特許第6876628号(P6876628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876628細胞表面上にペプチドを提示するためのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876628
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】細胞表面上にペプチドを提示するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20210517BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20210517BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20210517BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20210517BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20210517BHJP
   C07K 17/02 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20210517BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20210517BHJP
【FI】
   C12N15/09 ZZNA
   C12N15/62 Z
   C12N5/10
   C07K19/00
   C07K14/705
   C07K17/02
   A61K35/12
   A61P37/04
   A61K39/00 Z
   A61K47/65
【請求項の数】20
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2017-564948(P2017-564948)
(86)(22)【出願日】2016年3月4日
(65)【公表番号】特表2018-508237(P2018-508237A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】EP2016054682
(87)【国際公開番号】WO2016139354
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】102015002851.0
(32)【優先日】2015年3月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517309869
【氏名又は名称】ペーター ウント トラウドル エンゲルホーン−シュティフトゥング ツア フェアデルング デア レーベンスヴィッセンシャフテン
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】イヴァヌジック,ダニエル
【審査官】 林 康子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/186649(WO,A1)
【文献】 特表2015−500826(JP,A)
【文献】 Ryu F et al,Cell Structure and Function,2000年,25,317-327
【文献】 Stickney Z et al,Biochem Biophys Res Commun,2016年 2月18日,472,53-59
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
C12N 5/10
C07K 19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のドメイン(i)と、第2のドメイン(ii)と、第3のドメイン(iii)とを含む融合タンパク質であって、前記第2のドメインは前記第1のドメインと前記第3のドメインとの間に配置されており、
(i)は膜貫通ドメイン1(TM1)、小型細胞外ループ(SEL)、膜貫通ドメイン2(TM2)、小型細胞内ループ(SIL)および膜貫通ドメイン3(TM3)を含む、配列番号18、20、22、24又は26で表されるテトラスパニンの部分配列、またはその全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含み、
(ii)は配列番号18、20、22、24又は26で表されるテトラスパニンの大型細胞外ループ(LEL)の配列とは異なるものであり、前記LELの部分配列を含む場合、前記配列番号18、20、22、24又は26で表されるテトラスパニンのLELの全長にわたって70%未満の配列同一性を有する所定のアミノ酸配列を有するペプチドを含み、
(iii)は膜貫通ドメイン4(TM4)を含む、配列番号18、20、22、24又は26で表されるテトラスパニンの部分配列またはその全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含み、
可撓性リンカーが前記第1のドメインと前記第2のドメインとの間および/または前記第2のドメインと前記第3のドメインとの間に配置されており、前記リンカーがセリンおよびアルギニンを含まず、
細胞膜に固定され細胞表面上に前記所定のアミノ酸配列を有するペプチドを提示することができる、融合タンパク質。
【請求項2】
前記第2のドメイン(ii)が、所定のアミノ酸配列を有するペプチドに対してC末端および/またはN末端で配置されている、テトラスパニンの前記LELの1つもしくは複数の部分配列またはその全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有する配列をさらに含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記第2のドメイン(ii)が、所定のアミノ酸配列を有するペプチドに対してC末端および/またはN末端で配置されている、1つまたは複数のプロテアーゼ認識配列をさらに含む、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記ペプチドがエピトープ、タンパク質、抗原または酵素から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
融合タンパク質のN末端に第4のドメイン(iv)および/または融合タンパク質のC末端に第5のドメイン(v)をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記第4および/または第5のドメインがタグ、例えばアフィニティータグまたは蛍光タグを含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸分子。
【請求項8】
好ましくは発現制御配列と作動可能に連結している、請求項7に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の核酸分子または請求項8に記載のベクターを含む細胞。
【請求項10】
真核細胞、好ましくは、例えばヒト細胞などの哺乳動物細胞である、請求項9に記載の細胞。
【請求項11】
少なくとも1個のさらなる核酸分子または少なくとも1個のさらなる発現ベクターでさらに形質転換またはトランスフェクトされた、請求項9または10に記載の細胞。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載の細胞から得られた膜調製物。
【請求項13】
膜と、請求項1から6のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項7に記載の核酸分子または請求項8に記載のベクターとを含む、合成膜系。
【請求項14】
細胞表面上に所定のアミノ酸配列を有するペプチドを提示する方法であって、
(a)請求項9から11のいずれか一項に記載の細胞を用意するステップと、
(b)請求項1から6のいずれか一項に記載の融合タンパク質が発現する条件下で前記細胞を培養するステップと
を含む方法。
【請求項15】
膜上に所定のアミノ酸配列を有するペプチドを固定する方法であって、
(a)膜を用意するステップと、
(b)融合タンパク質の固定が前記膜で起こる条件下で、前記膜を請求項1から6のいずれか一項に記載の融合タンパク質と接触させる、または請求項1から6のいずれか一項に記載の融合タンパク質が発現し、前記膜に固定される条件下で、前記膜を請求項7に記載の核酸分子または請求項8に記載のベクターと接触させるステップと
を含む方法。
【請求項16】
−ペプチドの相互作用対をスクリーニングする方法における、
−ペプチドと相互作用対の相互作用を試験するための、
−ペプチドを産生する方法における、
−抗体産生方法における免疫化試薬としての、または
−検出試薬としての、
請求項9から11のいずれか一項に記載の細胞、請求項12に記載の膜調製物または請求項13に記載の合成膜系の使用。
【請求項17】
ワクチンまたは医薬品として使用するための、請求項9から11のいずれか一項に記載の細胞、請求項12に記載の膜調製物または請求項13に記載の合成膜系。
【請求項18】
第1の配列セグメント(i)と、第2の配列セグメント(ii)と、第3の配列セグメント(iii)とを含む核酸分子であって、前記第2の配列セグメントは前記第1の配列セグメントと前記第3の配列セグメントとの間に配置されており、
(i)は膜貫通ドメイン1(TM1)、小型細胞外ループ(SEL)、膜貫通ドメイン2(TM2)、小型細胞内ループ(SIL)および膜貫通ドメイン3(TM3)を含む、配列番号18、20、22、24又は26で表されるテトラスパニンの部分配列、またはその全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有する配列をコードし、
(ii)はマルチクローニングサイトを含み、
(iii)は膜貫通ドメイン4(TM4)を含む、配列番号18、20、22、24又は26で表されるテトラスパニンの部分配列またはその全長にわたって少なくとも95%の配列同一性を有する配列をコードし、ならびに、
前記第1のドメインと前記第2のドメインとの間および/または前記第2のドメインと前記第3のドメインとの間に配置され、セリンおよびアルギニンを含まない可撓性リンカーをコード
細胞膜に固定され細胞表面上に外来ペプチドを提示することができる融合タンパク質をコードする、核酸分子。
【請求項19】
好ましくは発現制御配列と作動可能に連結している、請求項18に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項20】
(i)請求項7もしくは18に記載の核酸分子または請求項8もしくは19に記載のベクターと、
(ii)細胞または膜と
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の主題は、細胞外ループが、全体的にまたは部分的に、異なる組成のペプチド配列によって置き換えられているテトラスパニンタンパク質に基づく融合タンパク質に関し、その製造および輸送媒体としての使用にも関する。開示される融合タンパク質は、細胞膜に固定され、細胞表面上にこれらのタンパク質と融合した外来ペプチドを提示するために使用され得る。
【背景技術】
【0002】
細胞の構造計画およびその生理学は遺伝子によってコードされる。遺伝子はDNAからなり、ゲノム中または染色体外要素上のいずれかに見られる。遺伝子は、RNAおよびタンパク質などの一次および二次遺伝子産物を発現する。これらの遺伝子産物は種々の方法で酵素的にさらに修飾され得る。
【0003】
遺伝子産物は主にサイトゾル中に見られる。タンパク質は、一部はコンパートメントの細胞内膜、および外細胞膜、およびおそらくは細胞壁にも見られる。真核生物の場合、タンパク質およびRNA前駆体は細胞核中に見られる。タンパク質はサイトゾルの細胞内膜中で選別され、細胞コンパートメントに分配されるが、分泌によって細胞から運び出されることもある。小胞体(ER)からの輸送タンパク質はさらに、輸送中にゴルジ体でグリコシル化され得る。
【0004】
特定のタンパク質種である膜固定タンパク質は、活発に細胞膜に向けられ、そこで自身を膜に垂直に固定する。しかしながら、対照的に、膜固定タンパク質は、膜流動性により、水平に膜内を柔軟に移動することができる。いくつかの膜タンパク質は他の異種膜タンパク質と集塊して複合体化する。よって、ヒトタンパク質の80%は会合したタンパク質複合体で作用する1。ある種は膜で協同的に互いと相互作用し、そこで安定な構造を形成する。
【0005】
細胞が環境と相互作用することを可能にする複数のシグナル過程は、膜タンパク質を介して制御される。外分泌過程に関連した細胞膜を介したタンパク質の膜輸送も同様に可能である。
【0006】
エピトープの提示について、細胞内の潜在的な侵入病原体を同定するために、免疫系は細胞上のMHC膜タンパク質を使用する。これらの生理学的過程は、大部分は細胞で十分確立されており、関与するタンパク質はこの機能のために極めて特異的に、すなわち、大部分は一定の機能に向けて極めて特異的に進化している。そのため、これらの機能に干渉するさらなる人工アミノ酸配列を予測することができる。
【0007】
テトラスパニンは、哺乳動物において33種類のメンバーが存在するタンパク質スーパーファミリーに属する。テトラスパニンの主な特徴は、呼称ももたらしているその4つの膜貫通ドメインTM1〜4である。テトラスパニンはさらにSELおよびLELとしても知られている小型および大型細胞外タンパク質ループ(小型および大型細胞外ループ)を含む。LELは高度に保存されたCCGアミノ酸モチーフを含む。さらに、細胞内タンパク質ループ(小型細胞内ループ、SIL)がその中に含まれる。N末端およびC末端は細胞内に局在する3436。横のタンパク質−タンパク質相互作用(PPI)を用いて、テトラスパニンは、テトラスパニンの豊富なマイクロドメイン(tetraspanin−enriched microdomain)(TEM)に自身を組織化する37、38
【0008】
異種組成の外来タンパク質およびエピトープを意図した方法で、例えば、哺乳動物細胞、例えば、ヒト細胞の表面に輸送し、これらをそこで提示するために、特に適した担体タンパク質(担体)が必要とされる。膜を介した高い転移効率での細胞表面へのタンパク質輸送を保証するために、担体タンパク質は十分な起電力を有し、膜電位を使用することができなければならない28。従来から、「ディスプレイ」システム、一般的に、遺伝子組換えすることによって外来タンパク質を提示するために担体タンパク質として使用することができる膜固定タンパク質が公知であった。最も周知のタンパク質ディスプレイシステムの1つがファージディスプレイである。これは、細菌系で糸状バクテリオファージの表面上へのタンパク質構成要素の提示に使用される912。しかしながら、従来から、グラム陽性およびグラム陰性菌の場合には、異種タンパク質もファージディスプレイを使用することなく最外膜上にうまく提示されてきた。これについては、タンパク質を細菌細胞の最外膜に向けるために、細菌細胞内の異なる輸送機序が利用された1320。タンパク質折りたたみおよび組換えタンパク質の修飾、例えば、N−グリコシル化などを確保するために、ディスプレイシステムのさらなる開発は酵母および昆虫細胞などの真核細胞系に焦点を当てた2129。哺乳動物系で使用するための初期のディスプレイシステムも既に開発されている3033
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Proteomics 7, 2833-2842, (2007).
【非特許文献2】Cell 95, 883-889 (1998).
【非特許文献3】Annu Rev Immunol 23, 101-125, (2005).
【非特許文献4】Annu Rev Biochem 75, 707-712, (2006).
【非特許文献5】Molecular BioSystems 3, 705-713, (2007).
【非特許文献6】Molecular cell biology. (W.H. Freeman, 2013).
【非特許文献7】Biochim Biophys Acta 1838, 1451-1466, (2014).
【非特許文献8】Anal Chem 85, 2558-2568, (2013).
【非特許文献9】Science 228, 1315-1317 (1985).
【非特許文献10】Eur J Biochem 226, 53-58 (1994).
【非特許文献11】Protein Sci 4, 1108-1117, (1995).
【非特許文献12】Chem Rev 105, 4056-4072, (2005).
【非特許文献13】Biotechnol Bioeng 79, 496-503, (2002).
