特許第6876693号(P6876693)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876693
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】非鉄鋳造物のための成形材料
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/10 20060101AFI20210517BHJP
   B22C 1/22 20060101ALI20210517BHJP
   B22C 9/12 20060101ALI20210517BHJP
   B22D 21/04 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   B22C1/10 E
   B22C1/22 H
   B22C9/12 B
   B22D21/04
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-522604(P2018-522604)
(86)(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公表番号】特表2019-502556(P2019-502556A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】US2016066593
(87)【国際公開番号】WO2017106302
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年11月19日
(31)【優先権主張番号】62/269,499
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517387317
【氏名又は名称】アーエスカー ケミカルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シェンピン
(72)【発明者】
【氏名】スターツ,グレゴリー,ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,キャスリーン,イー.
(72)【発明者】
【氏名】クロッカー,ヨルク
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−126377(JP,A)
【文献】 特開2004−098129(JP,A)
【文献】 特開2012−076114(JP,A)
【文献】 特開昭53−049053(JP,A)
【文献】 特開2012−115870(JP,A)
【文献】 特開昭52−081017(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0150592(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102688978(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00−9/30
B22D 21/00−25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属加工のため鋳造鋳物を製造するための成形材料混合物であって、
自由流動性の難燃性成形材料と、
使用時に混合され硬化される2成分系として準備される結合剤と、
を備え、
前記難燃性成形材料は400℃〜500の範囲共融点を示す無機塩の混合物で被覆されている、
成形材料混合物。
【請求項2】
前記自由流動性の難燃性成形材料は鋳物砂を含む、請求項1に記載の成形材料混合物。
【請求項3】
前記2成分結合剤系は、二酸化硫黄ガスによって硬化されるエポキシ−アクリル結合剤である、請求項1に記載の成形材料混合物。
【請求項4】
前記無機塩の混合物は、3つの無機塩の混合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形材料混合物。
【請求項5】
前記混合物内の前記無機塩の各々は、1A族カチオンを有する、請求項4に記載の成形材料混合物。
【請求項6】
少なくとも1つの前記無機塩の前記1A族カチオンはカリウムである、請求項5に記載の成形材料混合物。
【請求項7】
前記無機塩の各々の前記1A族カチオンはカリウムである、請求項6に記載の成形材料混合物。
【請求項8】
