【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、カラムとプレフィルタとを有する液体クロマトグラフィー用部材であって、前記充填剤粒子は、平均粒径が2〜20μmであり、かつ、前記プレフィルタは、濾過粒度が前記充填剤粒子の平均粒径の1/6〜1/3である液体クロマトグラフィー用部材である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の液体クロマトグラフィー用部材は、カラムとプレフィルタとを有する。
上記カラムは、筒状容器内に充填剤粒子が充填されたものである。
上記充填剤粒子としては、シリカなどの無機系粒子、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの樹脂からなる有機系粒子、これらの粒子の表面にイオン交換基を結合させたものなどが挙げられる。
【0012】
上記充填剤粒子の平均粒径の下限は2μm、上限は20μmである。上記充填剤粒子の平均粒径が2μm未満であると、カラムの通液圧力が高くなりすぎて装置への負担が大きくなりすぎる。上記充填剤粒子の平均粒径が20μmを超えると、分離性能が低下し、例えばヘモグロビンA1cの測定に用いた場合にはヘモグロビン類の分離が不充分となる。上記充填剤粒子の平均粒径の好ましい下限は6μm、好ましい上限は12μmである。
上記充填剤粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定される。
【0013】
上記カラムの内径の好ましい下限は2.0mm、好ましい上限は6.0mmである。上記カラムの内径が2.0mm未満であると、カラム内を流れる移動相の線速度が高くなりすぎて、通液圧力が上昇しすぎることがある。上記カラムの内径が6.0mmを超えると、カラム内における検体や移動相の拡散が起こりすぎて、分離性能が低下することがある。上記カラムの内径のより好ましい下限は3.0mm、より好ましい上限は5.0mmである。
【0014】
上記カラムの長さの好ましい下限は10mm、好ましい上限は50mmである。上記カラムの長さが10mm未満であると、理論段数の低下に伴って分離性能が低下することがある。上記カラムの長さが50mmを超えると、検体の溶出に時間がかかって測定時間が長くなったり、通液圧力が高くなったりすることがある。上記カラムの長さのより好ましい下限は15mm、より好ましい上限は40mmである。
【0015】
上記カラムの上流側及び下流側には、カラム内の充填剤粒子が筒状容器から漏れ出るのを防止するためのフィルタが配置されているのが好ましい。このフィルタは、異物を捕捉するためのものではなく、充填剤粒子が筒状容器から漏れ出るのを防止することができればよいが、後述するプレフィルタが、カラムと一体化され、カラムに極めて近接して設置されている場合には、上流側のフィルタは省略し、プレフィルタによりカラム内の充填剤粒子が筒状容器から漏れ出るのを防止してもよい。
【0016】
上記プレフィルタは、例えば、紙、樹脂、金属などからなるものを用いることができる。なかでも、特開2006−189427号公報に記載された孔径の異なる3層からなる構造を有するステンレス製のフィルタが好適である。
上記プレフィルタの濾過面の形状は、円状であっても、その他の形状でもよい。
【0017】
上記プレフィルタは、濾過粒度が上記充填剤粒子の平均粒径の1/6〜1/3である。これにより、プレフィルタで捕捉されずプレフィルタを通過する異物は、カラム内の充填剤粒子の間隙を通ってカラムでも捕捉されず通過することから、プレフィルタ及びカラムの詰まりが抑制される。上記プレフィルタの濾過粒度が上記充填剤粒子の平均粒径の1/6未満であると、プレフィルタの詰まりの発生時期が、カラムの詰まりの発生時期に比べて著しく早くなり、頻繁にプレフィルタを交換する必要が生じる。上記プレフィルタの濾過粒度が上記充填剤粒子の平均粒径の1/3を超えると、プレフィルタの詰まりは遅くなるものの、カラムの充填剤粒子の間隙に異物が詰まってしまい、分離性能が低下してしまう。好ましくは、濾過粒度は、上記充填剤粒子の平均粒径の1/5〜1/3である。
【0018】
なお、上記濾過粒度は、粒径が既知の標準粒子を濾過したときに、プレフィルタでの標準粒子の捕捉率が95%以上となる粒径のことを意味する。上記標準粒子としては、例えば、モリテックス社製のポリスチレン製標準粒子が市販されている。
上記標準粒子の捕捉率(%)は以下の方法により測定される。
プレフィルタを液体クロマトグラフに接続し、移動相として純水を送液する。標準粒子検体を一般的な送液速度、例えば1.7mL/minで流し、得られるクロマトグラムのピーク面積(1)を算出する。ピーク面積(1)は、プレフィルタで捕捉されずに通過した標準粒子の量を反映している。
次に、上記プレフィルタを配管に変えて、同様の標準粒子検体を流し、得られるクロマトグラムのピーク面積(2)を算出する。ピーク面積(2)は、流した標準粒子の量を反映している。
ピーク面積(1)及びピーク面積(2)から、以下の式により標準粒子の捕捉率(%)が算出される。
標準粒子の捕捉率(%)=100−(ピーク面積(1)/ピーク面積(2))×100
