特許第6876655号(P6876655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ツェー・エス・エル・ベーリング・アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000002
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000003
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000004
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000005
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000006
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000007
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000008
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000009
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000010
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000011
  • 特許6876655-タンパク質の精製方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876655
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】タンパク質の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/47 20060101AFI20210517BHJP
   C07K 14/79 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 38/40 20060101ALI20210517BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20210517BHJP
   C07K 1/30 20060101ALN20210517BHJP
   C07K 1/36 20060101ALN20210517BHJP
   C07K 1/18 20060101ALN20210517BHJP
   C07K 1/20 20060101ALN20210517BHJP
【FI】
   C07K14/47
   C07K14/79
   A61P7/06
   A61P7/04
   A61P37/02
   A61P33/06
   A61P17/02
   A61P13/02
   A61K38/17
   A61K38/40
   A61K35/16 Z
   !C07K1/30
   !C07K1/36
   !C07K1/18
   !C07K1/20
【請求項の数】18
【外国語出願】
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-130335(P2018-130335)
(22)【出願日】2018年7月10日
(62)【分割の表示】特願2015-535745(P2015-535745)の分割
【原出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2018-172426(P2018-172426A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2018年7月31日
(31)【優先権主張番号】61/709,342
(32)【優先日】2012年10月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/803,525
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】2013203930
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】AU
(31)【優先権主張番号】13170202.9
(32)【優先日】2013年6月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501091604
【氏名又は名称】ツェー・エス・エル・ベーリング・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・ブリンクマン
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0069940(US,A1)
【文献】 特開2000−044600(JP,A)
【文献】 特開昭60−051116(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/131720(WO,A1)
【文献】 特表2012−521776(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/002070(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/007208(WO,A1)
【文献】 特開2004−224793(JP,A)
【文献】 特開平05−086097(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/018745(WO,A1)
【文献】 特表2008−533006(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/050874(WO,A1)
【文献】 特開2003−274941(JP,A)
【文献】 特開2004−256463(JP,A)
【文献】 Blood (2005) Vol.106, No.7, pp.2572-2579
【文献】 Journal of Chromatography (1985) Vol.326, pp.373-385
【文献】 Biochimie (1975) Vol.57, pp.551-557
【文献】 Biochemistry (2005) Vol.44, pp.1864-1871
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
A61K 38/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘモペキシンを含む、溶血に関連した症状を治療するための医薬組成物であって、組成物は血漿画分の精製物であり、少なくとも80%のヘモペキシンを含み、組成物はさらに、a)1.6%以下のハプトグロビン;及びb)0.2%以下のアルブミンを含み、ここで、ヘモペキシン、ハプトグロビン及びアルブミンのパーセンテージは全タンパク質の質量に基づく質量パーセントであって、免疫比濁法によって決定され、そして、組成物は微量のハプトグロビン及びアルブミンを少なくとも含む、医薬組成物。
【請求項2】
組成物がさらに、0.3%以下のトランスフェリンを含み、トランスフェリンのパーセンテージは全タンパク質の質量に基づく質量パーセントであって、免疫比濁法によって決定される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
組成物がさらに、0.1%以下のアルファ−2 マクログロブリンを含み、アルファ−2 マクログロブリンのパーセンテージは全タンパク質の質量に基づく質量パーセントであって、免疫比濁法によって決定される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
症状が、溶血性貧血、輸血誘導性溶血、溶血性尿毒症症候群、自己免疫疾患に伴う溶血性症状、マラリア感染に伴う溶血性症状又は熱傷に伴う溶血性症状である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
症状が、鎌状赤血球貧血、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、サラセミア、先天性赤血球異形成貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿、または全身性エリテマトーデスに伴う溶血性症状である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
組成物が、低温殺菌及び/又はウイルス低減処理を経たものである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ウイルス低減処理が、溶媒/界面活性剤による処理及び/又はナノ濾過である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
組成物が、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決定される、全タンパク質の質量に基づいて少なくとも95%のヘモペキシンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
組成物が、SDS-PAGEによって決定される、全タンパク質の質量に基づいて少なくとも97%のヘモペキシンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
組成物が、SDS-PAGEによって決定される、全タンパク質の質量に基づいて少なくとも98%のヘモペキシンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
組成物が、SDS-PAGEによって決定される、全タンパク質の質量に基づいて少なくとも99%のヘモペキシンを含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
組成物が、SDS-PAGEによって決定される、全タンパク質の質量に基づいて5%未満の混入たんぱく質を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
組成物が、さらに薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項14】
組成物が、さらに安定化剤を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
組成物が、25℃以下で保存したときに、少なくとも2年間安定である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
組成物が、静脈内、皮下または動脈内への注入で投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
組成物が、第2の治療薬を含み、第2の治療薬は、鉄キレート剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項18】
鉄キレート剤が、デスフェリオキサミンまたはデフェリプロンである、請求項17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、タンパク質の精製方法に関する。より詳細には、本発明は、同じ開始材料からのハプトグロビンおよびヘモペキシンの精製方法ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
溶血は、赤血球細胞の破壊を特徴とし、酵素欠損、ヘモグロビン異常症、遺伝性球状赤血球症、発作性夜間ヘモグロビン尿症および棘細胞性貧血などの赤血球細胞異常、ならびに脾腫、自己免疫疾患(例えば、新生児溶血性疾患)、遺伝性障害(例えば、鎌状赤血球症またはG6PD欠損症)、微小血管症性溶血、グラム陽性菌感染(例えば、ストレプトコッカス、エンテロコッカスおよびスタフィロコッカス)、寄生生物感染(例えば、マラリア原虫)、毒素および外傷(例えば、熱傷)などの外因子に関連した貧血障害の指標である。溶血はまた、輸血、特に大量輸血および体外心肺補助を使用する患者における一般的な障害である。
