特許第6876644号(P6876644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ホンダロックの特許一覧

<>
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000002
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000003
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000004
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000005
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000006
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000007
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000008
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000009
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000010
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000011
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000012
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000013
  • 特許6876644-車両のリッド開閉装置 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876644
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】車両のリッド開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   B60K15/05 B
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-33506(P2018-33506)
(22)【出願日】2018年2月27日
(65)【公開番号】特開2019-147475(P2019-147475A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2020年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】高妻 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山元 崇
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−117313(JP,A)
【文献】 特開2016−223150(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0291996(US,A1)
【文献】 特開2013−124487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能なリッド(17)を押し込むのに応じた押し込み位置ならびに前記リッド(17)が開き状態にあるときの突出位置間での進退動作を可能とするとともに前記リッド(17)の閉じ状態では前記押し込み位置から前記突出位置側に所定移動量だけ戻ったリッド閉じ位置となるロッド(21)と、前記リッド閉じ位置にある前記ロッド(21)の移動を規制する規制位置ならびにその規制を解除する規制解除位置間で作動することを可能とした規制部材(28)と、ドアのロック状態では前記規制部材(28)を前記規制位置とするとともに前記ドアのアンロック状態で前記規制部材(28)を前記規制解除位置とするようにしつつ前記ロック状態および前記アンロック状態の切替えに応じて所定時間だけ作動して前記規制部材(28)を駆動する電動モータ(29)と、前記規制部材(28)および前記電動モータ(29)が収容されるケース(22)とを備える車両のリッド開閉装置において、前記規制部材(28)の少なくとも前記規制解除位置を弾発的に保持する保持機構(68)を含むことを特徴とする車両のリッド開閉装置。
