(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を巻回体および耐火シートに具体化した第1実施形態について
図1および2にしたがって説明する。
【0024】
図1に示される本発明の第1実施形態の巻回体1は、可塑剤を含むポリ塩化ビニル系樹脂を含有する樹脂組成物から形成された耐火シート2を巻回してなる。
図2に示すように、
図1の巻回体1を、耐火シート2が平面状になるように延ばすと、Xが耐火シート2の長さ、Yが耐火シート2の幅、Zが耐火シート2の厚みである。本発明では、耐火シート2の全長Xは2m以上であり、上限値は好ましくは1000m以下であり、全長Xはより好ましくは200m以上である。耐火シート2の幅Yは特に限定されないが、好ましくは0.5m以上5m以下である。耐火シート2の厚みZは特に限定されないが、好ましくは下限値は0.5mmであり、上限値は100mm以下である。より好ましくは厚みZは1mm以上5mm以下である。厚みZを大きくすることで、耐火シート2の長尺化が可能である。厚みばらつきは0.1mm以下(つまり±0.1mm以下)であることが好ましい。厚みZが0.5mm以上であり、かつ厚みばらつきが0.1mm以下であることがより好ましく、厚みZが0.5mm〜5mmであり、かつ厚みばらつきが0.1mm以下であることがさらに好ましい。厚みZを0.5mm以上、かつ厚みばらつきを0.1mm以下とすることにより、耐火シート2の表面の気泡および曇りを抑制することができ、耐火シート2の展開性も良好となる。
【0025】
巻回体1の形態は特に限定されないが、耐火シート2をボビン(図示せず)に巻回することで巻回体1としてもよく、耐火シート2を巻芯に巻回することで、レコード巻き状に巻回した巻回体1としてもよい。
【0026】
厚みシート精度を増す為には、耐火シート2を構成する樹脂成分中に無機充填剤を効率よく分散させる必要がある。
【0027】
無機充填剤の分散性を向上させるためには、例えば、後述するように、無機充填剤の粒径を制御する方法を例示することができる。また、本発明の好ましい態様の一つとしては、熱膨張性無機物の粒径と無機充填剤の粒径との粒径比を制御する方法を例示することができる。熱膨張性無機物の粒径の無機充填剤の粒径に対する粒径比(熱膨張性無機物の粒径/無機物の粒径)の好ましい範囲は1〜1000であり、より好ましい範囲は3〜500であり、更に好ましい範囲は5〜50である。斯かる数値範囲とすることで、短時間で効率よく混練することができる。
【0028】
「MD」は、耐火シート2の成形時の樹脂組成物の流動方向(MD方向)を指し、「TD」は樹脂組成物の流動方向に直角な直角方向(TD方向)を指す。本発明の耐火シート2の熱収縮率は、好ましくはMD方向およびTD方向ともに1%以下である。耐火シート2の熱収縮率は、樹脂組成物の製造時のアニールにより改善でき、例えば温度120℃で3分〜1時間程度、より好ましくは30分〜1時間程度、樹脂組成物をアニーリングすることにより、耐火シート2の熱収縮率を低下させることができる。
【0029】
耐火シート2の熱収縮率を低下させる他の方法は、樹脂成分に対する熱膨張性無機物、無機充填剤、および可塑剤の量を適宜選択することにより当業者には実現可能である。応力歪みの緩和成分を減らし、弾性成分を増加させる観点より、熱膨張性無機物と無機充填剤との合計量が樹脂成分(可塑剤が樹脂組成物に含まれる場合は、可塑剤も含む)に対して等量以上であることが好ましい。さらに、緩和成分を減らす観点より、樹脂成分が樹脂組成物の35質量%以下であることが好ましく、ポリ塩化ビニル樹脂が樹脂組成物の35質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
また好ましくは、本発明の耐火シート2は、周波数1Hz、歪1%の条件下で動的粘弾性を測定した際のtanδの最大値を示す温度(「tanδピーク温度」とも称する)が80℃以下である。好ましくはtanδピーク温度が−30〜60℃である。
【0031】
この構成によれば、巻き取り時に破断等が起こりにくくなり、巻き取りの芯の径が小さくなっても巻き取りが可能になる為、巻き取り長さを長くでき、有益である。
【0032】
本発明において、tanδは、以下の方法で測定することができる。耐火シートの動的粘弾性を、粘弾性測定装置(例えば、レオメトリックス社製「ARES」)を用いて、せん断法にて、歪み量1.0%及び周波数1Hzの条件下において、昇温速度5℃/分で動的粘弾性の温度分散測定をすることにより、tanδを測定できる。上記tanδピーク温度とは、得られた損失正接の最大値を示す温度を意味する。
【0033】