【非特許文献14】Appl Environ Microbiol 68, 525-531 (2002).
【非特許文献15】Trends Biotechnol 21, 45-52 (2003).
【非特許文献16】Microb Cell Fact 5, (2006).
【非特許文献17】Appl Environ Microbiol 74, 4359-4365, (2008).
【非特許文献18】Trends Biotechnol 29, 79-86, (2011).
【非特許文献19】Crit Rev Microbiol, doi: 10.3109/1040841 X.2013.804032 (2013).
【非特許文献20】Han, M.-J. & Lee, S. H. An efficient bactenal surface display system based on a novel outer membrane anchoring element from the Escherichia coli protein Yia T. (2014).
【非特許文献21】Biotechnology (N Y) 13, 1079-1084 (1995).
【非特許文献22】BioTechniques 22, 730-735 (1997).
【非特許文献23】Yeast 19, 1153-1163, (2002).
【非特許文献24】J Gen Virol 84, 2023-2031 (2003).
【非特許文献25】Nat Biotechnol 22, 1399-1408, (2004).
【非特許文献26】Mol Ther 9, 282-291, (2004).
【非特許文献27】BioTechniques 41, 266, 268, 270 passim (2006).
【非特許文献28】Glycobiology 16, 91R-101R, (2006).
【非特許文献29】Biotechnol Lett 29, 1561-1566, (2007).
【非特許文献30】J Immunol Methods 193, 17-27 (1996).
【非特許文献31】J Mol Recognit 17, 316-322, (2004).
【非特許文献32】MAbs 2, 508-518, (2010).
【非特許文献33】Biochem Biophys Res Commun 441 , 59-64, (2013).
【非特許文献34】Trends Biochem Sci 28, 106-112 (2003).
【非特許文献35】BMC Struct Biol 5, 11, (2005).
【非特許文献36】Nat Rev Drug Discov 7, 747-758, (2008).
【非特許文献37】Nat Rev Immunol 5, 136-148, (2005).
【非特許文献38】Eur J Immunol 26, 2657-2665, (1996).
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、形質膜に任意の所望の異種ペプチドを固定し、細胞表面上にこれらを提示するための、この先行技術から出発する新たな可能性の提供であった。驚くべきことに、テトラスパニンが媒体として見事に適しており、細胞表面上に固定および提示するために自身と融合した外来ペプチドを極めて効率的に輸送する能力を有することがここで分かった。テトラスパニンは、外来ペプチドを、小胞体およびゴルジ体を介して哺乳動物細胞の形質膜に極めて効率的に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明による融合体および融合タンパク質の局在の概略図である。
図1B】本発明による融合体および融合タンパク質の局在の概略図である。
図2A】代表的なtANCHORベクター系の概略構造を示す図である。
図2B】CD63のコード野生型(WT)配列(配列番号17)からのCD63Δ LEL配列(配列番号3)の誘導を示す図である。
図2C】代表的なベクターpAE211_CMV−P−CD63ΔLELにおけるCD63ΔLELと組み合わせた本発明による種々のリンカー変異体の例を示す図である。
図3A】cLSMによるHEK293T細胞の表面上の融合タンパク質の局在を示す図である。
図3B】cLSMによるHEK293T細胞の表面上の融合タンパク質の局在を示す図である。
図3C】cLSMによるHEK293T細胞の表面上の融合タンパク質の局在を示す図である。
図4】エピトープの細胞外配向調査の概略図である。
図5A】HEK293T細胞の表面上の金粒子(10nm)のSEM像を示す図である。
図5B】HEK293T細胞の表面上の金粒子(10nm)のSEM像を示す図である。
図5C】HEK293T細胞の表面上の金粒子(10nm)のSEM像を示す図である。
図5D】HEK293T細胞の表面上の金粒子(10nm)のSEM像を示す図である。
図6】作製したtANCHORベクターによりトランスフェクトされたHEK293T細胞のウエスタンブロット解析を示す図である。
図7】V5−6xHisリンカーを含む内部融合部位によるタンパク質輸送に関してさらなるテトラスパニンを調査するための構築物の概略図である。
図8】HEK293T細胞の表面上の融合タンパク質の局在を示す図である。
図9】抗体を検出するためのtANCHORシステムの適用を示す図である。
図10】低セリンおよび低アルギニンリンカーの使用による効率増加を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
テトラスパニンファミリーのタンパク質は、野生型の膜貫通ドメインTM3とTM4との間にタンパク質ループ(大型細胞外ループ、LEL)を有する。驚くべきことに、この細胞外ループは、全体的にまたは部分的に、異なる組成のペプチド配列によって置き換えられていてもよく、よって、挿入された異種ペプチドを、テトラスパニン担体タンパク質を介して膜上に輸送し、膜にこれを固定することが可能であることが本発明の枠組みの中で発見された。
【0013】
本発明は、細胞膜およびそこでの固定を介した特異的輸送媒体の機能と合わせたモジュラータンパク質発現系の柔軟で可変的な配列調節のための均一な分子構造の単純性に基づく。
【0014】
提供されるベクター系により、単純なクローニング戦略(例えば、個々のエピトープを付加する、およびタンパク質ライブラリー全体を作製する)によってタンパク質構成要素を柔軟に置き換えるまたは付加することが可能になる。
【0015】
(一過的にまたは安定にゲノムに組み込まれた)本発明によるテトラスパニン融合構築物の発現後、膜内の融合タンパク質の局在は、ほぼ定量的である。テトラスパニンタンパク質は膜上に極めて効率的に移行する。既に知られている系はこの形態での移行を達成するものではない(例えば、EGFR受容体)。
【0016】
本発明によるテトラスパニン融合タンパク質の発現は比較的迅速に、通常は一晩で起こる一方で、他の輸送系の発現は通常は2日間にわたって起こる。
【0017】
それとは別に、サイトゾル分解産物の蓄積が見られないので、融合構築物の安定性およびその長寿命は、7回膜貫通ドメインを有する公知のタンパク質と比べて優れている(組換えGPCR受容体は不安定なことが知られている)。
【0018】
4回膜貫通ドメインのみを有する本発明による系では、1つまたは複数のタンパク質を細胞表面上に安定的かついかなる問題もなく輸送し、これらのタンパク質をそこで例えば、小分子、さらなるタンパク質(抗体など)、および他のタンパク質(例えば、触媒酵素)、DNA、RNAおよび糖等との相互作用実験における固定対として固定および固定化することが可能である。
【0019】
ここで、膜上の融合タンパク質の反応物質が周囲溶液から膜上のタンパク質およびグリコシル残基との特異的反応に柔軟に入ることができる。
【0020】
これらの反応の必要条件は、タンパク質の機能的コンフォメーションである。これは、本発明による融合タンパク質に関する限りは完全に保証される。
【0021】
そのため、本発明の第1の主題は、第1のドメイン(i)と、第2のドメイン(ii)と、第3のドメイン(iii)とを含む融合タンパク質であって、第2のドメインは第1のドメインと第3のドメインとの間に配置され、
(i)は膜貫通ドメイン1(TM1)、小型細胞外ループ(SEL)、膜貫通ドメイン2(TM2)、小型細胞内ループ(SIL)および膜貫通ドメイン3(TM3)を含むテトラスパニンの部分配列または全長にわたって少なくとも70%の配列同一性を有するこれと相同な配列を含み、
(ii)はテトラスパニンの大型細胞外ループ(LEL)に関して全長にわたって70%未満の配列同一性を有する所定のアミノ酸配列を有するペプチドを含み、
(iii)は膜貫通ドメイン4(TM4)を含むテトラスパニンの部分配列または全長にわたって少なくとも70%の配列同一性を有するこれと相同な配列を含む、
融合タンパク質である。
【0022】
本発明で、配列TM1〜3およびTM4が膜上への融合タンパク質の固定を担うことが分かった。そのため、本発明による融合タンパク質は、第1に、膜貫通ドメインTM1〜TM3を有するテトラスパニンの部分配列を含む第1のドメイン(i)、および第2に、膜貫通ドメインTM4を有するテトラスパニンの部分配列を含むドメイン(iii)あるいはそれらと相同な配列を含む。
【0023】
本発明の意味において、「テトラスパニン」という用語は、テトラスパニンファミリー、より具体的には33種のヒトテトラスパニンの任意の所望のタンパク質を記載するものである。テトラスパニンは、膜内で互いとの特異的相互作用に入ることができる。この挙動は、膜上への輸送およびそこでの固定に好都合である。この効果を、ドメイン(ii)の外来ペプチドを膜上に有効に輸送し、これを固定するためにも、本発明による融合タンパク質に使用することができる。本発明の意味におけるテトラスパニンの好ましい例は、CD63、CD9、CD82、CD81、CD151およびCD53(DNA配列およびタンパク質配列については配列記録参照)である。特に好ましくは、本発明による融合タンパク質に含まれる部分配列がテトラスパニンCD63(DNAおよびタンパク質配列については配列記録参照)に由来する。
【0024】
基本的な原理として、ドメイン(i)に第1のテトラスパニンの部分配列を選択し、ドメイン(iii)に別のテトラスパニンの部分配列を選択することが可能である。しかしながら、好ましくは、全ての部分配列が同じテトラスパニン、例えばCD63、CD9、CD82、CD81、CD151またはCD53、好ましくはCD63(DNAおよびタンパク質配列については配列記録参照)からのものである。
【0025】
ドメイン(i)は、好ましくはテトラスパニンの膜貫通ドメインTM1、小型細胞外ループ(SEL)、膜貫通ドメインTM2、小型細胞内ループ(SIL)および膜貫通ドメインTM3を含み、種々の膜貫通ドメインおよびループは、いかなる追加の異種配列セグメントも間に挿入されることなく、直接互いに続いている。特に好ましくは、部分配列が、例えば、単一のまたは複数のアミノ酸の置換、挿入または欠失の形態のいかなる逸脱もなしに、テトラスパニンの野生型に相当する。しかしながら、野生型テトラスパニンに対して配列の全長にわたって少なくとも70%の配列同一性を有する限り、ドメイン(i)にテトラスパニンの修飾部分配列を使用することが原則として可能である。より好ましくは、配列同一性が、ドメイン(i)に含まれるテトラスパニンの部分配列の全長にわたって少なくとも80%、85%、90%、95%または99%である。
【0026】
本発明の特に好ましい実施形態では、第1のドメイン(i)が、テトラスパニンの上記部分配列または全長にわたって少なくとも70%(より好ましくは少なくとも80%、85%、90%、95%もしくは99%)の配列同一性を有するこれと相同な配列からなる。
【0027】
ドメイン(iii)は、テトラスパニンの膜貫通ドメインTM4を含むテトラスパニンの部分配列または全長にわたって少なくとも70%の配列同一性を有するこれと相同な配列を含む。より好ましくは、野生型テトラスパニンの部分配列との配列同一性が、全長にわたって少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、90%、95%または99%である。特に好ましい実施形態では、ドメイン(iii)が、テトラスパニンの上記部分配列またはこれと相同な配列からなる。
【0028】
ドメイン(ii)は所定のアミノ酸配列を有するペプチドを含む。本明細書中では、これを「外来ペプチド」または「外来タンパク質」とも呼ぶ。外来ペプチドのアミノ酸配列は、野生型テトラスパニン、より具体的にはドメイン(i)および(iii)のテトラスパニン(複数可)の大型細胞外ループ(LEL)の配列とは異なる。野生型テトラスパニンのLELと比較すると、全長にわたる配列同一性は70%未満、好ましくは50%未満、より好ましくは40%未満または30%未満である。
【0029】
ドメイン(ii)のアミノ酸配列は基本的にランダムに選択され得る。外来ペプチドまたはドメイン(ii)の配列にかかわりなく、本発明による融合タンパク質は、細胞、より具体的には哺乳動物細胞(例えば、HEK293T−ヒト(Homo sapiens))の表面上に固定および提示され得る。
