(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アンカーの少なくとも2つの隣り合う巻き線は離間されており、前記少なくとも2つの隣り合う巻き線は、前記心臓弁プロテーゼが少なくとも1つの巻き線と係合された後で前記心臓弁プロテーゼがさらに拡張されると、相互に向かって移動する、請求項1に記載のシステム。
前記アンカーの少なくとも2つの隣り合うコイルは、離間され、前記隣り合うコイルは、前記心臓弁プロテーゼが前記少なくとも1つのコイルと係合した後で前記心臓弁プロテーゼがさらに拡張されると、相互に向かって移動する、請求項4に記載のシステム。
【背景技術】
【0003】
ヒトの心臓の左心房から左心室内への血流を制御する僧帽弁の合併症は、致命的な心不全を引き起こすことで知られている。先進国において、心臓弁膜症の最も一般的な形態の1つは、僧帽弁逆流としても知られている僧帽弁の漏れであり、これは左心室から僧帽弁を経由して左心房内に戻る血液の異常漏出により特徴づけられる。これは、最も一般的には、左心室が拡張する複数回の梗塞、突発性心筋症、および高血圧性心筋症の後に僧帽弁の弁葉が適切には接触しなくなる、または閉じなくなる場合の虚血性心疾患に、ならびに変性疾患により引き起こされるものなどの弁葉および脊索の異常に起因する。
【0004】
僧帽弁逆流に加えて、僧帽弁の狭窄すなわち狭窄症が、最も多くの場合においてリウマチ性疾患の結果によるものである。これは、先進国では事実上解消されているが、生活水準がそれほど高くない地域では依然として一般的である。
【0005】
僧帽弁の合併症と同様のものは、左心室から大動脈内への血流を制御する大動脈弁の合併症である。例えば、多数の老齢患者は、大動脈弁狭窄症に罹患する。歴史的に見て、従来の治療法は、大きな直視下心臓手技による弁置換であった。この手技は、侵襲性がとても高いため、回復にかなりの時間量を必要とする。幸運なことに、この10年間で、この大きな直視下心臓外科手技から、外科切開の必要性または心臓停止中に人工心肺装置により循環を支援する必要性を伴わずに迅速に実施され得るカテーテル手技への交代において大きな進歩があった。カテーテルを使用することにより、弁が、ステントまたはステント状構造物に取り付けられ、これらのステントまたはステント状構造物は、圧縮され、血管を通して心臓まで送達される。次いで、ステントは拡張され、弁が機能し始める。罹患した弁は、除去されないが、代わりに新しい弁を収容したステントによって押しつぶされ変形される。変形された組織は、新しい人工弁を固定するのを補助する役割を果たす。
【0006】
弁の送達は、患者内で容易にアクセスされ得る動脈から遂行され得る。最も一般的には、これは、大体動脈および腸骨動脈にカニューレ挿入し得る鼠蹊部から行われる。肩領域もまた利用され、この場合には鎖骨下動脈および腋窩動脈にもアクセス可能となる。この手技からの回復は、著しく迅速である。
【0007】
全ての患者が、純然なカテーテル手技を施され得るわけではない。いくつかの場合では、動脈が、小さすぎることにより心臓までカテーテルを通すことが不可能であり、または動脈の罹患度合いもしくは蛇行度合いが過剰であることにより不可能となる。これらの場合には、外科医は、小さな胸部切開を施し(開胸術)、次いでこれらのカテーテルベースデバイスを心臓内に直接的に配置することが可能である。典型的には、巾着縫合が、左心室の尖部においてなされ、送達システムが、心臓の心尖を通して配置される。次いで、弁が、その最終位置へと送達される。また、これらの送達システムは、大動脈自体から大動脈弁にアクセスするためにも使用され得る。一部の外科医は、直視下手術時に大動脈内に直接的に大動脈弁送達システムを導入する。これらの弁は、非常に多様である。しばしばステントの形態である取付け構造体が存在する。人工弁葉は、取付けおよび保持構造体上のステントの内部にて搬送される。典型的には、これらの弁葉は、従来の外科弁において使用される生体材料から作製される。この弁は、動物からの実際の心臓弁組織であることが可能であり、またはより多くの場合では、弁葉は、ウシ、ブタ、もしくはウマからの心膜組織から作製される。これらの弁葉は、それらの免疫原性を低下させ、それらの耐久性を向上させるように処理される。多くの組織処理技術は、これを目的として展開されてきた。将来的には、生物工学処理された組織が使用され得るか、またはポリマーもしくは他の非生体材料が弁葉に使用され得る。これらの全てが、本開示で説明される本発明に組み込まれ得る。
【0008】
実際には、大動脈弁疾患患者よりも僧帽弁疾患患者の方が多く存在する。この10年間において、多数の企業がカテーテルまたは低侵襲性植込み可能大動脈弁の作製に成功してきたが、僧帽弁の植込みはより困難であり、今日まで良い解決策は存在しなかった。患者は、小切開を利用した外科手技によるデバイスの植込みによって、または鼠蹊部からなどのカテーテルの植込みによって恩恵を被ることになる。患者の観点からは、カテーテル手技は非常に魅力的である。現時点では、カテーテル手技によって僧帽弁を置換するために利用可能な方法は市場に存在しない。僧帽弁置換を必要とする多くの患者は、高齢であり、直視下心臓手技は、痛みを伴い、リスクが高く、回復に時間がかかる。一部の患者は、高齢および脆弱により外科手術の対象にさえならない。したがって、遠隔的に配置される僧帽弁置換デバイスの必要性が特に存在する。
【0009】
以前は、弁修復ではなく僧帽弁置換が、僧帽弁疾患を患う患者にとってよりマイナスとなる長期予後に結び付くと考えられていたが、この考えに疑問符が付き始めた。今では、弁が修復されるか置換されるかにかかわらず、僧帽弁の漏れすなわち逆流を患う患者に対する結果は殆ど同じであると考えられている。さらに、僧帽弁外科修復の耐久性が今では疑問視されている。修復を受けた多くの患者は、数年間の間に漏れを進行させる。これらの多くが高齢者であるため、老齢患者における繰り返しの介入は、患者または医師が歓迎するものではない。
【0010】
カテーテル僧帽弁置換に対する最も目立った障害は、弁を定位置に保持することである。僧帽弁は、大きな周期的負荷を被る。左心室内の圧力は、収縮前にはゼロに近づき、次いで収縮期血圧(または大動脈狭窄症がある場合にはさらに高く)まで上昇し、これは、患者が収縮期高血圧を患う場合には非常に高くなり得る。弁に対する負荷は、しばしば150mmHgまたはそれ以上である。心臓は、それが拍動することにより動いているため、この動きおよび負荷が組み合わさって弁を変位させ得る。また、この動きおよび律動的負荷は、材料を疲労させて、材料の破損をもたらし得る。したがって、弁の固定に関連する大きな問題が存在する。
【0011】
カテーテル送達式僧帽弁置換を行う上での別の問題は、サイズである。インプラントは、強力な保持特徴および漏れ回避特徴を有さなければならず、弁を収容しなければならない。個別のプロテーゼが、始めにアンカーまたはドックを配置し次いで第2に弁を植え込むことによってこの問題を解消するために寄与し得る。しかしこの状況では、患者は、アンカーまたはドックの植込みと弁の植込みとの間で安定的に留まらなければならない。患者の天然僧帽弁が、アンカーまたはドックにより機能不全に陥ると、次いで患者は、急速に不安定になり、施術者は、新たな弁を急いで植え込むか、または場合によってはアンカーもしくはドックを除去し手技を断念することによって患者を安定化させることを余儀なくさせられ得る。
【0012】
僧帽弁置換の別の問題は、弁周囲の漏れ、すなわち弁周囲漏れである。良好な封止が、弁の周囲に確立されない場合には、血液が、左心房内に漏れて戻り得る。これは、心臓に余分な負荷をかけ、血液が漏れ部位を通る噴流として移動することにより血液に損傷を与え得る。溶血すなわち赤血球の破壊は、これが生じた場合に頻発する合併症である。弁周囲漏れは、大動脈弁が初めにカテーテル上で植え込まれるときに一般的に直面する問題の1つであった。外科的置換の最中に、外科医は、弁縫合糸の外部の間隙を視認可能であり、それを防止または修復することが可能であるため、弁の置換時に大きな利点を有する。カテーテル挿入では、これは不可能となる。さらに、大きな漏れにより、患者の生存率が低下し、可動性を制限し患者を不快にする症状(例えば呼吸困難、浮腫、疲労など)が引き起こされ得る。したがって、僧帽弁置換に関するデバイス、システム、および方法は、置換弁の周囲の漏れを防止および修復するための手段をさらに組み込むべきである。
【0013】
また、患者の僧帽弁輪は、非常に大きなものであり得る。企業が外科的置換弁を開発する場合に、この問題は、作製される実際の弁のサイズ数を制限し、次いで弁の縁の周囲により多くの繊維カフを追加して弁サイズを増大させることによって解消される。例えば、患者が、45mmの弁輪を有する場合がある。この場合には、実際の人工弁直径は、30mmであってもよく、この差は、人工弁の周囲により大きな繊維カフ材料バンドを追加することによって補われる。しかし、カテーテル手技では、人工弁により多くの材料を追加することは、この材料が小さな送達システムにより凝縮および保持されなければならないため、問題をもたらす。この方法は、しばしば非常に困難で実用的ではないため、代替的な解決策が必要である。
【0014】
多数の弁が、大動脈位置向けに開発されてきたため、弁開発を繰り返すことを回避し、既存の弁を活用することが望ましい。これらの弁は、開発し市場に送り出すのに非常に費用がかかるため、それらの用途を拡張することにより、かなりの時間量および金額を節減することが可能となる。この場合には、かかる弁のための僧帽弁アンカーまたはドッキングステーションを作製することが有用となる。大動脈位置向けに開発された既存の弁は、おそらく幾分かの変更を伴うことにより、ドッキングステーションに植込み可能である。Edwards Sapien(商標)弁などの一部の以前に開発された弁は、変更を全く伴わずに良好に適合し得る。Corevalve(商標)などの他のものは、植込み可能であり得るが、アンカーとの最適な係合および心臓内部への適合のために幾分かの変更を必要とする。
【0015】
複数のさらなる合併症が、保持不良または位置決め不良の僧帽弁置換プロテーゼにより発生する場合がある。すなわち、弁が、心房または心室内に変位され得るため、これが患者にとって致命的なものとなる恐れがある。先行のプロテーゼアンカーは、組織を穿刺してプロテーゼを保持することによって変位リスクを低下させている。しかし、これは、リスクの高い方策である。なぜならば、穿刺は、遠く離れた位置から先鋭状物体によって遂行されなければならず、これは心臓の穿孔リスクおよび患者の損傷リスクをもたらすからである。
