(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料が、境界値を含めないで0.2から0.8の間の(Vmicro−Vmeso)/Vmicro比を有し、Vmicroが、Dubinin−Raduskevitch法によって測定されたミクロ細孔容積であり、Vmesoが、Barrett−Joyner−Halenda(BJH)法によって測定されたメソ細孔容積であり、すべての前記測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換された前記ゼオライト吸着剤材料を対象として実施されている、請求項1に記載の使用。
前記少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料が、ナトリウムによって少なくとも95%交換された前記ゼオライト吸着剤材料を対象として測定したときに、ゼオライト吸着剤材料1g当たりのcm3として表して、0.240cm3.g−1から0.350cm3.g−1の間のミクロ細孔容積(Dubinin−Raduskevitch容積)を有する、請求項1または2に記載の使用。
前記少なくとも1種のFAU型ゼオライトが、1≦Si/Al<1.5の不等式に相当するSi/Al比を有し、前記Si/Al比が、固体ケイ素29NMRによって測定されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の使用。
前記ゼオライト吸着剤材料が、カルシウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、バリウムイオン、セシウムイオン、ストロンチウムイオン、亜鉛イオンおよび希土類イオンから選択される少なくとも1種のカチオンを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
請求項1から5のいずれか1項に記載の吸着剤材料への少なくとも1種のゼオライトの使用であって、前記少なくとも1種の材料が、ナトリウム、カルシウム、リチウムおよび任意の比率のこれらのうちの2種または3種の混合物から選択される少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含み、少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含量が、酸化物の状態であるとして表されたときに、
・CaO含量が、境界値を含めて、前記ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から20.5重量%の間であり、
・Li2O含量が、境界値を含めて、前記ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から12重量%の間であり、
・Na2O含量が、境界値を含めて、前記ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から22重量%の間であり、
・前記ゼオライト吸着剤材料が、リチウム、ナトリウムおよびカルシウムから選択される3種の金属のうちの少なくとも1種を含み、
・前記ゼオライト吸着剤材料が、ランタニドおよびアクチニドから選択される、一般に0重量%から10重量%の間の含量の少なくとも1種の希土類をさらに含み、
・前記ゼオライト吸着剤材料が、リチウム、ナトリウムおよびカルシウム以外であり、カリウム、バリウム、ストロンチウム、セシウムおよび遷移金属から選択される、少量(酸化物の状態であるとして%が表されたときに、5重量%未満)の1種以上のカチオンをさらに含む
ような含量である、使用。
ゼオライト吸着剤材料が、NaXおよびCaXならびにこれらの混合物から選択される種類のメソ多孔性である少なくとも1種のFAU型ゼオライトを含む、請求項7に記載の使用。
前記ゼオライト吸着剤材料が、NaX、LiX、CaX、LiCaX、NaLSX、LiLSX、CaLSXおよびLiCaLSXならびにこれらのうちの2種以上の混合物から選択される種類のメソ多孔性である少なくとも1種のFAU型ゼオライトを含む、請求項9または10に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において、「FAU型ゼオライト」という用語は、LSX型ゼオライト、MSX型ゼオライト、X型ゼオライトおよびY型ゼオライトならびにこれらの混合物から選択されるホージャサイト型ゼオライト、有利にはメソ細孔ホージャサイト型ゼオライトを意味する。一実施形態によれば、ゼオライト吸着剤材料は、FAU型ゼオライト(LSX型ゼオライト、MSX型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト)、LTA型ゼオライト、CHA型ゼオライト(チャバサイト)、HEU型ゼオライト(クリノプチロライト)およびこれらのうちの2種以上の混合物から選択される、より好ましくはLSX型ゼオライト、MSX型ゼオライトおよびX型ゼオライトならびにこれらのうちの2種以上の混合物から選択される、1種以上の他のゼオライトをさらに含んでもよい。
【0022】
他のゼオライトが、本発明の吸着剤中に少量存在してもよく、または、本発明の方法において使用されてもよい。これらのゼオライトは、ガス吸着に寄与しないこと、言い換えると、ガス吸着に関して不活性であることを特に理由にして、汚染物質であると考えることができる。非限定的な例として、これらのゼオライトは、ソーダライト、ヒドロキシソーダライト、P型ゼオライト、および、ガス吸着に関して不活性な他のゼオライトを含む。
【0023】
ゼオライト吸着剤材料中に存在する様々な種類のゼオライトは、XRDによって測定される。ゼオライトの量も同様に、XRDによって測定され、吸着剤材料の総重量に対する重量%として表されている。
【0024】
従って、本発明において、「非ゼオライト相」(または「PNZ」)という用語は、「ゼオライト相」または「PZ」と呼ばれている上記に規定のゼオライトではない、吸着剤材料中に存在する任意の相を表す。非ゼオライト相の量は、合計が100%になるように、言い換えると、
%PNZ=100−%PZ
になるように吸着剤のゼオライト相に加えられる量によって表されており、式中、%PNZは、吸着剤の総重量に対するPNZの重量%を表し、%PZは、吸着剤の総重量に対するゼオライト相の重量%を表す。
【0025】
「ナトリウムによって少なくとも95%交換された吸着剤」という表現は、ゼオライト相にある交換可能なカチオン性部位の少なくとも95%が、ナトリウムカチオンによって占められていることを意味するように意図されている。
【0026】
ナトリウムによって少なくとも95%交換されたこのゼオライト吸着剤材料は、次のプロトコルに従って得ることが可能であり、好ましくは、次の以下のプロトコルに従って得られる。ナトリウムによって交換しようとするゼオライト吸着剤材料を、1リットル当たりNaClが1モルの塩化ナトリウム溶液に、固体に対する液体の比を10ml.g
−1にした状態で3時間にわたって90℃で導入する。この操作をn回繰り返し、nは、少なくとも1に等しく、好ましくは少なくとも2に等しく、好ましくは少なくとも3に等しく、より好ましくは少なくとも4に等しい。
【0027】
n−1回目およびn回目の交換操作から得られた固形分を順次、過剰な塩の除去のために、20ml.g
−1の比率の水に浸漬することによって4回洗浄し、次いで、空気中において80℃で12時間乾燥させた後、蛍光X線によって分析する。n−1回目の交換操作とn回目の交換操作との間で、ゼオライト吸着剤材料の酸化ナトリウムの重量百分率が±1%で安定している場合、前記ゼオライト吸着剤材料は、「ナトリウムによって少なくとも95%交換された形態」であると考えられる。必要に応じて、酸化ナトリウムの重量百分率が±1%で安定するまで、さらなる交換が、上記のように実施される。
【0028】
特に、上記のゼオライト吸着剤材料の酸化ナトリウムの重量百分率が、X線蛍光化学分析によって測定して±1%で安定するまで、連続的なバッチ式のカチオン交換を、大過剰の塩化ナトリウムによって実施することが可能であろう。この測定法は、本明細書において後述されている。一変形形態として、合成工程がアルカリ性ナトリウム媒体中でのみ実施される場合、合成工程の後には、人為を加えることなく、ゼオライト吸着剤材料がすでに、ナトリウム交換された形態であり得る。
【0029】
ゼオライト吸着剤材料のSi/Al原子比は、当業者に周知の技法であり、本明細書において後述されている、X線蛍光元素化学分析によって、測定される。必要であれば、分析前にナトリウム交換を、上記に詳述した手順に従って実施する。
【0030】
「Vmicro」という用語は、ゼオライト吸着剤材料のミクロ細孔容積を意味するように意図されており、Vmicroの測定法は、後述されている。「Vmeso」という用語は、ゼオライト吸着剤材料のメソ細孔容積を意味するように意図されており、Vmesoの測定法は、後述されている。