耐火シート2を構成する樹脂組成物中の樹脂成分の種類ならびに可塑剤等の液状添加剤の選定により、上記tanδピーク温度を制御することができる。熱膨張性黒鉛、無機充填剤が多量に含まれる樹脂組成物の系では、樹脂成分は、可塑剤等の液状添加剤の選択の幅の観点より、ポリ塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。また、樹脂構造制御の観点より、樹脂成分は、後述するEVA樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。これらの樹脂は混練性を維持したまま、tanδピーク温度を制御しやすい。
【0034】
なお、
図1および2では巻回体1を延ばしたものが耐火シート2であるが、巻回体1を長手方向および/または幅方向に切断して巻回体1の一部となったものも耐火シート2に含まれる。
【0035】
耐火シート2を構成する耐火樹脂材料について、以下、詳しく説明する。
【0036】
耐火シート2を構成する耐火樹脂材料は、樹脂成分としてのバインダー樹脂に、熱膨張性無機物と、無機充填剤と、可塑剤とを含む樹脂組成物である。
【0037】
樹脂成分はポリ塩化ビニル系樹脂を含む。ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体;塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
なお、本発明においては、ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化物である塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂も、ポリ塩化ビニル系樹脂に含まれるものとする。
【0039】
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されるものではないが、小さくなると成形体の物性低下が起こり、大きくなると溶融粘度が高くなって成形が困難になるので、600〜1500が好ましい。
【0040】
熱膨張性無機物は加熱時に膨張するものであり、かかる熱膨張性無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛、亜リン酸金属塩、シラスバルーン等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。強酸化剤としては濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
【0041】
シラス(白砂、白州)は、軽石または火山灰を含む無機質の火山噴出物を指す。シラスには、天然シラスを精製、加工したものも含まれる。好ましくは、シラスとしては未焼成シラスを使用する。シラスの平均粒径は、2〜1000μmが好ましい。シラスの発泡開始温度は限定されないが、通常800℃以上である。
【0042】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより小さいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層が得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより大きいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
【0043】
本発明に使用する熱膨張性黒鉛は、熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比が20以上であることが好ましく、25以上がより好ましいが、高すぎると割れが発生することがあるため、1000以下が好ましい。熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比が20以上であることにより、樹脂組成物の高い膨張性と燃焼後の高い残渣硬さに寄与する。
【0044】
熱膨張性黒鉛片の最大寸法(長径)を最小寸法(短径)で除した値をアスペクト比とする。そして、10個以上の熱膨張性黒鉛片につきアスペクト比を測定し、その平均値を平均アスペクト比とする。熱膨張性黒鉛の長径および短径は、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて測定することができる。
【0045】
無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。
【0046】
また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム「MOS」(商品名)、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