前記混合物中の前記無機塩の各々は、アニオンとして、ハロゲン化物アニオン又はホウ素若しくはチタンのフッ素錯体を有する、請求項5に記載の成形材料混合物。
【請求項9】
前記混合物中の前記無機塩の各々は、アニオンとしてフッ素を有する、請求項8に記載の成形材料混合物。
【請求項10】
前記混合物中の前記無機塩の各々は、500より高い個々の融点を有し、前記無機塩のうちの少なくとも2つは、700より高い個々の融点を有する、請求項5に記載の成形材料混合物。
【請求項11】
前記難燃性成形材料は、420℃〜460℃の範囲に共融点を示す無機塩の混合物で被覆されている、
請求項に記載の成形材料混合物。
【請求項12】
前記無機塩の混合物は、重量で、
59%のフッ化カリウムと、
29%のフッ化リチウムと、
12%のフッ化ナトリウムと、
から成る混合物であり、
前記混合物は460の共融点を有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形材料混合物。
【請求項13】
前記無機塩の混合物は、重量で、
50%のホウフッ化カリウムと、
47%のヘキサフルオロチタン酸カリウムと、
3%の塩化カリウムと、
から成る混合物であり、
前記混合物は420の共融点を有する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形材料混合物。
【請求項14】
金属加工のための鋳造鋳物を製造するのに使用するための難燃性成形材料を調製する方法であって、
自由流動性の難燃性成形混合物得るステップと
400℃〜500の範囲共融点を示す無機塩の混合物を得るステップと、
前記難燃性成形混合物と前記無機塩の混合物とを500℃〜700の範囲の温度において、前記無機塩の混合物で被覆された結果として得られる前記難燃性成形混合物の前記自由流動性を維持する様式で、接触させるステップと、
前記被覆された結果として得られる難燃性成形混合物を大気温度まで冷却するステップと、
を含む方法。
【請求項15】
前記無機塩の混合物は、重量0.3%0.4%の量で前記難燃性成形材料と接触させられる、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、完全に説明されるかのように引用により本明細書に組み入れられる、2015年12月18日出願の米国特許仮出願第62/269,499号の、非仮出願であり、その優先権を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、非鉄材料、特にアルミニウム及びマグネシウムの鋳造物に使用するための方法及び組成物に関する。より具体的には、本発明は、鋳物砂と共に1つ又はそれ以上の無機塩の使用法に関する。好ましい使用法は鋳物砂の被覆とすることができる。無機塩は低い融点を有し得ることが好ましく、単一塩又は塩の共融組み合わせとすることができる。好ましい無機塩は、ハロゲン化物アニオン、特にフッ化物アニオンを有する。
【背景技術】
【0003】
英国、バーミング大学のジョン・キャンベル(John Campbell)教授は、信頼性の高い鋳造物を作成するための一連のルールを開発した。彼が留意した問題の1つは、非鉄金属鋳造物の表面近くに生じる欠陥を含む。これらの欠陥は、砂型鋳造鋳物と直接接触する鋳造物の表面に見られるので、これらの欠陥は、普通、「金属鋳物反応」と呼ばれる。これらは、3つの区別される欠陥の下位区分である。
【0004】
第1のタイプは、ガス多孔性欠陥、即ち、表面下のガス泡形成に起因する多孔性である。ガスは、溶融金属中に溶解したガス(とりわけ水素)、注入中に溶融金属内に取り込まれるガス、及び鋳物又はコアの構成要素の化学的分解又は反応からのガス、を含む幾つかの起源から生じ得る。この最後のカテゴリは、反応性アルミニウム表面と、成形材料上又はその近くの大気水との反応を含むことができる。
【0005】
第2のタイプは、収縮多孔性欠陥である。鋳物表面と接触する金属、特に、小さい凝固範囲を有する金属は、初めに及びより迅速に固化することになるので、金属の収縮が起こり得るが、但し、これは鋳物表面から離れる可能性があるが、その影響がそこで見られ得る。
【0006】
第3のタイプの欠陥は熱間亀裂であり、これは不規則な枝割れの形態を取る傾向がある。幾つかの合金は亀裂のより高い傾向を有する可能性があり、一部の亀裂は全くランダムであり得る。固化中に粒子が生じるので、粒子の分離が亀裂を生じる可能性がある。
【0007】