【0030】
本発明の意味において、「ペプチド」とはペプチド結合を介して一緒に連結されている少なくとも2個のアミノ酸の組合せを表す。ペプチドの長さは基本的には限定されない。最大10個のアミノ酸を含むオリゴペプチド、10個超のアミノ酸を含むポリペプチドおよび100個超のアミノ酸を含むマクロペプチドも全て含まれる。好ましい実施形態では、ペプチドの大きさが100kDa未満、好ましくは50kDa未満または30kDa未満、例えば10〜30kDaである。
【0031】
本発明の意味において、「アミノ酸」という用語は、好ましくは各場合でL−異性体である20種の天然起源のペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質に見られるアミノ酸を表す。しかしながら、本発明によると、この用語は、アミノ酸の類似体ならびにアミノ酸のD−異性体およびその類似体も含む。
【0032】
本発明の意味において、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語はそれぞれ互換的に使用される。好ましい実施形態では、ペプチドが少なくとも50個のアミノ酸を含むタンパク質である。これについては、タンパク質が、例えば、タンパク質の所望の機能に要求される所定の折りたたみを採用することが好ましい。
【0033】
ドメイン(ii)では、所定のアミノ酸配列を有するペプチドが、例えば、抗原または抗原のエピトープを含むことができる。ここで、「エピトープ」とは、抗体またはT細胞受容体が特異的に結合する抗原の領域を表す。単一抗原は1つまたは複数のエピトープを含むことができる。本発明の一実施形態では、所定のアミノ酸配列を有するペプチドが、リンカーによって一緒に連結されている複数のエピトープを含む。例えば、これらのエピトープは抗原の複数のエピトープであり得るだろう。エピトープの例には、がんエピトープ、HIVエピトープ(例えば、HIV−1のgp41)がある。これらの例には、V5−6xHis(配列番号35、36)または2F5−4E10(配列番号37、38)がある。
【0034】
本発明のさらなる実施形態では、ドメイン(ii)の所定のアミノ酸配列を有するペプチドが、所望の機能を有するタンパク質、例えば、酵素(例えば、プロテアーゼなど)を含む。
【0035】
所定のアミノ酸配列を有するペプチドに加えて、第2のドメイン(ii)は、テトラスパニンのLELの1つもしくは複数の部分配列または全長にわたって少なくとも70%の配列同一性を有するこれと相同な配列を含むことができる。好ましくは、配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%である。テトラスパニンのLELの部分配列は、所定のアミノ酸配列を有するペプチドに対してC末端および/またはN末端で配置され得る。好ましくは、ドメイン(ii)のLELの部分配列が、ドメイン(i)および(iii)の配列セグメントと同じテトラスパニンに由来する。
【0036】
本明細書で使用される「相同」は、2つのポリペプチド、分子間または2つの核酸間の配列類似性を記載するものである。2つの比較される配列の両方のある位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占められている場合、この位置の対応する分子は相同である。2つの配列の間の相同性の割合は、2つの配列によって共有される一致または相同な位置の数÷比較される位置の数×100の関数である。例えば、2つの配列中の10個の位置の中の6個が一致しているまたは相同である場合、2つの配列は60%相同である。一般的に、2つの配列を、最大限可能な相同性が得られるよう整列させて比較を行う。このような整列は、例えば、Niedelmanら、J.Mol.Biol.48:443〜453、1970の方法を用いて提供することができ、コンピュータプログラムによって簡便に実施することができる。
【0037】
相同配列は、同一のまたは類似のアミノ酸残基を共有し、類似の残基とは整列された基準配列中の対応するアミノ酸残基の保存的置換またはその許容される点突然変異である。この点について、基準配列中の残基の「保存的置換」は、対応する基準残基と物理的または機能的に類似である、例えば、類似の大きさ、形状、電荷、化学的特性(共有結合または水素結合を形成する能力を含む)などを有する置換である。特に好ましい保存的置換は、Dayhoffら、「Atlas of Protein Sequence and Structure」、5:補遺3、第22章:354〜352、Nat.Biomed.Res.Foundation、Washington,D.C.、1978の許容される点突然変異について定義された基準を満たすものである。
【0038】
本発明による融合タンパク質のドメインは、各場合で、(i)−(ii)−(iii)の順に配置される。ここで、「融合」という用語は、個々のペプチド骨格を介したドメインの共線カップリングを指す。
【0039】
ドメイン(i)、(ii)および(iii)は、場合により直接または可撓性リンカーを介して結合することができる。第1の実施形態では、ドメイン(ii)が直接ドメイン(i)に隣接する。あるいはまたはさらに、ドメイン(iii)が直接ドメイン(ii)に隣接する。
【0040】
さらなる実施形態では、可撓性リンカーが第1のドメインと第2のドメインとの間および/または第2のドメインと第3のドメインとの間に配置される。存在するリンカーは同じであっても異なっていてもよい。本発明による融合タンパク質に使用するための代表的なリンカーは、例えば、グリシンポリマー(G)n(nは少なくとも1の整数である)、グリシン−アラニンポリマーおよび当業者に公知の他の可撓性リンカーを含む。本質的にセリンを含まないおよびアルギニンを含まないリンカーが好ましく;セリンを含まないおよびアルギニンを含まないリンカーが特に好ましい。極めて特に好ましいのはリンカーLQEFDIGGGG(配列番号41、42に相当する)である。さらなるリンカーは図2Cに記載される(配列番号39、40も参照)。
【0041】
ドメイン(ii)は、酵素で分離され得る1つまたは複数の認識配列をさらに含むことができる。例には、特異的プロテアーゼ、ヌクレアーゼまたはエンドグリコシダーゼの認識部位がある。あるいは、認識部位は、特異的ヒドロラーゼ酵素、例えば、ホスファターゼ、グリコシダーゼ、アミダーゼまたはエステラーゼの基質認識部位を含むことができる。「プロテアーゼ認識配列」という用語は、本明細書において、酵素的に分離することができる任意の認識配列に略式で使用される。これらの配列は、所定のアミノ酸配列を有するペプチドにC末端および/N末端で配置され得る。特定の好ましい実施形態では、プロテアーゼ認識配列が、直接所定のアミノ酸配列を有するペプチドに隣接する。基本的な原理として、任意の所望のプロテアーゼ認識配列がこれに適している。所定のアミノ酸配列を有するペプチドとは別に、第2のドメイン(ii)がテトラスパニンのLELの1つまたは複数の部分配列も含む場合、各場合で、LEL部分配列と所定のアミノ酸配列を有するペプチドのCまたはN末端との間にプロテアーゼ認識配列を挿入することが好ましい。
【0042】
さらなる実施形態では、本発明による融合タンパク質が、融合タンパク質のN末端に第4のドメイン(iv)および/またはC末端に第5のドメイン(v)をさらに含むことができる。ドメイン(iv)および(v)は、各場合で、直接または上に定義される可撓性リンカーを介して結合され得る。例えば、ドメイン(iv)は、ドメイン(i)のN末端に直接または可撓性リンカーを介して結合され得る。ドメイン(v)は、ドメイン(iii)のC末端に直接または可撓性リンカーを介して結合され得る。さらに、上に定義されるプロテアーゼ認識配列をドメイン(iv)と(i)との間および/またはドメイン(iii)と(v)との間、ならびに存在する場合には、リンカーとドメイン(i)、(iii)、(iv)および(v)の1つまたは複数との間に配置することが可能である。
【0043】
細胞の形質膜中のテトラスパニンの固定に関して、テトラスパニンのC末端およびN末端は細胞質側にある。同じことが本発明による融合タンパク質の膜固定にも同様に当てはまる。
【0044】
本発明による融合タンパク質の第4のドメイン(iv)および第5のドメイン(v)は、例えば、マーカー基またはタグとして知られているものを含むように選択され得る。ここで、「タグ」とは、標識および同定のための短いペプチド配列、例えばタンパク質タグ、例えば、フラッシュタグまたは蛍光レポータータンパク質mCherryを表す。
【0045】
本発明による融合タンパク質は少なくともドメイン(ii)のために野生型テトラスパニンとは異なるが、それにもかかわらず、野生型テトラスパニンと同様に正しく折りたたむことが分かった。これは、ドメイン(ii)で蛍光タンパク質CFPおよびYFPの例を使用して証明された(図3B参照)。膜貫通ドメインTM3とTM4との間のエピトープを走査電子顕微鏡法を利用して細胞外配向で細胞表面上に検出することができる(図4)。テトラスパニンのTM3とTM4との間のエピトープの導入ならびに細胞外配向で細胞表面への輸送及びN末端およびC末端上のエピトープが、例えば、走査電子顕微鏡法によってCD63について証明された(図5A図5D)。蛍光タンパク質のタンパク質発現の成功をウエスタンブロット解析によってさらに確認した。ここでは、FLAGおよびmCherryエピトープを介して、それぞれの融合タンパク質について特異的バンドを検出することができた(図6)。細胞表面上のさらなるテトラスパニン(CD9、CD81、CD82およびCD151)についての局在も同様に示された(図8)。さらに、低セリンおよび低アルギニンリンカーの使用によって、細胞表面上の局在化の効率が増加することが示された(図10)。
【0046】
本発明のさらなる主題は、本発明による融合タンパク質をコードする核酸分子である。本発明による核酸分子は、上記融合タンパク質のためのコード配列セグメントを含む、またはこの配列セグメントからなる。この配列セグメントは、本明細書において、「融合遺伝子」とも記載される。特に好ましくは、本発明による核酸分子は単離された形態で存在する。
【0047】
本発明の意味における「核酸分子」は、天然起源の核酸塩基、塩基類似体、塩基誘導体またはこれらの組合せ形態の配列に関する。この用語は、より具体的にはDNAおよびRNAならびに例えば、cDNAおよびmRNAなどのこれらに由来する核酸も含む。本発明の意味において、PNA(ペプチド核酸)、LNA(ロックド核酸)、PSNA(ホスホチオエート核酸(phosphothioate nucleic acid))などの核酸類似体も核酸の中に含まれる。これらの核酸類似体は、原則として、天然起源の核酸塩基を有することができるが、これらの塩基は例えば、DNAまたはRNAとは異なる方法で一緒に連結している。例えば、ヒポキサンチン、2,5−ジアミノプリン(diaminoporin)および/またはメチルシトシンなどの核酸誘導体ならびに修飾された、より具体的には標識された核酸を有する核酸も核酸の中に含まれる。塩基誘導体とは別に、これらの核酸誘導体は、原則として、天然起源の核酸塩基も有することができる。標識を塩基および/または骨格に導入することができる。連結はDNAまたはRNAまたは核酸類似体に対応し得る。核酸は二本鎖または一本鎖の、直鎖、分岐または環状であり得る。
【0048】
本発明はさらに、上記の核酸分子を含むベクターに関する。好ましくは、核酸分子は発現制御配列と作動可能に連結している。
【0049】
本発明の意味における「発現制御配列」という用語は、転写レベルで発現を調節する要素、例えば、エンハンサーまたはサイレンサーなどと、転写後レベルで発現を調節する要素(例えば、スプライシング、核外輸送またはmRNA安定性)の両方を含む。この用語は、転写レベルと転写後レベルで発現を調節する複数の要素、および転写調節要素と転写後調節要素の組合せも含む。発現増加および発現制御配列の単離をもたらす発現制御配列を同定するための技術および助けは、当業者におそらく周知の日常的技術である。発現制御配列は、より具体的にはプロモーター、好ましくは真核生物プロモーター、例えばCMVまたはSV40プロモーターなど;原核生物プロモーターまたはファージ特異的プロモーター、例えばSP6またはT7プロモーターなどであり得る。特に好ましくは、プロモーターはCMVプロモーターである。ベクターは、終止および/または核酸分子のポリアデニル化のための配列セグメントをさらに含むことができる。
【0050】
本発明によるベクターは、さらに好ましくは、選択マーカー遺伝子、すなわち、選択マーカーをコードする配列セグメントを含む。選択マーカーの例には抗生物質耐性または栄養素要求性マーカーがある。好ましくは、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素などの増幅可能な選択マーカー遺伝子を使用する。場合により、本発明によるベクターはさらに複製起点を含むことができる。
【0051】