【0016】
また、僧帽弁プロテーゼの配向も重要である。弁は、心房から心室に血液を容易に流し得るものでなければならない。ある角度で進入するプロテーゼが、血流不良、心臓壁または弁葉による流れの閉塞、および血行動態不良の結果をもたらす場合がある。また、心室壁に対する収縮の繰り返しが、心臓の後壁の裂開および患者の急死をもたらす恐れがある。
【0017】
外科的僧帽弁修復または僧帽弁置換では、時として、僧帽弁弁葉の前方弁葉が左心室流出エリアに押し込まれ、これにより左心室排血不良がもたらされる。この症候群は、左心室流出路閉塞として知られている。置換弁が大動脈弁の近くに位置する場合には、置換弁自体により左心室流出路閉塞が引き起こされ得る。
【0018】
置換僧帽弁を植え込む場合に直面するさらなる別の障害は、人工心肺装置が循環を支援する必要性を伴わずに患者が安定した状態に留まり得るように、患者の天然僧帽弁がプロテーゼの配置の最中に定期的に機能し続ける必要がある点である。
【0019】
さらに、様々な植込みアプローチで使用され得るデバイスおよび方法を提供することが望ましい。特定の患者の解剖学的構造および臨床的状況に応じて、医療専門家は、直視下手技(直視下心臓外科手術もしくは低侵襲性外科手術)において心臓内に直接的に置換弁を挿入する、または閉手技において静脈からおよび動脈を経由して置換弁を挿入するなど(カテーテルベース植込みなど)、最適な植込み方法に関する決定を下すことを求める場合がある。複数の植込みオプションの選択肢を医療専門家に与えることが好ましい。例えば、医療専門家は、僧帽弁の心室側からまたは心房側からのいずれかから置換弁を挿入することを求める場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】らせん状アンカーを使用して天然弁位置に植え込まれた置換心臓弁を示す概略断面図である。
【
図1B】
図1Aと同様の、しかしらせん状アンカーとの組合せでのシールの使用を示す概略断面図である。
【
図2A】らせん状アンカーにシール構造体を適用する一方法を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Aに示す方法におけるさらなるステップを示す斜視図である。
【
図2C】シールの適用後のらせん状アンカーを示す断面図である。
【
図2D】適用された一形態のシールを有するらせん状アンカーの拡大断面図である。
【
図2E】
図2Dと同様の、しかしシールの代替的な一実施形態を示す断面図である。
【
図2F】
図2Eと同様の、しかしシールの別の代替的な実施形態を示す別の拡大断面図である。
【
図3A】らせん状アンカーおよびシールの別の代替的な実施形態を示す概略斜視図である。
【
図3B】らせん状の隣接するコイル同士が送達のために共に圧縮された状態の、
図3Aに示す実施形態の断面図である。
【
図3C】送達後に拡張されたらせん状アンカーおよびシールを示す断面図である。
【
図3D】らせん状アンカーの別の例示の実施形態を示す部分斜視図である。
【
図3E】
図3Dのらせん状アンカー構造体へのシールの適用を示すために部分的に破断された概略立面図である。
【
図3F】シールを伴うらせん状コイル構造体の別の実施形態を示す拡大断面図である。
【
図3G】
図3Fと同様の、しかしシールの送達および広げた後の構造体を示す断面図である。
【
図3H】
図3Gと同様の、しかし送達後に拡張されたらせん状アンカー構造体および付随するシールの複数部分を示す断面図である。
【
図4A】シールの別の代替的な実施形態との組合せでらせん状アンカーを示す斜視図である。
【
図4B】シールに支持構造体を追加する代替的な一実施形態を示すシールの斜視図である。
【
図4C】天然心臓弁位置に植え込まれた
図4Aの実施形態を示す概略断面図である。
【
図4D】
図4Cのらせん状アンカーおよびシール構造体内に植え込まれた置換心臓弁を示す概略断面図である。
【
図5A】膜またはパネルシールが適用された状態のらせん状アンカーの斜視図である。
【
図5B】
図5Aの膜またはパネルシールが展開されたまたは広げられた状態における、らせん状アンカーの斜視図である。
【
図5C】内部支持構造体を有する膜またはパネルシールの斜視図である。
【
図5D】らせん状コイルおよび展開されていない膜シールの拡大断面図である。
【
図5E】
図5Dと同様の、しかしらせんコイルの周囲に巻かれるのではなく座屈し折り畳まれた膜シールを示す断面図である。
【
図5F】内部支持構造体および縫合糸を含むさらなる詳細を示すコイルおよび膜シールの一部分の斜視図である。
【
図5G】天然心臓弁部位に植え込まれたらせん状コイルおよび膜シールを示す断面図である。
【
図5H】
図5Gと同様の、しかしらせん状コイルおよび膜シールの中に植え込まれた置換心臓弁すなわち人工心臓弁をさらに示す断面図である。
【
図6A】植え込まれ、天然心臓弁部位にてバルーンにより拡張されつつあるらせん状コイルを示す断面図である。
【
図6B】らせん状コイルおよび膜シール構造体の中に植え込まれたステント装着された心臓弁、置換心臓弁、すなわち人工心臓弁を示す断面図である。
【
図7A】第1の直径を有するほぼ2つの巻線またはコイルと、第2のより大きな直径を有する別のコイルとを有するらせん状コイルを概略的に示す断面図である。
【
図7B】ステントが取り付けられた置換心臓弁がらせん状アンカー内への植込み可能な状態にある、天然心臓弁部位における
図7Aに示すらせん状アンカーの植込み時の初期ステップを示す図である。
【
図7C】ステント装着された置換心臓弁がバルーンカテーテルを使用して拡張される手技のさらなる部分を示す図である。
【
図7D】手技のさらなる部分を示し、らせん状アンカー内に植え込まれた置換心臓弁の断面図を示す図である。
【
図7D-1】
図7Dと同様の、しかし置換心臓弁およびアンカーの代替的な構成を示す、らせん状アンカー内に植え込まれた置換心臓弁の断面図である。
【
図8A】バルーンカテーテルにより拡張されつつあるらせん状アンカーの別の実施形態の立面図である。
【
図8B】
図8Aと同様の、しかしバルーンカテーテルのさらなる拡張を示す図である。
【
図8C】
図8Bと同様の、しかしバルーンカテーテルのさらなる拡張を示す図である。
【
図8D】
図8Cからのらせん状コイルの圧縮を示す拡大断面図である。
【
図9A】バルーンカテーテルにより拡張されつつあるらせん状アンカーの別の実施形態の立面図である。
【
図9B】
図9Aと同様の、しかしバルーンカテーテルのさらなる拡張を示す図である。
【
図9C】
図9Bと同様の、しかしバルーンカテーテルのさらなる拡張を示す図である。
【
図9D】
図9Cからのらせん状コイルの圧縮を示す拡大断面図である。
【
図10A】天然心臓弁部位に挿入または植え込まれたらせん状アンカーの別の実施形態と、らせん状アンカーおよび天然心臓弁部位の中へのステントが取り付けられた置換心臓弁の挿入とを示す部分断面図である。
【
図10B】
図10Aと同様の、しかしらせん状アンカー内におけるステントが取り付けられた置換心臓弁の拡張および植込みを示す断面図である。
【
図10C】
図10Bに示す植え込まれた置換心臓弁およびらせん状アンカーの部分的に破断された断面図である。
【
図10C-1】置換心臓弁のステントとらせん状アンカーとの間の係合を示す拡大断面図である。
【
図10D】
図10Cのらせん状アンカー内のステントが取り付けられた置換心臓弁の拡張プロセスを示す上面図である。
【
図10E】
図10Dと同様の、しかしステントが取り付けられた置換心臓弁の完全な拡張および植込みを示す上面図である。
【
図11A】天然心臓弁部位に挿入または植え込まれたらせん状アンカーの別の実施形態と、らせん状アンカーおよび天然心臓弁部位の中へのステントが取り付けられた置換心臓弁の挿入とを示す部分断面図である。
【
図11B】
図11Aと同様の、しかしらせん状アンカー内におけるステントが取り付けられた置換心臓弁の拡張および植込みを示す断面図である。
【
図11C】
図11Bのらせん状アンカー内におけるステントが取り付けられた置換心臓弁の拡張プロセスを示す上面図である。
【
図11D】
図11Cのらせん状アンカー内におけるステントが取り付けられた置換心臓弁の完全な拡張を示す上面図である。
【
図12A】らせん状アンカーの別の実施形態の立面図である。
【
図12B】らせん状アンカーの別の実施形態の断面図である。
【
図12C】
図12Bの線12C-12Cに沿ったらせん状アンカーの拡大断面図である。
【
図12D】バルーンカテーテルによる拡張を概略的に示すらせん状アンカーの上面図である。
【
図12E】
図12Dに示される、しかし繊維シール内に部分が展開されるのを示すために拡張された、らせん状アンカーの断面図である。
【
図13A】らせん状アンカーの別の実施形態の立面図である。
【
図13B】らせん状アンカーの別の実施形態の断面図である。
【
図13C】外方シール層内に返しが展開した状態の、
図13Bの線13C-13Cに沿ったらせん状アンカーの拡大断面図である。
【
図14A】代替的ならせん状アンカーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
同様の参照数字が、各図面においてほぼ同様の構造体または特徴を指すために使用されることが理解されよう。かかる要素間の相違点が、必要に応じて一般的には説明されるが、同一の構造体は、先の説明を代わりに参照し得るため明瞭化および簡略化のために各図ごとに繰り返し説明される必要はない。
図1は、カテーテル(図示せず)を使用して僧帽弁12などの天然心臓弁の位置に植え込まれ得る典型的な置換心臓弁すなわちプロテーゼ10を概略的に示す。置換弁10の弁葉14、16が心臓の収縮期および拡張期の間に開閉する際の置換弁10の外周部の周囲における血液の漏れを防止するために、封止条件が、弁10の周囲に、すなわち置換弁10の外周部と天然生体組織との間に望まれる。天然組織と接触状態に位置決めされるように意図された置換心臓弁10の部分は、血流の逆流を防止するために繊維カバーまたはポリマーカバー18を備える。
