(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
1. 第1実施形態
1.1. 電子顕微鏡
まず、第1実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。
【0013】
電子顕微鏡100は、
図1に示すように、電子顕微鏡本体10と、制御部20と、操作部30と、表示部32と、記憶部34と、を含む。
【0014】
電子顕微鏡本体10は、電子源11と、集束レンズ12と、試料ステージ13と、対物レンズ14と、位相板15と、位相板移動機構16と、中間レンズ17と、投影レンズ18と、検出器19と、を含む。
【0015】
電子源11は、電子を発生させる。電子源11は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線を放出する電子銃である。
【0016】
集束レンズ12は、電子源11から放出された電子線を試料Sに照射するためのレンズである。集束レンズ12は、図示はしないが、複数の電子レンズで構成されていてもよい。
【0017】
試料ステージ13は、試料Sを保持する。試料ステージ13によって試料Sを位置決めすることができる。試料ステージ13は、試料Sを保持する試料ホルダーと、試料ホルダーを移動させることで試料Sを移動させる試料ホルダー移動機構と、を含んで構成されている。試料ステージ13は、駆動装置22を介して、制御部20で制御される。
【0018】
対物レンズ14は、試料Sを透過した電子で透過電子顕微鏡像(以下、TEM像ともいう)を結像する。
【0019】
位相板15は、対物レンズ14の後焦点面に配置されている。位相板15は、試料Sを
透過した電子波に位相の変化を与える。位相板15は、ホールフリー位相板である。すなわち、位相板15は、カーボンなどの薄膜を有し、当該薄膜を透過波と散乱波が通過することによって透過波と散乱波の位相を相対的に変化させる。
【0020】
電子顕微鏡100では、位相板15を用いて試料Sの観察を行うことにより試料Sの位相差像を取得できる。位相差像は、位相板15を用いて透過波と散乱波の位相を相対的に変化させて得られるTEM像である。位相差像では、従来の電子顕微鏡では可視化が難しい物体の位相変化を、強度の変化として可視化できる。
【0021】
位相板移動機構16は、位相板15を移動させる。位相板移動機構16は、駆動装置24を介して、制御部20によって制御される。
【0022】
ここで、位相板15に長時間電子線をあてると位相板15の状態が変化する。状態が変化した位相板15を使って撮影を行うと偽コントラストを持つTEM像が得られてしまう。そのため、電子顕微鏡100では、位相板15の同じ位置に一定量の電子線をあてた後、位相板移動機構16を用いて、位相板15を水平方向に移動させることができる。これにより、位相板15において電子線があたる位置を変更することができ、良好な位相差像を得ることができる。
【0023】
中間レンズ17および投影レンズ18は、対物レンズ14によって結像された像をさらに拡大し、検出器19上に結像する。対物レンズ14、中間レンズ17、および投影レンズ18は、電子顕微鏡100の結像系を構成している。
【0024】
検出器19は、TEM像を取得するための検出器である。検出器19は、例えば、CCDカメラなどのデジタルカメラである。
【0025】
操作部30は、ユーザーからの指示を信号に変換して制御部20に送る処理を行う。操作部30は、例えば、ボタン、キー、トラックボール、タッチパネル型ディスプレイ、マイクなどの入力機器により実現できる。
【0026】
表示部32は、制御部20で生成された画像を出力する。表示部32は、例えば、LCD(liquid crystal display)などのディスプレイにより実現できる。
【0027】
記憶部34は、制御部20が各種計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータを記憶している。また、記憶部34は、制御部20のワーク領域としても用いられる。記憶部34は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびハードディスクなどにより実現できる。
【0028】
制御部20は、電子顕微鏡本体10を制御する。制御部20の機能は、各種プロセッサー(CPU(Central Processing Unit)など)でプログラムを実行することにより実現できる。制御部20の処理については後述する。