【請求項2】
前記保持機構(68)が、前記ケース(22)の一部を構成するケース構成部材(24)に一体に設けられる当接部(69)と、前記規制部材(28)が前記規制解除位置から前記規制位置側に移動する途中の位置では前記規制部材(28)を前記規制解除位置側に付勢するようにして前記当接部(69)に当接しつつ前記規制部材(28)に取り付けられる弾発部材(70)とで構成されることを特徴とする請求項1に記載の車両のリッド開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能なリッドを押し込むのに応じた押し込み位置ならびに前記リッドが開き状態にあるときの突出位置間での進退動作を可能とするとともに前記リッドの閉じ状態では前記押し込み位置から前記突出位置側に所定移動量だけ戻ったリッド閉じ位置となるロッドと、前記リッド閉じ位置にある前記ロッドの移動を規制する規制位置ならびにその規制を解除する規制解除位置間で作動することを可能とした規制部材と、ドアのロック状態では前記規制部材を前記規制位置とするとともに前記ドアのアンロック状態で前記規制部材を前記規制解除位置とするようにしつつ前記ロック状態および前記アンロック状態の切替えに応じて所定時間だけ作動して前記規制部材を駆動する電動モータと、前記ロッドを進退作動可能に支持するとともに前記規制部材および前記電動モータを収容するケースとを備える車両のリッド開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リッドを押し込むのに応じた押し込み位置ならびにリッドが開き状態にあるときの突出位置間での進退動作を可能としたロッドが、リッドの閉じ状態では前記押し込み位置および前記突出位置間のリッド閉じ位置となるようにし、当該ロッドがリッド閉じ位置にある状態において、ドアがロック状態となったときに電動モータによって規制部材を駆動してロッドに係合することでロッドの軸方向移動を規制し、ドアがアンロック状態となったときに電動モータによって規制部材を駆動してロッドとの係合を解除することでロッドの軸方向移動の規制を解除するようにした車両のリッド開閉装置が、特許文献1で既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−117313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ロッドが突出位置にある状態すなわちリッドが開いている状態で、車両ユーザーが誤ってドアをロック状態にしてしまうと、規制解除位置にあった規制部材が電動モータによって規制位置側に駆動されるものの、突出位置にあるロッドに規制部材は係合不能であるので、規制部材が規制位置に達していない中途半端な位置で停止してしまう。このような状態が生じたときに、ロッドを突出位置からリッド閉じ位置に移動させて当該ロッドの移動を規制し、リッドの閉じ状態を保持するために、上記特許文献1で開示されたものでは、ドアをロック状態からアンロック状態に切り替える操作を行なって規制部材を規制解除位置に戻す操作を行なってロッドをリッド閉じ位置に移動させてから再びドアをロック状態とすることで、電動モータで規制部材を規制位置に駆動することが必要となり、アンロック状態に戻すようにした無駄な操作が必要となり、利便性が劣っている。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ロッドが突出位置にある状態でのドアのロック操作によって規制部材が規制解除位置および規制位置間の中途半端な位置に停止しても、アンロック操作を不要としてロッドをリッド閉じ位置に移動させてロック操作を行なうことでリッド閉じ位置にあるロッドを規制部材で規制し得るようにし、利便性を高めた車両のリッド開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、開閉可能なリッドを押し込むのに応じた押し込み位置ならびに前記リッドが開き状態にあるときの突出位置間での進退動作を可能とするとともに前記リッドの閉じ状態では前記押し込み位置から前記突出位置側に所定移動量だけ戻ったリッド閉じ位置となるロッドと、前記リッド閉じ位置にある前記ロッドの移動を規制する規制位置ならびにその規制を解除する規制解除位置間で作動することを可能とした規制部材と、ドアのロック状態では前記規制部材を前記規制位置とするとともに前記ドアのアンロック状態で前記規制部