特許第6876680号(P6876680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876680ネオモルフィックSF3B1変異体に関連するスプライスバリアント
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876680
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ネオモルフィックSF3B1変異体に関連するスプライスバリアント
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6876 20180101AFI20210517BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20210517BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20210517BHJP
   C12Q 1/6874 20180101ALI20210517BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20210517BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20210517BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210517BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20210517BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALN20210517BHJP
   C12N 15/115 20100101ALN20210517BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20210517BHJP
【FI】
   C12Q1/6876 ZZNA
   C12Q1/02
   C12Q1/686 Z
   C12Q1/6874 Z
   C12Q1/6869 Z
   C12Q1/6841 Z
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   !C12Q1/6886 Z
   !C12N15/115 Z
   !C12N15/113 Z
【請求項の数】28
【全頁数】98
(21)【出願番号】特願2018-510109(P2018-510109)
(86)(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公表番号】特表2018-525994(P2018-525994A)
(43)【公表日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】US2016049490
(87)【国際公開番号】WO2017040526
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】62/212,876
(32)【優先日】2015年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】ユー, リーファ
(72)【発明者】
【氏名】リム, キアン, ヒュ
(72)【発明者】
【氏名】フィアラ, ジャコブ, ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ブオナミーチ, シルヴィア
(72)【発明者】
【氏名】水井 佳治
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ピーター, ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ズー, ピン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ユニス, サン
(72)【発明者】
【氏名】セイラー, マイケル, ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】フェッケス, マルコ, ピーター
【審査官】 西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−184887(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/129427(WO,A1)
【文献】 Kenichi Yoshida,Frequent pathway mutations of splicing machinery in myelodysplasia,NATURE,2011年,Vol.478,p.64-69
【文献】 Simon J. Furney,SF3B1 Mutations AreAssociated with Alternative Splicing in Uveal Melanoma,CANCER DISCOVERY,2013年 7月16日,p.1122-1129
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
C12N 15/00−15/90
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生物疾患を有する患者を治療するための、SF3B1調節化合物を含む組成物であって、患者からの試料が、配列番号41、配列番号61、配列番号101、配列番号160及び配列番号230からなる群から選択される1つ又は複数のスプライスバリアントを発現する場合に患者に投与されるためのものであることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記試料が、配列番号101、配列番号160及び配列番号230からなる群から選択される1つ又は複数のスプライスバリアントを発現する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記試料が、配列番号41、配列番号61、配列番号101、配列番号160及び配列番号230を含む5つのスプライスバリアントを発現する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記試料が、少なくとも一つの追加的なスプライスバリアントを発現する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記試料が、1つ又は複数の細胞、血液若しくは血液画分、及び/又は組織生検を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記試料が、血液がん又は固形腫瘍からのものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
血液がんが、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、及び多発性骨髄腫から選択され、並びに/又は、
固形腫瘍が、乳がん、肺がん、肝臓がん、前立腺がん、膵臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸部がん、及び腎がんから選択される、請求項6の組成物。
【請求項8】
SF3B1調節化合物が、プラジエノライド又はプラジエノライド類似体を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
プラジエノライド類似体が、プラジエノライドB、プラジエノライドD、E7107、式1:


の化合物、式2:


の化合物、式3:


の化合物、及び式4:


の化合物から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
SF3B1調節化合物が、式2:


の化合物を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
1つ又は複数のスプライスバリアントの発現を、ネオモルフィックSF3B1変異を有する新生物疾患を有する患者を同定するための指標として使用する方法であって、
a)患者からの試料における、配列番号41、配列番号61、配列番号101、配列番号160及び配列番号230から選択される1つ又は複数のスプライスバリアントの発現を決定すること、並びに
b)前記試料が1つ又は複数のスプライスバリアントを発現する場合には、前記患者をネオモルフィックSF3B1変異を有する新生物疾患を有すると同定すること、を含む、方法。
【請求項12】
1つ又は複数のスプライスバリアントの発現を決定することが、前記試料を、前記1つ又は複数のスプライスバリアントと特異的にハイブリダイズすることができる1つ又は複数の核酸プローブと接触させることと、前記1つ又は複数のプローブの前記1つ又は複数のスプライスバリアントへの結合を検出することとを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数のプローブが、標識及び/又は分子バーコードを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ネオモルフィックSF3B1変異が、E622D、E622K、E622Q、E622V、Y623C、Y623H、Y623S、R625C、R625G、R625H、R625L、R625P、R625S、N626D、N626H、N626I、N626S、N626Y、H662D、H662L、H662Q、H662R、H662Y、T663I、T663P、K666E、K666M、K666N、K666Q、K666R、K666S、K666T、Q698_K700delinsQ、K700E、K700_V701delinsN、V701A、V701F、V701I、I704F、I704N、I704S、I704V、G740E、G740K、G740R、G740V、K741N、K741Q、K741T、G742D、D781E、D781G、及びD781Nから選択される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記試料が少なくとも一つの追加的なスプライスバリアントを発現する、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が1つ又は複数の細胞、血液若しくは血液画分、及び/又は組織生検を含む、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記試料が、血液がん又は固形腫瘍からのものである、請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
血液がんが、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、及び多発性骨髄腫から選択され、並びに/又は、
固形腫瘍が、乳がん、肺がん、肝臓がん、前立腺がん、膵臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸部がん、及び腎がんから選択される、請求項17の方法。
【請求項19】
1つ又は複数のスプライスバリアントの発現レベルを、新生物疾患を有する患者における治療の有効性をモニタリングするための指標として使用する方法であって、
a)SF3B1調節化合物を投与する前の患者からの試料における、配列番号41、配列番号61、配列番号101、配列番号160及び配列番号230から選択される1つ又は複数のスプライスバリアントの発現レベルを決定すること、並びに
b)SF3B1調節化合物を投与した後の患者からの試料における、前記1つ又は複数のスプライスバリアントの発現レベルを決定すること、を含み、
前記1つ又は複数のスプライスバリアントの発現レベルの低下が有効な治療を示す、方法。
【請求項20】
1つ又は複数のスプライスバリアントの発現レベルを決定することが、核酸バーコーディング、RT−PCR、マイクロアレイ、核酸シークエンシング、ナノ粒子プローブ、及び/又はin situハイブリダイゼーションを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つ又は複数のスプライスバリアントの発現レベルを決定することが、核酸バーコーディングを含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記試料が、少なくとも一つの追加的なスプライスバリアントを発現する、請求項19〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記試料が1つ又は複数の細胞、血液若しくは血液画分、及び/又は組織生検を含む、請求項19〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記試料が、血液がん又は固形腫瘍からのものである、請求項19〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
血液がんが、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄異形成症候群、及び多発性骨髄腫から選択され、並びに/又は、
固形腫瘍が、乳がん、肺がん、肝臓がん、前立腺がん、膵臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸部がん、及び腎がんから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
SF3B1調節化合物が、プラジエノライド又はプラジエノライド類似体を含む、請求項19〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
プラジエノライド類似体が、プラジエノライドB、プラジエノライドD、E7107、式1:


の化合物、式2:


の化合物、式3:


の化合物、及び式4:


の化合物から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
SF3B1調節化合物が、式2:


の化合物を含む、請求項19〜27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[003]スプライソソームによって編成される、高度に制御された分子事象であるRNAスプライシングの結果、mRNA前駆体からイントロン配列が除去されて成熟mRNAが生成される。RNAスプライシングの制御不全は、いくつかの疾患の原因となる欠陥であると同定されている。さらに、制御不全スプライシングは、腫瘍形成及び療法に対する抵抗性に重要な役割を果たすことが提唱されている;しかし、がんにおける制御不全スプライシングの原因分子は依然として捕らえられていない。
【0002】
[004]SF3B1は、RNAスプライシングに関与するタンパク質である。SF3B1は、mRNA前駆体に、枝分かれ部位を含有する領域において結合し、3’スプライス部位(3’ss)におけるスプライソソームの初期の認識及び安定化に関与するU2 snRNP複合体の一部を形成する。SF3B1変異の影響の詳細な及び系統的な分析は、細胞におけるRNAスプライシングに対するSF3B1変異の影響を定義するために必要であり、またSF3B1変異体がんに対する新規の治療的手法を導く可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
[005]本明細書において提供される説明は、ある特定のSF3B1変異により、公知の及び新規のスプライシングの変化の生成を伴うネオモルフィック活性がもたらされることを実証するものである。さらに、系列特異的スプライシング異常が慢性リンパ球性白血病(CLL)、黒色腫、及び乳がんにおいて同定された。さらに、SF3B1変異体がん細胞株、異種移植片、及びCLL患者試料をSF3B1の調節因子で処理することにより、異常スプライシングが低減し、腫瘍退縮が誘導された。
【0004】
[006]本明細書に記載の方法は、ネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質を含有する細胞における1種又は複数種のスプライスバリアントの発現を検出又は数量化することを伴う。本発明の種々の実施形態は、スプライスバリアントを検出又は数量化して、患者が1つ又は複数のネオモルフィックSF3B1変異を伴うがんを有するかどうかを決定することを含む。さらなる実施形態は、スプライスバリアントの量を測定して、変異体SF3B1タンパク質に対する化合物の影響を評価することを含む。別の実施形態は、ネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質を有するがん細胞を有する患者を治療する方法を含む。
【0005】
[007]種々の実施形態は、生体試料中の表1の1〜790行目から選択される1種又は複数種のスプライスバリアントを検出する方法であって、
a)1種又は複数種のスプライスバリアントを含有する疑いがある生体試料を用意するステップと、
b)生体試料を、1種又は複数種のスプライスバリアントと特異的にハイブリダイズすることができる1種又は複数種の核酸プローブと接触させるステップと、
c)1種又は複数種のプローブの1種又は複数種のスプライスバリアントへの結合を検出するステップと、を含む方法を包含する。
【0006】
[008]一部の実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントと特異的にハイブリダイズすることができる1種又は複数種の核酸プローブは、それぞれが標識を含む。一部の実施形態では、生体試料中の表1の1〜790行目から選択される1種又は複数種のスプライスバリアントを検出する方法は、生体試料を、それぞれが分子バーコードで標識された1種又は複数種の追加的な核酸プローブと接触させるステップをさらに含む。
【0007】
[009]実施形態は、標的細胞におけるネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質の活性を調節する方法であって、SF3B1調節化合物を標的細胞に適用するステップであり、標的細胞が、表1の1〜790行目から選択される1種又は複数種の異常スプライスバリアントを、ネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質を有さない細胞におけるレベルと比較して上昇又は低下したレベルで発現することが決定されたものである、ステップを含む方法をさらに包含する。
【0008】
[010]実施形態は、化合物の、標的細胞におけるネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質の活性を調節する能力を評価するための方法であって、
a)変異体SF3B1タンパク質を有する標的細胞を用意するステップと、
b)化合物を標的細胞に適用するステップと、
c)表1の1〜790行目から選択される1種又は複数種のスプライスバリアントの発現レベルを測定するステップと
を含む方法も包含する。
【0009】
[011]一部の実施形態では、化合物の、標的細胞におけるネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質の活性を調節する能力を評価するための方法は、ステップ(b)の前に、表1の1〜790行目から選択される1種又は複数種のスプライスバリアントの発現レベルを測定するステップをさらに含む。
【0010】
[012]一部の実施形態では、ネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質は、K700E、K666N、R625C、G742D、R625H、E622D、H662Q、K666T、K666E、K666R、G740E、Y623C、T663I、K741N、N626Y、T663P、H662R、G740V、D781E、又はR625Lから選択される。一部の実施形態では、ネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質は、E622D、E622K、E622Q、E622V、Y623C、Y623H、Y623S、R625C、R625G、R625H、R625L、R625P、R625S、N626D、N626H、N626I、N626S、N626Y、H662D、H662L、H662Q、H662R、H662Y、T663I、T663P、K666E、K666M、K666N、K666Q、K666R、K666S、K666T、K700E、V701A、V701F、V701I、I704F、I704N、I704S、I704V、G740E、G740K、G740R、G740V、K741N、K741Q、K741T、G742D、D781E、D781G、又はD781Nから選択される。
【0011】
[013]一部の実施形態では、核酸バーコーディング(例えば、ナノストリング(NanoString)(登録商標))、RT PCR、マイクロアレイ、核酸シークエンシング、ナノ粒子プローブ(例えば、スマートフレア(SmartFlare)(商標))、及びin situハイブリダイゼーション(例えば、RNAスコープ(RNAscope)(登録商標))から選択される、核酸を数量化するためのアッセイを使用して1種又は複数種のスプライスバリアントの発現レベルを測定するステップを含む。
【0012】
[014]一部の実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントの発現レベルを測定するステップは、標的細胞における1種又は複数種のスプライスバリアントRNAのコピー数を測定することを含む。
【0013】
[015]さらなる実施形態では、化合物は、小分子、抗体、アンチセンス分子、アプタマー、RNA分子、及びペプチドから選択される。さらなる実施形態では、小分子は、プラジエノライド及びプラジエノライド類似体から選択される。追加的な実施形態では、プラジエノライド類似体は、プラジエノライドB、プラジエノライドD、E7107、式1:
【化1】