【0029】
1.2. 処理
電子顕微鏡100では、試料Sを移動させながら、繰り返し撮影を行って、多数(例えば数百枚〜数千枚)のTEM像を取得する処理を、自動で行うことができる。
図2は、電子顕微鏡100の制御部20の処理の一例を示すフローチャートである。
【0030】
図2に示す処理を行う前に、ユーザーは試料S中において、位相板15が観察しやすい位置(以下、「位相板観察位置」ともいう)を指定する。位相板15のTEM像(以下、「位相板像」ともいう)には、試料Sの像も含まれるため、位相板観察位置は、試料S中
の真空位置や、アモルファス領域などの試料Sのコントラストの影響が少ない位置が好ましい。ユーザーは、操作部30を介して、位相板観察位置を入力することができる。入力された位相板観察位置の情報は、記憶部34に記憶される。
【0031】
また、ユーザーは、位相板15が正常に機能する条件を設定する。上述したように、位相板15に長時間電子線をあてると位相板15の状態が変わり、位相板15が正常に機能しない。そのため、位相板15が正常に機能する条件として、観察を開始してからの経過時間が設定された時間(設定時間)を超えたか否かを用いることができる。例えば、あらかじめ、位相板15が正常に機能する時間を計測しておくことで、設定時間を決定することができる。ユーザーは、操作部30を介して、位相板15が正常に機能する条件(設定時間)を入力することができる。入力された、位相板15が正常に機能する条件の情報は、記憶部34に記憶される。
【0032】
なお、位相板15が正常に機能する条件として、TEM像の撮影回数が設定された回数を超えたか否かを用いてもよいし、位相板15に対する電子線のドーズ量が設定されたドーズ量を超えたか否かを用いてもよい。
【0033】
ユーザーが操作部30を介して試料SのTEM像(以下、「試料像」ともいう)を取得する処理を開始する指示(操作)を行うと、制御部20は処理を開始する。
【0034】
まず、制御部20は、試料像を取得する(S100)。制御部20は、試料Sが撮影位置に移動するように試料ステージ13を制御し、検出器19で撮影された試料像を取得する。取得した試料像は、記憶部34に記憶される。
【0035】
次に、制御部20は、試料像を設定数だけ取得したか否かを判定する(S102)。制御部20は、試料像を設定数だけ取得していないと判定した場合(S102のNo)、位相板15が正常に機能する条件を満たしているか否かを判定する(S104)。
【0036】
例えば、位相板15が正常に機能する条件が、観察を開始してからの経過時間が設定時間を超えたか否かである場合、制御部20は、観察を開始してからの経過時間を計測するタイマーを有しており、当該タイマーを用いて観察を開始してからの経過時間を計測する。制御部20は、経過時間の計測結果に基づいて、経過時間が設定時間を超えたか否かを判定する。
【0037】
制御部20は、位相板15が正常に機能する条件を満たしていると判定した場合(S104のYes)、ステップS100に戻って、新たな撮影位置で撮影された試料像を取得した後、ステップS102、ステップS104の処理を行う。
【0038】
制御部20は、位相板15が正常に機能する条件を満たしていないと判定した場合(S104のNo)、試料Sが位相板観察位置に移動するように試料ステージ13を制御する(S106)。
【0039】
次に、制御部20は、位相板15が設定された移動量だけ移動するように位相板移動機構16を制御する(S108)。位相板15の移動量は、任意の値に設定可能である。位相板15を設定された移動量だけ移動させることで、位相板15の新たな領域に電子線が照射される。
【0040】
次に、制御部20は、位相板像を取得する(S110)。制御部20は、検出器19で撮影された位相板像を取得する。このとき、試料Sは、位相板観察位置に位置しているため、得られた位相板像では試料Sの影響が小さい。
【0041】
制御部20は、位相板像を撮影するときの撮影条件を、試料像を撮影するときの撮影条件と変えてもよい。例えば、試料像を撮影するときには、位相板15にクロスオーバーが形成されるレンズ条件とするが、位相板像を撮影するときには、デフォーカスすることで位相板15からずれた位置にクロスオーバーが形成されるレンズ条件としてもよい。これにより、位相板像において、位相板15の凹凸を確認しやすくできる。
【0042】
