(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876689
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】プルトニウムの還元ストリッピング操作における抗亜硝酸剤としてのヒドロキシイミノアルカン酸の使用
(51)【国際特許分類】
G21C 19/46 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
G21C19/46 624
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-521038(P2018-521038)
(86)(22)【出願日】2016年10月18日
(65)【公表番号】特表2018-536851(P2018-536851A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】EP2016074990
(87)【国際公開番号】WO2017067935
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年9月27日
(31)【優先権主張番号】1560047
(32)【優先日】2015年10月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】518135618
【氏名又は名称】オラノ サイクル
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エレ,ザビエ
(72)【発明者】
【氏名】ベルニー,ジレ
(72)【発明者】
【氏名】ディニ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ポショー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】サン,ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】ゼクリ,エリザベス
【審査官】
大門 清
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−529442(JP,A)
【文献】
特表2003−526769(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0310438(US,A1)
【文献】
米国特許第06413482(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/46
G21F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式O=C(OH)−(R)−CH=N−OH[式中、Rは、少なくとも2個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキレン基である]の少なくとも1つのヒドロキシイミノアルカン酸の、プルトニウムの還元ストリッピング操作における抗亜硝酸剤としての使用。
【請求項2】
Rが、2から12個の炭素原子を有するアルキレン基である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
Rが、3から8個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ヒドロキシイミノアルカン酸が、6−ヒドロキシイミノヘキサン酸、または8−ヒドロキシイミノオクタン酸である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記プルトニウムの還元ストリッピング操作が:
−有機希釈剤中に抽出剤および酸化状態IVのプルトニウムを含む非水混和性の有機相を、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)へ還元し得る還元剤および硝酸を含む水性相と接触させる工程であって、前記有機相および水性相の一方が、前記ヒドロキシイミノアルカン酸をさらに含んでいる工程;次に
−そのように接触した有機相および水性相を分離する工程、
を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記抽出剤が、リン酸トリ−n−アルキルである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記抽出剤が、リン酸トリ−n−ブチルである、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記還元剤が、ウラン(IV)、硝酸ヒドロキシルアンモニウム、ヒドロキシルアミンのアルキル化誘導体、スルファミン酸第一鉄、またはスルファミン酸である、請求項5から7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記抽出剤が、ウラン(IV)または硝酸ヒドロキシルアンモニウムである、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記還元剤が、0.02mol/Lから0.6mol/Lまでの範囲の水性相の濃度において使用される、請求項5から9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記還元剤が、0.05mol/Lから0.4mol/Lまでの範囲の水性相の濃度において使用される、請求項5から10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記ヒドロキシイミノアルカン酸が、0.01mol/Lから3mol/Lまでの範囲の有機相または水性相の濃度において使用される、請求項5から11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