【0003】
溶血に関連した症状を有する患者に見られる有害作用は、主として赤血球細胞からの鉄ならびにヘモグロビン(Hb)およびヘムなどの鉄含有化合物の放出に起因する。生理学的条件下では、放出されたヘモグロビンは、ハプトグロビンなどの可溶性タンパク質に結合し、マクロファージおよび肝細胞に輸送される。しかし、溶血の頻度が加速し、病的な状態になると、ハプトグロビンの緩衝能力は完全に消失する。結果として、ヘモグロビンは迅速にフェリヘモグロビンに酸化され、次々に遊離ヘム(プロトポルフィリンIXおよび鉄を含む)を放出する。ヘムは数々の生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たすが(例えば、ヘモグロビンおよびミオグロビンなどの必須タンパク質の一部として)、遊離ヘムは毒性が高い。遊離ヘムは、脂質膜、タンパク質および核酸に損傷を与える毒性の高い活性酸素種(ROS)を生成する酸化還元活性鉄の原料である。ヘムの毒性はさらに、脂質膜に入り込む能力によって増大し、膜成分の酸化を引き起こし、細胞溶解および死を促進する。
【0004】
低レベルの細胞外Hb/ヘムに継続的に曝露することによる進化的圧力によって、生理学的定常状態においておよび軽度溶血の間に遊離Hb/ヘムの有害作用を制御する代償機構が導かれた。これらの系には、Hb捕捉ハプトグロビン(Hp)およびヘム捕捉タンパク質ヘモペキシン(Hx)およびα1−ミクログロブリンを含むHbまたはヘムに結合する血漿タンパク質の一群の放出が含まれる。しかし、内在性HpおよびHxは、生理学的定常状態における遊離Hb/ヘムの有害作用は制御するが、溶血に関連した症状などの病態生理学的状態においては、Hb/ヘムの定常状態レベルを維持することにはほとんど効果がない。
【0005】
本発明は、同じ開始材料からHpおよびHxを精製する方法を提供する。精製したタンパク質は、溶血に関連した症状および異常なHb/ヘムレベルを治療するための組成物において使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様では、ハプトグロビンおよびヘモペキシンを、両タンパク質を含有する溶液から精製する方法であって、
(i)ハプトグロビンおよびヘモペキシンの両方を含有する溶液を準備すること;
(ii)該溶液に硫酸アンモニウムを添加することによって該溶液からハプトグロビン
を沈殿させること;
(iii)沈殿したハプトグロビンをヘモペキシンを含む該溶液から分離すること;および
(iv)1つまたは複数の工程でハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンを別々に精製することを含む方法を提供する。
【0007】
本発明の別の態様では、本明細書で開示した方法によって回収したハプトグロビンを含む組成物を提供する。
【0008】
本発明の別の態様では、本明細書で開示した方法によって回収したヘモペキシンを含む組成物を提供する。
【0009】
本発明の別の態様では、本明細書で開示した方法によって回収したトランスフェリンを含む組成物を提供する。
【0010】
本発明の別の態様では、本明細書で開示した方法によって回収したハプトグロビンおよび本明細書で開示した方法によって回収したヘモペキシンを含む組成物を提供する。
【0011】
本発明の別の態様では、ハプトグロビン含量が全タンパク質の少なくとも95%である組成物を提供する。本発明の別の態様では、ヘモペキシン含量が全タンパク質の少なくとも80%である組成物を提供する。本発明の別の態様では、ヘモペキシンおよびハプトグロビンを一緒にした含量が全タンパク質の少なくとも80%である組成物を提供する。
【0012】
本発明の別の態様では、本明細書で開示したように、本発明の組成物および薬学的に許容される担体を含む製剤を提供する。
【0013】
本発明の別の態様では、溶血に関連した症状を治療する方法であって、本明細書で開示したように、本発明の組成物または製剤を、それらを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0014】
本発明の別の態様では、溶血に関連した症状を治療する医薬品の製造における、本明細書で開示したような本発明の組成物または製剤の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】コーン分画法の流れ図を示した図である。当業者であれば、図1に記載した方法のパラメータ(例えば、pH、エタノール濃度、温度など)の変動もコーン画分を生成するために使用できることを認識する。
図2】硫酸アンモニウム2.0M、2.5M、3.0M、3.5Mおよび4.0Mの存在下での沈殿後の残存濾液中におけるトランスフェリン(TRF)、アルブミン(Alb)、ヘモペキシン(HPX)およびハプトグロビン(HAP)の回収を示した図である。
図3】実験計画法(DOE)の望ましさのプロット(desirability plot)を示した図で、溶液中にヘモペキシンを維持しながら血漿画分からハプトグロビンを沈殿させる望ましい条件を示す。DOEは、ハプトグロビンからヘモペキシンを分離する能力に対するpHおよび硫酸アンモニウム濃度の影響を評価するために使用した一連の制御実験である。要因数学的設計(A factorial mathematical design)を使用してデータを設計し、分析した。図3で示した望ましさのプロットは、ヘモペキシンおよびハプトグロビン両方の最良の分離および回収をもたらす最も望ましい条件を決定するためにこの数学的設計を使用した。
図4】本明細書で開示した精製方法における様々な工程後に回収されたヘモペキシンのSDS−PAGE電気泳動を示した図である。SDS−PAGE分析は、予め形成した10%トリス−グリシンゲル(Novex、EC6075)を使用して実施した。試料は全て、トリス−グリシンSDS試料緩衝液(LC2676)中0.1mg/mLの濃度に希釈し、各試料20μLをゲルのサンプルウェルに添加した。泳動時間および電圧は、ゲル製造者の推奨(125V一定)に設定した。各ゲルは、クーマシーブリリアントブルー染色溶液の種類(Novex、Simply Blue Safestain、LC6065)を使用して容易に染色した。レーン1(LMWS)はNovex Sharp非染色タンパク質標準物LC5801を含有する。
図5】本明細書で開示した精製方法における様々な工程後に回収されたハプトグロビン中間体のSDS−PAGE電気泳動を示した図である(図4で前述した方法を使用)。レーン2のハプトグロビン標準物はBenesis(T043HPX)から入手した。
図6】10%トリス−グリシン非還元SDS−PAGE電気泳動ゲルでのCapto Q溶出液のウェスタンブロットを示した図である(図4で記載した方法を使用)。分離されたタンパク質は、次にニトロセルロース膜に移し、抗体のいかなる非特異的結合も防ぐために膜をブロックする。次に、ニトロセルロース膜をヒトハプトグロビンに対する抗体(ウサギ抗ヒトハプトグロビン、Sigma H8636)を含有する溶液でインキュベートする。次に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に結合した2次抗体(ヤギ抗ウサギHRP、Sigma A6154)でニトロセルロース膜をインキュベートした。その後、ニトロセルロースを、過酸化物を含有する溶液で発色させ、それによってヒトハプトグロビンを特異的に含有するタンパク質バンドのみを視覚化する。レーンは、異なる濃度のCapto Q ImpRes溶出液(T0209001)を含有する(レーン2−1:10希釈、0.1mg/mL、20μL添加;レーン3−1:20;レーン4−1:40;レーン5−1:80;レーン6−1:160;レーン7−1:320;レーン8−1:640;レーン9 1:1280;およびレーン10−1:2560)。ウェスタンブロットは、Capto Q溶出液中に存在するバンドのほとんどがハプトグロビンであることを示唆している。
図7】本明細書で開示した精製方法における様々な工程後にイオン交換クロマトグラフィー(Capto DEAE)から回収されたトランスフェリンのSDS−PAGE電気泳動を示した図である(図4で前述した方法を使用)。ピーク1(レーン4)は大量に添加されているが、純粋なトランスフェリンのように見える(レーン2、ヒトトランスフェリン、Sigma T8158と比較)。これは、オクチルセファロース洗浄画分からトランスフェリンを精製することが可能であることを示しており、同じ開始材料からヘモペキシン、ハプトグロビンおよびトランスフェリンを精製することが可能であることも意味する。
図8】本明細書で開示した精製方法におけるイオン交換クロマトグラフィーカラムからのトランスフェリン直線勾配のクロマトグラムを示した図である。1から4で標識したピークは、図7のSDS−PAGEによって分析した。
図9】本明細書で開示した1実施形態によるヘモペキシンの精製方法の流れ図である。
図10】本明細書で開示した1実施形態によるハプトグロビンの精製方法の流れ図である。
図11】本明細書で開示した1実施形態によるハプトグロビン/ヘモペキシン/トランスフェリンを一緒に精製する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書を通じて、文脈で特に必要とされない限り、語句「含む(comprise)」または「含む(comprimses)」または「含んでいる(comprising)」などの変化形は、記述された要素もしくは整数または要素もしくは整数の群を含むが、いかなるその他の要素もしくは整数または要素もしくは整数の群も排除しないことを意味するものと理解されたい。
【0017】
本明細書は、いかなる先行刊行物(もしくは先行刊行物から得られる情報)または公知のいかなる事項も参照するが、このような参照は、先行刊行物(もしくは先行刊行物から得られる情報)または公知の事項が、本明細書が関与する開発分野において共通の一般的知識の一部を構成するということを認識または承認または何らかの形態で示唆すると捉えられるものではなく、かつ捉えられるべきではない。
【0018】
本明細書で使用したように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈で特に明確に記載していなければ、複数の態様を含むことに注意しなければならない。したがって、例えば、「樹脂(a resin)」というと単一の樹脂、ならびに2種以上の樹脂を含み;「組成物(the composition)」というと単一の組成物ならびに2種以上の組成物を含む、などである。
【0019】
反対を示すものがない場合は、本明細書を通じて「%」含量という場合、%w/w(重量/重量)を意味するものと捉えられるべきである。例えば、ハプトグロビン含量が全タンパク質の少なくとも95%である溶液は、ハプトグロビン含量が全タンパク質の少なくとも95%w/wである組成物を意味するものと捉えられる。
【0020】
本発明は、少なくとも部分的には、ハプトグロビンおよびヘモペキシンは同じ開始材料から精製することができるという発見に基づいている。したがって、本発明の一態様では、ハプトグロビンおよびヘモペキシンを、両タンパク質を含有する溶液から精製する方法であって、
(i)ハプトグロビンおよびヘモペキシンの両方を含有する溶液を準備すること;
(ii)該溶液に硫酸アンモニウムを添加することによって該溶液からハプトグロビンを沈殿させること;
(iii)沈殿したハプトグロビンをヘモペキシンを含む該溶液から分離すること;および
(iv)1つまたは複数の工程でハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンを別々に精製することを含む方法を提供する。
【0021】