なお、位相板15を移動させたことによる位相板15のドリフトが低減されるように、位相板15を移動させた後、所定時間経過してから、位相板像を撮影してもよい。
【0043】
次に、制御部20は、位相板像に基づいて、位相板15に凹凸があるか否かを判定する(S112)。制御部20は、位相板像に位相板15の凹凸に対応するコントラストがあるか否かによって、凹凸の有無を判定する。
図3は、位相板15に凹凸がない場合の位相板像であり、
図4は、位相板15に凹凸がある場合の位相板像である。
【0044】
凹凸の有無の判定は、例えば、機械学習により作成された判定モデルを用いて行われてもよい。例えば、制御部20において、あらかじめ、位相板15に凹凸がある場合の位相板像(
図4参照)、および位相板15に凹凸がない場合の位相板像(
図3参照)を教師データとして判定モデルを作成しておいてもよい。
【0045】
制御部20は、位相板15に凹凸があると判定した場合(S112のYes)、ステップS108に戻って、位相板15が設定された移動量だけ移動するように位相板移動機構16を制御する。そして、制御部20は、再び、位相板像を取得し(S110)、位相板15の凹凸の有無の判定(S112)を行う。
【0046】
制御部20は、位相板15に凹凸がないと判定した場合(S122のNo)、試料Sが位相板観察位置から撮影位置に移動するように試料ステージ13を制御する(S114)。そして、制御部20は、ステップS100に戻って、新たな撮影位置で撮影された試料像を取得する。
【0047】
制御部20は、試料像を設定数だけ取得したと判定した場合(S102のYes)、処理を終了する。このように、制御部20は、上述したステップS100,S102,S104,S106,S108,S110,S112,S114の処理を、試料像が設定数だけ取得されるまで繰り返し行う。
【0048】
1.3. 特徴
電子顕微鏡100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0049】
電子顕微鏡100では、制御部20は、位相板像を取得する処理(位相板像取得処理、S110)と、位相板像に基づいて位相板15に凹凸があるか否かを判定する処理(凹凸判定処理、S112)と、凹凸があると判定した場合、位相板15が移動するように位相板移動機構16を制御する処理(移動機構制御処理、S108)と、を行う。そのため、電子顕微鏡100では、位相板15の凹凸がある場所を避けて位相差像を取得することができる。したがって、良好な位相差像を容易に取得することができる。
【0050】
電子顕微鏡100では、制御部20は、位相板15が正常に機能する条件を満たすか否かを判定する処理(条件判定処理、S104)を行う。また、制御部20は、位相板15が正常に機能する条件を満たすと判定した場合、試料像を取得する処理(試料像取得処理、S100)を行う。また、位相板15が正常に機能する条件を満たさないと判定した場合、位相板15が移動するように位相板移動機構16を制御する処理(移動機構制御処理
、S108)を行う。そのため、電子顕微鏡100では、電子線の照射により位相板15の状態が変化した場所を避けて位相差像を取得することができる。したがって、良好な位相差像を容易に取得することができる。
【0051】
電子顕微鏡100では、制御部20は、移動機構制御処理(S108)の後に、位相板像取得処理(S110)および凹凸判定処理(S112)を行う。また、制御部20は、凹凸がないと判定した場合に、試料像取得処理(S100)を行う。そのため、電子顕微鏡100では、位相板15の状態が変化した場所および位相板15の凹凸がある場所を避けて位相差像の取得が行われるため、良好な位相差像を容易に取得することができる。
【0052】
2. 第2実施形態
2.1. 電子顕微鏡
次に、第2実施形態に係る電子顕微鏡について説明する。第2実施形態に係る電子顕微鏡の構成は、
図1に示す電子顕微鏡100の構成と同じであり、図示および説明を省略する。
【0053】
2.2. 処理
図5は、第2実施形態に係る電子顕微鏡の制御部20の処理の一例を示すフローチャートである。以下では、上述した
図2に示す制御部20の処理と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0054】
第1実施形態では、
図2に示すように、位相板15が正常に機能する条件を満たさない場合(S104のNo)、位相板15を移動させていた(S108)。これに対して、第2実施形態では、