本出願の意味において、「作動可能に連結している」という用語は、意図した機能を行うことができるように配置された2つ以上の核酸配列または部分配列の連結を記載するものである。例えば、プロモーター/エンハンサーがシス位で連結した遺伝子配列の転写を制御または調節することができる場合、プロモーター/エンハンサーはコードされる遺伝子配列と機能的に連結している。一般的に、必ずしもそうではないが、機能的に連結した配列は、近接して位置しており、2つのコード遺伝子配列が連結している場合または分泌シグナル配列の場合、同じリーディングフレームに位置している。機能的に連結したプロモーターは一般的にコード遺伝子配列の上流に位置するが、必ずしも近接している必要はない。同様に、エンハンサーも遺伝子配列の転写を促進する限り、近接して存在する必要はない。この目的のために、エンハンサーはおそらくはいくらかの距離離れて、遺伝子配列の上流と下流の両方に存在することができるだろう。ポリアデニル化部位は、転写がコード配列を介してポリアデニル化シグナルまで進行するように遺伝子配列の3’末端に位置する場合、遺伝子配列と機能的に連結している。連結は、例えば、PCR技術によって、適当な制限部位でのライゲーションによってまたはスプライシングによって、通常の組換え方法により起こり得る。適当な制限部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドリンカーまたはアダプターをそれ自体公知の様式で使用することができる。好ましくは、機能的連結がイントロン配列を介して起こらない。
【0052】
本発明によるベクターは、好ましくは少なくとも1個の(宿主)細胞、より具体的にはこの細胞中でのベクターの複製および/またはこの細胞中でのタンパク質もしくはペプチドの発現に適している。複製は、原核細胞および/または真核細胞で起こり得る。発現は好ましくは真核細胞で起こる。ベクターはプラスミドであり得る。
【0053】
先行技術による真核細胞発現のためのベクター構築物は、概して、できる限り細胞型特異的でない強力な真核生物プロモーター(例えば、CMVまたはSV40プロモーター)と、転写終止およびポリアデニル化を担う配列部分(例えば、SV40終止−ポリA)とを有する。これらの2つの要素の間に位置するのが、開始コドンの周りのいくぶん明確に定義されたコザック配列が頭についた、発現されるCDS(コード配列)である。本発明によるベクター構築物の場合、発現されるCDSはテトラスパニンスーパーファミリーの遺伝子である。ここで、膜上への所望の輸送能力を提供するこの遺伝子スーパーファミリーの遺伝子を有する全ての生物種の全てのテトラスパニン遺伝子が本発明によるものである。しかしながら、本発明による融合遺伝子は、内部およびおそらくは末端融合物として少なくとも1つの人工的に導入された異種DNA配列を有することができることを特徴とする。末端CDS融合物は、融合タンパク質またはペプチドをテトラスパニン遺伝子に対して5’近位および/または3’遠位にコードする異種DNA配列である。本発明によると、第3(TM3)と第4(TM4)の膜貫通ドメインの間に、内部コード異種DNA配列が導入される。テトラスパニンの膜貫通ドメインは、中でも、膜への異種コード配列の輸送、膜を通した輸送およびそこでの固定を担う。
【0054】
分子生物学に習熟した当業者であれば、おそらく関連文献39の助けを借りて、機能的DNA融合構築物を作製することができるだろう。
【0055】
本発明によるさらに進化したベクター構築物をここで特に強調すべきである。一般的な真核生物プロモーターの代わりに、これらのベクター構築物は、細菌およびファージ特異的プロモーターならびに細胞分化に依存した発現を可能にする真核細胞型特異的および器官特異的プロモーターも有する。用途にかかわらず、本発明による遺伝子構築物を使用するために、このようなプロモーター型を使用することができる。インビトロまたはおそらくはインビボでmRNA分子を極めて効率的に作製するために、本発明によるさらなるベクター実施形態は、例えば、ファージのRNAポリメラーゼプロモーターを有することもできる。例には、インビトロでmRNA分子を産生するためのSP6またはT7特異的プロモーターなどのファージプロモーターがあるので、融合遺伝子mRNAをおそらく治療目的および用途のために供給することができる。この変異体は、ゲノム中での核酸の組換えを防ぐと考えられているので、調節因子の医薬形態として歓迎されている。
【0056】
細菌または酵母でのテトラスパニン遺伝子誘導体の発現を使用して融合タンパク質を単離し、人工膜に使用することができる。しかしながら、真核細胞分化特異的および細胞特異的(例えば、粘膜または筋細胞での)発現を使用してDNAワクチンを細胞特異的に発現させることもできる(例えば、欧州特許第1390490B1号参照)。
【0057】
治療剤の認可手続きでは、このような高度に特異的な発現特性を必須条件にする規制が確立されている。
【0058】
さらに、本発明によるベクター系は、単一ベクター構築物によって同一細胞内での複数の融合タンパク質の発現を可能にする特異的な設計を有する(特許出願ドイツ特許第102013006487A9号参照)。この設計により、さらなる要素を単純化された様式で追加することができる。
【0059】
本発明の主題はまた、上に定義されるが、所定のアミノ酸配列を有するペプチドのコード配列の代わりに、制限エンドヌクレアーゼの認識配列を介して所定のアミノ酸配列を有する任意の所望のペプチドをコードする遺伝子のクローニングを可能にするマルチクローニングサイトのみが存在する、融合タンパク質をコードするセグメントを有する核酸およびベクターに関する。さらに、マルチクローニングサイトは、N末端および/またはC末端ドメイン(iv)および(v)に関して5’位および/または3’位に存在することができる。
【0060】
そのため、本発明の一態様は、第1の配列セグメント(i)と、第2の配列セグメント(ii)と、第3の配列セグメント(iii)とを含む核酸分子であって、第2の配列セグメントは第1の配列セグメントと第3の配列セグメントとの間に配置され、
(i)は膜貫通ドメイン1(TM1)、小型細胞外ループ(SEL)、膜貫通ドメイン2(TM2)、小型細胞内ループ(SIL)および膜貫通ドメイン3(TM3)を含むテトラスパニンの部分配列、または全長にわたって少なくとも70%の配列同一性を有するこれと相同な配列をコードし、
(ii)はマルチクローニングサイトを含み、
(iii)は膜貫通ドメイン4(TM4)を含むテトラスパニンの部分配列または全長にわたって少なくとも70%の配列同一性を有するこれと相同な配列をコードする、
核酸分子に関する。
【0061】
ここで、配列セグメント(i)〜(iii)は、好ましくは5’から3’に配置される。「マルチクローニングサイト」は、制限エンドヌクレアーゼのための、一方が他方のすぐ後ろにある複数の制限部位を含む。マルチクローニングサイトは、より具体的には核酸分子の組込みに適しており、リーディングフレームに組み込まれた核酸分子が、提示されるべきペプチドを第1の配列セグメント(i)および第3の配列セグメント(iii)と共にコードする。ペプチドは、好ましくはテトラスパニンの大型細胞外ループ(LEL)に対して、全長にわたって70%未満の配列同一性を有する所定のアミノ酸配列を含む。
【0062】
本発明はさらに、好ましくは発現制御配列と作動可能に連結している、上記核酸分子を含むベクターに関する。
【0063】
先行技術では、ほとんどの様々な制限エンドヌクレアーゼおよびここで関連する制限エンドヌクレアーゼについても多数の認識配列が知られている。好ましくは、認識配列としての少なくとも6個のヌクレオチドからなる配列が使用される。適当な同定配列のリストは、例えば、Sambrookら(1989)に見出すことができる。
【0064】
マルチクローニングサイトを有する本発明によるベクターの特異的配列要素は、テトラスパニン遺伝子(例えば、CD63など)自体の対応する末端および内部の、機能的に許容される位置への異種DNA配列の取込みに関する。よって、何回も、新たなエピトープCDSを「特有の」、すなわち、個々の制限部位に挿入することができ、ならびに種々の遺伝子および遺伝子フラグメントを既存のベクター構築物へサイクル反応中に相加的に挿入することができる。例を本発明によるベクターpAE211によって図2A、配列番号1に提供する。制限部位は膜貫通ドメインTM3とTM4との間の位置に位置している。この位置については、これが膜輸送の機能に干渉しないので、異種ペプチドをコードする異種DNA配列との融合物に特に適していることが実験的に示されている。この部位で、細胞培養物中でのテトラスパニンタンパク質の形質膜へのタンパク質輸送に有意に干渉することなく、その配列が可変的であり得る膜上に突出するタンパク質ループが位置している。
【0065】
N末端融合タンパク質を作製するための5末端CDS融合物を、コザック配列が開始領域で再生されるように、CD63遺伝子の5’領域中の2つのNcoIによって導入することができる。このことはユニークである。
【0066】
C末端タンパク質融合物をもたらす可能な3’末端CDS融合要素は、構築物中でNdeIおよびBclIのための特異的末端を生じるIIS型制限エンドヌクレアーゼBsaIによって挿入される。これらの部位を使用しておそらく3’末端遺伝子融合要素を挿入することもできる。
【0067】
ベクター系の上記認識は例であり、記載される制限−ライゲーション方法とは別に、ベクターを修飾するための任意の他の方法または技術、例えば、インビボならびにインビトロでの適当な組換え系による系の配列調節なども等しく本発明に用いることができる。
【0068】
本発明のさらなる主題は、本発明による核酸分子または本発明によるベクターを含む細胞である。
【0069】
本発明による実施形態では、融合タンパク質および適当な遺伝子制御機能をコードする配列を含む核酸分子またはベクターがゲノムに安定に組み込まれる、あるいは細胞内の染色体外に存在し、そして本発明による融合タンパク質がそこで構成的または誘導的または抑制的に発現する。
【0070】
本発明の意味における細胞は、好ましくは真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞、例えばより具体的にはヒト細胞である。適当な哺乳動物細胞のさらなる例には、齧歯動物の細胞株(例えば、マウス、ラットおよびハムスター細胞など)、または類人猿細胞がある。本発明による核酸分子または本発明によるベクターを、それ自体公知の技術を利用して、細胞、より具体的には真核細胞に導入することができる。トランスフェクションの成功によって、形質転換、遺伝子組換え、組換えまたはトランスジェニック細胞が得られる。
【0071】
本発明による核酸分子または本発明によるベクターによる真核宿主細胞のトランスフェクションは、通常の方法(Sambrookら、1989;Ausubelら、1994)により生じる。適当なトランスフェクション方法は、例えば、リポソーム媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム共沈、電気穿孔、ポリカチオン(例えば、DEAE−デキストラン)媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、微量注入およびウイルス感染である。本発明によると、好ましくは、構築物が宿主細胞もしくは人工染色体/ミニ染色体のゲノムに組み込まれる、または宿主細胞のエピソームに安定した様式で含まれる安定なトランスフェクションを介して細胞が得られる。それぞれの宿主細胞中で異種遺伝子の最適なトランスフェクション頻度および発現を可能にするトランスフェクション方法がこれにとって好ましい。定義によって、導入される配列または導入される遺伝子が宿主細胞の内在性配列または内在性遺伝子と同一である場合でさえ、宿主細胞に導入される各配列または各遺伝子は、宿主細胞に対して「異種配列」または「異種遺伝子」と記載される。
【0072】
本発明による実施形態では、細胞が種々の細胞型のトランスジェニック細胞結合体の細胞であり得、本発明による融合遺伝子が異なる細胞分化状態でも発現する。これらの細胞を生体外で作製し、おそらくはその後、インビボで治療的に使用することができる。
【0073】
本発明によるさらなる実施形態では、細胞がトランスジェニック生物の細胞結合体の細胞であり、その細胞は生殖系列を経て多細胞系、好ましくは生命生物に発達する。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明による細胞をさらに、少なくとも1個のさらなる核酸分子または少なくとも1個のさらなる発現ベクターによって形質転換またはトランスフェクトした。さらなる核酸分子またはさらなる発現ベクターは、好ましくはさらなる所定のタンパク質をコードするセグメントを含む。さらなる核酸分子または発現ベクターも、一実施形態によると、同様に本発明による核酸分子または本発明による発現ベクターであることができ、この場合、別の所定のアミノ酸配列を有する別のペプチドをドメイン(ii)に選択した。別の実施形態では、さらなる核酸分子またはさらなる発現ベクターが酵素、例えばプロテアーゼをコードするセグメントを含む。このような細胞で、本発明による核酸分子およびさらなる核酸分子を発現する場合、所定のアミノ酸配列を有するドメイン(ii)のペプチドと、さらなるタンパク質の両方が膜表面上に提示される。例えば、ドメイン(ii)のペプチドにプロテアーゼ認識配列が隣接している場合、さらなる核酸分子を介して発現されたプロテアーゼがこれらの認識部位上で切断することができるので、ペプチドを放出することができるだろう。