図1Aでは、繊維カバー18は、ステントが取り付けられた置換弁10内で置換弁弁葉14、16に隣接して示される。これらの置換弁弁葉14、16は、典型的にはウシまたはブタからなど、生体材料から形成されるが、合成物質または他の生物学的形状物であってもよい。この置換弁10の約半分は、シールを有さず、すなわち開口24aを有する多少なりとも露出されたステント24である。これは、置換弁10が大動脈の天然位置に配置された場合に、冠状動脈が大動脈弁の直上に来るからである。シール18が、置換弁10のステント部分24の全長にわたって延在した場合には、冠状動脈は、遮断され得る。
図1Aでは、変更されていない大動脈置換弁10が、コイル32から構成されるらせん状アンカー30内に植え込まれているのが示される。ステント装着された弁10上のシール18と患者の僧帽弁12への装着部との間に間隙が存在するため、血流の漏れは、矢印36により概略的に示されるように発生し得る。血流の漏れは、任意の方向に発生し得る。ここでは、矢印36は、心室内圧が心房内圧よりも高いことにより心室40から心房42に発生する漏れを示す。天然僧帽弁位置に配置された変更されていない大動脈弁10は、漏れを進行させる傾向となる。この問題を回避するために、2つの主要なアプローチをとることができる。第1に、シールが、システムに付加されてもよく、例えばらせん状アンカー30が、封止特徴部を付加されてもよい。第2に、ステントが取り付けられた置換心臓弁10が載置される位置が、変更されてもよい。これに関して、置換心臓弁10が、心室40内部の下方に位置決めされる場合には、置換心臓弁10上のシール18は、漏れがないように位置することになる。左心室40内部の下方に弁10が載置されることの1つの欠点は、置換心臓弁10が左心室40の内部に損傷を引き起こし得る、または弁10が心室収縮を阻害し得る点である。置換心臓弁10は、心室壁に損傷を与え得るか、または心室40から大動脈内への血液の流出を遮断し得る。左心室40内により深くまたはより下方に置換心臓弁10を単に載置する代わりに、
図1Aに示すように、ステントが取り付けられた置換弁10の位置をより心房側に位置決めされた状態(すなわちより高く位置決めされ、心房42内に延在する)に維持することが有用であり得る。
【0033】
図1Bは、上記で論じたようなおよび
図1Aに示すような血流漏れを防止するために置換心臓弁10の上方部分にシール構造体50を提供する一実施形態を示す。これに関して、1つまたは複数のシール52が、らせん状アンカー30に付加されている。具体的には、繊維で覆われた楕円形シール構造体52が、らせん状アンカー30に付加されてシールを形成する。シール52は、十分なシールを形成し血液が流れないようにする繊維または任意の他の材料から形成され得る。シール52は、ステントが取り付けられた置換弁10と天然僧帽弁弁葉12a、12bとの間の装着部の高さまで延在する。この例示の実施形態では、シール52は、連続チューブであり、繊維または他の封止材料の重畳セグメントの形態の1つまたは複数のシール要素またはシール部分52a、52b、52cを備える。封止構造体のこれらのセグメント52a、52b、52cは、らせん状アンカー30のコイル32すなわち巻線同士の間の間隙を封止するための羽目板構造体またはこけら板として機能する。
【0034】
図2Aは、らせん状アンカー30上に
図1Bに示すものなどの重畳シール構造体50を適用する、または他の方法でシール構造体50を一体化する1つの方法を示す。これに関して、シール構造体50は、送達のためにらせん状アンカー30と一体化され得る。こけら板または重畳シール部分52a〜52c(
図1B)は、座屈し、カテーテル60から押し出され得る。代替的には、らせん状アンカー30が、天然心臓弁部位に送達されると、繊維または他のシール構造体50は、同一の送達カテーテル60からアンカー30のコイル32上を送達され得る。代替的には、重畳シール構造体50は、らせん状アンカー30が送達カテーテル60から押し出されるまたは延出されることにより、らせん状アンカー30に付加され得る。
図2Aは、繊維または他のシール構造体50がシースまたは送達カテーテル60かららせん状コイル32上で送られつつある状態のらせん状アンカー30を具体的に示す。シール構造体50は、断面においてほぼ円形、または上記の
図1Bに概略的に示すように重畳するようにより良好に構成された形状などの任意の他の形状であってもよい。
図2Bは、
図2Aに示す手順のさらなる部分またはステップにおいてらせん状アンカー30に付加されることになる繊維62および内部支持コイル64を示す。
図2Cは、コイル64および繊維62により覆われシースまたは送達カテーテル60により送達されるらせん状アンカー30を備える、断面で示された完成アセンブリの一実施形態を示す。送達シースまたはカテーテル60は、コイルおよび繊維の組合せを覆った状態に留まってもよく、またはらせん状アンカー30上でこれらの封止要素62、64を単に送達するために使用されてもよい。
【0035】
図2Dは、この場合では断面が円形である封止要素62、64の断面図を示す。例えばコイル支持部および繊維の組合せなどを備えるこれらの封止要素62、64は、共に配置された場合にシールを形成する限りにおいては事実上任意の形状であってもよい。封止要素62、64は、使用時に重畳しない代わりに、図示するように相互に接触してそれらの間にシールを形成してもよい。
【0036】
図2Eは、
図1Bに示すシール50と同様の長円形断面または楕円形断面に形状設定されたシール構造体70を示し、セグメント70a、70bは、相互に重畳して確実かつ液密のシールをもたらす。送達のために圧縮され、次いでシール構造体70が送達カテーテルまたはシースから押し出されるとばね式に開くまたは付勢されて開く長円形シール構造体70を有することが可能である。繊維72を内部で支持するコイル74は、座屈し次いで必要に応じて所定の形状へと付勢され得るまたはばね式に開き得るように、ニチノール(超弾性)ワイヤまたはばね鋼線から作製されてもよい。
【0037】
図2Fは、別の代替的なシール構造体80を示す。この場合には、封止繊維82または他の材料が、らせん状アンカー30の周囲に巻かれる。繊維は、適切な糸と共に縫い付けられて、らせん状アンカー30のコイル32に装着された連結部分86から延在する剛直な構造パネル84を形成する。パネル84は、やはり重畳して、こけら板効果と同様に液密シールを形成する。この構成は、図示するようにらせん状アンカー30上でパネル構造体を送ることによって、上記の先述の繊維で覆われたコイル設計と同様に送達され得る。
【0038】
図3Aは、封止構造体を提供するための別の実施形態を示す。シール構造体90にさらなる形状および支持を与えるために、繊維カバー96または他の材料シールの内部に2つ以上の「フレーム」セグメント92、94が存在し得る。これは、シール構造体90に形状を与え、シールセグメント同士(一方のみが
図3Aに示される)のより確実な重畳を可能にする。これは、2つのワイヤ92、94が相互に平行に延在してらせん形状を形成する2重らせんを使用することによって達成され得る。この2つのワイヤ92、94は、
図3Aに示すように湾曲セクション98によりそれらの端部にて連結され得る。繊維または他の材料のスリーブまたはコーティング96が、このらせん状シール構造体90の送達の最中またはその後に2重らせん上で送られ得る。
【0039】
図3Bは、外方繊維または他の材料96の内部にワイヤ92、94を有して圧縮されたシール構造体90の断面図を示す。これは、植込み部位への容易な送達を可能にし得る。
【0040】
図3Cは、離間され送達後に重畳する2重らせんシール90を示す。らせんシール90の2つのセグメント90a、90bは、それらが送達されて上記で論じた「こけら板」構成と同様の重畳したシールセグメント90a、90bを形成することによって拡張することが可能である。ここで、2つの重畳するシールセグメント90a、90bは、相互に隣接し重畳するように位置決めされて効果的な液密シールをもたらす2つの2重らせんフレーム92、94によって支持される。
【0041】
図3Dは、シールのフレームセグメント92、94を結合するための、具体的にはフレームセグメント92、94を離間するように付勢するための別の代替的な方法を示す。2つのフレーム部分またはワイヤ92、94間の相互連結セグメント100は、フレームセグメント92、94を所望の最終形状へと押圧し得る。この2重らせん設計は、複数のワイヤ片から作製されてもよく、またはステント製造技術と同様に単一の純粋なニチノールまたは鋼のチューブまたはワイヤから作製されてもよい。また、シールフレーム92、94は、外方シール材料または繊維96(
図3C)の内部に2つのレールまたはワイヤではなくこけら板タイプの形状物を保持するように、正弦波構成またはほぼ前後ジグザグ構成(図示せず)を有してもよい。
【0042】
図3Eは、外方シール材料または繊維96が拡張されたフレーム92、94を覆ってどのように配置され得るかを詳細に示す。シール材料96は、2重らせんフレーム92、94に事前装着されてもよく、これら2つは、共に送達され得る。代替的には、シール材料96は、2重らせんフレーム92、94が天然僧帽弁の部位などの植込み部位の定位置に既に位置しているその後で2重らせんフレーム92、94上に送達され得る。拡張されていない状態では、2重らせん92、94は、先述のようにカテーテルを通り押し出され得る。
【0043】
図3F、
図3G、および
図3Hは、シール90の送達および植込みの推移を概略的に示す。これらの図面では、シール材料または繊維96は、フレーム92、94を越えて延在してシール材料のフラップまたはパネル102を形成する。これらのフラップまたはパネル102は、太い縫合糸で補剛および補強されてもよく、または材料が、剛化剤に浸漬またはコーティングされてもよい。これは、液密シールを確保するのに有用であり得る。
図3Fでは、内部ワイヤフレーム92、94は、座屈し、繊維カバー96、102は、送達のために送達シース60内で折り畳まれる。
図3Gでは、フレーム92、94は、送達されており、フレーム92、94を越えて延在するシール材料96のセグメントまたはフラップ102は、広がっている。
図3Hは、ステントと同様にフレーム部分92、94が拡張したのを示す。これは、堅固で確実なシールをもたらす。2重らせんフレーム92、94の内部で座屈していた横材または付勢部材100は、ここでは外方に付勢され、伸張し直線状になる。これらの横材100は、ニチノールまたは他のばね材料から作製され、フレーム92、94がカテーテルまたはシース60から送達されると、ばね力でフレーム92、94を拡張させ得る。代替的には、植込み手順の最中に必要に応じてフレーム92、94を作動および拡張させるための別の機構または方法が存在し得る。