の化合物、式2:
【化2】

の化合物、式3:
【化3】

の化合物、又は式4:
【化4】

の化合物から選択される。
【0014】
[016]一部の実施形態では、標的細胞は、骨髄異形成症候群、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄単球性白血病、又は急性骨髄性白血病を有する疑いがある患者から得たものである。一部の実施形態では、標的細胞は、血液若しくは血液画分から選択される試料から得たものである又は血液若しくは血液画分から選択される試料から得た細胞に由来する培養細胞である。一部の実施形態では、標的細胞は、リンパ球である。
【0015】
[017]さらなる実施形態では、標的細胞は、固形腫瘍から得たものである。一部の実施形態では、標的細胞は、乳房組織細胞、膵臓細胞、肺細胞、又は皮膚細胞である。
【0016】
[018]一部の実施形態では、異常バリアントのうちの1つ又は複数は、表1の1、7、9、10、13、15、16、18、21、24、27、28、30、31、33、34、48、51、62、65、66、71、72、81、84、89、91、105、107、121、135、136、152、178、235、240、247、265、267、272、276、279、282、283、286、292、295、296、298、302、306、329、330、331、343、350、355、356、360、364、372、378、390、391、423、424、425、426、431、433、438、439、443、445、447、448、451、452、458、459、460、462、468、469、472、500、508、517、519、521、524、525、527、528、530、533、536、540、543、548、545、554、556、559、571、573、580、582、583、597、601、615、617、618、639、640、654、657、666、670、680、727、730、750、758、767、又は774行目から選択される。
【0017】
[019]一部の実施形態では、異常バリアントのうちの1つ又は複数は、表1の21、31、51、81、118、279、372、401、426、443、528、543、545、548又は566行目から選択される。
【0018】
[020]実施形態は、新生物疾患を有する患者を治療するための方法であって、治療有効量のSF3B1調節化合物を患者に投与するステップであり、患者由来の細胞が、
a)ネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質を含有すること、及び
b)表1の1〜790行目から選択される1種又は複数種の異常スプライスバリアントを、ネオモルフィック変異体SF3B1タンパク質を有さない細胞におけるレベルと比較して上昇又は低下したレベルで発現することが決定されたものである、ステップを含む方法をさらに包含する。
【0019】
[021]さらなる実施形態は、続く説明に記載されている。
【0020】
[022]前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はどちらも単に例示的及び説明的なものであり、特許請求された本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】代替スプライシングの様式を示す概略図である。
図2】患者試料における、種々のがんにわたって正常にスプライシングされない遺伝子についての遺伝子発現のレベルを示すグラフである。
図3】SF3B1タンパク質及び対応するSF3B1遺伝子のコード領域におけるある特定のネオモルフィック変異の位置を示す概略図である。
図4】ナノストリング(登録商標)アッセイを使用した、膵臓がん同質遺伝子細胞株、肺がん同質遺伝子細胞株、及びNalm−6同質遺伝子細胞株から単離されたRNAにおいて検出された異常スプライスバリアントのレベルを示すグラフである。データは3連反復実験の平均として示されている。
図5】293FT細胞におけるSF3B1タンパク質の過剰発現を確認するウエスタンブロット画像のセットである。
図6】ナノストリング(登録商標)アッセイで測定された、野生型SF3B1(SF3B1WT)又は変異体SF3B1タンパク質を発現する293FT細胞から単離されたRNAにおける異常スプライスバリアントのレベルを示すグラフである。データは3連反復実験の平均として示されている。
図7】293FT細胞におけるSF3B1タンパク質の過剰発現を確認するウエスタンブロット画像のセットである。
図8】ナノストリング(登録商標)アッセイで測定された、SF3B1WT又は変異体SF3B1タンパク質を発現する293FT細胞から単離されたRNAにおける異常スプライスバリアントのレベルを示すグラフである。
図9A】Panc 05.04細胞における、shRNAによるノックダウンの前後のSF3B1対立遺伝子の発現を示すウエスタンブロット画像のセットである。
図9B】全てのSF3B1対立遺伝子(SF3B1PAN)又はSF3B1WT又は変異体SF3B1(SF3B1MUT)対立遺伝子のshRNAによるノックダウンの前後の、Panc 05.04細胞におけるqPCRによって検出されたSF3B1 RNAのレベルを示すグラフである。qPCRデータは、ドキシサイクリンで処理していないpLKOに対する倍率変化として表されている(平均±SD、n=3)。黒い実線の棒、輪郭が描かれた棒、及び灰色の棒は、それぞれSF3B1PAN対立遺伝子特異的qPCRデータ、SF3B1WT対立遺伝子特異的qPCRデータ、及びSF3B1MUT対立遺伝子特異的qPCRデータを示す。
図10A】Panc 10.05細胞における、shRNAによるノックダウンの前後のSF3B1対立遺伝子の発現を示すウエスタンブロット画像のセットである。
図10B】SF3B1対立遺伝子のshRNAによるノックダウンの前後の、Panc 10.05細胞におけるqPCRによって検出されたSF3B1 RNAのレベルを示すグラフである。qPCRデータは、ドキシサイクリンで処理していないpLKOに対する倍率変化として表されている(平均±SD、n=3)。黒い実線の棒、輪郭が描かれた棒、及び灰色の棒は、それぞれSF3B1PAN対立遺伝子特異的qPCRデータ、SF3B1WT対立遺伝子特異的qPCRデータ、及びSF3B1MUT対立遺伝子特異的qPCRデータを示す。
図11】SF3B1対立遺伝子のshRNAによるノックダウンの前後の、ナノストリング(登録商標)アッセイで測定されたPanc 05.04細胞(図11A)及びPanc 10.05細胞(図11B)におけるスプライスバリアントのレベルを示すグラフのセットである。データは、3つの生物学的反復実験の平均として示されている。
図12】SF3B1対立遺伝子のshRNAによるノックダウンの前(丸)及び後(四角)のPanc 05.04細胞の成長曲線を示すグラフのセットである。
図13】SF3B1対立遺伝子のshRNAによるノックダウンの前(丸)及び後(四角)のPanc 10.05細胞の成長曲線を示すグラフのセットである。
図14】SF3B1対立遺伝子のshRNAによるノックダウンの前後のPanc 05.04細胞(図14A)及びPanc 10.05細胞(図14B)のコロニー形成を示す培養プレートの画像のセットである。
図15】種々の濃度のE7101で処理した、(図15A)FlagタグSF3B1WT又はSF3B1K700Eを発現する293F細胞由来の核抽出物におけるmRNA前駆体Ad2基質のスプライシングのレベルを示すグラフのセット(それぞれ左側のパネル及び右側のパネル[丸及び三角形])及び(図15B)Nalm−6(SF3B1WT)細胞及びNalm−6 SF3B1K700E細胞由来の核抽出物におけるmRNA前駆体Ad2基質のスプライシングのレベルを示すグラフのセット(それぞれ左側のパネル及び右側のパネル[丸及び三角形])である。データは、平均±SDとして示されている、n=2。
図16A】放射標識されたE7107類似体の、SF3B1WT(丸、左側のパネル)又はSF3B1K700E(三角形、右側のパネル)のいずれかへの、当該タンパク質を種々の濃度のE7107と一緒にインキュベートした後の結合を示すグラフの対である。
図16B】上のパネルは、qPCRによって測定された、種々の濃度のE7107で処理したNalm−6 SF3B1K700K細胞(左側のパネル)及びNalm−6 SF3B1K700E細胞(右側のパネル)におけるEIF4A1 mRNA前駆体(四角)及びSLC25A19成熟RNA(逆三角形)のレベルを示すグラフの対である。下のパネルは、qPCRによって測定された、種々の濃度のE7107で処理したNalm−6 SF3B1K700K細胞(左側のパネル)及びNalm−6 SF3B1K700E細胞(右側のパネル)における正常にスプライシングされなかった遺伝子COASY(三角形)及びZDHHC16(ひし形)の正常にスプライシングされなかったアイソフォームのレベルを示すグラフの対である。(図16B)におけるqPCRデータは、平均±SDとして示されている(n=3)。
図17】ナノストリング(登録商標)アッセイで測定された、Nalm−6 SF3B1K700K細胞及びNalm−6 SF3B1K700E細胞における、細胞をE7107を用いて2時間又は6時間にわたって処理した後のスプライスバリアントのレベルを示すグラフのセットである。データは、DMSOのみでの処理からの倍率変化として表されている。
図18】RNA−Seq解析によって測定された、Nalm−6 SF3B1K700K細胞及びNalm−6 SF3B1K700E細胞における、細胞をE7107を用いて6時間にわたって処理した後の、スプライスバリアントのレベルを示すグラフのセットである。
図19】RNA−Seq解析によって測定された、Nalm−6 SF3B1K700K細胞及びNalm−6 SF3B1K700E細胞における、細胞を、グラフの上に示されている番号が付された化合物で処理した後のスプライスバリアントのレベルを示すグラフのセットである。
図20】RNAのqPCRによって測定された、Nalm−6 SF3B1K700K細胞及びNalm−6 SF3B1K700E細胞における、細胞をE7107で処理した後の種々の時間におけるスプライスバリアントのレベルを示すグラフのセットである。データは、平均±SDとして示されている(n=3)。図20の上のパネルは、Nalm−6 SF3B1K700K細胞(左側のパネル)及びNalm−6 SF3B1K700E細胞(右側のパネル)における、E7107で処理した後のある特定の時間において検出されたEIF4A1 mRNA前駆体(四角)及びSLC25A19成熟RNA(逆三角形)のレベルを示す。図20の下のパネルは、Nalm−6 SF3B1K700K細胞(左側のパネル)及びNalm−6 SF3B1K700E細胞(右側のパネル)における、E7107で処理した後のある特定の時間において検出された正常にスプライシングされなかった遺伝子COASY(三角形)及びZDHHC16(ひし形)の正常にスプライシングされなかったアイソフォームのレベルを示す。白抜きの丸は、腫瘍試料の質量分析によって決定されたE7107の濃度を示す(μg/ml、[右側の垂直方向の軸])。
図21】ナノストリング(登録商標)アッセイで測定された、異種移植マウスをE7107で処置した後のある特定の時点における、Nalm−6 SF3B1K700K異種移植腫瘍及びNalm−6 SF3B1K700E異種移植腫瘍における標準スプライスバリアント及び異常スプライスバリアントのレベルを示すグラフのセットである(それぞれ左側及び右側のパネルのセット)。データは、3連反復実験の平均として示されている。
図22】ナノストリング(登録商標)アッセイで測定された、異種移植マウスを種々の濃度のE7107で処置した後のある特定の時点における、Panc 05.04異種移植腫瘍における標準スプライスバリアント及び異常スプライスバリアントのレベルを示すグラフのセットである(各群n=4のマウス)。
図23】E7107で処置した後のNalm−6 SF3B1K700E異種移植マウスにおける腫瘍体積(平均±SEMとして示されている)を示すグラフである。ビヒクルで処置した対照マウスが白抜きの丸で示されている(各群n=10の動物)。E7107で処置した動物について、逆三角形=1.25mg/kg、三角形=2.5mg/kg、及び四角=5mg/kg。
図24】E7107で処置した後のNalm−6 SF3B1K700E異種移植マウスの動物10匹のコホートにおける生存率を示すグラフである。無処置のコホートが黒い実線によって示されている。E7107で処置した動物について、破線=1.25mg/kg、灰色の線=2.5mg/kg、及び点線=5mg/kg。
図25】分析によって測定された、10nMのE7107で6時間にわたって処置した後のSF3B1WTCLL細胞試料及びネオモルフィックSF3B1変異体CLL細胞試料におけるスプライスバリアントのレベルを示すグラフのセットである。データは、平均値として示されている(n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[048]ある特定の態様では、本発明の方法は、細胞におけるスプライスバリアントの量を測定し、それにより、患者がネオモルフィックSF3B1変異を有するがんを有するかどうかを決定するためのアッセイを提供する。一部の実施形態では、測定されるスプライスバリアントの少なくとも1つは、SF3B1タンパク質におけるネオモルフィック変異に関連する異常スプライスバリアントである。追加的な態様では、細胞における変異体ネオモルフSF3B1タンパク質を調整する化合物の能力を評価するために、細胞におけるスプライスバリアントの測定を使用することができる。
【0023】
[049]本発明の理解の助けとなるように、最初に特定の用語を定義する。追加的な定義が本出願全体を通して提供される。
【0024】
[050]本明細書で使用される場合、「変異体SF3B1タンパク質」という用語は、配列番号1200に記載されているヒト野生型SF3B1タンパク質(GenBank受託番号NP_036565、Version NP_036565.2)(S.Bonnal、L.Vigevani、及びJ.Valcarcel、「The spliceosome as a target of novel antitumour drugs」、Nat.Rev.Drug Discov.11:847−59 [2012])とアミノ酸配列が異なるSF3B1タンパク質を包含する。ある特定の変異体SF3B1タンパク質は、「ネオモルフィック」変異体であり、これは、異常スプライスバリアントの差次的な発現に関連する変異体SF3B1タンパク質を指す。ある特定の実施形態では、ネオモルフィックSF3B1変異体は、K700E、K666N、R625C、G742D、R625H、E622D、H662Q、K666T、K666E、K666R、G740E、Y623C、T663I、K741N、N626Y、T663P、H662R、G740V、D781E、又はR625Lを含む。他の実施形態では、ネオモルフィックSF3B1変異体は、E622D、E622K、E622Q、E622V、Y623C、Y623H、Y623S、R625C、R625G、R625H、R625L、R625P、R625S、N626D、N626H、N626I、N626S、N626Y、H662D、H662L、H662Q、H662R、H662Y、T663I、T663P、K666E、K666M、K666N、K666Q、K666R、K666S、K666T、K700E、V701A、V701F、V701I、I704F、I704N、I704S、I704V、G740E、G740K、G740R、G740V、K741N、K741Q、K741T、G742D、D781E、D781G、又はD781Nを含む。ある特定のSF3B1変異は、K700Rを含め、異常スプライスバリアントの発現に関連しない。
【0025】
[051]「スプライスバリアント」という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝子内の2つのエクソン配列の間又はイントロン−エクソン境界のいずれかのジャンクションにまたがる核酸配列を含み、ジャンクションは、選択的にスプライシングされ得る。代替スプライシングとしては、代替3’スプライスサイトセレクション(「3’ss」)、代替5’スプライスサイトセレクション(「5’ss」)、ディファレンシャルエクソン包含(exon inclusion、エクソンインクルージョン)、エクソン読み飛ばし(exonskipping、エクソンスキッピング)、及びイントロン保持(intron retention、イントロンリテンション)が挙げられる(図1)。所与の遺伝子位置に関連するある特定のスプライスバリアントを野生型、又は「標準」バリアントと称することができる。これらのスプライスバリアントは、ネオモルフィックSF3B1変異タンパク質を含有しない細胞において最も豊富に発現する。標準スプライスバリアントとは異なり、細胞におけるネオモルフィックSF3B1変異タンパク質の存在に主に関連する追加的なスプライスバリアントを「異常」スプライスバリアントと称することができる。異常スプライスバリアントは、或いは、「正常でない」又は「非標準」スプライスバリアントと称することができる。ある特定の状況では、野生型又は非ネオモルフィックSF3B1タンパク質を有する細胞は、少量又は検出されない量の異常スプライスバリアントを有し、一方、ネオモルフィックSF3B1タンパク質を有する細胞の異常スプライスバリアントのレベルは、野生型SF3B1細胞における低レベル又は検出されないレベルと比較して上昇している。一部の場合では、異常スプライスバリアントは、野生型SF3B1細胞にも存在するが、ネオモルフィックSF3B1変異体を有する細胞において差次的に発現するスプライスバリアントであり、それにより、後者の細胞の異常スプライスバリアントのレベルは、野生型SF3B1細胞におけるレベルと比較して上昇している又は低下している。異なる型の、ネオモルフィックSF3B1変異体を含有する細胞、例えば、異なる型のがん細胞などは、ある特定の異常スプライスバリアントの発現のレベルが異なり得る。さらに、ネオモルフィックSF3B1変異体を含有する1つの細胞型に存在するある特定の異常スプライスバリアントは、ネオモルフィックSF3B1変異体を含有する他の細胞型には存在しない場合がある。一部の場合では、ネオモルフィックSF3B1変異タンパク質を有する患者は、ネオモルフィックSF3B1対立遺伝子の対立遺伝子頻度が低いことに起因して、異常スプライスバリアントを発現しない可能性がある、又は異常スプライスバリアントをより低いレベルで発現する可能性がある。ある特定のがん細胞などの種々の型のネオモルフィックSF3B1変異体を含有する細胞に関連する異常スプライスバリアントの同一性及び相対的発現レベルは、本明細書において提示される説明及び実施例から明らかになるであろう。
【0026】
[052]「評価すること(evaluating)」という用語は、ネオモルフィックSF3B1変異に関連する疾患を治療する化合物の能力を決定することを包含する。一部の実施例では、「評価すること」とは、化合物によりネオモルフィックSF3B1タンパク質に関連する異常スプライシング事象が調節されるかどうか、又は調節の程度を決定することを含む。SF3B1タンパク質の活性の調節は、ネオモルフィックSF3B1タンパク質に関連する異常スプライスバリアント発現の上方制御又は下方制御を包含し得る。さらに、「評価すること」とは、ネオモルフィックSF3B1タンパク質に関連するスプライスバリアントの発現を調節する化合物を用いて首尾よく治療することができる患者を区別することを含む。
【0027】
[053]「1つの(a)」、「1つの(an)」又は「その(the)」という単語の使用は、特許請求の範囲又は本明細書において「含む(comprising)」という用語と併せて使用される場合、「1つの(one)」を意味し得るが、「1つ又は複数の(one or more)」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ又は2つ以上の(one or more than one)」の意味とも一致する。「又は(or)」とは、代替物が相互排他的である場合など、代替物のみを指すことが明示されていなければ、「及び/又は(and/or)」を意味するものと包括的に読み取られるべきである。
【0028】
スプライスバリアント
[054]本発明のスプライスバリアントは表1に列挙されている。表1には、各標準(「WT」)及び異常(「Ab.」)スプライスジャンクションの遺伝子位置並びに配列が提示されている。表に列挙されている各配列は、スプライスジャンクションの3’側及び5’側のそれぞれから20ヌクレオチドを含有する(すなわち、スプライスジャンクションが列挙されているヌクレオチド配列の中点になる)。「Avg WT%」及び「Avg Ab.%」の列には、それぞれ、共有されるスプライス部位を利用する全てのスプライスバリアントの総計数に対して表される標準(WT)スプライスバリアント又は異常スプライスバリアントの平均百分率計数が提示されており、この計数は、実施例1に記載されている通り決定したものである。「Log倍率変化」の列には、標準コホートの百分率計数と異常コホートの百分率計数の間で観察された倍率変化のlogが提示されている(実施例1を参照されたい)。「FDR Q値」の列には、統計的有意性の評価基準として、Bioconductor’s limmaパッケージにおいて定義されているモデレートt検定(moderated t−test)(http://www.bioconductor.orgにおいて入手可能である)を使用して決定されたp値からBenjamini−Hochberg手順を使用して算出されたq値が提示されている(実施例1を参照されたい)。「事象」の列には、異常スプライスバリアントの性質が示されており、「3’ss」は、代替3’スプライスサイトセレクションを示し、「5’ss」は、代替5’スプライスサイトセレクションを示し、「exon incl.」は、ディファレンシャルエクソンインクルージョンを示し、「exon skip」は、エクソンスキッピングを示す。「型」の列は、異常スプライスバリアントを同定した試料のがんの型を指し、「Br.」は乳がんを示し、「CLL」は慢性リンパ球性白血病を示し、「Mel.」は黒色腫を示す。
【0029】
【表1】















































