特許第6876688号(P6876688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876688プルトニウムの還元ストリッピングのための操作における抗亜硝酸剤としての、少なくとも5個の炭素原子を含むアルドキシムの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876688
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】プルトニウムの還元ストリッピングのための操作における抗亜硝酸剤としての、少なくとも5個の炭素原子を含むアルドキシムの使用
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/46 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   G21C19/46 624
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-519915(P2018-519915)
(86)(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公表番号】特表2018-536847(P2018-536847A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】EP2016074987
(87)【国際公開番号】WO2017067933
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年10月10日
(31)【優先権主張番号】1560048
(32)【優先日】2015年10月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディニ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ポショー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ベルニー,ジレ
(72)【発明者】
【氏名】バラギュー,コラリー
(72)【発明者】
【氏名】モンテュイア,マーク
【審査官】 大門 清
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−526769(JP,A)
【文献】 特表2008−525812(JP,A)
【文献】 国際公開第00/013187(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0089819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/46
G21F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式R−CH=N−OH[式中、Rは、少なくとも4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖である]の少なくとも1つのアルドキシムの、プルトニウムの還元ストリッピング操作における抗亜硝酸剤としての使用であって、
前記プルトニウムの還元ストリッピング操作が:
−有機希釈剤中に抽出剤および酸化状態IVのプルトニウムを含む非水混和性の有機相を、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)へ還元し得る還元剤および硝酸を含む水性相と接触させる工程であって、前記還元剤が、ウラン(IV)、硝酸ヒドロキシルアンモニウム、ヒドロキシルアミンのアルキル化誘導体、スルファミン酸第一鉄、およびスルファミン酸の中から選択され、前記有機相および水性相の一方がまたアルドキシムも含んでいる工程;次に
−そのように接触した有機相および水性相を分離する工程、
を含む、使用
【請求項2】
Rが、4から12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Rが、4から8個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
Rが、4から8個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記アルドキシムが、ペンタナールオキシムまたはヘキサナールオキシムである、請求項4に記載の使用
【請求項6】
前記還元剤が、ウラン(IV)または硝酸ヒドロキシルアンモニウムである、請求項に記載の使用。
【請求項7】
前記抽出剤が、リン酸トリ−n−アルキルである、請求項からのいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記抽出剤が、リン酸トリ−n−ブチルである、請求項に記載の使用。
【請求項9】
前記アルドキシムが、0.01mol/Lから3mol/Lの有機または水性相の濃度において使用される、請求項からのいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記水性相が、前記有機相により非抽出性であるオキシムをさらに含む、請求項からのいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記有機相により非抽出性である前記オキシムがアセトアルドキシムである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記プルトニウムの還元ストリッピング操作が、PUREX法またはCOEX法のプルトニウムストリッピング操作の1つである、請求項1から11のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み核燃料の処理に関連する分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、プルトニウムの還元ストリッピング操作における抗亜硝酸剤としての、少なくとも5個の炭素原子を有するアルドキシムの使用に関する。
【0003】
本発明は、プルトニウムの1つ以上の還元ストリッピング操作を含む使用済み核燃料の処理のための任意の方法に適用し得る。
【0004】
前記操作は特に、例えば最新の核燃料処理工場(すなわち、フランスのラ・アーグ(La Hague)におけるUP3およびUP2−800工場、および日本の六ケ所村工場)で実施されたピューレックス(PUREX)法において、まずこの方法の第1の除染サイクルのU/Pu分配工程を実施するため、そして第二に、この第1の除染サイクルに続く「第2のプルトニウムサイクル」と通常称されるプルトニウム精製サイクルにおいて核分裂生成物のプルトニウム除染を改善するために含まれている。
【0005】
それらはまた、このピューレックス法から派生したいくつかの方法、例えばCOEX法の名称で知られる国際特許出願[特許文献1]に記載されたもの、または国際特許出願[特許文献2]に記載されたものにも含まれている。