ハプトグロビン(Hp)は、成人肝臓によって合成され、血漿中に分泌されるテトラ鎖(αβ)糖タンパク質である。Hpのプロペプチドは、蛋白質分解によってα鎖およびβ鎖に切断される。Hpタンパク質の2個のαサブユニットおよび2個のβサブユニットは次に、鎖間ジスルフィド結合によって結合して成熟ペプチドを形成し、(αβ)二量体または(αβ)多量体のいずれかになることができる。ヘモペキシン(Hx)は、439アミノ酸長の1本のペプチド鎖を含む60−kD血漿β−1B−糖タンパク質で、ドメイン間リンカーによって結合した2個のドメインを形成する。いかなる特徴付けられたヘム結合タンパク質のヘムに対しても、知る限り最も高い親和性を有し(Kd<1pM)、ドメイン間リンカーによって形成されたポケット内において、Hxの2個のドメインの間で当モル比でヘムに結合する。
【0022】
本発明者らは、約2.0Mから約2.5Mの範囲、好ましくは約2.2Mから約2.5Mの範囲、より好ましくは約2.4Mの硫酸アンモニウム濃度が、同じ開始材料から両タンパク質を分離するために最適であることを発見した。したがって、一実施形態では、この方法は、溶液に硫酸アンモニウム約2.0Mから約2.5Mを添加することによって、溶液からハプトグロビンを沈殿させることを含む。別の実施形態では、この方法は、溶液に硫酸アンモニウム約2.2Mから約2.5Mを添加することによって、溶液からハプトグロビンを沈殿させることを含む。さらに別の実施形態では、この方法は、溶液に硫酸アンモニウム約2.4Mを添加することによって、溶液からハプトグロビンを沈殿させることを含む。特定の実施形態では、硫酸アンモニウム濃度は、2.0Mまたは2.1Mまた
は2.2Mまたは2.3Mまたは2.4Mまたは2.5Mである。
【0023】
本発明者らはまた、約8以下の範囲、好ましくは約6から約8、より好ましくは約7で維持されたpHが、同じ開始材料から両タンパク質を分離するために最適であることを示した。したがって、一実施形態では、この方法は、8以下のpHで溶液からハプトグロビンを沈殿させることを含む。別の実施形態では、この方法は、約6から約8の範囲のpHで溶液からハプトグロビンを沈殿させることを含む。さらに別の実施形態では、この方法は、約7のpHで溶液からハプトグロビンを沈殿させることを含む。特定の実施形態では、この方法は、6.0から8.0、または6.25から7.75、または6.5から8.0、または6.5から7.75、または6.5から7.5、または6.75から7.25、または6.75から7.5の範囲のpHで溶液からハプトグロビンを沈殿させることを含む。pHは典型的に、ハプトグロビンおよびヘモペキシン溶液において、次いで硫酸アンモニウム添加中およびハプトグロビンの沈殿中に測定する。必要ならば、pHは調節することができる(典型的に、pHの調節に使用した酸(例えば、HCl)または塩基(例えば、NaOH)の濃度は0.05Mから0.6Mの範囲である)。
【0024】
本明細書で開示した方法では、開始材料のハプトグロビンの大部分は、硫酸アンモニウム沈殿物内に見いだされ、開始材料からのヘモペキシンの大部分は残存する溶液(懸濁液とも呼ぶ)中に見いだされる。しかし、当業者であれば、沈殿物がいくらかのヘモペキシン(例えば、微量のHx)を含むこともあり、残存する溶液(または懸濁液)がいくらかのハプトグロビン(例えば、微量のHp)を含むこともあることを理解する。微量のHpおよびHxが懸濁液および沈殿物中それぞれに存在する場合、本明細書で開示した方法に従って、1つまたは複数の工程でハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンを別々に精製することによってこれらを除去することが望ましい。しかし、当業者であれば、懸濁液および沈殿物中それぞれに存在し得る微量のHpおよびHxは、例えば、両タンパク質を結局同じ組成物中に入れる場合、許容することができることも理解する。
【0025】
ハプトグロビンおよびヘモペキシン両方を含むいかなる溶液も、本明細書で開示した本発明の方法において開始材料として使用することができる。特定の実施形態では、ハプトグロビンおよびヘモペキシンの両方を含有する溶液はさらに、トランスフェリンを含む。適切な開始材料は当業者には公知で、その例にはエタノール分画法から得られた様々な上清および沈殿物などの血漿画分が含まれる。このようなエタノール分画法の例には、コーン分画およびキストラーニッチェマン(Kistler−Nitschmann)分画が含まれる。適切な血漿画分の例には、コーン画分I、II、III、II+III、I+II+III、IVおよびV(図1参照)または沈殿物AまたはBなどのキストラーニッチェマン画分から得られた画分が含まれる。一実施形態では、溶液はヒト血漿画分である。別の実施形態では、溶液はコーン画分IVである。さらに別の実施形態では、溶液はコーン画分IVである。特定の実施形態では、コーン画分IVはコーン画分II+IIIまたはコーン画分I+II+IIIから得られる。特に好ましい実施形態では、溶液は画分IV沈殿物から得られる。
【0026】
開始材料が沈殿物(例えば、画分IV沈殿物)として提供される場合、最初に沈殿物を再溶解して、本発明の方法のために適切な開始溶液を形成する必要があることがわかる。沈殿物を再溶解するために使用した緩衝剤は、pH約7で緩衝能力を有する任意の薬剤または薬剤の組み合わせであってもよい(例には、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、MOPS、BES、TRISを含めることができる)。典型的に、緩衝剤は、約5mMから約100mMの濃度である。一実施形態では、再溶解緩衝液は50mMトリス、pH7である。いくつかの実施形態では、再溶解緩衝液は、開始材料のグラム当たり約5から約30グラムで添加することができる。特定の実施形態では、再溶解緩衝液は、開始材料のグラム当たり5から10グラムで添加するか、または開始材料のグラム当たり1
0から15グラムで添加するか、または開始材料のグラム当たり15から20グラムで添加するか、または開始材料のグラム当たり20から25グラムで添加するか、または開始材料のグラム当たり25から30グラムで添加する。
【0027】
本発明の方法は、ヘモペキシン、ハプトグロビン、場合によりトランスフェリンの商用/産業規模の精製のために適している。例えば、開始材料として血漿画分を使用する場合、本発明の方法を商用/産業規模で使用するには、少なくとも約500kgの血漿から得られた血漿画分を使用することが必要となり得る。より好ましくは、血漿画分は、バッチ当たり少なくとも約5,000kg、7,500kg、10,000kgおよび/または15,000kgの血漿から得られる。
【0028】
当業者であれば、分画のための血漿は、抗凝固剤を含有する容器に収集した血液から細胞要素を分離した後残存する、またはアフェレーシス手法において抗凝固剤処理した血液の連続濾過または遠心など当業者に公知のその他の任意の適切な手段によって分離した血液の液体部分である。
【0029】
一実施形態では、沈殿したハプトグロビンおよびヘモペキシンを含有する溶液を回収し、本発明によって、1回または複数の工程でハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンを別々に精製する前に別々に保存する。別の実施形態では、沈殿したハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンを含有する溶液を回収し、すぐに本発明の方法によって;すなわち、1回または複数の工程におけるハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンの別々の精製によって、さらに精製工程を行う。
【0030】
したがって、一実施形態では、方法にはさらに:
(i)ハプトグロビン溶液を得るために、沈殿したハプトグロビンを緩衝液に溶解すること;
(ii)ハプトグロビンが陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合するような条件下で、ハプトグロビン溶液を該樹脂に通過させること;
(iii)該樹脂からハプトグロビンを溶出すること;および
(iv)溶出したハプトグロビンを回収することが含まれる。
【0031】
特定の実施形態では、工程(ii)の陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂である。その他の実施形態では、工程(ii)の陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、弱陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂である。
【0032】
クロマトグラフィーによるタンパク質の精製は、GE Healthcare、Pall Corporation、MilliporeおよびBio−Radから市販されているものなどの軸流カラムを使用するか、またはProxcysもしくはSepragenから市販されているものなどの放射流カラムを使用して実施することができる。クロマトグラフィーはまた、当業者に公知の膨張層技術を使用して実施することができる。
【0033】
ほとんどのクロマトグラフィー法は、本明細書では樹脂またはマトリクスと同義に称される固相支持体を使用する。適切な固相支持体は、当業者にはよく知られており、選択は精製する生成物の種類に左右される。適切な固相支持体の例には、ガラスおよびシリカゲルなどの無機担体、アガロース、セルロース、デキストラン、ポリアミド、ポリアクリルアミド、二機能性アクリル酸のビニルコポリマーおよび様々なヒドロキシル化単体などの合成もしくは天然に生じる有機担体などが含まれる。市販の担体は、Sephadex(商標)、Sepharose(商標)、Hypercel(商標)、Capto(商標)、Fractogel(商標)、MacroPrep(商標)、Unosphere(商標)、GigaCap(商標)、Trisacryl(商標)、Ultrogel(商標
)、Dynospheres(商標)、Macrosorb(商標)およびXAD(商標)樹脂の名称で販売されている。
【0034】
クロマトグラフィー工程は一般的に、非変性条件下で、約−10℃から+30℃の範囲の都合のよい温度で、より一般的にはおよそ周囲温度で実施する。クロマトグラフィー工程は、都合がよければ、バッチワイズまたは連続的に実施することができる。カラム、遠心、濾過、傾瀉などの都合のよい分離方法を使用することができる。
【0035】
ハプトグロビン沈殿物を溶解するために適切な緩衝液は、当業者にはよく知られており、クロマトグラフィー精製工程を実施するために必要な条件に左右され得る。典型的に、緩衝液の緩衝剤(すなわち、トリス)の濃度は、約5mMから約100mMである。特定の実施形態では、緩衝剤は、約10mMから約60mMである。当業者はまた、緩衝液が複数の緩衝剤を含んでもよいことを認識する。適切な緩衝液の例は、pH範囲5.5から9.0の酢酸ナトリウムおよびトリスである。特定の実施形態では、7.5から9.0のpHを利用する。いくつかの実施形態では、ハプトグロビン沈殿物を溶解するために使用した緩衝液のpHは、pH7.5から9.0、またはpH7.75から9.0、またはpH8.0から9.0、またはpH8.25から9.0、またはpH8.4から8.6である。好ましい実施形態では、緩衝液はpH約8.4からpH約8.6のpHのトリス約50mMである。
【0036】
実施形態では、ハプトグロビンを含む沈殿抽出物(すなわち、ハプトグロビン溶液)の脂質含量は、脂質を脂質除去剤に結合させる条件下で、脂質除去剤に曝露させることによって低下する。このような脂質除去剤の例には、エアロジルなどのフュームドシリカが含まれる。一実施形態では、脂質除去剤はフュームドシリカである。一実施形態では、フュームドシリカはエアロジル(例えば、エアロジル380)である。実施形態では、エアロジルなどの脂質除去剤は、血漿同等物1リットル当たりハプトグロビン約0.5gから約4gを含む沈殿抽出物に添加することができる。特定の実施形態では、エアロジルなどの脂質除去剤は、ハプトグロビンを含む沈殿抽出物に血漿同等物1リットル当たり1から2gで添加する。別の実施形態では、フュームドシリカ(例えば、エアロジル)などの脂質除去剤は、ハプトグロビンを含む抽出した沈殿物に血漿同等物1リットル当たり1.6から1.8gで添加する。別の実施形態では、エアロジルなどの脂質除去剤は、ハプトグロビンを含む沈殿抽出物に血漿同等物1リットル当たり1.8から2.0gで添加する。別の実施形態では、エアロジルなどの脂質除去剤は、ハプトグロビンを含む沈殿抽出物に血漿同等物1リットル当たり1.6gで添加する。脂質除去は、特定のpH範囲で最も効果的であることが測定された。pH範囲5.5から9.0が、エアロジルと併用して効果的であることが見いだされた。いくつかの実施形態では、pH範囲は6.5から8.6である。その他の実施形態では、脂質除去工程中のpHは、pH5.5から9.0、またはpH5.75から9.0、またはpH6.0から9.0、またはpH6.25から9.0、またはpH6.5から9.0、またはpH6.75から9.0、またはpH7.0から9.0、またはpH7.25から9.0、またはpH7.5から9.0、またはpH7.75から9.0、またはpH8.0から9.0、またはpH8.25から9.0、またはpH8.4から9.0、またはpH8.6から9.0である。好ましい実施形態では、pH範囲8.4から8.6を利用する。