図5に示すように、位相板15が正常に機能する条件を満たさず(S204のNo)、かつ、位相差像における位相シフトが異常な場合(S208のNo)、位相板15を移動させる(S212)。これにより、位相板15の状態を正確に判定することができるため、位相板15を効率よく使用することができる。
【0055】
図5に示す処理を行う前に、ユーザーは位相板観察位置、および位相板15が正常に機能する条件を設定する。
【0056】
ユーザーが操作部30を介して試料像を取得する処理を開始する指示(操作)を行うと、制御部20は処理を開始する。
【0057】
まず、制御部20は、試料像を取得する(S200)。次に、制御部20は、試料像を設定数だけ取得したか否かを判定する(S202)。制御部20は、試料像を設定数だけ取得していないと判定した場合(S202のNo)、位相板15が正常に機能する条件を満たしているか否かを判定する(S204)。
【0058】
ステップS200、ステップS202、およびステップS204の処理は、
図2に示すステップS100、ステップS102、およびステップS104の処理と同様に行われる。
【0059】
制御部20は、位相板15が正常に機能する条件を満たしていると判定した場合(S204のYes)、ステップS200に戻って、新たな撮影位置で撮影された試料像を取得した後、ステップS202、ステップS204の処理を行う。
【0060】
制御部20は、位相板15が正常に機能する条件を満たしていないと判定した場合(S204のNo)、位相差像を取得する(S206)。
【0061】
このとき取得される位相差像は、後述する位相板15による位相シフトが正常か異常かを判定するために用いられる。そのため、制御部20は、位相差像を取得する前に、位相シフトを観察しやすい位置に試料Sが位置するように試料ステージ13を制御したり、位相シフトを観察しやすい観察条件となるように光学系(対物レンズ14等)を制御したりしてもよい。
【0062】
次に、制御部20は、位相差像に基づいて、位相板15における位相シフトが正常か異常かを判定する(S208)。
【0063】
位相シフトが正常か異常かの判定は、機械学習により作成された判定モデルを用いて行われてもよい。例えば、制御部20が、あらかじめ、位相板15による位相シフトが正常な場合の位相差像、および位相板15による位相シフトが異常な場合の位相差像を教師データとして判定モデルを作成してもよい。
【0064】
制御部20は、位相板15による位相シフトが正常と判定した場合(S208のYes)、ステップS200に戻って、新たな撮影位置で撮影された試料像を取得した後、ステップS202、ステップS204、ステップS206、ステップS208の処理を行う。
【0065】
制御部20は、位相板15による位相シフトが異常と判定した場合(S208のNo)、試料Sが位相板観察位置に移動するように試料ステージ13を制御する(S210)。次に、制御部20は、位相板15が設定された移動量だけ移動するように位相板移動機構16を制御し(S212)、位相板像を取得する(S214)。次に、制御部20は、位相板像に基づいて、位相板15に凹凸があるか否かを判定する(S216)。
【0066】
制御部20は、位相板15に凹凸があると判定した場合(S216のYes)、ステップS212に戻って、位相板15が設定された移動量だけ移動するように位相板移動機構16を制御する。そして、制御部20は、再び、位相板像を取得し(S214)、位相板15の凹凸の有無の判定(S216)を行う。
【0067】
制御部20は、位相板15に凹凸がないと判定した場合(S216のNo)、試料Sが位相板観察位置から撮影位置に移動するように試料ステージ13を制御する(S218)。そして、制御部20は、ステップS200に戻って、新たな撮影位置で撮影された試料像を取得する。
【0068】
上述したステップS210、ステップS212、ステップS214、ステップS216、およびステップS218の処理は、
図2に示すステップS106、ステップS108、ステップS110、ステップS112、およびステップS114の処理と同様に行われる。
【0069】
制御部20は、試料像を設定数だけ取得したと判定した場合(S202のYes)、処理を終了する。このように、制御部20は、上述したステップS200,S202,S204,S206,S208,S210,S212,S214,S216,S218の処理を、試料像が設定数だけ取得されるまで繰り返し行う。