【0075】
本発明によると、宿主細胞は、好ましくは無血清条件下、おそらくは動物タンパク質/ペプチドを含まない培地中で確立、順応および培養される。
【0076】
本発明のさらなる主題は、本発明による細胞から得られた膜調製物である。
【0077】
本発明の意味における膜調製物は、少なくとも単離された膜、より好ましくは単離された細胞膜、さらにより好ましくは単離された細胞形質膜および/または単離された他の細胞小器官の細胞膜を含む。本発明の意味における「膜」という用語は、少なくとも1種の脂質および場合により少なくとも1種のタンパク質を含む自己完結型システムを記載するものである。膜の脂質は通常、脂質二重膜を形成する。膜調製物は、好ましくは膜粒子、より好ましくは膜小胞を含む。
【0078】
膜調製物は、当業者に公知の方法によって、好ましくは細胞の溶解(細胞溶解物)によって、より好ましくは細胞の溶解ならびにその後の細胞膜の単離および場合により洗浄(単離および場合により洗浄された膜)によって、本発明による細胞から得ることができる。場合により、例えば、Triton X−100などの界面活性剤を使用して膜を可溶化することができる。この方法はさらに、細胞片を除去するためのステップを含むことができる。膜粒子の直径は1〜1000nm、好ましくは50〜500nm、より好ましくは75〜200nmの範囲内にあり得る。膜粒子の少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%が、本明細書に記載される範囲の1つの直径を有する。
【0079】
本発明による膜調製物は、本発明による核酸分子または本発明によるベクターを含む本発明による細胞から得られる。細胞内で、本発明による融合タンパク質が核酸分子またはベクターによって発現される。そのため、本発明による膜調製物は、好ましくは本発明による少なくとも単離された膜および少なくとも融合タンパク質を含む。ここで、本発明による融合タンパク質は、好ましくは膜、より好ましくは膜の表面上、さらに具体的には膜の細胞外側に固定される。本発明による融合タンパク質は、膜上、好ましくは膜の表面上、より具体的には膜の細胞外側に提示される。膜調製物は場合によりさらに1つまたは複数の野生型テトラスパニンを含むことができる。
【0080】
一実施形態では、本発明による膜系は、少なくとも本発明による融合タンパク質が一過的に発現する、例えばインビトロ細胞培養物の、細胞の外膜である。
【0081】
本発明はさらに、上記の膜と、融合タンパク質と、核酸分子またはベクターとを含む合成膜系に関する。
【0082】
膜は細胞(天然)膜であっても合成(人工)膜であってもよい。細胞膜は、より具体的には、典型的には細胞の表面(外層)上に位置する細胞形質膜である。本発明の意味における細胞膜は細胞の一部であってもよいし、または細胞から単離されている、すなわち、単離された細胞膜であってもよい。細胞膜は、典型的には非対称であり、細胞質を向いた側(原形質または細胞内側、内側)と、細胞質から外を向いた側(原形質外側または細胞外側、外側)とを有する。
【0083】
合成膜は、合成および/または単離された細胞膜を含むことができる。より具体的には、合成膜の脂質および/またはタンパク質組成は、細胞膜の天然起源の組成と異なっていてもよい。合成膜は、好ましくは細胞の一部ではなく、より具体的には単離された合成膜として存在する。当業者であれば、脂質および/またはタンパク質の選択を通して合成膜の特性に影響を及ぼすことができる。
【0084】
一実施形態では、本発明による核酸分子または本発明によるベクターを含む合成膜系が、それによって融合タンパク質が発現され得る核酸分子またはベクターを発現するための系をさらに含む。タンパク質を発現するための系は先行技術で公知であり、好ましくは無細胞である。発現のための系は、好ましくは核酸分子、より具体的にはRNAまたはmRNAを翻訳するための系;および場合により、より具体的にはRNAまたはmRNAを得るために、核酸分子またはベクターを転写するための系を含む。
【0085】
代替実施形態では、本発明による膜系を得るために、融合タンパク質を膜に直接付加することができる。
【0086】
膜系の場合、発現または付加された融合タンパク質が膜、好ましくは膜の表面上、より具体的には膜の外側に固定される。本発明による融合タンパク質は、膜上、好ましくは膜の表面上、より具体的には膜の外側に提示される。
【0087】
合成膜系でも、本発明による融合タンパク質を表面に向け、輸送し、そこで固定することができることが分かった。この場合、人工の非標準アミノ酸をインビボまたはインビトロで本発明による融合タンパク質に組み込むことが可能である。無細胞タンパク質合成を用いて、合成膜に装着させるのにも適した融合タンパク質を得て、そこで固定して提示させることが可能であるだろう。
【0088】
本発明のさらなる態様は、細胞表面上に所定のアミノ酸配列を有するペプチドを提示する方法であって、
(a)上記の本発明による細胞を用意するステップと、
(b)本発明による融合タンパク質が発現する条件下で細胞を培養するステップと
を含む方法である。
【0089】
本発明はさらに、膜上に所定のアミノ酸配列を有するペプチドを固定する方法であって、
(a)膜を用意するステップと、
(b)融合タンパク質の固定が膜で起こる条件下で、膜を上記の融合タンパク質と接触させる、または融合タンパク質が発現し、膜に固定される条件下で、膜を上記の核酸または上記のベクターと接触させるステップと
を含む方法に関する。
【0090】
本発明のさらなる主題は、ペプチドの相互作用対をスクリーニングする方法における、ペプチドと相互作用対(例えば、抗体)の相互作用を試験するための、ペプチドを産生する方法における、抗体産生方法における免疫化試薬としてのおよび/または検出試薬としての、上記細胞、膜調製物または合成膜系の使用である。
【0091】
本発明はさらに、ワクチンおよび/または医薬品として使用するための、上記の細胞、膜調製物または合成膜系に関する。
【0092】
本発明による実施形態では、研究および開発に利用するため、ならびにおそらくは商業化可能な用途のための方法またはキットの一部としても供給するために、融合タンパク質が、トランスフェクトされた、一過的もしくは安定に発現している細胞、トランスジェニック生物または合成膜系から取り出される。例には生物分析−診断システムおよび治療剤の製造がある。
【0093】
本発明によるさらなる実施形態では、研究および開発に利用するため、ならびにおそらくは商業化可能な用途のための方法またはキットの一部としても供給するために、融合タンパク質を含む膜が細胞、トランスジェニックまたは合成膜系から取り出される。例には生物分析−診断システムおよび治療剤の製造がある。
【0094】
本発明の発現した融合タンパク質は、固定反応物質としてトランスフェクトされた細胞の細胞表面上に示され、他の分子との特異的相互作用を分析するために使用され得る。ここで、一つには、タンパク質−タンパク質相互作用(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体パラトープ・エピトープ相互作用、コイルドコイル(coiled−coil)相互作用および製薬医薬の多くの特異的相互作用、より具体的には分子機構の重要性)が興味深い。テトラスパニン融合分子を他の分子、例えば、単糖および多糖、RNA、DNA、ならびにより具体的には小化学分子、例えば天然物質および化学物質ライブラリーとの相互作用の分析に利用することもできる。
【0095】
細胞中での複数のテトラスパニン融合分子またはタンパク質種のタンパク質変異体の発現は、種々の相互作用タンパク質の組合せ使用として一定の実験調製物にとってまさに興味深い。
【0096】
本発明の一実施形態では、本発明による細胞が、別のタンパク質ドメイン(B)と極めて特異的に相互作用することができるタンパク質ドメイン(A)を発現する。ここで、タンパク質ドメイン(A)は本発明による融合タンパク質のドメイン(ii)の所定のアミノ酸配列を有するペプチドに相当する。
【0097】
次いで、この外部タンパク質ドメインを種々の機能的なさらなるタンパク質ドメインと結合することができるだろう。これら全てのタンパク質ドメインモジュールについて、これらが、外来起源のものである場合、発現している細胞のカウンタードメイン(A)上に特異的に結合するので、その一部について、再度結合することができるタンパク質リガンドを置き換えることができ、それによって、特異的相互作用によって媒介される種々のタンパク質モジュールの共存が細胞表面上で検出され得ることを保証することができるだろう。
【0098】
本発明による融合タンパク質、ベクター、細胞および膜系の用途の好ましい例を以下でさらに詳細に説明する。
【0099】
タンパク質−タンパク質相互作用(PPI)の分析
表面上の利用可能な固定タンパク質は、それぞれのタンパク質の表面上の特定の構造によってさらなるタンパク質との特異的接触を確立することができる。これらのさらなるタンパク質は、互いを認識することができる同種および異種タンパク質複合体のタンパク質構築ブロックであり、または抗体や単鎖などの特異的タンパク質でもあり得、これは特定のタンパク質表面構造に特異的におよび標的化された様式で結合することができる。他のタンパク質との特異的相互作用に入るゲノムでコードされた天然起源のタンパク質は多くの細胞機能−細胞核での機能から多様なサイトゾルおよび膜機能までを行う。これらの特異的および機能的タンパク質−タンパク質相互作用(PPI)は進化の過程で現れたものであり、重要な程度に細胞機能の完全性を担っている。標的化PPIは表面との特異的相互作用を有するタンパク質変異体の細胞過程および選択によって媒介される。免疫系は、生物の表面の変化に対する敏感な反応のために設計され、極めて短期間での抗体の表面相互作用および細胞傷害性の最適化において特殊化される。体液性免疫では、大量のエピトープ特異的ポリクローナル抗体が短時間で産生される。ラクダ科の特定の単鎖抗体(単鎖)および高度に特異的なタンパク質相互作用を発達する他の天然起源の免疫原性システムが知られるようになった。
【0100】
医学研究では、モノクローナル抗体を作製するこれらの方法が細胞培養技術によって技術的に実施されており、このようにして、インビトロで特異的PPIを生じることが可能になってきた。
【0101】
抗体工学は、抗体分子に組み込むために、エピトープを特異的に認識することができるディスプレイ技術(リボソームディスプレイ、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ)によって作製された人工パラトープを使用する。ここに記載されるtANCHORシステムのタンパク質ユニットの効率的な輸送機能およびその膜への固定は、PPI分析に高度に適している。さらに、糖で特異的に修飾されたタンパク質を、tANCHOR技術によって細胞表面上に提示することができる。
【0102】
当業者が特異的PPIを同定することができる検出システムは、細胞選別システム(FACS)、蛍光または生物発光に基づく画像化システム、およびFRET光量子機器としても商業的に提供されている。質量分析も分析ツールとして優れた可能性となるだろう。
【0103】
まさに、使用される細胞系によって、作製されるデータの品質および決定的な相違がもたらされる。細胞系は−光学の解像度に匹敵する−プロセスチェーンの最後に得られるデータの品質を定義する全てのさらなるプロセスステップの決定的なパラメータである。
【0104】
tANCHORシステムは、特定の方法で、生物分析−診断用途および治療剤のためにもディスプレイ機能を提供するのに適している。このシステムにより、タンパク質構造の完全性が、例えば、構造エピトープの保持と共に構造的に無傷のままであることができ、互いの間の細胞調節因子タンパク質のPPI中の結合ドメインの完全性も同じである。
【0105】
tANCHOR構築物による小分子の分析
構造的に無傷のタンパク質構造によって、細胞上に提示されたタンパク質により小分子によるPPI結合の結合とPPI結合からの変位の相互作用試験をさらに行うことが可能である。小分子の興味深い相互作用はPPIに干渉するものであり、そこでは一定のタンパク質凝集体が小分子の影響下で再度溶解することができるだろう。PPI分析は、小分子有効成分の発見および開発に特によく適している。
【0106】
tANCHOR技術は、PPI分析のための優れたツールを提供し、タンパク質発現を、細胞表面上へのタンパク質の同時固定と共に利用可能にする。さらなる発現源からの適当なタンパク質対と合わせて、またはおそらくは種々のtANCHOR分子の共発現により、そこから小分子とタンパク質複合体の相互作用を分析するための試験システムを確立することが可能である14048