材を前記規制解除位置とするようにしつつ前記ロック状態および前記アンロック状態の切替えに応じて所定時間だけ作動して前記規制部材を駆動する電動モータと、前記ロッドを進退作動可能に支持するとともに前記規制部材および前記電動モータを収容するケースとを備える車両のリッド開閉装置において、前記規制部材の少なくとも前記規制解除位置を弾発的に保持する保持機構を含むことを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記保持機構が、前記ケースの一部を構成するケース構成部材に一体に設けられる当接部と、前記規制部材が前記規制解除位置から前記規制位置側に移動する途中の位置では前記規制部材を前記規制解除位置側に付勢するようにして前記当接部に当接しつつ前記規制部材に取り付けられる弾発部材とで構成されることを第2の特徴とする。
【0008】
なお実施の形態のカバー24が本発明のケース構成部材に対応する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば、ロッドが突出位置にある状態で誤ってドアのロック操作が行なわれたとしても、保持機構によって規制部材の規制解除位置が弾発的に保持されているので、規制部材が規制位置に達していない中途半端な位置で停止してしまうことはなく、規制部材は規制解除位置に保持される。したがってドアをロック状態からアンロック状態に戻す操作を行なう必要がなく、ロッドをリッド閉じ位置に移動させてからロック操作を行なうことで、ロッドの移動をスムーズに規制することができ、利便性を高めることができる。
【0010】
また本発明の第2の特徴によれば、保持機構が、規制部材に取り付けられる弾性部材と、その弾性部材を当接させる当接部とで構成され、当接部がケースの一部構成するケース構成部材に一体に設けられるので、部品点数の増大を回避して保持機構を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車体外板を破断してリッド開閉装置の取り付け状態を示す斜視図である。
図2】ロッドがリッド閉じ位置にあるときのリッド開閉装置を図1の2矢視方向から見た平面図である。
図3】ドアがロック状態にあるときの図2の3−3線断面図である。
図4】電動モータおよび規制部材を取り外した状態での図3に対応した断面図である。
図5図3の5−5線断面図である。
図6図3の6−6線断面図である。
図7】軸方向位置規制溝内でのピンの位置変化を説明するための図である。
図8】ロッドが押し込み位置にある状態でのリッド開閉装置の図3に対応した断面図である。
図9】ロッドが突出位置にある状態でのリッド開閉装置の図3に対応した断面図である。
図10図9の10−10線断面図である。
図11】ロッドが突出位置にある状態でドアをロック状態としたときの図10に対応した断面図である。
図12図5の12矢視図である。
図13】緊急用操作部材を操作した状態での図12に対応した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について図1図13を参照しながら説明すると、先ず図1において、車両の車体外板15には、図示しない燃料給油部を臨ませる凹部16が形成されており、この凹部16を開閉可能に閉じるリッド17の基端部が前記車体外板15に回動可能に支持される。また前記リッド17の遊端側内面には係止部18が設けられており、その係止部18に係脱可能に係合する係合部21aが先端部に設けられるロッド21を有するリッド開閉装置20のケース22が、前記凹部16の底壁16aに取り付けられる。
【0013】
図2図6を併せて参照して、前記ケース22は、矩形の箱状に形成されるケース主体23と、そのケース主体23の開口端を閉じるようにして当該ケース主体23に結合されるカバー24とで構成される。
【0014】
前記ケース主体23は、上下方向に間隔をあけて車幅方向に延びる上部側壁23aおよび下部側壁23bと、上部および下部側壁23a,23bの車幅方向外側の端部間を結んで上下方向に延びる外側側壁23cと、上部および下部側壁23a,23bの車幅方向内側の端部間を結んで上下方向に延びる内側側壁23dと、上部側壁23a、下部側壁23b、外側側壁23cおよび内側側壁23dの車両前後方向に沿う一端部に共通に連設される平板状の端壁23eとを一体に有する。前記カバー24は、前記端壁23eに対向するようにして車両前後方向に沿う他方から前記ケース主体23に結合される。
【0015】