【0070】
2.3. 特徴
第2実施形態に係る電子顕微鏡は、例えば、以下の特徴を有する。
【0071】
第2実施形態に係る電子顕微鏡では、第1実施形態に係る電子顕微鏡と同様に、位相板像取得処理(S214)と、凹凸判定処理(S216)と、移動機構制御処理(S212)と、を行うため、良好な位相差像を容易に取得することができる。
【0072】
第2実施形態に係る電子顕微鏡では、制御部20は、位相板15による位相シフトが正常か異常かを判定する処理(位相シフト判定処理、S208)を行い、位相シフトが異常と判定された場合、移動機構制御処理(S212)を行う。このように、位相シフト判定処理(S208)を行うことにより、位相板15の状態を正確に判定することができ、移動機構制御処理(S212)を適切なタイミングで行うことができる。したがって、無駄に位相板15を移動させることがなく、位相板15を効率よく使用することができる。
【0073】
例えば、第1実施形態では、位相板15が正常に機能する条件を満たすか否かで判定を行っている。このように、第1実施形態では、実際に位相板15による位相シフトが異常か否かを測定しているわけではない。そのため、位相板15が正常に機能しているにもかかわらず、位相板15を移動させこととなる場合が多く、位相板15を効率よく使用できないという問題がある。これに対して、第2実施形態では、実際に、位相差像に基づいて位相板15による位相シフトが正常か異常かを判定しているため、このような問題が生じない。したがって、位相板15を効率よく使用できる。
【0074】
第2実施形態に係る電子顕微鏡では、制御部20は、移動機構制御処理(S212)の後に、位相板像取得処理(S214)および凹凸判定処理(S216)を行う。また、制御部20は、凹凸がないと判定した場合に、試料像取得処理(S200)を行う。そのため、位相板15の状態が変化した場所および位相板15の凹凸がある場所を避けて位相差像の取得が行われるため、良好な位相差像を容易に取得することができる。
【0075】
ここで、位相差像に基づいて位相板15による位相シフトが正常か異常かを判断する場合、位相差像を取得しなければならず、判定に時間がかかってしまう。これに対して、位相板15が正常に機能する条件を満たすか否かの判定は、短時間で判定が可能である。そのため、第2実施形態に係る電子顕微鏡では、制御部20は、位相板15が正常に機能する条件を満たすか否かを判定する処理(条件判定処理、S204)を行い、当該条件を満たさないと判定した場合に、位相シフト判定処理(S208)を行う。したがって、例えば、条件判定処理を行わずに位相シフト判定処理を行う場合と比べて(例えば後述する
図6参照)、位相シフト判定処理を行う回数を減らすことができる。これにより、多数の位相差像を、短時間で取得できる。
【0076】
3. 第3実施形態
3.1. 電子顕微鏡
次に、第3実施形態に係る電子顕微鏡について説明する。第3実施形態に係る電子顕微鏡の構成は、
図1に示す電子顕微鏡100の構成と同じであり、図示および説明を省略する。
【0077】
3.2. 処理
図6は、第3実施形態に係る電子顕微鏡の制御部20の処理の一例を示すフローチャートである。以下では、上述した
図2および
図5に示す制御部20の処理と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0078】
第1実施形態では、
図2に示すように、位相板15が正常に機能する条件を満たさない場合(S104のNo)、位相板15を移動させていた(S108)。これに対して、第3実施形態では、
図6に示すように、位相差像における位相シフトが異常な場合(S306のNo)、位相板15を移動させる(S310)。これにより、第2実施形態と同様に、位相板15を効率よく使用することができる。
【0079】
また、第2実施形態では、
図5に示すように、位相板15が正常に機能する条件を満た
しているか否かを判定していたが(S204)、第3実施形態では、この処理を行わない。これにより、処理を簡略化できる。
【0080】
図6に示す処理を行う前に、ユーザーは位相板観察位置を設定する。ユーザーが操作部30を介して試料像を取得する処理を開始する指示(操作)を行うと、制御部20は処理を開始する。
【0081】
まず、制御部20は、試料像を取得する(S300)。次に、制御部20は、試料像を設定数だけ取得したか否かを判定する(S302)。ステップS300、およびステップS302の処理は、