【0037】
脂質除去剤は、濾過およびまたは遠心などの方法を使用して除去することができる。特定の実施形態では、脂質除去剤は、深層濾過によって除去する。本出願で使用するための深層フィルターの一例は、Cuno 70CAフィルター、または類似のもしくはより小さい粒径保持能力のフィルターである。
【0038】
当業者であれば、陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、溶液中のいくらかの不純物
は樹脂を通過させる一方、ハプトグロビンがクロマトグラフィー樹脂に結合できる限り、ハプトグロビン溶液からハプトグロビンを別々に精製するために使用することができることを理解する。特定の実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、強陰イオン交換樹脂である。その他の実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、弱陰イオン交換樹脂である。当業者であればまた、抽出緩衝液のイオン強度および添加溶液のその後のpH調節によって、ハプトグロビンを樹脂に結合させるために、希釈、ダイアフィルトレーション、クロマトグラフィーによる脱塩、または緩衝液交換/イオン強度低下のその他の方法が必要となることを決定する。適切な樹脂は、当業者には公知である。適切な陰イオン交換樹脂の例は、機能的4級アミン基(Q)および/またはジエチルアミノプロピル基(ANX)を含む樹脂である。一実施形態では、強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂には、機能的4級アミン基(例えば、Capto Q ImpRes(商標))が含まれる。
【0039】
クロマトグラフィー媒体の平衡化に適切な溶液(平衡化緩衝液と呼ばれることも多い)の緩衝剤の濃度は通常、約5mMから約100mMである。平衡化緩衝液のpHは通例、約5から約9の範囲で、伝導率は典型的に約9mS/cm未満である。これらの条件は一般的に、ハプトグロビンを陰イオン交換媒体に結合させる。特定の実施形態では、緩衝剤の濃度範囲は、約10mMから約60mMである。特定の実施形態での平衡化緩衝液のpHは、約5.0から約9.0のpH範囲である。いくつかの実施形態では、pHは約5.0から約7.0、または約5.0から約6.0、または約5.3から約5.7の範囲である。特定の実施形態では、平衡化緩衝液のpHは、pH5.3±0.1、またはpH5.4±0.1、またはpH5.5±0.1、またはpH5.6±0.1、またはpH5.7±0.1、またはpH5.8±0.1である。いくつかの実施形態での平衡化緩衝液の伝導率は、約7.0mS/cm未満である。特定の実施形態では、平衡化緩衝液の伝導率は、6.0mS/cm未満または5.0mS/cm未満である。平衡化緩衝液のための緩衝剤の一例は、酢酸ナトリウムである。特定の実施形態では、pH範囲5.0から6.0、伝導率6.0mS/cm未満の酢酸ナトリウム50mMを利用する。その他の実施形態は、pH約5から約6の酢酸ナトリウム約10から約40mMを利用する。特定の実施形態では、平衡化緩衝液には、pH範囲pH5.3からpH5.7、伝導率5.0mS/cm未満の酢酸ナトリウム50mMが含まれる。
【0040】
陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂を通過するハプトグロビン溶液は、樹脂に結合させるために、イオン強度を低下させるため、最初に緩衝液の交換、脱塩または希釈を必要とすることがある。緩衝液の交換、脱塩または希釈のために適切な溶液には、約5mから約100mMの濃度の緩衝剤を有する溶液が含まれる。これらの溶液のpH範囲は、典型的にpH約5から約9の範囲である。一方、伝導率は通常、約8.0mS/cm未満である。特定の実施形態では、緩衝液の交換、脱塩または希釈のための溶液には、pH範囲約5から約9で、伝導率約7.0mS/cm未満の約10mMから約60mMの範囲の緩衝剤が含まれる。緩衝液の交換、脱塩または希釈のための溶液の一例は、酢酸ナトリウムである。特定の実施形態では、pH範囲5.0から6.0、伝導率6.0mS/cm未満の酢酸ナトリウム50mMを利用する。その他の実施形態は、pH約5から約6の酢酸ナトリウム約10から約40mMを利用する。
【0041】
その他の実施形態には、イオン強度を低下させるために水(注射用水(WFI)など)を添加することによるハプトグロビン添加溶液の希釈が含まれる。例えば、WFIによって1:4から1:5に希釈すると、pH5.3〜5.7の酢酸ナトリウム50mMを含むハプトグロビン溶液の最終的な酢酸ナトリウム濃度は約10〜13mM、pHは5.3から5.7、伝導率は5.0mS/cm未満である。これは一般的に、ハプトグロビンを陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合させる。
【0042】
ハプトグロビン溶液において緩衝剤(複数)の緩衝範囲を超えるpH調節が必要な場合、緩衝剤をさらにハプトグロビン溶液に添加することができる。添加する緩衝剤は典型的に、濃度が約5mMから約100mM、pH範囲が約5から約9である。特定の実施形態では、添加する緩衝剤は約10mMから約60mMの範囲で、pH範囲は約5から約9である。添加する緩衝剤の一例は酢酸ナトリウムである。特定の実施形態では、pH範囲5.0から6.0の酢酸ナトリウム50mMを利用する。好ましい実施形態では、緩衝液はpH5.3からpH5.7の範囲のpHの酢酸ナトリウム50mMである。
【0043】
樹脂からハプトグロビンを溶出するために適切な緩衝液はまた、当業者には公知である。特定の実施形態では、適切な緩衝剤の濃度は、約5mMから約100mMの範囲である。特定の実施形態では、緩衝剤は、約10mMから約60mMの範囲である。一例には酢酸ナトリウムが含まれる。特定の実施形態では、pH5.0から6.0の酢酸ナトリウム50mMを利用する。その他の実施形態では、約5.0から約6.0のpHの酢酸ナトリウム約10から約40mMを利用する。好ましい実施形態では、緩衝液は約pH5.3から約pH5.7のpHの酢酸ナトリウム約50mMである。
【0044】
さらなる実施形態では、ハプトグロビンはNaCl約100mMから約200mMを含む溶出緩衝液で陰イオン交換樹脂から溶出する。これは、伝導率範囲約10mS/cm(NaCl 100mM)から約18mS/cm(NaCl 200mM)の溶出緩衝液と同等と見なされる。特定の実施形態では、ハプトグロビンは、NaCl約150mMから約170mMの存在下で溶出する。好ましい実施形態では、ハプトグロビンは、NaCl約160mMの存在下で溶出する。しかし、当業者であれば、溶出緩衝液のNaCl濃度はカラムに加えたタンパク質添加に左右され、樹脂から溶出したハプトグロビンの必要な回収率および純度を実現するためには、記載した限界を超える調節が必要とされ得ることを知っている。
【0045】
一実施形態では、溶出したハプトグロビンを回収し、将来使用するために別々に保存する。別の実施形態では、溶出したハプトグロビンは、必要ならば、例えば、溶出したハプトグロビンの限外濾過膜による濃縮およびダイアフィルトレーション、ならびに/または濃縮および/もしくはダイアフィルトレーションしたハプトグロビンの滅菌濾過によって、さらに精製する。
【0046】
一実施形態では、本発明はさらに:
(i)ヘモペキシンを疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂に結合させる条件下で、ヘモペキシンを含有する溶液を該樹脂に通過させること;
(ii)工程(i)からの流出画分を収集すること;
(iii)工程(ii)の後で場合により該樹脂を洗浄し、流出洗浄画分を収集すること;
(iv)工程(ii)の後、および/または工程(iii)の後で該樹脂からヘモペキシンを溶出すること;および
(v)溶出したヘモペキシンを回収することを含む。
【0047】
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、定常相と分離するタンパク質との間の疎水性相互作用に基づいて、タンパク質を分離するためにしばしば使用されるクロマトグラフィー技術である。標的タンパク質の疎水性のレベルによって、使用するHIC樹脂の種類が決まることが多い。HICの間、典型的に大量の塩を溶液に添加して、標的タンパク質の溶解性を低下させ、したがって標的タンパク質と適切な疎水性基(例えば、フェニル、ブチルおよびオクタデシル基)で機能化したHIC樹脂との間の相互作用を増加させる。適切な塩には典型的に、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウムおよびチオシアン酸ナトリウムが含まれ
る。適切な疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂は、当業者にはよく知られている。例には、オクチルセファロースおよびカプトオクチルクロマトグラフィー樹脂が含まれる。ヘモペキシンを樹脂に結合させる条件は、当業者には公知で、例えば、使用する樹脂の種類および標的タンパク質(すなわち、ヘモペキシン)の疎水性によって決まる。
【0048】
ヘモペキシン添加溶液は、硫酸アンモニウムを含有し、したがってカラムの平衡化に適切な緩衝液には、pHを約6から約8に維持し、硫酸アンモニウム約2から2.5Mを含有する約5mMから約100mMの濃度の緩衝剤が含まれる。これらの条件によって、ヘモペキシンを疎水性相互作用クロマトグラフィー媒体に結合させる。別の実施形態では、硫酸アンモニウム濃度2.2から2.5M、pH7.0から8.0を利用する。特定の実施形態では、緩衝溶液は硫酸アンモニウム2.5Mを含有し、pH7.4のトリス50mMである。
【0049】
ヘモペキシン添加溶液は典型的に、pH約6から約8に緩衝された硫酸アンモニウム約2.0から約2.5Mを含有する。これらの条件によって、ヘモペキシンを疎水性相互作用媒体に結合させる。別の実施形態では、ヘモペキシン添加溶液は、pH7.0から8.0に緩衝された硫酸アンモニウム2.2Mから2.5Mを含有した。特定の実施形態では、ヘモペキシン添加溶液は、緩衝剤としてトリス50mM、および硫酸アンモニウム2.5Mを含有し、pH7.4である。
【0050】
ヘモペキシンを含有する溶液が一旦疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)樹脂を通過したら、本明細書で開示したように、流出画分を収集し、将来使用するために保存することができる。
【0051】
結合したヘモペキシンは、当業者に公知の手段によって樹脂から溶出することができる。樹脂からヘモペキシンを溶出する前に、樹脂を適切な洗浄液または緩衝液で、樹脂に結合したヘモペキシンを保持する条件下で場合により洗浄することができる。適切な洗浄液および条件は、当業者には公知である。洗浄液濃度は、ある程度カラム添加に左右されるが、典型的な洗浄液は、pH約6から約8で緩衝効果を有し、さらに硫酸アンモニウム約0.8Mから1.5Mを含有する。別の実施形態では、洗浄液は、pH7.0から8.0で硫酸アンモニウム0.9Mから1.3Mを含有する。特定の実施形態では、洗浄液は、緩衝剤としてトリス50mM、および硫酸アンモニウム1.13Mを含有し、pH7.4である。必要ならば、流出洗浄画分も収集し、将来使用するために保存することができる。