【0044】
図4Aは、らせん状アンカー30に封止特徴部を付加するための別の実施形態を示す。ここでは、繊維吹き流しタイプ形状体またはパネル/膜構造体110が、らせん状アンカー30の上方巻線またはコイル32に取り付けられている。このパネル110は、らせん状アンカー30内で広がってまたは延在して封止膜を形成する。繊維または他のシール材料は、らせん状アンカー30に縫い付けられるかまたは恒久的に固定され得る。代替的には、このシールパネル110は、らせん状アンカー30が天然心臓弁内の植込み部位に配置された後に、らせん状アンカー30上に送達され得る。シール材料110は、アンカー30の任意の高さにてらせん状アンカー30の任意の部分に装着され得る。
図4Aでは、シールパネル110は、らせん状アンカー30の最上コイル32に装着され、それによりパネル110は、らせん状アンカー30の全長まで拡張し、全長にわたる液密シールをもたらすことが可能となる。
【0045】
図4Bは、開いたシールパネル110と、シール材料の層の内部または中のワイヤまたは正弦波タイプ支持要素の形態の内部支持構造体112とを示す。シール110のためのこの支持構造体112は、例えばニチノールまたは鋼から作製され得る。支持体112は、繊維に縫い込まれてもよく、またはシール材料に他の方法で固定されてもよい。繊維は、例えば支持体112用のチャネルを含んでもよく、支持体112は、チャネルに押し込まれて必要に応じてシール材料110を拡張させることが可能である。支持体112が、ニチノールまたは超弾性材料から作製され、繊維またはシール材料110の内部に埋め込まれる場合には、直線状になり、送達カテーテルまたはシースの内部に繊維または他のシール材料を折り畳み得る。送達中には、ニチノールまたは超弾性の支持体は、その初期のジグザグ形状または正弦波形状に戻り、送達シースまたはカテーテルから放出され押し出されることによって繊維を拡張させる。
【0046】
図4Cは、患者の僧帽弁12内など、天然弁部位に送達され植え込まれた、
図4Aに示されるものなどのらせん状アンカー30および繊維シールパネル110を示す断面図である。シールパネル110は、環状形状を有し、らせん状アンカー30の内部にほぼ倣う。ここで示されるように、繊維パネル110は、らせん状アンカー30の上方巻線またはコイル32に縫い付けられ、繊維は、折り畳まれ、図示するように共に縫い付けられる。ステッチ114が、構造的支持をさらに与えて繊維が自体を正確に形状設定するのを補助することができる。ステッチは、膜またはパネル構造体110に形状安定性をもたらすのを支援し得る鋼線またはニチノールワイヤから作製されてもよい。また、ステッチ114は、縫合糸または糸であってもよい。縫い付け材料がより太いほど、より大きな支持を繊維に対して与える。ここで、ステッチは、水平線内にあるが、代わりに垂直構成、ジグザグ構成、または任意の他の適切な構成などの他の構成であってもよい。
【0047】
図4Dは、
図4Cのらせん状アンカー30およびシール構造体110の中で拡張されたステントが取り付けられた心臓弁10を示す。シール110は、弁10の周囲における血液の漏れを防止し、まだ覆われ封止されていない弁10のステント部分24の任意のエリアを覆う。シール110は、置換心臓弁10が心房42の方向により高く載置されるのを可能にし、それにより左心室損傷または左心室血液流出阻害のリスクを低下させる。
【0048】
図5Aは、装着された膜またはパネルシール110がらせん状アンカー30のコイル32上に送達されつつある状態のらせん状アンカー30を示す。また、膜またはパネルシール110は、置換心臓弁10の装着を改善することも可能である点に留意されたい。これに関して、金属ステントに装着する金属から特に作製されたものであるむき出しのらせん状アンカー30は、金属表面同士が相互に接触する結果をもたらす。心臓が鼓動し、例えば1日当たり約100,000万回などの各収縮ごとに圧力が上昇するため、金属表面間の滑りおよび弁が外れる可能性というリスクが存在する。したがって、膜、パネル110、または他のシール構造体の追加により、弁が滑りさらには機能不全となる傾向を低下させることが可能となる。膜またはシールパネル110は、平滑であってもよく、または置換心臓弁10の固定を維持するのを補助するために様々な程度のテクスチャまたは粗度を有してもよい。テクスチャード表面または粗表面は、摩擦を上昇させ、したがって滑りを減少させる。また、繊維または他のシール材料110は、置換心臓弁10のステント部分24の開口またはセルの内部に押しやられ得ることにより、ロック効果を向上させまたは生じさせ、シール材料110を含むらせん状アンカー30にステントが取り付けられた置換弁10を固定する。
図5Aでは、膜またはパネルシール110は、らせん状アンカー30に装着され、先述のように膜またはパネルシール110は、患者内への植込み前に装着されてもよく、または植込み手順の最中の任意の時点で付加されてもよい。らせん状アンカー30の送達中の紛糾を軽減するために、らせん状アンカー30が植込み部位に配置された後に膜またはパネルシール110を付加することが有利となり得る。
図5Bは、らせん状アンカー30内で広げられたまたは拡張された膜シールまたはパネルシール110を示す。前述のように、膜またはパネルシール110は、らせん状アンカー30の最上巻線32に装着されるが、らせん状アンカー30に沿った任意の位置に装着されてもよい。膜またはパネルシール110は、連続または不連続のものであってもよく、こけら板効果と同様の重畳するパネル部分から構成されてもよい。膜またはパネルシール110は、らせん状アンカー30内で
図5Bに示すような完全な環状体を形成するが、代わりに完全未満の環状体として形成されてもよい。
【0049】
図5Cは、上述の
図4Bと同様であり、この実施形態では送達され展開された膜シール110が同様の内部支持体116をやはり備え得ることを単に示す。また、膜またはパネルシール110は、本来的に剛直であり、いかなる種類の内部支持構造体も用いずにばね式に開くこともまた可能である。膜またはパネルシール110を開くまたは展開させるための多数の他の方法が、代わりに利用されてもよい。例えば、パネルシール110は、送達のために座屈し、膜またはパネル110が適切なカテーテルまたはシースから送達されると膜またはパネル110が付勢されて開くのを可能にするピラーまたは他の適切な支持体(図示せず)を収容してもよい。これらのピラーまたは他の支持体は、例えば形状記憶材料、超弾性材料、または他の適切なばね付勢される材料から形成されてもよい。
【0050】
図5Dは、巻き出されつつあるまたは展開されつつあるパネルシール110を示す。この例示の実施形態では、パネルシール110は、2つの層から形成され、支持体116は、これらの2つの層の間にある。上述のように、支持体116は、パネルシール110のこれらの層の間に適切に固定される。正弦波構成として示されるが、支持体116は、任意の所望のおよび適切な構成であってもよく、またはほぼ円形または楕円形の支持構造体(図示せず)などの別個の支持構造体から構成されてもよい。これに関して、他の有用な構造体には、2013年8月12日に出願された米国特許仮出願第61/864,860号に示され記載されるものの任意のものが含まれ得る。この仮出願の開示は、ここに参照により本明細書に完全に組み込まれる。最後に、膜シール110を引っ張って開き、膜シール110を広げるまたは他の方法で展開させるために使用され得る引締め糸(図示せず)が、膜シール110の端部にまたは膜シール110の任意の部分に付加されてもよい。
【0051】
図5Eは、らせん状アンカー30のコイル32の周囲に巻かれる代わりに座屈したまたは折り畳まれた膜またはパネルシール110を示す。これなどの座屈した膜シール110は、より実用的であり得る。膜またはパネルシール110は、支持構造体116が先に示したように展開状態へと正常に付勢された状態で開かれ得るか、または、形状記憶支持要素などの構造支持要素116を収容することによって展開され得る。やはり先に論じたように、引締め糸(図示せず)が、展開用に付加されてもよい。
【0052】
図5Fは、らせん状アンカー30の断面拡大図を示し、シール膜110またはパネルは、らせん状アンカー30のコイル32に隣接して延在する。パネルシール110は、点線として示した、シール110をらせん状アンカー30内で定位置に維持する縫合ライン118を備える。これは、縫合部である必要はなく、代わりに固定部が、任意の適切な固定具、膠剤、または膜またはパネルシール110を定位置に維持する他の要素によって実現されてもよい。さらに、パネルシール110は、らせん状アンカー30に接着または装着されてもよく、これは、縫合糸または別個の固定具の必要性を解消する。先述のように、パネルシール110は、繊維または任意の他の適切な生体適合性材料であってもよい。例えば、このおよび任意の他の実施形態において、シール材料は、ダクロンもしくはゴアテックスであってもよく、または動物もしくはヒトからの生体材料であってもよい。シール材料の他の例には、工学生体材料または生体材料および/または合成材料の任意の組合せが含まれる。この実施形態では、パネルシール110は、概略的に上述したようにばね付勢された支持ワイヤ116により開かれるが、らせん状アンカー30の展開および植込みの最中またはその後に任意の適切な方法で開かれてもよい。
【0053】
図5Gは、患者の天然僧帽弁12の部位に植え込まれたらせん状アンカー30およびパネルシール110の組合せを示す。
図5Hは、置換心臓弁10と、具体的にはらせん状アンカー30およびパネルシール110の組合せの中に固定されたステントが取り付けられた置換心臓弁10とを示す。これらの図は、
図4Cおよび
図4Dに関連して上記で説明される。したがって、パネルシール構造体110およびらせん状アンカー30は、展開技術および送達技術にかかわらず先述のように液密封止をもたらす点を理解されたい。さらなる特徴が、
図5Gおよび
図5Hに示すようにパネルシールまたは膜110を開いた状態に展開するのを補助するために使用されてもよい点を理解されたい。また、発泡層(図示せず)が、例えば封止および/または弁保持を補助するために、任意の所望の位置に位置決めされてもよい。膜またはパネルシール110は、らせん状アンカー30の全長またはその長さの一部分のみにわたって延在してもよい。これらの図面では、
図5Gは、長さの一部のみにわたり延在する膜またはパネル110を示すが、
