特許第6876662号(P6876662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6876662-木部材の接合構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876662
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】木部材の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20210517BHJP
   E04B 1/26 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   E04B1/58 503L
   E04B1/26 E
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-179365(P2018-179365)
(22)【出願日】2018年9月25日
(65)【公開番号】特開2020-51062(P2020-51062A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2019年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】517362853
【氏名又は名称】株式会社アークデータ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100153268
【弁理士】
【氏名又は名称】吉原 朋重
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 俊正
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−022499(JP,A)
【文献】 特開2016−191273(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0021625(US,A1)
【文献】 特開2006−016769(JP,A)
【文献】 特開2018−021443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合させる一の木部材と他の木部材と、
接合箇所において前記一の木部材と他の木部材との両方に挿通させて、接合状態を保たせるための棒状の接合体と、を備え、
前記接合体が、胴体周上に平行な2本の窪みを有し、前記一の木部材と他の木部材との接合面が前記2本の窪みの間となるように配置され
前記接合体が、前記接合面に対し斜めに、かつ、前記接合面において前記接合体より幅広の穴状に加工される部位を貫いて挿通し、前記一の木部材と他の木部材との間にすべりが起きるとき、前記接合体が前記2本の窪み部分で折れ曲がり、前記接合体の前記2本の窪みで挟まれる部位が前記穴状部位に収容されることを特徴とする木部材の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
木部材どうしを接合させる接合構造及び接合体の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木部材どうしの接合状態を保持させるための技術について、研究・開発が盛んに行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、木質の軸組構造体における柱や梁等の木部材の接合構造において、在来工法である各種接手等の剪断荷重を受ける部分の複雑な加工や組み込みを不要にすると共に、充分な接合強度を確保しつつ構造をより簡易化することにより、短期での施工を可能とする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−21443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1で示すように、木部材どうしを棒状接合体によって接合する接合構造の構造計算を行おうとすると、接合される木部材間にすべりが起きるとき、棒状接合体と接する部位の木部材の変形を考慮する必要があるため、理論的な構造計算を行うことが難しくなる。
【0006】
従って、上記技術については、接合する木部材どうしが“すべる”とき、木部材の変形を考慮する必要があるため、木部材・接合体の接合箇所の強度(接合状態を保つことができる限界点)を明確にすることができないという問題点がある。換言すれば、上記技術については、木部材・接合体の接合箇所における破壊メカニズムを解明することができず、接合構造の構造計算を行うことができないという問題点がある。
【0007】
そこで本発明では、上記問題点に鑑み、木部材と該木部材を接合するための接合体とに関する接合構造の構造計算を行うことができる木部材の接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示する木部材の接合構造の一形態は、接合させる一の木部材と他の木部材と、接合箇所において前記一の木部材と他の木部材との両方に挿通させて、接合状態を保たせるための棒状の接合体と、を備え、前記接合体が、胴体周上に平行な2本の窪みを有し、前記一の木部材と他の木部材との接合面が前記2本の窪みの間となるように配置され、前記接合体が、前記接合面に対し斜めに、かつ、前記接合面において前記接合体より幅広の穴状に加工される部位を貫いて挿通し、前記一の木部材と他の木部材との間にすべりが起きるとき、前記接合体が前記2本の窪み部分で折れ曲がり、前記接合体の前記2本の窪みで挟まれる部位が前記穴状部位に収容されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
開示する木部材の接合構造は、木部材と該木部材を接合するための接合体とに関する接合構造の構造計算を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】すべりが起きたときの木部材及び接合体の状態を示す図である。
図2】本実施の形態に係る接合体を示す図である。
図3】本実施の形態に係る木部材の接合構造を示す図である。
図4】本実施の形態に係る木部材の接合構造(別形態)を示す図である。
図5】本実施の形態に係る木部材の接合構造(接合する木部材においてすべりが起きたとき)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
(本実施の形態に係る木部材の接合構造の原理)
【0013】
図2乃至5を用いて、本実施の形態に係る木部材の接合構造1の原理について説明する。図2は、接合体2の構造を示す図であり、図3及び4は、接合構造1を示す図であり、図5は、接合体2によって接合される木部材6、8においてすべりが起きたときの接合構造1の状態を示す図である。
接合構造1は、接合させる木部材に挿通させ、接合状態を保たせるための棒状の接合体2、接合体2によって接合させる一の木部材6、他の木部材8を有する。
【0014】
図2で示すように、接合体2は、棒状の外形状を成し、胴体周上に所定間隔で離れた2本の溝4を備える。接合体2は、一方端にネジ状の溝が施された形状(例えば、ラグスクリュー)であっても良い。
【0015】
図3で示すように、接合体2は、接合させる一の木部材6、他の木部材8に挿通させることによって、これらの接合状態を維持させる。一の木部材6、他の木部材8の接合箇所に孔を開け、その孔に接合体2を挿通させる形態でも良い。
【0016】
また、接合体2は、2本の溝4の間に、一の木部材6と他の木部材8との接合面10が位置するように配置される。接合される木部材6、8間にすべりが起きるとき、接合体2は、溝4部分で折れ曲がり、破断する。
【0017】
図4で示すように、接合構造1は、一の木部材6と他の木部材8との接合面10において、接合体2の周囲が穴12状に加工される形態としても良い。こうすることによって、接合される木部材6、8間にすべりが起きるとき、接合体2が溝4部分でより折れ曲がり易くなるため、接合構造1の構造計算において、接合体2と接する部位における木部材6、8の変形を考慮する必要性が低下し、理論的な構造計算がより容易になる。
【0018】
図5で示すように、接合構造1における一の木部材6と他の木部材8との間においてすべりが生じるとき、接合体2は、溝4部分で折れ曲がり、破断するため、接合体2・木部材6、8間の接合箇所のせん断剛性は、接合体2の曲げ剛性として計算できる(数値上は一致する)ので、結果的に、接合体2・木部材6、8で構成される接合構造1の構造計算を行うことができるようになる。
このように、接合構造1においては、従来厳密に計算することが困難であった接合体2・木部材6、8の接合箇所の構造計算を可能とする。
【0019】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 木部材の接合構造
2 接合体
4 溝
6 接合体2によって接合される木部材
8 接合体2によって接合される木部材
10 接合面
12 接合面の穴
図1
図2
図3
図4
図5