
本実施形態によれば、基地局サーチ部12が複数の基地局装置30から送信されるビーム毎に無線品質を測定し、基地局選択指標生成部13が各基地局装置30に対して所定の無線品質を満たす接続可能ビームの個数を算出し、接続可能ビームの個数の多さの度合いを表す基地局選択指標を基地局装置30毎に生成し、通信制御部14が基地局選択指標に基づいて複数の基地局装置30の中から自端末装置10の接続先に選択された基地局装置30に対して無線により通信の接続を行う。これにより、端末装置10は、接続可能ビームの個数が多い(例えば、最大の接続可能ビーム数である)基地局装置30に無線により接続することができるので、複数の基地局装置30の中から端末装置10にとってより無線通信が安定する基地局装置30に接続することができるという効果が得られる。
【0036】
また、端末装置10が基地局選択部15をさらに備え、基地局選択部15が基地局選択指標に基づいて複数の基地局装置30の中から自端末装置10の接続先にする基地局装置30を選択してもよい。これにより、端末装置10は、自己の接続先にする基地局装置30を自身で選択することができる。
【0037】
本実施形態は、接続可能ビーム数が多い基地局装置30ほど端末装置10にとってより無線通信が安定する基地局装置30であるという技術的思想に基づいたものである。無線通信システム1がミリ波を利用して無線通信を行う場合において、
図8に例示されるように鉄道車両(客車)内に備えられるときは、端末装置10が接続する基地局装置30は、当該端末装置10に比較的近い場所に存在する基地局装置30が無線通信の安定性の点で好ましい。この点における本実施形態による効果を、
図7を参照して説明する。
【0038】
図7に示されるグラフ図には、
図8に例示されるような鉄道車両(客車)内における、接続可能ビーム数と、基地局−座席間距離との関係が示されている。
図7のグラフ図は、レイトレーシング(ray tracing)手法を用いたシミュレーションの結果から作成されたものである。
図7の例では、客車内の座席8列目の天井に基地局が設置されている。端末は座席に座った乗客により使用される。
【0039】
図7のグラフ図に示されるように、基地局から遠い場所に在る座席ほど接続可能ビーム数が減少する。したがって、接続可能ビーム数が多い基地局ほど、座席(端末)と基地局間の距離が近いという関係がある。これにより、無線通信システム1がミリ波を利用して無線通信を行う場合において、
図8に例示されるように鉄道車両(客車)内に備えられるときは、端末装置10が接続する基地局装置30として、接続可能ビーム数が多い基地局装置30を選択することが無線通信の安定性の点で好ましい。よって、本実施形態によれば、無線通信システム1がミリ波を利用して無線通信を行う場合において、
図8に例示されるように鉄道車両(客車)内に備えられるときであっても、複数の基地局装置30の中から端末装置10にとってより無線通信が安定する基地局装置30に接続することができるという効果が得られる。
【0041】
(変形例1)
上述の実施形態では、基地局選択方法の一例として、接続可能ビーム数が最大である基地局装置30を端末装置10の接続先にする基地局装置30に選択したが、他の基地局選択方法であってもよい。例えば、接続可能ビーム数が所定数以上である基地局装置30の中から、任意の基地局装置30を選択してもよい。又は、接続可能ビーム数が所定数以上である基地局装置30の中から、所定の基地局選択条件Aを満足する基地局装置30を選択してもよい。基地局選択条件Aは、例えば、ビームの無線品質の閾値であってもよい。ビームの無線品質として、例えば、基地局装置30の全ビームについての無線品質から算出される統計値(例えば、平均値など)であってもよく、又は、基地局装置30の全ビームの無線品質における最大値、最小値若しくは中間値であってもよい。又は、基地局選択条件Aは、例えば、端末接続数の閾値に達していないことであってもよい。この場合、各基地局装置30の現在の端末接続数は、例えば、各基地局装置30から送信されるビームが有する無線信号に含めて送信されることにより、端末装置10に通知されてもよい。
【0042】
(変形例2)
基地局選択指標と異なる基地局優先条件Bを併用してもよい。例えば、基地局選択指標と異なる無線品質、異なる統計値(例えば、平均時間が基地局選択指標よりも長い等)を基地局優先条件Bとする。基地局選択部15は、各基地局装置30に対して所定期間における無線品質の測定結果を評価し、当該評価の結果が所定の基地局優先条件Bを満足する基地局装置30を、基地局選択指標に基づく基地局装置30の選択結果よりも優先して自端末装置10の接続先に選択してもよい。例えば、基地局選択部15は、N台の基地局装置30−1、・・・、30−Nの各々を対象にして、所定の周期で(例えば、10分毎に)、基地局装置30から送信されるビーム毎に無線品質を測定し、当該測定結果を記録する。そして、基地局選択部15は、所定期間(例えば、1時間)におけるm回(例えば、1時間における10分毎の測定では6回)の測定の測定結果の記録の中で所定の基地局優先条件Bを満足する基地局装置30を、基地局選択指標に基づく基地局装置30の選択結果よりも優先して自端末装置10の接続先に選択する。基地局優先条件Bは、例えば、所定期間におけるm回の測定の測定結果の記録の中でビームの無線品質が全ての測定回で最良であることであってもよい。ビームの無線品質として、例えば、基地局装置30の全ビームについての無線品質から算出される統計値(例えば、平均値など)であってもよく、又は、基地局装置30の全ビームの無線品質における最大値、最小値若しくは中間値であってもよい。
【0043】
(変形例3)
端末装置10は、各基地局装置30の基地局選択指標を、自端末装置10が接続中の基地局装置30へ送信する通知部をさらに備えてもよい。基地局装置30は、自己に接続中の端末装置10から通知された各基地局装置30の基地局選択指標に基づいて、当該端末装置10が接続を変更する先の基地局装置30を選択し、当該選択結果の接続変更先の基地局装置30(基地局ID)を当該端末装置10へ通知する。端末装置10の通信制御部14は、自端末装置10が接続中の基地局装置30から通知された接続変更先の基地局装置30(基地局ID)に対して、無線により通信の接続(接続の変更)を行う。
【0044】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0045】
例えば、上述した実施形態は、鉄道車両内、地下街、路地裏及び複数のビルの谷間などの電波の多重反射が発生する無線環境において適用してもよい。また、無線通信システム1が無線通信に利用する電波には、ミリ波以外の直進性が強い電波を適用してもよい。
【0046】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0047】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。