特許第6876698号(P6876698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876698
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】微生物培養プレートの分配装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20210517BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20210517BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C12M1/00 C
   C12Q1/06
   C12M1/34 D
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-529212(P2018-529212)
(86)(22)【出願日】2016年11月22日
(65)【公表番号】特表2018-536415(P2018-536415A)
(43)【公表日】2018年12月13日
(86)【国際出願番号】US2016063237
(87)【国際公開番号】WO2017099992
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2019年11月20日
(31)【優先権主張番号】62/263,921
(32)【優先日】2015年12月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ボレア, フィリップ エー.
【審査官】 松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−500302(JP,A)
【文献】 特表平11−506826(JP,A)
【文献】 特開2002−181834(JP,A)
【文献】 米国特許第02385521(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 1/34
C12Q 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と、前縁と、後縁とを有する基部としての第1のローラと、
前記基部の前記第1の主面上に又はその上方にあって、退避位置から係合位置に移動することができ、前記退避位置は前記係合位置よりも前記後縁により近い、プッシャと、
前記基部の前記前縁の近くの前記基部の一部の上方に少なくとも部分的に配置された直立部材であって、前記直立部材と前記基部との間に空間を形成し、前記直立部材と前記基部との間の前記空間は、培養プレートが通過するのに十分な大きさの精密間隙を画定する、直立部材と、を備え、
前記プッシャ及び基部は、前記プッシャが前記退避位置にあるときに、前記基部は、前記基部の前記第1の主面の上に1枚以上の培養プレートを支持することができるように構成されており、前記1枚以上の培養プレートは、前記プッシャが退避位置にあるときに、前記プッシャの近くに配置可能な後縁と、前記プッシャの上に配置可能なスリップカバーとを有しており、
前記精密間隙の高さは、前記培養プレートの1枚の高さ以上、かつ前記培養プレートの前記1枚の高さの2倍未満であり、
前記プッシャは、前記退避位置から前記係合位置へと移動するときに、1枚の培養プレートのみを少なくとも部分的に前記精密間隙に押し込むように構成されている、培養プレート分配装置。
【請求項2】
前記基部は、あるスタック高さを有するスタックの1枚以上の培養プレートを支持することができ、
前記直立部材は、前記基部の前記第1の主面からの高さが、前記スタックの高さ以上である、請求項1に記載の培養プレート分配装置。
【請求項3】
前記1枚以上の培養プレートの各々はある高さを有し、
前記プッシャは、前記1枚以上の培養プレートの前記高さよりも低い高さを有する、請求項1又は2に記載の培養プレート分配装置。
【請求項4】
前記1枚以上の培養プレートは薄膜培養プレートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の培養プレート分配装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の培養プレート分配装置と、
前記精密間隙を少なくとも部分的に通過した培養プレートを前記培養プレート分配装置から遠ざけて移動させるように配置された1つ以上の第2のローラと、を備える、培養プレートローダ。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の培養プレート分配装置又は請求項に記載の培養プレートローダを備える、培養プレートリーダ。
