特許第6876633号(P6876633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アーベーベー・シュバイツ・アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許6876633-電源インピーダンス補償を有するUPS 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876633
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】電源インピーダンス補償を有するUPS
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/04 20060101AFI20210517BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20210517BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20210517BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   H02J9/04
   H02J7/34 G
   H02J3/38 180
   H02J3/32
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-567302(P2017-567302)
(86)(22)【出願日】2016年6月29日
(65)【公表番号】特表2018-519783(P2018-519783A)
(43)【公表日】2018年7月19日
(86)【国際出願番号】EP2016065174
(87)【国際公開番号】WO2017001498
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年6月25日
(31)【優先権主張番号】15174241.8
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プリカンチ,スリダー
(72)【発明者】
【氏名】ワルトン,サイモン・ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エリオット,ニック
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−266631(JP,A)
【文献】 特開平07−059274(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/037925(WO,A1)
【文献】 特開平11−041814(JP,A)
【文献】 特開2001−197668(JP,A)
【文献】 特開2001−119860(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/001007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/04
H02J 3/32
H02J 3/38
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源の停止の場合に電力を負荷へ供給するためのオフライン無停電電源装置(100)、特に中電圧無停電電源装置の動作のための方法であって、前記無停電電源装置(100)は、
前記電源と前記負荷との間に配置された少なくとも1つの切断スイッチ(112)と、
少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(114)と、
前記切断スイッチ(112)の負荷側(104)で前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(114)と前記負荷との間に配置された少なくとも1つの電力コンバータ(116)と、
前記電源の停止の場合に前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(114)から前記負荷へ電力を供給するように前記少なくとも1つの電力コンバータ(116)を制御するための制御装置(120)とを含み、
前記方法は、
電力品質イベントを識別するステップと、
電力供給側品質イベントから負荷側イベントを分けるために、識別された前記電力品質イベントを区別するステップと、
識別された電力品質イベントから電力供給側電力品質イベントを識別すると、前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(114)から前記負荷へ電力を供給するステップと、
前記負荷に関してネットワークインピーダンス補償を行なうステップとを含み、
電力供給側品質イベントから負荷側イベントを分けるために、識別された前記電力品質イベントを区別するステップは、ネットワークインピーダンス補償された商用電圧および負荷電流を使用することを含む、方法。
【請求項2】