【0052】
樹脂から回収した溶出ヘモペキシンは、将来使用するために保存することができる。溶出したヘモペキシンはまた、溶出液中のいかなる不純物も除去するために、さらに精製を行ってもよい。したがって、一実施形態では、方法にはさらに:
(i)ヘモペキシンを金属イオン親和性クロマトグラフィー樹脂に結合させる条件下で、溶出ヘモペキシンを該樹脂に通過させること;
(ii)該樹脂からヘモペキシンを溶出すること;および
(iii)溶出したヘモペキシンを回収することが含まれる。
【0053】
固定された金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)は、アミノ酸(例えば、ヒスチジン)の金属への共有結合に基づいており、金属イオンに親和性を有するタンパク質を亜鉛、コバルト、ニッケルまたは銅などの固定された金属イオンを含有するカラムに保持させる。適切な金属イオン親和性クロマトグラフィー樹脂は、当業者には公知である。一実施形態では、金属イオン親和性クロマトグラフィー樹脂はNi−セファロースである。
【0054】
平衡化および結合のために適切な緩衝液は、クロマトグラフィー媒体への非特異的結合を防御するように設計し、混入タンパク質の結合を最小限に抑えながらヘモペキシンへの親和性を促進するために最適化する。平衡化および結合のために使用した緩衝液は全般的に、約6から約9のpH範囲内であり、少量(すなわち、1から50mM)のヒスチジンまたはイミダゾールの添加と共に塩化ナトリウム約0.5Mから約1.0Mの添加を含む。ある種の実施形態では、緩衝液は、リン酸ナトリウム0.5mMから100mM、pH約7から約8、塩化ナトリウム約0.5Mから約1.0Mおよびイミダゾール約1mMから約50mMからなる。特定の実施形態では、平衡化および結合緩衝液は、リン酸ナトリウム20mM、NaCl0.5Mおよびイミダゾール30mM、pH7.4からなる。添加溶液(オクチル溶出液)は、所望する固形賦形剤を添加するか、または濃縮した溶液を添加することによって、これらの濃度に調節することができる。
【0055】
一旦、ヘモペキシンが金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)樹脂に結合したら、樹脂に結合したヘモペキシンを保持する条件下で、残存する未結合のまたは弱く結合した不純物を除去するために樹脂を洗浄することができる。洗浄工程に適切な緩衝液は、6.0から9.0のpH範囲内であり、少量(すなわち、1から50mM)のヒスチジンまたはイミダゾールの添加と共に塩化ナトリウム0.5Mから1.0Mの添加を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、リン酸ナトリウム約0.5mMから約100mM、pH約7からpH約8、塩化ナトリウム約0.5Mから約1.0Mおよびイミダゾール約1mMから約80mMからなる。特定の実施形態では、洗浄緩衝液は、リン酸ナトリウム20mM、NaCl0.5Mおよびイミダゾール30mM、pH7.4からなる。
【0056】
結合したヘモペキシンは、当業者に公知の手段によって樹脂から溶出することができる。溶出に適切な緩衝液は、約6から約9のpH範囲内であり、溶出を容易にするために十分高い濃度のヒスチジンまたはイミダゾールと共に塩化ナトリウム約0.5Mから約1.0Mの添加を含む。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液は、リン酸ナトリウム約0.5mMから約100mM、pH約7.0から約pH8.0、塩化ナトリウム約0.5Mから約1.0Mおよびイミダゾール約80mM未満からなる。特定の実施形態では、溶出緩衝液は、リン酸ナトリウム20mM、NaCl0.5Mおよびイミダゾール100mM、pH7.4からなる。あるいは、結合したヘモペキシンは、pH約4.0からpH約6.0の間の低pH緩衝液を加えることによって溶出することができる。いくつかの実施形態では、溶出緩衝液として、NaCl約0.5Mから約1.0Mを含み、pHが約4.0から約pH6.0の間の約5mMから約100mMの酢酸ナトリウム緩衝液を利用する。溶出したヘモペキシンは、必要ならば、例えば、限外濾過膜によるヘモペキシンの濃縮およびダイアフィルトレーションならびに/または濃縮および/またはダイアフィルトレーションしたヘモペキシンの滅菌濾過によって、さらに精製することができる。
【0057】
本発明者らはまた、開始材料中に存在することがあるトランスフェリンが、硫酸アンモニウムの存在下でのハプトグロビンの沈殿後に、溶液中(すなわち、ヘモペキシンを含む溶液中)に残存することを見いだした。したがって、本明細書で開示した本発明の方法はまた、同じ開始材料からトランスフェリンを精製するために使用することができる。したがって、3種類のタンパク質(Hp、Hxおよびトランスフェリン)全てを同じ開始材料から精製するために最適な条件を提供する。したがって、一実施形態では、ハプトグロビンおよびヘモペキシンの両方(例えば、開始材料)を含有する溶液はさらに、トランスフェリンを含む。
【0058】
一実施形態では、本発明はさらに:
(a)ヘモペキシンを疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂に結合させる条件下で、ヘモペキシンを含有する溶液を該樹脂に通過させること;
(b)工程(a)からの流出画分を収集すること;
(c)工程(b)の後で場合により樹脂を洗浄し、流出洗浄画分を収集すること;
(d)トランスフェリンが陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に結合するような条件下で、工程(b)からの流出画分および/または工程(c)からの流出洗浄画分を該樹脂に通過させること;ならびに
(e)該樹脂からトランスフェリンを回収することを含む。
【0059】
特定の実施形態では、工程(ii)の陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂である。その他の特定の実施形態では、工程(ii)の陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、弱陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂である。
【0060】
適切な強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、当業者には公知である。適切な陰イオン交換樹脂の例は、機能的4級アミン基(Q)および/またはジエチルアミノプロピル基(ANX)を含む樹脂である。一実施形態では、強陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂には、4級アミン官能基(例えば、Capto Q ImpRes(商標))が含まれる。
【0061】
適切な弱陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、当業者には公知である。例には、DEAE(ジエチルアミノエチル)などの3級または2級アミン官能基を含む樹脂が含まれる。
【0062】
当業者であればまた、HIC洗浄画分のイオン強度によって;トランスフェリンを陰イオン交換樹脂に結合させるために、希釈、ダイアフィルトレーション、クロマトグラフィーによる脱塩、または緩衝液交換/イオン強度低下のその他の方法が必要であることを決定する。クロマトグラフィーによる脱塩のこのような1方法には、硫酸アンモニウム約0.8Mから約1.5Mを含有するHIC洗浄画分(トランスフェリン)を、フェニルまたはブチルカラムなどのより強い疎水性リガンドに直接結合させることが含まれる。一旦結合したら、トランスフェリンは、WFIまたは陰イオン交換クロマトグラフィー用に調製した低イオン強度緩衝液で溶出することができる。
【0063】
陰イオン交換クロマトグラフィー平衡化および結合に適切な緩衝液は、トランスフェリンを陰イオン交換媒体に結合させて、クロマトグラフィーによるトランスフェリンのその他の不純物からの分離を促進する。クロマトグラフィー媒体の平衡化に適切な緩衝液の濃度は約5mMから約100mM、pH範囲は約6から約9、伝導率は約9.0mS/cm未満である。これらの条件は、トランスフェリンを陰イオン交換媒体に結合させる。特定の実施形態では、緩衝剤は約10mMから約60mMの範囲で、pH範囲は約6から約9、伝導率は約7.0mS/cm未満である。適切な緩衝剤の例には、トリスおよびリン酸ナトリウムが含まれる。特定の実施形態では、pH範囲が約7から約9の範囲、伝導率約6.0mS/cm未満のトリス50mMを利用する。その他の実施形態では、7.0から9.0のpH、伝導率約5.0mS/cm未満の約10mMから約40mMトリス緩衝液を利用する。
【0064】
樹脂からトランスフェリンを溶出するために適切な緩衝液はまた、当業者には公知である。特定の実施形態では、適切な緩衝剤の濃度は、約5mMから約100mMの範囲である。特定の実施形態では、緩衝剤は、約10mMから約60mMの範囲である。適切な緩衝剤の例には、トリスまたはリン酸ナトリウムが含まれる。特定の実施形態では、約7から約9の範囲のpHのトリス50mMを利用する。その他の実施形態では、約7から約9のpHの酢酸ナトリウム約10から約40mMを利用する。当業者であれば、溶出緩衝液NaCl濃度はクロマトグラフィー樹脂に加えるタンパク質添加の範囲に左右されることはわかる。溶出方法は、緩衝液のNaCl濃度がトランスフェリンを溶出するためにステ
ップワイズ型で増加する段階勾配、または緩衝液のNaClが直線状にゆっくり増加する直線勾配の使用によることからなり、トランスフェリンの収集を確認するためにカラム溶出液をモニターする。
【0065】
一旦トランスフェリンを陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂から回収すると、必要ならば、例えば、限外濾過膜によるトランスフェリンの濃縮およびダイアフィルトレーションならびに/または濃縮および/またはダイアフィルトレーションしたトランスフェリンの滅菌濾過によって、さらに精製することができる。
【0066】
ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを含む溶液を、臨床または獣医学的適用のため(例えば、溶血に関連した症状を有する対象に投与するため)に使用する場合、当業者であれば、溶液中の活性のあるウイルス含量(ウイルス力価)およびその他の可能性のある感染因子(例えば、プリオン)のレベルを低下させることが所望され得ることを理解する。これは特に、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを含む原料(すなわち、開始材料)が血漿から得られる場合、所望され得る。溶液中のウイルス力価を低下させる方法は当業者には公知である。例には、低温殺菌(例えば、グリシン(例えば、2.75M)およびスクロース(例えば、50%)などの高濃度の安定化剤および/またはその他の選択された賦形剤または塩の存在下で溶液を60℃で10時間インキュベートする)、乾熱処理、ウイルス濾過(溶液をナノフィルター;例えば、20nmカットオフに通過させる)および/または溶液を適切な有機溶媒および界面活性剤で、溶液中のウイルスを不活性化する期間および条件下で処理することが含まれる。溶媒界面活性剤は、特に血漿由来生成物中のエンベロープウイルスを不活性化するために、20年に亘って使用されてきた。したがって、当業界で公知の様々な試薬および方法を使用して実施することができる(例えば、本明細書に参照によって組み入れた米国特許第4540573号および米国特許第4764369号を参照のこと)。適切な溶媒には、トリ−n−ブチルホスフェート(TnBP)およびエーテル、特にTnBP(典型的に約0.3%)が含まれる。適切な界面活性剤には、ポリソルベート(Tween)80、ポリソルベート(Tween)20およびトリトンX−100(典型的に約0.3%)が含まれる。溶媒および界面活性剤濃度を含む処理条件の選択は、一部には原料の特性に左右され、純度が低い原料は一般的に高濃度の試薬およびより極端な反応条件を必要とする。好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80で、特に好ましい組み合わせはポリソルベート80およびTnBPである。原料は、存在する可能性があるいかなるエンベロープウイルスも不活性化するのに十分な温度および時間で、溶媒および界面活性剤試薬と撹拌することができる。例えば、溶媒界面活性剤処理は、25℃で約4時間実施することができる。溶媒界面活性剤化学物質はその後、例えば、C−18疎水性樹脂などのクロマトグラフィー媒体への吸着か、または関心のあるタンパク質を吸着する条件下でのイオン交換樹脂のドロップスルー(drop−through)画分への溶出によって除去する。