アルミニウム及びマグネシウムなどの軽金属は、自動車、船舶及び宇宙航空用途において重要な用途を有する。これらの用途は、薄片の鋳造物を含むことが多い。しかし、欠陥、特に多孔性の存在は、鋳造物の廃棄を生じることになるので、高度に完全な鋳造物が必要である。
【0008】
金属/鋳物界面における冷却速度が、鋳物部分の品質の重要な因子として認識されている。より遅い冷却は一般に、デンドライト・アーム間隔のような微小構造長スケールの増加によって示される機械的特性の低下を生じる。より微細な微小構造を有する鋳造物は、より良好な伸張及び疲労特性を示す。より小さなデンドライト・アーム間隔値を有する鋳造物は、より小さいガス多孔性及び収縮多孔性欠陥と調和する。
【0009】
成形欠陥に対する幾つかの従来の手法は、成形砂を一緒に保持する結合剤組成に集中していた。例えば、スコグランド(Skoglund)(「スコグランド‘139」)による特許文献1は、部分Iのフェノール樹脂成分と部分IIのポリイソシアネート成分が使用される鋳造結合剤系について教示しており、ここで部分IIの成分は、部分IIの成分の重量に基づいた百分率で、0.1〜5重量%のオルトエステルを含む。典型的には、これらの結合剤系は、部分Iと部分IIを55/45の重量比で使用する。スコグランド‘139は、スコグランド‘139の前の教示の使用が鋳造結合剤及び鋳造混合物に拡張されていなかったが、オルトエステルが有機イソシアネートを安定化することが知られていることを認識している。部分IIの成分中に使用されるとき、オルトエステルは鋳造形状の伸張強度を向上させることが観測され、部分IIの成分は、使用時に、より低い濁りを有することが観測された。
【0010】
別の従来技術の手法は、鋳造物中の結晶粒組織に影響する又はそれを改善する目的で、合金溶融物に組成物を直接加えることである。アルミニウムのためのこれらの「結晶粒改善物」は、二ホウ化チタン(TiB)(CAS 12045−63−5)、ホウフッ化カリウム(KBF)(CAS 14075−53−7)及びヘキサフルオロチタン酸カリウム(KTiF)(CAS 16919−27−0)などの化合物を含む。ホウフッ化カリウムはマグネシウム鋳造物内の砂添加物として使用されるが、異なる理由による。これらの化合物は、高温マグネシウムと湿気又はSiOとの反応によって生じ得るMgOの望ましくない形成を、フッ化物アニオンがMgFを形成するのに使用できるようにすることによって、妨げる。
【0011】
既知の手法が有用であるのと同様に、金属鋳物反応は、本明細書において具体的に定めるように、金属注入が起こるとき鋳物から湿気を除去するための最重要の提案に関する継続中の問題が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,288,139号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来技術のこれらの短所は、金属加工のための、特に非鉄金属、例えば、アルミニウム又はマグネシウムに対する、鋳造鋳物を製造するための成形材料混合物に関連する本発明によって少なくとも部分的に克服される。そのような混合物は、自由流動性の難燃性成形材料及び結合剤を含む。結合剤は、通常、2成分系として準備され、使用時に混合され硬化される。難燃性成形材料は、約400〜約500の範囲、具体的には約420〜約460の範囲に共融点を示す無機塩の混合物で被覆されている。
【0014】
多くの実施形態において、難燃性成形材料は、鋳物砂を含む。これらの実施形態の多くにおいて、結合剤系はエポキシ−アクリル結合剤であり、二酸化硫黄ガスによって硬化される。他の実施形態において、これは、フェノール性ポリオール成分とポリイソシアネート成分を有する一対のポリウレタン前駆体とすることができる。
【0015】
多くの実施形態において、無機塩の混合物は3つの無機塩の混合物であり、混合物中の無機塩の各々は、1A族カチオン、特にカリウムを有することが好ましい。これは、少なくとも1つの無機塩の中にカリウムが存在しても良いが、混合物中の全ての無機塩の中に存在することができる。
【0016】
多くの実施形態において、混合物中の無機塩の各々は、ハロゲン化物アニオン又はホウ素若しくはチタンのフッ素錯体をアニオンとして有する。これらの実施形態の幾つかにおいて、混合物中の無機塩の各々は、アニオンとしてフッ素を有する。
【0017】
実施形態の幾つかにおいて、混合物中の無機塩の各々は、500を超える個々の融点を有し、無機塩の少なくとも2つは、700を超える個々の融点を有し、しかし、共融点は500未満である。
【0018】