ところで前記凹部16の前記底壁16aには矩形の挿入孔25(図1参照)が形成されており、前記ケース22は車幅方向外側から前記挿入孔25に挿入される。しかも前記ケース主体23の前記外側側壁23cには、その外周から外側方に張り出す矩形の鍔部23fが一体に連設されており、当該鍔部23fと、前記挿入孔25の周縁部における前記底壁16aの外面との間に、前記ケース22の前記鍔部23f側端部を囲繞する矩形の内側シール部材26とを介在させるようにして前記ケース22が車幅方向外側から前記挿入孔25に挿入される。また前記ケース主体23における前記上部側壁23aおよび前記下部側壁23bには、前記ケース22の前記挿入孔25への挿入時には撓むことで挿入孔25を通過する弾発爪27の基端部が連設されており、この弾発爪27の先端部が前記底壁16aの内面に当接する。すなわち前記鍔部23fおよび前記弾発爪27間に前記内側シール部材26および前記底壁16aが挟持されることになり、これによって前記ケース22が前記底壁16aに取り付けられる。
【0016】
前記リッド開閉装置20は、前記ロッド21と、当該ロッド21の移動を規制し得る規制部材28と、その規制部材28を駆動する電動モータ29とを備え、前記規制部材28および前記電動モータ29は前記ケース22内に収容される。
【0017】
前記ロッド21は、前記ケース22の上部で車幅方向に延びるように配設されて、前記ケース22の前記ケース主体23に移動可能に支持される。前記ケース主体23における前記端壁23eの内面には、横断面円形である前記ロッド21の外周面の一部に摺接するようにして円弧状に凹んだ摺接支持面30を突出端に有する支持突条31が、前記ロッド21の長手方向に延びて一体に突設される。また前記ケース主体23における前記外側側壁23cの上部には、前記ロッド21を軸方向移動可能に挿通させる挿通孔32が形成されるとともに、その挿通孔32の一部を形成するようにして前記外側側壁23cから前記凹部16側に突出する短円筒部23gが一体に突設されており、この短円筒部23gには、前記ロッド21の外周に弾発的に摺接する環状の外側シール部材33が装着される。
【0018】
前記ケース22内で、前記ロッド21にはホルダ35が装着される。このホルダ35は、前記端壁23e側に開放した略U字状の横断面形状を有するように形成されており、前記ロッド21の外周に形成された環状溝36に係合する係合鍔35aが、前記ホルダ35に一体に形成される。これにより前記ホルダ35は、前記ロッド21との軸方向相対移動を不能としつつ当該ロッド21の軸線まわりの制限された範囲での相対回動を可能として前記ロッド21に装着されることになる。
【0019】
前記ケース主体23の前記内側側壁23d寄りで前記ロッド21には、リング状のばね収容凹部37が前記ロッド21の軸線と同軸にかつ前記外側側壁23c側に開放するようにして形成されており、前記ばね収容凹部37内に一部を収容するようにしたコイルばね38が、前記ロッド21と、前記外側側壁23cとの間に設けられる。
【0020】
前記コイルばね38の弾発力によって、前記ロッド21は、その先端部の前記係合部21aが車体外板15から突出する方向に付勢されるものであり、このロッド21の軸方向位置を規制するために、前記ケース主体23の前記上部側壁23aとは反対側で前記ホルダ35の外面には、図7で示す軸方向位置規制溝40が形成され、その軸方向位置規制溝40にピン41が挿入される。
【0021】
前記ホルダ35および前記電動モータ29間には、板ばねから成るアームプレート42が前記ロッド21の長手方向に長く延びるように配置されており、このアームプレート42の基端部に挿通されるシャフト43が前記ケース主体23および前記カバー24間に挟持され、前記アームプレート42は、前記ケース22内で許容される範囲での回動を可能として前記シャフト43に支持される。
【0022】
前記ピン41は、前記アームプレート42の遊端部寄りに固着されており、前記アームプレート42の基端部寄りに前記ロッド21とは反対側から当接する突部44が前記ケース主体23に突設される。これにより前記アームプレート42は、前記ピン41を前記ホルダ35側に付勢する弾発力を発揮する。
【0023】
ところで前記ロッド21は、閉じ状態および開き状態にある前記リッド17を押し込むのに応じて図8で示すように前記コイルばね38の弾発力に抗して押し込まれる押し込み位置と、前記リッド17が開き状態にあるときに図9で示すように前記コイルばね38の弾発力で前記ケース22から大きく突出した突出位置との間での進退動作が可能であり、しかも前記リッド17の閉じ状態で前記ロッド21は、図2図3図4および図6で示すように、前記押し込み位置から前記突出位置側に所定移動量だけ戻ったリッド閉じ位置となる。
