【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<カルボキシル化(TEMPO酸化)パルプ由来のCNF水分散液の製造>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%)5g(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社)39mgと臭化ナトリウム514mgを溶解した水溶液500mLに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を5.5mmol/gになるように添加し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターで濾過してパルプ分離し、パルプを十分に水洗することで酸化されたパルプ(以下、「カルボキシル化セルロース」、「カルボキシル化パルプ」、または「TEMPO酸化パルプ」ということがある)を得た。パルプ収率は90%であり、酸化反応に要した時間は90分、カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。
その後、TEMPO酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で5回処理して、TEMPO酸化パルプ由来のCNF水分散液を得た。
【0044】
<カルボキシル基量の測定方法>
カルボキシル化セルロースの0.5重量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出した:カルボキシル基量〔mmol/gカルボキシル化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/カルボキシル化セルロース質量〔g〕。
【0045】
<カルボキシメチル化パルプ由来のCNF水分散液の製造>
パルプを混ぜることができる撹拌機に、パルプ(NBKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、日本製紙株式会社製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で111g加え、パルプ固形分が20%(w/v)になるように水を加えた。その後、30℃で30分撹拌した後にモノクロロ酢酸ナトリウムを216g(有効成分換算)添加した。30分撹拌した後に、70℃まで昇温し1時間撹拌した。その後、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度0.25のカルボキシルメチル化したパルプを得た。その後、カルボキシメチル化したパルプを水で固形分1%とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、150MPaの圧力で5回処理することにより解繊し、カルボキシメチル化パルプ由来のCNF水分散液を得た。
【0046】
<グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定方法>
カルボキシメチル化セルロース繊維(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチル化セルロース塩(CM化セルロース)を水素型CM化セルロースにした。水素型CM化セルロース(絶乾)を1.5〜2.0g精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れた。80%メタノール15mLで水素型CM化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうした。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定した。カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出した:
A=[(100×F’−(0.1NのH
2SO
4)(mL)×F)×0.1]/(水素型CM化セルロースの絶乾重量(g))
DS=0.162×A/(1−0.058×A)
A:水素型CM化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F’:0.1NのH
2SO
4のファクター
F:0.1NのNaOHのファクター
【0047】
<カチオン化パルプ由来のCNF水分散液の製造>
パルプを撹拌することができる撹拌機に、パルプ(LBKP、日本製紙株式会社製)を乾燥重量で200g、水酸化ナトリウムを乾燥重量で24g加え、パルプ固形濃度が15重量%となるように水を加えた。その後、30℃で30分撹拌した後に70℃まで昇温し、カチオン化剤として3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドを190g(有効成分換算)添加した。1時間の反応の後に、反応物を取り出して中和、洗浄して、グルコース単位当たりのカチオン置換度0.04のカチオン変性されたセルロースを得た。その後、カチオン変性セルロースを水で固形濃度1%(w/v)とし、高圧ホモジナイザーにより20℃、140MPaの圧力で5回処理し、カチオン変性セルロース由来のCNF水分散液を得た。
【0048】
<グルコース単位当たりのカチオン置換度の測定方法>
カチオン基の置換度は、試料(カチオン変性されたセルロース)を乾燥させた後に、全窒素分析計TN−10(三菱化学株式会社製)で窒素含有量を測定し、次式により算出した。ここでの置換度とは、無水グルコース単位1モル当たりの置換基のモル数の平均値を表している。
カチオン置換度=(162×N)/(1−151.6×N)
N:窒素含有量
【0049】
<CNFの平均繊維径、平均繊維長、アスペクト比の測定>
CNFの平均繊維径および平均繊維長は、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、ランダムに選んだ200本の繊維について解析した。アスペクト比は下記の式により算出した:
アスペクト比=平均繊維長/平均繊維径
【0050】
<B型粘度の測定>
B型粘度系を用いてCNF(固形分1.0%、25℃)粘度を測定した。測定条件は、回転数60rpm、3分とした。