無機充填剤の粒径としては、0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。無機充填剤は、添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さいものが好ましいが、0.5μm以上であると、分散性が良好である。添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることで樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、粒径の大きいものが好ましいが、100μm以下の粒径が成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性の点で望ましい。
【0048】
無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウムでは、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
【0049】
前記樹脂組成物は、前記樹脂成分100質量部に対し、前記熱膨張性無機物を10〜350質量部および前記無機充填剤を30〜400質量部の範囲で含むものが好ましい。
【0050】
また、前記熱膨張性無機物および前記無機充填剤の合計は、樹脂成分100質量部に対し、50〜600質量部の範囲が好ましい。
【0051】
前記樹脂組成物における熱膨張性無機物および無機充填剤の合計量は、50質量部以上では燃焼後の残渣量を満足して十分な耐火性能が得られ、600質量部以下であると機械的物性が維持される。
【0052】
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する残渣を形成することもでき、安定した防火性能を達成することができる。
【0053】
可塑剤としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル系可塑剤;エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル系可塑剤;アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のポリエステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の正燐酸エステル系可塑剤などが挙げられる。これらは単独で用いられても、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
上記可塑剤の使用量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは20〜200質量部であり、より好ましくは30〜100質量部である。可塑剤の使用量が20質量部以上であると、充分な耐衝撃性が得られ、200質量部以下であると、難燃性が発揮される。また、熱膨張性黒鉛や無機充填剤を含む場合は、加工条件によっては耐火シートを長尺化した際にシートが硬くなりスリット加工が難しくなることがあるため、可塑剤の使用量は樹脂成分100質量部に対して80質量部以上であることが好ましい。なお、スリット加工を行う際には、耐火シートをスリット加工しやすくするため、例えば50℃以上、好ましくは70℃以上に加熱しておくことが好ましい。
【0055】
さらに、熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;各種リン酸エステル;リン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類;ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム;低級リン酸塩;および下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム類、および、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0057】
化学式(1)中、R
1 およびR
3 は、同一または異なって、水素、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、または、炭素数6〜16のアリール基を示す。R2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、または、炭素数6〜16のアリールオキシ基を示す。
【0058】
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。
【0059】
リン酸エステルとしては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル(TCP)、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸キシレニルジフェニル等のリン酸アリールエステル;リン酸アルキルエステル;ビスフェノールAビス、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェートならび等のビスフェノール系芳香族縮合リン酸エステル等が挙げられる。ただし、上記の可塑剤であるものは除く。好ましいリン酸エステルはリン酸トリクレジル(TCP)である。