前記負荷に関してネットワークインピーダンス補償を行なうステップは、ネットワーク(119)のインピーダンス測定を行なうことを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ネットワークインピーダンス補償を行なうステップは、ネットワークインピーダンスにおける下流の負荷の乱れ、下流の負荷の高調波、および下流の障害の作用による電圧歪みを推定することにより、前記電源から供給されるような商用電圧に対する影響を鈍くすることを含むことを特徴とする、先行する請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(114)から前記負荷へ電力を供給するステップは、前記少なくとも1つの切断スイッチ(112)を使用して前記電源装置を前記負荷から切り離すことを含むことを特徴とする、先行する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
電源の停止の場合に電力を負荷へ供給するためのオフライン無停電電源装置(100)、特に中電圧無停電電源装置であって、前記無停電電源装置(100)は、
前記電源と前記負荷との間に配置された少なくとも1つの切断スイッチ(112)と、
少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(114)と、
前記切断スイッチ(112)の負荷側で前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(114)と前記負荷との間に配置された少なくとも1つの電力コンバータ(116)と、
前記電源の停止の場合に前記少なくとも1つのエネルギー貯蔵器(114)から前記負荷へ電力を供給するように前記少なくとも1つの電力コンバータ(116)を制御するための制御装置(120)とを含み、
前記制御装置(120)は、上述の方法請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を行なうように適合される、オフライン無停電電源装置。
【請求項6】
上述の方法請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法ステップを行なうためのコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項7】
オフライン無停電電源装置(100)をアップグレードするためのソフトウェアパッケージであって、前記ソフトウェアパッケージは、上述の方法請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法を行なうように前記オフライン無停電電源装置(100)を制御するための命令を含む、ソフトウェアパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフライン無停電電源装置の分野に関する。特に、本発明は、電源の停止の場合に電力を負荷へ供給するためのオフライン無停電電源装置、特に中電圧無停電電源装置の動作のための方法に言及する。
【背景技術】
【0002】
三相の中電圧(medium voltage:MV)分配ネットワークでは、電気エネルギーは、低電圧(low-voltage:LV)ネットワークフィーダを通して異なる負荷に分配される。負荷はフィーダに接続されており、従来のLV無停電電源装置(uninterruptable power supply:UPS)を使用して保護され得る。しかしながら、各フィーダにおいてUPSを接続することは費用がかかり、多くの空間を消費し、多くの保守を必要とし、低い全体的効率を提供し、複雑な監視制御を必要とする。中電圧レベルでの上流の電力品質イベントからの負荷の保護は、上述の欠点のほとんどを克服する。中電圧無停電電源装置(MV−UPS)は、MVレベルでの負荷のためのよりよい保護機構を装備する。既存のMV−UPSのほとんどは、商用電力(utility)の乱れ、たとえば電源の停止が負荷から分離され得るように、UPSにおいてAC/DC/AC変換が連続的に起こるオンラインUPSシステム技術を使用する。
【0003】
効率および信頼性を高めるために、およびコストを減少させるために、オンラインUPSシステム技術は、MVオフラインUPSシステム技術と置換えられ得る。オフラインUPSは、効率および設置面積が主な原価作用因である産業環境において、電力保護のためによく使用される。
【0004】
オフラインUPSシステムでは、下流側で設けられる負荷が、入来する商用電力供給部として上流側で設けられる電源に、電力バスによって直接接続されており、商用電力切断器とも呼ばれる切断スイッチが、電力バスに設けられる。電源は典型的には、送電網供給部(grid supply)である。オフラインUPSは、電力コンバータを介して切断スイッチの下流で電力バスに接続されたエネルギー貯蔵器を含む。
【0005】
オフラインUPSが、電源における、電力品質イベントである電圧の乱れを検出すると、オフラインUPSは、下流の負荷を電力コンバータを通してバックアップのエネルギー貯蔵器に振替える(transfer)。よって、切断スイッチは電源から負荷を切り離し、電力品質イベント中に下流の負荷が引き続き動作できるように、エネルギー貯蔵器からの電力が電力コンバータを介して電力バスへ供給される。切断スイッチをオフに切換えることによって電源を切り離し、負荷支持をエネルギー貯蔵器とともに電力コンバータに振替えるこのプロセスは、振替えとして公知である。電力品質イベントの場合にも負荷への確実で連続的な電力供給を可能にするために、MVオフラインUPSの最も重要な機能性のうちの1つは、電力品質イベントを識別することである。