【0051】
<透明度の測定>
CNF水分散液(固形分1.0重量%)の透明度(660nm 光の透過率)をUV分光光度計U−3000(日立ハイテク社製)を用いて測定した。
【0052】
<復元率の評価>
透明度および粘度の復元率は以下の式で算出した。
復元率(%)=(再分散後の粘度あるいは透明度)/(乾燥前の粘度あるいは透明度)×100
【0053】
<着色評価>
再分散して得たセルロースナノファイバー水分散液(固形分濃度1.0重量%)を以下の基準で目視評価した。
着色しない: ++ > + > ± > − > ― ― :着色する
【0054】
[実施例A1]
上記カルボキシル化パルプ由来のCNF(平均繊維径:4nm、アスペクト比:150)の1.0重量%水分散液100gをエタノール400gに滴下し、スターラーで撹拌してCNFの沈殿を生成させた。ブフナー漏斗を用いてこれを固液分離し、50℃の送風乾燥機で固形分濃度が95重量%となるまで乾燥し、CNFの乾燥固形物を得た。
【0055】
次に、上記で得られたCNFの乾燥固形物に水を加えてCNF1重量%の混合物とし、TKホモミキサー(3,000rpm)を用いて60分間撹拌し、CNFの乾燥固形物を再分散した分散液を得て、評価した。
【0056】
[実施例A2]
上記カルボキシル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gをエタノール100gに滴下し、スターラーで撹拌してCNFの沈殿を生成させた以外は実施例A1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0057】
[実施例A3]
上記カルボキシル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gをメタノール400gに滴下し、スターラーで撹拌してCNFの沈殿を生成させた以外は実施例A1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0058】
[実施例A4]
上記カルボキシメチル化パルプ由来のCNF(平均繊維長12nm、アスペクト比:130)を用いた以外は実施例A1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0059】
[実施例A5]
上記カルボキシメチル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gをエタノール100gに滴下し、スターラーで撹拌してCNFの沈殿を生成させた以外は実施例A1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0060】
[実施例A6]
上記カチオン化パルプ由来のCNF(平均繊維長20nm、アスペクト比:110)を用いた以外は実施例A1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0061】
[実施例A7]
上記カチオン化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gをエタノール100gに滴下し、スターラーで撹拌してCNFの沈殿を生成させた以外は実施例A1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0062】
[比較例A1]
上記カルボキシル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gを50℃の送風乾燥機で固形分濃度が95重量%となるまで乾燥し、CNFの乾燥固形物を得た。実施例A1と同様にして当該CNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0063】
[比較例A2]
上記カルボキシル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gに水酸化ナトリウム水溶液0.5%を加え、pHを9に調整した後、蒸気圧力0.3MPa.G、ドラム回転数2rpmのドラム乾燥機D0303(カツラギ工業)で乾燥し、固形分濃度が95重量%のCNFの乾燥固形物を得た。実施例A1と同様にして当該CNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0064】
[比較例A3]
上記カルボキシメチル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gを50℃の送風乾燥機で固形分濃度が95重量%となるまで乾燥し、CNFの乾燥固形物を得た。実施例A1と同様にして当該CNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0065】
[比較例A4]
上記カチオン化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gを50℃の送風乾燥機で固形分濃度が95重量%となるまで乾燥し、CNFの乾燥固形物を得た。実施例A1と同様にして当該CNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。これらの結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
[実施例B1]
前記カルボキシル化パルプ由来のCNF(平均繊維径:4nm、アスペクト比:150)の1.0重量%水分散液100gに水溶性高分子としてカルボキシメチルセルロースを0.5g配合し、TKホモミキサー(3,000rpm)で30分撹拌後、pHを9に調整した。その後、TKホモミキサー(3,000rpm)でさらに30分撹拌して検液を得た。当該検液をエタノール400gに滴下し、スターラーで撹拌してCNFの沈殿を生成させた。ブフナー漏斗を用いてこれを固液分離し、50℃の送風乾燥機でCNFの固形分濃度が95重量%となるまで乾燥して、CNFの乾燥固形物を得た。
次に、上記で得られたCNF乾燥固形物に1.0重量%水分散液となるように水を添加し、プロペラ撹拌(600rpm)で3時間撹拌し、CNFの乾燥固形物を再分散した水分散液を得た。
【0068】
[実施例B2]
