特許第6876597号(P6876597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876597複数のパワーモジュールを有する電力変換装置を含むシステムを制御する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876597
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】複数のパワーモジュールを有する電力変換装置を含むシステムを制御する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/34 20060101AFI20210517BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20210517BHJP
【FI】
   B66B1/34 B
   H02M7/493
【請求項の数】19
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-231278(P2017-231278)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-99323(P2019-99323A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 恵治
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中村 元美
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−195279(JP,A)
【文献】 特開2006−187071(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0094367(US,A1)
【文献】 特開2002−362848(JP,A)
【文献】 特開2015−220778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/34
H02M 7/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御装置であって、
前記電力変換装置に接続された1以上のインターフェースであるインターフェース部と、
前記1以上のインターフェースに接続された1以上のプロセッサであるプロセッサ部と
を有し、
前記プロセッサ部は、下記(A)及び(B)を定期的に又は不定期的に行うことで、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持する、
(A)前記Y台の第2のパワーモジュールから、直前回の(A)で選択されたP台(Pは1以上Y未満の整数)の停止対象の第2のパワーモジュールと少なくとも一部が異なるP台(今回のP=直前回のP、又は、今回のP≠直前回のP)の停止対象の第2のパワーモジュールを選択し、
(B)今回の(A)で選択されたP台の停止対象の第2のパワーモジュールを停止する、
制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサ部は、前記X台の第1のパワーモジュールの各々の停止量を、ゼロ、又は、前記Y台の第2のパワーモジュールのいずれのパワーモジュールの停止量よりも少なく維持する、
請求項に記載の制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサ部は、前記対象システムがK回運転する毎に(Kは自然数)、(A)及び(B)を行う、
請求項に記載の制御装置。
【請求項4】
前記負荷デバイスは、モータであり、
前記対象システムは、前記モータの駆動により昇降する乗りかごを含むエレベーターシステムであり、
前記対象システムの1回の運転は、前記乗りかごが昇降を開始してから停止することである、
請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御装置であって、
前記電力変換装置に接続された1以上のインターフェースであるインターフェース部と、
前記1以上のインターフェースに接続された1以上のプロセッサであるプロセッサ部と
を有し、
前記プロセッサ部が、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
前記プロセッサ部は、
前記N台のパワーモジュールの各々について、当該パワーモジュールの稼働量を基に、当該パワーモジュールの寿命を予測し、
前記N台のパワーモジュールのうち、少なくとも、予測された寿命が最も短いパワーモジュールについての情報を出力する、
制御装置。
【請求項6】
前記N台のパワーモジュールの各々について、当該パワーモジュールの稼働量は、前記対象システムの運転回数、運転時間及び運転頻度のうちの少なくとも1つを含む、
請求項に記載の制御装置。
【請求項7】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御装置であって、
前記電力変換装置に接続された1以上のインターフェースであるインターフェース部と、
前記1以上のインターフェースに接続された1以上のプロセッサであるプロセッサ部と
を有し、