【0006】
しかしながら、三相のMVオフラインUPSでは、上流の電力品質イベントを識別することは重大な任務である。電源からの商用供給電圧は、下流の電流およびネットワークインピーダンス相互作用による下流の負荷の乱れ、下流の負荷の高調波、および下流の障害に敏感である。
【0007】
下流の障害により、下流の電流は蓄積する場合があり、ネットワークインピーダンスに対するその影響により、電源からの商用電圧がMVネットワーク電圧の許容限度を超えるようになるかもしれない。これにより、MVオフラインUPSは、電力品質イベントを検出し、下流の負荷をエネルギー貯蔵器からのバックアップに振替えるようになるかもしれない。したがって、電力品質イベントの誤った検出が起こるかもしれない。これは、動作時間の不必要な増加により、オフラインUPSの寿命を減少させるかもしれない。これは、保守およびサービスのための労力の増加を生み出す。
【0008】
さらに、下流の高い電流により、MVオフラインUPSは過負荷電流限度に達するかもしれず、それにより、それは、下流の負荷を制限することについて決断を下すようになる。よって、下流の障害の検出時に負荷制限のリスクがある。
【0009】
下流の高い高調波負荷を有するMV分配ネットワークは、オフラインUPSが電力品質イベントをトリガするようになる著しい商用電圧歪みを生成する場合がある。
【0010】
下流の負荷の乱れ、下流の負荷の高調波、および下流の障害に対する商用供給電圧の感度のさらに別の欠点は、商用供給電圧の不正確な追跡である。
【0011】
この状況において、US 2008/088183 A1は、実質的に無停電の電力を負荷へ供給するための方法および装置に言及する。この装置は、電力貯蔵サブシステムおよび電力生成器と結合された制御システムを含む。制御システムは、静的補償器(static compensator:STATCOM)モード、無停電電源装置(UPS)モード、および生成器モード(gen set)を少なくとも含む複数の動作モードを提供し、複数のモードの各々の間の移行を制御するように構成される。制御システムは、電流制御システムと電圧制御システムとを含む一体化された閉ループ制御システムである。
【0012】
さらに、文献US 6 215 202 B1は、シャント接続された超伝導エネルギー管理システム(superconducting energy management system:SEMS)に言及する。このSEMSは、商用送電網(utility grid)と、2メガワット(MW)〜200MWほどの範囲の所要電力を有する半導体製造工場などの電力に敏感な1つ以上の負荷との間の単一の切換え接続部で提供される。
【0013】
さらに、US 5 172 009 Aは、正常動作条件中に通常のAC電力をAC電源から臨界負荷へ供給し、AC電源の停止中に非常用AC電力を負荷へ供給するための待機電源システムに言及する。通常動作中、待機電源システムは、負荷によって引出された入力電流における望ましくない高調波成分を積極的に中和する。待機電源システムは、バックアップ電源に結合されたDC側と、負荷およびAC電源と並列のAC側とを有する、電力変換装置を含む。高調波歪みセンサが、正常動作条件中に負荷によって引出された負荷電流の高調波歪み電流成分を感知する。コントローラが高調波歪みセンサに応答して、電力変換装置に高調波中和電流を生成させて、負荷によって生成された高調波歪み電流成分を実質的に中和する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の開示
この発明の目的は、当該技術分野において公知のオフラインUPSの上述の欠点のうちの少なくともいくつかを克服する、オフライン無停電電源装置の動作のための方法と、当該方法を行なうためのオフライン無停電電源装置とを提供することである。特に、この発明の目的は、オフラインUPSの全体的性能を向上させ、ならびに/もしくは、下流の電流およびネットワークインピーダンス相互作用による下流の負荷の乱れ、下流の負荷の高調波、および下流の障害に対する感度を減少させ、ならびに/もしくは、電力品質イベントの誤った検出を減少させ、ならびに/もしくは、オフラインUPSの寿命を増加させ、必要な保守およびサービスを減少させ、ならびに/もしくは、下流の障害の検出時の負荷制限のリスクの減少を示す、オフライン無停電電源装置の動作のための方法と、当該方法を行なうためのオフライン無停電電源装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、独立請求項によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項で与えられる。
【0016】