図5Hは、弁10のほぼ全長にわたり延在するパネルまたは膜110を示す。
図5Hに示すように、置換心臓弁10は、置換心臓弁10のかなりの部分が心房内に載置されるように、天然僧帽弁12内に位置決めされる。置換心臓弁10は、らせん状アンカー30に沿った任意の位置に位置決めされてもよい点が理解されよう。らせん状アンカー30は、人工心臓弁すなわち置換心臓弁10の全体を収容してもよく、または置換心臓弁10は、らせん状アンカー30のいずれかの端部にてまたはらせん状アンカー30の両端部から突出してもよい。また、らせん状アンカー30のコイルまたは巻線32の個数は、変更されてもよい。重要な構成は、可能な限り多くの漏れを防止することと、植込み後に置換心臓弁10を定位置に固定的に維持することである。
【0054】
図5Hでは、アンカー30の1つのコイル32が、左心室40の内部でステント装着された人工弁10を越えて延在する。これは、複数の機能を果たし得る。ステント弁10の端部は、先鋭状であり、左心室40の内部の構造物に損傷を与え得る。弁10の端部を越えた状態にアンカー30の巻線32をしておくことにより、心臓内部の構造体が、弁10の先鋭状端部に接触するのを防止することが可能となり得る。アンカー30の最下巻線32は、平滑であり心室40の内部の構造体に対する傷害を防止する「緩衝体」としての役割を果たし得る。平滑な金属(ニチノールなどの)アンカーコイル32は、非常に優れた耐久性を有し、左心室40の内部での摩耗および摩損を防止し得る。
【0055】
また、アンカー30の最下巻線またはコイル32は、弁10の端部の周囲の天然僧帽弁弁葉組織に巻き付いてもよい。また、これは、心臓内部の構造体から人工弁10の先鋭状端部を隠し得る。
【0056】
また、らせん状アンカー30の最下巻線またはコイル32は、索構造体に対する張力を与えてもよい。左心室40の機能が改善され、左心室40の形状が索構造体に対して張力をかけることによって最適化され得る。
図5Hでは、最下コイル32は、心室40の中心に向かって索を引っ張り、収縮にとって最適になるように左心室40を形状設定する。アンカー30を越えて左心室40の内部に延在するアンカー30の複数のコイル32を有することが、有用となり得る。これらのコイル32は、心臓内部でより長い距離にわたって内方に索を引っ張ることが可能である。例えば、患者が、非常に大きな左心室40を有する場合には、弁10を大きく越えるらせん延長部を有することによってこの患者の左心室機能を改善することが望ましいものとなり得る。これは、索を引き締め、左心室40を再形状設定することになる。また、アンカー30のコイル32は、心臓の再形状設定を支援するためにより太い/厚い直径であることも可能である。また、コイル32の直径は、左心室形状変化を最適化するために変更されることも可能である。
【0057】
アンカー30を用いた左心室40の再形状設定のコンセプトは、僧帽弁置換のみに適用される必要はない。これらの説明に示されるらせん状アンカー30は、僧帽弁修復のために使用されることも可能である。また、左心室40の内部におけるらせん状コイル32の延長部は、置換人工弁10が使用されない場合でも、左心室40を再形状設定することも可能である。先述のように、様々な個数のコイル32、様々な直径のコイル32、様々な厚さの材料等が、最適な結果を達成するために使用され得る。
【0058】
また、天然心臓弁12を修復し、左心室40を再形状設定し、修復が時間の経過と共に機能不全となった場合に後に人工置換弁10を付加する可能性を残すために、らせん状アンカー30を使用することも有用である。外科的弁修復後には、これは珍しいことではない。左心室40内に延在するコイル32による左心室の再形状設定を伴うまたは伴わない修復デバイスとしての役割を果たすアンカー30は、人工弁置換が後に必要とされる場合にアンカー30として有用となり得る。
【0059】
図6Aは、天然心臓弁位置に植え込まれたらせん状アンカー30を示す。一般的に、天然僧帽弁12の下表面の付近にらせん状アンカー30を載置することが重要となる。僧帽弁12の下方のコイル32または巻線の直径が、比較的小さい場合には、らせん状アンカー30は、左心室40に滑り込むように付勢される。天然弁12に対するらせん状アンカー30の装着は、弁輪12cから離れることになり、心臓が拍動を始めると、らせん状アンカー30は、左心室40の内部に載置することになり、らせん状アンカー30と僧帽弁弁輪12cとの間に僧帽弁組織が存在する場合に、らせん状アンカー30は、僧帽弁12の弁輪領域にしっかりとは装着されず、むしろ左心室40内の下方で弁葉12a、12bに装着され、これは望ましくない。
図6Aでは、らせん状アンカー30の比較的大きな直径の巻線またはコイル32が、僧帽弁弁葉12a、12bの直下に位置決めされる。この位置は、天然僧帽弁弁輪12cに直に隣接する。比較的より小さな直径のコイル32が、左心室40内の下方に位置決めされる。弁輪12cにて弁葉12a、12bの下方に位置決めされる比較的大きなコイル32と、左心室40内へとさらに奥に位置決めされる比較的より小さなコイル32との間に間隙120を有することが有用となり得る。これは、らせん状アンカー30全体が、植込み後に左心室40内へとさらに奥に引き込まれるのを防止することになる。らせん状アンカー30の比較的より小さな直径のコイル32は、僧帽弁12の上方に、すなわち僧帽弁天然弁葉12a、12bの上方に位置決めされる。例示のために、より小さな直径のコイル32を拡張させるためのバルーン122が示される。これにより、より大きな直径のコイル部分32は、径方向に比較的内方に移動され、それにより類似の直径に沿ってコイル32の全てを締め付け、らせん状アンカー30と天然僧帽弁組織との間の連結部を締め付ける。最も重要な点として、天然僧帽弁弁葉12a、12bの下方のコイルまたは巻線32は、僧帽弁弁輪12cの下側にグリップし、弁輪を径方向内方に引っ張る傾向があるため、天然僧帽弁弁輪12cの直径を縮小する。このように、弁輪の縮小は、心臓が拡張される場合の左心室機能を改善するために重要となる。また、天然僧帽弁12の弁輪直径の縮小は、僧帽弁修復の最中にも重要となる。より小さな直径の弁輪は、左心室機能の改善を増大させる。弁葉12a、12bを制御し、天然僧帽弁弁葉12a、12bおよび弁輪12cを径方向内方に引っ張るために、摺動するらせん状アンカー30を使用する弁輪縮小のコンセプトは、具体的には天然僧帽弁修復に有用である。僧帽弁プロテーゼ置換、すなわち弁輪直径を縮小し、索を引っ張り、左心室40を再形状設定する置換において、左心室機能を改善するためのコンセプト、方法、およびデバイスが、本明細書において引用されて、僧帽弁修復デバイス、コンセプト、および方法を実証する。天然僧帽弁弁輪12の下方のらせん状アンカー30の平滑な巻線またはコイル32は、僧帽弁組織にグリップし、僧帽弁弁輪直径を縮小する傾向をあまり有さない。この理由により、弁輪12cの下方の巻線またはコイル32の「グリップ」を増大させることが有用となり得る。これは、金属をテクスチャ加工することによってまたは高摩擦コーティングもしくは繊維を付加することによってなど、コイル32の表面を粗化することを含む多数の方法で遂行され得る。コーティング、繊維、もしくは他の高摩擦材料は、らせん状アンカー30に固定されてもよく、またはらせん状アンカー30に沿って摺動してもよい。らせん状アンカー30の高摩擦部分は、連続または不連続のものであってもよい。
【0060】
図6Bは、らせん状アンカー30の内部の人工置換心臓弁10の最終位置と、天然僧帽弁12および左心室構造体に対するその関係とを示す。左心室索130は、引っ張られており、したがって左心室40は、適切に再形状設定されている。人工置換心臓弁10の先鋭状端部132は、シール材料134、天然弁組織136、およびらせん状アンカー30の最下巻線またはコイル32の「緩衝体」138によって覆われている。これは、ステント装着された人工弁10の先鋭状端部により左心室40の内部の傷害からの複数タイプの保護をもたらす。また、ステント装着された人工心臓弁10は、心房42に向かってより高く、および左心室40内の構造体から離れて位置決めされる点に留意されたい。これは、置換心臓弁10による左心室40への傷害からのさらなる保護を与える。繊維膜シールまたは他のタイプのパネルシール110は、任意の長さにわたって延在し得る。この図では、それは、置換心臓弁10を越えて延在する。また、繊維または他のシール材料は、左心室40内でらせん状アンカー30の端部を越えて延在し得る。繊維または他のシール材料110は、僧帽弁12の高さにシールが存在するまで置換心臓弁10の端部を覆うべきである。人工置換弁10が装着されたシールを有するか、またはシールが人工置換弁10に他の方法で装着される場合には、シールは必要ない。この場合には、開示される有用な特徴は、らせん状アンカー30への置換弁10の装着と、左心室40を再形状設定するらせん状アンカー30の能力とに主に関する。
【0061】
図7A〜
図7Dは、らせん状アンカー30、らせん状アンカー設計特徴部、およびバルーン140上に送達されたまたは取り付けられたステントが取り付けられた置換心臓弁10の相互作用に関するデバイス、方法、および手順を示す。様々なカテーテルが、らせん状アンカー30の設計を活用して弁の植込みを向上させるために操作され得る。例えば、ステントが取り付けられた置換弁10は、部分的に展開されてもよく、らせん状アンカー30は、最終展開位置に到達する前にはステントが取り付けられた置換弁10が部分的に展開された状態にある状態で操作されてもよい。
図6Aは、3つのコイルまたは巻線32を有するらせん状アンカー30を示す。上の2つのコイル32は、比較的より小さな直径d
2を有し、最下巻線またはコイル32は、比較的より大きな寸法または直径d
1を有する。
図7Bは、弁10がらせん状アンカー30の内部に位置決めされた際の、弁10を展開させるためにバルーン140を内部に有するステントが取り付けられた置換弁10を示す。らせん状アンカー30は、コイルまたは巻線32の中の2つが天然僧帽弁12の上方に位置決めされ、1つのコイルまたは巻線32が天然僧帽弁弁葉12a、12bの下方におよび僧帽弁天然弁輪12cに隣接して位置決めされた状態で配置される。矢印142は、バルーン膨張の径方向外方方向と、ステントが取り付けられた置換心臓弁10の結果的な拡張とを示す。
【0062】
