(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876663
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】電池電極用組成物及び電池電極用バインダー組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-195224(P2018-195224)
(22)【出願日】2018年10月16日
(62)【分割の表示】特願2017-204225(P2017-204225)の分割
【原出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2019-3962(P2019-3962A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2018年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【弁理士】
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】松山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 美和
(72)【発明者】
【氏名】三崎 皇雄
【審査官】
鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/122297(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/002451(WO,A1)
【文献】
特開2003−192507(JP,A)
【文献】
特開平07−277911(JP,A)
【文献】
特表2011−500754(JP,A)
【文献】
特開2007−031299(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/026462(WO,A1)
【文献】
特開2013−211247(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/029839(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、を含むリチウムイオン二次電池電極用組成物であって、
前記バインダーは、アクリルゴムラテックス(α,β−不飽和ニトリル単量体単位を有するものを除き、含フッ素エチレン系単量体に由来する繰り返し単位を有するものを除き、さらに、脂肪族共役ジエン系単量体単位を有するものを除く)である、
リチウムイオン二次電池電極用組成物。
【請求項2】
2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−n−オクチル4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールからなる群より選ばれる1種以上を含む請求項1に記載のリチウムイオン二次電池電極用組成物。
【請求項3】
バインダーと、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、を含むリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物であって、
前記バインダーは、アクリルゴムラテックス(α,β−不飽和ニトリル単量体単位を有するものを除き、含フッ素エチレン系単量体に由来する繰り返し単位を有するものを除き、さらに、脂肪族共役ジエン系単量体単位を有するものを除く)である、
リチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
【請求項4】
2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−n−オクチル4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールからなる群より選ばれる1種以上を含む請求項3に記載のリチウムイオン二次電池電極用バインダー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池電極用組成物及び電池電極用バインダー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化がますます進んでいる。リチウムイオン若しくは、水素を可逆的に吸蔵放出する物質を電極に用いたリチウムイオン二次電池若しくは、ニッケル水素電池などは、軽量でエネルギー密度が高く、携帯電話やノートパソコンなどの携帯型電子機器用の中心的な電源として重要性が増している。これらの二次電池電極は、いずれも活物質を金属基材(以下、集電体という)上に塗布した構造を持ち、活物質を集電体に結着する結着剤として通常、ポリマーバインダーが利用されている。このポリマーバインダーには、活物質との結着性、電解液への耐性及び、電気化学的な環境下での安定性などが求められる。特にリチウムイオン二次電池の場合、従来から、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系のポリマーをN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に溶解し、バインダーとして使用しているが、電極乾燥工程において、バインダーの電極表面への偏析が起こりやすく、結着力が不足する問題があり、改良が望まれている。例えば特開平04−51459号公報(特許文献1)には非フッ素系の水性分散体からなる電極用バインダー、および電極用塗料組成物を用いることで、バインダーの偏析を抑制し、結着力の良好な電極を提供することが可能とされている。しかしながら、塗料組成物の水系化により、粘度などの塗料の長期安定性が不足する懸念がある。また、国際公開WO2004/107481号公報(特許文献2)には、特定の重合方法において、バインダーと分散剤を複合化することで、バインダー組成物、および塗料組成物の安定性を改善することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−51459号公報
【0004】
【特許文献2】国際公開WO2004/107481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記バインダーを含有する電池電極用組成物あるいはバインダー自身のpHや粘度などの安定性が十分とはいえない。