【請求項7】
培養プレートを分配する方法であって、
第1の主面と前縁と後縁とを有する基部としての第1のローラ上で、前記基部の背面に向かって、かつ基部上又はその上方に前記1枚以上の培養プレートに向かって配置された退避位置にあるプッシャと、部分的に前記基部の上方かつ前記基部の前記前縁に向かって配置された直立部材との間に、前記1枚以上の培養プレートの少なくとも1つの縁部に突出する突出部分を有するカバースリップを備える1枚以上の培養プレートを配置するステップであって、前記直立部材と前記基部との間の空間は、前記カバースリップのうちの少なくとも1つの前記突出部分が前記プッシャの上方になるように精密間隙を画定する、ステップと、
前記退避位置から、前記退避位置よりも前記基部の前記前縁により近い係合位置に移動するように前記プッシャを係合させ、それによって、1枚の培養プレートのみを前記精密間隙を通して押し出すステップと、を含む、方法。
【請求項8】
前記プッシャは2つ以上のタブの形態である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
各培養プレートはある高さを有し、前記精密間隙は、単一の培養プレートの高さよりも大きいが、2枚の培養プレートの高さよりも小さい高さを有する、請求項又はに記載の方法。
【請求項10】
前記1枚以上の培養プレートは、少なくとも10枚の培養プレートを備え、
更に、少なくとも10枚の培養プレートの各々の前記カバースリップの前記突出部分が、前記プッシャ上で同じ方向に向いている、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
培養プレートを培養プレートリーダに装填する方法であって、
請求項10のいずれか一項に記載の方法によって培養プレートを分配するステップと、
前記培養プレートを前記基部から離れるように移動させるステップと、
前記培養プレートを前記培養プレートリーダの中に置くステップと、を含む、方法。
【請求項12】
微生物コロニーを計数する方法であって、少なくとも1枚の接種した培養プレートを請求項11に記載の方法によって培養プレートリーダに装填するステップと、前記接種した培養プレート上の前記微生物コロニーの少なくとも一部を計数するステップと、を含む、方法
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
薄膜培養プレートは、例えば、米国特許第4,565,783号、同第5,089,413号、同第5,137,812号、及び同第5,232,838号に記載されており、例えば3M Company(St.Paul,Minnesota,USA)又は世界中の多くの国々にあるその関連会社の登録商標であるPETRIFILMプレートの商品名で市販されている。薄膜培養プレートは、典型的には、例えば、アクリレート粘着剤などの粘着剤を用いて、表面上にコーティングされたゲル化基質及び微生物増殖栄養素を含有する乾燥粉末を含んでいる。一般的には、水性試料をこの粉末と接触させて置きカバーシートで試料及び基材を覆うことができるよう、この粉末は多くの場合冷水で戻すことが可能である。使用時には、水性試料は、乾燥粉末を水和させて、微生物増殖を持続させることができるゲル化媒体を形成することができる。次に、カバーシートに接着させることができるインジケーター色素が、生存微生物の存在下で反応して、薄膜培養デバイス上で増殖する微生物コロニーの視覚化を可能にする検出可能な応答を発する。寒天培養プレート及びペトリ皿などの他の種類の培養プレートも知られている。
【0002】
微生物の培養は、3M Company(St.Paul,Minnesota,USA)のPETRIFILMプレートの商品名で入手可能な培養プレートなどの薄膜培養プレートを含むがこれに限定されない、さまざまな種類の培養プレート上で行うことができる。PETRIFILMプレート並びに他の培養プレートは、しばしば計数される、微生物コロニーを増殖させるために使用されてきた。コロニーの手動計数が可能である一方、この目的に、3M Company(St.Paul,Minnesota,USA)から市販されているPETRIFILMプレートリーダなどの培養プレートリーダを使用することも知られている。
【発明の概要】
【0003】