特に、本発明は、電源の停止の場合に電力を負荷へ供給するためのオフライン無停電電源装置、特に中電圧無停電電源装置の動作のための方法であって、無停電電源装置は、電源と負荷との間に配置された少なくとも1つの切断スイッチと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵器と、切断スイッチの負荷側で少なくとも1つのエネルギー貯蔵器と負荷との間に配置された少なくとも1つの電力コンバータと、電源の停止の場合に少なくとも1つのエネルギー貯蔵器から負荷へ電力を供給するように少なくとも1つの電力コンバータを制御するための制御装置とを含み、方法は、電力品質イベントを識別するステップと、電力供給側品質イベントから負荷側イベントを分けるために、電力品質イベントを区別するステップと、識別された電力品質イベントから電力供給側電力品質イベントを識別すると、少なくとも1つのエネルギー貯蔵器から負荷へ電力を供給するステップと、負荷に関してネットワークインピーダンス補償を行なうステップとを含み、電力供給側品質イベントから負荷側イベントを分けるために、電力品質イベントを区別するステップは、ネットワークインピーダンス補償された商用電圧および負荷電流を使用することを含む、方法を提供する。
【0017】
本発明はまた、電源の停止の場合に電力を負荷へ供給するためのオフライン無停電電源装置、特に中電圧無停電電源装置であって、無停電電源装置は、電源と負荷との間に配置された少なくとも1つの切断スイッチと、少なくとも1つのエネルギー貯蔵器と、切断スイッチの負荷側で少なくとも1つのエネルギー貯蔵器と負荷との間に配置された少なくとも1つの電力コンバータと、電源の停止の場合に少なくとも1つのエネルギー貯蔵器から負荷へ電力を供給するように少なくとも1つの電力コンバータを制御するための制御装置とを含み、制御装置は上述の方法を行なうように適合される、オフライン無停電電源装置を提供する。
【0018】
本発明はさらに、上述の方法を行なうためのコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品を提供する。
【0019】
本発明はさらに、オフライン無停電電源装置をアップグレードするためのソフトウェアパッケージであって、ソフトウェアパッケージは、上述の方法を行なうようにオフライン無停電電源装置を制御するための命令を含む、ソフトウェアパッケージを提供する。
【0020】
この発明の基本的な考え方は、上流の電力品質イベントの確実な検出を可能にすることである。これは、たとえば、上流の電力品質イベントと下流のイベントとの区別を含み、下流のイベントは、たとえば負荷が起動されて電源からの電力引出しを開始する際に、特に負荷によって生じる。よって、電力品質イベントが検出されると、負荷側イベントと電力供給側品質イベントとを見分けるために、区別が行なわれる。電力品質イベントが電力供給側電力品質イベントとして識別された場合のみ、電源からエネルギー貯蔵器への電力供給の振替えが行なわれ、そのため、エネルギー貯蔵器からの電力が負荷へ供給される。
【0021】
したがって、オフラインUPSから負荷への電力供給は、電力品質イベントが電力供給側の、すなわち上流の電力品質イベントである場合に限定され得る。また、電力品質イベントの誤った検出を減少させ、さらには回避することができる。これは、起動時間の減少により、オフラインUPSの寿命を増加させ得る。これは、保守およびサービスのための労力の減少を生み出す。また、下流の障害の検出時に下流の負荷を制限するリスクを減少させることができ、電源から供給されるような商用供給電圧の追跡における精度を高めることができる。
【0022】
この発明の利点は、受動負荷切換えによる瞬間的な電圧の乱れまたは回転機械の始動プロセスによる電圧歪みの拒否、MV分配ネットワークが障害を取り除くことを可能にする下流のフィーダの障害の識別、電力品質イベント時の電源への負荷のフィードバックのようなシナリオにおける電力品質イベントの識別、および、MV分配ネットワーク電圧の追跡における精度の増加、におけるオフラインUPSの強化を含む。ネットワークとは、電気エネルギーを異なる負荷に分配するための分配ネットワークを指す。電気エネルギーは好ましくは、低電圧(LV)ネットワークフィーダを通して異なる負荷へ供給される。よって、ネットワークは電力バスを含む。
【0023】
さらに別の利点は、この方法が、たとえば異なる種類のエネルギー貯蔵器および/または異なるアーキテクチャのオフラインUPSを含む、異なるオフラインUPSトポロジで実現され得るということである。さらに、この方法はまた、既存のオフラインUPSで、ソフトウェア、特に制御装置の制御ソフトウェアの単なる変更によって実現され得る。よって、既存のオフラインUPSは、この発明に従って容易に改良され得る。
【0024】
オフラインUPSを含むシステムでは、負荷は、オフラインUPSの下流側で設けられ、電源に直接接続される。電源は、入来する商用電力供給部、典型的には送電網供給部としてオフラインUPSの上流側で設けられている。負荷と電源との接続は、ケーブルまたはレールを含み得る電力バスによって達成される。電力バスは典型的には既存のシステム設置を指すため、それは典型的にはオフラインUPSの一部とは考えられないが、オフラインUPSは、電力接続を提供するためのケーブルおよび/またはバスバーも含む。
【0025】
少なくとも1つの電力コンバータを制御するための制御装置は、システム設計に依存して、少なくとも1つの電力コンバータと一体的に設けられ、または別個の装置として設けられ得る。制御装置は、オフラインUPS全体の制御を行なう。オフラインUPSの異なるコンポーネント、特に少なくとも1つの電力コンバータは独立して、それぞれのコンポーネントの内部制御を行なうための個別の制御ユニットを含んでいてもよい。制御装置には、オフラインUPSのコンポーネントのうちの1つが一体的に設けられてもよい。