【0060】
リン酸金属塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0061】
ポリリン酸アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。 化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0062】
難燃性の向上の観点では、リン化合物として、難燃剤としての低級リン酸塩が好ましい。「低級リン酸塩」は、無機リン酸塩のうち、縮合していない、つまり高分子化していない無機リン酸塩を指し、リン酸としては第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、メタリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩)、周期表3B族金属の塩(アルミニウム塩など)、遷移金属塩(チタン塩、マンガン塩、鉄塩、ニッケル塩、銅塩、亜鉛塩、バナジウム塩、クロム塩、モリブデン塩、タングステン塩)、アンモニウム塩、アミン塩、例えば、グアニジン塩又はトリアジン系化合物の塩(例えば、メラミン塩、メレム塩など)などが挙げられ、好ましくは金属塩である。
【0063】
一つの実施形態では、低級リン酸塩はリン酸金属塩及び亜リン酸金属塩のうちの少なくとも一方である。亜リン酸金属塩は発泡性(熱膨張性)であってもよい。また、亜リン酸金属塩は、マトリクス樹脂との密着性を向上させるため、表面処理剤などにより表面処理して用いてもよい。このような表面処理剤としては、官能性化合物(例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物など)などが使用できる。
【0064】
そのような低級リン酸の金属塩の例として、第1リン酸アルミニウム、第1リン酸ナトリウム、第1リン酸カリウム、第1リン酸カルシウム、第1リン酸亜鉛、第2リン酸アルミニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸カルシウム、第2リン酸亜鉛、第3リン酸アルミニウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸カルシウム、第3リン酸亜鉛、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸亜鉛、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0065】
フォスフィンガス等の可燃性ガスの発生の観点からは、アルミニウム塩が好ましく用いられる。
【0066】
リン化合物が用いられる場合、例えばリン化合物は、樹脂成分100質量部に対して、上記リン化合物と上記熱膨張性無機物との合計量が20〜400質量部となるよう含有される。樹脂成分100質量部に対するリン化合物の量は、例えば20質量部以上200質量部以下である。
【0067】
また、リン化合物を含有する場合、その含有量は特に限定されないが、リン化合物、難燃剤、無機充填剤及び熱膨張性黒鉛の合計の含有量が、40〜80質量%、好ましくは50〜70質量%とされる。このような構成によれば、耐火シートの耐火性能が高められる。
【0068】
また、本発明では、熱膨張性黒鉛に加えて、熱膨張性黒鉛以外の熱膨張性無機物を併用することが好ましい。併用することで、広い温度帯、長い時間にわたって膨張を継続でき、安定した耐火性能を発揮することが可能となる。熱膨張性無機物としては、特に限定されないが、例えば、上述した熱膨張性黒鉛以外の熱膨張性無機物、特に亜リン酸金属塩、シラスバルーン等を例示することができる。熱膨張性無機物を併用する場合、その含有量は特に限定されないが、熱膨張性黒鉛100質量部に対して、熱膨張性無機物を10〜1000質量部、好ましくは20〜500質量部、より好ましくは30質量部〜200質量部とする。
【0069】
さらに本発明に使用する前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0070】
前記樹脂組成物は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されないが、50kW/m
2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
【0071】
樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより、耐火シート2を巻回体1として得ることができる。
【0072】