前記プロセッサ部が、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
Nは、下記の(p)及び(q)から定まるパワーモジュール台数よりも小さい値である、
(p)パワーモジュールの負担とパワーモジュールの推定寿命との関係、及び、
(q)全てのパワーモジュールを均等に使用したと仮定した場合の各パワーモジュールの目標寿命、
制御装置。
【請求項8】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御装置であって、
前記電力変換装置に接続された1以上のインターフェースであるインターフェース部と、
前記1以上のインターフェースに接続された1以上のプロセッサであるプロセッサ部と
を有し、
前記プロセッサ部が、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
前記X台の第1のパワーモジュールは、前記Y台の第2のパワーモジュールよりも取り出し作業側に近い位置にあるパワーモジュールである、
制御装置。
【請求項9】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御装置であって、
前記電力変換装置に接続された1以上のインターフェースであるインターフェース部と、
前記1以上のインターフェースに接続された1以上のプロセッサであるプロセッサ部と
を有し、
前記プロセッサ部が、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
前記プロセッサ部は、前記対象システムのメンテナンス期間中、又は、前記X台の第1のパワーモジュールが故障した場合、前記X台の第1のパワーモジュールを停止するが、前記Y台の第2のパワーモジュールの稼働を維持する、
制御装置。
【請求項10】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御装置であって、
前記電力変換装置に接続された1以上のインターフェースであるインターフェース部と、
前記1以上のインターフェースに接続された1以上のプロセッサであるプロセッサ部と
を有し、
前記プロセッサ部が、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
前記N台のパワーモジュールのうち、前記X台の第1のパワーモジュールのうちの少なくとも1つについては、前記N台のパワーモジュールのうちの残りのパワーモジュールと比して、多くのセンサが設けられている、多くの種類のセンサが設けられている、及び、当該残りのパワーモジュールについては設けられていない種類のセンサが設けられている、のうちの少なくとも1つである、
制御装置。
【請求項11】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御装置であって、
前記電力変換装置に接続された1以上のインターフェースであるインターフェース部と、
前記1以上のインターフェースに接続された1以上のプロセッサであるプロセッサ部と
を有し、
前記プロセッサ部が、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
前記プロセッサ部は、前記Y台の第2のパワーモジュールの稼働量を均等に維持する、
制御装置。
【請求項12】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有し、
前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールの各々は、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多い稼働量とされるパワーモジュールである、
電力変換装置。
【請求項13】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御方法であって、
コンピュータが、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールを特定し、
コンピュータが、下記(A)及び(B)を定期的に又は不定期的に行うことで、前記X台の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持する、
(A)前記Y台の第2のパワーモジュールから、直前回の(A)で選択されたP台(Pは1以上Y未満の整数)の停止対象の第2のパワーモジュールと少なくとも一部が異なるP台(今回のP=直前回のP、又は、今回のP≠直前回のP)の停止対象の第2のパワーモジュールを選択し、
(B)今回の(A)で選択されたP台の停止対象の第2のパワーモジュールを停止する、
制御方法。
【請求項14】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御方法であって、
コンピュータが、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールを特定し、
コンピュータが、前記X台の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
コンピュータが
前記N台のパワーモジュールの各々について、当該パワーモジュールの稼働量を基に、当該パワーモジュールの寿命を予測し、