前記ヒドロキシイミノアルカン酸が、0.03mol/Lから0.5mol/Lまでの範囲の有機相または水性相の濃度において使用される、請求項5から12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記プルトニウムの還元ストリッピング操作が、PUREX法またはCOEX法のプルトニウムストリッピング操作の1つである、請求項1から13のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み核燃料の処理に関連する分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、プルトニウムの還元ストリッピング操作における抗亜硝酸剤としてのヒドロキシイミノアルカン酸の使用に関する。
【0003】
本発明は、プルトニウムの1つ以上の還元ストリッピング操作を含む使用済み核燃料の処理のための任意の方法に適用し得る。
【0004】
前記操作は特に、例えば最新の核燃料処理工場(すなわち、フランスのラ・アーグ(La Hague)におけるUP3およびUP2−800工場、および日本の六ケ所村工場)で実施されたピューレックス(PUREX)法において、まずこの方法の第1の除染サイクルのU/Pu分配工程を実施するため、そして第二に、この第1の除染サイクルに続く「第2のプルトニウムサイクル」と通常称されるプルトニウム精製サイクルにおいて核分裂生成物のプルトニウム除染を改善するために含まれている。
【0005】
それらはまた、このピューレックス法から派生したいくつかの方法、例えばCOEX法の名称で知られる国際特許出願[特許文献1]に記載されたもの、または国際特許出願[特許文献2]に記載されたものにも含まれている。
【背景技術】
【0006】
使用済み核燃料の処理のための上記の方法において実施されている、プルトニウムの還元ストリッピング操作においては、プルトニウムは、その中でプルトニウムが酸化状態(IV)にある有機相(または溶媒相)から、それを有機相に対するその親和性が非常に低い状態である酸化状態IIIへ還元することにより、水性相へ通過される。
【0007】
プルトニウム(IV)のプルトニウム(III)への還元は、還元剤により誘発され、該還元剤は、ストリッピングのために使用される水性相へ添加され、かつ抗亜硝酸剤により安定化される。
【0008】
例えば、最新の核燃料再処理工場で実施されたピューレクス法(本明細書の残りの部分ではより簡単に「PUREX法」と称される)の、第1の除染サイクルでは、U/Pu分配工程においてプルトニウムをストリッピングするために使用される還元剤は、ウラン(IV)(または硝酸ウラナス)であり、他方で抗亜硝酸剤はヒドラジンとしても公知の硝酸ヒドラジニウムである。
【0009】
考慮されるべき主要な化学反応は以下の通りである:
−ウラン(IV)によるプルトニウム(IV)のプルトニウム(III)への還元(機能的反応):
U
4++2Pu
4++2H
2O→UO
22++2Pu
3++4H
+
−プルトニウム(III)のプルトニウム(IV)への再酸化(寄生反応):
Pu
3++HNO
2+1.5H
++0.5NO
3−→Pu
4++0.5H
2O+1.5HNO
2
−ヒドラジンによる亜硝酸のアジ化水素酸(azothydric acid)への破壊(有用な反応):
N
2H
5NO
3+HNO
2→N
3H+HNO
3+2H
2O。
【0010】
最初の2つの反応は、水性および有機相中で起こるのに対し、ヒドラジンによる亜硝酸の破壊反応は、有機相によるヒドラジンの非抽出性が原因で水性相でのみ起こり、この有機相は、水素化テトラプロピレン(またはHTP)中30%(v/v)のリン酸トリ−n−ブチル(またはTBP)からなる。
【0011】
有機相中のプルトニウム(III)の存在は、少量であっても、最初の2つの反応によりウラン(IV)の酸化を触媒し、それにより亜硝酸を発生させる。
【0012】
実験室用遠心抽出器で実験的研究を実施した場合、抽出器滞留時間が短い場合(数秒間程度)でも、酸化によるウラン(IV)の消費が非常に高いことが確認できた。このウラン(IV)の酸化は、ヒドラジンが水性相中のみに含有されることから、本質的に有機相中で発生する。結果として、プルトニウムの還元ストリッピング操作スキームは、大過剰の還元剤を提供する。
【0013】
ヒドラジンによる亜硝酸の破壊反応により生成されたアジ化水素酸は、次に反応:
HN
3+HNO
2→N
2+N
2O+H
2O
に従って、亜硝酸と反応する。
【0014】
しかしながら、この反応のキネティクスは、ヒドラジンによる亜硝酸の破壊よりもずっと遅く、そのことは、アジ化水素酸がU/Pu分配工程の流出水性相および有機相中に見出されることを意味する。
【0015】