図7Cは、バルーン140およびステントが取り付けられた置換心臓弁10の拡張を示す。らせん状アンカー30の上方の2つのコイルまたは巻線32の直径は、バルーン140が拡張されることによってより小さいため、ステントが取り付けられた置換心臓弁10は、初めにらせん状アンカー30のより小さな巻線32に接触する。ステントが取り付けられた心臓弁10は、これら2つのより小さな直径の巻線またはコイル32に係合した状態になる。この位置にある間、カテーテルがバルーン140を展開させることが、らせん状アンカー30を操作または再位置決めするために利用され得る。大きな矢印146の方向になどのバルーンカテーテル140の動きは、らせん状アンカー30の大きな巻線32が、この例示の例では天然僧帽弁弁輪12cの方向に上方に移動されるという結果をもたらす。すなわち、天然僧帽弁弁輪12cに隣接する巻線またはコイル部分32は、隣接する小さな矢印148の方向に動くことになる。また、これにより、天然僧帽弁弁輪12cの上方の巻線またはコイル部分32の上方への移動が結果としてもたらされる。実際に、十分な力がかかる状態では、弁輪12cの下方の巻線またはコイル部分32が、僧帽弁12の下方の弁葉12aもしくは12bまたは弁輪組織12cと接触状態になると、らせん状アンカー30は、弁葉12aまたは12bの上方および弁葉12aまたは12bの下方の巻線またはコイル部分32に連結するらせん状アンカー30のセグメントが延在された状態になるように、実際にばね式に開かれ得る。これは、らせん状アンカー30のセグメント間の間隙を拡大させ得る。
【0063】
図7Dは、除去されたバルーンカテーテル140による展開および拡張後に完全に拡張されたステントが取り付けられた置換心臓弁10を示す。らせん状アンカー30の最大巻線またはコイル32は、天然僧帽弁弁輪12cの直下の比較的高い位置に位置決めされる。バルーンカテーテル140が完全に膨張した後では、システムは、天然僧帽弁弁葉12a、12bがらせん状アンカー30とステントが取り付けられた置換心臓弁10との間に捕獲されることによって、移動できない。置換心臓弁10を保持するバルーンカテーテル140は、任意の方向に動かされ得る。この図では、上下運動は、これらが患者の内外へバルーンカテーテル140を移動させることによってなされるため、明確に可能である。バルーンカテーテル140を側方へも移動させ得る多数の偏向可能カテーテルが存在する。
【0064】
この一連の図は、手順がらせん状アンカー30を用いてどのように実施され得るかを示すように意図される。アンカー30は、ステント弁10の最終的な位置決めおよび完全な拡張の前に、ステントが取り付けられた弁10によって係合および操作され得る。
【0065】
また、アンカー30の解除前にアンカー30を操作することも可能である。アンカー30は、この手順の最中にカテーテルまたはアンカーに装着された他の要素を有することが可能である。そのため、アンカー30およびステントが取り付けられた弁10は共に、所望の結果を達成するように遠隔的に操作され得る。
【0066】
また、
図7A〜
図7Dは、アンカー30のより小さな巻線32の内部のバルーン140の膨張がより大きな巻線32をどのように「締まった状態にする」役割を果たし得るかを示す。弁輪12cの下方のより大きな巻線またはコイル32の部分は、より小さな巻線またはコイル32が拡張されると、弁輪12cの上方に引き上げられ、したがって弁輪12cの下方のコイル32が短くなる。これにより、大きなコイル32は、ステント弁10の周囲で締まった状態になり得る。この効果は、より大きなコイル32がアンカー30の2つのより小さなコイル32の間に位置する場合にはより顕著になる。より大きなコイル32の各側の2つの小さなコイル32は、拡張し、したがってより大きなコイル32の直径を縮小させ、それによってより大きなコイル32は、弁10を捕獲し、弁10の固定を支援することが可能となる。
【0067】
アンカー30を弁輪12cの可能な限り近くに位置決めすることは、非常に重要である。これは、弁10の天然の解剖学的位置である。アンカー30が、弁輪12cから離れた位置で弁葉組織12a、12bに装着されると、弁葉組織12a、12bは、心臓の各拍動と共に動く。これは、アンカー30および弁10の搖動を引き起こし得る。反復される運動は、弁の外れを引き起こし得る。そのため、弁輪12cの付近にアンカー30の大きなコイル32を配置するのを可能にするための方策が重要となる。また、コイル32がステント弁10を捕獲するように実際に機能し得るように、より小さなコイル32へとより大きなコイル32を転換することも有用である。
【0068】
図7D-1は、置換弁10およびらせん状アンカー30の組合せの別の実施形態を示し、置換弁10の上方端部は、外方にフレア状をなさず、むしろアンカー30の上方コイル32によってほぼ円筒形状に保持される。下方端部または流出端部は、図示するように径方向外方にフレア状をなす。シール(図示せず)などの構造体は、先述のような封止の両目的のために、ならびにまたは代替的には天然僧帽弁弁葉12a、12bに対接するより軟質でより柔軟な表面を与えるために、ステント24と下方コイル32との間に備えられてもよい点が理解されよう。さらに、上方コイル32は、間隙を生じさせ、心房内の天然僧帽弁に隣接する組織に係合しないまたはその組織を捕獲しない点が理解されよう。他方で、下方コイル32は、天然僧帽弁弁輪12cの直下の組織に係合する。
図7D-1に示す置換弁10の実施形態は、
図1Aおよび
図1Bなどで先に示したように構成された弁10とは対照的なものであり、弁が、らせん状アンカー30の植込みおよび適用後に円筒形状を保持し、例えば
図7Dに示すものでは、弁10は、下方または流出側の端部に非常に若干のみ外方に向けられた構成を備え、有意なフレア状を結果としてなさない。
【0069】
図8A〜
図8Dは、ステントが取り付けられた置換心臓弁10が存在しない状態でらせん状アンカー30を拡張させるためのバルーンカテーテル140の使用を示す。具体的には、
図8Aは、約4つのコイルまたは巻線32を有するらせん状アンカー30を示す。接合セグメント32aの各側に2つのコイル32が存在し、この接合セグメント32aは、2つのコイル32を分離させて間隙を生じさせる。僧帽弁天然弁葉(図示せず)は、接合セグメント32aにより生じた間隙の位置にてコイル32同士の間に容易に位置決めされ得る。この図では、バルーン140は、径方向外方に向いた矢印150により示されるように拡張され始めている。
図8Bは、バルーン140のさらなる拡張によって、らせん状アンカー30によりらせん状アンカー30の周囲でバルーン140にくぼみが生じるのを示す。らせん状アンカー30の両側のバルーン140は、さらに拡張する。これにより、結果としてらせん状アンカー30の巻線またはコイル32に対して力が生じ、それにより矢印152によって概略的に示されるように巻線またはコイル32が共に移動される。バルーン140が、
図8Cに示すようにさらに拡張されると、巻線またはコイル32、32a同士の間の間隙は、漸減し、最終的には完全に閉じられ得るため、らせん状アンカー30の2つの主要な部分は、血流方向またはらせん状アンカー30の中心軸の方向に(すなわちバルーン140の長さに沿って)相互に圧迫される。
図8Dは、らせん状アンカー30の巻線またはコイル32、32aが共に圧迫されるのを示す断面図を示す。これらの図に示されるように、らせん状アンカー30のコイル32、32aは、らせん状アンカー30内でバルーン140を膨張させることによって相互に圧迫され得る。これを生じさせるためには接合セグメント32aまたは間隙は存在する必要はない。らせん状コイル32は、この実施形態で示される間隙が存在してもまたはしなくても相互に対して緊密に圧迫されることになる。
【0070】
この圧迫は、様々な機能を生じさせ得る「モータ」としての役割を果たし得る。例えば、バルーン140の膨張により駆動および作動され得るピンまたは固定具(図示せず)を、アンカー30の巻線32、32aに取り付けることが可能となる。ピンまたは固定具は、天然弁弁葉を通過するように位置決めされ得る。また、固定具は、天然弁葉を縦断し、弁葉の対向側のアンカー30内に移動し得る。アンカー30上の繊維コーティング、スポンジコーティング、または別の受容材料が、固定具の保持を向上させる。
【0071】
一般的には、これらの方法およびデバイスは、弁輪12cの付近または弁輪12cの上の僧帽弁12のエリアが、らせん状アンカー30に固定されるのを可能にする。固定具は、弁組織を縦断し、弁葉の一方または両方の側でコイル32に係合することが可能である。バルーンの膨張による弁葉の捕獲によって、僧帽弁12およびその弁輪12cは、操作され、治療手技を実施することが可能となり得る。例えば、アンカーコイル32は、弁葉12a、12bに固定されると、サイズが縮小されて弁輪12cに対する巾着効果を生じさせ得るため、結果として弁輪の縮小または弁輪形成手技が実現される。引締め糸(図示せず)が、直径を縮小させるためにアンカー30に付加され得る。
【0072】
固定具は、らせん状アンカー30のセグメントを共に接合するために使用され得る。例えば、弁葉12a、12bの上方のアンカー30の巻線またはコイル32が、共に接合され得る。繊維または他の材料が、アンカーコイル32の周囲に巻かれ得るかまたは他の方法でアンカーコイル32上に配置され、1つのコイル32からのピンまたは固定具が、隣接するコイル32の繊維に係合しその繊維に自体を捕獲させ得る。隣り合うコイル32同士は、相互に係合し得る。これにより、僧帽弁弁輪12cを制御するためのより大きな質量が弁葉12a、12bの各側に生じる。要するに、らせん状アンカー30の内部でのバルーン膨張により、アンカー30のコイル32同士が共に駆動され得る。この操作は、機械システムを作動させるためのモータまたは駆動機構として使用され得る。また、これはアンカーコイル32同士を緊密に一体的に移動させ得る。
【0073】
図9A〜
図9Dは、らせん状アンカー30がバルーン140により拡張されることによるらせん状アンカー30の別の能力を示す。これに関して、アンカー30を形成するらせん状コイル32の実全長は、同一のままに留まる。したがって、らせん状アンカー30の直径を拡大させるためには、らせん状アンカー30の端部30a、30bは、拡張を許容するように動かなければならない。また、この動きは、さらなる機能を作動させるためのモータまたは駆動機構としても使用され得る。より具体的には、