例えば、ニーダーミキサーで混練した混合物を逆L字型カレンダーでシート上に成型し、冷却ロールで一旦冷却した後、アニール炉で高温(例えば120℃)の熱風を吹き付け、再度冷却ロールを通した後に巻取りロールにて巻取ることにより、耐火シート2を巻回体1として得ることができる。
【0073】
なお、耐火シート2の表面に粘着剤層が形成されていてもよい。粘着剤層を耐火シート2の表面に塗工する方法は特に限定されないが、離型紙に粘着剤を塗工して耐火シート2に転写する方法、耐火シート2の片面にシリコーン離型剤等を塗布するなどの離型処理をした後に離型処理していない面に粘着剤を塗布する方法、または両面テープを耐火シート2に貼り付ける方法などが挙げられる。
【0074】
耐火シート2は、構造体、特には窓、障子、扉(すなわちドア)、ふすま、および欄間等の建具;船舶;車両;並びにエレベータ等の構造体に耐火性を付与するために使用され得る。特にはこれらの構造体の開口部または間隙の密封および防火に使用される。例えば、耐火シート2は、建具の気密性または水密性を改善するためのタイト材やシール材等の気密材として使用され得る。構造体は金属製、合成樹脂製、木製、またはそれらの組み合わせ等の任意の材料から構成されていてもよい。なお「開口部」は構造体と他の構造体との間または構造体中に存在する開口部を指し、「間隙」は開口部の中でも向かい合う2つの部材または部分間に生じる開口部を指す。
【0075】
以上、本発明を第1実施形態の巻回体1および耐火シート2に関して説明したが、本発明はこれに限られず、以下のような種々の変形が可能である。
【0076】
耐火シート2を構成する樹脂組成物の樹脂成分は、ポリ塩化ビニル系樹脂に限定されず、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、およびそれらの組み合わせであってもよい。また、ポリ塩化ビニル系樹脂以外の樹脂成分を用いる場合、可塑剤は含まれなくてもよい。他の成分については第1実施形態の耐火シート2を構成する樹脂組成物について説明したのと同じとしてよい。
【0077】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル(EVA)、オレフィン系エラストマー(TPO)等のエラストマー等の合成樹脂類が挙げられる。
【0078】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
【0079】
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
【0080】
これらの合成樹脂類および/またはゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0081】
これらの合成樹脂類および/またはゴム物質の中でも、柔軟でゴム的性質を持っているものが好ましい。この様な性質を持つものは無機充填剤を高充填することが可能であり、得られる樹脂組成物が柔軟で扱い易いものとなる。より柔軟で扱い易い樹脂組成物を得るためには、ブチル等の非加硫ゴムやポリエチレン系樹脂が好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0082】
耐火シート2を構成する樹脂組成物は、熱膨張性無機物と、無機充填剤とを両方含有しなくてもよく、熱膨張性無機物および無機充填剤のいずれか一方を含有してもよい。
【0083】
図3に示すように、耐火シートを、複数の耐火シート2を積層させた積層体からなる耐火シート3としてもよい。積層は、複数の耐火シート2を接着剤等の接着手段にて貼り合わせることにより行ってもよいし、熱圧着により行ってもよい。この場合も、耐火シート3の厚みは好ましくは1mm以上であり、かつ厚みばらつきが0.1mm以下とすることにより自立性に優れた耐火シートが得られる。
【0084】
図4および
図5(a)〜(d)に示すように、耐火シート2の少なくとも一表面に凹凸を設けてもよい。
図4では、耐火シート2の少なくとも一表面に、エンボス加工された凹凸4が設けられている。この図では、凹部4aと凹部4aの周囲の凹部4aに対して突出した耐火シート2の部分4bとが凹凸4を構成しているが、代わりに、耐火シート2の凸部と、凸部の周囲の凸部に対してへこんだ耐火シート2の部分とが凹凸4を構成してもよい。凹凸4は耐火シート2の製造時に耐火シート2を構成する耐火性樹脂組成物をエンボスロールで成型することにより形成することができる。エンボス加工された凹凸4は、耐火シート2の少なくとも一表面の30%以上を占める面積に形成されることが好ましく、50%以上を占める面積に形成されることがより好ましく、耐火シート2の少なくとも一表面の全体に形成されることがさらに好ましい。耐火シート2の少なくとも一表面に凹凸4を設けることで、耐火シート2の厚みばらつきが0.1mmよりも大きくても、耐火シート2の自立性が良好となる。また、耐火シート2の少なくとも一表面に凹凸4を設けると、耐火シート2を巻回したときに、上から新たに積層される耐火シート部分と下側の耐火シート部分との接触面積が減少するため、上から新たに積層される耐火シート部分による下側の耐火シート部分の接線方向の応力を減少させることができる。このため、巻締りを抑制することができ、ブロッキング(耐火シートを巻き出せなくなる現象)が防止され、耐火シート2の展開性も良好となる。巻締りを吸収できた結果、耐火シート2の表面の曇りも防止される。