本発明の目的は、長期にわたり粘度などの経時変化が少ない電池電極用組成物を提供することにある。その結果として、結着力などに優れた電極、電池特性の良好な電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するため、本発明の電池電極用組成物は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンからなる群より選ばれる1種以上を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電池電極用組成物は、長期間にわたり粘度等の物性が安定であり、結着力などの品質が非常に安定した電極を得ることが可能となり、その結果として電池特性の良好な電池が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の電池電極用組成物は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンからなる群より選ばれる1種以上を含有する。
【0009】
また、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−n−オクチル4−イソチアゾリン−3−オンからなる群より選ばれる1種以上を含有することがホルムアルデヒド非放出の観点から好ましい。
【0010】
さらには、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−n−オクチル4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノールからなる群より選ばれる1種以上を含有することが電池電極用組成物の長期安定性維持効果の観点からさらに好ましい。
【0011】
上記化合物の添加量については特に限定されないが、電池電極用組成物の固形分に対して0.00001〜1重量部、または電池電極用バインダーの固形分に対して0.001〜10重量部が好ましい。電池電極用組成物に対して0.00001重量部未満、または電池電極用バインダーの固形分に対して0.001重量部未満では、電池電極用組成物の経時安定効果が発現しづらい傾向にあり、電池電極用組成物に対して1重量部、または電池電極用バインダーの固形分に対して10重量部を超えると、結着力が低下する傾向にあり、好ましくない。電池電極用組成物の固形分に対して0.0001〜0.1重量部、または電池電極用バインダーの固形分に対して0.01〜1重量部がさらに好ましい。
【0012】
なお、本発明において、電池電極用組成物に上記した化合物を含有させる方法としては、これらを電池電極用組成物に直接添加してもよく、また、これらの物質をバインダーにあらかじめ含有させた電池電極用バインダー組成物を電池電極用組成物に添加させる方法のいずれでもよい。
【0013】
本発明の電池電極用組成物に使用するバインダーとしては、特に制限されないが、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、メタクリル酸メチル・ブタジエンゴム(MBR)、ブタジエンゴム(BR)などの共役ジエン系ゴムラテックスや、(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとしたアクリルゴムラテックスなどの水系エマルションなどが挙げられ、1種または2種以上使用することができる。また、これらの共重合体は、不飽和カルボン酸モノマーなどの官能基含有モノマーを用いて変性されていることが、電池電極用組成物の粘度安定性の観点から、さらに好ましい。
【0014】
本発明の電池電極用組成物は、正極、負極それぞれの活物質とバインダーを含有する。活物質の種類は特に限定されないが、例えば、非水電解液二次電池の場合、黒鉛、炭素繊維、樹脂焼成炭素、リニア・グラファイト・ハイブリット、コークス、熱分解気層成長炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン系有機半導体、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ系炭素、黒鉛ウィスカー、擬似等方性炭素、天然素材の焼成体、およびこれらの粉砕物等の炭素質材料、MnO2、V2O5などの遷移金属酸化物、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2などのリチウムを含む複合酸化物などがあげられ、1種あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0015】
本発明の電池電極用組成物は、活物質100重量部(固形分)に対してバインダーを0.1〜10重量部(固形分)、さらに好ましくは1〜7重量部(固形分)の割合で使用することが好ましい。バインダーの配合量が0.1重量部未満では、集電体などに対する良好な結着力が得られない傾向があり、10重量部を超えると電池として組み立てた際に過電圧が著しく上昇し、電池特性に悪影響をおよぼす傾向があり、好ましくない。
【0016】
本発明の電池電極用組成物には、必要に応じて、水溶性増粘剤などの各種添加剤が添加されていてもよい。例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼインなどの水溶性増粘剤、ヘキサメタリン酸ソーダ、トリポリリン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダなどの分散剤、ラテックスの安定化剤としてのノニオン性、アニオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0017】
本発明の電池電極用組成物は、集電体に塗布、乾燥して電池電極として用いるものである。また、電池電極用組成物を集電体に塗布する方法としてはリバースロール法、コンマバー法、グラビヤ法、エアーナイフ法など任意のコーターヘッドを用いることができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できる。
【0018】
本発明の電池電極用組成物を用いて電池を製造する際に使用される集電体、セパレーター、非水系電解液、端子、絶縁体、電池容器等については既存のものが特に制限無く使用可能である。
【実施例】
【0019】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を変更しない限り、これらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中、割合を示す部および%は重量基準によるものである。また実施例における諸物性の評価は次の方法に拠った。
【0020】