【0031】
好ましい一実施形態によれば、本発明との関連で使用され得る前記少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料は、境界値を含めないで−0.5から1.0の間、好ましくは境界値を含めないで−0.1から0.9の間、好ましくは境界値を含めないで0から0.9の間、より好ましくは境界値を含めないで0.2から0.8の間、より好ましくは境界値を含めないで0.4から0.8の間、好ましくは境界値を含めないで0.6から0.8の間の(Vmicro−Vmeso)/Vmicro比を有し、Vmicroは、Dubinin−Raduskevitch法によって測定されたミクロ細孔容積であり、Vmesoは、Barrett−Joyner−Halenda(BJH)法によって測定されたメソ細孔容積であり、すべての測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換された吸着剤材料を対象として実施されている。
【0032】
さらに別の実施形態によれば、前記少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料は、ナトリウムによって少なくとも95%交換された吸着剤材料を対象として測定したときに、吸着剤材料1g当たりのcm
3として表して、0.210cm
3.g
−1から0.360cm
3.g
−1の間、好ましくは0.230cm
3.g
−1から0.350cm
3.g
−1の間、好ましくは0.240cm
3.g
−1から0.350cm
3.g
−1の間、より好ましくは0.250cm
3.g
−1から0.350cm
3.g
−1の間のミクロ細孔容積(VmicroまたはDubinin−Raduskevitch容積)を有する。
【0033】
ナトリウムによって交換されたゼオライト吸着剤材料を対象として測定された、Dubinin−Raduskevitchによるミクロ細孔容積に基づいて、PNZにより重み付けされたFAU型ゼオライトの全体的なDubinin−Raduskevitch容積を計算することも可能である。
【0034】
水銀圧入によって測定された、本発明との関連で使用され得るゼオライト吸着剤材料のマクロ細孔とメソ細孔との総容積は、有利には0.15cm
3.g
−1から0.5cm
3.g
−1の間、好ましくは0.20cm
3.g
−1から0.40cm
3.g
−1の間、非常に好ましくは0.20cm
3.g
−1から0.35cm
3.g
−1の間であり、測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換された吸着剤材料を対象として実施されている。
【0035】
本発明との関連で使用され得るゼオライト吸着剤材料のマクロ細孔の体積分率は、境界値を含めて、マクロ細孔とメソ細孔との総容積に対して好ましくは0.2から1.0の間、非常に好ましくは0.4から0.8の間、さらにより好ましくは0.45から0.65の間であり、測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換されたゼオライト吸着剤材料を対象として実施されている。
【0036】
本発明との関連で使用され得るゼオライト吸着剤材料は、公知のものであり、または、公知の手順を使用して調製することができ、または、新規なものであり、この点に関して、これらのゼオライト吸着剤材料は、本発明の不可分の要素である。
【0037】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明による使用は、少なくとも1種のメソ多孔性FAU型ゼオライトを含む、ゼオライト吸着剤材料を用いる。「メソ多孔性」という用語は、ゼオライトの構造に固有のミクロ多孔度を有しながら、例えばUS7785563に記載のように透過型電子顕微鏡(TEM)を使用した観察によって容易に識別できるナノメートルサイズの内部空洞(メソ多孔性)も有する、ゼオライトを意味するように意図されている。
【0038】
より具体的には、ゼオライト吸着剤材料の前記FAU型ゼオライトは、メソ多孔性FAU型ゼオライトであり、即ち、後述のt−プロット法によって規定された、境界値を含めて40m
2.g
−1から400m
2.g
−1の間、好ましくは60m
2.g
−1から200m
2.g
−1の間の外部表面積を有するゼオライトである。ひいては、本発明の目的では、「非メソ多孔性ゼオライト」は、後述のt−プロット法によって規定された厳密に40m
2.g
−1未満の外部表面積を場合により有する、ゼオライトである。
【0039】
特に、本発明との関連で使用され得るゼオライト吸着剤材料は、少なくとも1種のFAU型ゼオライトを含み、前記少なくとも1種のFAU型ゼオライトが、1≦Si/Al<1.5の不等式、好ましくは1≦Si/Al≦1.4の不等式に相当するSi/Al比、より好ましくは1.00±0.05に等しいSi/Al原子比を有し、前記Si/Al比が、当業者に周知の技法に従って、(
29Si NMR)の固体ケイ素29核磁気共鳴によって測定されている。
【0040】
吸着剤中に存在する各ゼオライトのSi/Al比も同様に、固体についてのNMRによって測定されている。
【0041】
好ましい一実施形態によれば、ゼオライト吸着剤材料のFAU型ゼオライトは、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定して、境界値を含めて20μm未満、好ましくは0.1μmから20μmの間、好ましくは0.1μmから10μmの間、好ましくは0.5μmから10μmの間、より好ましくは0.5μmから5μmの間の数平均直径を有する、結晶形である。
【0042】
さらに別の好ましい実施形態によれば、前記ゼオライト吸着剤材料は、周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IB族、IIB族およびIIIB族のイオン、ランタニド系列または希土類系列の三価イオン、亜鉛(II)イオン、銀(I)イオン、銅(II)イオン、クロム(III)イオン、鉄(III)イオン、アンモニウムイオンならびに/またはヒドロニウムイオンから選択される少なくとも1種のカチオンを含み、好ましいイオンが、カルシウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、バリウムイオン、セシウムイオン、ストロンチウムイオン、亜鉛イオンおよび希土類イオンであり、より好ましくはナトリウムイオン、カルシウムイオンおよびリチウムイオンである。
【0043】
一実施形態によれば、本発明との関連で使用され得るゼオライト吸着剤材料は、ナトリウム、カルシウム、リチウムおよび任意の比率のこれらのうちの2種または3種の混合物から選択される少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含み、少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の含量は、好ましくは、酸化物の状態であるとして表されたときに、
・CaO含量が、境界値を含めて、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から20.5重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して3重量%から20.5重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して7.5重量%から20.5重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して9重量%から20.5重量%の間であり、
・Li
2O含量が、境界値を含めて、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から12重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して3重量%から12重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して5重量%から12重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して6.5重量%から12重量%の間であり、
・Na