図2に示すステップS100、およびステップS102と同様に行われる。
【0082】
制御部20は、試料像を設定数だけ取得していないと判定した場合(S302のNo)、位相差像を取得する(S304)。次に、制御部20は、位相差像に基づいて、位相板15における位相シフトが正常か異常かを判定する(S306)。ステップS304およびステップS306の処理は、
図5に示すステップS206およびステップS208の処理と同様に行われる。
【0083】
制御部20は、位相板15による位相シフトが正常と判定した場合(S306のYes)、ステップS300に戻って、新たな撮影位置で撮影された試料像を取得した後、ステップS302、ステップS304、ステップS306の処理を行う。
【0084】
制御部20は、位相板15による位相シフトが異常と判定した場合(S306のNo)、試料Sが位相板観察位置に移動するように試料ステージ13を制御する(S308)。次に、制御部20は、位相板15が設定された移動量だけ移動するように位相板移動機構16を制御し(S310)、位相板像を取得する(S312)。次に、制御部20は、位相板像に基づいて、位相板15に凹凸があるか否かを判定する(S314)。
【0085】
制御部20は、位相板15に凹凸があると判定した場合(S314のYes)、ステップS310に戻って、位相板15が設定された移動量だけ移動するように位相板移動機構16を制御する。そして、制御部20は、再び、位相板像を取得し(S312)、位相板15の凹凸の有無の判定(S314)を行う。
【0086】
制御部20は、位相板15に凹凸がないと判定した場合(S314のNo)、試料Sが位相板観察位置から撮影位置に移動するように試料ステージ13を制御する(S316)。そして、制御部20は、ステップS300に戻って、新たな撮影位置で撮影された試料像を取得する。
【0087】
上述したステップS308、ステップS310、ステップS312、ステップS314、およびステップS316の処理は、
図2に示すステップS106、ステップS108、ステップS110、ステップS112、およびステップS114の処理と同様に行われる。
【0088】
制御部20は、試料像を設定数だけ取得したと判定した場合(S302のYes)、処理を終了する。このように、制御部20は、上述したステップS300,S302,S304,S306,S308,S310,S312,S314,S316の処理を、試料像が設定数だけ取得されるまで繰り返し行う。
【0089】
3.3. 特徴
第3実施形態に係る電子顕微鏡は、例えば、以下の特徴を有する。
【0090】
第3実施形態に係る電子顕微鏡では、第1実施形態に係る電子顕微鏡と同様に、位相板像取得処理(S312)と、凹凸判定処理(S314)と、移動機構制御処理(S310)と、を行うため、良好な位相差像を容易に取得することができる。
【0091】
第3実施形態に係る電子顕微鏡では、第2実施形態に係る電子顕微鏡と同様に、制御部20は、位相シフト判定処理(S306)を行い、位相シフトが異常と判定された場合、移動機構制御処理(S310)を行う。したがって、位相板15を効率よく使用することができる。
【0092】
4. 第4実施形態
4.1. 電子顕微鏡
次に、第4実施形態に係る電子顕微鏡について説明する。第4実施形態に係る電子顕微鏡の構成は、
図1に示す電子顕微鏡100の構成と同じであり、図示および説明を省略する。
【0093】
4.2. 処理
図7は、第4実施形態に係る電子顕微鏡の制御部20の処理の一例を示すフローチャートである。以下では、上述した
図2、
図5、および
図6に示す制御部20の処理と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0094】
第1〜第3実施形態に係る電子顕微鏡では、制御部20が自動で試料像を取得する場合について説明したが、第4実施形態に係る電子顕微鏡では、制御部20は位相板15を凹凸のない位置に移動させるまでを行い、試料像の取得は行わない。
【0095】
制御部20は、ユーザーが位相板15を移動させる指示(以下「移動指示」ともいう)を行ったか否かを判定し(S400)、移動指示が行われるまで待機する(S400のNo)。制御部20は、例えば、GUI(Graphical User Interface)の移動開始ボタン(操作部30の一例)の押下操作が行われた場合や、入力機器から移動指示が入力された場合に、ユーザーが移動指示を行ったと判定する。