【0107】
さらに、細胞表面上に局在化した本発明による融合タンパク質のセグメントは、おそらくは高度に特異的な切断分泌プロテアーゼ(例えば、TEVプロテアーゼ)の誘導性の共発現によって、指定される部位で特異的に切断され得るので、溶解され得るだろう。欠陥のある融合タンパク質は、膜の再合成サイクルで絶えず交換され得るので、それによって持続した過剰発現も保証され得るだろう。
【0108】
よって、(例えば、二次代謝産物を発現している生物の抽出物からの)小分子は本発明によるタンパク質上に結合するので、これらを標的として同定することができるだろう。
【0109】
本発明による小分子と提示されたタンパク質セグメントの得られた複合体では、小分子を、細胞表面上に固定された標的ペプチドに特異的に、または担体ペプチドとして溶液中に存在する既に切断された標的ペプチドに結合することができる。
【0110】
次いで、得られた複合体ならびにそれによる小分子およびその結合対を質量分析によって同定することができるだろう。例えば、非ペプチド性小分子の場合、これらを、溶液中に存在する複合体の単離および例えば、非特異的酵素タンパク質分解等によるペプチドの破壊後に、質量分析によって同定することができるだろう。
【0111】
免疫診断装置の開発および製造
本発明の一実施形態によると、興味深い用途は、抗体を、tANCHORを用いて露出したエピトープとの結合について、一定のフォーマット、例えば標準化96ウェルフォーマットで試験するものである。例えば、本発明によるシステムによって、細胞を96ウェルフォーマットのマイクロタイタープレートに播種し、融合構築物を一過的にトランスフェクトされた状態で発現させる。これは融合タンパク質を発現する安定な細胞株でも可能である。
【0112】
例として、tANCHORシステムの使用を、ELISA実験での抗体の検出について示す(図9)。
【0113】
融合タンパク質は、細胞表面上に見られ、そこで提示される。膜のこの人工構成物を、分析および治療用途の開発および製造のために直接実施することができる。
【0114】
このようにして、例えば、開発している特定の用途に適した患者コホートの適当な血清を臨床研究のために試験することができる分析システムを作製することができる。免疫診断装置および治療剤を開発するため、より具体的にはコンパニオン診断のために、このようなシステムを用いて、患者の血清を抗体の存在およびその結合特性について定性的および定量的に調べることが可能である。
【0115】
さらに、トランスジェニック細胞が増殖したマイクロタイタープレートおよび他のフォーマットを固定および乾燥して、大規模で生物分析試験システムおよびこれらのシステムを用いる診断装置を製造し、大規模でこれらを作製することが可能である。
【0116】
さらに、テトラスパニンタンパク質融合産物を発現するトランスジェニック生物の膜を使用し、これらを精製することも可能である。同様に、本発明による融合産物を含む人工膜を上記のこのような使用に供給することもできる。
【0117】
ペプチドまたは発現および精製したタンパク質による割高なコーティングが存在しないので、ここでは経費節約が莫大である。
【0118】
純粋なタンパク質の獲得
研究および開発において、ならびに大規模製造においても、特にタンパク質を機能的に折りたたまれた状態およびおそらくは修飾された形態で精製することを望む場合に、発現によって高い特異的活性を有する十分な量の標的タンパク質を獲得することは、依然として困難な課題である。このため、本発明によるシステムを使用することは有利である。培地中、細胞の外側の所望の標的タンパク質の局在は、細胞内のサイトゾルよりもはるかに複雑でない環境であるので、これは大いに有利となり得る。したがって、濃縮および単離することが容易である。通常、発現したタンパク質は細胞内に見出され、サイトゾルから精製される。
【0119】
本発明によるこの使用の一実施形態では、tANCHORで発現した膜固定タンパク質の切断は、アミノ酸配列モチーフに特異的なプロテイナーゼによって膜から切断することができる。特異的プロテアーゼを、一方では、培地に外因的に供給することができる、または標的タンパク質と内因的に共発現させることができる。この手順はおそらく培地中で活性化される配列特異的エンドプロテアーゼの代用形を要するだろう。タンパク質を単離することを目的とした細胞の長期培養では、tANCHORによって放出された標的タンパク質が、タンパク質の完全性の喪失のために膜に絶えず供給され続けるので、特異的標的タンパク質の濃縮が最後に培地中で起こる。
【0120】
治療用途としてのDNAワクチン接種
極めて特異的な標的細胞中でのみ発現を見出す分化特異的および/または種特異的プロモーター(獣医学分野を含む)と合わせて、tANCHORシステムは、効率的な膜輸送のために、生物のインタクトな細胞中でさえ異種遺伝子融合要素を発現することができる。これらは細胞内に外因的に運ばれ得る。DNAまたはRNA分子の接種のために、「遺伝子銃」または「粒子銃」として知られているものによって、テトラスパニン融合構築物を高速で細胞に直接発射し、打たれたトランスフェクト細胞が融合タンパク質を一過的に発現するように誘導することが可能である。これらのタンパク質は、その適合性について事前に試験された抗原または亜種抗原決定基、エピトープであり得る。tANCHOR技術を、この目的に適した診断生物検定の提供と治療的ワクチン接種の両方のために使用することができる。
【0121】
DNAは遺伝子銃粒子で打たれた細胞のゲノムに組み込まれ、おそらく例えば、腫瘍抑制遺伝子への組込みを通してそこで損傷を引き起こし得ることが議論されている。しかしながら、経験により、高く妥当な組込み率を実際に生み出すために、本発明による遺伝子構築物と共に極めて広範な相同遺伝子領域が必要であることが教示されている。このような要素は、本発明による構築物で想起されない。しかしながら、mRNAワクチンは、敏感な調節因子の一部に対するDNAワクチン接種の危険性に関連して、注目されている。よって本発明によると、例えば、インビトロ転写によって、真核細胞中での発現のために最適化されたmRNA分子を作製し、これらの分子を安定化し、これらの分子をナノビーズ上に固定する、またはこれらの分子を適当なミクロ〜ナノコンパートメント(ウイルス様粒子、VLP)に詰め、この形態のmRNAを治療用途に供給することも可能である。
【0122】
テトラスパニン融合物の特異的特性のために、こうして発現したタンパク質は、発現している細胞の細胞膜上に輸送され、そこで外側に示される。
【0123】
特定のアミノ酸配列の露出は、免疫系によって認識され、そこで、対応する所望の免疫応答の体液性または細胞傷害性免疫応答をもたらすことができる。
【0124】
単離された細胞または細胞膜を用いる治療用途
さらに、理想的には、HLA不適合性基およびおそらくはそれに関連する有害な免疫応答のために、生体外抽出後、おそらくは中期培養期後または中にインビトロで、自己細胞にトランスフェクトさせることさえ可能である。tANCHORシステムに基づくDNA構築物による試験対象(例えば、ヒトであるが、動物も)の自己細胞のトランスフェクションによって、これらを自己または自家ワクチン接種に使用させることが可能になる。この点について、品質について試験したインタクトな自己細胞およびこのような細胞から単離した細胞膜の使用も可能である。これらは、例えば、密度勾配超遠心法により得ることができる。ここで、エピトープと全タンパク質の比を改善し、それによって、免疫応答の特異的活性の増加に寄与することができる。非特異的随伴応答および自己免疫応答が減らされる。
【0125】
おそらく複数のtANCHOR構築物と細胞内で共発現させることができる発現アジュバントの組合せは、本発明によるtANCHORシステムの用途における改善の可能性の範囲内にある変異体といえる。
【0126】
物理化学特性、例えば、膜の溶解度を改善する種々のタンパク質の共発現は、ワクチン接種のために細胞から単離された膜をかなり改善することができるだろう。天然のアジュバントもCD63抗原/エピトープ融合体との共発現によりワクチン接種応答を改善するのに役立ち得るだろう。
【0127】
本発明のさらなる主題は、
(i)上記の核酸分子またはベクターと、
(ii)細胞または膜と
を含むキットである。
【0128】
さらに、意図した用途に応じて、本発明によるキットは、例えば、対照プラスミド、対照タンパク質または同様の物品、および種々の用途のための特別なプラスミドなどの種々の成分を含むことができる。
【0129】
本発明を、以下の図面および実施例によりさらに詳細に説明する。
【0130】
図及び表
【0131】
図1:本発明による融合体および融合タンパク質の局在の概略図。
(A)先行技術により、融合および挿入により種々の実用的な課題解決手法を果たすことができる位置。tANCHORシステムとも記載される本発明によるシステムは、4つの膜貫通ドメイン(4TM)からなる。エピトープまたはタンパク質をコードするDNA配列をTM3とTM4との間にクローニングすることができる。例として、エピトープFLAGタグをN末端上に実施し、例えば、蛍光タンパク質mCherryを、遺伝子融合によりtANCHORシステムでCD63のC末端上にトランスフェクション対照としてさらに実施した(図2も参照)。(B)開発されたtANCHORシステムにより、ヒト細胞によって発現されたエピトープまたは抗原が形質膜上に局在していることを明確に見出すことができる。tANCHORシステムは、高い効率で、融合タンパク質を形質膜に向け、そこでこれらのタンパク質を固定することができる。
【0132】
図2A:代表的なtANCHORベクター系の概略構造。
第1の代表的なtANCHORベクター系は、モジュラーマルチ発現ベクターpA4E211(配列番号1)およびこのベクターの機能的誘導体をもとにする。CD63ΔLEL成分(図2B)およびFLAGエピトープのN末端融合体および例えば、mCherryまたはポンテリナ・プルマタ(Pontellina plumata)のGFPなどの蛍光レポータータンパク質のC末端融合の配列アレンジメントの概要をさらに表す。
【0133】
【表1】
【0134】
図2B:CD63のコード野生型(WT)配列(配列番号17)からのCD63Δ LEL配列(配列番号3)の誘導。
野生型CD63タンパク質配列は238個のアミノ酸からなる。CD63ΔLELを作製するために、膜貫通ドメイン1〜3および4のコードDNA配列(下線を付した配列CD63 TM1〜3、CD63 TM4)を使用した。CD63のLEL(ΔLEL)の配列を含まないリンカーをフラグメントCD63 TM1〜3とCD63 TM4との間に置く(配列番号42)。さらに、リンカー中のGGGG構造モチーフを挿入する。アミノ酸配列KLIDTVDLEK(配列番号46)を有するリンカーについての遺伝子配列(配列番号45)を、遺伝子配列CD63ΔLELと蛍光タンパク質についての遺伝子配列との間に含めることができる。
【0135】
【表2】
【0136】
tANCHOR CD63タンパク質提示システム(ディスプレイシステム)についての陽性および陰性対照ベクター。(0)tANCHOR技術の機能的要素の正式な表示:CDXX−(=種々のテトラスパニンタンパク質種)CDS(=コード配列)(1)CD63遺伝子、内部CD63挿入および末端レポーターを含まないtANCHORベクター(2)CD63遺伝子を含み、内部CD63挿入とCD63遺伝子を有するtANCHORベクターの末端レポーターを含まず、内部CD63挿入として例えば、FLAGタグエピトープを含み、末端レポーターを含まないtANCHORベクター(3)CD63遺伝子、および内部CD63挿入としてgp41エピトープ、CD63遺伝子を含むtANCHORベクターの末端レポーターも含むtANCHORベクター(4)例えば、CD63遺伝子および内部CD63挿入としてのYFPエピトープおよびC末端レポーターGFP(例えば、緑色蛍光タンパク質遺伝子)を含むtANCHORベクター。(5)内部CD63挿入として、分析に使用される、例えば、POI−bioPepIDエピトープ(複数可)(対象となるタンパク質/ペプチド)およびC末端レポーターeGFP(例えば、緑色蛍光タンパク質遺伝子)を含むtANCHORベクター、ならびに(6)さらなるレポーター遺伝子、例えばYFP(黄色蛍光タンパク質遺伝子)を含み、関連する実験で対象となるタンパク質の融合体(POI融合体)を含むtANCHORベクター。(7)実験設計に応じて、POI融合体等の融合体を含むtANCHORベクター。bioPepIDはPepID型のバイオペプチドライブラリーである(欧州特許第09000893.9号)。これらをtANCHORシステムに使用することができる。AbsI−SgrDIおよびAscI−MauBIならびにAsiSI−PacIは複数の遺伝子の発現の多重化のための8mer認識配列を有する、互いに互換性を有する制限エンドヌクレアーゼである。本発明による用途の任意の他の実施形態も特許文書によって等しく網羅される。
【0137】
図2C:代表的なベクターpAE211_CMV−P−CD63ΔLELにおけるCD63ΔLELと組み合わせた本発明による種々のリンカー変異体の例。