[055]ある特定のスプライスバリアントは、2つ以上の疾患に関連し、したがって、表1中に2回以上現れる。特定の例では、2つ以上のがんの型に関連するスプライスバリアントは、各疾患において異なる発現レベルを有し得、したがって、所与のスプライスバリアントに関する発現データの2つ以上のセットが存在し得る。試験したがんの型全てにわたって差次的に発現するバリアントを使用して、追加的ながんの型においてSF3B1ネオモルフィック変異を有する細胞を評価することができる。そのようなバリアントは以下の表1の行に示されている(3つ組は、異なるがんの型において測定された同じスプライスジャンクションを表す):[13、272、525]、[27、286、527]、[33、536、330]、[107、445、657]、[28、350、573]、[229、762、467]、[240、508、767]、[7、356、524]、[76、374、596]、[35、547、280]、[84、364、571]、[85、564、297]、[24、597、296]、[21、372、545]、[36、576、407]、[105、423、639]、[62、580、447]、[31、279、528]、[235、758、439]、[306、89、666]、[34、295、533]、[390、72、640]、[48、343、554]、[360、65、540]、[178、329、750]、[71、265、556]、[15、283、530]、[18、267、583]、[129、418、622]、[333、25、541]、[247、500、774]、[259、5、542]、[152、438、615]、[292、1、517]、[81、543、443]、[347、70、592]、[91、431、617]、[30、298、582]、[17、334、602]、[16、276、559]、[51、426、548]、[118、401、566]、[83、435、574]、及び[269、45、546]。ある特定の実施形態では、特定のがんの型に対して非特異的なバリアントは、以下の表1の行から選択することができる:[13、272、525]、[27、286、527]、[33、536、330]、[107、445、657]、[28、350、573]、[240、508、767]、[7、356、524]、[84、364、571]、[24、597、296]、[21、372、545]、[105、423、639]、[62、580、447]、[31、279、528]、[235、758、439]、[306、89、666]、[34、295、533]、[390、72、640]、[360、65、540]、[178、329、750]、[71、265、556]、[15、283、530]、[18、267、583]、[247、500、774]、[152、438、615]、[292、1、517]、[81、543、443]、[91、431、617]、[30、298、582]、[16、276、559]、又は[51、426、548]。
【0030】
[056]本発明のある特定の実施形態は、がんのマーカーとしてのスプライスバリアントを提供する。ある特定の状況では、ネオモルフィックSF3B1タンパク質を有するがん細胞は、ネオモルフィックSF3B1タンパク質を有さない細胞と比較してある特定のスプライスバリアントの差次的な発現を示す。したがって、1種又は複数種のスプライスバリアントの差次的な発現を使用して、患者がネオモルフィックSF3B1変異を有するがんを有するかどうかを決定することができる。ある特定の実施形態では、患者が変異体SF3B1タンパク質を有するがん細胞を有することも決定される。これらの方法では、表1に列挙されているスプライスバリアントのうちの1つ又は複数を測定して、患者がネオモルフィックSF3B1変異を有するがんを有するかどうかを決定することができる。ある特定の実施形態では、表1からの1種又は複数種の異常スプライスバリアントを測定する。他の実施形態では、1つ又は複数の標準スプライスバリアントを測定する。時には、異常バリアントと標準バリアントの両方を測定する。
【0031】
[057]一部の実施形態では、CLLを有する疑いがある患者において、表1の260、262、263、265、266、267、272、273、275、276、277、279、281、282、286、287、288、290、294、295、296、298、299、301、302、304、305、306、308、310、312、313、315、316、318、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、335、337、339、342、346、348、349、350、352、353、354、355、356、357、358、362、363、365、366、368、369、370、372、375、377、378、379、380、381、382、383、384、387、388、389、390、391、392、393、394、397、398、400、402、403、404、405、406、413、415、416、417、419、420、421、424、425、428、429、430、431、432、433、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、454、455、456、458、459、460、461、462、464、465、468、469、471、472、473、474、475、476、477、478、480、481、483、484、485、486、487、488、490、491、494、496、497、498、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、513、514、515、又は516行目から選択される1種又は複数種の異常スプライスバリアントを測定することができる。追加的な実施形態では、CLLを有する疑いがある患者を、表1に列挙されている以下の異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる:259、269、270、271、274、278、280、282、292、296、297、302、306、330、331、333、343、347、355、360、361、371、373、376、378、390、391、407、408、423、424、425、433、434、439、443、447、448、451、452、453、458、459、460、462、463、466、467、468、469、470、472、479、482、又は489行目。追加的な実施形態では、CLLを有する疑いがある患者を、表1に列挙されている以下の異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる:282、292、296、302、306、330、331、343、355、360、373、378、390、391、423、424、425、433、434、439、443、447、448、451、452、458、459、460、462、463、466、468、469、470、472、479、482、又は489行目。さらに別の実施形態では、CLLを有する疑いがある患者を、表1に列挙されている以下の異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる:282、296、302、306、330、331、355、378、390、391、424、425、433、439、443、447、448、451、452、458、459、460、462、468、469、又は472行目。
【0032】
[058]他の実施形態では、乳がんを有する疑いがある患者において、表1の2、3、4、7、9、10、11、13、16、18、19、20、21、22、23、24、27、28、30、31、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、46、47、49、50、52、53、54、56、57、58、61、62、63、64、66、67、68、71、72、75、77、78、79、80、81、82、84、87、88、89、90、91、92、94、95、97、98、99、100、101、103、104、106、107、108、109、110、111、112、113、114、116、117、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、138、139、140、141、142、143、144、146、147、150、152、154、155、156、157、159、163、164、165、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、230、231、232、233、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、247、249、250、251、252、253、254、255、256、又は257行目から選択される1種又は複数種の異常スプライスバリアントを測定することができる。追加的な実施形態では、乳がんを有する疑いがある患者を、表1に列挙されている以下の異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる:7、8、9、10、26、48、66、105、121、135、136、又は166行目。追加的な実施形態では、乳がんを有する疑いがある患者を、表1に列挙されている以下の異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる:7、8、9、10、26、48、66、105、121、135、又は136行目。さらに別の実施形態では、乳がんを有する疑いがある患者を、表1に列挙されている以下の異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる:7、9、10、66、121、135、又は136行目。
【0033】
[059]さらなる実施形態では、黒色腫を有する疑いがある患者において、表1の518、519、520、521、523、524、525、526、527、528、529、531、533、534、536、537、538、539、543、544、545、549、551、552、553、555、556、557、558、559、560、561、562、563、565、567、568、569、570、572、573、575、577、578、579、580、581、582、583、584、585、588、589、590、591、593、595、597、598、599、600、601、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、623、625、627、628、629、630、632、634、635、636、637、638、640、641、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、654、657、658、659、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、680、682、683、684、685、686、687、688、689、690、692、694、696、697、698、699、700、701、702、703、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、730、731、732、733、734、735、736、737、738、739、740、741、742、743、744、745、746、747、748、750、751、752、753、754、755、756、757、758、759、760、763、764、765、766、767、768、770、771、772、773、774、775、776、777、778、779、780、781、782、783、784、785、786、787、788、789、又は790行目から選択される1種又は複数種の異常スプライスバリアントを測定することができる。追加的な実施形態では、黒色腫を有する疑いがある患者を、表1に列挙されている以下の異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる:519、521、522、535、554、587、594、601、618、639、654、655、670、679、680、727、729、又は730行目。追加的な実施形態では、黒色腫を有する疑いがある患者を、表1に列挙されている以下の異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる:519、521、522、535、554、587、601、618、639、654、670、680、727、又は730行目。さらに別の実施形態では、黒色腫を有する疑いがある患者を、表1に列挙されている以下の異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる:519、521、601、618、654、670、680、727、又は730行目。
【0034】
[060]一部の実施形態では、異常バリアントのうちの1つ又は複数は、表1の21、31、51、81、118、279、372、401、426、443、528、543、545、548又は566行目から選択される。ある特定の実施形態では、がんを有する疑いがある患者を、21、31、51、81、118、279、372、401、426、443、528、543、545、548又は566行目から選択される異常バリアントのうちの1つ又は複数の量を測定することによって同定することができる。種々の実施形態では、がんは、例えば、CLL、乳がん、又は黒色腫であり得る。
【0035】
[061]追加的な方法は、がんに対する治療の有効性を、治療前又は治療中に患者から得た試料における1種又は複数種の異常スプライスバリアントのレベルを測定することによって予測又はモニタリングするステップを含む。例えば、治療の経過にわたって1種又は複数種の異常スプライスバリアントのレベルが低下することにより、治療が有効であることが示される。他の場合では、治療の経過にわたって1種又は複数種の異常スプライスバリアントのレベルが低下しないこと又は上昇により、治療が有効ではなく、調整する、補足する、又は終結させるべきであることが示され得る。一部の実施形態では、スプライスバリアントを使用して、個々の患者の治療効果を追跡し、調整する。
【0036】
[062]本発明の実施形態は、がん患者を、患者試料における1つ又は複数の特定のスプライスバリアントの存在若しくは非存在、又は、1つ又は複数の特定のスプライスバリアントの、正常細胞試料におけるものと比較して上昇若しくは低下したレベルでの検出に基づいて異なるカテゴリーに層別化する方法も包含する。カテゴリーは、異なる予後カテゴリー、種々の再発率を有する患者のカテゴリー、治療に応答する患者及び治療に応答しない患者のカテゴリー、並びに特定の負の副作用を有する患者のカテゴリーなどであり得る。次いで、個々の患者が入るカテゴリーに応じて、それらの患者に対して最適な治療を選択することができる、又は特定の患者を臨床試験のために選択することができる。
【0037】
[063]実施形態は、本明細書に開示されているスプライスバリアントをマーカーとして使用することにより、SF3B1ネオモルフィック変異を有するがん性細胞を正常細胞と区別する方法も包含する。そのような方法は、例えば、がん性細胞の成長又は消失を評価するため、及び治療又は除去するがん性細胞を同定するために使用することができる。一部の実施形態では、がんの進行に対する治療の効果をモニタリングする目的で、抗がん治療の前後に、ネオモルフィックSF3B1変異を有する細胞を有するがん性組織におけるスプライスバリアントを測定する。
【0038】