【背景技術】
【0006】
使用済み核燃料の処理のための上記の方法において実施されている、プルトニウムの還元ストリッピング操作においては、プルトニウムは、その中でプルトニウムが酸化状態(IV)にある有機相(または溶媒相)から、それを有機相に対するその親和性が非常に低い状態である酸化状態IIIへ還元することにより、水性相へ通過される。
【0007】
プルトニウム(IV)のプルトニウム(III)への還元は、還元剤により誘発され、該還元剤は、ストリッピングのために使用される水性相へ添加され、かつ抗亜硝酸剤により安定化される。
【0008】
例えば、最新の核燃料再処理工場で実施されたピューレクス法(本明細書の残りの部分ではより簡単に「PUREX法」と称される)の、第1の除染サイクルでは、U/Pu分配工程においてプルトニウムをストリッピングするために使用される還元剤は、ウラン(IV)(または硝酸ウラナス)であり、一方、抗亜硝酸剤はヒドラジンとしても公知の硝酸ヒドラジニウムである。
【0009】
考慮されるべき主要な化学反応は以下の通りである:
−ウラン(IV)によるプルトニウム(IV)のプルトニウム(III)への還元(機能的反応):
4++2Pu4++2HO→UO2++2Pu3++4H
−プルトニウム(III)のプルトニウム(IV)への再酸化(寄生反応):
Pu3++HNO+1.5H+0.5NO→Pu4++0.5HO+1.5HNO
−ヒドラジンによる亜硝酸のアジ化水素酸(azothydric acid)への破壊(有用な反応):
NO+HNO→NH+HNO+2HO。
【0010】
最初の2つの反応は、水性相および有機相中で起こるのに対し、ヒドラジンによる亜硝酸の破壊反応は、有機相によるヒドラジンの非抽出性が原因で水性相でのみ起こり、この有機相は、水素化テトラプロピレン(またはHTP)中30%(v/v)のリン酸トリ−n−ブチル(またはTBP)からなる。
【0011】
有機相中のプルトニウム(III)の存在は、少量であっても、最初の2つの反応によりウラン(IV)の酸化を触媒し、それにより亜硝酸を発生させる。
【0012】
実験室用遠心抽出器で実験的研究を実施した場合、抽出器滞留時間が短い場合(数秒間程度)でも、酸化によるウラン(IV)の消費が非常に高いことが確認できた。このウラン(IV)の酸化は、ヒドラジンが水性相中のみに含有されることから、本質的に有機相中で発生する。結果として、プルトニウムの還元ストリッピング操作スキームは、大過剰の還元剤を提供する。
【0013】
ヒドラジンによる亜硝酸の破壊反応により生成されたアジ化水素酸は、次に反応:
HN+HNO→N+NO+H
に従って、亜硝酸と反応する。
【0014】
しかしながら、この反応のキネティクスは、ヒドラジンによる亜硝酸の破壊よりもずっと遅く、そのことは、アジ化水素酸がU/Pu分配工程の流出水性相および有機相中に見出されることを意味する。
【0015】
それ故、ヒドラジンは有機相により非抽出性であり、かつそれ故水性相中でのみ作用することから、このことが試薬の高い消費と、この方法の産業応用を妨げる化学種の製造とをもたらす。
【0016】
この問題を解決するため、国際特許出願[特許文献3]において、ブチルアルデヒドオキシムもしくはブチルアルドキシムとも称されるブタナールオキシムを、ヒドラジンと組合せて、ブタナールオキシムが有機相の安定化を可能にする一方で、ヒドラジンが水性相を安定化する、2相の抗亜硝酸システムを使用することが提案された。
【0017】
ブタナールオキシムをヒドラジンと共に使用することは、特に、プルトニウムの還元ストリッピングを実施するのに必要な硝酸ウラナス及びヒドラジンの量を著しく減少できること、およびそれにより有機相中のヒドラジンの非抽出に関連した不利益を軽減するという、いくつかの利点を可能にするが、しかしながら以下の理由によりそれは完全に充分というわけではない:
−有機相によるブタナールオキシムの比較的低い抽出により、その中でプルトニウムの還元ストリッピングが起こる抽出器へこのオキシムを多量に添加することが余儀なくされ、有機相中にブタナールオキシムの有効濃度を得ることが所望される場合;特にU/Pu分配工程においては、有機相によるブタナールオキシムの抽出はアクチニドによるこの相の飽和により大幅に減少され、そのことが最終的にこのオキシムの使用を、この分配工程の実施にはほぼ適さないものにすること;
−水性相中でヒドラジンを連続して使用すること;実際、ヒドラジンは水性相中で最も有効な抗亜硝酸剤の1つであるという事実にもかかわらず、その使用は、アジ化水素酸の生成に関連して既に示した問題が原因となるばかりではなく、その毒性の理由からも制限される:ヒドラジンは、事実上CMR物質のリストに載っており、すなわち、化学品の登録、評価、認可、および制限(REACH規制)に関する欧州議会と理事会の規則(EC)1907/2006により、発癌性、変異原性、および/または生殖・発生毒性の可能性が潜在的にあるか、またはそうであると見なされており、かつ遅かれ早かれこの規則の付属書(Annex)XIVの元に認可に従う物質のリストに入れられそうであり、その場合には、欧州化学機関(European Chemicals Agency(ECHA))により示される特定の免除がない限り、そのマーケティングおよび工業的使用は禁止されるであろう。
【0018】
加えて、ヒドラゾンの生成につながる、ブタナールオキシムのヒドラジンとの反応が観察されている。この反応は、ブタナールオキシムの性能を低減し、これら2つの試薬の過剰消費をもたらす。
【0019】
上記を考慮して、本発明者らはそれ故、高い抗亜硝酸活性をもつ化合物であって、しかしその使用が、PUREX法において現在使用されるようなヒドラジンの使用によるか、または[特許文献3]において提案されたような2相のブタナールオキシム/ヒドラジンシステムの使用によってもたらされる不利益のない、該化合物を見つけようと試みた。
【0020】
より具体的には、本発明者らはこれらの化合物が、有機相、特にPUREX法(同じ温度および圧力条件下)において使用されるタイプの有機相により、有機相がアクチニドで飽和される場合であってもブタナールオキシムよりもさらに抽出性でなければならず、それによって(1)プルトニウムの還元ストリッピングに必要なこれらの化合物の量を減少させること、および(2)これらの化合物をPUREX法の第1の除染サイクルにおいてU/Pu分配工程におけるプルトニウムのストリッピングのため、ならびにこの方法の第2のプルトニウムサイクルにおいてプルトニウムのストリッピングのために使用可能にする、という目標を自ら設定した。
【0021】
本発明者らはさらに、これらの化合物が、ヒドラジンの使用を完全に回避させるようにしなければならないという目標を自ら設定した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第2006/072729号
【特許文献2】国際公開第2011/000844号