制限部位EcoRI、EcoRV、HindIII、BamHIおよびPstIが標準的なクローニング法またはシームレスクローニングのためのクローニング法による複数の連続エピトープユニットの挿入に可能である。(1)配列1、本発明による制限部位のみであり、機能(R部位)EcoRIおよびEcoRVおよびn*N=スペーサー配列に関して試験した(2)配列(1)+His6−タグ、(3)配列(1)+CMycエピトープ、(4)配列(1)+His6−タグ+C−Myc(5)発現した外来タンパク質を選択的に収穫するために、中心クローニング部位を含む、TEVタンパク質分解部位。(6)構築物に合わせられた(8)で命名されている全ての翻訳および非翻訳分子機能的要素(配列番号39、40)。(9)細胞表面に輸送するための最小リンカーzur(配列番号41、42)。
【0138】
図3:cLSMによるHEK293T細胞の表面上の融合タンパク質の局在。
(A)HEK293T細胞にそれぞれのベクターでコトランスフェクトした。局在化試験では、ベクターpCMV−CD63−YFPが発現した野生型CD63−YFPタンパク質についての対照とした。tANCHOR技術を含む全てのタンパク質(CD63ΔLEL、図2B)について、細胞表面上の顕著な局在を融合レポータータンパク質mCherryによって検出した。tANCHOR融合体を含まないmCherryタンパク質は細胞質内で、均等に分布している。これは細胞表面上への顕著性を示さない。さらに、例えば、膜貫通ドメイン(gp41ΔTM)を含むおよび含まないHIV−1の糖タンパク質gp41などのさらなるタンパク質が表面上に提示され得る。(B)タンパク質折りたたみを、表面上のCFPおよびYFP局在によってチェックした。発蛍光団に特異的な発光波長である405nm(CFP)または514nm(YFP)のダイオード/アルゴンレーザーによって励起した後、両蛍光タンパク質を検出することができる。(C)通常はサイトゾルに分散して生じる発現タンパク質mCherryが、tANCHORシステムによって極めて効率的に形質膜に向けられる。このようにして、実施したtANCHOR技術を含むmCherryが、野生型CD63−YFPの場合のように、HEK293T細胞の糸状仮足(白色矢印)中でさえ検出可能である。スケールバーの長さは、図3A及び3Bでは10μmであり、図3Cでは1μmである。
【0139】
図4:エピトープの細胞外配向調査の概略図。
エピトープ配向の検出を、トランスフェクトされたHEK293Tの表面上で走査電子顕微鏡法(SEM)によって行った。タンパク質に一次抗体を結合し、金粒子(10nm)とのコンジュゲート二次抗体によって可視化した。モデルエピトープの場合、YFP、CFP、gp41およびgp41ΔTM結合抗体を免疫金粒子によって表面上で可視化することができた(図5)。
【0140】
図5A−D:HEK293T細胞の表面上の金粒子(10nm)のSEM像。
トランスフェクトされたHEK293T細胞を、それぞれエピトープ配向に関して調べた。このために、それぞれのエピトープに特異的一次抗体を結合し、次いで、これらを金コンジュゲート二次抗体で検出した。tANCHOR技術を含む全てのエピトープについて、細胞外配向を有するエピトープとし得た。全ての図面のスケールバーの長さは300nmである。
【0141】
図6:作製したtANCHORベクターによりトランスフェクトされたHEK293T細胞のウエスタンブロット解析。
トランスフェクトされたHEK293T細胞をウエスタンブロット解析に供した。分離した細胞溶解物中の発現タンパク質を、C末端レポータータンパク質mCherryに対する一次抗体によって整列させ、N末端エピトープFLAGに対して検出した。ベクターpmCherry−N1によるトランスフェクションは、このベクターがFLAGエピトープについての配列を含まないために、抗FLAG抗体とのインキュベーションに関してバンドを示さず、発現タンパク質の特異的検出のための対照とする。
【0142】
図7:V5−6xHisリンカーを含む内部融合部位によるタンパク質輸送に関してさらなるテトラスパニンを調査するための構築物の概略図。
テトラスパニンスーパーファミリー内の大型細胞外ループと独立したタンパク質輸送の妥当性を調べるために、CD63ΔLELに基づくtANCHOR原型構築物による第3の膜貫通ドメインと第4の膜貫通ドメインとの間に内部融合V5−6xHisを含む発現ベクターを作製した。内部融合V56xHisはEcoRIとEcoRVとの間にリンカーを含む(配列番号35、36)。FLAG融合体をN末端で組み込み;C末端で、レポータータンパク質として、野生型テトラスパニン構築物の場合、蛍光タンパク質YFPを融合し、ΔLEL−V5−6xHis構築物の場合、mCherryを融合する。
【0143】
図8:HEK293T細胞の表面上の融合タンパク質の局在。
HEK293T細胞を作製したベクター(A)pCMV−CD9−YFP/pCMV−CD9ΔLEL−V5−6xHis−mCherry、(B)pCMV−CD81−YFP/pCMV−CD81ΔLEL−V5−6xHis−mCherry、(C)pCMV−CD82−YFP/pCMV−CD82ΔLEL−V5−6xHis−mCherryおよび(D)pCMV−CD151−YFP/pCMV−CD151ΔLEL−V5−6xHis−mCherryによりコトランスフェクトした。全ての発現タンパク質を細胞表面上でレポータータンパク質mCherryの蛍光によって優位に検出することができる。テトラスパニンCD9、CD81、CD82およびCD151の第3の膜貫通ドメインと第4の膜貫通ドメインとの間にリンカーV5−6xHisとの内部融合体を含む構築物(図7)が蛍光タンパク質YFPの融合体を含む対応する発現野生型テトラスパニンと共存する。全ての図のスケールバーの長さは10μmである。
【0144】
図9:抗体を検出するためのtANCHORシステムの適用。
(A)96ウェルフォーマット中のtANCHORシステムによるELISA実験53の結果。HEK293T細胞の細胞表面上のV5エピトープをHRPコンジュゲート抗V5抗体で検出した。tANCHORタンパク質のタンパク質発現を抗V5−HRP抗体によって濃度依存的にかつ有意に検出することができる。(B)CD63の第3の膜貫通ドメインと第4の膜貫通ドメインとの間のリンカー2F5−4E10(配列番号37、38)の概略図。リンカーをベクターpCMV−CD63ΔLELに導入した。(C)HIV−1中和抗体抗2F5および抗4E10を、トランスフェクトされたHeLa細胞プライマー1ウェル当たり0.6μgの一定DNA量で2F5および4E10エピトープに結合させた。結合した抗2F5および抗4E10抗体を有意に検出することができた。(E)発現融合タンパク質CD63ΔLEL−V5−6xHisおよびCD63ΔLEL−2F5−4E10も対照に対してHEK293T細胞の表面上に顕著に局在化させることができた。全ての図のスケールバーの長さは10μmである。
【0145】
図10:低セリンおよび低アルギニンリンカーの使用による効率増加を示す図である。(A)使用したリンカーをDNAおよびアミノ酸配列レベルで表す図である。(B)2種の異なるリンカー(配列番号41、42および配列番号43、44)を含む融合タンパク質の細胞内の局在の分析が、EcoRI/EcoRV隣接制限部位の使用がHEK293T細胞の表面への高効率のタンパク質輸送をもたらし、融合タンパク質が細胞上に形成した糸状仮足(白色矢印)上で検出可能であることを明確に示す。全ての図のスケールバーの長さは10μmである。
【実施例】
【0146】
1.局在化実験を行うためのCD63系モデルベクターの作製
CD63系モデルベクターの作製は、ベクターpCMV−Tag2B(Stratagene)の使用に基づいた。確立されたクローニング技術によって、それぞれのDNA配列を、制限部位を介してこのベクターに導入した39。CD63の全長配列(アミノ酸1〜238、GenBank受入番号KF998086)を含む、pCMV−CD63−YFP−FLAG49としても記載される対照ベクターpCMV−CD63−YFPを使用して、制限部位XhoIおよびApaIを介して、プライマーPA1−01/PA1−02および鋳型ベクターpmCherry−N1(Clonteeh)によって、使用した赤色蛍光レポータータンパク質、mCherryのDNA配列を導入した。膜貫通ドメインTM1〜3(アミノ酸1〜110 GenBank受入番号KF998086)を含む部分配列を、プライマーPA1−03/PA1−04を用いて制限部位BamHIおよびPstIを介して導入し、その後、TM4(アミノ酸201〜238、GenBank受入番号KF998086)を、プライマーPA1−05/PA1−06および鋳型ベクターpPR3−N−CD6349を用いてEcoRVおよびHindIIIを介してベクターpCMV−Tag2Bに導入した。得られたベクターはLELを含まないCD63遺伝子配列(pCMV−CD63ΔLEL)を含む(図2B)。
【0147】
タンパク質の簡易的な検出のために、ベクターpCMV−CD63−mCherryの制限mCherry DNAフラグメントを、制限部位XhoIおよびApaIを介して制限ベクターpCMV−CD63ΔLELに連結した。プライマーPA1−07/PA1−08および鋳型ベクターpSCFP3A−C1またはpSYFP2−C150を用いて、制限部位EcoRIおよびEcoRVを介してベクターpCMV−CD63ΔLEL−CFPおよびpCMV−CD63ΔLEL−YFPを作製した。同様に、プライマーPA1−09/PA1−010およびPA1−09/PA1−11ならびに鋳型ベクターpNL4−351を用いて、HIV−1のgp41タンパク質の遺伝子配列を含むベクターpCMV−gp41ΔTMおよびpCMV−gp41を作製した。
【0148】
2.トランスフェクションおよび共焦点レーザー走査顕微鏡法(cLSM)
発現した融合タンパク質の局在を調べるために、実施例1で作製したプラスミドを、トランスフェクション試薬によってHEK293T細胞にトランスフェクトした。このために、HEK293T(ヒト胚腎臓細胞293T)細胞をibiTreat8ウェルに播種し、10%ウシ胎児血清、L−グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを加えたダルベッコ改変イーグル培地で培養した。約50%コンフルエンスで、細胞に、製造業者の指示にしたがって、作製したプラスミドをMetafectene(登録商標)PRO(Biontex)によってトランスフェクトした。24時間後、トランスフェクトされた細胞をPBS中2%パラホルムアルデヒドで固定し、PBS中で2回洗浄し、0.1%p−フェニレンジアミンおよびDAPI(4’,6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール)を含むPBS中90%グリセロールにマウントして核を可視化した。トランスフェクトされた細胞を、細胞内の局在に関して、逆共焦点レーザー顕微鏡LSM780(Carl Zeiss)で調べた(図3A図3C)。励起および発光波長の設定は、LSM780ソフトウェアZEN2010のSmart Setupオプションによって、蛍光タンパク質CFP、YFPおよびmCherry用に選択した。
【0149】
3.走査電子顕微鏡法によるHEK293T細胞の表面上のエピトープの配向分析
発現したタンパク質を、HEK293T細胞の形質膜上の金で免疫標識されたタンパク質について走査電子顕微鏡法によって検出した(図4)。このために、トランスフェクトされ、PBS中2%パラホルムアルデヒドで固定された細胞をPBS中で3回洗浄し、PBS中0.5%BSA/0.1%ゼラチンでブロッキングした。タンパク質CD63ΔLEL−CFPおよびCD63ΔLEL−YFPを、ウサギ抗GFP(ab6556、Abcam)と共にインキュベートし、洗浄し、ヤギ抗ウサギにより一次抗体をコンジュゲート10nm金粒子で検出した。免疫標識に続いて、グルタルアルデヒド(HEPES0.05M中2.5%)で後固定した。これに続いて、スキャンの準備をした。このために、試料を、各場合で15分間、エタノール段階(30%、50%、70%、90%、96%)で段階的に乾燥させ、無水エタノール中で30分間静置し、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)中に移し、HMDSで完全に乾燥させ、試料表面を蒸発カーボンでコーティングした。金粒子を、後方散乱検出器(Centaurus)によって、Leo1530 Gemini走査電子顕微鏡で可視化した。同様に、gp41タンパク質を、ヒト抗2F5抗体(国立衛生研究所、NIH)、さらにコンジュゲートIgG H&L 10nm金粒子を含む抗ヒトヤギ抗体(BBInternational)を使用して検出した(図5A図5D)。
【0150】
4.発現した蛍光タンパク質のウエスタンブロット解析