【0067】
ウイルス不活性工程は、本明細書で開示した方法の任意の適切な段階で実施することができる。一実施形態では、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを含む原料に、最初に記載した態様の工程(ii)の前にウイルス不活性化工程を行う。別の実施形態では、硫酸アンモニウム沈殿工程(すなわち、工程(ii)および/または(iii))から回収したハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを含む溶液にウイルス不活性化工程を行う。その他の実施形態では、ウイルス不活性化工程は、工程iii)の後で実施する。
【0068】
本明細書で開示した一実施形態では、ウイルス不活性化工程には、低温殺菌および/または有機溶媒および界面活性剤による処理が含まれる。一実施形態では、本発明の方法はさらに、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンの
いずれかを含む溶液を55℃から61℃で約30分から約12時間加熱することを含む。特定の実施形態では、溶液は、約10から約10.5時間加熱する。本明細書で開示した別の一実施形態では、ウイルス不活性化工程は、ウイルス濾過を含む。特定の実施形態では、本発明の方法はさらに、ヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを含む溶液を孔径15nmから35nmの範囲のウイルスフィルターに通すことを含む。ウイルス濾過を使用する場合、本発明者らは、濾過工程前に遊離アミノ酸(例えば、アルギニン)を添加すると、フィルターからのハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンの流動速度および回収を顕著に改善することができることを見いだした。このような方法の一例は、米国特許第7919592号に記載されている。
【0069】
本明細書で開示した一実施形態では、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを含む原料または溶液に、クロマトグラフィー樹脂に通過させる前にウイルス不活性化工程を行う。処理した溶液または原料を陰イオン交換樹脂などのクロマトグラフィー樹脂に通過させる前に溶媒界面活性剤処理などのウイルス不活性化工程を使用する利点は、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンの樹脂への結合ならびに流出(ドロップスルー)画分による有機溶媒および界面活性剤の除去を促進する条件を利用することによって、有機溶媒および界面活性剤を処理した溶液から除去することを可能にすることである。
【0070】
低温殺菌は、タンパク質凝集および重合体を生成し得る。したがって、場合によっては、低温殺菌した溶液中の凝集/重合体のレベルを低下させることが所望され得る。これは、当業者に公知の任意の手段によって実現することができるが、さらなるクロマトグラフィー精製によって便利に実現することができる。本明細書で開示した一実施形態では、低温殺菌した溶液または原料は、いかなる凝集または重合体も流出(ドロップスルー)画分で除去されるように、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンに関してはポジティブモードで陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂に通過させる。
【0071】
特定の実施形態では、明らかに記載されていない限り、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを精製する方法は一般的に、約18℃から約26℃の温度範囲で実施する。
【0072】
本発明の別の態様では、本明細書で開示した方法によって回収したハプトグロビンを含む組成物を提供する。一態様では、組成物のハプトグロビン含量は、全タンパク質の少なくとも80%である。別の態様では、組成物のハプトグロビン含量は、全タンパク質の少なくとも90%である。別の態様では、組成物のハプトグロビン含量は、少なくとも95%である。さらに別の態様では、組成物のハプトグロビン含量は、少なくとも98%である。特定の実施形態では、ハプトグロビンを含む組成物は、免疫比濁法によって測定すると、ハプトグロビン1mg当たりIgA0.03mg未満を含む。特定の実施形態では、ハプトグロビンを含む組成物は、ハプトグロビン濃度が26mg/mLのとき、IgG 0.067mg/mL未満、IgM 0.042mg/mL未満、アルファ−1−酸糖タンパク質0.050mg/mL未満、プレアルブミン0.018mg/mL未満、セルロプラスミン0.021mg/mL未満、ヘモペキシン0.051mg/mL未満、アポリポタンパク質A−I 0.053mg/mL未満、アポリポタンパク質B 0.227mg/mL未満、アンチトロンビンIII 0.031mg/mL未満、トランスフェリン0.1mg/mL未満、アルファ−1−アンチトリプシン0.07mg/mL未満、アルファ−2−マクログロブリン0.1mg/mL未満、IgA 0.7mg/mL未満およびアルブミン0.15mg/mL未満(免疫比濁法によって測定)を含有する。
【0073】
本発明の別の態様では、本明細書で開示された方法によって回収したヘモペキシンを含
む組成物を提供する。一実施形態では、組成物のヘモペキシン含量は、全タンパク質の少なくとも80%である。別の実施形態では、組成物のヘモペキシン含量は、全タンパク質の少なくとも90%である。別の態様では、組成物のヘモペキシン含量は、少なくとも95%である。別の実施形態では、組成物のヘモペキシン含量は、少なくとも97%である。さらに別の実施形態では、組成物のヘモペキシン含量は、少なくとも98%である。
【0074】
特定の実施形態では、ヘモペキシンを含む組成物は、少なくとも98%純粋で、IgG
0.067mg/mL未満、IgA 0.066mg/mL未満、IgM 0.042mg/mL未満、アルファ−1−アンチトリプシン0.048mg/mL未満、トランスフェリン0.090mg/mL未満、アルファ−1−酸糖タンパク質0.050mg/mL未満、プレアルブミン0.018mg/mL未満、セルロプラスミン0.021mg/mL未満、アポリポタンパク質A−I 0.053mg/mL未満、アポリポタンパク質B 0.227mg/mL未満、アンチトロンビンIII 0.031mg/mL未満、ハプトグロビン0.17mg/mL未満およびアルブミン0.045mg/mL未満(免疫比濁法によって測定)を含む。
【0075】
特定の実施形態では、ヘモペキシンを含む組成物は少なくとも97%純粋で、免疫比濁法によって測定すると、ハプトグロビン1.7%未満、トランスフェリン0.4%未満、アルブミン0.2%未満およびアルファ−2 マクログロブリン0.1%未満を含有する。
【0076】
本発明の別の態様では、本明細書で開示した方法によって回収したトランスフェリンを含む組成物を提供する。一実施形態では、組成物のトランスフェリン含量は、全タンパク質の少なくとも80%である。別の実施形態では、組成物のトランスフェリン含量は、全タンパク質の少なくとも90%である。別の実施形態では、組成物のトランスフェリン含量は、少なくとも95%である。さらに別の実施形態では、組成物のトランスフェリン含量は、少なくとも98%である。
【0077】
本発明の別の態様では、本明細書で開示した方法によって回収したハプトグロビンおよび本明細書で開示した方法によって回収したヘモペキシンを含む組成物を提供する。一実施形態では、組成物のハプトグロビンおよびヘモペキシンを一緒にした含量は、全タンパク質の少なくとも80%である。別の実施形態では、組成物のハプトグロビンおよびヘモペキシンを一緒にした含量は、全タンパク質の少なくとも90%である。別の実施形態では、組成物のハプトグロビンおよびヘモペキシンを一緒にした含量は、全タンパク質の少なくとも95%である。さらに別の実施形態では、組成物のハプトグロビンおよびヘモペキシンを一緒にした含量は、全タンパク質の少なくとも98%である。
【0078】
一実施形態では、組成物はさらに、本明細書で開示した方法によって回収したトランスフェリンを含む。一実施形態では、組成物のハプトグロビン、ヘモペキシンおよびトランスフェリンを一緒にした含量は、全タンパク質の少なくとも80%である。別の実施形態では、組成物のハプトグロビン、ヘモペキシンおよびトランスフェリンを一緒にした含量は、全タンパク質の少なくとも90%である。別の実施形態では、組成物のハプトグロビン、ヘモペキシンおよびトランスフェリンを一緒にした含量は、全タンパク質の少なくとも95%である。さらに別の実施形態では、組成物のハプトグロビン、ヘモペキシンおよびトランスフェリンを一緒にした含量は、全タンパク質の少なくとも98%である。
【0079】
本発明の別の態様では、ハプトグロビン含量が全タンパク質の少なくとも80%、90%、95%または98%である組成物を提供する。本発明の別の態様では、ヘモペキシン含量が全タンパク質の少なくとも80%、90%、95%または98%である組成物を提供する。本発明の別の態様では、ヘモペキシンおよびハプトグロビンを一緒にした含量が
全タンパク質の少なくとも80%、90%、95%または98%である組成物を提供する。本発明のさらに別の態様では、ヘモペキシン、ハプトグロビンおよびトランスフェリンを一緒にした含量が全タンパク質の少なくとも80%、90%、95%または98%である組成物を提供する。
【0080】
本明細書で開示した本発明の方法によって回収したハプトグロビン、ヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを含む組成物は、通常関連するその他の成分(例えば、その他の血漿由来タンパク質)を実質的に含まない。したがって、一実施形態では、ハプトグロビン、ヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを含む組成物は、通常関連するその他の成分(すなわち、不純物)を全タンパク質の20%未満、好ましくは全タンパク質の10%未満、より好ましくは全タンパク質の5%未満含む。当業者であれば、本発明の組成物中に存在する不純物のレベルは、組成物の企図される使用に左右され得ることを理解する。例えば、組成物をそれらを必要とするヒト対象に投与する場合(すなわち、臨床使用では)、組成物に含まれる不純物は(全タンパク質の)5%未満であることが所望される。反対に、タンパク質をインビトロで使用する場合、組成物が(全タンパク質の)5%を上回る不純物を含んでいても許容され得る。
【0081】
本発明の別の態様では、本明細書で開示したように、本発明の組成物および薬学的に許容される担体を含む製剤を提供する。
【0082】
適切な薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤は、当業者には公知である。例には、溶媒、分散媒、抗真菌剤および抗菌剤、表面活性剤、等張剤および吸収剤などが含まれる。
【0083】