前記N台のパワーモジュールのうち、少なくとも、予測された寿命が最も短いパワーモジュールについての情報を出力する、
制御方法。
【請求項15】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御方法であって、
コンピュータが、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールを特定し、
コンピュータが、前記X台の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
Nは、下記の(p)及び(q)から定まるパワーモジュール台数よりも小さい値である、
(p)パワーモジュールの負担とパワーモジュールの推定寿命との関係、及び、
(q)全てのパワーモジュールを均等に使用したと仮定した場合の各パワーモジュールの目標寿命、
制御方法。
【請求項16】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御方法であって、
コンピュータが、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールを特定し、
コンピュータが、前記X台の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
前記X台の第1のパワーモジュールは、前記Y台の第2のパワーモジュールよりも取り出し作業側に近い位置にあるパワーモジュールである、
制御方法。
【請求項17】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御方法であって、
コンピュータが、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールを特定し、
コンピュータが、前記X台の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
コンピュータが、前記対象システムのメンテナンス期間中、又は、前記X台の第1のパワーモジュールが故障した場合、前記X台の第1のパワーモジュールを停止するが、前記Y台の第2のパワーモジュールの稼働を維持する、
制御方法。
【請求項18】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御方法であって、
コンピュータが、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールを特定し、
コンピュータが、前記X台の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
前記N台のパワーモジュールのうち、前記X台の第1のパワーモジュールのうちの少なくとも1つについては、前記N台のパワーモジュールのうちの残りのパワーモジュールと比して、多くのセンサが設けられている、多くの種類のセンサが設けられている、及び、当該残りのパワーモジュールについては設けられていない種類のセンサが設けられている、のうちの少なくとも1つである、
制御方法。
【請求項19】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御方法であって、
コンピュータが、前記N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールを特定し、
コンピュータが、前記X台の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、前記X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持し、
コンピュータが、前記Y台の第2のパワーモジュールの稼働量を均等に維持する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、複数のパワーモジュールを有する電力変換装置を含むシステムの制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のパワーモジュールを有する電力変換装置が知られている。特許文献1に開示の電力変換装置は、複数のパワーモジュールの寿命を平準化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−220778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の電力変換装置のように、一般に、電力変換装置は、複数のパワーモジュールを均等に使用することにより複数のパワーモジュールの寿命を平準化する。
【0005】
しかし、全てのパワーモジュールの品質が均一であるとは限らない。このため、複数のパワーモジュールを均等に使用したとしても、パワーモジュールの寿命にはばらつきが生じる。言い換えれば、パワーモジュールの寿命は、当該パワーモジュールの品質に依存する。各パワーモジュールの品質を正確に測定することは容易ではない。故に、寿命が早くに尽きるパワーモジュールを予測することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