【0085】
付与されるエンボスの形状は特に限定されるものではないが、エンボスの凹凸高さは300μm以下であることが好ましい。300μm以上になると、巻取時や取り扱い時にシート表面がせん断方向に力を受けた際に、耐火シートがフィラーを多く含有することに起因するエンボス部分の破断がおき、シート表面の外観が損なわれる場合がある。本観点より、より好ましくは凹凸高さが50μm以下である。エンボス形状に関しても特に限定するものではないが、例えば、線状、角千鳥、亀甲状、丸状、球状等が本目的に好適に用いられるが、形状や配置パターンが上記接触面積の観点より、エンボス付与面積(凹部4aの面積)が25%以上であることが好ましい。また、耐火シートは耐火性発現の為、粒径の大きな熱膨張性黒鉛を含有する。熱膨張性黒鉛は粒径分布を有するが、特に粗大粒径の部分が、シートの流れ方向に配向した状態でシート表面に存在すると黒鉛が光を反射し、表面の外観を損なう場合がある。熱膨張性黒鉛を配向させない様にエンボスを付与することでこの不具合は改善可能である。具体的には熱膨張性黒鉛の長辺方向の寸法以下のエンボスを付与すること、凸部分のシートの流れ方向に熱膨張性黒鉛の長辺方向以下の寸法に設定する様、エンボスを付与することが好ましい。具体的には熱膨張性黒鉛の長辺径を鑑みると、2500μm以下、好ましくは1500μ以下、さらに好ましくは1000μm以下となる様なエンボス形状、間隔を設定するとよい。
【0086】
図5(a)〜(d)では、耐火シート2の少なくとも一表面に、凹凸としてのリブ5が設けられている。リブ5と、リブ5に隣接する耐火シート2の少なくとも一表面の部分とが、凹凸を構成する。
図5(a)では、リブ5は耐火シート2のMD方向(図では長手方向)に延びる複数のリブ5aと耐火シート2のTD方向(図では幅方向)に延びる複数のリブ5bとから構成されている。しかしながら、
図5(b)に示すように、耐火シート2のMD方向(図では長手方向)に延びる複数のリブ5aのみから構成されてもよい。
図5(c)に示すように、耐火シート2のTD方向(図では幅方向)に延びる複数のリブ5bのみ構成されていてもよい。
図5(d)に示すように、耐火シート2のMD方向(図では長手方向)に対して斜め方向に延びる複数のリブ5cから構成されてもよい。
【0087】
リブ5は、例えばポリ塩化ビニル系樹脂から構成されるが、これに限定されず、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質から構成されていてもよい。リブ5は耐火シート2の成形時に形成されてもよいし、耐火シート2を製造した後で、例えば作業現場等において別のタイミングに形成されてもよい。
【0088】
このようなリブ5を設けることで、耐火シート2の自立性が補強され、また、耐火シート2の折れ曲がりも防止され、耐火シート2の構造物への施工が容易となる。また、リブを設けると、耐火シート2を巻回したときに、上から新たに積層される耐火シート部分による下側の耐火シート部分の接線方向の応力を減少させることができるため、巻締りを抑制することができ、耐火シート2の展開性も良好となる。巻締りを吸収できた結果、耐火シート2の表面の曇りおよびブロッキングも防止される。
【0089】
図6に示すように、耐火シート2の少なくとも一表面がマット加工されたマット面6となっていてもよい。マット面6は、耐火シート2の表面をエンボスロールによる表面加工等により微細凹凸加工することにより形成される。例えば、マット面6上の十点平均粗さRzは10μm以上、40μm以下である。このようなマット面6を施すことにより、耐火シート2の表面におけるギラツキを低減し、異物または耐火シートに巻きこまれた気泡による光を拡散することができる。
【0090】
なお、このマット加工は
図4のエンボス加工された凹凸4が設けられた耐火シート2の表面および
図5のようにリブ5が設けられた耐火シート2の表面にも施すことができる。
【0091】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0092】
1.耐火シートの製造
表1〜3に示した各成分を混練ニーダーにて混合した。混練温度は150℃、混練時間は7分30秒とし、試験例1〜3の耐火性樹脂組成物をそれぞれ製造した。
【0093】
上記により得られた試験例1〜3の耐火性樹脂組成物から、カレンダー成形にて幅1000mm、厚み1.5mmの表5の実施例1〜6,8,9,比較例1〜2の耐火シートを製造した。
【0094】