1つの特定の実施形態において、無機塩の混合物は、重量で74%のホウフッ化カリウム、15%の塩化カリウム、及び12%のフッ化カリウムから成る混合物であり、この混合物は420の共融点を有する。
【0019】
第2の特定の実施形態において、無機塩の混合物は、重量で59%のフッ化カリウム、29%のフッ化リチウム、及び12%のフッ化ナトリウムから成る混合物であり、この混合物は460の共融点を有する。
【0020】
第3の実施形態において、無機塩の混合物は、重量で50%のホウフッ化カリウム、47%のヘキサフルオロチタン酸カリウム、及び3%の塩化カリウムから成る混合物であり、この混合物は420の共融点を有する。
【0021】
別の態様において、本発明は金属加工のための鋳造鋳物を製造するのに使用される難燃性成形材料を調製する方法に関する。本方法において、自由流動性の難燃性成形混合物、具体的には鋳物砂が得られる。さらに、約400〜約500の範囲、具体的には約420〜約460の範囲に共融点を示す無機塩の混合物が得られる。
【0022】
難燃性成形混合物は、約500〜約700の範囲の温度において、無機塩の混合物と、結果として得られる無機塩の混合物で被覆された難燃性成形混合物の自由流動性の特性を維持する様式で、接触させられ、そして、被覆された結果として得られる難燃性成形混合物は、大気温度まで冷却される。
【0023】
この方法を実施する好ましい仕方において、無機塩の混合物は、重量で約0.3%〜0.4%の量で難燃性成形材料と接触する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
鋳造物の品質に影響を及ぼすことは、幾つかの方向から取りかかることができる。前述のように、スコグランド’139は1つ又はそれ以上の添加物が結合剤系成分内に使用される手法を用いる。別の手法は、微粒子形態の添加物を鋳物砂に加えることになる。そのような添加物は、しかし、結合剤系によって処理される材料の量を増すことになり、良好な鋳物又はコアを形成するのに必要な結合剤の量を増す可能性がある。第3の手法は、添加物(単数又は複数)を溶融形態で又は溶液として適用することによって、鋳物砂を添加物(単数又は複数)で予備処理することになる。鋳物砂中に添加物(単数又は複数)を微粒子として分散させることは、著しい量の添加物が、金属/鋳物の界面に又はその近傍に配置されないので、砂からの添加物の分離、及び非効果的な使用の問題の可能性をもたらし、解決されるべき問題が生じる。
【0025】
個々の砂粒を溶融成分又は溶液中の成分で被覆することは、添加物を均一に分散させる利点を有するが、これは界面から離れた非効果的な使用の問題を必ずしも解決しない。
【0026】
添加剤を加えるための最終的な可能性として、添加剤は溶融又は溶液形態で鋳物又はコアの関連する表面に吹き付けることができる。
【0027】
現在まで、研究は、Al鋳造物内の多孔性及び収縮欠陥の形成に対する特定の成形材料の影響についてである。少量の低融点無機塩を成形混合物に組み込むことは、いかに速く熱が液体金属からコア/鋳物に分散されるかに影響するように思われる。これが、次に、前述の表面下欠陥の形成/制御にプラスの効果を有するように思われる。他方、冷却速度の増加は、鋳造金属部分の機械的特性に影響する、2次的な樹枝状アーム間隔を制御することが知られている。本研究はまた、後者を「計測」するための簡単な方法の考案を探索する。
【0028】
第1のテストは、塩を粉末として鋳物砂に加えることと対照的に、鋳物砂に塩を予備被覆することの効果を調べた。この実験のために選択された塩(混合塩#1)は、約420の共融点を有する混合物であった。この塩は、74重量%のホウフッ化カリウム(KBF)、15重量%の塩化カリウム(KCl)(CAS 7447−40−7)及び11重量%のフッ化カリウム(KF)(CAS 7789−23−3)から成るものであった。共融点が、これらの化合物の個々の融点より著しく低いことに留意することが重要である。混合物中の3つの塩の融点は、上記に挙げた順番に、530、780及び858である。
【0029】
鋳物−金属界面における効果をテストする前に、塩による予備被覆及び/又は塩を鋳物砂に加えることが有用なコアをもたらすことを保証するために、成形混合物を調製した。市販の2成分結合剤、特にポリウレタン・コールドボックス(PUCB:polyurethane cold box)結合剤系を使用した。そのような系において、ASK Chemicals、Dublin、OHから、ISOCURE FOCUS(商標)I XX440として市販されている部分Iの成分は、フェノール性ポリオールをベースとする樹脂及び一組の適切な補足物を含むものであった。ISOCURE FOCUS II XX840として入手可能な部分IIの成分は、一組の適切な補足物を伴うポリイソシアネートを含むものであった。選択された鋳物砂は、Fairmont Santrol、Wedron、ILから市販されているWedron410であった。