それ故、ヒドラジンは有機相により非抽出性であり、かつそれ故水性相中でのみ作用することから、このことが試薬の高い消費と、この方法の産業応用を妨げる化学種の製造とをもたらす。
【0016】
この問題を解決するため、国際特許出願[特許文献3]において、ブチルアルデヒドオキシムもしくはブチルアルドキシムとも称されるブタナールオキシムを、ヒドラジンと組合せて、ブタナールオキシムが有機相の安定化を可能にする一方で、ヒドラジンが水性相を安定化する、2相の抗亜硝酸システムを使用することが提案された。
【0017】
ブタナールオキシムをヒドラジンと共に使用することは、特に、プルトニウムの還元ストリッピングを実施するのに必要な硝酸ウラナス及びヒドラジンの量を著しく減少できること、およびそれにより有機相中のヒドラジンの非抽出に関連した不利益を軽減するという、いくつかの利点を可能にするが、しかしながら以下の理由によりそれは完全に充分というわけではない:
−有機相によるブタナールオキシムの比較的低い抽出により、その中でプルトニウムの還元ストリッピングが起こる抽出器へこのオキシムを多量に添加することが余儀なくされ、有機相中にブタナールオキシムの有効濃度を得ることが所望される場合;特にU/Pu分配工程においては、有機相によるブタナールオキシムの抽出はアクチニドによるこの相の飽和により大幅に減少され、そのことが最終的にこのオキシムの使用を、この分配工程の実施にはほぼ適さないものにすること;
−水性相中でヒドラジンを連続して使用すること;実際、ヒドラジンは水性相中で最も有効な抗亜硝酸剤の1つであるという事実にもかかわらず、その使用は、アジ化水素酸の生成に関連して既に示した問題が原因となるばかりではなく、その毒性の理由からも制限される:ヒドラジンは、事実上CMR物質のリストに載っており、すなわち、化学品の登録、評価、認可、および制限(REACH規則)に関する欧州議会と理事会の規則(EC)1907/2006により、発癌性、変異原性、および/または生殖・発生毒性の可能性が潜在的にあるか、またはそうであると見なされており、かつ遅かれ早かれこの規則の付属書(Annex)XIVの元に認可に従う物質のリストに入れられそうであり、その場合には、欧州化学機関(European Chemicals Agency(ECHA))により示される特定の免除がない限り、そのマーケティングおよび工業的使用は禁止されるであろう。
【0018】
加えて、ヒドラゾンの生成につながる、ブタナールオキシムのヒドラジンとの反応が観察されている。この反応は、ブタナールオキシムの性能を低減し、これら2つの試薬の過剰消費をもたらす。
【0019】
上記を考慮して、本発明者らはそれ故、高い抗亜硝酸活性をもつ化合物であって、しかしその使用が、PUREX法において現在使用されるような、ヒドラジンの使用によるか、または[特許文献3]において提案されたような2相のブタナールオキシム/ヒドラジンシステムの使用によってもたらされる不利益のない、該化合物を見つけようと試みた。
【0020】
より具体的には、本発明者らはこれらの化合物が、有機相、特にPUREX法(同じ温度および圧力条件下)において使用されるタイプの有機相により、この有機相がアクチニドで飽和される場合を含めて、ヒドラジンよりもさらに抽出性でなければならず、それよって(1)プルトニウムの還元ストリッピングに必要なこれらの化合物の量を減少させること、および(2)これらの化合物をPUREX法の第1の除染サイクルにおいてU/Pu分配工程におけるプルトニウムのストリッピングのため、ならびにこの方法の第2のプルトニウムサイクルにおいてプルトニウムのストリッピングのために使用可能にする、という目標を自ら設定した。
【0021】
本発明者らはさらに、これらの化合物が、ヒドラジンの使用を完全に回避させるようにしなければならないという目標を自ら設定した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】国際公開第2006/072729号
【特許文献2】国際公開第2011/000844号
【特許文献3】国際公開第2008/148863号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
これらの、および他の目的は、プルトニウムの還元ストリッピング操作における抗亜硝酸剤として、少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロキシイミノアルカン酸を使用することを提案する本発明により達成される。
【0024】
ヒドロキシイミノアルカン酸が、一般式:O=C(OH)−(R)−CH=N−OH[式中、Rは、少なくとも1個の炭素原子を有するアルキレン基であり、この基は、それが2つ以上の炭素原子を含む場合には、直鎖または分枝鎖である可能性がある]に合致する化合物であることが想起される。
【0025】
本発明においては、Rで表されるアルキレン基に含有される炭素原子の数が少なくとも2に等しい限り、任意のヒドロキシイミノアルカン酸が適し得る。
【0026】
しかしながら、ヒドロキシイミノアルカン酸は、式中、Rが2から12個の炭素原子を有するアルキレン基である、上記の一般式に合致するべきであることが好ましい。
【0027】
さらに、ヒドロキシイミノアルカン酸は、式中、Rが3から8個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基である、上記の一般式に合致するべきであることが好ましい。