2O含量が、境界値を含めて、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から22重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から19重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から15重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から10重量%の間、全面的に好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から7重量%の間、有利にはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から2重量%の間であり、
・ゼオライト吸着剤材料が、リチウム、ナトリウムおよびカルシウムから選択される3種の金属のうちの少なくとも1種を含むと理解されており、
・前記ゼオライト吸着剤材料が場合によっては、ランタニドおよびアクチニドから選択される、好ましくはランタニドから選択される、一般に0%から10%の間、好ましくは0%から7%の間の含量の少なくとも1種の希土類をさらに含み、
・前記ゼオライト吸着剤材料が場合によっては、リチウム、ナトリウムおよびカルシウム以外であり、例えばカリウム、バリウム、ストロンチウム、セシウムおよび銀等の遷移金属等から選択されることが好ましい、少量(酸化物の状態であるとして%が表されたときに、5%未満、好ましくは2%未満)の1種以上のカチオンをさらに含む
ような含量である。
【0044】
本発明によれば、上記ゼオライト吸着剤材料は、気相分離のための方法において、特にPSA型もしくはVSA型もしくはVPSA型もしくはRPSA型もしくはTSA型の圧力および/もしくは温度スイング法および/またはPTSA型の方法において、最も格別に有用で、適切で、効果的である。
【0045】
より具体的には、本発明は、気体分離のための、上記に規定の少なくとも1種のFAU型ゼオライトを含む、少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料の使用に関する。「気体分離」という用語は、1種以上の気体化合物の混合物中に存在する1種以上の気体化合物の精製、予備精製、除去および他の分離を意味するように意図されている。
【0046】
本発明の好ましい一態様によれば、気体精製のために使用され得るゼオライト吸着剤材料は、わずかな圧力降下または上記使用において許容される圧力降下のみを発生させる、材料である。
【0047】
従って、押出、圧縮、造粒プレートまたは造粒ドラムによる凝集および霧化等の当業者に公知の任意の技法によって調製された、凝集および成形済みのゼオライト吸着剤材料が、好ましい。使用される凝集用結合剤およびゼオライトの比率は一般的に、従来技術の比率であり、即ち、ゼオライト95重量部から70重量部当たり結合剤5重量部から30重量部である。
【0048】
本発明との関連で使用され得るゼオライト吸着剤材料は一般に、ボールまたは押出片等の形態であるかにかかわらず、7mm以下、好ましくは0.05mmから7mmの間、より好ましくは0.2mmから5mmの間、より好ましくは0.2mmから2.5mmの間の体積平均直径または平均長さ(ゼオライト吸着剤材料が球形でない場合は、最大の寸法)を有する。
【0049】
本発明との関連で有用なゼオライト吸着剤材料は、当該ゼオライト吸着剤材料が意図された用途に最も格別に適した機械的特性をさらに有し、即ち、
・1mm未満の体積平均直径(D50)もしくは長さ(ゼオライト吸着剤材料が球状でない場合は、最大の寸法)を有する材料を対象として規格ASTM7084−04に従って測定して、境界値を含めて0.5MPaから3MPaの間、好ましくは0.75MPaから2.5MPaの間である、層の状態におけるバルク圧潰強さ(BCS)
・または、1mm以上の体積平均直径(D50)もしくは長さ(ゼオライト吸着剤材料が球形でない場合は、最大の寸法)を有する材料を対象として規格ASTM D4179(2011)およびASTM D6175(2013)に従って測定して、境界値を含めて0.5daNから30daNの間、好ましくは1daNから20daNの間である、単一のペレットの状態における圧潰強さ
をさらに有する。
【0050】
別の好ましい実施形態によれば、本発明による使用は、高い単位体積当たり吸着能力を有する、即ち、ナトリウムによって少なくとも95%交換された吸着剤材料に対するcm
3.cm
−3として表して、0.10cm
3.cm
−3超、好ましくは0.12cm
3.cm
−3超、より好ましくは0.15cm
3.cm
−3超、より好ましくは0.16cm
3.cm
−3超、より好ましくは0.18cm
3.cm
−3超、全面的に好ましくは0.20cm
3.cm
−3超である、単位体積当たりミクロ細孔容積を有する、少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料を用いる。
【0051】
さらに別の実施形態によれば、本発明による使用は、規格NF EN196−2に従って950℃で測定して0重量%から5重量%の間、好ましくは0重量%から3重量%の間の強熱減量を有する、少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料を用いることが好ましい。
【0052】
特に、本発明は、特に圧力スイング吸着法または温度スイング吸着法または圧力温度スイング吸着法(PSAまたはTSAまたはPTSA)、好ましくはTSA法またはPTSA法に従って、天然ガスを精製するための、特に天然ガス中に存在する不純物を除去するための、好ましくは天然ガス中に存在する二酸化炭素および/またはメルカプタンを除去するための、先ほど規定された少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料の使用に関する。これらの種類の用途のためには、メソ多孔性であることが好ましい、NaXおよびCaXならびにこれらの混合物から選択される種類のFAU型ゼオライトを含む、吸着剤材料を使用することが、特に好ましい。
【0053】
これらの種類の用途のためには、体積平均直径(または最長の長さ)が、境界値を含めて0.3mmから7.0mmの間、好ましくは0.8mmから5.0mmの間、より好ましくは2.0mmから5.0mmの間のゼオライト吸着剤材料が、好ましい。
【0054】
別の実施形態によれば、本発明は、工業用ガスと空気中の気体との非深冷分離のための、特に空気から気体を分離するときの窒素吸着のための、特に空気中の酸素の富化のための、先ほど規定された少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料の使用に関する。この使用は、非常に短いサイクル(一般的に0.1秒から10秒の間、好ましくは0.1秒から5秒の間)による圧力スイング吸着(PSA)装置において、特に、例えば特許出願WO2008/152319に記載のような呼吸補助のための酸素濃縮装置において、最も格別に適している。
【0055】
工業用ガスと空気中の気体との非深冷分離のための本発明による使用の場合、これらの方法は、先行技術、特に、ゼオライト吸着剤による気体分離/精製方法を概略的に記述している文献EP0893157から周知である。
【0056】
工業用ガスと空気中の気体との非深冷分離の用途、好ましくは、酸素富化のための窒素分離の用途においては、メソ多孔性であることが好ましいNaX、LiX、CaX、LiCaX、NaLSX、LiLSX、CaLSX、LiCaLSXおよびこれらのうちの2種以上の混合物から選択される種類の少なくとも1種のFAU型ゼオライトを含む、ゼオライト吸着剤材料が好ましく、前記ゼオライト吸着剤材料は、酸化物の状態であるとして表された含量が上記に規定の通りである、ナトリウム、カルシウム、リチウムおよび任意の比率のこれらのうちの2種または3種の混合物から選択される少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む。
【0057】
より特定すると、上記使用は、酸素富化のための窒素分離に最も格別に適しており、最も特定すると、呼吸補助のための酸素濃縮装置における使用に最も格別に適している。これらの場合、単独のまたは混合物としてのナトリウム、カルシウムおよび/またはリチウムを含む、少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料を使用することが好ましく、これらの種類の用途のためには、メソ多孔性であることが好ましいNaX、LiX、CaX、LiCaX、NaLSX、LiLSX、CaLSXおよびLiCaLSXならびにこれらのうちの2種以上の混合物から選択される、好ましくはCaLSX、LiLSXおよびLiCaLSXから選択される種類の少なくとも1種のFAU型ゼオライト、より好ましくは少なくとも1種のLiLSX型ゼオライト、好ましくはメソ多孔性LiLSX型ゼオライトを含む、ゼオライト吸着剤材料を使用することが好ましい。
【0058】
工業用ガスおよび空気中の気体の分離のための用途においては一般に、平均体積径が0.05mmから5mmの間、好ましくは0.05mmから3.0mmの間、より好ましくは0.05mmから2.0mmの間である、ボールの形態のゼオライト吸着剤材料が好ましい。