培養プレート分配装置は、第1の主面と前縁と後縁とを有する基部と、基部の第1の主面の上又は上方にあるプッシャとを備え得る。プッシャは、退避位置から係合位置に移動することができ、退避位置は、係合位置よりも、基部の後縁により近い。プッシャが退避位置にあるとき、基部がその第1の主面の上に1枚以上の培養プレートを支持することができるように、プッシャ及び基部を構成することができる。1枚以上の培養プレートは、プッシャが退避位置にあるときに、プッシャの近くに配置可能な後縁と、プッシャの上に配置可能なスリップカバーとを有することができる。培養プレート分配装置はまた、基部の前縁近くの基部の一部の上方に少なくとも部分的に配置された直立部材を備え、これによって、直立部材と基部との間に空間を形成することができる。直立部材と基部との間の空間は、培養プレートが通過するのに十分な大きさの精密間隙を画定する。精密間隙の高さは、1枚以上の培養プレートの高さ以上、かつ1枚以上の培養プレートの高さの2倍未満であり得る。係合位置にあるプッシャは、1枚の培養プレートのみを少なくとも部分的に精密間隙に押し込むように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】単一の培養プレートを培養プレートのスタックから分配するための分配装置の側面図である。
図2図1の分配装置の上面図である。
図3図1の分配装置を特徴とする培養プレートローダの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示を通じて、「a」、「an」及び「the」などの単数形は、しばしば便宜上使用されるが、単数形が単独のみであることが明示的に指定され、又は文脈によって明確に示されている場合を除いて、単数形は複数形を含むことを意味するものと理解されたい。単数形のみが要求される場合、一般的には「1つのみ」などの特定の用語が使用される。
【0006】
「上方へ」、「下方へ」、「〜の上方に」、「〜の下方に」などの方向の用語は、必ずしも地面又は重力に対する方向を示すために使用されるものではない。代わりに、かかる用語は、特定の特徴部に向かう、又は特定の特徴部から離れる相対的な方向を示すために使用される。例えば、第1の特徴部は、第2の特徴部の「上方に」あるが、第2の特徴部が反転されたなどの場合には、第2の特徴部よりも地面に近くなる。しかし、共通の第3の特徴部に対して「上方に」、「上へ」、「上に」等にある2つの特徴部は、この共通の第3の特徴部に対しては同じ相対方向に存在する。
【0007】
「薄膜培養プレート」及びその複数形は、シート状のカバースリップに貼り付けられたシート状基材を備えた1つの(又は複数の)培養デバイスを指し、基材及びカバースリップは各々、内部に面する主面と外部に面する主面とを有する。基材、カバースリップ、又はその双方の内部に面する主面には、冷水可溶性ゲル化剤を含む実質的に水を含まないコーティングが接着されている。任意選択的に、基材、カバースリップ、又はその双方の内部に面する主面には、栄養培地を含む実質的に水を含まないコーティングが接着される。任意選択的に、栄養培地、ゲル化剤、又はその双方を、基材、カバースリップ、又はその双方の上にコーティングされた接着剤層に接着させることができる。任意選択的に、薄膜培養デバイスは、基材、カバーシート、又はその双方の内部に面する表面に接着した薄い有孔スペーサーを更に含むことができる。薄膜培養デバイスの非限定的な例は、米国特許第4,565,783号、同第5,089,413号、同第5,137,812号、及び同第5,232,838号に開示されている。
【0008】
培養プレート分配装置は、第1の主面と前縁と後縁とを有する基部と、基部の第1の主面の上又は上方に延びているプッシャとを備え得る。プッシャは、退避位置から係合位置に移動することができ、退避位置は、係合位置よりも、基部の後縁により近い。プッシャが退避位置にあるとき、基部がその第1の主面の上に1枚以上の培養プレートを支持することができるように、プッシャ及び基部を構成することができる。1枚以上の培養プレートは、プッシャが退避位置にあるときに、プッシャの近くに配置可能な後縁と、プッシャの上に配置可能なスリップカバーとを有することができる。培養プレート分配装置はまた、基部の前縁近くの基部の一部の上方に少なくとも部分的に配置された直立部材を備え、これによって、直立部材と基部との間に空間を形成することができる。直立部材と基部との間の空間は、培養プレートが通過するのに十分な大きさの精密間隙を画定する。精密間隙の高さは、1枚以上の培養プレートの高さ以上、かつ1枚以上の培養プレートの高さの2倍未満であり得る。係合位置にあるプッシャは、1枚の培養プレートのみを少なくとも部分的に精密間隙に押し込むように構成されている。
【0009】
培養プレート分配装置の基部は、1枚以上の培養プレートを支持するように特別に対応させることができ、典型的には、複数の培養プレートのスタックを支持するように特別に対応している。基部は、この目的に好適な任意の形態であり得る。多くの場合、基部は、ローラ又はベルトが巻き付けられた一連のローラとすることができ、その場合、ローラ又はベルトの外向きの表面は、通常、基部の第1の主面である。他の場合には、基部は、表面処理されているか又は別の方法で第1の主面と第1の主面の上に置かれた培養プレートとの間を低摩擦とするように設計された第1の主面を有し得るプラスチック又は金属などの硬質の平板又はシートである。