【0028】
かかるヒドロキシイミノアルカン酸は以下の通りである:
−式:O=C(OH)−(CH
2)
3−CH=N−OHの、5−ヒドロキシイミノペンタン酸;
−式:O=C(OH)−(CH
2)
4−CH=N−OHの、6−ヒドロキシイミノヘキサン酸;
−式:O=C(OH)−(CH
2)
5−CH=N−OHの、7−ヒドロキシイミノヘプタン酸;
−式:O=C(OH)−(CH
2)
6−CH=N−OHの、8−ヒドロキシイミノオクタン酸;
−式:O=C(OH)−(CH
2)
7−CH=N−OHの、9−ヒドロキシイミノノナン酸;
および
−式:O=C(OH)−(CH
2)
8−CH=N−OHの、10−ヒドロキシイミノデカン酸。
【0029】
これらの中で、特別の好ましさは、6−ヒドロキシイミノヘキサン酸および8−ヒドロキシイミノオクタン酸に与えられる。
【0030】
本発明に準拠すれば、プルトニウムの還元ストリッピングのための操作は、好ましくは:
−有機希釈剤中に抽出剤と酸化状態IVのプルトニウムとを含む非水混和性の有機相を、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)へ還元し得る還元剤と硝酸とを含む水性相と接触させる工程であって、有機および水性相の1つはさらにヒドロキシイミノアルカン酸を含んでいる工程;次に
−そのように接触された有機相および水性相を分離する工程、
を含む。
【0031】
本発明においては、水性相中に含有される還元剤は、好ましくは、ウラン(IV)、硝酸ヒドロキシルアミンとも称される硝酸ヒドロキシルアンモニウム、ヒドロキシルアミンのアルキル化誘導体、スルファミン酸第一鉄、およびスルファミン酸の中から選択される。
【0032】
還元剤の中では、ウラン(IV)および硝酸ヒドロキシルアンモニウムが特に好ましく、これらは、PUREX法において、まず、第1の除染サイクルにおけるU/Pu分配工程において、次に、第2のプルトニウムサイクルにおいて、プルトニウム(IV)をプルトニウム(III)に還元するために使用される2つの薬剤である。
【0033】
また、抽出剤は好ましくは、リン酸トリ−n−アルキルおよびより良くはTBPであるのに対し、有機希釈剤は好ましくは、直鎖または分枝鎖ドデカン、例えばn−ドデカンまたはHTP、イソパラフィン系溶媒、例えばイサン(Isane)IP185、イサンIP165、またはイソパール(4)L、またはケロシンであり、この場合、抽出剤は好ましくは、この有機希釈剤中に30%(v/v)の割合で含有される。
【0034】
いずれの場合も、ヒドロキシイミノアルカン酸は、好ましくは0.01mol/Lから3mol/Lまで、より良くは0.03mol/Lから0.5mol/Lまでの範囲の有機相または水性相の濃度において使用され、一方還元剤は、好ましくは0.02mol/Lから0.6mol/Lまで、およびより良くは0.05mol/Lから0.4mol/Lまでの範囲の水性相の濃度において使用される。
【0035】
硝酸については、これは有利には、0.05mol/Lから2mol/Lまでの範囲の濃度において、水性相中に含有される。
【0036】
本発明の特定の1つの好ましい提供によれば、プルトニウムの還元ストリッピングは、好ましくはPUREX法またはCOEX法のプルトニウムストリッピング操作の1つである。
【0037】
本発明において有用なヒドロキシイミノアルカン酸は、先行技術の水準において既知の合成法によって得られ得る。
【0038】
例えば、それらは特に以下によって得られ得る:
−対応するシクロアルカンのニトロソ化/加水分解、例えば仏国特許第1349281号明細書[4]において、およびIshigakiら(「Bull.Chem.Soc.Jap.」、1977年、第50巻、第3号、p.726−730[5])により記載されたものなど;或いはまた
−対応するオキソアルカン酸に対するヒドロキシルアミンの反応、例えば、Ayorindeら(「J.Am.Oil Chem.Soc.」、1997年、第74巻、第5号、p.531−538、[6])により、またJackmanら(「J.Org.Chem.」、1982年、第47巻、第10号、p.1824−1831、[7])により記載されたようなものであり、オキソアルカン酸自体は:
*例えば、Thieleら(「ACS Chem.Biol.」、2012年、第7巻、第12号、p.2004−2011、[8])により記載されたような、対応するブロモアルカン酸の水酸化カリウムによる処理に続き、例えば、Panzerら(米国特許出願第2008/0306153号明細書、[9])により、またRajabiら(「Synth.Comm.」、2014年、第44巻、第8号、p.1149−1154、[10])により記載されたような、この処理の結果として生じるヒドロキシアルカン酸の制御酸化によるか;
*或いは、例えば、Utsukiharaら(「Tet.Lett.」、2006年、第47巻、第52号、p.9359−9364、[11])により記載されたような、対応する2−ハロゲノシクロアルカノンのマイクロ波照射に続き、例えば、Carreraら(「Tet.Lett.」、2009年、第50巻、第38号、p.5399−5402、[12])により記載されたような、この照射の結果として生じる2−ヒドロキシシクロアルカノンの過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化によるか;