N台(Nは2以上の整数)のパワーモジュールを有する電力変換装置と当該電力変換装置からの電力を基に駆動する負荷デバイスとを含んだ対象システムを制御する制御装置が、電力変換装置に接続された1以上のインターフェースであるインターフェース部と、1以上のインターフェースに接続された1以上のプロセッサであるプロセッサ部とを有する。プロセッサ部が、N台のパワーモジュールのうちのX台(Xは1以上N未満の整数)の第1のパワーモジュールの各々の稼働量を、X台の第1のパワーモジュール以外のパワーモジュールであるY台(Y=N−X)の第2のパワーモジュールのいずれの稼働量よりも多く維持する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、X台の第1のパワーモジュールがY台の第2のパワーモジュールよりも早くに寿命が尽きる可能性が高いことが容易にわかる。すなわち、各パワーモジュールの品質が正確にわからなくても、いずれのパワーモジュールの寿命が早くに尽きるかの予測がし易い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る制御装置の構成を示す。
図2】INV(インバータモジュール)の寿命の考え方の一例を示す。
図3】INVに関し、電流と温度の関係の一例を示す。
図4】INVに関し、温度変化と寿命の関係の一例を示す。
図5】エレベーターシステムの1回の運転に関し、エレベーターの乗りかご速度と、モータに提供される電流と、INVの温度との関係の一例を示す。
図6】INV管理テーブルの構成を示す。
図7】寿命テーブルの構成を示す。
図8】運転制御処理の流れを示す。
図9】実施例1での、停止対象のINVの切り替え、を示す。
図10】寿命予測処理の流れを示す。
図11】実施例2での、停止対象のINVの切り替え、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、「インターフェース部」は、1以上のインターフェースでよい。当該1以上のインターフェースは、1以上の同種の通信インターフェースデバイスであってもよいし2以上の異種の通信インターフェースデバイスであってもよい。
【0010】
また、以下の説明では、「メモリ部」は、1以上のメモリであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリ部における少なくとも1つのメモリは、揮発性メモリであってもよいし不揮発性メモリであってもよい。
【0011】
また、以下の説明では、以下の説明では、1以上のPDEVであり、典型的には補助記憶デバイスでよい。「PDEV」は、物理的な記憶デバイスを意味し、典型的には、不揮発性の記憶デバイスである。
【0012】
また、以下の説明では、「記憶部」は、メモリ部及びPDEV部のうちの少なくともメモリ部である。
【0013】
また、以下の説明では、「プロセッサ部」は、1以上のプロセッサである。少なくとも1つのプロセッサは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサであるが、GUP(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサでもよい。1以上のプロセッサの各々は、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。プロセッサは、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit))を含んでもよい。
【0014】
また、以下の説明では、「xxxテーブル」といった表現にて情報を説明することがあるが、情報は、どのようなデータ構造で表現されていてもよい。すなわち、情報がデータ構造に依存しないことを示すために、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、1つのテーブルは、2以上のテーブルに分割されてもよいし、2以上のテーブルの全部又は一部が1つのテーブルであってもよい。
【0015】
また、以下の説明では、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサ部によって実行されることで、定められた処理を、適宜にメモリ部及び/又はインターフェース部等を用いながら行うため、処理の主語が、プロセッサ部(或いは、そのプロセッサ部を有するコントローラのようなデバイス)とされてもよい。プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な(例えば非一時的な)記録媒体であってもよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0016】
また、以下の説明では、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号を使用し、同種の要素を区別する場合は、要素のIDを使用することがある。例えば、インバータモジュール(以下、INV)を区別しない場合には、「INV111」と言い、INVを区別する場合には、「INV1」、「INV2」、のように言うことがある。
【0017】
以下、本発明の幾つかの実施例を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係る制御装置の構成を示す。
【0019】