【0010】
装置の一部ではないが基部の第1の主面上に存在し得る培養プレートのスタックは、培養プレートの数及び個々の培養プレートの高さによって画定されるスタック高さを有することができる。典型的には、培養プレートは最初に接種され、次いで分配装置から培養プレートリーダに分配される。10枚、25枚、50枚、100枚、250枚、400枚、又は更に500枚以上の培養プレートを収容することができる分配装置もある。培養プレートは、ほとんどの場合が薄膜培養プレートであり、必ずしも大きな高さを必要とはしない。例えば、3M社から入手可能な一部の薄膜培養プレートは、50枚の接種された薄膜培養プレートのスタック当たり1.5〜2cmの高さを有するが、これはプレート当たり30〜40mmに対応する。したがって、場合によっては、500枚の薄膜培養プレートのスタックでさえ、15〜20cmの高さ以内に収容することができる。
【0011】
プッシャの高さは、通常、単一の培養プレートの高さよりも小さく、これによって、最も下の培養プレートのカバースリップの一部がプッシャの上に納まる。しかし、特に、プッシャが単一の培養プレートの高さとほぼ同じか又は更にはプレートよりもわずかに高いことも可能である。これは、カバースリップがいくらか可撓性を有する場合に特に当てはまり、それによって、プッシャが培養プレートよりも幾分高い場合でも、カバースリップはプッシャの上に位置することができる。プッシャの上に納まることにより、カバースリップは、例えば、培養プレートが基部上のスタックに完全には整列していない場合でも、培養プレートのスタックの内、最下部の培養プレートのみをプッシャが押すよう導き、最下部の培養プレートの上方にある培養プレートをプッシャが押すことを防止する役割を果たすことができる。したがって、プッシャの設計は、装置が複数の培養プレートを一度に前方に押すことを防止するのに役立つ。特に、プッシャは必ずしも基部に隣接してはいないか、あるいは、基部上に置かれてはいないので、プッシャの高さとは、プッシャの頂部から、具体的には、プッシャの培養プレートに接触するように構成された部分の頂部から、基部の第1の主面(即ち、基部の培養プレートが存在する表面)との距離のことをいう。
【0012】
直立部材は、任意の簡便な方法で基部に取り付けることができる。精密間隙の両側の脚を介して直立部材を基部に取り付けることは、簡便であることが多い。これらの脚は、精密間隙の高さを変えることができるように調節可能であることが好ましいが、精密間隙が培養プレートを通過させるのに十分な広さになるように、配置される。あるいは、直立部材を基部に取り付ける必要はない。かかる場合、直立部材は、他の何らかの方法で、例えば培養プレート分配装置を組み込んだ培養プレートローダ又は培養プレート分配器に取り付けることによって、支持される。基部の第1の表面からの高さが調節可能になるように、直立部材を構成することが可能である。このようにして、装置に使用されている薄膜培養プレートなどの培養プラタの種類に応じて、ユーザは精密間隙の高さを変更することができる。
【0013】
直立部材と精密間隙はまた、複数の培養プレートが一度に分配されないように設計されている。プッシャは、通常、スタックの最下部の培養プレートのみを押すように構成されているが、摩擦又はプレート同士を張り付かせる他の要因のために、他の培養プレートを最下部の培養プレートと共に引きずる恐れがある。精密間隙は2枚以上の培養プレートが通過するのに十分な大きさではないため、この問題を軽減又は排除することができる。
【0014】
本明細書に記載の培養プレート分配装置によれば、動作時に、薄膜培養プレートなどの2枚以上の培養プレートが一度に分配されることを防止することができる。これによって、当該分野における重大な問題が克服される。具体的には、培養プレート、特に薄膜培養プレートを、スタックの底部にある培養プレートを分配するように設計された分配装置に積み重ねると、底部の培養プレートの上にある培養プレートが底部の培養プレートに張り付く恐れがある。これは、一度に2枚以上の培養プレートを分配させ、培養プレート分配器を閉塞させ、又は培養プレートリーダを損傷させさえする、などの問題を引き起こす可能性がある。
【0015】
培養プレートが本明細書に記載の培養プレート分配装置から分配されると、培養プレートは培養プレートリーダに置かれ得る。いくつかの場合、培養プレートは培養プレートリーダに直接置かれる。他の場合には、培養プレートは最初に培養プレートローダに置かれ、その後、培養プレートローダは、培養プレートを培養プレートリーダに装填する。培養プレートローダは、少なくとも1つが通常機械的に駆動される1つ以上のローラを備え得る。例えば、分配された培養プレートの上部及び底部を同時に把持するように構成された2つのローラを含むピンチローラアセンブリを使用することができる。