【0024】
前記ケース主体23の前記内側側壁23dの端部で前記ロッド21には、丸棒状のストッパ21bが同軸にかつ一体に突設されており、このストッパ21bは、図8で示すように、前記ロッド21が前記押し込み位置にあるときに前記ケース主体23の前記内側側壁23dに当接して、押し込み方向での前記ロッド21の移動端を規制する。また前記ホルダ35は前記ロッド21の前記突出位置を規制する働きをするものであり、前記ロッド21が前記突出位置にある状態では、図9で示すように、前記ホルダ35が前記ケース主体23の前記外側側壁23cに当接して突出方向の前記ロッド21の移動端を規制するようにして、前記ロッド21に前記ホルダ35が取り付けられる。
【0025】
図7に注目して、前記軸方向位置規制溝40は、前記ロッド21が前記リッド閉じ位置にあるときに、前記コイルばね38によって前記ロッド21とともに矢印45で示す付勢方向に付勢された前記ホルダ35を前記ピン41で受けて前記ロッド21が突出位置まで移動するのを阻止するようにしつつ前記ピン41に前記付勢方向に沿う方向で当接するピン受け部40aと、前記ロッド21および前記ホルダ35が押し込み位置にあるときに前記ピン41を受け入れるようにした第1および第2の押し込み位置受容部40b,40cと、前記ロッド21および前記ホルダ35が突出位置にあるときに前記ピン41を受け入れるようにした突出位置受容部40dとを有するように形成される。
【0026】
そしてリッド17が閉じ位置にある状態で押し込むと、前記ロッド21および前記ホルダ35の押し込み位置への移動によって前記ピン41は矢印46で示すように前記ピン受け部40aから第1の押し込み位置受容部40bに変位し、リッド17を押し込む力を解放することで前記ロッド21および前記ホルダ35が突出位置に移動すると前記ピン41は矢印47で示すように第1の押し込み位置受容部40bから突出位置受容部40dに変位する。また前記リッド17が開き位置にある状態で前記リッド17とともに前記ロッド21を押し込むと、前記ロッド21および前記ホルダ35の押し込み位置への移動によって前記ピン41は矢印48で示すように第2の押し込み位置受容部40cに変位し、リッド17を押し込む力を解放することで前記ロッド21および前記ホルダ35がリッド閉じ位置に移動すると前記ピン41は矢印49で示すように第2の押し込み位置受容部40cから前記ピン受け部40aに変位し、当該ピン受け部40aに当接する。
【0027】
また前記軸方向位置規制溝40には、前記ピン41の前記ピン受け部40aから前記第2の押し込み位置受容部40cへの逆変位を阻止するための第1の段差部50、前記ピン41の前記第1の押し込み位置受容部40bから前記ピン受け部40aへの逆変位を阻止する第2の段差部51、前記ピン41の前記突出位置受容部40dから前記第1の押し込み位置受容部40bへの逆変位を阻止する第3の段差部52、ならびに前記ピン41の前記第2の押し込み位置受容部40cから前記突出位置受容部40dへの逆変位を阻止する第4の段差部53が形成される。
【0028】
ところで前記ロッド21の先端部の前記係合部21aは略T字状に形成されており、この係合部21aは、前記リッド17が閉じ位置にある状態では前記係止部18に係合するものの前記リッド17が開くときには前記係止部18との係合を解除するものであり、前記ロッド21がその軸線まわりに90度回動することにより、前記係止部18への前記係合部21aの係合および係合解除が切替えられる。
【0029】
図6に注目して、前記ロッド21の前記ケース主体23における前記端壁23e側に臨む外周には、螺旋状のガイド溝54が形成されており、そのガイド溝54に突入される突起55が前記端壁23eに一体に突設される。前記ガイド溝54は、前記ロッド21が前記押し込み位置および前記突出位置間で軸方向に移動する間に、当該ロッド21をその軸線まわりに90度軸回動させるように形成される。
【0030】
前記電動モータ29は、前記ロッド21の軸線と平行な回転軸線を有するものであり、前記ロッド21および前記ホルダ35の下方で前記ケース主体23の前記内側寄りに配置されるようにして前記ケース22内に収容される。前記ケース主体23には、当該電動モータ29を収容するモータ収容凹部56を前記内側側壁23dおよび前記下部側壁23bと協働して形成する略L字の仕切壁57が一体に突設される。しかも前記仕切壁57には、前記アームプレート42に固着された前記ピン41の一部を収容する切欠き部58が形成される。また前記内側側壁23dには、前記電動モータ29に連なる一対の接続端子59を内部に臨ませるコネクタ部23hが一体に形成される。