医薬製剤はまた、適切な安定化剤、例えば、アミノ酸、炭水化物、塩および界面活性剤を添加(または組み合わせ)することによって製剤化することができる。特定の実施形態では、安定化剤には、糖アルコールおよびアミノ酸の混合物が含まれる。安定化剤は、糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)およびアミノ酸(例えば、プロリン、グリシンおよびアルギニン)の混合物を含むことができる。好ましい実施形態では、製剤は、アルギニンなどのアミノ酸を含む。その他の実施形態では、製剤は、最高100mMの濃度の2価金属イオンおよび米国特許第7045601号に記載されたような複合体形成剤を含む。実施形態では、pHは、好ましくは約6.5から7.5であり、浸透圧は少なくとも240mosmol/kgである。
【0084】
医薬製剤はまた、分注および長期貯蔵前に濾過によって滅菌してもよい。好ましくは、製剤は、少なくとも2、4、6、8、10、12、18、24、36ヵ月またはそれ以上の月数、元々の安定特性を実質的に保持する。例えば、2−8℃または25℃で保存した製剤は典型的に、6ヵ月以上保存しても、HPLC−SECによって測定すると、実質的に同じ分子サイズ分布を保持することができる。医薬製剤の特定の実施形態は、2〜8℃および/または室温で保存したとき、少なくとも6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月、36ヵ月またはそれ以上であっても、商用の薬学的使用のために安定であり、適切であることができる。
【0085】
本明細書で記載した組成物は、注射製剤などの多くの可能な剤形のいずれかに製剤化することができる。製剤およびその後の投与(投薬)は、当業者の範囲内である。投薬は、治療する対象の応答性に左右されるが、所望する効果(例えば、遊離Hb/ヘムレベルの低下)が望まれる限り一定して継続する。当業者は、最適な投薬量、投与方法および反復数を容易に決定することができる。
【0086】
本明細書で開示した一実施形態では、本発明の医薬製剤は、容量が少なくとも5mLで、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを少なくとも5mg/mL含む溶液である。別の実施形態では、医薬製剤は、容量が少なくとも5mLで、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを少なくとも20mg/mL含む。特定の実施形態では、医薬製剤は、容量が少なくとも5mLで、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを約20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、150mg/mLまたは200mg/mLの濃度で含む。別の態様では、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンの濃度が少なくとも20mg/mLである、安定した薬学的に許容されるハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリン溶液の少なくとも5mLを含有する容器を提供する。
【0087】
本発明の別の実施形態では、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンをふくむ医薬製剤を凍結乾燥する。糖(例えば、スクロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール)およびアミノ酸(例えば、グリシンもしくはプロリン)またはそれらの組み合わせのような凍結乾燥安定化剤が存在するため、凍結乾燥によって長期保存期間を有する安定した粉末が得られる。医薬製剤を形成するために、この粉末を保存し、直接もしくは保存後粉末として使用するか、または再水和してから使用することができる。本発明の凍結乾燥した医薬製剤は、限定はしないが、凍結乾燥を含む、当業界で公知の任意の凍結乾燥方法を使用して、すなわち、ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリンを含有する製剤を凍結後、減圧エバポレーションして、形成することができる。提供された凍結乾燥製剤は、少なくとも2、4、6、8、10、12、18、24、36ヵ月またはそれ以上の月数、元々の安定特性を実質的に保持することができる。例えば、2〜8℃または25℃で保存した凍結乾燥製剤は典型的に、6ヵ月以上保存しても、HPLC−SECによって測定すると、実質的に同じ分子サイズ分布を保持することができる。ハプトグロビンおよび/またはヘモペキシンおよび/またはトランスフェリン医薬製剤の特定の実施形態は、2〜8℃および/または室温で保存したとき、少なくとも6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月、36ヵ月またはそれ以上であっても、商用の薬学的使用のために安定であり、適切であることができる。特定の実施形態では、凍結乾燥した医薬製剤はヘモペキシンを含む。本発明は、凍結乾燥した医薬製剤を大規模生産するために使用することができる。凍結乾燥製品は、大量調製のために製造することができ、あるいは、凍結乾燥前に、小さな容器(例えば、単回用量単位)に配分してもよく、このような小さな単位は、滅菌単位投与形態として使用することができる。凍結乾燥した製剤は、タンパク質の溶液または懸濁液を得るために、再構成することができる。凍結乾燥した粉末は、水性溶液で適切な容量に再水和する。好ましい水性溶液は、注射用水(WFI)、リン酸緩衝生理食塩水または生理学的食塩水である。混合物を撹拌して、再水和を促進する。好ましくは、再構成工程は、室温で実施する。
【0088】
本発明の別の態様では、溶血に関連した症状を治療する方法であって、本明細書で開示したように、本発明の組成物または製剤をそれらを必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。
【0089】
本明細書で使用した「対象」という用語は、霊長類(低級または高級霊長類)を含む動物を意味する。高級霊長類には、ヒトが含まれる。本発明は、ヒトにおける症状の標的化に特に適用されるが、非ヒト動物も本明細書で開示した組成物および方法から利益を得ることができることを当業者であれば理解する。したがって、本発明はヒトおよび動物の両方に適用されることは当業者であればわかる。便宜上、「動物」には、ウシ、ウマ、ヒツ
ジ、ブタ、ラクダ、ヤギ、ロバ、イヌおよびネコなどの家畜および伴侶動物が含まれる。ウマに関しては、これらには、レース業界で使用されるウマならびに娯楽または畜産業のために使用されるウマが含まれる。
【0090】
本発明の組成物または製剤は、いくつかの方法で対象に投与することができる。適切な投与経路の例には、静脈内、皮下、動脈内または注入が含まれる。一実施形態では、分子は静脈内投与される。
【0091】
必要ならば、本発明の方法はさらに、第2の治療薬の投与を含んでもよい。第2の治療用化合物は、対象に連続的に(本明細書で開示した組成物または製剤の投与の前後)または同時に一緒に投与することができる。一実施形態では、第2の治療薬は、鉄キレート剤(例えば、デスフェリオキサミンまたはデフェリプロン)である。
【0092】
本発明の別の態様では、溶血に関連した症状を治療するための医薬品の製造における、本明細書で開示したような本発明の組成物または製剤の使用を提供する。このような組成物または製剤は、好ましくはヒト患者で使用するために適切である。
【0093】
溶血に関連し、ヘモグロビン/ヘムによって媒介される毒性の危険性がある症状は、当業界では公知である。一実施形態では、症状は、急性溶血性疾患および/または慢性溶血性疾患から選択される。一実施形態では、症状は、溶血性貧血、輸血誘発溶血、溶血性尿毒症症候群、自己免疫疾患、マラリア感染、外傷、輸血、心肺バイパスを使用した直視下心臓手術および熱傷からなる群から選択され、熱傷後の溶血に関連したヘモグロビン血症またはヘモグロビン尿の治療が含まれる。一実施形態では、症状は、鎌状赤血球貧血、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、サラセミア、先天性赤血球異形成貧血および発作性夜間ヘモグロビン尿、全身性エリテマトーデスおよび慢性リンパ性白血病からなる群から選択される。
【0094】
当業者であれば、本明細書で記載した本発明は、特に記載したもの以外の変更および改変を受け入れることができることがわかる。本発明には、精神および範囲内に入るこのような変更および改変が全て含まれることを理解されたい。本発明はまた、本明細書で述べるかまたは示した工程、特徴、組成物および化合物全てを、個別にまたは集合的に含み、前記工程または特徴の任意の2種以上のありとあらゆる組み合わせも含む。
【0095】
本発明のある特定の実施形態について、ここで以下の実施例を参照して記載するが、実施例は単に例示することを目的とするものであって、前述した概説の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0096】
〔実施例1〕
開始材料:ハプトグロビン、ヘモペキシンおよびトランスフェリンの精製のための開始材料として、コーン画分IV沈殿物を使用した。(図1参照)。
【0097】
沈殿物の抽出:沈殿物の抽出は、画分IV沈殿物1グラム当たり抽出緩衝液20グラムを導入することによって実施した(20×抽出比)。緩衝液および沈殿物を最低1時間混合した。抽出緩衝液は、濃HClでpH7.0に調節したトリス50mMから構成された。抽出緩衝液は、20〜25℃の温度で調製した。沈殿物抽出も20〜25℃の温度で実施した。抽出中のpHは、1時間の抽出時間中7.0から8.0の間(好ましくは7.0)に維持した。
【0098】
硫酸アンモニウム沈殿:最終濃度2.0から2.5M(好ましくは2.4M)を実現す
るために、固形の硫酸アンモニウムを画分IV抽出物に添加した。撹拌しながら、硫酸アンモニウムをゆっくり抽出物に添加し、最低限1時間継続的に混合した。硫酸アンモニウム沈殿は、20〜25℃の温度で実施した。
【0099】
ヘモペキシンおよびトランスフェリンの可溶性を維持しながら脂質を沈殿させ、画分IV抽出物を清澄化するために、硫酸アンモニウム濃度2.5Mを利用した。同時に、この硫酸アンモニウム濃度は、画分IV抽出物中に存在するハプトグロビンの大部分の沈殿を引き起こした(図2参照)。ヘモペキシンを可溶性に維持しながら、硫酸アンモニウム2.2Mから2.5Mでハプトグロビンが沈殿することは、同じ開始画分からのヘモペキシンおよびハプトグロビンの同時精製を可能にする。
【0100】
許容される硫酸アンモニウム濃度範囲をさらに狭めるために、pHおよび硫酸アンモニウム濃度の影響を検討する実験計画法(DOE)を実施した。図3は、DOEの望ましさのプロット(desirability plot)を示す。このプロットは、ほとんどのヘモペキシンを可溶性に維持しながら、ほとんどのハプトグロビンを沈殿させる最も望ましい条件を示す。望ましさのプロットは、pHを7〜8の間(好ましくは7.0)に、硫酸アンモニウム濃度を2.2Mと2.5Mの間(好ましくは2.4M)に維持することが、同じ開始材料から両タンパク質を分離するために最適であることを示している。さらに、トランスフェリンは、2.5Mを上回る濃度で可溶性を維持するので、これらの条件は、同じ開始材料から3種類のタンパク質全てを精製するために最適であった。
【0101】
濾過:硫酸アンモニウム処理抽出物を濾過用に調製するために、バッチで利用するための血漿同等物1リットル当たりC1000濾過助剤10グラムを添加した。濾過を遂行する前に、C1000濾過助剤を最低限15分間混合させた。ハプトグロビンの豊富な沈殿物の収集を可能にするために、濾過用にプレートフレームフィルタープレスを利用した。プレートフレームフィルタープレスは、3M(Cuno)70CA深層濾過フィルターシートの前面に175型フィルター紙のシートを組み合わせた。バッチに投入した血漿同等物3L毎に、沈殿収集物領域0.193mLが必要であった(3L血漿/4”Ertel
4Sフィルターフレーム)。硫酸アンモニウム処理した抽出物を次に、ダブルダイアグラム加圧エア作動型ポンプを使用して、フィルタープレスに送り込んだ。
【0102】
C1000混合時間完了後、処理した抽出物をフィルタープレスに送り込み、フィルタープレスを1回通過させた後の濾液を収集した。次に、フィルタープレスを、1から2プレス量のpH7.0に調節した硫酸アンモニウム2.4M、トリス50mMで後洗浄した。濾過行程は、20〜25℃の温度で実施した。得られた濾液はヘモペキシンを含有し、さらに精製を実施するまで、2〜8℃で保存することができる。得られた沈殿物はハプトグロビンを含有し、さらに精製を実施するまで、−20℃以下で保存することができる。