制御装置101により制御される対象システムの一例として、エレベーターシステム102が採用されている。エレベーターシステム102は、乗りかご121と、釣合おもり122と、乗りかご121及び釣合おもり122を釣瓶状に懸架する主ロープ124と、N台(Nは2以上の整数)のインバータモジュール(以下、INV)111を有する電力変換装置110と、電力変換装置110から供給された電力を基に駆動することで主ロープ124を介して乗りかご121を昇降させるモータ123と、モータ123の回転速度を検出する速度センサ125と、モータ123の回転速度を弱める(例えばゼロにする)ブレーキ126とを有する。INV111が、パワーモジュールの一例である。INV111は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)モジュールである。
【0020】
制御装置101は、インターフェース部151と、記憶部152と、それらに接続されたプロセッサ部153とを有する。
【0021】
インターフェース部151は、エレベーターシステム102に接続された1以上のインターフェースデバイスを含む。具体的には、例えば、インターフェース部151は、電力変換装置110に接続されたインターフェースデバイスと、速度センサ125に接続されたインターフェースデバイスと、乗りかご121の開閉扉(図示せず)の開閉指令に応答して開閉扉を開閉するデバイス(図示せず)に接続されたインターフェースデバイスと、エレベーターシステム102の管理システム181とに接続されたインターフェースデバイスとを含む。なお、管理システム181は、一以上の計算機で構成されてよい。制御装置101のプロセッサ部153は、インターフェース部151を介して、管理システム181に表示用情報を表示することができる。
【0022】
記憶部152は、プログラムや情報を記憶する。プログラムとしては、例えば、エレベーターシステム102の運転を制御する運転制御プログラム161と、INV111の寿命を予測する寿命予測プログラム162とがある。情報としては、例えば、各INV111に関する情報を保持するINV管理テーブル171と、INV111と寿命との関係を示す寿命テーブル172とがある。
【0023】
プロセッサ部153は、記憶部152内のプログラムを実行することで、記憶部152内の情報を参照したり、エレベーターシステム102を制御したりする。
【0024】
図2は、INV111の寿命の考え方の一例を示す。
【0025】
電力変換装置110が有するINV111の台数Nは、下記の(p)及び(q)、
(p)INV111の負担とINV111の推定寿命との関係、及び、
(q)全てのINV111を均等に使用したと仮定した場合の各INV111の目標寿命、
から定まるINV台数よりも小さい値である。これにより、特定のX台のINV111の稼働量を多く維持することが行いやすくなる。具体的には、例えば、以下の通りである。
【0026】
例えば、参照符号201が示すように、INV111の負担を10%に維持した場合の当該INV111の推定寿命が10年であると定義する。この場合、モータ123に100%の負担を与えるためには、N=10(=100%÷10%)である。
【0027】
この前提を基準に、INV111の負担をm倍すると、INV111の寿命が1/m倍になるとする。
【0028】
例えば、参照符号202が示すように、INV111の負担を12.5%に維持するとする。m=1.25(=12.5%÷10%)のため、INV111の推定寿命は、8年(=10×1/1.25)となる。また、Nの値も8となる(100%÷12.5%)。
【0029】
また、例えば、参照符号203が示すように、INV111の負担を20%に維持するとする。m=2(=20%÷10%)のため、INV111の推定寿命は、5年(=10×1/2)となる。また、Nの値も5となる(100%÷20%)。
【0030】
このような考え方を一例として、Nを決定することができる。本実施例では、INV111の目標寿命を8年以上と考えるため、N=8が採用される(参照符号202)。Nが小さい程、N台のINV111を均等に使用したと仮定した場合、各INV111の負担は必然的に高くなり、結果として、各INV111の寿命は短くなる。
【0031】
INV111の負担が大きいと、INV111からの電流の値も高くなり、結果として、INV111の温度変化が大きくなる。INV111のようなパワーモジュールは、半導体素子を含むため、温度や温度変化が寿命に影響する。
【0032】
図3は、INV111に関し、電流と温度の関係の一例を示す。
【0033】
例えば、或る時間スイッチング素子がオン状態であると(或る時間電流Icが流れると)、その時間をかけてケース温度Tc及びジャンクション温度Tjが上昇する。スイッチング素子がターンオフすると、Tc及びTjは下がる。ここでは、放熱フィン温度Tfを基準として、TfとTcのピークとの差がΔTcであり、TfとTjのピークとの差がΔTjである。
【0034】
図4は、INV111に関し、温度変化と寿命の関係の一例を示す。
【0035】
図4に例示するように、INV111の寿命(ここでは、熱ストレスによる寿命であるパワーサイクル寿命)は、温度変化(ΔTj)が大きいと減る。また、使用温度が高いと、INV111の寿命が減る。なお、Tjminは、Tjの最低値である。Tjmaxは、Tjの最大値である。
【0036】