【特許文献3】国際公開第2008/148863号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
これらの、および他の目的は、プルトニウムの還元ストリッピング操作における抗亜硝酸剤として、少なくとも5個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルドキシム、すなわち、式R−CH=N−OH[式中、Rは、少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素鎖である]のオキシムの使用を提案する、本発明により達成される。
【0024】
好ましくは、アルドキシムは、式中、Rが最大でも12個の炭素原子、および有利には最大でも8個の炭素原子を含む、上記の式を満たす。
【0025】
より良くは、アルドキシムが、式中、Rが4から8個の炭素原子を有する直鎖アルキル鎖である、上記の式を満たす。
【0026】
前記アルドキシムは、式n−C−CH=N−OHの、バレルアルデヒドオキシムまたはバレルアルドキシムとも称されるペンタナールオキシム、式n−C11−CH=N−OHのヘキサナールオキシム、式n−C13−CH=N−OHのヘプタナールオキシム、式n−C15−CH=N−OHのオクタナールオキシム、および式n−C17−CH=N−OHのノナナールオキシムである。
【0027】
アルドキシムの中でも、特別な好ましさは、ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムに与えられる。
【0028】
本発明に準拠すれば、プルトニウムの還元ストリッピング操作は、好ましくは:
−有機希釈剤中に抽出剤および酸化状態IVのプルトニウムを含む非水混和性の有機相を、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)へ還元し得る還元剤および硝酸を含む水性相と接触させる工程であって、アルドキシムが、その水への溶解度に依存して、有機相中または水性相中のいずれかに含有されている工程;次に
−そのように接触された有機相および水性相を分離する工程、
を含む。
【0029】
それ故、水中に部分的に可溶性であり、かつプルトニウムの還元ストリッピング操作において使用可能な有機希釈剤中に部分的に可溶性である(これらの操作に通常使用される温度および圧力の条件下で)ペンタナールオキシムは、水性相又は有機相のいずれかに添加され得るが、水に不溶性またはほぼ不溶性である(上記の条件下で)6個以上の炭素原子を有するアルドキシムは、有機相へ添加される。
【0030】
本発明においては、水性相中に含有される還元剤は、好ましくは、ウラン(IV)、硝酸ヒドロキシルアミンとも称される硝酸ヒドロキシルアンモニウム、ヒドロキシルアミンのアルキル化誘導体、スルファミン酸第一鉄、およびスルファミン酸の中から選択される。
【0031】
これらの還元剤の中では、特別の好ましさは、ウラン(IV)および硝酸ヒドロキシルアンモニウムに与えられ、これらは、PUREX法において、まず、第1の除染サイクルにおけるU/Pu分配工程において、次に、第2のプルトニウムサイクルにおいて、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元するために使用される2つの薬剤である。
【0032】
また、抽出剤は好ましくは、リン酸トリ−n−アルキルおよびより良くはTBPであり、一方有機希釈剤は、好ましくは直鎖または分枝鎖ドデカン、例えばn−ドデカンまたはHTP、イソパラフィン系溶媒、例えばイサン(Isane)IP185、イサンIP165、またはイソパール(Isopar)L、またはケロシンであり、この場合、抽出剤は好ましくは、この有機希釈剤中に30%(v/v)の割合で含有される。
【0033】
いずれの場合も、アルドキシムは、好ましくは0.01mol/Lから3mol/Lまで、およびより良くは0.05mol/Lから0.5mol/Lまでの範囲の有機または水性相の濃度において使用され、一方還元剤は、好ましくは0.02mol/Lから0.6mol/Lまで、およびより良くは0.2mol/Lから0.4mol/Lまでの範囲の水性相の濃度において使用される。
【0034】
硝酸については、これは有利には、0.05mol/Lから2mol/Lまでの範囲の濃度において、水性相中に含有される。
【0035】
本発明においては、アルドキシムは、有機相と水性相が互いに接触しているとき、それらの間にバランスよく分配されている場合には、プルトニウムの還元ストリッピング操作における唯一の抗亜硝酸剤として使用可能である。しかしながら、これが事実ではない場合、アルドキシムは有機相により高度に抽出性であり(プルトニウムの還元ストリッピング操作において通常使用される温度および圧力の条件下で)−このことは典型的には、ヘキサナールオキシムまたはオクタナールオキシムなどの6個以上の炭素原子を有するアルドキシムについて起こるが−そこでこのアルドキシムは、有利には、この有機相により非抽出性(同じ温度および圧力の条件下で)のオキシムである第2の抗亜硝酸剤と組合せて使用される。
【0036】
この場合、水性相中に含有される非抽出性のオキシムは、好ましくは、式CH=N−OHを有する、ホルムアルデヒドオキシムとも称されるホルムアルドキシム、または式CH−CH=N−OHを有する、アセトアルデヒドオキシムとも称されるアセトアルドキシムあり、かつ有利には、0.01mol/Lから1mol/Lまで、およびより良くは0.05mol/Lから0.2mol/Lまでの範囲の水性相の濃度において使用される。
【0037】
本発明の特定の1つの好ましい提供によれば、プルトニウムの還元ストリッピング操作は、好ましくはPUREX法またはCOEX法におけるプルトニウムのストリッピング操作の1つである。
【0038】
本発明は、多くの利点を可能にする。それは、あるものについては単独で使用される場合に、また他のものについては有機相により非抽出性のオキシムと組合せて使用される場合に、水性相および有機相の双方においてプルトニウム(III)からプルトニウム(IV)への再酸化を最も有効に阻止し得る、ある量の抗亜硝酸剤を与える。
【0039】
それ故、本発明が、PUREX法のU/Pu分配工程において実施されるような操作のためであろうと、或いはこの同じ方法の第2のプルトニウムサイクルにおいて実施されるような操作のためであろうと、ヒドラジンの使用なしにプルトニウムの還元ストリッピング操作を可能にするという事実に加えて、それはまた、抗亜硝酸剤がヒドラジンである場合に必要な量に比較して、これらの操作を実施するのに必要な還元剤および抗亜硝酸剤の量の非常に強力な削減も可能にする。
【0040】
本発明はそれ故、これらの抗亜硝酸剤をプルトニウムの還元ストリッピング操作に特化された装置に添加するために必要なポイントの数の低減、およびそれ故、この装置の単純化を想定することを可能にする。
【0041】