【0031】
前記規制部材28は、前記電動モータ29よりも車幅方向外側で前記ロッド21およびホルダ35の下方に配置されるようにして前記ケース22内に収容されており、図3および図5で示すように前記リッド閉じ位置にある前記ロッド21に係合して当該ロッド21の移動を規制する規制位置と、図8図9および図10で示すように、前記ロッド21との係合を解除して前記ロッド21から離反する側に移動して前記ロッド21の規制を解除する規制解除位置との間で、前記ロッド21の進退方向と直交する方向、この実施の形態では上下方向に作動することを可能として前記ケース22に収容される。
【0032】
前記ロッド21の外周には、当該ロッド21が前記リッド閉じ位置にあるときに前記規制部材28側に臨む係止凹部61が形成されており、ロッド21が前記リッド閉じ位置にあるときに前記係止凹部61に嵌入、係合する係合突起62が前記規制部材28の前記ロッド21側端部に突設される。また前記規制部材28の前記ロッド21側端部には、前記ロッド21が前記リッド閉じ位置にある状態で規制位置に前記規制部材28が移動したときに、図5で示すように、前記端壁23eの内面に突設された前記支持突条31に当接して前記規制部材28の前記規制位置を定めるストッパ63が一体に突設される。
【0033】
前記電動モータ29の出力軸64は、前記ロッド21の軸線と平行すなわち前記規制部材28の作動方向と直交する軸線を有するものであり、前記仕切壁57を回転自在に貫通して前記規制部材28側に突出される。一方、前記規制部材28には、その移動方向に沿って延びるラック65が設けられており、このラック65に、前記出力軸64に設けられるピニオン66が噛合される。したがって前記規制部材28は、前記電動モータ29の作動によって、前記規制位置および前記規制解除位置間で作動するように駆動されることになる。
【0034】
ところで前記電動モータ29は、車両ユーザによるキーレスボタン操作やスマートエントリーシステムによって車両のドアのロック状態およびアンロック状態が切替えられるのに応じて所定時間(たとえば0.6秒)だけ作動するものであり、ドアのロック状態で前記電動モータ29は前記規制部材28を前記規制位置に駆動し、ドアのアンロック状態で前記電動モータ29は前記規制部材28を前記規制解除位置に駆動する。
【0035】
ところがロッド21が突出位置にある状態すなわちリッド17が開いている状態で、車両ユーザーが誤ってドアをロック状態にしてしまうと、規制解除位置にあった規制部材28が電動モータ29によって規制位置側に駆動されるものの、突出位置にあるロッド21に規制部材28は係合不能であり、図11で示すように、前記規制部材28の前記係合突起62および前記ストッパ63は、前記規制位置に達する前に前記ホルダ35に当接し、前記規制位置への前記規制部材28の移動が阻止されることになる。このため電動モータ29の作動停止時に、規制部材28が規制位置に達していない中途半端な位置で停止してしまう可能性があるが、保持機構68の働きによって前記規制部材28は規制解除位置に戻される。
【0036】
前記保持機構68は、前記規制部材28の少なくとも前記規制解除位置を弾発的に保持するものであり、前記ケース22の一部を構成するケース構成部材である前記カバー24に一体に設けられる当接部69と、前記規制部材28が前記規制解除位置から前記規制位置側に移動する途中の位置では前記規制部材28を前記規制解除位置側に付勢するようにして前記当接部69に当接しつつ前記規制部材28に取り付けられる弾発部材70とで構成される。
【0037】
前記規制部材28には、前記ケース主体23の前記外側側壁23c側に開放した溝71が、当該規制部材28の移動方向に沿う全長にわたって形成されており、この溝71内に配置される支軸72が前記規制部材28に一体に突設される。前記弾発部材70は、前記支軸72を囲繞するコイル部70aと、そのコイル部70aの両端から延びる第1および第2アーム部70b,70cとを有する。
【0038】