【0059】
空気の酸素富化に関する、例えば呼吸補助のための酸素濃縮装置に関する特定の用途のためには、平均体積径が0.05mmから1mmの間、好ましくは0.1mmから0.7mmの間、より好ましくは0.3mmから0.6mmの間である、ボールの形態のゼオライト吸着剤材料が好ましい。
【0060】
別の実施形態によれば、本発明は、合成ガスの精製のための、先ほど規定された少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料の使用に関する。合成ガスを精製するための方法の一例が、特許EP1312406において記述されている。ここで対象とされている合成ガスは特に、水素および一酸化炭素ならびに/または水素および窒素を主体とした合成ガス、より特定すると、水素と一酸化炭素との混合物および/または水素と窒素との混合物を主体とした合成ガスであり、これらの合成ガスは、二酸化炭素と、存在可能な1種以上の他の不純物、非限定的な例示として、窒素、一酸化炭素、酸素、アンモニア、炭化水素および酸素含有誘導体、特にアルカン、特にメタンおよびアルコール、特にメタノール等から選択される1種以上の不純物とを場合によってはさらに含有し、または二酸化炭素とこれらの1種以上の不純物とによって場合によっては汚染されている。
【0061】
従って、本発明による使用は、水素を製造する目的で、好ましくは圧力スイング吸着(PSA)法によって、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンおよび他の不純物を除去するために最も格別に適している。これらの種類の用途のためには、メソ多孔性であることが好ましいNaX、LiX、LiLSX、CaX、CaLSX、LiCaXおよびLiCaLSXならびにこれらのうちの2種以上の混合物から選択される種類、好ましくはNaX、NaLSXおよびLiCaLSXから選択される種類のFAU型ゼオライトを含む、吸着剤材料が好ましい。
【0062】
これらの種類の用途のためには、体積平均直径(または最長の長さ)が、境界値を含めて0.3mmから7mmの間、好ましくは0.8mmから5.0mmの間、より好ましくは1.0mmから3.0mmの間である、ゼオライト吸着剤材料が好ましい。
【0063】
さらに別の実施形態によれば、本発明は、深冷蒸留装置の上流側において、空気分離装置(ASU:air separation unit)の空気を精製するための、特に炭化水素、二酸化炭素および窒素酸化物を除去するための、先ほど規定された少なくとも1種のゼオライト吸着剤材料の使用にも関する。PSA法、TSA法またはPTSA法、好ましくはTSA法またはPTSA法によって達成されることが好ましい、これらの種類の用途は、メソ多孔性であることが好ましいNaX、NaLSX、CaXおよびCaLSXならびにこれらのうちの2種以上の混合物から選択される種類のFAU型ゼオライトを含む、ゼオライト吸着剤材料が、好ましい。
【0064】
これらの種類の用途のためには、体積平均直径(または最長の長さ)が、境界値を含めて0.3mmから7.0mmの間、より好ましくは0.5mmから5.0mmの間である、ゼオライト吸着剤材料が好ましい。
【0065】
別の態様によれば、本発明は、ゼオライト吸着剤材料であって、
・1≦Si/Al<2.5、好ましくは1≦Si/Al≦2、より好ましくは1≦Si/Al≦1.8、より好ましくは1≦Si/Al≦1.6であるような前記吸着剤のSi/Al比と、
・境界値を含めて0.08cm
3.g
−1から0.25cm
3.g
−1の間、好ましくは0.08cm
3.g
−1から0.22cm
3.g
−1の間、より好ましくは0.09cm
3.g
−1から0.20cm
3.g
−1の間、より好ましくは0.10cm
3.g
−1から0.20cm
3.g
−1の間のメソ細孔容積と、
・VmicroがDubinin−Raduskevitch法によって測定されており、VmesoがBJH法によって測定されている場合に、境界値を含めないで−0.5から1.0の間、好ましくは境界値を含めないで−0.1から0.9の間、好ましくは境界値を含めないで0から0.9の間、より好ましくは境界値を含めないで0.2から0.8の間、より好ましくは境界値を含めないで0.4から0.8の間、好ましくは境界値を含めないで0.6から0.8の間の(Vmicro−Vmeso)/Vmicro比と、
・XRDによって測定してゼオライト吸着剤材料の総重量に対する重量により0<PNZ≦30%、好ましくは3%≦PNZ≦25%、より好ましくは3%≦PNZ≦20%、有利には5%≦PNZ≦20%、さらにより好ましくは7%≦PNZ≦18%であるような非ゼオライト相(PNZ)含量と
を有し、すべての測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換されたゼオライト吸着剤材料を対象として実施されている、ゼオライト吸着剤材料に関する。
【0066】
先ほど規定された本発明のゼオライト吸着剤材料は、後述の結合剤を用いた少なくとも1種のメソ多孔性FAU型ゼオライトの凝集から生じるという点で、新規な材料であり、すでに先行して規定された「メソ多孔性」という用語は、ゼオライトの構造に固有のミクロ多孔度を有しながら、例えばUS7785563に記載のような透過型電子顕微鏡(TEM)を使用した観察によって容易に識別できる、ナノメートルサイズの内部空洞(メソ多孔性)も有する、ゼオライトを表す。
【0067】
より具体的には、ゼオライト吸着剤材料は、少なくとも1種のメソ多孔性FAU型ゼオライト、即ち、後述のt−プロット法によって規定された、境界値を含めて40m
2.g
−1から400m
2.g
−1の間、好ましくは60m
2.g
−1から200m
2.g
−1の間の外部表面積を有するゼオライトを含む。
【0068】
さらに、本発明によるゼオライト吸着剤材料は、リチウム、ナトリウムおよびカルシウムならびにこれらの金属のうちの2種以上の混合物から選択される少なくとも1種の金属を含み、好ましくは、リチウム、ナトリウムおよびカルシウムから選択される2種の金属を含み、好ましくは、ナトリウムとリチウムまたはナトリウムとカルシウムまたはナトリウムとリチウムとカルシウムとを含む。酸化バリウムの含量が、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0.5重量%未満、好ましくは0.3重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である、ゼオライト吸着剤材料も好ましい。
【0069】
これらの特徴により、本発明によるゼオライト吸着剤材料は、本明細書において上述したように、気体処理に特に適している。
【0070】
本発明によるゼオライト吸着剤材料は、当業者に公知のすべての形態であり得、好ましくは、単純な幾何学的形態、即ち、粒状形態、例えばボール型またはロッド型、即ち、それぞれ、球形または円筒形の粒状形態であり得る。このような単純な形態は、既存の技術に適合する形状およびサイズが特に理由となって、加工が容易であるため、最も格別に適している。さらに、これらの単純な形態は、ゼオライト吸着剤材料が、ほとんど圧力降下を発生させず、改善された移動特性を有するため、採用された方法によるエネルギー消費量が少ないことを意味する。
【0071】
本発明によるゼオライト吸着剤材料は、当業者に公知の任意の方法に従って調製することができるが、特定すると好ましくは、例えばW.Schwieger(Angew.Chem.Int.Ed.,(2012),
51,1962−1965)によって記述されているようなメソ多孔性FAUを調製するための方法を使用して、少なくとも1種の有機結合剤または無機結合剤、好ましくは無機結合剤、より好ましくはゼオライト化できる粘土またはゼオライト化できない粘土から選択される結合剤、特にカオリン、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、ベントナイト、イライトおよびメタカオリンならびに任意の比率のこれらの粘土のうちの2種以上の混合物から選択される結合剤を用いて得られた結晶を凝集させることによって、調製することができる。
【0072】
凝集および成形は、押出、圧縮、造粒プレートまたは造粒ドラムによる凝集および霧化等の当業者に公知のすべての技法によって実施することができる。これらの様々な技法は、上記のサイズおよび形状を有し、気体処理に最も格別に適している、本発明による吸着剤材料の調製を可能にするという利点を有する。
【0073】
上記調製のために使用される凝集用結合剤(例えば、上記に示された粘土)およびゼオライトの比率は、一般的に先行技術の比率であるが、所望のPNZ含量および結合剤のゼオライト化の度合いに応じて変化する。これらの比率は、ゼオライト凝集体の合成を専門とする当業者ならば、容易に計算することができる。