図5は、エレベーターシステム102の1回の運転に関し、エレベーターの乗りかご速度と、モータ123に提供される電流と、INV111の温度との関係の一例を示す。なお、図5は、積載100%の上昇方向運転時の関係を示す。典型的には、運転方向が異なると、電流波形も異なる。
【0037】
エレベーターシステム102の1回の運転は、乗りかご121が昇降を開始してから停止することである。具体的には、例えば、1回の運転では、開始期間P1と、定速期間P2と、停止期間P3とがある。乗りかご121の開閉扉の開閉後に、開始期間P1において乗りかご121が徐々に加速し(モータ123の回転速度が徐々に早くなり)、一定の速度に達すると、定速期間P2になる。定速期間P2では、乗りかご121の速度が一定である(モータ123の回転速度が一定である)。停止までの残り距離が或る距離に達すると、停止期間P3に入る。停止期間P3では、乗りかご121が徐々に減速してやがて停止する(モータ123の回転速度が徐々に減速してやがて停止する)。そして、再び開閉扉の開閉が生じる。移動距離(移動元のフロアと移動先のフロアとの距離)に応じて、定速期間P2は無くてもよいし、加速及び減速での傾き(単位時間当たりの加速量又は減速量)は異なってもよい。
【0038】
期間P1〜P3において、開始期間P1で最も大きい電流値が必要となる。定速期間P2では、必要とされる電流値が減り、停止期間P3では、必要とされる電流が更に減る。
【0039】
期間P1〜P3において、開始期間P1での大きい電流を受けて、温度(例えばTj)はピークに達する。その後、定速期間P2及び停止期間P3にかけて徐々に温度が下がる。
【0040】
図5に例示する運転の制御は、運転制御プログラム161により行われる。具体的には、例えば、運転制御プログラム161が、電力変換装置110において停止対象となるINV111を切り替えることで、モータ123への電流の値を制御し、以って、モータ123の回転速度を制御する。
【0041】
図6は、INV管理テーブル171の構成を示す。
【0042】
INV管理テーブル171は、INV111と運転に関する情報との関係を保持する。具体的には、例えば、INV管理テーブル171は、各INV111について、INV番号(INV111の番号)と、INV111が使用された運転の回数とを示す。
【0043】
図7は、寿命テーブル172の構成を示す。
【0044】
寿命テーブル172は、INV111の負担と、INV111が使用された運転の回数と、INV111の寿命との関係を保持する。図7の例によれば、INV111の実質負担が20%のケースにおいて、運転回数がC3回ならば、寿命はL3である。
【0045】
図8は、運転制御処理の流れを示す。
【0046】
運転制御プログラム161は、K回の運転毎に(Kは自然数、本実施例ではK=1)、停止対象のINV111の切り替え(S801)と、テーブル更新(S802)とを行う。S802では、運転制御プログラム161は、INV管理テーブル171で管理されているINV1〜8のうちの使用されたINV(つまり停止対象とされたINV以外のINV)の各々について、運転回数にKを加算する。
【0047】
すなわち、運転制御プログラム161は、N台のINV111のうちのX台(Xは1以上N未満の整数)のINV111の各々の稼働量を、Y台(Y=N−X)のINV111のいずれの稼働量よりも多く維持するようになっている。稼働量の一例が、運転回数である。すなわち、本実施例では、X台のINV111の各々について、カウントされる運転回数を、Y台のINV111のいずれについてカウントされる運転回数よりも多く維持する。これにより、X台のINV111がY台のINV111よりも早くに寿命が尽きることが容易に予測できる。故に、寿命が早くに尽きるINV111を予測して寿命が尽きる前に当該INV111を交換するといった措置を取ることができる。
【0048】
図9は、本実施例での、停止対象のINV111の切り替え、を示す。
【0049】
本実施例では、N=8であるため、INV1〜8が存在する。
【0050】
本実施例では、X=1である。X台のINV111は、INV1である。従って、Y=7(=8−1)である。Y台のINV111は、INV2〜8である。INV1が、X台の第1のパワーモジュールの一例である。INV2〜8が、Y台の第2のパワーモジュールの一例である。
【0051】
運転制御プログラム161は、下記(A)及び(B)、
(A)INV2〜8から、直前回の(A)で選択されたP台(Pは1以上Y未満の整数)の停止対象のINVと少なくとも一部が異なるP台(今回のP=直前回のP、又は、今回のP≠直前回のP)の停止対象のINVを選択し、
(B)今回の(A)で選択されたP台の停止対象のINVを停止する、
を定期的に又は不定期的に行うことで、INV1についての運転回数を、INV2〜8の各々の運転回数よりも多く維持する。
【0052】
なお、運転制御プログラム161は、INV1の停止量(例えば、INV1が停止対象となる運転の回数)を、ゼロ、又は、INV2〜8のいずれのINVの停止量よりも少なく維持する。すなわち、本実施例では、INV1は、停止対象とされることが無いが、INV2〜8のいずれのパワーモジュールよりも少ない頻度で停止対象とされてもよい。
【0053】
上述したように、運転制御プログラム161は、エレベーターシステム102をK回運転する毎に(Kは自然数)、(A)及び(B)を行う。図4に示したように、各回の運転では温度変化が生じるため、K回の運転毎に(A)及び(B)を行うことは、INV111の寿命制御の点で好ましいと考えられる。