【0026】
商用電圧とは、電源から供給される電圧を指す。これにより、中電圧分配ネットワークのインピーダンスにおける負荷の乱れ、高調波負荷、および下流の障害によって生じる電圧歪みの推定が可能になる。ネットワークインピーダンス補償はまた、下流の負荷の乱れ、下流の負荷の高調波、および下流の障害に対する商用供給電圧の感度を減少させ、そのため、商用供給電圧の追跡精度が高まる。
【0027】
ネットワークとは、電力バスを含む、電気エネルギーを負荷に分配するための分配ネットワークを指す。電気エネルギーは好ましくは、低電圧(LV)ネットワークフィーダを通して負荷へ供給される。
【0028】
この発明の修正された実施形態によれば、負荷に関してネットワークインピーダンス補償を行なうステップは、ネットワークのインピーダンス測定を行なうことを含む。したがって、インピーダンスは常に最新であるといつでも判断可能であり、そのため、インピーダンスの補償を確実に行なうことができる。これに代えて、ネットワークインピーダンスを、たとえばネットワーク設計から導き出すことができる。インピーダンス測定を行なうための方法自体は公知であり、したがって詳細には説明されない。
【0029】
この発明の修正された実施形態によれば、ネットワークインピーダンス補償を行なうステップは、ネットワークインピーダンスにおける下流の負荷の乱れ、下流の負荷の高調波、および下流の障害の作用による電圧歪みを推定することにより、電源から供給されるような商用電圧に対する影響を鈍くすることを含む。ここに説明されるようなネットワークインピーダンス補償は、オフラインUPSの下流側で起こる影響に基づく電力品質イベントと上流の電力品質イベントとの確実な区別を可能にし、上流の電力品質イベントはオフラインUPSの介入を必要とし、すなわち、電源から、少なくとも1つの電力コンバータを介する少なくとも1つのエネルギー貯蔵器からの電力供給への振替えを必要とする。よって、制御装置は、上流の電力品質イベントを識別するために後処理される電力品質イベントの検出を行なうことができ、または、上流の電力品質イベントのみが検出されるように電力品質イベントの検出自体を修正することができる。
【0030】
この発明の修正された実施形態によれば、少なくとも1つのエネルギー貯蔵器から負荷へ電力を供給するステップは、少なくとも1つの切断スイッチを使用して電源装置を負荷から切り離すことを含む。電源から負荷を切り離すことは、電源からエネルギー貯蔵器への電力供給の効率的な振替えを可能にする。
【0031】
図面の簡単な説明
この発明のこれらのおよび他の局面は、以下に説明される実施形態から明らかになり、当該実施形態を参照して説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1の実施形態に従ったオフライン無停電電源装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な説明
図1は、この発明の第1の好ましい実施形態に従ったオフライン無停電電源装置100(オフラインUPS)を示す。第1の実施形態に従ったオフラインUPS100は、中電圧無停電電源装置である。
【0034】
動作のために、オフラインUPS100は、負荷側である下流側104で負荷に接続され、電力供給側である上流側108で電源に接続される。負荷および電源は、図面には示されていない。この実施形態における電源は、商用電圧を供給する送電網供給部である。負荷と電源装置とは、ケーブルまたはバスバーを含む電力バス110によって相互接続される。この実施形態における電力バス110はオフラインUPS100の一部と考えられるが、電力バス110はまた、電源と負荷とを相互接続するためのシステム設置の一部であり得る。なお、この点で、負荷は、電力バス110に個別に接続された個別の負荷ユニットを含んでいてもよい。負荷ユニットはともに負荷を形成する。
【0035】
オフラインUPS100は、電源と負荷との間の電力バス110に配置された切断スイッチ112を含む。オフラインUPS100はさらに、エネルギー貯蔵器114と電力コンバータ116とを含み、電力コンバータ116はエネルギー貯蔵器114を電力バス110に接続する。電力コンバータ116は、切断スイッチ112の下流側104で電力バス110に接続される。
【0036】
さらに、この実施形態におけるオフラインUPS100は、必要に応じて電圧適合を行なうために設けられたいくつかの結合トランス118を含む。1つの結合トランス118が電力コンバータ116と電力バス110との間に設けられる。さらに別の結合トランス118が切断スイッチ112の上流側で設けられる。さらに別の結合トランス118が電力バス110の下流側で設けられ、接続された負荷のために電圧適合を行なう。負荷ユニットを接続する結合トランス118は、ネットワークフィーダ、またはフィーダとも呼ばれる。
【0037】
負荷を電力バス110とともにオフラインUPS100に接続することは、電気エネルギーを負荷に、すなわち負荷ユニットに分配するためのネットワーク119、特に分配ネットワークを形成する。よって、ネットワーク119は電力バス110を含む。
【0038】