さらに、プルトニウムのストリッピングはより効率的であり、かつそれによりストリッピング操作の終わりには、抗亜硝酸剤としてヒドラジンを用いる場合に得られるよりも高いプルトニウム濃度を有する水性相を得ることにつながることから、本発明はまた、プルトニウムの還元ストリッピング操作を実施するために現在用いられている装置のサイズを減少させることを想定できるようにする。
【0042】
本発明の他の特徴および他の利点は、以下の実施例を読むことでより明らかとなるであろう。
【0043】
明らかに、これらの実施例は本発明の主題を例示するものとして示されるにすぎず、いかなる方法でもそれについて制限的であるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】n−ドデカン中のTBPを含む有機相と、異なる濃度の硝酸を含む水性相との間の、ペンタナールオキシム(記号■)およびヘキサナールオキシム(記号●)の分配係数を示す図であり;比較のため、この図はまたブタナールオキシムについて同じ条件下で得られた分配係数(記号▲)も示している。
図2A】有機相と水性相との間の、ペンタナールオキシム(記号■)およびヘキサナールオキシム(記号●)分配係数を示す図であり、これは、ウラン(IV)の濃度および硝酸の濃度の観点から、PUREX法のU/Pu分配工程において得られた有機相および水性相をシミュレートする。
図2B】有機相と水性相との間の、ペンタナールオキシム(記号■)およびヘキサナールオキシム(記号●)分配係数を示す図であり、これは、ウラン(IV)の濃度および硝酸の濃度の観点から、PUREX法のU/Pu分配工程において得られた有機相および水性相をシミュレートする。
図3】水性硝酸相中のペンタナールオキシムによる亜硝酸の破壊キネティクス(曲線A)を例示する図であり;比較のため、この図はまた、同じ条件下で得られるような、ブタナールオキシムによる(曲線B)、およびアセトアルドキシムによる(曲線C)、亜硝酸の破壊キネティクスも例示する。
図4】n−ドデカン中のTBPを含む有機相中のペンタナールオキシムによる(曲線A)、およびヘキサナールオキシムによる(曲線B)、亜硝酸の破壊キネティクスを例示する図であり;比較のため、この図はまた、同じ条件下で得られるような、ブタナールオキシムによる(曲線C)亜硝酸の破壊キネティクスも例示する。
図5】n−ドデカン中のTBPを含む有機相において、これらの有機相を水性硝酸相と接触させ、続いてこれらの相を分離した後の、ペンタナールオキシム(曲線A)およびヘキサナールオキシム(曲線B)の存在下で得られるウラン(IV)の酸化キネティクスを例示する図であり;比較のため、この図はまたブタナールオキシムの存在下(曲線C)およびいかなるオキシムも不在下(曲線D)での、同じ条件下で得られるようなウラン(IV)の酸化キネティクスも例示する。
図6】水性硝酸相中でペンタナールオキシムの存在下(曲線A)で得られるウラン(IV)の酸化キネティクスを例示する図であり;比較のため、この図はまたブタナールオキシム(曲線B)、アセトアルドキシム(曲線C)、およびヒドラジン(曲線D)の存在下で得られるようなウラン(IV)の酸化キネティクスも例示する。
図7】ヘキサナールオキシムが抗亜硝酸剤として使用された場合のプルトニウムの還元ストリッピング試験後の、有機相中(TBP/HTP)に含有されるウラン(IV)の酸化キネティクスを例示する図である。
図8】ヘキサナールオキシムが抗亜硝酸剤として使用され、かつこれにおいてテクネチウムがプルトニウムと一緒にストリッピングされた場合の、プルトニウムの還元ストリッピング試験後の、有機相中(TBP/HTP)に含有されるウラン(IV)の酸化キネティクスを例示する図である。
図9】ペンタナールオキシムが抗亜硝酸剤として使用された場合のプルトニウムの還元ストリッピング試験後の、有機相(TBP/HTP)中のウラン(IV)の酸化キネティクスを例示する図である。
図10】100mg/L(記号■)または200mg/L(記号×)のテクネチウムを含む水性硝酸相における、アセトアルドキシムの存在下でのウラン(IV)の酸化キネティクスを例示する図であり;比較のため、この図はまた、同じ条件下でヒドラジンと100mg/L(記号▲)または200mg/L(記号●)のテクネチウムとの存在下で得られるような、ウラン(IV)の酸化キネティクスも例示する。
図11】ヘキサナールオキシム/アセトアルドキシムの組合せが抗亜硝酸剤系としてそこで使用される、U/Pu分配工程を含む、使用済み核燃料の溶解液を処理するためのスキームを示す図であり;この図において、長方形1から7は、使用済み核燃料の処理に通常使用されるような多段階の抽出器(ミキサーセトラー、パルスカラム、遠心分離抽出器)を表し;また、抽出器に入退出する有機相は、実線で記号化され、一方抽出器に入退出する水性相は、点線で記号化される。
図12】コンピュータ計算によって得られるような(曲線A)、図11に例示されたスキームの抽出器5および6において循環する水性相中の、ウラン(IV)濃度のプロフィールを例示する図であり;比較のため、このスキームにおいて、ヘキサナールオキシムおよびアセトアルドキシムがヒドラジンで置き換えられた場合に得られるウラン(IV)濃度のプロフィール(曲線B)、ならびにプルトニウム(III)の再酸化反応が完全に中和された場合に得られるウラン(IV)濃度のプロフィール(曲線C)も示されている。
図13】実験的に(記号×)、およびコンピュータ計算によって(曲線−)得られるような、図11に例示されたスキームの抽出器5および6において循環する水性相中の、プルトニウム濃度のプロフィールを例示する図である。
図14】実験的に、およびコンピュータ計算によって得られるような、図11に例示されたスキームの抽出器5および6において循環する水性相中の、ウラン(IV)、ウラン(VI)、および全ウラン濃度のプロフィールを例示する図であり:この図において、記号×、◆、および■は、それぞれ実験的に得られたウラン(VI)、ウラン(IV)、および全ウラン濃度のプロフィールに対応し、一方曲線A、B、およびCは、それぞれコンピュータ計算により得られたウラン(VI)、ウラン(IV)、および全ウラン濃度のプロフィールに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施例1:ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの特性
1.1− 分配係数
ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの、Dで表される分配係数は、2シリーズの試験、すなわち:
−これらの分配係数を、n−ドデカン中に30%(v/v)のTBPを含む有機相と、0.2mol/Lから2mol/Lまでの硝酸を含む水性相との間で測定することを意図した第1シリーズ;および
−これらの分配係数を、有機相と水性相との間で測定することを意図した第2シリーズであり、これは、ウラン(IV)の濃度および硝酸の濃度の観点から、PUREX法のU/Pu分配工程において得られる有機相および水性相をシミュレートし、このシリーズは、BX1からBX8で表される8段階を有するミキサーセトラーユニットにおいて実施される、