【0054】
本実施例では、P=1且つK=1である。具体的には、本実施例では、図9に示すように、運転毎に、INV2〜8の範囲で、停止対象とされるINVの番号は1インクリメントされる。つまり、ラウンドロビンで、停止対象が変わる。これは、INV2〜8の稼働量を均等に維持することの一例である。このため、INV2〜8については、寿命を平準化することができる。
【0055】
本実施例では、上述したように、X=1及びP=1であるが、X及びPの各々の値は、N台のINV111のうち、寿命が相対的に早くに尽きるINVの目標寿命と、Nの値を決める根拠となった目標寿命とに基づいて定まる。具体的には、例えば、INVの負担F%に対して、INVの推定寿命G年とした場合、上述の例では、F=10のときG=10である。また、上述の例では、Fをm倍するとGが1/m倍となる。このため、INV1の目標寿命を5年とした場合(G=5)、INV1の負担は20%である(F=20)。一方、残りのINV2〜8の各々については、N=8とされた根拠となった目標寿命が8年以上であるが、P=1で、その目標寿命を達成することが期待できる。P=1とすれば、INV2〜8のうち運転中に使用されるINVは6台であり、6台のINVの各々の負担Lは、(100%−20%)÷6≒13.3%となるが(「L={100%−(X*F%)}÷(Y−P)」の一例)、実質負担Uは、13.3%×6/7≒11.4%となり(「U=L*{(Y−P)/Y}」の一例)、12.5%(=目標寿命8年のときのINV負担(図2参照))以下になるからである。つまり、結果として、INV2〜8の各々の推定寿命は、約8.7年となる。このように、本実施例では、寿命が相対的に早くに尽きるINV111の予測がし易いことと、残りのINV111の寿命を目標寿命以上とすることの両方を実現することが期待できる。
【0056】
また、本実施例では、運転制御プログラム161は、エレベーターシステム102のメンテナンス期間中、又は、INV1が故障した場合、INV1を停止し、INV2〜8の稼働を維持する。すなわち、エレベーターシステム102のメンテナンス期間中、又は、INV1が故障した場合でも、エレベーターシステム102の運転を維持することができる。作業員は、INV1が停止している間に、INV1を交換することができる。なお、例えば、電力変換装置110が、INV1を電気的に切断する機構(例えばスイッチ)901を有していて、運転制御プログラム161は、INV1の停止として、当該機構901によりINV1を電気的に切断する処理を行ってよい。
【0057】
また、本実施例では、INV1は、INV2〜8よりも取り出し作業側(具体的には、例えば、INVの交換作業側)に近い位置に設けられているINV111である。本実施例では、INV1の寿命が相対的に早く尽きる可能性が高く、残りのINV2〜8は同時期に寿命が尽きる可能性が高い。このため、INV1のみが独立した交換対象となり、INV2〜8の交換は電力変換装置110の交換となる見込みが高い。このため、取り出し作業に最も近い位置にあるINV1が高負担のINVとされることで、INV1の交換作業を行い易い。つまり、短時間でINV1を交換できることが期待できる。
【0058】
また、本実施例では、INV1(X台の第1のパワーモジュールのうちの少なくとも1つの一例)については、INV2〜8と比して、多くのセンサが設けられている、多くの種類のセンサが設けられている、及び、当該残りのパワーモジュールについては設けられていない種類のセンサが設けられている、のうちの少なくとも1つである。具体的には、例えば、INV1についてのセンサ群(1以上のセンサ)902Aについて、INV2〜8の各々についてのセンサ群902Bと比較すると、センサの数が多い、センサの種類が多い、及び、センサ群902Bには無いセンサを含んでいる、のうちの少なくとも1つに該当する。つまり、センサ群902Aは、センサ群902Bよりも、INV111をより詳細に解析するためのセンサ群である。INV1は、INV2〜8よりも高負担のため、センサ群902AがINV1について設けられることで、INVをより詳細に解析できることが期待できる。また、そのようなセンサ群902Aは高負担のINV1についてのみ設けられればよいため、資源の節約も実現できる。
【0059】
また、本実施例では、図2及び図9を参照して説明した通り、INV負担から推定寿命がわかるが、INV負担と運転回数との関係から、より正確な寿命予測をすることができる。具体的には、例えば、寿命予測プログラム162が、定期的に(又は、1回の運転が終了する都度に)、図10に例示の寿命予測処理を開始する。寿命予測プログラム162は、各INV111(例えば、前回の寿命予測処理以降に運転回数が更新された各INV111)について、INV111に対応した運転回数(INV管理テーブルに記録されている運転回数)と、当該INV111の負担とに対応した寿命を、寿命テーブル172から特定する(S1001)。特定した寿命(予測寿命)が尽きそうな(例えば、予測寿命までの運転回数が所定運転回数未満である)INV111があれば(S1002:Y)、寿命予測プログラム162は、そのINV111の番号を含んだ警告を、管理システム181に通知(出力)する(S1003)。これにより、寿命が尽きる前にINV1を交換することの確実性を高めることができる。