[064]追加的な実施形態では、がん細胞などの細胞にSF3B1調節因子を投与することにより、スプライスバリアントの差次的な発現を変化させることができる。したがって、1種又は複数種のスプライスバリアントの発現の変化を使用して、SF3B1タンパク質に対するSF3B1調節因子の効果を評価することができる。一実施形態では、CLL細胞に対するSF3B1調節因子の効果を、そのような細胞にSF3B1調節因子を適用し、次いで、表1のスプライスバリアントのうちの1つ又は複数を検出又は数量化することによって評価する。追加的な実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の258〜516行目から選択される。さらなる実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の260、262、263、265、266、267、272、273、275、276、277、279、281、282、286、287、288、290、294、295、296、298、299、301、302、304、305、306、308、310、312、313、315、316、318、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、335、337、339、342、346、348、349、350、352、353、354、355、356、357、358、362、363、365、366、368、369、370、372、375、377、378、379、380、381、382、383、384、387、388、389、390、391、392、393、394、397、398、400、402、403、404、405、406、413、415、416、417、419、420、421、424、425、428、429、430、431、432、433、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、454、455、456、458、459、460、461、462、464、465、468、469、471、472、473、474、475、476、477、478、480、481、483、484、485、486、487、488、490、491、494、496、497、498、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、513、514、515、又は516行目から選択される。さらなる実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、259、269、270、271、274、278、280、282、292、296、297、302、306、330、331、333、343、347、355、360、361、371、373、376、378、390、391、407、408、423、424、425、433、434、439、443、447、448、451、452、453、458、459、460、462、463、466、467、468、469、470、472、479、482、又は489行目から選択される。追加的な実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の282、292、296、302、306、330、331、343、355、360、373、378、390、391、423、424、425、433、434、439、443、447、448、451、452、458、459、460、462、463、466、468、469、470、472、479、482、又は489行目から選択される。さらに別の実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の282、296、302、306、330、331、355、378、390、391、424、425、433、439、443、447、448、451、452、458、459、460、462、468、469、又は472行目から選択される。
【0039】
[065]ある特定の実施形態では、乳がん細胞に対するSF3B1調節因子の効果を、そのような細胞にSF3B1調節因子を適用し、次いで、表1のスプライスバリアントのうちの1つ又は複数を検出又は数量化することによって評価する。追加的な実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の1〜257行目から選択される。さらなる実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の2、3、4、7、9、10、11、13、16、18、19、20、21、22、23、24、27、28、30、31、32、33、34、37、38、39、40、41、42、43、46、47、49、50、52、53、54、56、57、58、61、62、63、64、66、67、68、71、72、75、77、78、79、80、81、82、84、87、88、89、90、91、92、94、95、97、98、99、100、101、103、104、106、107、108、109、110、111、112、113、114、116、117、119、120、121、122、123、124、125、126、127、131、132、133、134、135、136、138、139、140、141、142、143、144、146、147、150、152、154、155、156、157、159、163、164、165、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、230、231、232、233、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、247、249、250、251、252、253、254、255、256、又は257行目から選択される。追加的な実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の7、8、9、10、26、48、66、105、121、135、136、又は166行目から選択される。さらなる実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の7、8、9、10、26、48、66、105、121、135、又は136行目から選択される。さらに別の実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の7、9、10、66、121、135、又は136行目から選択される。
【0040】
[066]さらなる実施形態では、メラノーマ細胞に対するSF3B1調節因子の効果を、そのような細胞にSF3B1調節因子を適用し、次いで、表1のスプライスバリアントのうちの1つ又は複数を検出又は数量化することによって評価する。追加的な実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の517〜790行目から選択される。さらなる実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の518、519、520、521、523、524、525、526、527、528、529、531、533、534、536、537、538、539、543、544、545、549、551、552、553、555、556、557、558、559、560、561、562、563、565、567、568、569、570、572、573、575、577、578、579、580、581、582、583、584、585、588、589、590、591、593、595、597、598、599、600、601、603、604、605、606、607、608、609、610、611、612、613、614、615、616、617、618、619、620、621、623、625、627、628、629、630、632、634、635、636、637、638、640、641、643、644、645、646、647、648、649、650、651、652、654、657、658、659、661、662、663、664、665、666、667、668、669、670、671、672、673、674、675、676、677、678、680、682、683、684、685、686、687、688、689、690、692、694、696、697、698、699、700、701、702、703、705、706、707、708、709、710、711、712、713、714、715、716、717、718、719、720、721、722、723、724、725、726、727、728、730、731、732、733、734、735、736、737、738、739、740、741、742、743、744、745、746、747、748、750、751、752、753、754、755、756、757、758、759、760、763、764、765、766、767、768、770、771、772、773、774、775、776、777、778、779、780、781、782、783、784、785、786、787、788、789、又は790行目から選択される。さらに別の実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の519、521、522、535、554、587、594、601、618、639、654、655、670、679、680、727、729、又は730行目から選択される。追加的な実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の519、521、522、535、554、587、601、618、639、654、670、680、727、又は730行目から選択される。さらに別の実施形態では、1種又は複数種のスプライスバリアントは、表1の519、521、601、618、654、670、680、727、又は730行目から選択される。
【0041】
[067]一部の実施形態では、がん細胞に対するSF3B1調節因子の効果を、そのような細胞にSF3B1調節因子を適用し、次いで、表1の21、31、51、81、118、279、372、401、426、443、528、543、545、548又は566行目から選択される異常バリアントのうちの1つ又は複数を検出又は数量化することによって評価する。種々の実施形態では、がん細胞例えば、CLL細胞、乳がん細胞、又はメラノーマ細胞であり得る。
【0042】
[068]1つの型のがん細胞に対するSF3B1調節因子の効果を実証するために有用な特定のスプライスバリアントは、別の型のがん細胞に対する調節因子の効果を実証するためには有用でない場合がある。特定のがん細胞におけるそのような影響を明らかにするために適した異常スプライスバリアントは、本明細書において提示される説明及び実施例から明らかになるであろう。
【0043】
[069]一部の実施形態では、ネオモルフィックSF3B1タンパク質を有する細胞において上昇したレベルで存在する異常スプライスバリアントをマーカーとして使用する。他の実施形態では、ネオモルフィックSF3B1タンパク質を有する細胞においてレベルが低下しているスプライスバリアントをマーカーとして使用する。一部の実施形態では、2種以上のスプライスバリアントを測定する。2種以上のスプライスバリアントを使用する場合、全てがレベルの上昇を有するものであってもよく、全てがレベルの低下を有するものであってもよく、レベルが上昇したスプライスバリアントとレベルが低下したスプライスバリアントの混合物を使用してもよい。本明細書に記載の方法のある特定の実施形態では、2種以上の異常スプライスバリアントを測定する。他の実施形態では、少なくとも1種の異常スプライスバリアント及び少なくとも1種の標準スプライスバリアントを測定する。一部の場合では、特定の遺伝子位置に関連する異常スプライスバリアントと標準スプライスバリアントの両方を測定する。別の状況では、測定される標準スプライスバリアントは、測定された異常スプライスバリアント(複数可)とは異なる遺伝子位置にある。
【0044】
[070]細胞におけるスプライスバリアントについてのアッセイを実施する前に、細胞が変異体SF3B1タンパク質を有するかどうかを決定することができる。ある特定の実施形態では、細胞がネオモルフィックSF3B1変異タンパク質を有することが決定された場合に、スプライスバリアントについてのアッセイを実施する。
【0045】
試料
[071]細胞試料は、種々の生物学的供給源から入手することができる。例示的な細胞試料としては、これだけに限定されないが、細胞培養物、細胞株、組織、口腔組織、胃腸組織、器官、細胞小器官、生体液、血液試料、尿試料、皮膚試料などが挙げられる。血液試料は、全血、部分的に精製された血液、又は、全血若しくは部分的に精製された血液の画分、例えば末梢血単核細胞(PBMC)などであり得る。細胞試料の供給源は、組織生検などの固形組織試料であり得る。組織生検試料は、乳房組織、皮膚、肺、又はリンパ節からの生検材料であり得る。試料は、骨髄穿刺液及び骨髄生検材料を含めた骨髄の試料であり得る。
【0046】
[072]ある特定の実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。細胞は、がん細胞、例えば、血液がん細胞又は固形腫瘍細胞であり得る。血液がんとしては、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、及び多発性骨髄腫が挙げられる。固形腫瘍としては、腺癌などの癌腫が挙げられ、乳がん、肺がん、肝臓がん、前立腺がん、膵臓がん、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸部がん、又は腎がんから選択することができる。細胞試料は、患者から直接得ることもでき、例えば生体液又は組織試料に由来する培養細胞など、患者から得た細胞に由来するものであってもよい。試料は、対象から直接得た細胞又は患者から得た細胞に由来する細胞の凍結保存試料などの保管試料であり得る。
【0047】
[073]ある特定の実施形態では、細胞を、がんを有する疑いがある患者から得る。患者は、リンパ節腫大、肝腫大、又は脾腫、正常を上回る白血球数、再発性感染症、食欲の喪失又は早期満腹、正常でない挫傷、疲労、及び寝汗を含めた、CLLの1つ又は複数の一般的症状などのがんの徴候及び症状を示し得る。追加的な実施形態では、細胞は、変異体SF3B1タンパク質を有する。
【0048】
[074]本明細書に記載されている細胞試料は、本開示の方法のいずれにも使用することができる。
【0049】
スプライスバリアントの検出
[075]本明細書に記載の方法のある特定の実施形態は、スプライスバリアントの検出又は数量化を伴う。核酸を検出及び数量化するための種々の方法が存在し、そのそれぞれを、記載されている実施形態におけるスプライスバリアントの検出に適応させることができる。典型的な方法としては、核酸バーコーディング、ナノ粒子プローブ、in situハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、核酸シークエンシング、及びリアルタイムPCR(RT−PCR)を含めたPCRに基づく方法、などの、核酸を数量化するためのアッセイが挙げられる。
【0050】
[076]ナノストリング(登録商標)アッセイ(NanoString Technologies)などのバーコーディング技術を利用する核酸アッセイを、例えば、米国特許第8,519,115号;米国特許第7,919,237号;及びKulkarni,M.M.、2011、「Digital Multiplexed Gene Expression Analysis Using the NanoString nCounter System.」、Current Protocols in Molecular Biology、94:25B.10.1−25B.10.17に記載の通り実施することができる。例示的なアッセイでは、プローブの対を使用して、目的の特定のスプライスバリアントなどの目的の特定のヌクレオチド配列を検出する。プローブ対は、捕捉プローブ及びレポータープローブからなり、それぞれが、標的配列に対して特異的な約35〜50塩基の長さの配列を含む。捕捉プローブは、3’末端に、デジタル検出のために標的mRNAを表面付着させるための分子ハンドルをもたらすビオチンなどの親和性標識を含み、レポータープローブは、5’末端に、ハイブリダイズしたmRNA標的配列の分子バーコーディングをもたらす独特の色コードを含む。捕捉プローブ及びレポータープローブ対を溶液中で標的mRNAとハイブリダイズさせ、過剰なプローブを除去した後、標的mRNA−プローブ複合体をエヌカウンター(nCounter)(商標)カートリッジ中に固定化する。デジタル分析機器によりカートリッジの表面の直接画像を取得して、特定のmRNAスプライスバリアント配列に対応する色コードを検出する。特定のスプライスバリアントについての色分けされたバーコードが検出される回数が、mRNAライブラリーにおける特定のスプライスバリアントのレベルを反映する。スプライスバリアントを検出するために、捕捉プローブ又はレポータープローブのいずれかが所与のスプライスバリアントのエクソン−エクソンジャンクション又はイントロン−エクソンジャンクションにまたがり得る。他の実施形態では、捕捉プローブ及びレポータープローブの一方又は両方の標的配列は、エクソン−エクソンジャンクションの2つのエクソンの末端配列又はイントロン−エクソンジャンクションのイントロン及びエクソンの末端配列に対応し、したがって、一方のプローブはエクソン−エクソンジャンクション又はイントロン−エクソンジャンクションまで伸長するが、ジャンクションにまたがらず、他方のプローブは、ジャンクションの逆側から始まる配列に結合し、それぞれのエクソン又はイントロンまで伸長する。