【0103】
濾過画分からのヘモペキシン(Hx)の精製:
Hx処理計画を図9に表示する。
【0104】
(a)オクチルセファロースクロマトグラフィー(HIC):画分IV沈殿物の抽出および硫酸アンモニウム処理から得られた濾液はさらに、0.22μmフィルターを使用して清澄化した。次に、3カラム体積の硫酸アンモニウム2.5M、Tris50mM、pH7.4で平衡化したオクチルセファロースカラム(GE Lifesciences)に濾液を添加した。あるいは、カプトオクチルカラムを次工程のために使用することができる。8から12カラム体積(目標=10)の濾液をオクチルセファロースカラムに添加した。不純物およびいかなる未結合タンパク質も、3カラム体積の硫酸アンモニウム0.9Mから1.2M(目標1.13M)、トリス50mM、pH7.4(洗浄用)によってカラムから洗浄した。洗浄画分はトランスフェリンを含有し、さらに精製するために保
存することができる。次に、ヘモペキシンを含有する画分(溶出液)を3カラム体積の水(WFI)でカラムから溶出させた。その後、さらなるトランスフェリン精製に使用するまで、溶出液は2〜8℃で保存した。オクチルセファロース(HIC)精製は、20〜25℃の温度で実施した。
【0105】
(b)Ni−セファロースクロマトグラフィー(IMAC):リン酸ナトリウム20mM、塩化ナトリウム500mMおよびイミダゾール30mMをオクチルセファロース溶出液に添加した。一旦添加したら、オクチルセファロース溶出液のpHを7.4に調節した。次に、3カラム体積のオクチルセファロース溶出液を、リン酸ナトリウム20mM、塩化ナトリウム500mM、場合によりイミダゾール30mMを含有し、pH7.4に調節した緩衝液で平衡化したNi−セファロース(GE Lifesciences)カラムに添加した。イミダゾールをオクチルセファロース溶出液(添加液)に添加することによって、ヘモペキシンに対する結合親和性を維持しながら、Ni−セファロースのアルブミンおよびその他の不純物に対する親和性を低下させる。したがって、添加工程の間に、不純物はカラムから流出し、一方、ヘモペキシンは樹脂に結合した。添加完了後、カラムを2カラム体積のリン酸ナトリウム20mM、塩化ナトリウム500mMおよびイミダゾール30mM、pH7.4で洗浄し、いかなる未結合不純部物も除去した。次に、ヘモペキシンをリン酸ナトリウム20mM、塩化ナトリウム500mMおよびイミダゾール100mM、pH7.4を使用してカラムから溶出した。Ni−セファロース溶出液中に存在するヘモペキシンは、SDS−PAGEによって95%を上回ることが推定された(図4参照)。Ni−セファロースクロマトグラフィー(IMAC)方法は、20〜25℃で実施し、得られた溶出液は使用するまで−20℃以下で保存した。
【0106】
(c)濃縮/ダイアフィルトレーション:Ni−セファロース溶出液を所望する濃度まで濃縮し(1〜20%w/v)、次に濃縮物体積当たりリン酸緩衝生理食塩水10体積でダイアフィルトレーションした。濃縮およびダイアフィルトレーションは、30kD限外濾過膜を使用して実施した。一旦ダイアフィルトレーションが完了し濃縮物が所望する濃度になったら、ヘモペキシンに場合により糖およびまたはアミノ酸を配合し、滅菌濾過して、−20℃以下で保存した。精製したヘモペキシンは、この形態で前臨床動物実験および細胞実験で使用することができる。
【0107】
方法から回収したヘモペキシンの最終収率は、約0.151g/L血漿と推定された。
【0108】
濃縮したヘモペキシン調製物(約2.3%w/v)の特徴は、免疫比濁法によって調べた。IgG(検出限界、LOD=<0.067mg/mL)、IgA(LOD=<0.066mg/mL)、IgM(LOD=<0.042mg/mL)、アルファ−1−アンチトリプシン(LOD=0.048mg/mL)、トランスフェリン(LOD=<0.090mg/mL)、アルファ−1−酸糖タンパク質(LOD=0.050mg/mL)、プレアルブミン(LOD=0.018mg/mL)、セルロプラスミン(LOD=0.021mg/mL)、アポリポタンパク質A−I(LOD=<0.053mg/mL)、アポリポタンパク質B(LOD=<0.227mg/mL)およびアンチトロンビンIII(LOD=0.031mg/mL)などの血漿タンパク質は検出レベルを下回った。ハプトグロビン(0.165mg/mL)およびアルブミン(0.038mg/mL)などのその他の血漿タンパク質はほんの微量検出された。これらの結果は、Hxが調製物中の全タンパク質の少なくとも99%を占めることを示唆する。
【0109】
ヘモペキシンの他のバッチは、前述した方法によって処理した。バッチは、35mg/mLタンパク質まで濃縮した。免疫比濁法によってバッチを分析すると、ヘモペキシンの純度は約98%で、ハプトグロビン1.6%、トランスフェリン0.3%、アルブミン0.2%およびアルファ−2 マクログロブリン0.1%を含む不純物が含まれることが示
された。
【0110】
硫酸アンモニウム2.5M沈殿物からのハプトグロビン(Hp)の精製
Hp処理計画を図10に表示する。
【0111】
(a)沈殿物の抽出および濾過:ハプトグロビンは、抽出緩衝液20グラム/グラム沈殿物(20×比)を導入することによって沈殿物から抽出した。抽出緩衝液はpH5.5に調節した酢酸ナトリウム50mMから構成された。緩衝液および沈殿物を最低1時間混合した。15分後、pHを5.4から5.6の範囲内に調節した。その後のクロマトグラフィー工程において低pHを利用する間、低pH抽出緩衝液を利用して、脂質の抽出を低下させた。残存する濾過助剤および不溶性タンパク質および脂質を除去するため、次に、抽出物をCuno 70CAフィルターまたは同等の深層フィルターに通過させた。その後、濾液は0.2μmフィルターを使用することによって清澄化した。得られた濾液は、その後のクロマトグラフィー工程のために準備した。抽出緩衝液調製、抽出方法および濾過方法は全て、20〜25℃で実施した。
【0112】
別の実施形態では、ハプトグロビンは、抽出緩衝液20グラム/グラム沈殿物(20×比)を導入することによって沈殿物から抽出した。抽出緩衝液はpH8.5に調節したトリス50mMから構成された。緩衝液および沈殿物を最低1時間混合した。15分後、pHを8.4から8.6の範囲内に調節した。脂質含量を低下させ、抽出した沈殿物の清澄化を助長するために、脂質吸着剤、エアロジル(フュームドシリカ)を血漿同等物1リットル当たり約1.6から約1.8グラムで添加した。次に、エアロジル処理した抽出物を最低限1時間混合した。残存する濾過助剤およびいかなる不溶性タンパク質および脂質も除去するために、抽出物をCuno 70CAフィルターまたはその他の類似の深層フィルターに通過させた。その後、濾液は0.2μmフィルターを使用することによって清澄化した。得られた濾液は、その後のクロマトグラフィー工程のために準備した。抽出緩衝液調製、抽出方法および濾過方法は全て、20〜25℃で実施した。
【0113】
(b)Capto Q ImpResクロマトグラフィー工程:酢酸ナトリウムを、前記工程から得られた濾液に最終濃度50mMまで添加して、氷酢酸を使用して濾液のpHをpH5.5に調節した。次に、pH調節した濾液を冷水(WFI)で1:4から1:5に希釈し、酢酸ナトリウム50mM、pH5.5で平衡化したGE Healthcare Capto Q ImpResクロマトグラフィーカラムに約2〜8℃の温度で添加した。添加は、低pH緩衝液として酢酸ナトリウムを必要とし、ハプトグロビンがカラムに結合するように添加物の伝導率を低下させるために水で希釈することが必要である。添加完了後、カラムを2カラム体積の酢酸ナトリウム50mM、pH5.5で洗浄し、いかなる未結合混入タンパク質も除去した。次に、ハプトグロビンを4カラム体積の酢酸ナトリウム50mM、NaCl100〜200mM(好ましくは162mM)、pH5.5で溶出した。溶出条件が利用した添加体積に一部左右されるので、溶出緩衝液のNaCl濃度は広範囲であることが必要である。溶出液は、濃縮/ダイアフィルトレーションまで、短期間の場合2〜8℃で、長期間の場合、−20℃以下で保存することができる。Capto Q ImpRes溶出液のハプトグロビン含量は、SDS−PAGEによって95%を上回ることが推定された(図5および6参照)。クロマトグラフィー緩衝液およびクロマトグラフィー工程は全て、20〜25℃で実施した。
【0114】
(c)濃縮/ダイアフィルトレーション:Capto Q ImpRes溶出液を特定の濃度まで濃縮し、次に濃縮物体積当たりリン酸緩衝生理食塩水10体積でダイアフィルトレーションした。濃縮およびダイアフィルトレーションは、30kD限外濾過膜を使用して実施した。一旦ダイアフィルトレーションが完了し濃縮物が所望する濃度になったら、精製したハプトグロビン溶液を滅菌濾過して、−20℃以下で保存した。
【0115】
場合により、脂質吸着工程は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程前後または濃縮/ダイアフィルトレーション工程後に実施することができる。適切な脂質吸着剤の一例は、エアロジルのようなフュームドシリカ(例えば、エアロジル380)である。
【0116】
方法から回収したハプトグロビンの最終収率は、約0.285g/L投入血漿と推定された。
【0117】
濃縮したハプトグロビン調製物(約2.6%w/v)の特徴は、免疫比濁法によって調べた。IgG(検出限界、LOD=<0.067mg/mL)、IgM(LOD=<0.042mg/mL)、アルファ−1−酸糖タンパク質(LOD=<0.050mg/mL)、プレアルブミン(LOD=<0.018mg/mL)、セルロプラスミン(LOD=<0.021mg/mL)、ヘモペキシン(LOD=<0.051mg/mL)、アポリポタンパク質A−I(LOD=<0.053mg/mL)、アポリポタンパク質B(LOD=<0.227mg/mL)およびアンチトロンビンIII(LOD=<0.031mg/mL)などの血漿タンパク質は検出レベルを下回り、トランスフェリン(0.099mg/mL)、アルファ−1−アンチトリプシン(0.062mg/mL)、アルファ−2−マクログロブリン(0.086mg/mL)、IgA(0.65mg/mL)およびアルブミン(0.123mg/mL)などのその他の血漿タンパク質はほんの微量検出された。これらの結果は、Hpが調製物中の全タンパク質の少なくとも96%を占めることを示す。
【0118】
オクチル1.13M硫酸アンモニウム洗浄画分からのトランスフェリンの精製:
オクチル洗浄画分にイオン交換クロマトグラフィーを実施する前に、硫酸アンモニウムをダイアフィルトレーションして、低イオン強度の緩衝液に交換した。このために、オクチル溶出液を濃縮し、溶出液体積当たり10体積のトリス50mM、pH7.0でダイアフィルトレーションした。濃縮およびダイアフィルトレーションは、30kD限外濾過膜を使用して実施した。
【0119】
次に、ダイアフィルトレーションした洗浄画分を、トリス50mM、pH7.0で平衡化したGE Healthcare Capto DEAEカラムに添加した。この画分から純粋なトランスフェリンを得ることが実行可能かどうかを決定するために、開始緩衝液としてトリス50mM、pH7.0および終了緩衝液としてトリス50mM、NaCl0.5M、pH7.0を使用して、10カラム体積の直線勾配を実施した(図8参照)。クロマトグラムの各ピークに対応する画分を収集した。SDS−PAGE分析は、ピークの1つが純粋なトランスフェリンを含有するかどうかを決定するために実施した。図7に示したように、ピークには大量に添加されているが、純粋なトランスフェリンのように見える。これは、オクチルセファロース洗浄画分からトランスフェリンを精製することが可能であることを示しており、同じ開始材料からヘモペキシン、ハプトグロビンおよびトランスフェリンを精製することが可能であることも意味している(図11も参照)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11