タンパク質発現を調べるため、トランスフェクトされたHEK293T細胞の細胞溶解物をウエスタンブロット解析に供した。このために、ベクターでHEK293T細胞を、製造業者の指示にしたがって、METAFECTENE(登録商標)PROを用いて6ウェルフォーマット中で、トランスフェクトした。48時間後、培地を完全に除去し、100μlのLaemmli試料緩衝液2×および25Uのセラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)由来のエンドヌクレアーゼ(Benzonase(登録商標))をそれぞれの6ウェルに加えた。細胞を溶解し、約10分後、β−メルカプトエタノール5μlを試料に添加し、95℃で5分間変性させた。これらの細胞溶解物をSDS−PAGEによって分離し、PVDF膜に移し、マウス抗mCherry(ab125096、Abcam)またはヤギ抗FLAG(NB600−344、NovusBio)抗体およびHRPコンジュゲート抗マウス/抗ヤギ抗体(Dako)で検出し、そして結合したHRPコンジュゲート抗体をPierce ECLウエスタンブロット基質(Thermo Fisher Scientific)によって検出した。PVDF膜をRoti(登録商標)−Free Stripping Buffer 2.2plus(Carl Roth)で処理したので、同タンパク質をさらなる一次抗体で検出することができた(図6)。
【0151】
5.テトラスパニンスーパーファミリー由来のテトラスパニン系ハイブリッドタンパク質の細胞内局在の調査
テトラスパニンスーパーファミリー内の細胞表面上のペプチドの提示を調べるために、遺伝子合成54(ATG:Biosynthetics)および標準化されたクローニング法によって、発現ベクターを概略図(図7)にしたがって作製した。CD9(配列番号19)、CD81(配列番号21)、CD82(配列番号23)およびCD151(配列番号25)の遺伝子配列を、ベクターpCMV−CD63−YFP中で置き換え、CD9ΔLEL−V5−6xHis(配列番号27)、CD81ΔLEL−V5−6xHis(配列番号29)、CD82ΔLEL−V5−6xHis(配列番号31)およびCD151ΔLEL−V5−6xHis(配列番号33)の遺伝子配列を、制限部位NotI/XhoIを介してCD63のテトラスパニン配列を含むベクターpCMV−CD63−mCherry(1:局在化実験を行うためのCD63系モデルベクターの作製を参照)中で置き換え、野生型遺伝子配列の以下の発現ベクターpCMV−CD9−YFP、pCMV−CD81−YFP、pCMV−CD82−YFP、pCMV−CD151−YFP、ならびに大型細胞外ループの欠失突然変異体(ΔLEL)を、第2節のトランスフェクションおよび共焦点レーザー走査顕微鏡法(cLSM)に記載されるように内部リンカーV5−6xHis−pCMV−CD9ΔLEL−V5−6xHis−mCherry、pCMV−CD81ΔLEL−V5−6xHis−mCherry、pCMV−CD82ΔLEL−V5−6xHis−mCherryおよびpCMV−CD151ΔLEL−V5−6xHis−mCherryを用いてトランスフェクトし、細胞内の局在に関してcLSMによって調べた(図8)。
【0152】
6.ELISA法53による抗体検出へのtANCHORシステムの適用
tANCHORシステムによる融合タンパク質の極めて効率的な表面発現は、提示されたペプチド上の結合抗体の検出に適している。モデルとして、第1節の局在化実験を行うためのCD63系モデルベクターの作製に記載されるように、リンカーV5−6xHisを、EcoRIおよびEcoRVにより構築物pCMV−CD9ΔLEL−V5−6xHis−mCherryから単離し、標準的なクローニング法によりベクターpCMV−CD63ΔLEL−mCherryに挿入した。同様に、プライマーPA1−12/PA1−13および鋳型ベクターpNL4−3によって、エピトープ2F5および4E10(HIV−1)をベクターpCMV−CD63ΔLEL−mCherryに挿入した(図9B)。(図9A)HEK293Tの表面上の結合抗体を検出するために、HEK293T細胞および(図9C)HeLa細胞を96ウェルフォーマットに播種し、製造業者の指示にしたがって、Metafectene(登録商標)PROによって、プラスミドpCMV−CD63ΔLEL−V5−6xHis−mCherry(図9A)およびpCMV−CD63ΔLEL−2F5−4E10−mCherry(図9C)をトランスフェクトした。24時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(Carl Roth)で20分間固定し、PBSで2回洗浄し、3%ウシ血清アルブミン等級V(Carl Roth)および2%鶏卵アルブミン(Carl Roth)の溶液で一晩ブロッキングした。その後、細胞をPBSで1回洗浄し、1:3000希釈の希釈抗体(図9A)抗V5−HRP(Invitrogen)および(図9C)ヒト抗2F5/ヒト抗4E10(NIH)と共に1時間インキュベートした。図9Cの場合、一次抗体を1:1000希釈のノウサギ抗ヒトHRP(DAKO)によって結合させ、ELISA基質として3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB Substrate Kit、Thermo Fisher Scientific)を伴う改変ELISAを製造業者の指示にしたがっていずれも使用し、OD値を96ウェルプレートインサート(Thermo Fisher Scientific)にてMultiscan(商標)GO分光光度計を用いて450nmで測定した。第1節の局在化実験を行うためのCD63系モデルベクターの作製のように、cLSMによって融合タンパク質の発現を検出した。
【0153】
7.tANCHORシステムにおける隣接EcoRI/EcoRV制限部位の使用によるヒト細胞表面へのタンパク質輸送効率の増加
tANCHORシステムにおける隣接EcoRI/EcoRV制限部位の使用により、細胞表面への輸送効率が増加する。最小リンカー(LQEFDIGGGG)へのさらなる制限部位の導入は、CD63の第3の膜貫通ドメインと第4の膜貫通ドメインとの間のリンカー中にセリンおよびアルギニンの翻訳(GSSGRRSLQGGGG)をもたらす(図10A)。第2節のトランスフェクションおよび共焦点レーザー走査顕微鏡法(cLSM)で既に記載されているように、さらなる部位を有するベクターを、遺伝子合成54(ATG:Biosynthetics)により作製し、HEK293T細胞中で発現させ、細胞内の局在に関して調べた(図10B)。
【0154】
配列記録
配列番号1:pA4E211(CD63ΔLEL)のDNA配列
配列番号2:CD63ΔLELのDNA配列
配列番号3:CD63ΔLELのタンパク質配列
配列番号4:プライマーPA1−01
配列番号5:プライマーPA−02
配列番号6:プライマーPA1−03
配列番号7:プライマーPA1−04
配列番号8:プライマーPA1−05
配列番号9:プライマーPA1−06
配列番号10:プライマーPA1−07
配列番号11:プライマーPA1−08
配列番号12:プライマーPA1−09
配列番号13:プライマーPA1−10
配列番号14:プライマーPA1−11
配列番号15:プライマーPA1−12
配列番号16:プライマーPA1−13
配列番号17:CD63、GenBank受入番号KF998086
配列番号18:CD63のタンパク質配列
配列番号19:CD9のDNA配列(GenBank受入番号NM_001769.3)
配列番号20:CD9のタンパク質配列
配列番号21:CD81のDNA配列(GenBank受入番号NM_004356.3)
配列番号22:CD81のタンパク質配列
配列番号23:CD82のDNA配列(GenBank受入番号NM_002231.3)
配列番号24:CD82のタンパク質配列
配列番号25:CD151のDNA配列(GenBank受入番号BT007397.1)
配列番号26:CD151のタンパク質配列
配列番号27:CD9ΔLEL−V5−6xHisのDNA配列
配列番号28:CD9ΔLEL−V5−6xHisのタンパク質配列
配列番号29:CD81ΔLEL−V5−6xHisのDNA配列
配列番号30:CD81ΔLEL−V5−6xHisのタンパク質配列
配列番号31:CD82ΔLEL−V5−6xHisのDNA配列
配列番号32:CD82ΔLEL−V5−6xHisのタンパク質配列
配列番号33:CD151ΔLEL−V5−6xHisのDNA配列
配列番号34:CD151ΔLEL−V5−6xHisのタンパク質配列
配列番号35:V5−6xHisリンカーのDNA配列
配列番号36:V5−6xHisリンカーのタンパク質配列
配列番号37:2F5−4E10リンカーのDNA配列
配列番号38:2F5−4E10リンカーのタンパク質配列
配列番号39:リンカーバージョン(8)のDNA配列
配列番号40:リンカーバージョン(8)のタンパク質配列
配列番号41:ベクターpCMV−CD63ΔLEL−mCherry中のリンカー(最小リンカー(9))のDNA配列
配列番号42:ベクターpCMV−CD63ΔLEL−mCherry中のリンカー(最小リンカー(9))のタンパク質配列
配列番号43:ベクターpCMV−CD63ΔLEL−V2−mCherry中のリンカーのDNA配列
配列番号44:ベクターpCMV−CD63ΔLEL−V2−mCherry中のリンカーのタンパク質配列
配列番号45:CD63ΔLELと蛍光タンパク質との間のリンカーのDNA配列
配列番号46:CD63ΔLELと蛍光タンパク質との間のリンカーのタンパク質配列
【0155】
本発明の好ましい態様を以下に要約する:
1.
a.少なくとも部分的に、例えば、ヒト遺伝子CD63、CD9、CD82、CD81、CD151、CD53などのテトラスパニンのタンパク質クラスのメンバーの配列からなることができるが、
b.少なくとも部分的に、他の生物の配列相同テトラスパニンからもなることができ、
c.a.およびb.によると、その融合産物が、適当なシステムで、これらと結合した天然または人工ペプチドおよびタンパク質ユニットを
i.1つまたは複数の表面に向け、
ii.表面上にこれらを輸送し、
iii.これらを表面に堅く固定し、
iv.これらを表面上に永続的に提示する
ことができる分子を作製する、
間接的に、少なくとも部分的に鋳型分子からコードされている、または完全に合成的である意図した人工アミノ酸配列を有するタンパク質/ペプチドを使用する方法。
2.
a.表面上で修飾される、例えばグリコシル化される、および/または
b.表面上で機能的コンフォメーションを採用することができる
タンパク質ユニットを産生するのに間接的に役立つ、1.に記載の天然および/または人工アミノ酸組成を有するキメラタンパク質分子。
3.
a.インビボで、
b.インビトロで、
コード鋳型を介して間接的に産生され、コード鋳型の少なくとも1つの少なくとも部分的なユニットの融合体から現れ、および種々の配列の組合せから、産生され、おそらく濃縮および単離され、おそらくその間に処理もされ得る、1.および2.に記載の分子。
4.
i.インビボで、組換え的に、ゲノム内で、(TN7系)または
ii.インビボで、染色体外遺伝要素(ベクター)によって、または
iii.インビボで、環状または直鎖状核酸分子によって天然または非天然起源の核酸分子(RNA等)によって、
あるいは
iv.インビトロで、共役転写または翻訳系で、
v.インビボで、人工アミノ酸の組込みによって、
本発明によりインビボおよびインビトロでコード核酸分子を発現するコード核酸分子を表す、1.、2.および3.に記載の分子。
5.天然細胞の天然起源の細胞膜または人工膜系を表す、1.から3.に記載の分子を固定するための表面。
【0156】
6.生物検定で、種々の分子種(小分子(有効成分ライブラリー、天然物質)、RNA、タンパク質およびDNA)の特異的結合および/または触媒作用に関しての構造的、生物分析および(獣医学的)診断の問題を解決するため、ならびに結果に対する生物分析システム(生物検定)、診断装置、おそらくはコンパニオン診断装置および/または療法を構築するために、その遺伝子産物、トランスフェクトされた細胞または細胞の一部を供給する、1.から4.に記載の分子。
7.免疫分析および免疫診断の分野の問題を解決するため、免疫分析および診断の問題を解決し、おそらくそれに対する治療を構築するために、その遺伝子産物、トランスフェクトされた細胞または細胞の一部を供給する、1.から4.に記載の分子。
8.分析的ハイスループットシステムを開発するためまたはこれらを操作するために、その遺伝子産物、トランスフェクトされた細胞または細胞の一部を供給する、1.から4.に記載の分子。
9.直接的に使用される免疫療法剤(同様の可能な用途を有するポリクローナルもしくはモノクローナル抗体または人工分子)を開発するために、直接的または間接的に、その遺伝子産物、トランスフェクトされた細胞または細胞の一部を供給する、1.から4.に記載の分子。
10.使用および利用のために発酵/生物生産から大量に第三者に提供される、その遺伝子産物、トランスフェクトされた細胞または細胞の一部を供給する、1.から3.に記載の分子。
【0157】
参考文献
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]