【0019】
上記プレフィルタの有効濾過面積の好ましい下限は7mm
2、好ましい上限は80mm
2である。上記プレフィルタの有効濾過面積が7mm
2未満であると、異物を捕捉できる範囲が狭いために、プレフィルタが詰まりやすくなる。上記プレフィルタの有効濾過面積が80mm
2を超えると、プレフィルタ内における検体又は移動相の拡散が起こりすぎ、分離性能が低下することがある。上記プレフィルタの有効濾過面積のより好ましい下限は12mm
2、より好ましい上限は65mm
2である。
【0020】
上記プレフィルタの厚さの好ましい下限は0.1mm、好ましい上限は10mmである。上記プレフィルタの厚さが0.1mm未満であると、プレフィルタが詰まりやすくなる。上記プレフィルタの厚さが10mmを超えると、プレフィルタ内における検体又は移動相の拡散が起こりすぎ、分離性能が低下することがある。上記プレフィルタの厚さのより好ましい下限は0.2mm、より好ましい上限は3mmである。
【0021】
上記プレフィルタの空隙率の好ましい下限は60%である。上記プレフィルタの空隙率が60%未満であると、プレフィルタが詰まりやすくなる。上記プレフィルタの空隙率のより好ましい下限は65%である。上記プレフィルタの空隙率の上限は、あまり高くなると所望の濾過粒度が得られなくことがあるので、90%が好ましい。
【0022】
本発明の液体クロマトグラフィー用部材は、上記カラムとプレフィルタとが別々に配置されていてもよく、1つの筒状容器内に一体化されて配置されていてもよい。いずれの場合も、プレフィルタがカラムの上流となるように装置の配管に結合される。
【0023】
上記カラムとプレフィルタとが別々に配置されている場合には、上記カラムとプレフィルタとを別々に交換することができる。一方、上記カラムとプレフィルタとが一体化されて配置されている場合には、上記カラムとプレフィルタを一括して交換することができることから交換作業が容易であることに加え、空間占有容積低減により装置の小型化も可能となる。更に、カラムとプレフィルタとを一体化した場合には、カラムとプレフィルタとの間が実質的にゼロ距離となるので、カラムとプレフィルタとの間で検体や移動相の拡散がほとんど生じない。そのため、分離性能が向上し、測定時間をより短縮することができる。
【0024】
上記筒状容器は、適当な強度を有する材料から構成され、中に充填剤粒子、或いは充填剤粒子及びプレフィルタが収容可能となっている。筒状容器を構成する材料としては、例えば、ステンレスやチタンなどの金属、フッ素樹脂やポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂、ガラスなどが挙げられる。
上記筒状容器は、一体成型されたものであってもよく、分解可能なものであってもよい。
【0025】
上記プレフィルタや筒状容器は、非特異吸着を防止する目的で表面処理が施されていることが好ましい。表面処理とは、表面に化学的処理及び/又は物理的処理を施すことにより、その性質を改変することを意味する。具体的には、例えば、加熱や酸などによる酸化反応により表面を改変する方法、親水性物質や疎水性物質などの所望の特徴を有する物質を被覆するブロッキング処理などが挙げられる。ブロッキング処理で用いる物質としては、ウシ血清アルブミン、グロブリン、ラクトフェリン、スキムミルクなどの蛋白質や、シリコーン、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0026】
本発明は、カラムに収納される充填剤粒子の平均粒径と、プレフィルタの濾過粒度との組み合わせを調整することにより、プレフィルタの寿命が非常に長くなる。そのため、カラムとプレフィルタの交換頻度を同程度にすることができる。
また、カラムとプレフィルタの交換頻度が同程度であるので、カラムの使用期間中、カラムの上流に設置されるプレフィルタの交換が不要であり、また、カラムとプレフィルタとを一体化させることにより、交換作業を更に容易にし、空間占有容積低減により装置の小型化が可能となる。
【0027】
本発明には、充填剤粒子が充填されたカラムと、プレフィルタ本体とが、1つの筒状容器内に一体化されて配置された液体クロマトグラフィー用部材も含まれる。
例えば、液体クロマトグラフィー用部材を上記プレフィルタ及び上記カラムを有するものとすることで、カラム及びプレフィルタの交換頻度を同程度とすることができる。
交換頻度が同程度であるカラムとプレフィルタとを1つの筒状容器内に一体化して配置することで、1回の交換作業でカラム及びプレフィルタを交換することができ、交換作業を効率的に行うことができる。さらに、カラムとプレフィルタとの間が実質的にゼロ距離となるので、カラムとプレフィルタとの間で検体や移動相の拡散がほとんど生じない。そのため、分離性能が向上し、測定時間をより短縮することができる。
【0028】
図1に、上記カラムとプレフィルタとが別々に配置されている本発明の液体クロマトグラフィー用部材の一例を示した。
図2に、上記カラムとプレフィルタとが1つの筒状容器内に一体化されて配置されている本発明の液体クロマトグラフィー用部材の一例を示した。