【0074】
ゼオライト吸着剤材料の凝集体は一般に、ボールまたは押出片等の形態であるかにかかわらず、7mm以下、好ましくは0.05mmから7mmの間、より好ましくは0.2mmから5mmの間、より好ましくは0.2mmから2.5mmの間の体積平均直径または平均長さ(ゼオライト吸着剤材料が球形でない場合は、最大の寸法)を有する。
【0075】
すでに示されたように、本発明によるゼオライト吸着剤材料を製造するための方法は、当業者に公知の調製方法から容易に作り直すことができ、少なくとも1種のメソ多孔性FAU型ゼオライトの使用は、当業者に公知の調製方法を実質的に修正することがなく、このことは、調製方法の実施が容易で、迅速で、経済的であり、従って、最小限の工程で容易に工業化できることを意味する。
【0076】
本発明のゼオライト吸着剤材料は、マクロ細孔、メソ細孔およびミクロ細孔を同時に含むことが好ましい。「マクロ細孔」という用語は、開口部が50nm超、好ましくは50nmから400nmの間である、細孔を意味するように意図されている。「メソ細孔」という用語は、開口部が、境界値を含めて2nmから50nmの間である、細孔を意味するように意図されている。「ミクロ細孔」という用語は、開口部が2nm未満である、細孔を意味するように意図されている。
【0077】
好ましい一実施形態によれば、本発明によるゼオライト吸着剤材料は、ゼオライト吸着剤材料1g当たりのcm
3として表して、0.210cm
3.g
−1から0.360cm
3.g
−1の間、好ましくは0.230cm
3.g
−1から0.350cm
3.g
−1の間、より好ましくは0.240cm
3.g
−1から0.350cm
3.g
−1の間、有利には0.250cm
3.g
−1から0.350cm
3.g
−1の間のミクロ細孔容積(Dubinin−Raduskevitch容積)を有し、前記ミクロ細孔容積が、ナトリウムによって少なくとも95%交換されたゼオライト吸着剤材料を対象として測定されている。
【0078】
水銀圧入によって測定された、本発明によるゼオライト吸着剤材料のマクロ細孔とメソ細孔との総容積は、有利には0.15cm
3.g
−1から0.5cm
3.g
−1の間、好ましくは0.20cm
3.g
−1から0.40cm
3.g
−1の間、非常に好ましくは0.20cm
3.g
−1から0.35cm
3.g
−1の間であり、測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換された吸着剤材料を対象として実施されている。
【0079】
ゼオライト吸着剤材料のマクロ細孔の体積分率は、マクロ細孔とメソ細孔との総容積に対して、境界値を含めて好ましくは0.2から1.0の間、非常に好ましくは0.4から0.8の間、さらにより好ましくは0.45から0.65の間であり、測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換されたゼオライト吸着剤材料を対象として実施されている。
【0080】
本発明のゼオライト吸着剤材料を製造するために使用されるFAU型ゼオライト結晶のサイズ、および、ゼオライト吸着剤材料中のFAU型ゼオライト要素のサイズは、走査型電子顕微鏡(SEM)を使った観察によって測定される。好ましくは、FAU型ゼオライト結晶の平均直径は、0.1μmから20μmの間、好ましくは0.5μmから20μmの間、より好ましくは0.5μmから10μmの間である。SEMによる観察は、例えば凝集体中の残留結合剤(場合によるゼオライト化工程中に変換されなかったもの)または任意の他の非晶性相を含む、非ゼオライト相の存在を確認することも可能にする。
【0081】
好ましい一実施形態によれば、本発明によるゼオライト吸着剤材料は、窒素吸着によって測定して吸着剤1g当たりのm
2として表して20m
2.g
−1超、好ましくは20m
2.g
−1から300m
2.g
−1の間、より好ましくは30m
2.g
−1から250m
2.g
−1の間、より好ましくは40m
2.g
−1から200m
2.g
−1の間、最も好ましくは50m
2.g
−1から200m
2.g
−1の間の外部表面積を有し、測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換されたゼオライト吸着剤材料を対象として実施されている。
【0082】
好ましい一実施形態によれば、本発明によるゼオライト吸着剤材料は、高い単位体積当たり吸着能力を有する、即ち、ナトリウムによって少なくとも95%交換されたゼオライト吸着剤材料に対するcm
3.cm
−3として表して、0.10cm
3.cm
−3超、好ましくは0.12cm
3.cm
−3超、より好ましくは0.15cm
3.cm
−3超、より好ましくは0.16cm
3.cm
−3超、より好ましくは0.18cm
3.cm
−3超、全面的に好ましくは0.20cm
3.cm
−3超である、単位体積当たりミクロ細孔容積を有する。
【0083】
好ましい一実施形態によれば、本発明によるゼオライト吸着剤材料は、上記に規定の少なくとも1種のメソ多孔性FAU型ゼオライトを含み、前記少なくとも1種のゼオライトが、1≦Si/Al<1.5、好ましくは1≦Si/Al≦1.4であるようなSi/Al比を有する。
【0084】
最も特に好ましい一態様によれば、前記少なくとも1種のメソ多孔性FAU型ゼオライトのSi/Al比は、1.00±0.05に等しく、このSi/Al比の測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換されたゼオライト吸着剤材料を対象として実施されている。
【0085】
さらに別の好ましい実施形態によれば、上記に示されたように、前記ゼオライト吸着剤材料は、周期表のIA族、IIA族、IIIA族、IB族、IIB族およびIIIB族のイオン、ランタニド系列または希土類系列の三価イオン、亜鉛(II)イオン、銀(I)イオン、銅(II)イオン、クロム(III)イオン、鉄(III)イオン、アンモニウムイオンならびに/またはヒドロニウムイオンから選択される少なくとも1種のカチオンを含み、好ましいイオンが、カルシウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、バリウムイオン、セシウムイオン、ストロンチウムイオン、亜鉛イオンおよび希土類イオンであり、より好ましくはナトリウムイオン、カルシウムイオンおよびリチウムイオンである。
【0086】
本発明によるゼオライト吸着剤材料の金属含量は、酸化物の状態であるとして表されたときに、好ましくは先に示された金属含量であり、より特定すると、
・CaO含量が、境界値を含めて、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から20.5重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して3重量%から20.5重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して7.5重量%から20.5重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して9重量%から20.5重量%の間であり、
・Li
2O含量が、境界値を含めて、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から12重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して3重量%から12重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して5重量%から12重量%の間、好ましくは吸着剤材料の総重量に対して6.5重量%から12重量%の間であり、
・Na
2O含量が、境界値を含めて、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から22重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から19重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から15重量%の間、好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から10重量%の間、全面的に好ましくはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から7重量%の間、有利にはゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0重量%から2重量%の間であり、
・ゼオライト吸着剤材料が、リチウム、ナトリウムおよびカルシウムから選択される3種の金属のうちの少なくとも1種を含むと理解されており、