前記弾発部材70の前記第1アーム部70bは、前記溝71の両側の側壁71a,71bのうち前記カバー24から遠い方の側壁71aに当接、支持される。また第2アーム部70cの先端部は、前記溝71の両側の側壁71a,71bのうち前記カバー24側の側壁71bに当接、支持され、この第2アーム部70cの中間部には、前記カバー24側に膨らむように湾曲した山形の弾発部分73が形成される。また前記規制部材28には、前記弾発部分73を挿通させるスリット74が設けられており、前記弾発部分73は、前記スリット74から前記カバー24側に突出する。
【0039】
一方、前記カバー24に突設される前記当接部69は、前記弾発部分73に常時当接するものであり、前記規制部材28が前記規制解除位置にある状態では、図10で示すように、前記弾発部分73がその山形の頂部73aよりも第2アーム部70cの先端部側で前記当接部69に当接しており、前記弾発部分73は前記規制部材28を前記規制解除位置側に付勢する弾発力を発揮する。また前記規制部材28が前記規制位置にある状態では、図5で示すように、前記弾発部分73がその山形の頂部73aよりも第2アーム部70cの先端部と反対側で前記当接部69に当接しており、前記弾発部分73は前記規制部材28を前記規制位置側に付勢する弾発力を発揮する。さらに前記規制部材28が、図11で示すように、前記規制位置および規制解除位置間の中間位置にあるときには、前記当接部69が前記弾発部分73の前記頂部73aを乗り越えることはなく、前記弾発部分73がその頂部73aよりも第2アーム部70cの先端部側で前記当接部69に当接しており、前記弾発部分73は前記規制部材28を前記規制解除位置側に付勢する弾発力を発揮する。これにより電動モータ29によって前記規制部材28が前記規制位置側に駆動されたときに規制部材28が規制位置に達していない中途半端な位置となったときには、前記電動モータ29の作動停止に伴って、前記規制部材28は前記保持機構68の働きによって規制解除位置に戻されることになる。
【0040】
ところで電動モータ29の不調時には、ロッド21がドア閉じ状態で規制する規制部材28を手動操作によって規制解除位置に戻さなければ、リッド17を開くことができないので、前記リッド開閉装置20には、前記電動モータ29の不調時に前記規制部材28を前記規制解除位置に移動させることを可能とした緊急用操作部材76が付設される。
【0041】
図12において、前記緊急用操作部材76は、前記ケース22の前記ケース主体23における前記端壁23eの外面に沿って前記ロッド21の移動方向と平行な方向に移動可能なものであり、前記端壁23eの外面に摺接する平板状の操作部材主部76aと、その操作主部に一体に連なって前記ロッド21の移動方向と平行に車幅方向内側に延びる棒状部76bと、円形孔を有して前記棒状部76bの先端部に設けられる操作部76cとを一体に有する。
【0042】
前記端壁23eの外面には、前記操作部材主部76aの上縁部に摺接可能な上部ガイド突条77と、前記操作部材主部76aの下縁部に摺接可能な下部ガイド突条78とが、上下方向に間隔をあけた位置で前記ロッド21の進退方向と平行に延びるようにして一体に突設される。また前記端壁23eの外面には、前記棒状部76bを移動自在に嵌合させるガイド孔79を有するガイド突部80が一体に突設される。
【0043】
ところで前記規制部材28には、前記端壁23eに設けられた矩形の開口部81(図4参照)を貫通して上方に突出する棒状の突起82が一体に突設されており、前記開口部81は、前記規制部材28が前記規制解除位置および前記規制位置間で移動する際の前記突起82の移動を許容するようにして、前記規制部材28の移動方向に沿って長く形成される。また前記開口部81には、前記突起82を外側から覆う矩形の袋状部83aを有するシールラバー83が装着される。
【0044】
前記規制部材28および前記緊急用操作部材76間には、前記ロッド21の進退方向と平行な方向に前記緊急用操作部材76を操作して当該緊急用操作部材76が移動するときに、その緊急用操作部材76からの操作力を、前記規制位置から前記規制解除位置に向けて前記規制部材28を前記ロッド21の進退方向と直交する方向に作動させる力に変換する操作力作用方向変換機構84が設けられる。
【0045】
この操作力作用方向変換機構83は、前記規制部材28に一体に突設される前記突起82と、前記規制部材28の作動方向と斜めに交差するように傾斜して前記緊急用操作部76に形成されるとともに前記突起82に当接するカム部85とで構成されるものであり、前記シールラバー83の袋状部83aを挿入させるようにして前記操作部材主部76aに形成される窓86の一側縁が、前記カム部85として前記規制部材28の作動方向と斜めに交差するように傾斜する。