【0096】
制御部20は、移動指示が行われたと判定した場合(S400のYes)、試料Sが位相板観察位置に移動するように試料ステージ13を制御する(S402)。次に、制御部20は、位相板15が設定された移動量だけ移動するように位相板移動機構16を制御し(S404)、位相板像を取得する(S406)。次に、制御部20は、位相板像に基づいて、位相板15に凹凸があるか否かを判定する(S408)。
【0097】
制御部20は、位相板15に凹凸があると判定した場合(S408のYes)、ステップS404に戻って、位相板15が設定された移動量だけ移動するように位相板移動機構16を制御する。そして、制御部20は、再び、位相板像を取得し(S406)、位相板15の凹凸の有無の判定(S408)を行う。
【0098】
制御部20は、位相板15に凹凸がないと判定した場合(S408のNo)、試料Sが位相板観察位置から撮影位置に移動するように試料ステージ13を制御する(S410)。
【0099】
上述したステップS402、ステップS404、ステップS406、ステップS408、およびステップS410の処理は、
図2に示すステップS106、ステップS108、ステップS110、ステップS112、およびステップS114の処理と同様に行われる。
【0100】
制御部20は、試料Sを撮影位置に移動させると、位相板15の移動が完了したことを示す通知を表示部32に表示させる処理を行う(S412)。これにより、ユーザーは、位相板15の移動が完了したことを知ることができ、位相差像を撮影することができる。
【0101】
以上の処理により、位相板15を移動させることができる。
【0102】
4.3. 特徴
第4実施形態に係る電子顕微鏡は、例えば、以下の特徴を有する。
【0103】
第4実施形態に係る電子顕微鏡では、第1実施形態に係る電子顕微鏡と同様に、位相板像取得処理(S406)と、凹凸判定処理(S408)と、移動機構制御処理(S404)と、を行うため、位相板15の凹凸がある場所を避けて位相差像を取得することができる。したがって、良好な位相差像を容易に取得することができる。
【0104】
5. 変形例
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0105】
例えば、上述した第1実施形態では、
図1に示すように、電子顕微鏡100が透過電子顕微鏡(TEM)である場合について説明したが、電子顕微鏡100は、走査透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope、STEM)であってもよい。電子顕微鏡100がSTEMである場合、位相板15は、対物レンズ14の前方焦点面に配置され、位相変調された電子線を試料Sに照射する。第2〜第4実施形態に係る電子顕微鏡でも同様である。
【0106】
また、例えば、上述した第1実施形態では、
図2に示すように、試料Sを移動させながら繰り返し撮影を行って多数のTEM像を取得する場合について説明したが、例えば、試料Sを傾斜させながら繰り返し撮影を行って多数のTEM像を取得してもよい。
【0107】
この場合、試料像を取得する処理(S100)では、制御部20は、新たな傾斜角で試料像が撮影できるように試料ステージ13を制御し、検出器19で撮影された試料像を取得する。
【0108】
なお、第2実施形態および第3実施形態についても、同様に、試料Sを傾斜させながら繰り返し撮影を行って多数のTEM像を取得する場合に適用可能である。
【0109】
また、例えば、上述した第1実施形態では、
図2に示すように、制御部20が位相板像に基づいて位相板15に凹凸があるか否かを判定する処理(S112)を行ったが、ユーザーが位相板像を見て位相板15に凹凸があるか否かを判定してもよい。第2〜第4実施形態についても同様である。
【0110】
また、例えば、上述した第2実施形態では、
図5に示すように、制御部20が位相差像に基づいて位相板15における位相シフトが正常か異常かを判定する処理(S208)を行ったが、ユーザーが位相差像を見て位相シフトが正常か異常かを判定してもよい。第3実施形態についても同様である。
【0111】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが可能である。
【0112】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。