【0030】
実施例Aにおいて、結合剤を砂に基づいて1重量%の量を鋳物砂に加える前に、0.4重量%の量の塩を粉末として鋳物砂に加えた。結合剤は、部分I/部分IIの50/50の比で加えた。鋳物砂を(粉末として加えた塩と)混合した後、結果として得られた鋳物混合物をドッグボーン型の空洞に吹き込み、次に、従来の工業的慣行に従って、ジメチルイソプロピルアミン(DMIPA:dimethyl isopropylamine、CAS 996−35−0)で硬化させた。
【0031】
実施例Bでは、0.4重量%の量の塩を、550の温度において、砂に予備被覆し、ついで大気温度に冷却した。これ以外は、実施例Aの手順を反復した。
【0032】
鋳物混合物の引張強度を、「ドッグボーン」試料を用いてテストした。可使時間ゼロにおいて、実施例Aの混合物は、30秒において72psiの引張強度を有し、1時間においては99psiに増加し、次に、24時間においては63psiに減少した。実施例Bの混合物は、同じ条件下で、それぞれ、97、168、及び161psiを示した。明白に、実施例Bの混合物がより良好な性能を示し、1時間におけるその強度を24時間にわたり、実質的に維持した。
【0033】
引張強度の第2のテストは、90%の相対湿度において、24時間貯蔵した後の、試料の引張強度をテストすることであった。この場合、実施例Aの混合物は、63psiに非常に近い61psiにおいてテストし、他方、実施例Bは、161psiにおける前のテストから133psiに低下したが、やはり実施例Bの強度は、実施例Aに関して得られたいかなる結果をも著しく超えた。
【0034】
2時間の可使時間テストを各々の混合物に対して試みた。しかし、実施例Aの混合物は完全に硬化し、コアにすることはできなかった。実施例Bの混合物は、30秒後に75psiの引張強度及び24時間後に154psiの引張強度を有した。
【0035】
上記のことから、混合塩#1は、塩添加物が砂を予備被覆するとき、容認できるコアを生成することができるが、粉末形態での添加は容認できないことが非常に明白である。
【0036】
混合塩#1による結果に基づいて、次に、金属−鋳物界面における塩の効果を決定するためにテストを拡張した。各々の場合に、成形混合物のテスト試料を調製してコアにし、その上に、溶融金属をコア頂部のパドルの中に注ぐことができた。これは、硬化した成形混合物と接触して冷えた少なくとも1つの面を有する固体金属試料もたらした。
【0037】
金属−鋳物界面実験のために、混合塩#1を再び使用し、さらに2つの付加的な混合塩組成物を使用した。これらのうち、混合塩#2は、約460の共融点を有する混合物であった。この塩は、59重量%のフッ化カリウム(KF)、29重量%のフッ化リチウムLiF(CAS 7789−24−4)、及び12重量%のフッ化ナトリウム(NaF)(CAS 7681−49−4)から成るものであった。混合塩#1と同様に、混合塩#2は、それぞれ858、870及び993の融点を有する個々の塩のいずれの融点よりも著しく低い共融点を有する。
【0038】
混合塩#3は、約420の共融点を有する混合物であった。この塩は、50重量%のホウフッ化カリウム(KBF)、47重量%のヘキサフルオロチタン酸カリウム(KTiF)及び3重量%の塩化カリウム(KCl)から成るものであった。混合塩#3の共融点は、それぞれ530、780及び780の個々の融点のいずれよりも著しく低い。さらに、ベースラインを確立するために、砂に塩を加えない実験、及び砂にKBFが加えられた実験を行った。
【0039】
以下の実験において、選択された結合剤は市販の2成分コールドボックス結合剤、特に、硬化ガスとしてSOと併用して使用されるエポキシ−アクリル結合剤であった。そのような系において、ASK Chemicals L.P.からISOSET THERMOSHIELD(商標)4480として入手可能な部分Iの成分は、エポキシ樹脂、クメンヒドロペルオキシド及び一組の適切な補足物を含むものであった。ISOSET THERMOSHIELD 4491として入手可能な部分IIの成分は、エポキシ樹脂及び一組の適切な補足物が付随したアクリレートを含むものであった。選択された鋳物砂はWedron410であった。結合剤は、砂に基づいて1重量%の量で、部分I/部分IIの50/50の比で加えられ、各々の場合において、粉末として加えることにより又は溶融物による予備被覆として、塩添加物ですでに処理されたものであった。鋳物砂と混合された(粉末として加えられた塩と)後、結果として得られた鋳物混合物は、工業的慣行に従って、窒素中に混合した35%二酸化硫黄で硬化させた。