・前記ゼオライト吸着剤材料が場合によっては、ランタニドおよびアクチニドから選択される、好ましくはランタニドから選択される、一般に0%から10%の間、好ましくは0%から7%の間の含量の少なくとも1種の希土類をさらに含み、
・前記ゼオライト吸着剤材料が場合によっては、リチウム、ナトリウムおよびカルシウム以外であり、例えばカリウム、バリウム、ストロンチウム、セシウムおよび銀等の遷移金属等から選択されることが好ましい、少量(酸化物の状態であるとして%が表されたときに、5%未満、好ましくは2%未満)の1種以上のカチオンをさらに含む
ことになるものである。
【0087】
上記に示されたように、酸化バリウムの含量が、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して0.5重量%未満、好ましくは0.3重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満である、ゼオライト吸着剤材料も好ましい。
【0088】
さらなる好ましい一態様によれば、本発明によるゼオライト吸着剤材料は、FAU型(ホージャサイト型)構造以外のゼオライト構造を有さない。「FAU型構造以外のゼオライト構造を有さない」という表現は、本発明による吸着剤材料のXRD(X線回折)分析で、吸着剤材料の総重量に対して5重量%を超えるホージャサイト型構造以外のゼオライト構造を検出できない、好ましくは2重量%を超えるホージャサイト型構造以外のゼオライト構造を検出できないことを意味するように意図されている。
【0089】
さらに別の好ましい実施形態によれば、本発明は、水銀圧入によって測定された0.15cm
3.g
−1から0.5cm
3.g
−1の間のマクロ細孔とメソ細孔との総容積、および、前記マクロ細孔とメソ細孔との総容積に対して境界値を含めて0.2から1倍の間、好ましくは0.4から0.8倍の間のマクロ細孔体積分率を有する、上記に規定のゼオライト吸着剤材料であって、測定が、ナトリウムによって少なくとも95%交換された吸着剤材料を対象として実施されている、ゼオライト吸着剤材料に関する。
【0090】
キャラクタリゼーション法
ゼオライト吸着剤材料の物理的特性は、当業者公知の方法によって評価され、これらの公知の方法の主なものは、下記において再出している。
【0091】
ゼオライト結晶粒径
前記ゼオライト吸着剤材料を調製するために使用される、ゼオライト吸着剤材料に含有されるFAU型ゼオライト結晶の数平均直径の見積もりは、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって実施される。
【0092】
試料におけるゼオライト結晶のサイズを見積もるために、少なくとも倍率5000倍で1組の画像を撮影する。次いで、少なくとも200個の結晶の直径を、専用ソフトウェア、例えばLoGraMiによって公開されているSmile Viewソフトウェアを使用して測定する。正確さは、およそ3%である。
【0093】
ゼオライト吸着剤粒径
本発明による方法のゼオライト吸着剤材料の体積平均直径(または「体積平均直径」)は、規格ISO13322−2:2006に従った画像化により、カメラの対物レンズの前を試料が通過できるようにするコンベヤベルトを使用して、吸着剤材料の試料の粒径分布を分析することよって、測定される。
【0094】
次いで、規格ISO9276−2:2001を適用することにより、粒径分布から体積平均直径を計算する。本明細書において、ゼオライト吸着剤材料に関する場合、「体積平均直径」または「サイズ」という名称が使用されている。この正確さは、本発明との関連で使用され得る吸着剤材料のサイズ範囲に関する場合、およそ0.01mmである。
【0095】
ゼオライト吸着剤材料の化学分析 Si/Al比および交換度
上記ゼオライト吸着剤材料の元素化学分析は、当業者に公知の様々な分析法に従って実施することができる。これらの技法の中でも、規格NF EN ISO12677:2011に記載のような、波長分散型分光計(WDXRF)、例えばBruker社のTiger S8機械装置を用いたX線蛍光による化学分析法を挙げることができる。
【0096】
X線蛍光は、X線域における原子のフォトルミネセンスを活用して、試料の元素組成を確定する、非破壊式の分光法である。一般にX線ビームまたは電子衝撃を用いる、原子の励起は、原子が基底状態に戻った後に特定の放射線を発生させる。従来、各酸化物の較正の後には、0.4重量%未満の測定の不確かさが得られる。
【0097】
他の分析方法としては例えば、規格NF EN ISO21587−3またはNF EN ISO21079−3に記載されている、例えばPerkin Elmer4300DV型の装置での、原子吸光分析(AAS)法および誘導結合プラズマ原子発光分光分析(ICP−AES)法等がある。
【0098】
X線蛍光スペクトルは、元素の化学的組み合わせにほとんど依存しないという利点を有し、この結果、定量的にも定性的にも精密な測定が実現される。従来、酸化物SiO
2およびAl
2O
3のそれぞれ、ならびに、様々な酸化物(例えば、交換可能なカチオン、例えばナトリウムカチオンに由来の酸化物)の較正後には、0.4重量%未満の測定の不確かさが得られている。ICP−AES法は、酸化リチウム含量を計算可能にする、リチウム含量の測定に特に格別に適している。
【0099】
従って、上記元素化学分析は、ゼオライト吸着剤材料中に使用されたゼオライトのSi/Al比と、ゼオライト吸着剤材料のSi/Al比との両方の検証を可能にする。本発明の記述において、Si/Al比に関する測定の不確かさは、±5%である。吸着剤材料中に存在するゼオライトのSi/Al比の測定は、固体ケイ素核磁気共鳴(NMR)分光法によって実施することもできる。
【0100】
イオン交換の品質は、交換後のゼオライト吸着剤材料中にある、対象カチオンのモル数に関連付けられている。より具体的には、所与のカチオンによる交換度は、前記カチオンのモル数と、交換可能なすべてのカチオンのモル数との比を評価することによって、見積もられる。各カチオンのそれぞれの量は、対応するカチオンの化学分析によって評価される。例えば、ナトリウムイオンによる交換度は、Na
+カチオンの総数と、交換可能なカチオン(例えば、Ca
2+、K
+、Li
+、Ba
2+、Cs
+、Na
+等)の総数との比を評価することによって見積もられ、各カチオンの量は、対応する酸化物(Na
2O、CaO、K
2O、BaO、Li
2O、Cs
2O等)の化学分析によって評価される。この計算法は、ゼオライト吸着剤材料の残留結合剤中に存在する可能性がある酸化物も考慮に入れている。しかしながら、このような酸化物の量は、本発明によるゼオライト吸着剤材料のゼオライトの交換可能な部位のカチオンに由来した酸化物に比較すれば、重大ではないと考えられる。
【0101】
マクロ細孔容積およびメソ細孔容積
マクロ細孔およびメソ細孔容積は、ナトリウムによって少なくとも95%交換された試料を対象として、水銀圧入式ポロシメトリーによって測定される。Micromeritics Autopore(登録商標)9500水銀ポロシメータを使用して、マクロ細孔およびメソ細孔に含まれる細孔容積の分布を分析する。
【0102】
規格ASTM D4284−83を参照した装置の操作マニュアルに記載の実験方法は、あらかじめ秤量しておいた(既知の強熱減量を有する)測定対象のゼオライト吸着剤材料の試料をポロシメータセルに入れ、次いで(少なくとも10分にわたる30μmHgの排出圧力における)予備脱気を行った後、所与の圧力(0.0036MPa)でセルに水銀を充填し、次いで、水銀を徐々に試料の多孔性網目構造に浸透させるために、400MPaまで段階的に増大していくように圧力を加えるものである。
【0103】
従って、本明細書において、cm
3.g
−1として表されたゼオライト吸着剤材料のマクロ細孔容積およびメソ細孔容積は、水銀圧入によって測定されており、無水当量としての試料の重量、即ち、強熱減量に対して補正された前記ゼオライト吸着剤材料の重量に関連付けられている。
【0104】
ゼオライト吸着剤材料の機械的強度
層の状態における本発明に記載のゼオライト吸着剤材料のバルク圧潰強さは、規格ASTM7084−04に従ってキャラクタリゼーションされる。粒子圧潰強さは、規格ASTM D4179およびD6175に従って、Vinci Technologiesから販売の「粒子圧潰強さ」装置によって測定される。
【0105】
ミクロ細孔容積測定
ミクロ細孔容積の測定は、Dubinin−Raduskevitchの容積測定(77Kにおける液体窒素の吸着または87Kにおける液体アルゴンの吸着)等の従来の方法によって見積もられる。
【0106】
Dubinin−Raduskevitch容積は、液化温度における気体(例えば窒素またはアルゴン)吸着等温線測定によって、ゼオライトの細孔開口部の関数として決定され、FAUの場合は窒素が選択されるであろう。吸着の前に、ゼオライト吸着剤材料を真空(P<6.7×10