実施例5〜8の耐火シートは、カレンダー成形にて、幅1000mm、厚み1.5mm、巻長さ400mの耐火シートとした。
【0095】
リブは、カレンダーロールの1本にエンボス加工をしたロールを用い、そのエンボスロールで耐火性樹脂組成物を成型することにより耐火シート表面に形成した後、巻き取りを行い長尺耐火シートを得た(実施例3〜6、巻き長さは表5参照)。
【0096】
また、アニール処理を行う場合は、長尺シートを再展開し、繰り出し速度を調節することで、任意の温度、加熱時間で加熱炉に通し、巻きなおすことで、アニール長尺シートを得た(実施例1,2,4,8,9、比較例1)。
【0097】
実施例1〜4,比較例1〜2の耐火シートはいずれも同じ試験例1の組成のポリ塩化ビニル系樹脂を含有する耐火性樹脂組成物から形成されている。
【0098】
各耐火シートのMD方向およびTD方向の熱収縮率は、試験例1の耐火性樹脂組成物を耐火シートにシート化するときの巻き取り張力を変更、およびアニール条件を変更することで制御した。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
表4に示した各成分をスタティックミキサーにて25℃下、5分間混練した。得られたペースト状の混練物を2枚のポリエチレンテレフタラートフィルムに挟み、連続的にニップロールの間隙に通し、シート状に成型した。なお、ニップロールの間隙は得られるシート成型品の厚み間隙を通した後、135℃の加熱炉に45分間通し、効果させた後に巻き取りを行い、実施例7の耐火長尺シートを得た(巻き長さは表5参照)。
【0103】
【表4】
【0104】
2.耐火シートの性能の評価
実施例1〜9,比較例1〜2の厚みばらつき、自立性、熱収縮率、美観および展開性を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0105】
[厚みばらつき]
耐火シートの幅方向に向かって等間隔で5点に分けて厚みを測定し、また、長さ方向は巻き長さの9等分した各線分の中点毎(各区画の中心毎)に厚みを測定し、計50点の厚みバラつきを評価した。
【0106】
[自立性の評価]
得られた耐火シートを外形寸法100mm×100mm、フレーム幅2mmのアルミニウム合金A7075製のペリクル膜に、アクリル系接着剤により貼付した。このときのペリクル膜の様子を目視で評価した。
【0107】
・ペリクル膜に、破れや皺やたるみが生じなかった:○
・ペリクル膜に、破れや皺やたるみが生じた:×
サンプルは、長さ方向は巻き長さの4等分した各線分の中点毎(各区画の中心毎)、幅方向は3点等間隔にサンプリングし、計15点で評価を実施し、その平均値を採用した。
【0108】
[tanδピーク温度]
得られた耐火シートの動的粘弾性を、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製「ARES」)を用いて、せん断法にて、歪み量1.0%及び周波数1Hzの条件下において、昇温速度5℃/分で動的粘弾性の温度分散測定を行った。
[熱収縮率]
JIS K 7133に準拠し、加熱前後の耐火シートのMD方向およびTD方向の寸法を測定した。加熱条件は70℃で22時間とした。
【0109】
サンプルは巻き長さを4等分毎に幅方向に3点等間隔にサンプリングし、計15点で評価を実施し、その平均値を採用した。
【0110】
[表面外観]
得られた長尺耐火シートを製造後、40℃、1週間養生した耐火シートを再展開することで評価した。展開の過程で、シート外観を観察して、表面に気泡が観察されるか否かを判定し、幅方向5mm以上の気泡が観察されない場合を○、観察される場合を×とした。
【0111】
また、表面の曇り(ブロッキングを剥がした際の表面剥がれ)の有無も観察し、25cm
2以上の面積の剥がれが観察される場合を×、観察されるが25cm
2未満の場合は△、観察されない場合を○とした。
[展開性(巻き出し性)]
耐火シートの展開性は以下のように評価した。
・巻出し方向にロールを回転させると耐火シートが展開可:〇
・巻出し方向にロールを回転させてもシートが展開しないが、軽く引っ張ると容易に展開可:△
・力を入れないと展開できない。または力を入れてもシート形状を保って展開不可:×
【0112】
【表5】
【0113】
実施例1、実施例2、実施例4〜9の耐火シートは自立性、表面外観、および展開性ともに良好であった。実施例3の耐火シートは、巾方向の厚みばらつきが±0.2mmであり、熱収縮率も大きいが、耐火シートの表面に凹凸が設けられているため、自立性、表面外観、および展開性ともに良好であった。
【0114】
比較例1の耐火シートは厚みばらつきが±0.2mmであり、表面に曇りが発生した。比較例2は厚みばらつきが±0.2mmであるのに加え、熱収縮率が大きいため、巻締りが発生し、正常に耐火シートを巻き出せなくなるブロッキング現象が発生して展開性が不良であった。また、耐火シートの表面が曇った。