*或いはさらに、6−オキソヘキサン酸の場合には、例えば、Bouetら(「Tet.Asym.」、2008年、第19巻、第20号、p.2396−2401、[13])により記載されたような、その二量体型にある2−ヒドロキシシクロヘキサノンの過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化によって、
得られるかもしれない。
【0039】
本発明は、多くの利点を可能にする。実際それは、水性相および有機相の双方において、プルトニウム(III)からプルトニウム(IV)への再酸化を最も有効に阻止し得るとともに、亜硝酸によるウラン(IV)などの還元剤の酸化を阻止する、ある量の抗亜硝酸剤を与える。
【0040】
それ故、本発明が、PUREX法のU/Pu分配工程において実施されるような操作のためであろうと、或いはこの同じ方法の第2のプルトニウムサイクルにおいて実施されるような操作のためであろうと、ヒドラジンの使用なしにプルトニウムの還元ストリッピング操作を可能にするという事実に加えて、それはまた、抗亜硝酸剤がヒドラジンである場合に必要な量に比較して、これらの操作を実施するのに必要な還元剤および抗亜硝酸剤の量の非常に強力な削減も可能にする。
【0041】
本発明はそれ故、これらの抗亜硝酸剤をプルトニウムの還元ストリッピング操作に特化された装置に添加するために必要なポイントの数の低減、およびそれ故、この装置の単純化を、想定することを可能にする。
【0042】
加えて、ヒドロキシイミノアルカン酸の分子中のカルボン酸官能基の存在の故に、プルトニウムの還元ストリッピング操作の下流の、こうした抗亜硝酸剤の管理は簡単であるが、その理由は、それらが、PUREX法の典型的なスキームにおいて、それらのリサイクルのためにウラン(IV)のストリッピングに由来する有機相を処理するのに使用されるタイプの塩基性水性相中に容易に可溶化されることからである。
【0043】
本発明の他の特徴および他の利点は、以下の実施例を読むことでより明らかとなるであろう。
【0044】
明らかに、これらの実施例は本発明の主題を例示するものとして示されるにすぎず、いかなる方法でもそれについて制限的であるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】HTP中の30%(v/v)のTPBを含む有機相と、最初に1mol/Lの硝酸を含む水性相との間の、これらの相を攪拌下および室温において5分間接触させた後の、6−ヒドロキシイミノヘキサン酸(または6−HIHA)、8−ヒドロキシイミノオクタン酸(または8−HIOA)、ウラン(IV)、およびヒドラジンの分配を、棒グラフの形態で例示する図である。
【
図2】6−ヒドロキシイミノヘキサン酸または8−ヒドロキシイミノオクタン酸またはヒドラジンのいずれかを抗亜硝酸として用いて行なわれた、プルトニウムの還元ストリッピング試験において得られるような、ウラン(IV)の初期量のパーセントとして表された、ウラン(IV)の残量を棒グラフの形態で例示する図である(バー「抗亜硝酸剤あり」);比較として、この図はまた、各抗亜硝酸剤につき、この還元剤によるプルトニウム(IV)のプルトニウム(III)への還元にのみ関連するウラン(IV)の消費について、予測されるウラン(IV)の残量も示す(バー「寄生反応なし」)。
【
図3】抗亜硝酸剤として6−ヒドロキシアミノヘキサン酸または8−ヒドロキシアミノオクタン酸またはヒドラジンのいずれかを用いて実施された、プルトニウムの還元ストリッピング試験において得られるような、有機相および水性相中で消費されたウラン(IV)の量を、棒グラフの形態で例示する図であり、これらの量は、ウラン(IV)が2つの相の間にのみ分配された場合に、予想されるウラン(IV)の量のパーセントとして表されている。
【
図4A】6−ヒドロキシアミノヘキサン酸を抗亜硝酸剤として用いて実施されたプルトニウムの還元ストリッピング試験から得られる、有機相および水性相中のウラン(IV)の濃度の、時間的傾向(
図4Aでは分で、
図4Bでは時間で表した)を例示する図である。
【
図4B】6−ヒドロキシアミノヘキサン酸を抗亜硝酸剤として用いて実施されたプルトニウムの還元ストリッピング試験から得られる、有機相および水性相中のウラン(IV)の濃度の、時間的傾向(
図4Aでは分で、
図4Bでは時間で表した)を例示する図である。
【
図5A】8−ヒドロキシイミノオクタン酸を抗亜硝酸剤として用いて実施されたプルトニウムの還元ストリッピング試験から得られる、有機相および水性相中のウラン(IV)の濃度の、時間的傾向(
図5Aでは分で、
図5Bでは時間で表した)を例示する図である。
【
図5B】8−ヒドロキシイミノオクタン酸を抗亜硝酸剤として用いて実施されたプルトニウムの還元ストリッピング試験から得られる、有機相および水性相中のウラン(IV)の濃度の、時間的傾向(
図5Aでは分で、
図5Bでは時間で表した)を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
実施例1:6−ヒドロキシイミノヘキサン酸および8−ヒドロキシイミノオクタン酸の合成
6−ヒドロキシイミノヘキサン酸(本明細書の残りの部分では「6−HIHA」とも称される)は、以下の反応スキームを適用することにより合成され:
【0048】