【0051】
[077]例示的なPCRに基づく方法では、特定のスプライスバリアントを、スプライスバリアントを含有する配列を特異的に増幅させることによって検出することができる。例えば、当該方法では、スプライスバリアントの第1の部分とハイブリダイズするように特別に設計された第1のプライマーを使用することができ、ここで、スプライスバリアントは、代替スプライシングが起こるエクソン−エクソンジャンクション又はイントロン−エクソンジャンクションにまたがる配列である。当該方法では、上流又は下流の位置にある配列などの遺伝子の別の配列に対応する第1のプライマーのPCR伸長産物のセグメントとハイブリダイズする第2の対立プライマー(opposing primer)をさらに使用することができる。PCR検出法は、定量的(又はリアルタイム)PCRであり得る。定量的PCRの一部の実施形態では、増幅されたPCR産物を、核酸プローブを使用して検出し、ここで、プローブは、1つ又は複数の検出可能な標識を含有し得る。ある特定の定量的PCR法では、目的のスプライスバリアントの量を、スプライスバリアントのレベルを検出し、適切な内部標準と比較することによって決定する。
【0052】
[078]RNAスコープ(登録商標)(Advanced Cell Diagnostics)などのin situハイブリダイゼーションアッセイを使用してスプライスバリアントを検出するための典型的な方法としては、Wang,Fら、「RNAscope:a novel in situ RNA analysis platform for formalin−fixed、paraffin−embedded tissues」、J.Mol.Diagn.2012 Jan;14(1):22−9に記載されているものが挙げられる。所与のスプライスバリアントを標的とし、固定し透過処理した細胞において標的RNAとハイブリダイズするプローブの対を設計することにより、RNAスコープ(登録商標)アッセイを使用してスプライスバリアントを検出することができる。標的プローブを、標的配列とハイブリダイズするとプレアンプリファイア核酸(preamplifier nucleic acid)に対する結合性部位が創出される対としてハイブリダイズするように設計する。次に、プレアンプリファイア核酸は、アンプリファイア核酸(amplifier nucleic acid)に対する多数の結合性部位を有し、次に、アンプリファイア核酸は、発色分子又は蛍光分子を有する標識プローブに対する多数の結合性部位を含有する。一部の実施形態では、RNAスコープ(登録商標)標的プローブのうちの1つは、所与のスプライスバリアントのエクソン−エクソンジャンクション又はイントロン−エクソンジャンクションにまたがる。他の実施形態では、標的プローブの標的配列は、エクソン−エクソンジャンクションの2つのエクソンの末端配列又はイントロン−エクソンジャンクションのイントロン及びエクソンの末端配列に対応し、したがって、標的プローブ対の一方のプローブはエクソン−エクソンジャンクション又はイントロン−エクソンジャンクションまで伸長するが、ジャンクションにはまたがらず、他方のプローブは、ジャンクションの逆側から始まる配列に結合し、それぞれのエクソン又はイントロンまで伸長する。
【0053】
[079]スマートフレア(SmartFlare)(商標)(Millipore)などのナノ粒子プローブを使用してスプライスバリアントを検出するための典型的な方法としては、Seferosら、「Nano−flares:Probes for Transfection and mRNA Detection in Living Cells」、J.Am.Chem.Soc.129(50):15477−15479(2007)及びPrigodich,AE.ら、「Multiplexed Nanoflares:mRNA Detection in Live Cells」、Anal.Chem.84(4):2062−2066(2012)に記載されているものが挙げられる。(1)それぞれが検出される特定のスプライスバリアントに相補的である及び(2)それぞれが相補的なフルオロフォア標識レポーター核酸とハイブリダイズするヌクレオチド認識配列を含む1種又は複数種の核酸を用いて改変した金ナノ粒子を生成することにより、スマートフレア(商標)検出プローブを使用してスプライスバリアントを検出することができる。プローブが細胞に取り込まれると、標的スプライスバリアント配列が1つ又は複数のヌクレオチド認識配列とハイブリダイズし、フルオロフォア標識レポーター核酸と置き換わり得る。次いで、フルオロフォアが金ナノ粒子表面の近傍にあることに起因してクエンチされたフルオロフォア標識レポーター核酸が金ナノ粒子から遊離し、次いで、ナノ粒子のクエンチ効果がなくなったら、フルオロフォアが検出され得る。一部の実施形態では、プローブのヌクレオチド認識配列は、所与のスプライスバリアントのエクソン−エクソンジャンクション又はイントロン−エクソンジャンクションにまたがる配列を認識する。一部の実施形態では、プローブのヌクレオチド認識配列は、ジャンクションで終結する配列及びジャンクションから1つ又は複数のヌクレオチ離れて終結する配列を含めた、スプライスバリアントのエクソン−エクソンジャンクション又はイントロン−エクソンジャンクションの一方の側にのみある配列を認識する。
【0054】
[080]核酸シークエンシングを使用してスプライスバリアントを検出するための典型的な方法としては、Ren,Sら、「RNA−Seq analysis of prostate cancer in the Chinese population identifies recurrent gene fusions、cancer−associated long noncoding RNAs and aberrant alternative splicings.」、Cell Res 22、806−821、doi:10.1038/cr.2012.30(2012);及びvan Dijkら、「Ten years of next−generation sequencing technology.」Trends Genet 30(9):418−26(2014)に記載されているRNAシークエンシング(RNA−Seq)が挙げられる。一部の実施形態では、次世代シークエンシング(NGS)技術などのハイスループットなシークエンシングを使用してスプライスバリアントを検出することができる。例えば、当該方法では、RNA−Seqに利用可能な市販のシークエンシングプラットフォーム、例えば、Illumina、SOLID、Ion Torrent、及びRoche 454などを使用することができる。一部の実施形態では、シークエンシング方法は、パイロシークエンシングを含み得る。例えば、試料をシークエンシング用酵素及びプライマーと混合し、一度に1つの標識されていないヌクレオチドの流れに曝露させ、それにより、相補DNA鎖の合成を可能にすることができる。ヌクレオチドが組み込まれると、ピロリン酸が放出され、それにより、光の放出が導かれ、それをリアルタイムでモニタリングする。一部の実施形態では、シークエンシング方法は、半導体シークエンシングを含み得る。例えば、ヌクレオチドの取り込み中にピロリン酸の代わりにプロトンを放出させ、イオンセンサーによってリアルタイムで検出することができる。一部の実施形態では、当該方法は、可逆的ターミネーターを用いたシークエンシングを含み得る。例えば、合成試薬は、プライマー、DNAポリメラーゼ、及び4つの異なるように標識された可逆的ターミネーターヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドが組み入れられた後、それを色によって同定し、塩基上の3’ターミネーター及びフルオロフォアを除去し、サイクルを繰り返す。一部の実施形態では、当該方法は、ライゲーションによるシークエンシングを含み得る。例えば、シークエンシングプライマーをアダプターとハイブリダイズさせることができ、プライマーの5’末端は、隣接する配列とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとのライゲーションに利用可能である。塩基4及び5が4色の標識のうちの1つによりコードされる八量体の混合物がプライマーとのライゲーションについて競合し得る。色の検出後、ライゲーションした八量体を5位と6位の間で切断して標識を除去することができ、サイクルを繰り返すことができる。それにより、第1のラウンドにおいて、当該プロセスにより、4位、5位、9位、10位、14位、15位などにおける可能性のある塩基の同一性を決定することができる。プロセスを、シークエンシングプライマーの第1の塩基に達するまで、3位、4位、8位、9位、13位、14位などを決定するために、より短いシークエンシングプライマーを使用して繰り返し、1塩基ずつオフセットすることができる。
【0055】
[081]同じく遺伝子内の所与のエクソン−エクソンジャンクション又はイントロン−エクソンジャンクションのスプライスバリアントをジャンクションの両側のヌクレオチド配列を同定することによって区別する他の核酸検出及び分析方法を利用して、本明細書に開示されているスプライスバリアントを検出又は数量化することができる。例えば、エクソン−エクソンジャンクションのスプライスバリアントは、1つのエクソンに結合するプライマーが、その隣接するエクソンの配列に従って他方の側のジャンクションのエクソンまで伸長する、プライマー伸長法によって検出することができる。例えば、McCullough,RM.ら、「High−throughput alternative splicing quantification by primer extension and matrix−assisted laser desorption/ionization time−of−flight mass spectrometry」、Nucleic Acids Research、2005 Jun 20;33(11):e99;及びMilani,Lら、「Detection of alternatively spliced transcripts in leukemia cell lines by minisequencing on microarrays」、Clin.Chem.52:202−211(2006)を参照されたい。大規模なバリアントの検出は、例えばJohnson,JM.ら、「Genome−wide survey of human alternative pre−mRNA splicing with exon junction microarrays」、Science 302:2141−2144(2003);及びModrek,Bら、「Genome−wide detection of alternative splicing in expressed sequences of human genes」、Nucleic Acids Res 29:2850−2859(2001)に記載されている、エクソン−エクソンジャンクションプローブ又はイントロン−エクソンジャンクションプローブを有する発現マイクロアレイを使用して実施することができる。
【0056】
[082]種々の実施形態は、本発明のスプライスバリアントを検出するための試薬を含む。一実施例では、試薬は、表1に列挙されている異常スプライスバリアントのうちの1つ又は複数の量を測定するために設計されたナノストリング(登録商標)プローブを含む。バーコーディング(例えば、ナノストリング(登録商標))、ナノ粒子プローブ(例えば、スマートフレア(商標))、in situハイブリダイゼーション(例えば、RNAスコープ(登録商標))、マイクロアレイ、核酸シークエンシング、及びPCRに基づくアッセイなどの核酸数量化アッセイ用のプローブを上記の通り設計することができる。
【0057】
[083]核酸検出のためのこれらの典型的な方法又は他の方法では、異常スプライスバリアントを、異常スプライスバリアントには存在するが標準スプライスバリアントには存在しない核酸配列を特異的に認識するプローブ、プライマー、又は他の試薬を使用して同定することができる。他の実施形態では、異常スプライスバリアントを、それが存在するジャンクションの状況で異常スプライスバリアントに特異的である配列を検出することによって同定する、すなわち、独特の配列が、標準スプライスバリアントのスプライスジャンクションのいずれかの側に存在する配列に挟まれている。そのような場合では、その標的配列を特異的に認識するプローブ、プライマー、又は他の検出試薬の一部は、異常配列の長さ又は異常配列の一部に対応する長さを有し得る。他の実施形態では、その標的配列を特異的に認識するプローブ、プライマー、又は他の検出試薬の一部は、異常配列の長さと、スプライスジャンクションにおいて異常配列を挟む配列の一方又は両方に由来する選択された数のヌクレオチドの長さとを足したものに対応する長さを有し得る。一般に、プローブ又はプライマーは、非特異的な結合を低減するために十分な長さに設計すべきである。異常スプライスバリアント又は標準スプライスバリアントを検出するプローブ、プライマー、及び他の試薬は、核酸を検出するための種々の方法の技術的特徴及び形式に従って設計することができる。
【0058】
SF3B1調節因子
[084]種々のSF3B1調節化合物が当技術分野で公知であり、本明細書に記載の方法に従って使用することができる。一部の実施形態では、SF3B1調節化合物は、プラジエノライド又はプラジエノライド類似体である。「プラジエノライド類似体」とは、プラジエノライドとして公知の天然物のファミリーのメンバーと構造的に関連する化合物を指す。プラジエノライドは、細菌ストレプトマイセス・プラテンシス(Streptomyces platensis)において最初に同定された(Sakai,Takashi;Sameshima,Tomohiro;Matsufuji,Motoko;Kawamura,Naoto;Dobashi,Kazuyuki;Mizui,Yoshiharu.、「Pladienolides、New Substances from Culture of Streptomyces platensis Mer−11107.I.Taxonomy,Fermentation,Isolation and Screening.」、The Journal of Antibiotics.2004、Vol.57、No.3)。これらの化合物のうちの1つであるプラジエノライドBは、SF3Bスプライソソームを標的として、スプライシングを阻害し、遺伝子発現のパターンを変化させる(Kotakeら、「Splicing factor SF3b as a target of the antitumor natural product pladienolide」、Nature Chemical Biology 3:570−575[2007])。ある特定のプラジエノライドB類似体は、WO2002/060890;WO2004/011459;WO2004/011661;WO2004/050890;WO2005/052152;WO2006/009276;及びWO2008/126918に記載されている。
【0059】
[085]どちらも「Process for Total Synthesis of Pladienolide B and Pladienolide D」という表題の米国特許第7,884,128号及び同第7,816,401号には、プラジエノライドB及びDを合成するための方法が記載されている。プラジエノライドB及びDの合成は、Kanadaら、「Total Synthesis of the Potent Antitumor Macrolides Pladienolide B and D」、Angew.Chem.Int.Ed.46:4350−4355(2007)に記載されている方法を使用して実施することもできる。「Novel Physiologically Active Substances」という表題の、Kanadaら、米国特許第7,550,503号、及び国際公開第WO2003/099813(WO’813)号には、プラジエノライドD(WO’813の11107D)からE7107(WO’813の化合物45)を合成するための方法が記載されている。一部の実施形態では、SF3B1調節因子は、プラジエノライドBである。他の実施形態では、SF3B1調節因子は、プラジエノライドDである。さらなる実施形態では、SF3B1調節因子は、E7107である。
【0060】
[086]一部の実施形態では、SF3B1調節因子は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2015年5月13日出願の米国特許出願第14/710,687号に記載されている化合物である。一部の実施形態では、SF3B1調節化合物は、表2に記載されている式1〜4のうちの1つを有する化合物である。
【0061】
【表2】