共重合体ラテックスAの作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、1,3−ブタジエン2部、スチレン4部、アクリロニトリル1.5部、メタクリル酸メチル1部、ヒドロキシエチルアクリレート2部、アクリル酸0.6部、フマル酸1.9部、t−ドデシルメルカプタン0.05部、シクロヘキセン5部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.6部、純水100部を加えて50度に昇温した後に、過硫酸カリウム1部を加えて重合を開始した。重合開始から3時間後に1,3−ブタジエン20部、スチレン42部、アクリロニトリル15部、メタクリル酸メチル10部、t−ドデシルメルカプタン0.45部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部、純水20部を添加し、重合反応槽温度を60度に昇温し、重合を継続した。重合開始から12時間後に重合を停止し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.5に調整した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、数平均粒子径160nm、ゲル含有量85%の共重合体ラテックスAを得た。
【0021】
<実施例1〜15>
負極用組成物の作成
負極活物質として平均粒子径が20μmの天然黒鉛を使用し、天然黒鉛100重量部に対して、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液を固形分で1重量部、バインダーとして共重合体ラテックスAを固形分で2重量部、表1及び表2に示した量の化合物を添加し、全固形分が40%となるように適量の水を加えて混練し、負極用組成物を調製した。
ここで、実施例13においては、まず、共重合体ラテックスAの固形分100重量部に対し、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.2重量部添加し、十分に攪拌した共重合体ラテックスA’を調製した。この共重合体ラテックスA’を共重合体ラテックスAの代わりに添加した以外は、実施例1と同様に負極用組成物を作成した。
【0022】
負極シートの作成
各々の負極用組成物を集電体となる厚さ20μmの銅箔に塗布し、120℃で5分間乾燥後、室温でプレスして、塗工層の厚みが80μmの負極を得た。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
共重合体ラテックスBの作製
耐圧性の重合反応機に、窒素雰囲気下で、ブチルアクリレート7部、メタクリル酸メチル1部、ヒドロキシエチルアクリレート1部、イタコン酸2部、アクリル酸2部、エチレングリコールジメタクリレート0.5部、シクロヘキセン0.3部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2部、純水100部を加えて65度に昇温した後に、過硫酸カリウム0.8部を加えて重合を開始した。重合開始から1時間後にブチルアクリレート50部、メタクリル酸メチル13部、スチレン11部、アクリルアミド3部、ヒドロキシエチルアクリレート2部、メタクリル酸5部、エチレングリコールジメタクリレート2.5部、t−ドデシルメルカプタン0.02部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、純水20部を添加し、重合反応槽温度を70度に昇温し、重合を継続した。重合開始から6時間後に重合を停止し、水酸化ナトリウム水溶液でpHを7.5に調整した。その後に、90℃にて水蒸気蒸留を15時間行い、未反応単量体および他の低沸点化合物を除去して、数平均粒子径230nm、ゲル含有量85%の共重合体ラテックスBを得た。
【0026】
<実施例16〜30>
正極用組成物の作成
正極活物質として、LiCoO2を100重量部、導電剤としてアセチレンブラックを5重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液を固形分で1重量部、バインダーとして共重合体ラテックスBを固形分で2重量部、表3及び表4に示す量の化合物とを添加し、全固形分が40%となるように適量の水を加えて混練し、正極用組成物を調製した。
ここで、実施例28においては、まず、共重合体ラテックスBの固形分100重量部に対し、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.2重量部添加し、十分に攪拌した共重合体ラテックスB’を調製した。この共重合体ラテックスB’を共重合体ラテックスBの代わりに添加した以外は、実施例16と同様に負極用組成物を作成した。
【0027】
正極シートの作成
各々の正極用組成物を集電体として、厚さ20μmのアルニミウム箔に塗布し、120℃で5分間乾燥後、室温でプレスして、塗工層の厚みが80μmの正極を得た。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
電池電極用組成物の粘度の経時変化(経時安定性)
上記にて得られた電池電極用組成物の作製直後の粘度と、室温放置1週間後のB型粘度を東機産業株式会社製TVB−10Mにて測定(60rpm、4号ローター)し、下記式より電池電極用組成物の粘度の経時変化値Rを求め、結果を表1〜表4に示した。なお、室温放置1週間後の電池電極用組成物については、スパチュラにて泡が入らない程度の速さで、見た目の粘度が一定になるまで十分に攪拌してから測定した。
R = |室温放置1週間後粘度−作製直後粘度|/作製直後粘度
【0031】
結着力(180°はく離強度)の測定
上記の方法で得られた電極シートを7cm×2cmの短冊状に切り出し、集電体側に厚み1mmの鋼板を両面テープで接着し、塗工層側にセロハン粘着テープを貼り付け、引張試験機にて100mm/minの速さで180°方向にはく離させる際の応力を測定した。結果を表1〜表4に示した。
【0032】
表1から表4に示すとおり、本願発明の電池電極用組成物は、粘度の経時変化値が小さく粘度の安定性に優れる。また本願発明の電池電極用組成物を塗布して得られる電極の結着力にも優れている。
比較例においては、いずれも本願で規定する化合物を含有しておらず、粘度安定性が大きく劣り、結着力も劣っていることが明らかである。
【0033】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
上記の通り、本発明の電池電極用組成物は、長期間にわたり粘度が安定しており、結着力が安定して優れる電極を得ることが可能となる。その結果として電池特性の良好な電池が得られ、極めて有用である。