これにおいて、1で示される2−ヒドロキシシクロヘキサノンは、その二量体型で市販されており(Sigma−Aldrich)、テトラヒドロフランおよび水の混合物中で、過ヨウ素酸ナトリウム(1.5当量)により酸化され、2で示される6−オキソヘキサン酸をほぼ定量的な収率(98%)で生じる;エタノール中に溶解した後、オキソ酸2は、水性媒体中でおよび水酸化ナトリウムの存在下に、塩酸ヒドロキシルアミン(8当量)と反応され(40℃、約1時間)、6−HIHAを収率60%で生じる。
【0049】
2つの工程の全体的な収率は、58%である。
【0050】
8−ヒドロキシイミノオクタン酸(本明細書の残りの部分では「8−HIOA」とも称される)は、以下の反応スキームを適用して合成され:
【0052】
これにおいて、1’で示される8−ブロモオクタン酸は、市販されており(Sigma−Aldrich)、テトラヒドロフランおよび水の混合物中で、マイクロ波照射下に、水酸化カリウム(2.7当量)で処理され(80℃、90W、5時間)、2’で示される8−ヒドロキシオクタン酸を収率76%で生じる;ヒドロキシ酸2’は、ジメチルスルホキシド中で、2−ヨード安息香酸(IBX、1.5当量)による制御酸化に供され(室温、4時間)、3’で示される8−オキソオクタン酸を収率73%で生じ;エタノールで希釈した後、オキソ酸3’を、水酸化ナトリウムの存在下でかつ水性媒体中で、塩酸ヒドロキシルアミン(8当量)と反応され(65℃、約一晩)、8−HIOAを収率78%で生じる。
【0053】
3つの工程全体の収率は、43%である。
【0054】
実施例2:6−ヒドロキシイミノヘキサン酸および8−ヒドロキシイミノオクタン酸の特性
2.1− 分配係数
6−HIHAおよび8−HIOAの、Dで示される分配係数は、0.9mol/Lに近い酸性度において測定され、この酸性度は、プルトニウムの還元ストリッピング操作に特化された抽出器内に含有される大部分のプルトニウムがPUREX法において置かれる酸性度を表す。
【0055】
これを行うため、抽出試験は以下を用いて実施した:
− HTP中の30%(v/v)のTBPを含む2つの有機相であって、その第1においては、6−HIHAは0.05mol/Lの割合で可溶化され、その第2においては、8−HIOAが0.01mol/Lの割合で可溶化され;および
− 1mol/Lの硝酸の同じ水溶液からの2つのアリコートに対応する2つの水性相。
【0056】
有機相の各々は、2つの水性相のうちの1つと、1.3のO/A(有機/水性)容積比を用いて、攪拌下に室温で(22−25℃)5分間にわたり接触され、この後、接触された相は互いに分離された。
【0057】
6−HIHAおよび8−HIOAの濃度は、水性相中で(高速液体クロマトグラフィーにより)および有機相中で(気相クロマトグラフィーにより)測定され、硝酸の濃度は水性相中で測定された(0.1M NaOHを用いた電圧滴定による)。
【0058】
同じ試験を、HTP中の30%(v/v)のTBPのみを含む有機相、1mol/Lの硝酸を含む水性相、および13g/Lのウラン(IV)(可視分光法により予め分析された、λ=647nm)を用いて実施した。有機相および水性相を分離した後、ウラン(IV)の濃度を、これらの相のそれぞれにおいて(可視分光法により)、ならびに水性相中の硝酸の濃度も(電圧滴定により)測定した。
【0059】
全ての水性相の最終的な酸度は、0.9mol/Lの硝酸であった。
【0060】
図1は、それぞれ有機相および水性相中に検出された、6−HIHA、8−HIOA、およびウラン(IV)のパーセントで表された量を示す。
【0061】
この図はまた、指標として、同様の条件下で行われたがしかしHTP中の30%(v/v)のTBPのみを含む有機相と、1mol/Lの硝酸および0.26mol/Lのヒドラジンを含む水性相とを、O/A容積比2で使用する試験において、有機相および水性相中に検出されたヒドラジンの量も示している。
【0062】
各試験に用いたO/A容積比を考慮して、以下の分配係数が得られた:
− D
6−HIHA=0.43;
− D
8−HIOA=0.45;
− D
U(IV)=0.80;および
− D
ヒドラジン=0。
【0063】
有機相中および水性相中の双方のウラン(IV)を安定化させるため、抗亜硝酸剤は、その中にそれが最初に含有される相にかかわらず、ウラン(IV)と同じ様式で、有機相と水性相との間に分配されねばならない。
【0064】
然るになお、
図1において、また上記に示した分配係数によって示されるように、6−HIHAおよび8−HIOAは、有機相と水性相との間に適切に分配され、TBP抽出性のないヒドラジンではそのようなことはない。
【0065】
亜硝酸によるウラン(IV)の酸化に対する、ヒドロキシイミノアルカン酸の「保護」効果は、それ故、ヒドラジンによって提供されるものよりもさらに有利であり、その理由は、水性相中に残るヒドラジンは、有機相中でウラン(IV)を酸化する恐れがある亜硝酸を破壊することができないからである。
【0066】
2.2− 6−ヒドロキシイミノヘキサン酸および8−ヒドロキシイミノオクタン酸によるアクチニドの安定化
PUREX法においてプルトニウムの還元ストリッピングが行われる条件に近い化学的条件の下で、6−HIHAおよび8−HIOAのウラン(IV)およびプルトニウム(III)を安定化させる能力を検証するため、プルトニウム(IV)の3つの還元ストリッピング試験を、4つの異なる有機相、すなわち:
−第1の有機相であり、HTP中の30%(v/v)のTBP、および10g/Lのプルトニウム(IV)を含み、このプルトニウムは1M 硝酸水溶液から予め抽出されており(接触時間:10分間、攪拌および室温下で);
−第2の有機相であり、HTP中の30%(v/v)のTBP、および0.26mol/Lの6−HIHAを含み;
−第3の有機相であり、HTP中の30%(v/v)のTBP、および0.26mol/Lの8−HIOAを含み;および
−第4の有機相であって、HTP中の30%(v/v)のTBPのみを含む、
を用いて出発して実施した。
【0067】
最初の試験では、第1の有機相のアリコートが、第2の有機相と、容積/容積で、10秒間および室温で混合され、得られた混合物の4mlが、1mol/Lの硝酸および9g/Lのウラン(IV)を含む、3mLの第1の水性相と、5分間にわたり攪拌および室温で接触された。その後、接触された相は互いに分離された。
【0068】
第2の試験は、第2の有機相を第3の有機相で置き換えることにより、第1の試験と同様に実施された。
【0069】
第3の試験では、第1の有機相の別のアリコートが、容積/容積で、10秒間および室温で、第4の有機相と混合され;得られた混合物の6mLが、1mol/Lの硝酸、13g/Lのウラン(IV)、および0.26mol/Lのヒドラジンを含む、3mLの第2の水性相と、5分間にわたり、攪拌および室温下で接触して置かれた。その後、接触相は、互いに分離された。
【0070】
それ故、全ての試験は、酸度ならびに、TBP、プルトニウム(IV)、およびウラン(IV)の濃度に関する同一の初期条件下で、かつ、用いるO/A容積比を考慮して、有機相/水性相混合物中の同量の抗亜硝酸剤(6−HIHA、8−HIOA、またはヒドラジン)を用いて行なわれた。
【0071】
5分間の攪拌下の接触時間は、PUREX法の典型的なU/Pu分配スキームにおいて使用されるような、抽出器の混合部分における最大滞留時間に相当するように選択された。
【0072】
既に示したウラン(IV)によるプルトニウム(IV)のプルトニウム(III)への還元平衡によれば、1/2モルのウラン(IV)が、産生されるプルトニウム(III)のモル当たりに消費される。
【0073】
これらの試験において、水性相中に最初に含有されたウラン(IV)の量は、有機相中に最初に含有されたプルトニウム(IV)の量よりも、約1.3−1.4倍高い。この過剰の還元剤は、過剰消費される、すなわちプルトニウム(IV)の還元反応のみに起因する消費に加えた消費である、ウラン(IV)の量の評価を可能にするべく選択された。
【0074】
これらの試験の後、ウラン(IV)、プルトニウム、および硝酸の濃度を、有機相および水性相のそれぞれにおいて測定した;ウラン(IV)については可視分光法により、プルトニウムについてはα−分光光度分析により、また硝酸については電圧滴定による。
【0075】
これらの測定の結果は、プルトニウムが5分間の接触時間の後、3つの試験において同等の極めて低い分配係数(D
Pu=0.02)で、酸化状態III(λ=560−600nmにおける特徴的な二重ピーク)において、定量的に水性相中に通過したことを示している。プルトニウム(IV)の還元反応は、それ故実際に起きていた。
【0076】
図2は、3つの試験された抗亜硝酸剤(6−HIHA、8−HIOA、およびヒドラジン)について得られた、ウラン(IV)の初期量のパーセントとして表された、ウラン(IV)の残量と、この還元剤によるプルトニウム(IV)の還元にのみ関連するウラン(IV)の消費についてのウラン(IV)の予想残量を示す。
【0077】
この図に示されたように、6−HIHAおよび8−HIOAの存在下で消費されるウラン(IV)の量は、プルトニウム(IV)のプルトニウム(III)への単なる還元について予想されたものよりもより低くはあっても、同等である。一方、ヒドラジンについては、ウラン(IV)の42%が残るに過ぎないのに対し、前記還元反応の化学量論によれば58%が残るべきであることから、同じ条件下でのウラン(IV)の過剰消費が観察される。
【0078】
図3は、3つの試験された抗亜硝酸剤(6−HIHA、8−HIOA、およびヒドラジン)について得られた、有機相および水性相中の消費されたウラン(IV)の量であって、かつウラン(IV)がこれら2つの相の間にのみ分配された場合に予想されるウラン(IV)の量のパーセントとして表したものを示す。
【0079】
このことは、最初は有機相中に含有されたプルトニウム(IV)の還元が、この相において起こることから、予想されたように、ウラン(IV)が主として有機相において消費されることを示している。それはまたウラン(IV)が、ヒドラジンの存在下よりも、6−HIHAまたは8−HIOAの存在下において消費される量が少ないことも示しており、それにより、ヒドロキシイミノアルカノン酸がヒドラジンよりも大きい抗亜硝酸特性をもつことを立証している。
【0080】
ヒドラジンの存在下では、有機相におけるウラン(IV)の消費は、6−HIHAまたは8−HIOAの存在下よりも事実上2倍高いが、その理由は、ヒドラジンが、後者とは対照的に有機相中で非抽出性であるからである。一方、ウラン(IV)は、水性相中では殆ど消費されない。
【0081】