[087]本明細書に記載の方法は、既知のSF3B1調節化合物及び新規のSF3B1調節化合物を評価するために使用することができる。
【0062】
治療方法
[088]本発明の種々の実施形態は、がんと診断された患者を、SF3B1調節因子を使用して治療することを含む。特定の例では、患者由来のがん細胞は、変異体SF3B1タンパク質を有することが決定されたものである。特定のSF3B1変異体として、E622D、E622K、E622Q、E622V、Y623C、Y623H、Y623S、R625C、R625G、R625H、R625L、R625P、R625S、N626D、N626H、N626I、N626S、N626Y、H662D、H662L、H662Q、H662R、H662Y、T663I、T663P、K666E、K666M、K666N、K666Q、K666R、K666S、K666T、K700E、V701A、V701F、V701I、I704F、I704N、I704S、I704V、G740E、G740K、G740R、G740V、K741N、K741Q、K741T、G742D、D781E、D781G、又はD781Nが挙げられる。ある特定の実施形態では、SF3B1変異体は、K700E、K666N、R625C、G742D、R625H、E622D、H662Q、K666T、K666E、K666R、G740E、Y623C、T663I、K741N、N626Y、T663P、H662R、G740V、D781E、又はR625Lから選択される。追加的な実施形態では、がん細胞は、表1から選択される1種又は複数種のスプライスバリアントの量を測定するために試験されたものである。ネオモルフィックSF3B1変異に関連する特定のスプライスバリアントが表1に示されており、又、上のスプライスバリアントの節に記載されている。
【0063】
[089]ある特定の実施形態では、変異体SF3B1タンパク質を有することが決定されたがん患者を、2015年5月13日出願の米国特許出願第14/710,687号に記載されている通りSF3B1調節因子を用いて治療する。
【実施例】
【0064】
実施例1:SF3B1変異により、正常でないスプライシングが系列特異的に誘導される
[090]多数の腫瘍型にわたるSF3B1変異(「SF3B1MUT」)に関連するスプライシングの変化を調査するために、RNA−Seq数量化及びディファレンシャルスプライシングパイプラインを開発し、それを使用して以下の試料からRNA−Seqプロファイルを解析した:
The Cancer Genome Atlas(TCGA;16種のがんの型の全部で81名の患者に由来する)における全てのSF3B1MUT試料、並びに、TCGAにおける乳がんコホート(20)及び黒色腫コホート(20)のそれぞれに由来する、40例の野生型SF3B1(SF3B1WT)試料、
Lymphoma/Myeloma Service in the Division of Hematology/Oncology at the New York Weill Cornell Medical Centerから入手した7例のSF3B1MUT CLL患者試料及び7例のSF3B1WT CLL患者試料。
【0065】
RNA−Seq定量化方法
[091]アノテートされていないスプライスバリアントの発見を容易にするために、スプライスジャンクションをアラインメント(BAMファイル)から直接数量化した。内部で生成されたRNA−Seqデータに関して、読み取りをヒト参照ゲノムhg19(GRCh37)に対してMapSpliceによってアラインメントし、TCGA「RNASeqV2」パイプライン(https://cghub.ucsc.edu/docs/tcga/UNC_mRNAseq_summary.pdf参照)をエミュレートするTCGA GAF 2.1アイソフォーム及び遺伝子定義に対するRSEMによって数量化した。MapSpliceによって生成されたスプライスジャンクション計数を下流の処理に使用した。TCGA RNA−Seqデータに関しては、MapSpliceによって生成された包括的なスプライスジャンクション計数は利用不可能であり、その代わりに、TCGA「レベル3」スプライスジャンクションデータにより、参照トランスクリプトームに由来する所定のスプライスジャンクションセットのマッピングされた読み取り計数が報告される。内部で生成されたRNA−Seq試料と同等のゲノムワイドなスプライスジャンクション計数を再構築するために、未加工のRNA−Seqアラインメント(BAMファイル)をCGHub(https://cghub.ucsc.edu/)から入手し、潜在的なスプライスジャンクションにまたがる任意の読み取りを直接計数した。RSEMにより推定された遺伝子発現読み取り計数をTCGA RNA−Seq V2レベル3データマトリックスから直接集約した。
【0066】
[092]MapSpliceではエクソン−エクソンジャンクション計数のみがもたらされるので、イントロン−リテンションスプライスバリアントを同定するためには各イントロン−エクソンジャンクションにまたがる読み取り計数の推定値が必要であった。各BAMファイルにおけるあらゆるスプライスジャンクションについて、3’及び5’イントロン−エクソンジャンクションのそれぞれにわたって少なくとも3bpのオーバーハングを有する読み取りを計数した。
【0067】
[093]BAMファイル内のスプライスされた読み取りの操作の全てについて、samtoolsの「pysam」伸長(Li,Hら、「The Sequence Alignment/Map format and SAMtools.」、Bioinformatics、2009年8月15日;25(16):2078−9)を使用する、カスタムPythonモジュール「splicedbam」(https://github.com/h3biomed/splicedbamで入手可能)を使用した。
【0068】
[094]一部の実施例では、スプライスジャンクションは、時々、シークエンシング及びアラインメントの誤差に起因して非常に低い計数を有した。したがって、SF3B1WTコホート又はSF3B1MUTコホートのいずれかに由来する、平均で少なくとも合計10計数を有するスプライスジャンクションのみを下流の解析に含めた。
【0069】
ディファレンシャルスプライシング検出方法
[095]一方のコホートにおいてもう一方のコホートと比較してディファレンシャルスプライスバリアントの使用を検出するために、遺伝子発現の変化及び所定の代替スプライシングモデルとは独立して、スプライスジャンクション計数を多数の可能性のあるジャンクションを有するスプライス部位におけるジャンクション使用の百分率に変換する、コンピュータによるディファレンシャルスプライシングパイプラインを開発した。ジャンクション使用の百分率は、1つのスプライスバリアントの、同じスプライス部位を共有する他の全てのスプライスバリアントと比較した出現の測定値である。例えば、代替3’スプライス部位を有するスプライスバリアントは、5’スプライス部位を別のスプライスバリアントと共有しなければならない。したがって、共有されるスプライス部位のそれぞれについて、各スプライスバリアントの未加工の計数を、共有されるスプライス部位を利用する全てのスプライスバリアントの総計数で割って比を導き出した。次いで、この比に100を掛けて百分率に変換した。各試料について、同じスプライス部位を共有するスプライスバリアントの百分率の全ての合計は100と等しくなる。各スプライスバリアントの未加工の計数を、スプライス部位を共有する全てのスプライスバリアントに対する百分率に変換することは、それ自体が遺伝子発現の変化の影響を低減するための正規化である。標準ジャンクション及び異常ジャンクションについての百分率は表1にそれぞれ「Avg WT%」及び「Avg Ab.%」として列挙されている。これらの百分率の差異を、Bioconductor’s limmaパッケージ(http://www.bioconductor.orgで入手可能)において定義されているモデレートt検定を使用することによって統計的有意性について評価した。統計学的p値を、Benjamini−Hochberg手順を使用して補正してq値にし、表1に「FDR Q値」として列挙した。0.05以下のq値を満たすあらゆるスプライスバリアントを統計的に有意であるとした。
【0070】
[096]未加工のジャンクション計数を百分率ジャンクション使用に変換することにより、一部の実施例、すなわち、スプライスバリアントが生じる遺伝子が一方のコホートでは発現するが、もう一方のコホートでは発現が非常に低い又は全く発現しない場合では、ノイズが導入される可能性がある。これに取り組むために、追加的なフィルタリングステップを導入した。上記のq値の閾値を満たす、SF3B1MUT試料において上方制御されたスプライスバリアントのそれぞれについて、その対応する標準スプライスバリアントは、SF3B1MUT試料では下方制御されるはずであり、また、異常スプライスバリアントであるとされる上方制御されたスプライスバリアントについてのq値の閾値を満たすはずである。
【0071】
ネオモルフィックSF3B1MUT患者試料における異常スプライスバリアントの同定
[097]最初に、この枠組みを、The Cancer Genome Atlas(TCGA;ルミナルA型原発性乳がん:7例のSF3B1K700E及び20例のSF3B1WT;転移性黒色腫:4例のSF3B1MUT;及び20例のSF3B1WT)並びに内部で生成された7例のSF3B1MUT及び7例のSF3B1WTCLL患者試料からの既知のSF3B1MUTがん又は野生型対応物のサブセットに適用した。この解析により、626種の異常スプライスジャンクションがSF3B1MUTにおいてSF3B1WTと比較して有意に上方制御されることが明らかになった。異常スプライシング事象の大部分で代替3’ssが使用される(表1参照、「事象」の列)。
【0072】
[098]異常スプライシング事象のコンピュータによるスクリーニングにより、ネオモルフィックSF3B1MUT試料において乳がん、黒色腫及びCLLにおける腫瘍特異的スプライシング事象のパターンが明らかになった(表1)。さらに、腫瘍非特異的事象(すなわち、少なくとも2つの腫瘍型において見いだされるスプライシング事象)のセットが観察された。腫瘍特異的スプライシング事象を伴う遺伝子の一部のスプライスバリアントが、mRNA発現がより高い遺伝子において生じ、これにより、観察された腫瘍特異的スプライシングの一部が遺伝子発現の差異に起因することが示される(図2)。
【0073】
[099]がんの型にわたる全てのSF3B1バリアントにおける異常スプライシングの影響を特徴付けるために、TCGAにおける14種のがんの型からの残りの70名のSF3B1MUT患者についてのRNA−Seqデータを数量化し、全部で136例の試料を使用して教師なしクラスタリング解析を行った。このクラスタリングにより、ネオモルフィックSF3B1変異体に関連するスプライシング事象と野生型SF3B1又は非ネオモルフィックSF3B1変異体に関連するスプライシング事象が分離された。例えば、乳がん(SF3B1K666E、SF3B1N626D)、肺腺癌(SF3B1K741N、SF3B1G740V)、及び膀胱がん(SF3B1R625C)患者試料におけるスプライシング事象はSF3B1K700Eネオモルフィック試料におけるスプライシング事象と一緒にクラスタリングされ、一方、他のSF3B1変異体試料についてのスプライシングプロファイルは同じ腫瘍型のSF3B1WT試料のスプライシングプロファイルと同様であったので、乳がん(SF3B1K666E、SF3B1N626D)、肺腺癌(SF3B1K741N、SF3B1G740V)、及び膀胱がん(SF3B1R625C)患者試料では、ネオモルフィックSF3B1変異体に関連するスプライシングパターンが観察された。スプライシングプロファイルがネオモルフィックSF3B1変異体のスプライシングプロファイルと一緒にクラスタリングされたSF3B1変異体の一覧表が表3、1列目に提示されている。ネオモルフィックであることが予測される追加的なSF3B1変異が表3、2列目に列挙されている。表3に提示されている全ての変異の位置を示す概略図が図3に示されている。
【0074】
【表3】