【0046】
また前記緊急用操作部材76の前記操作部材主部76aには、その移動方向に長く延びるガイド孔87が設けられており、前記ケース22の前記ケース主体23における端壁23eの外面には、前記緊急用操作部材76の移動をガイドするとともに当該緊急用操作部材76の移動端を規制するようにして前記ガイド孔87に突入されるガイド突起88が突設される。
【0047】
前記規制部材28が規制位置にある状態で前記緊急用操作部材76を、図13の矢印89で示す方向に操作すると、前記シールラバー83の前記袋状部83aを介して前記規制部材28の突起82に、前記ロッド21の進退方向と平行な方向への前記緊急用操作部材76からの操作力を前記規制位置から前記規制解除位置に前記規制部材28を前記ロッド21の進退方向と直交する方向に作動させる力が作用することになる。この際、前記シールラバー83の前記袋状部83aは、図12で示すように変形して撓み、その袋状部83aの反力によって前記緊急用操作部材76は元の位置に戻ることになる。
【0048】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、リッド開閉装置20が、規制部材28の少なくとも規制解除位置を弾発的に保持する保持機構68を備えるので、ロッド21が突出位置にある状態で誤ってドアのロック操作が行なわれたとしても、保持機構68によって規制部材28の規制解除位置が弾発的に保持されているので、規制部材28が規制位置に達していない中途半端な位置で停止してしまうことはなく、規制部材28は規制解除位置に保持される。したがってドアをロック状態からアンロック状態に戻す操作を行なう必要がなく、ロッド21をリッド閉じ位置に移動させてからロック操作を行なうことで、ロッド21の移動をスムーズに規制することができ、利便性を高めることができる。
【0049】
また前記保持機構68が、前記ケース22の一部を構成するカバー24に一体に設けられる当接部69と、前記規制部材28が前記規制解除位置から前記規制位置側に移動する途中の位置では前記規制部材28を前記規制解除位置側に付勢するようにして前記当接部69に当接しつつ前記規制部材28に取り付けられる弾発部材70とで構成されるので、部品点数の増大を回避して保持機構68を構成することができる。
【0050】
またリッド開閉装置20が備える緊急用操作部材76および前記規制部材28間に、ロッド21の進退方向と平行な方向への前記緊急用操作部材76からの操作力を規制位置から規制解除位置に向けて前記規制部材28を作動させる力に変換する操作力作用方向変換機構84が設けられるので、ロッド21の進退方向と平行な方向に緊急用操作部材76を操作すると、操作力作用方向変換機構84の働きによって規制部材28が規制位置から規制解除位置に向けてロッド21の進退方向と直交する方向に作動することになり、緊急用操作部材76の操作方向をロッド21の進退方向と平行にすることで、車体外板15に設けられる挿入孔25を広くしなくても組み付け作業性を高めることができる。
【0051】
また操作力作用方向変換機構84が、前記規制部材28に一体に突設される突起82と、前記規制部材28の作動方向と斜めに交差するように傾斜して前記緊急用操作部材76に形成されるとともに前記突起82に当接するカム部85とで構成されるので、リンク機構等を用いることを不要として部品点数の増加を回避した簡単かつ小型の構造で操作力作用方向変換機構84が構成されることになり、リッド開閉装置20の小型化を図ることができる。
【0052】
さらに前記緊急用操作部材76にその移動方向に長く延びるガイド孔87が設けられ、前記ケース22に、前記緊急用操作部材76の移動をガイドするとともに当該緊急用操作部材76の移動端を規制するようにして前記ガイド孔87に突入されるガイド突起88が突設されるので、ケース22に突設されたガイド突起88が、緊急用操作部材76に設けられるガイド孔87に突入される簡単な構成で、緊急用操作部材76の移動をガイドするとともに緊急用操作部材76の移動端を規制することができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0054】
17・・・リッド
21・・・ロッド
22・・・ケース
24・・・ケース構成部材であるカバー
28・・・規制部材
29・・・電動モータ
68・・・保持機構
69・・・当接部
70・・・弾発部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13