を用いて測定した。
【0046】
これら2つのシリーズの試験のため、各有機相は、容積/容積で、水性硝酸相と、室温(20−25℃)および攪拌下で15分間にわたり接触された。ペンタナールオキシムは、水性相に添加され、一方ヘキサナールオキシムは有機相に、それぞれ0.1mol/Lの相の濃度で添加された。
【0047】
接触された有機相および水性相を、遠心分離により互いに分離し、これらの相中のアルドキシムの濃度を、水性相については高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、有機相については気相クロマトグラフィー(GPC)により測定した。
【0048】
シリーズの第1シリーズにおいて得られた分配係数を、以下の表1に示す。それらはまた、この表に示された値が移された図1にも示されており、かつこれにおいて、ペンタナールオキシムの分配係数は、記号■で表されているのに対し、ヘキサナールオキシムの分配係数は、記号●で表されている。比較のため、図1はまたブタナールオキシムについて同じ条件下で得られた分配係数(▲)も示している。
【0049】
【表1】
【0050】
試験の第2シリーズで得られた分配係数は、以下の表2に示されている。それらはまた、分配係数(Y−軸)および水性相の酸性度(X−軸)の値が移されている、図2Aおよび2Bにも示されており、これにおいては、分配係数(Y−軸)および水性相の酸性度(X−軸)の値が移されており、かつこれにおいて、ペンタナールオキシムの分配係数は、記号■に相当し、一方ヘキサナールオキシムの分配係数は、記号●に相当する。縦座標は、図2Aでは十進法であり、図2Bでは対数スケールである。
【0051】
【表2】
【0052】
表1および図1に示したように、ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムは、ブタナールオキシムのものよりも明らかに高い分配係数を示し、それらが有機相中ではブタナールオキシムよりもはるかに抽出性であることを意味している。
【0053】
水性相がアクチニドを含む場合(表2および図2Aおよび2B)、ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの分配係数は、アクチニドがない場合のそれらの値に比較して減少する;しかしながら、それらは充分に高いままであり、ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムがまだ充分に抽出されるようにする。同じ条件下での、ブタナールオキシムの分配係数は、1よりも小さい。
【0054】
ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの分配係数は、以下を可能にする:
−ペンタナールオキシムについては:有機相と水性相との間のバランスのとれた分配に起因して、ペンタナールオキシムが単独で有機相および水性相の双方を安定化することも可能な、プルトニウムの還元ストリッピング操作のためのスキームの開発の可能性;一方、
−ヘキサナールオキシムについては:有機相におけるほぼ定量的な抽出に起因して、ヘキサナールオキシムが有機相を安定化するために非常に少量で使用されることも可能な、プルトニウムの還元ストリッピング操作のためのスキームの開発の可能性であり、この場合、水性相はアセトアルドキシムなどの親水性オキシムにより安定化されることも可能である;および
−これら2つのアルドキシムについて:U/Pu分配工程におけるその使用の可能性。
【0055】
1.2− 抗亜硝酸作用
ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの亜硝酸(HNO)を破壊する能力を、2シリーズの試験、すなわち:
−ペンタナールオキシムによる亜硝酸の破壊のキネティクス、および比較のための、ブタナールオキシムによる亜硝酸の破壊キネティクスを、0.1mol/Lの硝酸を含む水性相において測定することを意図した第1シリーズ;および
−ペンタナールオキシムによる、およびヘキサナールオキシムによる、亜硝酸の破壊キネティクスと、比較のための、ブタナールオキシムによる亜硝酸の破壊キネティクスを、n−ドデカン中30%(v/v)のTBPを含む有機相において測定することを意図した第2シリーズ、
において評価した。
【0056】
第1シリーズの試験においては、水性硝酸相中の亜硝酸およびペンタナールオキシムまたはブタナールオキシムの初期濃度は、それぞれ相当たり0.005mol/Lおよび0.025mol/Lであった。これらの水性相中の亜硝酸濃度の時間変化を、分光光度法によりモニターした(λ=370nmにおけるHNOピークの連続測定)。
【0057】
第2シリーズの試験では、予め1M硝酸で平衡化された、有機相の第1のバッチを、まず、容積/容積で、1mol/Lの硝酸および0.002mol/Lの亜硝酸を含む水性相と、室温(20−25℃)および攪拌下に10分間接触させ、次に遠心分離によりこの水性相から分離した。亜硝酸は、有機相中にほぼ定量的に抽出された。
【0058】
予め1M硝酸で平衡化され、かつそれにペンタナールオキシム、ヘキサナールオキシム、またはブタナールオキシムが0.15mol/Lの有機相の濃度で添加された、有機相の第2のバッチを、容積/容積で、1mol/Lの硝酸を含む水性相と、室温(20−25℃)および攪拌下に10分間接触させ、そして次に遠心分離によりこの相から分離した。オキシムは、有機相と水性相との間にそれ自体を分配した。
【0059】
第1のバッチから得られた1mLの有機相(およびそれ故亜硝酸を含む)と、第2のバッチから得られた8mLの有機相との間で、混合物が素早く形成された。これらの混合物中の亜硝酸濃度の変化を、分光光度分析によりモニターした(λ=370nm)。
【0060】
これらの試験の結果は、図3および4において、残留亜硝酸のパーセントを時間の関数として(図3では秒で、図4では分で)表す曲線の形態で示される。
【0061】
図3では、第1シリーズの試験に関連して、曲線Aは、ペンタナールオキシムについて得られた結果に対応し、一方曲線Bは、ブタナールオキシムについて得られた結果に対応する。この図はまた、アセトアルドキシムによる亜硝酸の破壊キネティクス(曲線C)も示しており、前記キネティクスは、実験的に測定された速度定数からのシミュレーションにより決定された。
【0062】
図4では、第2シリーズの試験に関連して、曲線Aは、ペンタナールオキシムについて得られた結果に対応し;曲線Bは、ヘキサナールオキシムについて得られた結果に対応し、一方曲線Cは、ブタナールオキシムについて得られた結果に対応する。
【0063】
これらの図は:
−水性単相系においては、ペンタナールオキシムは、ブタナールオキシムおよびアセトアルドキシムよりも多数の炭素原子を含むにもかかわらず、ブタナールオキシムおよびアセトアルドキシムと同等の抗亜硝酸作用を示すこと(図3);一方