カルボキシメチルセルロースの配合量を0.1gとした以外は実施例B1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0069】
[実施例B3]
前記カルボキシル化パルプ由来のCNF(平均繊維径:4nm、アスペクト比:150)の1.0重量%水分散液100gにカルボキシメチルセルロースを0.5g配合し、TKホモミキサー(3,000rpm)で30分撹拌後、pHを9に調整した。その後、TKホモミキサー(3,000rpm)でさらに30分撹拌して検液を得た。当該検液をエタノール100gに滴下し、スターラーで撹拌後、50℃の送風乾燥機でCNFの固形分濃度が95重量%となるまで乾燥して、CNFの乾燥固形物を得た。
次に、上記で得られたCNFの乾燥固形物に1.0重量%水分散液となるように水を添加し、プロペラ撹拌(600rpm)で3時間撹拌し、CNFの乾燥固形物を再分散した水分散液を得た。実施例B1と同様にして当該CNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0070】
[実施例B4]
カルボキシメチルセルロースの配合量を0.1g、エタノール量を100gとした以外は実施例B3と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0071】
[実施例B5]
エタノール量を12gとした以外は実施例B3と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0072】
[実施例B6]
カルボキシメチルセルロースの配合量を0.1g、エタノール量を12gとした以外は実施例B3と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0073】
[実施例B7]
エタノールの代わりにメタノールを用いた以外は実施例B1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0074】
[実施例B8]
エタノールの代わりにメタノールを用いた以外は実施例B2と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0075】
[実施例B9]
上記カルボキシメチル化パルプ由来のCNF(平均繊維長12nm、アスペクト比:130)を用いた以外は実施例B1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0076】
[実施例B10]
カルボキシメチルセルロースの配合量を0.1gとした以外は実施例B9と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0077】
[実施例B11]
上記カルボキシメチル化パルプ由来のCNF(平均繊維長12nm、アスペクト比:130)を用いた以外は実施例B3と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0078】
[実施例B12]
カルボキシメチルセルロースの配合量を0.1gとした以外は実施例B11と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0079】
[実施例B13]
上記カチオン化パルプ由来のCNF(平均繊維長20nm、アスペクト比:110)を用いた以外は実施例B1と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0080】
[実施例B14]
カルボキシメチルセルロースの配合量を0.1gとした以外は実施例B13と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0081】
[実施例B15]
上記カチオン化パルプ由来のCNF(平均繊維長20nm、アスペクト比:110)を用いた以外は実施例B3と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0082】
[実施例B16]
カルボキシメチルセルロースの配合量を0.1gとした以外は実施例B15と同様にしてCNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0083】
[比較例B1]
上記カルボキシル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gを105℃の送風乾燥機でCNFの固形分濃度が95重量%となるまで乾燥して、CNFの乾燥固形物を得た。実施例B1と同様にして当該CNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0084】
[比較例B2]
上記カルボキシメチル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gを105℃の送風乾燥機でCNFの固形分濃度が95重量%となるまで乾燥して、CNFの乾燥固形物を得た。実施例B1と同様にして当該CNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0085】
[比較例B3]
上記カチオン化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gを105℃の送風乾燥機でCNFの固形分濃度が95重量%となるまで乾燥して、CNFの乾燥固形物を得た。実施例B1と同様にして当該CNFの乾燥固形物ならびにこれを再分散した分散液を得て評価した。
【0086】
[参考例1]
上記カルボキシル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gを50℃の送風乾燥機で3時間乾燥したところ、CNFの固形分濃度が6重量%となった。
[参考例2]
上記カルボキシル化パルプ由来のCNFの1.0重量%水分散液100gを50℃の送風乾燥機で6時間乾燥したところ、CNFの固形分濃度が9重量%となった。
【0087】
以上から、水溶性有機溶剤を用いると50℃でも短時間で乾燥が完了し、CNFの乾燥固形物が得られることが明らかである。水溶性有機溶剤を用いない場合は乾燥に長時間を要し、その結果、着色を引き起こす。さらに製造にかかる時間、コスト、および生産性に劣ることも明らかである。
【0088】
【表2】