【実施例2】
【0060】
実施例2を説明する。その際、実施例1との相違点を主に説明し、実施例1との共通点については説明を省略又は簡略する。
【0061】
図11は、実施例2での、停止対象のINV111の切り替え、を示す。
【0062】
本実施例では、X=2である。X台のINV111は、INV1及び2である。従って、Y=6(=8−2)である。Y台のINV111は、INV3〜8である。INV1及び2が、X台の第1のパワーモジュールの一例である。INV3〜8が、Y台の第2のパワーモジュールの一例である。
【0063】
本実施例では、各回の運転において停止対象のINVの数Pは、3である。具体的には、運転制御プログラム161は、INV3〜8から、直前回に選択された3台の停止対象のINVと少なくとも一部(図11の例では全部)が異なる3台の停止対象のINVを選択し、その選択された3台の停止対象のINVを停止する。すなわち、INV3〜5とINV6〜8が、交互に、停止対象となる。なお、3台のINVは、連続して並んだ3台のINVである必要は無く、例えば、INV3、5及び7と、INV4、6および8のように、少なくとも1つのINV111を隔てた2台以上のINV111が、P台のINV111であってもよい。
【0064】
本実施例では、X=2及びP=3であるが、X及びPの各々の値は、実施例1と同様、N台のINV111のうち、寿命が相対的に早くに尽きるINVの目標寿命と、Nの値を決める根拠となった目標寿命とに基づいて定まる。具体的には、例えば、INV1及び2の各々の目標寿命を5年とした場合、INV1及び2の各々の負担は20%である。一方、残りのINV3〜8の各々については、N=8とされた根拠となった目標寿命が8年以上であるが、P=3で、その目標寿命を達成することが期待できる。P=3とすれば、INV3〜8のうち運転中に使用されるINVは3台であり、3台のINVの各々の負担は、(100%−2*20%)÷3=20%となるが、実質負担は、20%×3/6=10%となり、12.5%(=目標寿命8年のときのINV負担(図2参照))以下になるからである。つまり、結果として、INV3〜8の各々の推定寿命は、10年となる。
【0065】
以上のように、高負担とするINV111の数X、及び、停止対象とするINVの数Pのいずれも、1より大きくても、寿命が相対的に早くに尽きるINV111の予測がし易いことと、残りのINV111の寿命を目標寿命以上とすることの両方を実現することが期待できる。
【実施例3】
【0066】
実施例3を説明する。その際、実施例1及び2との相違点を主に説明し、実施例1及び2との共通点については説明を省略又は簡略する。
【0067】
実施例3では、N台のINV111の各々について、当該INV111の稼働量は、エレベーターシステム102の運転回数に代えて又は加えて、エレベーターシステム102の運転時間(例えば、運転時間の累積値又は平均値)及び運転頻度(例えば、運転と次の運転までの時間間隔の累積値又は平均値)のうちの少なくとも1つを含む。
【0068】
本実施例では、INV管理テーブル171は、INV111毎に、運転回数に代えて又は加えて、運転回数以外の情報、例えば、運転方向(上昇と下降のどちらであるか)、乗りかご121内の重量、運転時間、運転頻度、期間P1〜P3の各々での電流値、INV111の温度(例えばTj)、及び、INV111の温度変化(例えばΔTj)の少なくとも1つを保持する。このような情報は、K回の運転の都度に、運転制御プログラム161によりINV管理テーブル171に記録される。また、寿命テーブル172は、運転回数に代えて又は加えて、運転回数以外の上述の情報について、寿命を示す。寿命予測プログラム162は、各INV111について、当該INV111の負担(実質負担)と、そのようなINV管理テーブル171及び寿命テーブル172とを基に、当該INV111の寿命を予測する。
【0069】
以上が、本実施例についての説明である。なお、本実施例では、運転制御プログラム161は、1回の運転における期間P1〜P3の少なくとも1つにおいて、停止対象のINV111を増やす又は減らすといったことを行ってよい。例えば、期間P1では、停止対象のINV111の台数Pが、最も少なく、期間P2及びP3と進むにつれて、Pの値は、大きくされてもよい。
【0070】
以上、本発明の幾つかの実施例を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施例にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。
【0071】
例えば、本発明は、インバータモジュールに代えて、インバータモジュールとしてのパワーモジュール以外のパワーモジュール(例えばコンバータモジュール)にも適用されてもよい。
【0072】
また、例えば、寿命テーブル172を、制御装置101の記憶部152が必ずしも格納していなくてもよい。例えば、制御装置101(運転制御プログラム161)が、運転ログを記憶部152に蓄積し、蓄積した運転ログを管理システム181のような外部システムに出力してもよい。運転ログを元に詳細な分析をすることが期待できる。
【符号の説明】
【0073】
101…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11