−有機単相系においては、これにおいて、ペンタナールオキシム、ヘキサナールオキシム、またはブタナールオキシムを含有する有機相は、予め水性相と接触され(有機相と水性相との間でこれらのオキシムの分割をもたらすことに起因して、有機相中のそれらの濃度は減少する)、最初に有機相へ添加されたオキシムのある同一の濃度については、有機相中の亜硝酸の破壊が、ペンタナールオキシムまたはヘキサナールオキシムの存在下では、ブタナールオキシムの存在下にある場合に比較して、明らかに加速されることが観察されること(図4)、
を示している。
【0064】
実施例2:ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムによるアクチニドの安定化
ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの、水性相または有機相中でアクチニドを安定化する能力を、2シリーズの試験、すなわち:
−n−ドデカン中の30%(v/v)のTBPを含む有機相における、ペンタナールオキシム、ヘキサナールオキシム、および比較のためのブタナールオキシムの存在下での、ならびにいかなるオキシムも不在下での、ウラン(IV)の酸化キネティクスを、これらの有機相を1.8mol/Lの硝酸を含む水性相と接触させ、続いてこれらの相を分離した後に測定することを意図した第1シリーズ;および
−1.3mol/Lの硝酸を含む水性相において、ペンタナールオキシム、および比較のためのブタナールオキシム、アセトアルドキシム、およびヒドラジンの存在下で、ウラン(IV)の酸化キネティクスを測定することを意図した第2シリーズ、
において評価した。
【0065】
第1シリーズの試験では、予め1.8Mの硝酸で平衡化され、かつこれにおいて、適用できる場合には0.1mol/Lの濃度でオキシムが添加された各有機相を、6g/Lのウラン(IV)を含む水性硝酸相と、O/A容積比2で、室温(20−25℃)および攪拌下に10分間接触させた。接触された有機相および水性相は、遠心分離により互いに分離され、かつ有機相中のウラン(IV)の濃度の変化を、200時間にわたる時間間隔で、分光光度法(λ=653nm)により測定した。
【0066】
第2シリーズの試験では、水性硝酸相中のウラン(IV)および抗亜硝酸剤(オキシムまたはヒドラジン)の初期濃度は、それぞれ66g/Lおよび0.2mol/Lであった。これらの水性相中のウラン(IV)濃度の時間変化を、300日にわたる時間間隔で、分光光度法(λ=653nm)により測定した。
【0067】
これらの試験の結果は、図5および6において、残留ウラン(IV)のパーセントを時間の関数として(図5では時間で、図6では日で)表す曲線の形態で示される。
【0068】
図5では、第1シリーズの試験に関連して、曲線Aは、ペンタナールオキシムについて得られた結果に対応し;曲線Bは、ヘキサナールオキシムについて得られた結果に対応し;曲線Cは、ブタナールオキシムについて得られた結果に対応し、一方、曲線Dは、オキシムの不在下で得られた結果に対応する。
【0069】
図6では、第2シリーズの試験に関連して、曲線Aは、ペンタナールオキシムについて得られた結果に対応し;曲線Bは、ヘキサナールオキシムについて得られた結果に対応し;曲線Cは、アセトアルドキシムについて得られた結果に対応し、一方、曲線Dは、ヒドラジンについて得られた結果に対応する。
【0070】
図5に示したように、ウラン(IV)は、オキシムの存在下では少なくとも15時間にわたり有機相中で完全に安定であり、一方その酸化は、何らオキシムがない場合には、8時間未満で完了する。また、ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの存在下ではウラン(IV)の10%未満が100時間で酸化され、ブタナールオキシムの存在下ではそのようなことはないことから、ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムが有機相中でウラン(IV)を安定化させる能力は、ブタナールオキシムのものよりも大きい。
【0071】
水性相では、ペンタナールオキシムがウラン(IV)を安定化する能力はまた、ブタナールオキシムのものよりも大きい。しかしながらそれは、互いに匹敵するアセトアルドキシムおよびヒドラジンのものよりも小さい(図6)。
【0072】
全てのこれらの時間(日)は、それでもなお、有機および水性相がプルトニウムの産業用のストリッピング操作中に存在する時間の長さよりもかなり長い。
【0073】
これらの結果は、高濃度のウラン(IV)を含有する水性硝酸相を、単一オキシムスキームにおいてペンタナールオキシムを用いるか、または2オキシムスキームにおいてアセトアルドキシムと一緒に、例えば有機相中のヘキサナールオキシムを用いるかのいずれかにより、安定化すること、およびそれによりヒドラジンの使用を回避することが可能であることを示している。
【0074】
実施例3:プルトニウムの還元ストリッピング操作のものを表す化学的条件下での、ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの抗亜硝酸特性
ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの抗亜硝酸特性は;
−ウラン(IV)によるプルトニウム(IV)のプルトニウム(III)への還元、および亜硝酸によるプルトニウム(III)のプルトニウム(IV)への再酸化;
−前述のオキシムの1つによる亜硝酸の破壊;および
−水性相と有機相との間での興味の化学種の分配、
を含む、その下でPUREX法におけるプルトニウムの還元ストリッピングが実施される化学的条件を表す、以下のBX1からBX10で示した一連の試験において評価された。
【0075】
この目的のためには、以下を用いた:
−水性相として:ウラン(VI)、ウラン(IV)(プルトニウム(IV)の還元剤として)、および任意でヒドラジンおよびテクネチウムを、以下の表3および4に示した濃度で含む、1mol/Lまたは2mol/Lの硝酸を用いた溶液;および
−有機相として:オキシム、ウラン(VI)、およびプルトニウム(IV)を、以下の表3および4に示した濃度で含む、HTP中のTBPの30%(v/v)溶液。
【0076】
オキシムは、固体の形態で有機相へ添加した(添加したオキシムの量は、秤量により調節)。
【0077】
有機相および水性相を、O/A容積比2で、室温(20−25℃)および攪拌下に15分間(接触時間がわずか5分間である、試験BX3を除いて)接触させ、その後これらの相を互いに分離した。
【0078】
この分離後、水性相中のウラン(VI)、ウラン(IV)、およびプルトニウム(III)の濃度を、紫外−可視分光法により、また全プルトニウムを、アルファ−分光分析により測定した。有機相中のウラン(VI)およびウラン(IV)の濃度は、紫外−可視分光法により、また全プルトニウムの濃度は、アルファ−分光分析により測定した。