図9Aは、バルーン140がらせん状アンカー30の内部で拡張されつつあるのを示す。バルーン140が拡張すると、らせん状アンカー30の直径が拡大し、らせん状アンカーの両端部30a、30bがこの拡張を許容するように動く。矢印160により示すように、コイル32の端部30a、30bは、逆方向に動くまたは回転する。
図9Bは、バルーン拡張の続きを示し、
図8A〜
図8Dの先の図は、バルーン140がどのようにらせん状アンカー30のコイル32同士をさらに共に圧迫するかを示す。
図9Bは、バルーン140が拡張することにより、らせん状アンカー30のコイル32がどのようにほぼ回転するかを強調する。この回転は、心臓弁(図示せず)のステント部分の周囲の張力が上昇することにより、ステントが取り付けられた置換心臓弁の保持に有用となる。
図9Cは、らせん状アンカー30がバルーン140の力の下で拡張することによって巻き出されているのを示す。巻線またはコイル32の数は、より少なくなり、残りの巻線またはコイル32は、直径がより大きくなる。
図9Dは、拡張されたらせん状アンカー30の断面図を示す。らせん状アンカー30の端部30a、30bの動きは、機能を実施するために使用され得る。以下でさらに説明されるように、例えば、らせん状アンカー30のコイル32の動きは、アンカーを駆動するためまたは他の機能を実施するために使用され得る。
【0074】
図10A〜
図10Eは、らせん状アンカー30上のカバーまたはコーティング170の効果を示す。また、例えば
図10Bおよび
図10Cなどに示すような置換弁10は、上方端部および下方端部の両方にて外方フレア状をなす。これは、様々な理由により望ましくない場合があり、むしろ弁10の少なくとも1つの端部が、ほぼ円筒状の断面形状(上記または下記で示すような)を有するおよび保持することが望ましい場合がある。コーティングまたはカバー170は、らせん状アンカー30に適用される任意のタイプのシースまたは材料の形態であってもよく、任意の生体適合性材料から構成されてもよい。例えば、コーティング170は、ダクロン、テフロン(登録商標)、または他の材料などの繊維材料から作製されてもよい。コーティング170は、繊維テクスチャを有する繊維形態のPEFEもしくはEPTFEから、または平滑なプラスチックスリーブ、カバー、もしくはコーティングとして形成されてもよい。例えば外科弁などで一般的に使用されるような発泡材料が、コーティング170下に存在してもよい。この発泡材料は、繊維のロールまたは繊維の折り畳まれたものからなるものであってもよい。他の可能な材料には、弾性材料、またはより具体的には医療用シリコーンなどの材料が含まれる。また、生体材料が使用されてもよく、それらには、動物、ヒト、または生物工学材料が含まれる。心臓修復手技で一般的に使用されるいくつかの材料は、心膜材料および腸壁材料である。
図10Aは、発泡材料により裏地が施された繊維から構成されたコーティング170によって覆われるらせん状アンカー30を示す。らせん状アンカー30は、天然僧帽心臓弁12の内部に位置決めされ、2つの巻線またはコイル32が天然僧帽弁弁輪12cの上方に位置し、2つの巻線またはコイル32が天然僧帽弁弁輪12cの下方に位置する。ステントが取り付けられた置換心臓弁10が、らせん状アンカー30の内部に配置され、置換心臓弁10の内部のバルーン送達カテーテル140の膨張が、矢印172により示されるように開始されている。
図10Bでは、置換ステントが取り付けられた弁10は、らせん状アンカー30に対して完全に拡張されているのが示される。典型的には、弁10のステント部分24は、開口またはセルを備える薄い金属材料から構成される。これらの開口またはセルは、コーティングまたはカバー170に対して埋め込まれた状態になる。したがって、ステント24は、らせん状アンカー30にしっかりと係合して、らせん状アンカー30の内部での置換弁10の非常に強力な装着をもたらす。
図10Cは、ステント部分24が、らせん状アンカー30の繊維および発泡コーティング170をどのように変形させているかを実証する拡大図をより具体的に示す。この係合は、非常に強力であり、置換心臓弁10が外れるのを防止する。
図10C-1は、発泡体および繊維カバー170に対して係合されて、これら2つの構成要素間に非常に強力な物理的連結を生じさせるステント24のセルまたは開口24aを示すさらなる拡大図である。
図10Dは、らせん状アンカー30の上方の視点から見てコーティングされたらせん状アンカー30の内部で置換弁10を拡張させるバルーンカテーテル140を示す。
図10Eは、らせん状アンカー30の上方からの同一の図を示すが、バルーンカテーテル140の膨張後(
図10A)の弁10の完全な拡張を示す。次いで、置換心臓弁10のステント部分24は、らせん状アンカー30上の弾性の摩擦性コーティング170中に完全に係合される。
【0075】
図11A〜
図11Dは、先の図で示した連続コーティング170とは対照的な、不連続ならせん状アンカー30上のカバーまたはコーティング180を備える一実施形態を示す。これに関して、らせん状アンカー30に沿ったコーティング180のセグメントが存在し、これらのセグメント180は、らせん状アンカー30に剛体的に固定され得る。しかし、らせん状アンカー30が例えば先述のようなバルーン膨張などを利用して拡張されると、これらのセグメント180がらせん状アンカー30に沿って摺動することが可能となるという利点もまた存在し得る。セグメント180は、らせん状アンカー30のコイル32に沿って摺動することにより、らせん状アンカー30が締まるのを可能にすることができ、同時にセグメント180は、置換心臓弁ステント24のセルまたは開口24aにしっかりと係合することが可能となる。
【0076】
図11Aは、不連続でありセグメント180を有して形成されたカバーを有するらせん状アンカー30を示す。カバーセグメント180は、配置を損なう平坦前縁を有さずに、アンカー30が定位置におかれるのを可能にするために各端部にテーパ状部を有するのが示される。テーパ状部は、必要ではないが、これに関して所望に応じて支援する。このテーパ状部は、任意の適切な設計のものであってもよく、角度をなすか、またはらせん状アンカー30の容易な動きを助長する任意の形状で曲線状であってもよい。バルーンカテーテル140が、先述のようにステントが取り付けられた置換弁10の代わりに位置決めされ、矢印182により示されるようにその膨張を開始させる。
図11Bは、完全に拡張されたステントが取り付けられた置換心臓弁10を示す。コーティングセグメント180は、心臓弁ステント24のセルまたは開口内に完全に係合された状態になっている。これらのセグメント180が、ステント24に係合し、1つまたは複数のセルまたは開口に進入すると、セグメント180は、ステント24に固定された状態になり、らせん状アンカー30に沿って摺動し始めることになる。らせん状アンカー30は、拡張し、置換弁10のステント部分24に対して締まることが可能となり、同時に高摩擦性および弾性および/または圧縮性の材料からなるセグメント180により与えられる、らせん状アンカー30に対する断続的かつ強力な装着という有利な効果が依然として存在することになる。
図11Cおよび
図11Dは、らせん状アンカー30の上方からのプロセスを示し、
図11Cではステントが取り付けられた置換心臓弁10の初期拡張と、
図11Dでは完全な拡張およびセグメント180とステント24との間の係合による、患者内への植込み手順中のこれら2つの構造体のしっかりした一体装着とを示す。
【0077】
図12A〜
図12Eは、らせん状アンカー30と、らせん状アンカー30が拡張しコイル32の端部30a、30bが移動する場合に与えられるモータ機能または駆動機能とを示す。
図12Aは、約4つの巻線またはコイル32を有するらせん状アンカー30を示し、
図12Bは、約3つの巻線またはコイル32を有するらせん状アンカー30を示す。
図12Bにさらに示すように、らせん状アンカー30は、置換心臓弁10内への送達のために返し固定具190に装着される。繊維または他の材料のコーティングまたは外面部192が、返し190の周囲におよびらせん状アンカー30の周囲に適用される。バルーン140が、らせん状アンカー30の内部で膨張されると、らせん状アンカー30の2つの端部30a、30bは、らせん状アンカー30が拡張されるにつれて逆方向に移動する。このようにして、返し190は、らせん状アンカー30の移動に対する逆方向に配向され、それによりこれらの返し190は、らせん状アンカー30が拡張されると作動されるまたは移動することになる。
図12Cは、繊維または他のカバーまたはコーティング192と、らせん状アンカー30に結合された固定具システム190とを有するらせん状アンカー30の断面図を示す。らせん状アンカー30の巻線またはコイル32が、バルーン140の膨張により共にどのように駆動され得るかに関しては先に説明した。また、バルーンの膨張は、らせん状アンカー30の巻線32同士を一体的に駆動または移動させて、返し190の貫通を増大させる。
図12B〜
図12Eの返し190は、らせん状アンカー30の中心軸に対して斜めに配向されるが、返し190は、代わりに、膨張するバルーン140によりらせん状コイル32同士が共に圧迫されることにより駆動されて、らせん状アンカー30の隣接する巻線またはコイル32に向かって直線的ならせん状アンカー30の軸に対して直線方向または平行方向に展開し得る。拡張により、らせん状アンカー30の端部30a、30bは、大幅に動くが、アンカー30の中心部は、大幅には旋回または回転しない。斜め配向を有さない返し190は、中心コイル32にて好ましい場合がある。返し190の角度は、拡大してもよく、返し190の長さは、バルーン140の膨張時の動きがより顕著となるらせん状アンカー30の端部30a、30bに近いエリアでは拡大され得る。
図12Dは、らせん状アンカー30の上面図を示す。バルーンカテーテル140が膨張されることにより、らせん状アンカー30は、直径が拡張し、らせん状アンカー30の端部30a、30bは、この直径拡張を可能にするように回転する。
図12Eに示すように、らせん状アンカー30の拡張は、返し190を準備させまたは展開させ、返し190は、中間または中央の巻線またはコイル32の中の繊維または他の材料のコーティング192に係入する。これは、らせん状アンカー30の巻線またはコイル32同士を共にロックする。
図12Eには、いかなる天然弁弁葉組織も図示されないが、弁葉組織は、巻線またはコイル32同士の間に位置することが可能であり、返し190は、天然僧帽弁組織にらせん状アンカー30をさらに固定するために弁葉組織を伴い弁葉組織に係合することが可能である点が理解されよう。