−4Pa)下において、9時間から16時間の間の時間にわたって300℃から450℃の間で脱気する。次いで、吸着等温線の測定を、MicromeriticsのASAP2020型の機械装置によって実施し、P/P0の比が0.002から1の間である相対圧力において、少なくとも35の測定点を採用する。細孔容積は、規格ISO 15901−3(2007)の適用により、DubininおよびRaduskevitchに従って、得られた等温線から決定される。DubininおよびRaduskevitchの式に従って評価されたミクロ細孔容積は、ゼオライト吸着剤材料1グラム当たりの液体状吸着物質のcm
3として表されている。測定の不確かさは、±0.003cm
3.g
−1であり、測定は、ナトリウムによって少なくとも95%交換されたゼオライト吸着剤材料を対象として実施されている。
【0107】
単位体積当たりミクロ細孔容積の測定
単位体積当たりミクロ細孔容積は、上記に規定のミクロ細孔容積に前記ゼオライト吸着剤材料の見掛け密度をかけることによって、上記に規定のミクロ細孔容積から計算される。見掛け密度は、規格DIN8948/7.6に記載のように測定される。
【0108】
ゼオライト吸着剤材料の強熱減量
強熱減量は、規格NF EN196−2(2006年4月)に記載のように、酸化作用のある雰囲気下において950℃±25℃の温度で、試料を空気中でか焼することによって測定される。測定の標準偏差は、0.1%未満である。
【0109】
X線回折による定性分析および定量分析
ゼオライト吸着剤材料中のゼオライトの純度は、XRDという頭字語で当業者に公知のX線回折分析によって評価される。上記純度の識別は、Bruker XRD装置によって実施される。
【0110】
この分析は、吸着剤材料中に存在する様々なゼオライトの識別を可能にし、その理由として、各ゼオライトが、回折ピークの配置および回折ピークの相対強度によって規定された一意な回折図形を有するという点がある。
【0111】
ゼオライト吸着剤材料を粉砕した後、簡単な機械的圧縮により、試料ホルダー上で平らにならす。
【0112】
回折図形がBruker D5000機によって取得される条件は、次の通りである。
・40kVおよび30mAで使用されるCuチューブ、
・スリットサイズ(発散用、散乱用および分析用)=0.6mm、
・フィルター:Ni、
・試料入りデバイスの回転:15rpm、
・測定範囲:3°<2θ<50°、
・増分:0.02°、
・増分ごとの計数時間:2秒。
【0113】
得られた回折図形の解釈は、ICDD PDF−2の2011年リリース版ベースを使用してゼオライトを識別する、EVAソフトウェアによって実施される。
【0114】
重量によるFAU型ゼオライト画分の量は、XRD分析によって測定される。この方法は、FAU以外のゼオライト画分の量を測定するためにも使用される。この分析が、Brukerという商標の機械装置によって実施された後、Bruker社のTOPASソフトウェアを使用して、重量によるゼオライト画分の量が評価される。
【0115】
「t−プロット」法による外部表面積(m
2/g)の測定
「t−プロット」計算法は、吸着等温データQ ads=f(P/P0)を活用し、ミクロ細孔表面積を計算可能にする。このミクロ細孔表面積から、m
2/gとして総細孔表面積を計算したBET表面積との差を決定することにより、外部表面積を推定することができる(S BET=ミクロ細孔表面積+外部表面積)。
【0116】
t−プロット法によってミクロ細孔表面積を計算するために、非多孔性基準物質において形成されることになる分圧P/P0に応じた層の厚さがtである関数として、曲線Q ads(cm
3.g
−1)をプロットする(log(P/P0)のt関数:適用されたHarkins−Jura式:[13.99/(0.034−log(P/P0))^0.5]。0.35nmから0.5nmの間の間隔tを空けて、吸着インターセプトポイント(adsorbed intercept point)Qを規定する直線をプロットしてもよく、このようにすると、細孔表面積を計算することができる。材料がミクロ多孔性でない場合は、直線が0を通過する。測定は、ナトリウムによって少なくとも95%交換されたゼオライト吸着剤材料を対象として実施される。
【0117】
メソ細孔容積の測定
ナトリウムによって少なくとも95%交換された試料を対象とした、メソ細孔容積の測定は、Barret−Joyner−Halenda容積測定(77Kにおける液体窒素の吸着)等の従来の方法によって評価される。
【0118】
メソ細孔容積は、液化温度における気体(例えば窒素)吸着等温線測定によって、ゼオライトの細孔開口部の関数として決定され、FAUの場合は窒素が選択されるであろう。吸着の前に、ゼオライト吸着剤材料を真空(P<6.7×10
−4Pa)下において、9時間から16時間の間の時間にわたって300℃から450℃の間で脱気する。次いで、吸着等温線の測定を、MicromeriticsのASAP2020型の機械装置によって実施し、P/P0の比が0.002から1の間である相対圧力において、少なくとも35の測定点を採用する。メソ細孔容積は、規格ISO15901−2(2007)の適用により、Barret−Joyner−Halendaに従って、得られた等温線から決定される。Barret−Joyner−Halendaの式に従って評価したメソ細孔容積は、ゼオライト吸着剤材料1グラム当たりの液体状吸着物質のcm
3として表されている。
【実施例】
【0119】
下記の実施例は、本発明の説明に役立つものであるが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲を限定しようとしているわけではない。
【0120】
[実施例1]
本発明によるゼオライト吸着剤材料の製造
工程1:1.01に等しいSi/Al比および95m
2.g
−1の外部表面積を有するメソ多孔性LSX型ゼオライト結晶の合成
a)成長用ゲルの調製:アルキメデススクリューによって250rpmで撹拌されている反応器
加熱ジャケット、温度プローブおよび撹拌機を備えた3リットル容ステンレス鋼製反応器内において、300gの水酸化ナトリウム(NaOH)、264gの85%水酸化カリウム、169gのアルミナ三水和物(65.2重量%のAl
2O
3を含有する、Al
2O
3・3H
2O)および25℃の1200gの水を含有するアルミン酸塩溶液と、490gのケイ酸ナトリウム、29.4gのNaOHおよび25℃の470gの水を含有するケイ酸溶液とを、250rpmの撹拌速度において5分間混合することによって、成長用ゲルを調製する。
【0121】
成長用ゲルの化学量論は、次の通りである。4.32Na
2O/1.85K
2O/Al
2O
3/2.0SiO
2/114H
2O。成長用ゲルの均質化は、250rpmにおいて25℃で15分間撹拌しながら実施する。
【0122】
b)核形成用ゲルの添加
成長用ゲルと同じ方法で調製して、40℃で1時間熟成させた、12Na
2O/Al
2O
3/10SiO
2/180H
2Oの組成の核形成用ゲル11.6g(即ち、0.4重量%)を、300rpmで撹拌しながら25℃において成長用ゲルに添加する。250rpmで5分間均質化した後、撹拌速度を50rpmに低下させ、30分間撹拌し続ける。
【0123】
c)構造化剤の反応媒体への導入
[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(TPOAC)の60%メタノール(MeOH)溶液35.7gを、250rpmの撹拌速度で5分間にわたって反応媒体中に導入する(TPOAC/Al
2O
3モル比=0.04)。次いで、50rpmにおいて30℃で20時間、熟成工程を実施した後、結晶化を開始させる。
【0124】
d)二段階式結晶化
撹拌速度を50rpmに維持し、次いで反応器ジャケットの設定点の上昇を、反応媒体の温度が5時間にわたって60℃に上昇した後、60℃における21時間の定常温度段階があるような直線的な方式にして、63℃にプログラムする。次いで、反応器ジャケットの設定点を、反応媒体の温度が60分間にわたって95℃上昇するようにして、102℃に設定する。95℃の定常温度段階にして3時間後、ジャケット内で冷水を循環させることによって、反応媒体を冷却して、結晶化を停止させる。
【0125】
e)ろ過/洗浄
固体を焼結体によって回収した後、脱イオン水によって中性pHになるまで洗浄する。
【0126】
f)乾燥/か焼
生成物をキャラクタリゼーションするために、90℃のオーブン内で8時間乾燥を実施する。
【0127】
構造化剤の除去によってミクロ孔(水)とメソ孔を両方ともなくすために必要とされる、乾燥済み生成物のか焼は、真空(P<6.7×10