6−HIHAまたは8−HIOAの存在下では、ウラン(IV)は通常有機相中で、すなわちプルトニウムを還元させるのに必要な量で消費される。水性相では、6−HIHAは、この抗亜硝酸剤の存在下ではこの還元剤の消費がないことから、ウラン(IV)の安定化にはヒドラジンと同程度に、かつさらに有効であるように見える。
【0082】
前述の試験がその下で行われる操作条件、およびこれらの試験の結果は、以下の表1に示される。
【0086】
2.3− 一度分離された有機酸および水性相のエージング
ヒドロキシイミノアルカン酸について、PUREX法の典型的なスキームにおいてU/Pu分配に特化したすべての工程における、ウラン(IV)のウラン(VI)への酸化の、およびプルトニウム(III)の再酸化の、リスクがあるかどうかを評価するため、6−HIHAおよび8−HIOAを抗亜硝酸剤として用いて上記の項目2.2の下で行われたストリッピング試験後に得られた、有機相および水性相中のウラン(IV)の濃度を、それらを互いに分離した後の数時間にわたり可視分光法によりモニターした。
【0087】
PUREX法の産業用のスキームまたはパイロット試験用のスキームにおいて、通常使用されるO/A流速によれば、その中でU/Pu分配のための「Puストリッピング」および「U洗浄」として公知の操作が行われる抽出器内の、水性相の滞留時間は、4時間を超えず、一方、有機相では2時間を超えることはない。濃度のモニタリングは、それ故、3から4時間の時間にわたり実施された。
【0088】
結果は、6−HIHAについては
図4Aおよび4Bに、8−HIOAについては
図5Aおよび5Bに示されており、
図4Aおよび5Aは、有機相および水性相の分離後に続く最初の30分間わたって測定されたウラン(IV)の濃度に対応し、
図4Bおよび5Bは、モニタリング時間の全長にわたって測定されたウラン(IV)の濃度に対応する。
【0089】
これらの図に示されるように、水性相中の全プルトニウム(III)と混合されたウラン(IV)の濃度は安定であり:それ故、水性相中の、プルトニウム(III)の再酸化またはウラン(IV)の酸化のリスクはない。大部分の亜硝酸を含有する有機相においては、ウラン(IV)の濃度がより大きい縮小を見せる場合でも、3時間のエージング時間後にいくらかのウラン(IV)が残ることから、安定性は2時間未満の全滞留時間に対応したままである。
【0090】
このことは、6−HIHAおよび8−HIOAが、有機相および水性相中の亜硝酸によるその再酸化に対しウラン(IV)を充分に安定させ、数時間のエージング時間の後であっても充分な量が維持されるようにすることを意味している。
【0091】
全ての場合、これらの数時間のエージングの間、プルトニウムは酸化状態IIIのままであり、このことは、HTP中のTBPで形成される有機相から水性硝酸相への、このアクチニドの効率的なストリッピングのための、標的化された目標である。
【0092】
2.4− プルトニウムの還元ストリッピング操作の下流の6−ヒドロキシイミノヘキサン酸および8−ヒドロキシイミノオクタン酸の管理
表1に示したように、プルトニウムの還元ストリッピング後の6−HIHAおよび8−HIHAの大部分は、本質的に水性相中に検出される。これらの抗亜硝酸剤のごくわずかな割合が、有機相中に残るにすぎない。
【0093】
PUREX法の典型的なスキームでは、U/Pu分配工程におけるプルトニウムの還元ストリッピングの下流で実施される操作は、このストリッピング操作から生じる有機相から、0.01mol/Lから0.05mol/Lまでの硝酸を含む水性相への、ウラン(IV)のストリッピングを可能にする(1に近いO/A流速比、45℃の温度)。かくて精製されたプルトニウムおよびウランの有機相は、次に、0.3mol/Lの炭酸ナトリウムを含む水溶液、続いて0.1mol/Lの水酸化ナトリウムを含む水溶液を用いて、それらをリサイクルするために再処理される(10−20のO/A流速比、45℃の温度)。
【0094】
ストリッピング試験は、それ故、以下を用いて実施された:
−有機相として:2つの相であって、第1はHTP中に30%(v/v)のTBPおよび0.05mol/Lの6−HIHAを、そして第2は、0.05mol/Lの8−HIOAを含んでおり;および
−水性相として:ウラン(IV)をストリッピングしかつそれをリサイクルするための有機相を再生するためのPUREX法の典型的なスキームにおいて使用されるものを、それぞれ酸性度および塩基性度の面で模した水溶液。
【0095】
これらの試験は、室温で、O/A容積比1、および有機相と水性相の間の接触時間2分で、攪拌下に行われた。
【0096】
これらの試験後に得られた、水性相中(高速液体クロマトグラフィーによる)および有機相中(気相クロマトグラフィー)の6−HIHAおよび8−HIOAの濃度の測定は、6−HIHAおよび8−HIOAの分配係数が、0.01mol/Lと0.05mol/Lとの間の酸性度についてほぼ一定であることを示した。一方、それらはまた、6−HIHAおよび8−HIOAが、この溶液中に含有される塩基の量が有機相中に含有されるこれらの化合物の分画を中和するのに充分である場合には、水酸化ナトリウム溶液とただ1回接触させた後に、定量的に水性相へ通過することも示した。
【0097】
これらの抗亜硝酸剤は、それ故、そのリサイクルのために、PUREX法の典型的なスキームにおいてこの有機相がそれに供される塩基性の処理によって、ウラン(IV)のストリッピングから得られる有機相から容易に除去され得る。