【0078】
図13A〜
図13Cは、アンカー30の端部に比較的より大きな直径の巻線またはコイル32を、およびらせん状アンカー30の中間または中央部分に比較的より小さな巻線を有するらせん状アンカー30が使用される別の実施形態を示す。らせん状アンカー30は、返し190に装着され、繊維または他の材料などの適切なコーティング材料192により覆われる。バルーン140が膨張されるとき、らせん状アンカー30の端部は、移動し始め、返し190は、中央のより小さならせん状巻線30が外方に拡張されると作動される。この特定の構成は、患者の天然僧帽弁に装着するのに理想的である。らせん状アンカー30の1つの返し付き巻線またはコイル32が、天然僧帽弁弁葉の上方に配置されてもよく、1つの返し付き巻線またはコイル32が、天然僧帽弁弁葉の下方に配置されてもよい。より小さな直径の巻線またはコイル32が、天然僧帽弁弁葉の上方または下方に載置され得る。バルーン(図示せず)が膨張されると、天然僧帽弁弁葉の上方および下方の大きならせん状巻線またはコイル32は、
図8A〜
図8Dにおいて概略的に示し上述したように相互方向に駆動されることになる。また、アンカー端部が回転し、返し190は、天然弁輪の付近のより大きな巻線またはコイル32同士の間に位置決めされた僧帽弁弁葉組織を貫通して展開することになる。また、2つの大きならせん状巻線またはコイル32は、返し190が僧帽弁組織を横断し、天然僧帽弁の反対側でらせん状コイル32上のカバー192を貫通することにより、共に結合され得る。これらの動作は、らせん状アンカー30の巻線またはコイル32同士の間に僧帽弁を捕獲することになるが、これが生じることは必須ではない。また、らせん状アンカー30の両端部の大きな直径の巻線またはコイル32は、バルーンが拡張されるにつれて直径がより小さくなる点が明らかである。これに関して、上方および下方の巻線またはコイル32は、中間のコイルまたは巻線32に「寄与」する。これは、結果として上方および下方のコイル32の直径の縮小をもたらすことになる。コイル32が、天然僧帽弁外周部すなわち弁輪に固定された後に、これは、結果として僧帽弁の直径のサイズ縮小をもたらすことになり、すなわち弁輪形成術手技が結果として得られる。返し190が、天然僧帽弁組織中にしっかりと保持されると、返し190は、嵌通後に外れないまたは抜けない。
図13Cは、
図13Bのらせん状アンカー30と、返しシステム190および繊維または他の材料などのコーティング192との断面図を示す。先述のように、返し190は、コイル32に対してほぼ90°の角度でらせん状アンカー30から直接的に展開し得る。これは、
図8A〜
図8Dに関連して上述したように相互に対してコイル32同士を単に圧迫することによって駆動され得る。また、らせん状コイルまたはアンカー巻線32の長手方向または回転方向への移動により、返し190または他のタイプの固定具は、らせん状アンカー30の巻線またはコイル32に対してより平行または斜めである方向に適用され得る。
【0079】
図14A〜
図14Cは、らせん状アンカー30の異なる構成を示す。このアンカー30は、ほぼ4つのコイル32を有する。2つの上方コイル32が存在し、それに続いて接合セグメント32a(間隙セグメント)が存在する。接合セグメント32aは、典型的には、弁葉の上方に載置されたアンカー30のコイル32を弁葉の下方に(心房内および心室内のそれぞれ)載置されたアンカー30のコイル32から分離させるために使用される。接合セグメント32aの端部の2つの上方コイル32と同様のサイズのコイル32bが存在する。これは、アンカー30上の最下コイル32bである。最終コイル32cは、方向を変化させ、下方に続く代わりに、上方に巻き戻り、アンカー30の隣接するコイル32に重畳または交差する。このコイル32cは、
図14Bでは「より大きな回旋」として示される。この図は、最終コイル32cが上方に向けられるのを可能にするアンカー30の方向変化(接合セグメントなどの)を示す。また、最終コイル32cは、他のコイルの外部上に載置し得るようにより大きい。このより大きなコイル32cは、アンカー30の中間コイルであるが、実際には送達時に初めに天然弁内に送られる。このアンカー30の重要な特徴は、アンカー30が定位置に送られることにより、接合セグメント32aの上方屈曲部が、アンカー30を弁輪に向かって上方に付勢する点である。このアンカー30は、2つのコイルが弁葉の上方におよび2つのコイルが弁葉の下方にある状態で位置決めされると、アンカー30のより大きなコイル32cが僧帽弁弁輪の直下に載置される状態で載置される。アンカー30は、心室内に落下する傾向を有さない。最下コイルは、側部から見た場合(X字になる)に同一点で必ずしも交差しなくてもよい。最下コイルは、例えば両側で交差することが可能である。
【0080】
図14A〜
図14Cの実施形態における重要な要素は、僧帽弁の直下の位置にアンカー30を駆動するアンカー30の端部の上方運動を結果としてもたらすために、アンカー30を定位置に送るためのものである。このアンカーが「ねじ込まれる」ことにより、最下コイル32bは、僧帽弁弁輪に対して上方にアンカー30を付勢する。また、アンカー30の中間のより大きな直径のコイル32cは、弁葉の直下および弁輪の付近へのアンカー30の位置決めを補助する。僧帽弁弁輪は、ある特定の直径を有し、最大アンカーコイル32cの直径にこの直径を合致させることにより、アンカー30は、弁輪の直下に載置されることが可能となる。このコイル32cが小さすぎる場合には、アンカー30は、弁葉組織に対して引っ掛かり、アンカー30が配置された場合に弁輪に向かって上方に駆動するのを阻止することが可能となる。また、アンカー30の交差するコイル32a、32bは、アンカー30を使用する場合の弁の固定に有用となり得る点が理解されよう。交差するコイル32aは、このアンカー30の最下コイルにて生じる。しかし、交差するセグメント32aは、任意の位置に生じ得る。交差するセグメント32aは、アンカー30の頂部で、中間部で、または底部で生じ得る。交差量もまた多様であることが可能である。ここで、交差は、最下の2つのコイル32を含む。重畳するより多数のコイルが存在することが可能である。
図14Cは、最下コイルが前のコイルの外部に位置する状態にある、重畳するコイル32aを示す。重畳するコイル32aまたは交差するセグメントは、前のコイルの内部にて生じ得る。
図14Cは、重畳させるためのピッチの急激な変化も示す。また、重畳は、ピッチの緩やかな変化によっても生じ得る。
図14A〜
図14Cでは、上下間寸法および側部間寸法の両方におけるコイル間の間隔が、明瞭化のために誇張されている。これらのコイルは、頂部および底部から中央に向かって圧縮力を印加することになる。
【0081】
図14A〜
図14Cに示す構成の主要な利点は、弁を装着するために使用可能なコイル32の個数が増加されるが、アンカー30の長さが増加しない点である。これにより、より短いアンカーが可能となる。例えば、弁10が心房42のより近くに載置され得るように、左心室40内に位置決めされたアンカーの長さがより短いことが有用となり得る。重畳するまたは交差するコイル32aは、所望の様式で交差し、強力な力でおよび左心室40の内部の全長がより短い状態で弁10が保持されるのを可能にし得る。また、アンカーの重畳部32aは、天然弁弁葉12a、12bが載置されている高さに位置決めされ得る。これは、弁葉12a、12bの捕獲を強め、すなわちアンカー30は、重畳するコイルがそれらの間に弁葉を有するように位置決めされ得る。アンカー30のコイル32同士の間の間隙が、十分に小さい場合には、弁葉12a、12bは、追加の固定具を必要とせずにコイル32同士の間に捕獲され得る。また、この構成は、アンカー30またはアンカー30により装着もしくは案内される固定システムに固定されるように弁葉12a、12bを位置決めし得る。また、この特定のアンカー構成は、アンカーコイル32の最下コイルが、アンカー30の残りの部分とは逆方向に延在する、すなわち他のコイル32が下方に付勢される一方で、これが上方に付勢されるため、有用である。このアンカー30が、定位置に送られると、最下コイル32bは、上方へと移動して戻る傾向となる。これは、事実上の逆ねじを実際に生じさせることになる。典型的ならせん状アンカーが、コルクスクリューのように弁葉12a、12bにねじ込まれ、回転されることにより下方に動く。この構成では、アンカー30の第1のコイルが弁12内に回転され、接合セグメント32aに到達すると、アンカー30は、最下コイル32bが中に回転されるにつれて、実際に下方ではなく上方に回転し始める。これは、この特定のアンカー構成が弁輪12の直下に載置される傾向となることを意味する。これは、弁輪12の下側付近へのアンカー30の最適な位置決めに有用である。弁輪12から離れて弁葉12a、12bに装着されるアンカー30は、心臓が収縮することにより移動および搖動する傾向となる。これは、心臓が拍動することにより、弁輪12から離れるように弁葉が動くことに起因する。対照的に、弁輪12自体は、心臓が拍動することにより非常にわずかに動く。弁輪12のより近くに(弁葉から離れて)アンカー30を配置することにより、アンカー30の移動量は減少する。心臓は、毎日約100,000回拍動する。この反復運動が、アンカーおよび弁の外れるリスクをもたらすことになる。したがって、弁輪12の付近にアンカー30を配置することによりこの運動を最小限に抑えることによって、弁インプラントの機能不全リスクが低下することになる。
図14A〜
図14Cでは、アンカーコイル32の交差点は共に、アンカー30の同一側に位置する。これがX字を生じさせる。交差点は、同一側にて生じる必要はない。例えば、交差点は、アンカー30の両側に位置することが可能である。
【0082】
本発明は、好ましい実施形態の説明により例示され、これらの実施形態は、幾分か詳細に説明されたが、かかる詳細に添付の特許請求の範囲を制限するまたはいかなる意味においても限定することは、本出願人の意図するところではない。さらなる利点および変更形態が、当業者には容易に明らかになろう。本発明の様々な特徴およびコンセプトは、実施者の必要および好みに応じて単独でまたは任意の組合せで使用されてもよい。これは、現時点で分かっているような本発明の好ましい実施方法に即した本発明の説明である。しかし、本発明自体は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。