第1の実施形態によれば、オフラインUPS100は制御装置120も含む。制御装置120は、オフラインUPS100全体の制御を行なう。この実施形態における制御装置120は、個別の装置として設けられる。代替的な一実施形態では、制御装置120は、電力コンバータ116と一体的に設けられる。
【0039】
通信リンク122が、切断スイッチ112、電力コンバータ116、および制御装置120を相互接続する。通信リンク122は、工業的に頑強な、低遅延および/または長距離の通信リンクである。通信リンク122は、オフラインUPS100のすべてのコンポーネントが接続される通信バスとして設けられる。代替的な一実施形態では、オフラインUPS100のコンポーネントはすべて、制御装置120に個別に接続される。通信リンク122は、光ファイバーに基づく物理リンクを含む。これに代えて、物理リンクはツイストペア接続に基づく。通信リンク122は、低遅延の高速長距離通信リンク122を可能にする。この実施形態では、カスタム通信プロトコルが実現される。代替的な一実施形態では、既存の工業通信プロトコルが採用される。
【0040】
次に、オフラインUPS100の動作を説明する。
オフラインUPS100の基本動作は、電力品質イベント、たとえば電源の停止の場合にエネルギー貯蔵器114から負荷へ電力を供給することである。電力品質イベントは、負荷の動作を危険にさらし得るあらゆるイベント、特に電圧降下、電源の完全停止、または電源における電圧の乱れを含む。
【0041】
制御装置120は、電力品質イベントについて電源を連続的に監視する。オンラインUPSとは対照的に、オフラインUPS100は、電力品質イベントが検出されない限り受動的である。制御装置120が電力品質イベントを検出した場合、制御装置120は、電力コンバータ116を介して電源からエネルギー貯蔵器114に電力供給の振替えを行なう。振替え中、制御装置120は、切断スイッチ112を使用して電源装置を負荷から切り離し、負荷を支持するために電力コンバータ116を起動する。
【0042】
電力品質イベントを識別すると、制御装置120は、電力供給側品質イベントから負荷側イベントを分けるために、電力品質イベントを区別する。負荷側イベントとは、たとえば負荷が起動されて電源からの電力引出しを開始する際に、特に負荷によって生じるイベントである。したがって、受動負荷切換えによる瞬間的な電圧の乱れ、または、負荷の一部である回転機械の始動プロセスによる電圧歪みを克服することができ、それにより、たとえば下流のフィーダの障害の識別が可能になり、そのため、負荷側104の分配ネットワーク119は障害を取り除くことができる。
【0043】
これは、負荷に関してネットワークインピーダンス補償を行なうことを含む。したがって、電力供給側品質イベントから負荷側イベントを分けるために電力品質イベントを区別することは、ネットワークインピーダンス補償された商用電圧および負荷電流を使用することを含む。商用電圧とは、電源から供給される電圧を指す。よって、分配ネットワークのインピーダンスにおける負荷の乱れ、高調波負荷、および下流の障害によって生じる電圧歪みの推定が行なわれる。ネットワークインピーダンス補償の根拠は、ネットワークインピーダンス補償のステップとともに行なわれる、ネットワーク119のインピーダンス測定である。
【0044】
ネットワークインピーダンス補償を行なうことはまた、ネットワークインピーダンスにおける下流の負荷の乱れ、下流の負荷の高調波、および下流の障害の作用による電圧歪みを推定することにより、電源から供給されるような商用電圧に対する影響を鈍くすることを含む。このネットワークインピーダンス補償は、オフラインUPS100の下流側104で起こる影響に基づく電力品質イベントと上流の電力品質イベントとの区別の根拠であり、上流の電力品質イベントはオフラインUPS100の介入を必要とし、すなわち、電源から、電力コンバータ116を介するエネルギー貯蔵器114からの電力供給への振替えを必要とする。
【0045】
さらに、識別された電力品質イベントから電力供給側電力品質イベントを識別すると、制御装置120は、上述のように、電力コンバータ116を介して電源からエネルギー貯蔵器114に電力供給の振替えを行なう。
【0046】
この発明を図面に示し、前述の説明で詳細に説明してきたが、そのような図示および説明は例示的で、限定的ではないと考えられるべきであり、この発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態への他の変更は、当業者が請求された発明を実践する際に図面、開示、および添付された請求項を検討すれば、当業者によって理解され行なわれ得る。請求項において、「含む」(comprising)という文言は他の要素またはステップを除外せず、また、単数(a, an)は複数を除外しない。ある措置が互いに異なる従属クレームに記載されるという単なる事実は、これらの措置の組合せを有利に使用することができないということを示さない。請求項におけるどの参照符号も、範囲を限定するとして解釈されるべきでない。
【符号の説明】
【0047】
参照符号リスト
100 オフライン無停電電源装置、オフラインUPS
104 下流側、負荷側
108 上流側、電力供給側
110 電力バス
112 切断スイッチ
114 エネルギー貯蔵器
116 電力コンバータ
118 結合トランス
119 ネットワーク
120 制御装置
122 通信リンク
図1