【0040】
金属−鋳物反応は、少なくとも部分的に湿気に起因すると考えられるので、全てのコアを、少なくとも0.06%の水を含む砂を用いた高湿度条件下で作成した。
【0041】
各々の場合に得られた結果を評価するために、アルミニウム合金319である固化した金属の金属−鋳物面を、光学的顕微鏡を用いて又は用いずに、視覚的に、連続マトリクス内の島構造体の存在、及び明らかな収縮について調べた。各々の試料を、最良から最悪までに至る1から5までの尺度で評価した。2を超えて評価された試料は、本発明の構想の範囲の外にあると見なした。
【0042】
実施例1は、塩添加物を有さず、評価5のベースラインとして意図したものであり、それに対して他の試料を比較することができる。視覚的検査は、収縮のしるしを有する多くの島構造体を示した。
【0043】
実施例2〜4は、結合剤添加の前に、砂に直接加えられた粉末形態のKBFを用いた3つの実験であった。実施例2では、砂にKBFを、砂に基づいて0.3重量%加えた。小さな島構造体が見られ、2.5の評価をもたらし、これは効果的であると考えられたが(ベースラインを上回る改良として)、本発明の範囲内ではない。実施例3では、砂にKBFを、砂に基づいて0.2重量%加えた。小さな、しかしより多くの島構造体が見られ、3.5の評価をもたらした。これも効果的であると考えられるが(ベースラインを上回る改良として)、本発明の範囲内ではない。実施例4では、砂にKBFを、砂に基づいて0.1重量%加えた。島構造体は、ベースラインに見られるものより少ないが、実施例2又は3よりも多く、4の評価をもたらした。この実施例は効果的であると考えられるが(ベースラインを上回る改良として)、本発明の範囲内ではない。
【0044】
実施例5では、砂にKBFを、砂に基づいて0.3重量%加えた(実施例2と同じ)が、添加は、結合剤を加えてコアを調製する前に、600まで砂を予備被覆し、次に塩で被覆された砂を大気温度まで冷却した。少数の島構造体のみが観測され、2の評価をもたらした。0.3重量%レベルにおけるKBFに関して予備被覆は粉末として加えるよりもより効果的であった。
【0045】
実施例6から8までは、上記の3つの混合塩を用いて、予備被覆をさらに調べた実験であった。各々の場合、混合塩は、実施例2及び5におけるKBFに関して用いられたのと同じ0.3重量%レベルで加えられた。実施例6において、混合塩#1が用いられ、結果は1.5に評価され、即ち、実施例5よりも良好であった。島構造体は殆んど観測されなかった。実施例7では、混合塩#2が用いられ、結果は実施例6に非常に類似した結果が観測され、島構造体は殆んど観測されなかった。実施例8では、混合塩#3が用いられ、このシリーズの最良の結果が見られ、目に見える島構造体はなかった。実施例5から8までの全ては、本発明の構想の範囲に入ると見なされた。
【0046】
実施例9は、結合剤を加えてコアを作製する前に、塩、この場合にはKTiFを、砂に基づいて0.3重量%レベルで砂に粉末として直接加えることを含んださらに別の実施例であった。結果は5に評価され、即ち、ベースランと比べて何も改善が得られなかった。
【0047】
これらの実施例は、500〜700の範囲に加熱された鋳物砂に適切な範囲の融点を有する塩を加えることが、金属−鋳物反応の影響を減らすことができる修飾された鋳物砂をもたらすことができることを示す。適切な融点を有する多数の塩が存在し、融点は、本明細書で説明した混合塩におけるように、様々な塩の共融混合物を使用することによって選択することができる。有用であると判断された塩は、典型的にはハロゲン化物(VIIA族)アニオンを含む。それらはまた、典型的にはIA族カチオンを含んでいた。これらの塩は2成分とすることができるが、チタン又はホウ素を含む塩によって示されたように、より複雑なものとすることもできる。鋳物砂を被覆するために効果的に使用されるために、塩は、500〜700の範囲の温度に加熱された鋳物砂粒子を被覆するのに十分に低い塩の融点を有することが望ましい。