【0079】
これらの測定の結果から、各試験について、U(IV)cons./Pustr.で示される、消費されたウラン(IV)の量とストリッピングされたプルトニウムの量との間で比率が測定され、ならびにFDPuで示されるプルトニウムの分離係数が測定された。
【0080】
これらの試験の結果は、以下の表3および4に示されており、表3は、ヘキサナールオキシムを用いて実施された試験(BX1からBX5、BX8、およびBX10)について得られた結果に対応し、そして表4は、ペンタナールオキシムを用いて実施した試験(BX6およびBX7)について得られた結果に対応する。
【0081】
【表3-1】
【0082】
【表3-2】
【0083】
【表3-3】
【0084】
【表4】
【0085】
これらの表に示したように:
−有機相中に0.1mol/Lのヘキサナールオキシム濃度、および0.8から1.5までの範囲の初期重量比(U(IV)/Pu)については、ストリッピングされたプルトニウムの量に対する消費されたウラン(IV)の量(比率U(IV)cons./Pustr.)は、0.5と0.6の間であり;プルトニウム再酸化の寄生現象は、それ故非常に低く、存在しないことさえあり;これらの結果は、1mol/Lまたは2mol/Lの硝酸濃度を有する水性相について観察された(試験BX1からBX5);
−有機相中のヘキサナールオキシム濃度の半分までの減少(0.05mol/L対0.1mol/L)、ならびに水性相中のテクネチウムの存在は、ウラン(IV)のより高い消費(比率U(IV)cons./Pustr.=1)をもたらすが、それにもかかわらずそれは穏やかなままである(試験BX8およびBX10);
−ペンタナールオキシムもまた、ウラン(IV)のさらなる消費につながる酸化還元現象を制限し得るが、しかしながらペンタナールオキシムで得られる比率U(IV)cons./Pustr.が0.6と0.8の間であることから、ヘキサナールオキシムに比べて性能はわずかに低い(試験BX8およびBX10)。
【0086】
試験BX5、BX10、およびBX6の後に得られるような、有機相中のウラン(IV)の濃度変化を、数時間にわたる時間間隔で、分光光度法(λ=653nm)によりモニターした。
【0087】
かかるモニタリングの結果は、図7、8、および9に例示されており、それらは各々有機相BX5、BX10、およびBX6に対応する。
【0088】
これらの図は、有機相中でウラン(IV)を安定化させる、ペンタナールオキシムおよびヘキサナールオキシムの能力を確証する。この安定化は、テクネチウムの存在下ではより低いが、ウラン(IV)の酸化キネティクスは、半分までの減少が50分以内にウラン(IV)の濃度において観察されることから、比較的遅い。
【0089】
実施例4:ヒドラジンの使用なしのU/Pu分配工程を含む、使用済み核燃料の溶解液を処理するためのスキームの開発
ヒドラジンなしで実施されたU/Pu分配工程を含むが、しかしこれにおいてヘキサナールオキシム/アセトアルドキシムの組合せが抗亜硝酸系として使用され、ヘキサナールオキシムが有機相中で使用され、かつアセトアルドキシムが水性相中で使用される、使用済み核燃料の溶解液を処理するためのスキームが開発された。
【0090】
このスキームの開発に先立ち、以下のことが確認された:
−第1に、アセトアルドキシムが、テクネチウムの存在下で、水性相中の抗亜硝酸剤として真にヒドラジンを置き換え得ること;および
−第2に、ヘキサナールオキシムもまた、その目的がPUREX法およびCOEX法においてプルトニウムのストリッピング操作から得られる水性相から、この操作中にストリッピングされたネプツニウムを除去することである、いわゆる「Np洗浄」操作を実施するのに使用される有機相において、ウラン(IV)を安定化し得ること。
【0091】
4.1− 水性相中およびテクネチウムの存在下でのアセトアルドキシムの抗亜硝酸特性
試験は、水性相中のアセトアルドキシムの抗亜硝酸特性を、ヒドラジンの抗亜硝酸特性と、かつテクネチウムの存在下で比較するべく実施された。
【0092】
これらの試験のため、以下のプロトコールが適用された:
−9g/Lのウラン(IV)および2mol/Lの硝酸、ならびに0.2mol/Lのアセトアルドキシムまたはヒドラジンを含む水溶液を調製することであり、これらの溶液は、35℃にサーモスタット調節される;
−これらの溶液に、8.88g/Lのテクネチウム(VII)(すなわち、0.09mol/L)を含む水溶液を添加して、100mg/Lまたは200mg/Lの最終テクネチウム濃度を達成すること;および攪拌後に、
−前記水溶液中のウラン(IV)の酸化キネティクスを分光光度測定(λ=653nm)により、100分間にわたりモニタリングすること。
【0093】
これらの試験の結果は、図10に示されており、これにおいて、100mg/Lおよび200mg/LのTcの存在下でアセトアルドキシムについて得られた結果は、それぞれ記号■および×に対応し、一方100mg/Lおよび200mg/LのTcの存在下でヒドラジンについて得られた結果は、それぞれ記号▲および●に対応する。
【0094】
この図に示したように、水性相中の、かつ100mgまたは200mgのテクネチウムの存在下でのアセトアルデヒドオキシムの抗亜硝酸特性は、ヒドラジンのものに匹敵する。
【0095】
それ故、抗亜硝酸剤としてのヒドラジンを、アセトアルドキシムで置き換えることが可能である。
【0096】
4.2− 「Np洗浄」操作におけるウラン(IV)の安定化
以下にBS16およびBS17で示した2つの試験を、以下を用いて実施した:
−有機相として:0.1mol/Lのヘキサナールオキシムを含むかまたは含まない、HTP中のTBPの30%(v/v)溶液;および
−水性相として:ウラン(VI)、アセトアルドキシム、プルトニウム(III)、およびテクネチウを以下の表5に示した濃度で含む、1.3mol/Lの硝酸を用いた水溶液であり;テクネチウムは、8.88g/Lの濃縮されたTc(VII)溶液の形態で、水性相が有機相と接触される直前に水性相へ添加された。
【0097】
有機相および水性相を、容積/容積で、室温(20−25℃)および攪拌下で15分間にわたり接触させ、その後これらの相を互いに分離させた。
【0098】
水性相および有機相中のウラン(IV)の濃度を測定し、U(IV)cons.で示される、各試験において消費されたウラン(IV)のパーセントを測定した。
【0099】
結果を、以下の表5に示す。
【0100】
この表は、有機相中のヘキサナールオキシムの存在が(試験BS16)、このオキシムがない消費(試験BS17)に比較して、ウラン(IV)の消費に50%の減少を可能にすることを示している。
【0101】
【表5】
【0102】
4.3− 処理スキーム
開発された使用済み核燃料の溶解液の処理スキームを、図11に例示する。
【0103】
このスキームでは、COEX法の第1の精製サイクルの2つの主要な工程が見られ、すなわち:
(1)ウランおよびプルトニウムの、アクチニド(III)(アメリシウムおよびキュリウム)およびある数の核分裂生成物を除染するための工程であり、かつ以下を含む:
* 第1に酸化状態VIにおいて、第2に酸化状態IVにおいて、および第3に酸化状態VIにおいて、HTP中30%(v/v)のTBPを含む有機相により、溶解液からウラン、プルトニウム、およびネプツニウムを一緒に抽出することが意図された、図11において「U/Pu共抽出」と称される操作;
* 「U/Pu共抽出」操作から得られた有機相から核分裂生成物、特に、「U/Pu共抽出」において抽出されたルテニウムおよびジルコニウムを除去することが意図された、図11において「FP洗浄」と称される操作;
* 「U/Pu共抽出」において抽出された「FP洗浄」から得られた有機相から、水性相によりテクネチウムを除去することが意図された、図11において「Tc洗浄」と称される操作;
* 「Tc洗浄」における水性相中の、ウラン(IV)、プルトニウム(IV)、およびテクネチウムに続いたネプツニウムの分画を、有機相中で回収することが意図された、図11において「補助U/Pu共抽出」と称される操作;
および
(2)ウランおよびプルトニウムを、一方はウランを含有しかつ他方はプルトニウムおよびウランを(20:80から30:7程度のU/Pu重量比で)含有する、2つの水性流中に分配するための工程であり、かつ以下を含む:
* 「Tc洗浄」から得られた有機相からプルトニウムを、およびこの有機相中に含有されたウランの分画を、ストリッピングすることが意図された、図11において「Pu/Uストリッピング」と称される操作であり、この操作は、プルトニウムを酸化状態IIIへ還元することができる還元剤としてのウラン(IV)を含む水性相によって実施される;
* 「Pu/Uストリッピング」から得られた水性相から、意図された20:80から30:70のU/Pu重量比に対し過剰であるウランを、および「Pu/Uストリッピング」において水性相中でプルトニウムに続いたネプツニウムの分画を、除去することが意図された、図11において「Np洗浄」と称される操作;および
* 「Pu/Uストリッピング」から得られた有機相からウランおよびネプツニウムを、水性相によってストリッピングすることが意図された、「Uストリッピング」と称される操作、
である。
【0104】
しかしながら、図11に例示されたスキームにおいては、COEX法で使用される抗亜硝酸剤であるヒドラジンは、ヘキサナールオキシム/アセトアルドキシムの組合せによって置き換えられる。
【0105】
図11で見られ得るように、ヘキサナールオキシム(図11ではHexOxで示される)は、その強い親油性を考慮して、その中で「Np洗浄」が行われる抽出器5に入る有機相へ、およびそれが抽出器6に入る直前に「Tc洗浄」から得られる有機相へ添加される。
【0106】
アセトアルドキシム(図11ではAcOxで示される)は、その親水性を考慮して、抽出器6において循環する水性相へ添加され、この添加は、この抽出器の3つの異なる段階:ストリッピングに使用される水性相内へ、アセトアルドキシムが注入される段階8、およびこの水性相にウラン(IV)を供給するために使用される水性流内へ、アセトアルドキシムが注入される段階1および4、において実施される。
【0107】
2つの相、水性相および有機相、において使用されるオキシムに関し基本的に取得されたものを用いて、この方法において使用される水性相と有機相との間でのそれらの分配と、および亜硝酸を用いたそれらの反応のキネティクスのシミュレーションとを可能にする、最初のモデルを開発した。これらのモデルは、PAREXコード、すなわち、例えばウランおよびプルトニウムを2つの水性流に分配するような操作において興味の化学種の分配のシミュレーションを可能にするソフトウェア、において実施された。図11に例示されたスキームを実験的に試験するために操作パラメータが決定されたのは、このシミュレーションに基づいていた。
【0108】
図12は、第1に図11に例示されたスキームについて(曲線A)、そして第2にヒドラジンを用いる同様のスキームについて(曲線B)、抽出器5および6において循環する水性相中のウラン(IV)の濃度プロフィールを比較する。プルトニウム(III)の再酸化反応を中和することにより(RAREXコードにおいて)得られる、理想的なプロフィールもまた例示されている(曲線C)。
【0109】
この図に示したように、ヘキサナールオキシム/アセトアルドキシムの組合せの使用は、ヒドラジンを用いて得られるよりも高いウラン(IV)濃度のプロフィールをもたらし、それにより、これらのオキシムの存在下での低減されたウラン(IV)の消費が立証される。
【0110】
図11に例示されたスキームは、使用済み核燃料の実際の溶液に対し、ATALANTE遮蔽セルプロセスラインにおいて首尾よく実施された。このスキームは、相当な濃度のウラン(IV)(16g/L)を用い、何ら「Np洗浄」操作におけるウラン(IV)の補助剤なしに、10g/Lの濃度を有するプルトニウムの流れの生産を可能にしたが、一方この補助剤は、ヒドラジンを使用する同様のスキームにおいては必要である。ウラン(IV)の消費はまた、ヒドラジンを使用するスキームにおけるよりも低い。
【0111】
図13は、例えば実験的に得られた(記号×)、およびPAREXコードによってコンピュータ計算された(曲線−)、抽出器5および6において循環する水性相中のプルトニウムの濃度プロフィールを例示しており、一方図14は、例えば実験的に、およびコンピュータ計算によって得られた、これらの同じ抽出器において循環する水性相中のウラン(IV)、ウラン(VI)、および全ウランの濃度プロフィールを例示する;この図において、記号×、◆、および■は、それぞれ実験的に得られたウラン(IV)、ウラン(VI)、および全ウランの濃度プロフィールに対応し、一方曲線A、B、およびCは、それぞれコンピュータ計算により得られたウラン(IV)、ウラン(VI)、および全ウランの濃度プロフィールに対応する。
【0112】
また、以下の表6は、図11に例示されたスキームについて実験的に得られるような、抽出器5から得られる水性相中のウラン濃度([U(IV)]Pu−producing flowで示される)、抽出器5から得られる水性相中のプルトニウム濃度([Pu]Pu−producing flowで示される)、抽出器6に進入するウラン(IV)の流れと、同じ抽出器に進入するPuの流れとの間の比率(U(IV)/Puenteringで示される)、消費されたウラン(IV)のパーセント(U(IV)cons.で示される)、および消費されたウランの流れと進入するプルトニウムの流れとの間の比率(U(IV)cons./Puで示される)を示す。
【0113】
比較のため、この表は、ヒドラジンを用いた同様のスキームについて実験的に得られるような、これらと同じ濃度、比率、およびパーセントを示している。
【0114】
【表6】
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14