実施例2:細胞株における異常スプライスバリアントの検証
[0100]細胞株モデルにおける異常スプライシングを、American Type Culture Collection[ATCC]又はRIKEN BioResource Centerから入手し、指示通り培養した内在性SF3B1ネオモルフィック変異(膵臓腺癌Panc 05.04:SF3B1Q699H/K700E二重変異体;転移性黒色腫Colo829:SF3B1P718L;及び肺がんNCI−H358:SF3B1A745Vを有する細胞株のパネルについての、並びに、同じ腫瘍型(膵臓腺癌Panc 10.05、HPAF−II、MIAPaCa−2、Panc04.03、PK−59、肺がんNCI−H358、NCI−H1792、NCI H1650、NCI H1975、NCI H1838)又は同じ患者の正常対照細胞(エプスタイン・バーウイルス[EBV]により形質転換したBリンパ芽球colo829BL)のいずれかに由来するいくつかのSF3B1WT細胞株からのRNA−Seqプロファイルを収集することによって解析した。SF3B1K700E(Nalm−6 SF3B1K700E)又は同義の変異(Nalm−6 SF3B1K700K)を発現するようにAAV媒介性相同性によって操作した同質遺伝子型プレB細胞株(Nalm−6)からもRNA−Seqプロファイルを収集した。Horizon Discoveryにおいて生成された同質遺伝子細胞株Nalm−6 SF3B1K700E及びNalm−6 SF3B1K700Kを、選択のためにジェネテシン(0.7mg/ml、Life Technologies)の存在下で培養した。RNA−Seq解析は全て、実施例1において患者試料について記載されているものと同じパイプラインを使用して実施した。患者において同定された異常スプライスジャンクションを使用した細胞株の教師なしクラスタリングにより、Panc 05.04及びNalm−6 SF3B1K700Eと野生型及び他のSF3B1変異体細胞の明白な分離がもたらされた。
【0075】
[0101]異常スプライスバリアント及び標準スプライスバリアントを数量化するために、ナノストリング(登録商標)アッセイを展開し、同じ細胞パネルを使用して検証した。ナノストリング(登録商標)アッセイのために、ナノストリング(登録商標)プローブのカスタムパネルを使用したエヌカウンター(nCounter)(登録商標)(ナノストリングテクノロジーズ(NanoString Technologies)(登録商標))発現アッセイのための鋳型として、精製された全RNA750ngを使用した。65℃で終夜のハイブリダイゼーションのために試料の調製を推奨の通りセットアップした(ナノストリング(登録商標)Technologiesプロトコール番号C−0003−02)。翌日、試料を、高感度プロトコール(ナノストリング(登録商標)Technologiesプロトコール番号MAN−C0029−05)を使用して自動エヌカウンター(登録商標)アナリシスシステムプレップステーション(nCounter(登録商標)Analysis System Prep Station)によって処理し、その後、検出のために1150FOVを使用してエヌカウンター(商標)(登録商標)アナリシスシステムデジタルアナライザー(nCounter(登録商標)Analysis System Digital Analyzer)(プロトコール番号MAN−C0021−01)によって処理した。データをダウンロードし、品質管理測定基準及び正規化のために、エヌソルバー(nSolver)(商標)アナリシス ソフトウェア(nSolver(登録商標)Analysis Software)(ナノストリングテクノロジーズ(登録商標))を使用して解析した。データを、まず、製造者によって提供された陽性アッセイ対照(ナノストリング(登録商標)陽性対照A〜F[in vitroで転写されたRNA転写物を128fM、32fM、8fM、2fM、0.5fM、及び0.125fMの濃度で含有し、それぞれナノストリング(登録商標)レポーターコードセットプローブ(NanoString(登録商標)Reporter CodeSet probes)と予備混合されたもの]))を使用して、レーン毎の変動について正規化した。正規化因子が<0.3及び>3の試料はいずれもさらなる解析には考慮しなかった。この後、GAPDH、EEF1A1及びRPLP0の幾何平均を使用した含有量正規化を行った。全ての試料が推奨される0.1〜10の正規化因子の範囲内であった。次いで、正規化された値のそれぞれを確認して、そのレーンについて記録されたバックグラウンドシグナルの平均よりも少なくとも2標準偏差高いことを確実にした。これを下回る値はいずれも検出限界を下回るものとした。これらの正規化された値はさらなるバイオインフォマティクス及び統計解析のために取得した。
【0076】
[0102]RNA−Seq解析において観察された通り、Panc 05.04及び同質遺伝子型Nalm−6 SF3B1K700E細胞株のみで異常スプライシングの明白な存在が示された(図4)。
【0077】
SF3B1変異体SF3B1Q699Hの分析
[0103]Panc 05.04細胞株は、ネオモルフィック変異SF3B1K700E及び699位における追加的な変異(SF3B1Q699H)を有する。この第2の変異の機能的関連性を評価するために、ナノストリング(登録商標)によるRNAの分析のためにSF3B1Q699H変異体SF3B1タンパク質及びSF3B1K700E変異体SF3B1タンパク質を単独で又は組み合わせて293FT細胞において発現させた(図5)。変異体を293FT細胞において発現させるために、ゲートウェイ技術(Gateway technology)(Life Technologies)を使用して哺乳動物発現プラスミドを生成した。まず、HAタグmxSF3B1野生型(Yokoi,Aら、「Biological validation that SF3b is a target of the antitumor macrolide pladienolide.」、FEBS J.278:4870−4880 [2011])をPCRによってpDONR221にクローニングし、次いで、部位特異的変異誘発キット(QuikChange II XL、Agilent)を使用して変異を導入した。LR反応を実施して、HAタグmxSF3B1野生型及び変異体の全てをpcDNA−DEST40(Life Technologies)にクローニングした。製造者の指示に従って培養した293FT細胞(Life Technologies)を6ウェル/プレートに播種し、Fugene(Roche)を使用して、生成したプラスミドでトランスフェクトした。pcDNA−DEST40 HA−mxSF3B1構築物当たり1μgのDNAを3連反復実験で生成した各一過性トランスフェクションに使用した。トランスフェクションの48時間後、細胞を収集して、それぞれウエスタンブロット及びナノストリング(登録商標)分析のためにタンパク質及びRNAを単離した。RIPA(Boston BioProducts)を用いて細胞を溶解させることによってタンパク質抽出物を調製した。タンパク質23μgをSDS−PAGEゲルにローディングし、SF3B1抗体(a−SAP 155、MBL)及び抗GAPDH(Sigma)を使用して同定した。Li−Corロバ抗マウス800CW及びLi−Cor ロバ抗ウサギ800CWを二次抗体として使用し、オデッセイイメージャー(Odyssey imager)(Li−Cor)によって検出した。RNAを細胞から単離し、MagMax for Microarray及びSuperscript VILO II(Life Technologies)をそれぞれ製造者のマニュアルに従って使用して逆転写し、次いで、ナノストリング(登録商標)アッセイを用いて分析した。
【0078】
[0104]SF3B1K700E及びSF3B1Q699H/K700Eの発現により、異常スプライシングが誘導されたが、SF3B1Q699H単独で又はSF3B1A745V又はSF3B1R1074H(スプライソソーム阻害剤プラジエノライドBに対する抵抗性を付与する置換)では異常スプライシングは誘導されず(図6)、これにより、SF3B1Q999Hが非機能的置換であることが示される。
【0079】
[0105]これらのデータにより、Panc 05.04及びNalm−6 SF3B1K700E同質遺伝子細胞が、SF3B1ネオモルフィック変異の機能活性及びスプライシング阻害剤の活性をin vitro及びin vivoにおいて試験するための代表的なモデルであることが確認される。
【0080】
実施例3:ネオモルフィックSF3B1変異により、正常でないmRNAスプライシングが誘導される
[0106]SF3B1MUTがんにおいて見いだされるネオモルフィック変異の機能活性を、SF3B1WT、ネオモルフィックSF3B1変異体、又はSF3B1K700R(SF3B1WT患者と一緒にクラスタリングされる腎明細胞癌患者において観察される変異)を293FT細胞において発現させ、ナノストリング(登録商標)によってスプライシング異常を決定することにより分析した。全ての構築物の発現をウエスタンブロットによって確認した(図7)。試験した全てのSF3B1ネオモルフィック変異で患者試料において観察される代替スプライス部位の同じ使用が示されたが(図8の「MUTアイソフォーム」)、SF3B1K700R及びSF3B1WTでは異常スプライシングは示されなかった(図8)。さらに、SF3B1構築物のいずれの発現によっても、全体的な遺伝子発現(図8の「全遺伝子」)も標準スプライシングアイソフォーム(図8の「WTアイソフォーム」)も変化しなかった。これにより、患者試料のRNA−Seq解析によって示されたのと同じく、ネオモルフィックSF3B1変異の存在と代替スプライシングの相関、並びに異なるネオモルフィック変異の類似した機能活性が示される。
【0081】
[0107]SF3B1K700Eネオモルフィック変異と異常スプライシングの相関を、Panc 05.04細胞株及びPanc 10.05細胞株(それぞれネオモルフィックSF3B1MUT細胞株及びSF3B1WT細胞株;American Type Culture Collection[ATCC]又はRIKEN BioResource Centerから入手し、指示通り培養したもの)においてネオモルフィックSF3B1変異体又はSF3B1WT対立遺伝子を選択的にノックダウンさせるテトラサイクリン誘導性shRNAを使用して分析した。
【0082】
[0108]ノックダウン実験のために、shRNAをコードするウイルスを、製造者の指示に従って培養したLentiX−293T細胞(Clontech)において調製した。誘導性shRNAをpLKO−iKD−H1 puroベクターのAgeI及びEcoRIにクローニングした。ヘアピンの配列は、
shRNA #13 SF3B1PANGCGAGACACACTGGTATTAAG(配列番号1180)、
shRNA #8 SF3B1WTTGTGGATGAGCAGCAGAAAGT(配列番号1181)、及び
shRNA #96 SF3B1MUTGATGAGCAGCATGAAGTTCGG(配列番号1182)
であった。
【0083】
[0109]細胞に、標的pLKO−shRNAプラスミド2.4μgと、それに加えてp Δ8.91(パッケージング)2.4μg、及びVSVG(エンベロープ)0.6μgを、TransIT試薬(Mirus)を使用してトランスフェクトした。ウイルスを使用して、Panc 05.04及びPanc 10.05に、ポリブレン(Millipore)を使用したスピンインフェクションによって感染させた。感染の翌日、細胞を選択培地(1.25μg/mlのピューロマイシン[Life Technologies])で7日間培養して、shRNA発現細胞を選択した。選択された細胞をドキシサイクリン塩酸塩(100ng/mL;Sigma)の存在下又は不在下で培養して、shRNAを誘導した。誘導後4日目に、タンパク質及びRNAのために細胞を回収した。さらに、細胞を、コロニー形成アッセイ及びCellTiter−Glo(登録商標)アッセイ(Promega)のために播種した。9日目に、細胞を、ホルムアルデヒドを用いて固定し、クリスタルバイオレットを用いて染色した。
【0084】
[0110]ウエスタンブロットを使用してSF3B1ノックダウンを確認するために、RIPA(Boston BioProducts)を用いて細胞を溶解させることによってタンパク質抽出物を調製した。各試料に由来するタンパク質20〜25μgをSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロースメンブレン(iblot、Life Technologies)に転写した。メンブレンをまずオデッセイブロッキングバッファー(Odyssey Blocking Buffer)(Li−Cor)を用いてブロッキングし、次いで、SF3B1抗体(a−SAP 155、MBL)及び抗GAPDH(Sigma)と一緒にインキュベートした。Li−Corロバ抗マウス800CW及びLi−Corロバ抗ウサギ800CWを二次抗体として使用し、オデッセイイメージャー(Li−Cor)によって検出した。
【0085】
[0111]対立遺伝子特異的qPCRによってSF3B1ノックダウンを確認するために、RNAを細胞から単離し、MagMax for Microarray及びSuperscript VILO II(Life Technologies)をそれぞれ製造者のマニュアルに従って使用して逆転写した。ViiA7(Life Technologies)を使用してqPCRを実施した。反応にはcDNA20〜50ng、Power SYBR green master mix(Life Technologies)及びプライマー300nMを含めた。以下のプライマーを使用した:
SF3B1WT:FW 5’−GACTTCCTTCTTTATTGCCCTTC(配列番号1183)及びRW 5’−AGCACTGATGGTCCGAACTTTC(配列番号1184)、
SF3B1MUT:FW 5’−GTGTGCAAAAGCAAGAAGTCC(配列番号1185)及びRW 5’−GCACTGATGGTCCGAACTTCA(配列番号1186)、
SF3B1PAN:FW 5’−GCTTGGCGGTGGGAAAGAGAAATTG(配列番号1187)及びRW 5’−AACCAGTCATACCACCCAAAGGTGTTG(配列番号1188)、
β−アクチン(内部標準):FW 5’−GGCACCCAGCACAATGAAGATCAAG(配列番号1189)及びRW 5’−ACTCGTCATACTCCTGCTTGCTGATC(配列番号1190)。
【0086】
生物学的3連反復実験及び技術的3連反復実験を実施した。
【0087】
[0112]ウエスタンブロッティング及び対立遺伝子特異的PCRのどちらによってもSF3B1対立遺伝子のノックダウンが確認された(図9及び10)。
【0088】
[0113]SF3B1変異の発現と異常スプライシングの関連を決定するために、ドキシサイクリン誘導性ノックダウン後に細胞から単離したRNAをナノストリング(登録商標)によって分析した。Panc 05.04では、ネオモルフィックSF3B1MUT対立遺伝子のノックダウン後に、異常スプライスバリアントが下方制御され、標準スプライスバリアントが上方制御されたが、SF3B1WT対立遺伝子の選択的枯渇では逆のことが観察され(図11A)、これにより、ネオモルフィックSF3B1MUTタンパク質が野生型スプライシング活性を有さないことが示される。Panc 10.05細胞では、全shRNAの発現により、全てのスプライスバリアントの制御、並びにSF3B1WTの枯渇が誘導された(図11B)。Panc05.04細胞では、SF3B1PANノックダウンによりどちらの細胞株の成長及びコロニー形成も損なわれたが、ネオモルフィックSF3B1MUTの選択的枯渇では、最小の影響が観察された(図12及び13)。Panc 05.04細胞においてSF3B1WT対立遺伝子をノックダウンした場合には生存能力への部分的な影響が観察されたが、SF3B1PANノックダウンではコロニー形成及び細胞増殖が妨げられ(図12及び14)、これにより、SF3B1の全阻害により、in vitro及びin vivoにおける抗腫瘍活性が導かれることが示される。
【0089】
実施例4:ネオモルフィックSF3B1MUTスプライシングの調節
スプライシングに対するE7107の全体的な影響
[0114]E7107は、U2 snRNP関連複合体SF3Bを標的とすることによってスプライシングを阻害する小分子化合物である(Kotake,Yら、「Splicing factor SF3b as a target of the antitumor natural product pladienolide.」、Nat Chem Biol 3、570−575、doi:10.1038/nchembio.2007.16[2007])。以下の通り、基質Ad2(Pellizzoni,L、Kataoka,N、Charroux,B&Dreyfuss,G、「A novel function for SMN、the spinal muscular atrophy disease gene product、in pre−mRNA splicing.」、Cell 95、615−624[1998])及びFlagタグSF3B1WT又はSF3B1K700Eを発現するNalm−6同質遺伝子細胞株又は293F細胞(Life Technologies;製造者の指示に従って培養したもの)からの核抽出物を使用したin vitroスプライシングアッセイ(IVS)において、スプライシングを阻害するE7107の能力が観察された。
【0090】