−4Pa)下で9時間から16時間の間の期間にわたって、50℃から400℃まで段階的に上昇するようにして、真空下で脱気することによって行われる。
【0128】
真空下において400℃で10時間脱気した後で、77Kにおける窒素吸着等温線からt−プロット法に従って測定された、ミクロ細孔容積および外部表面積は、それぞれ0.215cm
3.g
−1および95m
2.g
−1である。結晶の数平均直径は、6μmである。DFT法によって窒素吸着等温線から計算されたメソ細孔直径は、5nmから10nmの間である。XR回折図形は、純粋なホージャサイト型(FAU型)構造に対応しており、LTA型ゼオライトは検出されない。蛍光X線によって測定されたメソ多孔性LSXのSi/Alモル比は、1.01に等しい。
【0129】
図1は、上記のようにして合成したゼオライトの透過型電子顕微鏡法(TEM)によって得られた画像を示している。
【0130】
工程2:メソ多孔性LSX型ゼオライト凝集体の調製
下記の記載において、与えられた重量は、無水当量として表されている。
【0131】
工程1で得られた1700gのメソ多孔性LSX型ゼオライト結晶と、CECAから販売されている300gのZeoclay(登録商標)アタパルジャイトと、成形前のペーストの強熱減量が35%になるような量の水とからなる、均一な混合物を調製する。このようにして調製されたペーストは、凝集したゼオライト吸着剤材料からできたボールを調製するために、造粒プレート上で使用される。得られたボールは、0.3から0.8mmの間の直径および0.55mmに等しい体積平均直径を有するボールを収集するように、ふるい分けによって選別される。
【0132】
換気されているオーブン内において、ボールを80℃で一晩乾燥させる。次いで、これらのボールを、窒素フラッシング下において550℃で2時間か焼した後、脱炭酸済みの乾燥空気によるフラッシング下において550℃で2時間か焼する。
【0133】
工程3:メソ多孔性LSX型ゼオライト凝集体のリチウム交換および活性化
固体に対して20ml.g
−1の比率の1M塩化リチウム溶液によって、5回の連続的な交換を実施する。各交換は100℃で4時間継続され、中間の洗浄を実施して、各工程において過剰な塩を除去できるようにする。最後の工程において、20ml.g
−1の比率となるように周囲温度で4回の洗浄を実施する。
【0134】
換気されているオーブン内において、ボールを80℃で一晩乾燥させる。次いで、これらのボールを、窒素フラッシング下において550℃で2時間活性化する。
【0135】
ICP−AESによって測定された酸化リチウムLi
2Oの含量は、ゼオライト吸着剤材料の総重量に対して8.9重量%である。ボールの体積平均直径は0.55mmである。層の状態における、リチウム交換済みメソ多孔性LSX型ゼオライトボールのバルク圧潰強さは2.6daNである。
【0136】
工程4:キャラクタリゼーション
ゼオライト吸着剤材料をキャラクタリゼーションするために、ゼオライト吸着剤材料は、次の方法により、ナトリウムによって少なくとも95%交換される。ゼオライト吸着剤材料を、1リットル当たり1モルのNaClを含有する塩化ナトリウム溶液に、固体に対する液体の比を10ml.g
−1にした状態で3時間にわたって90℃で導入する。この操作を4回繰り返す。各交換の合間には、固体を順次、過剰な塩の除去のために、20ml.g
−1の比率の水に浸漬することによって4回洗浄し、次いで、空気中において80℃で12時間乾燥させた後、蛍光X線によって分析する。ゼオライト吸着剤材料の酸化ナトリウムの重量百分率は、18.2%に等しく、交換操作3と交換操作4との間で1%未満の安定性を有する。換気されているオーブン内において、ボールを80℃で一晩乾燥させる。次いで、これらのボールを、窒素フラッシング下において550℃で2時間活性化する。
【0137】
外部表面積は、吸着剤に対して99m
2.g
−1に等しく、ミクロ細孔容積は、ナトリウム交換済み吸着剤に対して0.264cm
3.g
−1である。単位体積当たりミクロ細孔容積は、ナトリウム交換済みゼオライト吸着剤材料1cm
3当たり0.150cm
3である。メソ細孔容積は、ナトリウム交換済み吸着剤に対して0.165cm
3.g
−1に等しい。水銀圧入によって測定された、マクロ細孔とメソ細孔との総容積は、ナトリウム交換吸着剤に対して0.42cm
3.g
−1である。
【0138】
吸着剤のSi/Al原子比は、1.25である。吸着剤ゼオライト材料中に存在するゼオライトのSi/Al比は、1.01に等しく、固体ケイ素29NMRによって測定されている。
【0139】
XRDによって測定して、吸着剤の総重量に対する重量として表された非ゼオライト相(PNZ)の含量は、15.3%である。
【0140】
[実施例2]
比較用のゼオライト吸着剤材料
CECAのSiliporite(登録商標)Nitroxy(登録商標)SXSDMふるいは、アタパルジャイトと一緒に凝集したLiLSX型ゼオライトを主体とした材料である。ボールの単位体積当たり平均直径は、0.55mmに等しい。ICP−AESによって測定された酸化リチウムLi
2Oの含量は、ふるいの総重量に対して9.2重量%である。
【0141】
実施例1の工程4と同様に、ナトリウムによって少なくとも95%交換された固体を得るように、ナトリウム交換を実施する。前述のように、この結果は、4回の連続的な交換によって得られる。
【0142】
蛍光X線によって得られたゼオライト吸着剤材料の酸化ナトリウムの重量百分率は、18.4%に等しく、交換操作3と交換操作4との間で1%未満の安定性を有する。換気されているオーブン内において、ボールを80℃で一晩乾燥させる。次いで、これらのボールを、窒素フラッシング下において550℃で2時間活性化する。
【0143】
外部表面積は、吸着剤に対して31m
2.g
−1に等しく、細孔容積は、ナトリウム交換済み吸着剤に対して0.265cm
3.g
−1である。単位体積当たりミクロ細孔容積は、ナトリウム交換済みゼオライト吸着剤材料1cm
3当たり0.172cm
3である。メソ細孔容積は、ナトリウム交換済み吸着剤に対して0.07cm
3.g
−1に等しい。水銀圧入によって測定されたマクロ細孔とメソ細孔との総容積は、ナトリウム交換済み吸着剤に対して0.31cm
3.g
−1である。
【0144】
吸着剤のSi/Al原子比は、1.23である。XRDによって測定して、吸着剤の総重量に対する重量として表された非ゼオライト相(PNZ)の含量は、15.3%である。
【0145】
[実施例3]
圧力スイング吸着による吸着剤の固定層におけるN
2/O
2分離試験
N
2/O
2分離試験は、E.Alpayら(同上)によって提示された原理に従って、単一のカラム内での吸着によって実施される。
【0146】
図2は、製造された組立体を記載している。ゼオライト吸着剤材料(2)を充填された、内径27.5mmで内部高さ600mmのカラム(1)に、バルブ(4)によって乾燥空気(3)が断続的に供給される。流れ(3)をカラム(1)に供給する時間は、吸着時間と呼ばれる。カラム(1)に乾燥空気が供給されていないときには、流れ(3)が、バルブ(5)によって大気中に排出される。ゼオライト吸着剤材料は、窒素を優先的に吸収し、この結果、酸素富化された空気が、逆止め弁(6)を経由してカラムを退出し、緩衝タンク(7)に入る。調整弁(8)は、1NL.min
−1に固定された一定の流量で、出口(9)にガスを送達し続ける。
【0147】
カラム(1)が供給を受けていないとき、即ち、バルブ(4)が閉じており、バルブ(5)が開いているときには、カラム(1)は、脱着時間と呼ばれる期間にわたって、大気(11)に通じるバルブ(10)によって、減圧される。吸着段階と脱着段階は、交互に行われるように続いていく。これらの段階の持続期間は、サイクルごとに固定されているが、調節することもできる。表1は、吸着段階および脱着段階に応じた、それぞれのバルブ状態を示している。
【0148】
【表1】
【0149】
試験は、(本発明による)実施例1のゼオライト吸着剤材料および(比較用の)実施例2のゼオライト吸着剤材料を用いて、順次実施される。カラムには、それぞれ204.5gおよび239.7gの吸着剤材料を、一定の体積となるように装入する。入口の圧力は280kPaに固定されている。
【0150】
出口流量は、1NL.min
−1に固定されている。吸着時間は、0.25秒に固定されている。脱着時間は、0.25秒から1.25秒の間で変更可能である。
【0151】
出口(9)における酸素濃度は、Servomex570A酸素分析装置によって測定される。
【0152】
図3は、実施例1および実施例2の材料を対象にして定められた脱着時間に応じた、出口(9)で生成された流れの酸素含量を示している。カラム内に装入された重量がより小さいにもかかわらず、(本発明による)実施例1の材料の方が、(比較用の)実施例2の固体に比べて、(生成された気体の酸素含量の観点から)はるかに効率的であると判明している。