[0115]pFLAG−CMV−2−SF3B1プラスミドをトランスフェクトした293F細胞から、又は同質遺伝子型Nalm−6細胞(SBH Sciences)から、核抽出物を調製した。mxSF3B1遺伝子をpFLAG−CMV2(Sigma)にHindIII部位及びKpnI部位にクローニングすることによってプラスミドを生成し、変異mxSF3B1K700E、mxSF3B1R1074H及びmxSF3B1K700E−R1074Hを、同じ部位特異的変異誘発キットを使用して導入した。細胞ペレットを低張性緩衝液(10mMのHEPES、pH7.9、1.5mMのMgCl、10mMのKCl、0.2mMのPMSF、及び0.5mMのDTT;Nalm−6細胞については、40mMのKClを使用した)に再懸濁させた。懸濁液を合計5圧縮細胞量(PCV)まで育てた。遠心分離後、上清を廃棄し、細胞を、低張性緩衝液を用いて3PCVまで育て、氷上で10分インキュベートした。細胞を、ダウンス型ホモジナイザーを使用して溶解させ、次いで、遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを1/2圧縮核量(PNV)の低塩濃度緩衝液(20mMのHEPES、pH7.9、1.5mMのMgCl、20mMのKCl、0.2mMのEDTA、25%グリセロール、0.2mMのPMSF、0.5mMのDTT)に再懸濁させ、その後、1/2PNVの高塩濃度緩衝液(1.4MのKClを使用した以外は低塩緩衝液と同じ)に再懸濁させた。核を30分にわたって穏やかに混合した後、遠心分離した。次いで、上清(核抽出物)を貯蔵緩衝液(20mMのHEPES、pH7.9、100mMのKCl、0.2mMのEDTA、20%グリセロール、0.2mMのPMSF、0.5mMのDTT)中に透析した。タンパク質濃度を、ナノドロップ(NanoDrop)8000 UV−Vis分光光度計(Thermo Scientific)を使用して決定した。
【0091】
[0116]in vitroスプライシング(IVS)反応のために、Ad2由来の配列(Pellizzoni,L、Kataoka,N、Charroux,B&Dreyfuss,G、「A novel function for SMN,the spinal muscular atrophy disease gene product,in pre−mRNA splicing.」、Cell 95、615−624[1998])をpGEM−3Zベクター(Promega)にEcoRI制限部位及びXbaI制限部位を使用してクローニングした。得られたpGEM−3Z−Ad2プラスミドを、XbaIを使用して直線化し、精製し、TE緩衝液に再懸濁し、in vitro転写反応においてDNA鋳型として使用した。Ad2 mRNA前駆体を、それぞれメガスクリプト(MEGAScript)T7及びメガクリア(MegaClear)キット(Invitrogen)を使用して生成し、精製した。核抽出物80μg、20UのRNAsinリボヌクレアーゼ阻害剤(Promega)、Ad2 mRNA前駆体10ng、及び種々の濃度のE7107を使用してスプライシング反応液20μLを調製した。15分間のプレインキュベーション後、活性化緩衝液(0.5mMのATP、20mMのクレアチンリン酸、1.6mMのMgCl)を添加してスプライシングを開始させ、反応液を90分間インキュベートした。RNAを、RNeasy 96 Kit(Qiagen)からの改変プロトコールを使用して抽出した。スプライシング反応をBuffer RLT Plus(Qiagen)350μL中でクエンチし、1.5体積のエタノールを添加した。混合物をRNeasy 96プレートに移し、試料をキットプロトコールに記載されている通り処理した。RNAをdHOで1/10に希釈した。RT−qPCR反応液10μLを、TaqMan RNA−to−CT 1−step kit(Life Technologies)、RNA8.5μL、及びAd2 mRNAプライマー/プローブセット(FW 5’ACTCTCTTCCGCATCGCTGT(配列番号1191)、RW 5’CCGACGGGTTTCCGATCCAA(配列番号1192)及びプローブ 5’CTGTTGGGCTCGCGGTTG(配列番号1193))1μLを使用して調製した。
【0092】
[0117]pSF3B1を評価するために、in vitroスプライシング反応液を上記の通り調製した。反応をクエンチするために、6×レムリバッファー(Laemmli Buffer)(Boston Bioproducts)を添加し、試料をSDS−PAGEゲル(Life Technologies)に供した。分離されたタンパク質をニトロセルロースメンブレンに転写し、次いで、ブロッキング緩衝液(50%オデッセイブロッキングバッファー(Odyssey Blocking Buffer)(Li−Cor Biosciences)及び50%TBST)を用いてブロッキングした。ブロットを抗SF3B1抗体と一緒に終夜インキュベートし、TBSTで何回か洗浄した後、IRDye 680LTロバ−α−マウス−IgG抗体と一緒にインキュベートし、オデッセイCLxイメージングシステム(Odyssey CLx imaging system)(Li−Cor Biosciences)を使用して可視化した。
【0093】
[0118]E7107は、FlagタグSF3B1WT又はSF3B1K700Eを発現するNalm−6細胞又は293F細胞のどちらに由来する核抽出物においてもスプライシングを阻害することができた(図15A及び15B)。
【0094】
E7107は、SF3B1WTタンパク質及びSF3B1K700Eタンパク質の両方に結合する
[0119]SF3B1WTタンパク質及びSF3B1K700Eタンパク質の両方に結合するE7107の能力を、一過性にトランスフェクトした293F細胞に由来する、抗Flag抗体で免疫沈降するFlagタグSF3B1タンパク質を使用した競合結合アッセイにおいて評価した。抗体のビーズへのバッチ固定化を、抗SF3B1抗体(MBL International)80μgと抗マウスPVT SPAシンチレーションビーズ(PerkinElmer)24mgを30分インキュベートすることによって調製した。遠心分離後、抗体−ビーズ混合物を、PhosSTOPホスファターゼ阻害剤カクテル(Roche)及び完全なULTRAプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を補充したPBSに再懸濁させた。核抽出物を、40mgを総体積16mLのPBS中にホスファターゼ及びプロテアーゼ阻害剤と一緒に希釈し、混合物を遠心分離することによって調製した。上清をきれいなチューブに移し、抗体−ビーズ混合物を添加し、2時間インキュベートした。ビーズを遠心分離し、PBS+0.1%トリトンX−100(Triton X−100)で2回洗浄し、PBS4.8mLを用いて再懸濁させた。スラリー及び種々の濃度のE7107を使用して結合反応液100μLを調製した。室温で15分間のプレインキュベーション後、H−プローブ分子(Kotake,Yら、Splicing factor SF3b as a target of the antitumor natural product pladienolide.Nat Chem Biol 3、570−575、doi:10.1038/nchembio.2007.16[2007]に記載されている)1nMを添加した。混合物を室温で15分インキュベートし、マイクロベータ2プレートカウンター(MicroBeta2 Plate Counter)(PerkinElmer)を使用して発光シグナルを読み取った。
【0095】
[0120]図16Aに示されている通り、E7107は、SF3B1WT(IC50:13nM)又はSF3B1K700E(IC50:11nM)のいずれに対するHプローブ分子の結合も同様に競合的に阻害することができた。
【0096】
正常スプライシング及び異常スプライシングに対するE7107及び他の化合物の効果
[0121]E7107を、in vitroでNalm−6同質遺伝子細胞株においても、SF3B1WTタンパク質及びSF3B1K700Eタンパク質によって誘導される正常スプライシング及び異常スプライシングを調節する能力について試験した。Nalm−6同質遺伝子細胞を漸増濃度のE7107で6時間処理し、RNAをqPCRによって分析した。図16Bに示されている通り、標準スプライシングが観察され、EIF4A1のmRNA前駆体の蓄積及び成熟mRNA SLC25A19の下方制御がどちらの細胞株においても観察された。さらに、COASY及びZDHHC16の2つの正常にスプライシングされなかったアイソフォームの成熟mRNAの下方制御がNalm−6 SF3B1K700Eにおいて観察された(図16B)。
【0097】
[0122]正常スプライシング及び異常スプライシングに対するE7107のより広範な活性を調査するために、15nMで2時間及び6時間処理したNalm−6同質遺伝子細胞由来のRNAをナノストリング(登録商標)によって分析した。どちらの同質遺伝子細胞株においても2時間の時点ではスプライシングの部分的な阻害のみが観察され、遺伝子のレベルでは、WT関連アイソフォーム、及びMUT関連アイソフォーム発現が観察された。6時間の処理後、数量化した全てのアイソフォームについて明白な阻害が検出された(図17)。15nMのE7107で6時間処理した同質遺伝子細胞株のRNA−Seq解析により、同様の結果が得られた(図18)。式1又は2を有する追加的な化合物の1つで処理した後の同質遺伝子細胞株における正常スプライシング及び異常スプライシングもRNA−Seqによって分析した。E7107と同様に、これらの追加的な化合物のそれぞれにより、WT関連RNAアイソフォーム及びMUT関連RNAアイソフォームの発現が阻害された(図19;化合物は、垂直方向のグラフの対のそれぞれの上の式番号によって示される)。RNA−Seq解析のために、細胞を、E7107又は他の試験化合物で処理した後にPBSで洗浄し、RNAを、PureLink(Life Technology)を使用して、製造者のマニュアルに報告されている通り単離した。cDNAライブラリー調製、シークエンシング及び未加工の読み取りのフィルタリングをRen,Sら、「RNA−Seq analysis of prostate cancer in the Chinese population identifies recurrent gene fusions、cancer−associated long noncoding RNAs and aberrant alternative splicings.」、Cell Res 22、806−821、doi:10.1038/cr.2012.30(2012)に記載されている通り実施した。
【0098】
[0123]さらに、スプライシングを調節するE7107の能力を、ヒト腫瘍異種移植片を有するマウスにおいて試験した。Nalm−6同質遺伝子型異種移植マウスを、10×10個のNalm−6同質遺伝子細胞をCB17−SCIDマウスの側腹部の皮下に埋め込むことによって生成し、これらのマウスから、E7107(5mg/kg)を単回静脈内(IV)投薬した後の異なる時点で腫瘍を採取し、分析して化合物濃度及びスプライシング制御を決定した。RNAを、リボピュア(RiboPure)(商標)RNA精製キット(アンビオン(Ambion)(登録商標))を使用して腫瘍から単離し、ナノストリング(登録商標)アッセイ又はqPCRのために使用した。RNAをスーパースクリプト(SuperScript)(登録商標)VILO(商標)cDNA合成キット(インビトロジェン(Invitrogen)(商標))の指示に従って逆転写し、cDNA0.04μlをqPCRに使用した。mRNA前駆体EIF4A1及び成熟mRNA SLC24A19についてのqPCR並びに薬物動態評価をEskens,F A.ら、「Phase I pharmacokinetic及びpharmacodynamic study of the first−in−class spliceosome inhibitor E7107 in patients with advanced solid tumors.」、Clin Cancer Res 19、6296−6304、doi:10.1158/1078−0432.CCR−13−0485(2013)に記載されている通り実施した。ZDHHC16に対して使用したプライマー及びプローブは以下のものである:FW 5’−TCTTGTCTACCTCTGGTTCCT(配列番号1194)、RW 5’CCTTCTTGTTGATGTGCCTTTC(配列番号1195)及びプローブ 5’FAM CAGTCTTCGCCCCTCTTTTCTTAG(配列番号1196)。COASYに対して使用したプライマー及びプローブは以下のものである:FW 5’−CGGTGGTGCAAGTGGAA(配列番号1197)、RW 5’−GCCTTGGTGTCCTCATTTCT(配列番号1198)及びプローブ 5’−FAM−CTTGAGGTTTCATTTCCCCCTCCC(配列番号1199)。E7107は、in vitroで観察された通り、Nalm−6 SF3B1K700Kモデル及びNalm−6 SF3B1K700Eモデルのどちらにおいても、同様の薬物濃度に達し、標準スプライシングを調節し(EIF4A1のmRNA前駆体の蓄積及び成熟mRNA SLC25A19の下方制御)、Nalm−6 SF3B1K700E細胞ではCOASY及びZDHHC16の正常でないスプライシングを下方制御した(図20)。標準スプライシング及び異常スプライシングmRNAアイソフォームは、E7107により、早ければ化合物投与の1時間後に下方制御され、発現は処理の直後に正常化し(図21)、これは、E7107薬物動態プロファイルと一致した。Panc 05.04ネオモルフィックSF3B1異種移植モデルにおいても同様の結果が観察された(図22)。これらの全てのデータから、E7107が、in vitro及びin vivoにおいてSF3B1WTタンパク質及びSF3B1K700Eタンパク質に結合し、阻害することが可能な全スプライシング調節因子であることが示される。
【0099】
実施例5:E7107はSF3B1調節による抗腫瘍活性を有する
[0124]SF3B1調節因子E7107を、in vivoにおける抗腫瘍活性について、Nalm−6 SF3B1K700Eの皮下モデルにおけるE7107の影響を決定することによって試験した。10×10個のNalm−6 SF3B1K700EをCB17−SCIDマウスの側腹部の皮下に埋め込み、マウスに、E7107を3つの忍容性が良好である用量レベル(1.25、2.5及び5mg/kg)で1日1回、5日連続して(QDx5)で静脈内投与した。この投薬後、動物を、以下のエンドポイントのいずれかに達するまでモニタリングした:1)過剰な腫瘍体積が1週間に3回測定される(楕円式:(長さ×幅)/2を使用することによって算出される腫瘍体積)、又は2)麻痺又は過剰な体重減少などの任意の健康問題が発生する。部分退縮(PR)及び完全退縮(CR)は、3回連続した腫瘍測定値が出発体積のそれぞれ<50%及び<30%であると定義される。
【0100】
[0125]1.25mg/kg群では、Nalm−6 SF3B1K700E異種移植群の全ての動物(n=10)が完全退縮(CR)に達した。2.5mg/kg群では、Nalm−6 SF3B1K700E群において9日目までに10/10のCRが観察された。5mg/kg群では、全てのNalm−6 SF3B1K700E異種移植動物が早ければ処置の9日後にCRに達し、平均生存時間は250日を超えた(図23及び24)。これらのデータから、in vivoにおけるSF3B1K700E異種移植片でのSF3B1調節因子の抗腫瘍活性が実証される。
【0101】
[0126]in vitroにおいてCLL患者試料におけるスプライシングを阻害するE7107の能力を、E7107を10nMで用いて6時間にわたって処理した、E7107で処理した患者細胞の試料からRNAを単離し、RNA−Seq解析を実施することによって決定した。そうするために、細胞を、E7107で処理後にPBSで洗浄し、RNAを、PureLink(Life Technology)を製造者のマニュアルに報告されている通り使用して単離した。cDNAライブラリー調製、シークエンシング及び未加工の読み取りのフィルタリングをRen,Sら、「RNA−Seq analysis of prostate cancer in the Chinese population identifies recurrent gene fusions、cancer−associated long noncoding RNAs及びaberrant alternative splicings.」、Cell Res 22、806−821、doi:10.1038/cr.2012.30(2012)に記載されている通り実施した。図25に示されている通り、E7107により、SF3B1WT患者試料及びネオモルフィックSF3B1MUT患者試料における標準スプライシングアイソフォームの発現が阻害された。E7107により、ネオモルフィックSF3B1変異を有する全てのCLL患者試料における異常スプライシングを阻害することができた。
【0102】
[0127]本明細書を考察し、本明細書に開示されている本発明を実行することにより、本発明の他の実施形態が当業者に明らかになるであろう。本明細書及び実施例は単に例示的なものと考え、本発明の真の範囲及び主旨は以下の特許請求の範囲によって示されるものとする。
【0103】
[001]本出願は、その内容全体がこれによって参照により本明細書に組み込まれる、2015年9月1日出願の米国仮特許出願第62/212,876号に関する優先権の利益を主張するものである。
【0104】
[002]本出願は、ASCII形式で電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2014年5月16日に作成されたASCIIコピーは、名称12636.6−304_SL.txt、サイズ183キロバイトである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
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図22
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図24
図25
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]