【0016】
本明細書に記載の、培養プレート分配装置、培養プレートローダ、及び培養プレートリーダは、薄膜培養プレート、特に商品名PETRIFILMプレートで入手可能なプレートに適合するように、特別に対応されていることが多い。
【0017】
図面を参照すると、いずれも必ずしも一定の縮尺通りに描かれていないが、図1の分配装置100は基部110を備え、基部110の上に培養プレート130、140、及び150が積み重ねられている。プッシャ120は、培養プレート130、140、及び150のスタックの方を向いて直立して伸びており、この図では、これらの培養プレートは薄膜培養プレートである。プッシャ120の高さは基部110より高く、培養プレート130の高さより低いため、プッシャ120はカバースリップ131の下にあり、カバースリップ131はプレート130の後縁よりも後方に、かつプッシャ120の上に延びている。直立部材160は、プッシャ120とは反対側で、基部110の上方にある。直立部材160と基部110との間の空間は、精密間隙170を画定する。
【0018】
図1において、プッシャ120は退避位置に示されており、培養プレート130、140、及び150を定位置に保持するだけであり、最下部の培養プレート130を精密な間隙170を通して分配するプロセスにはないことを意味するものである。したがって、プッシャ120はまた、分配の前に最下部の培養プレート130を定位置に保持するのに役立ち得る。
【0019】
直立部材160は、分配装置100の任意の他の部分に取り付けられているものとして示されていない。しかし、直立部材160は、培養プレート130、140、及び150のスタックの縁部外の脚(図示せず)によって基部110に取り付けることができる。あるいは、分配装置100が培養プレートリーダ(図示せず)などのより大きな機械の構成要素である場合、直立部材160をその機械の別の部分(図示せず)に取り付けることができる。
【0020】
精密間隙170の高さは、培養プレート130の高さ(カバースリップ131の高さを含む)と少なくとも同じ高さであり、典型的にはそれよりわずかに高いが、培養プレート130の高さの2倍よりは低いため、一度に1枚の培養プレートのみが精密間隙170を方向Dに通過することができる。同様に、精密間隙170は、培養プレート130、140、及び150の幅と少なくとも同じ幅であり、しばしばそれより幾分幅が広い。
【0021】
図1には3枚の培養プレート130、140、及び150しか示されていないが、分配装置はより多くの培養プレートを有するスタックを収容するように構成することができる。上述のように、10枚、25枚、50枚、100枚、250枚、400枚、又は更に500枚以上の培養プレートを収容することができる分配装置がある。
【0022】
使用時には、プッシャ120が方向Dに移動し、最下部の培養プレート130を方向Dに押して精密間隙170を通過させ、これによって、最下部の培養プレート130を培養プレートのスタックから分離させる。続いて、プッシャ120は元の位置に後退し、培養プレート140を基部110上に落下させる。プッシャ120は、(基部110からの高さとして測定して)最下部の培養プレート130を押すことができるほど十分高いが、最下部の培養プレート130のカバースリップ131にぶつかるほど高くはなく、次の培養プレート140が基部110上に落下しても、プッシャ120はまた、次の培養プレート140のカバースリップにぶつかりはしない。
【0023】
プッシャ120は、基部110に恒久的に取り付けることができ、この場合、プッシャ120及び基部110は共に方向Dに移動する。より一般的には、プッシャ120は基部110の頂部と共にスライドし、バネ又はモータ(図示せず)によって動力を供給され得る。
【0024】
図は、基部110と接触しているプッシャ120を示しているが、必ずしもそうである必要はない。プッシャ120が基部110に接触することなくその上方にあることも可能である。例えば、プッシャ120は、基部110の上方に配置されたロッドとして構成することができ、このロッドは、ピンボールテーブルのボールランチャと同様に、退避位置と係合位置との間でロッドを移動させるばねに取り付けられる。
【0025】
基部110、プッシャ120、及び直立部材160は、任意の好適な材料で製作することができる。一般的には、それらはポリエチレン又はポリエチレン−co−ビニルアセテートなどのプラスチック製である。しかし、これらの構成要素のうちの1つ以上をアルミニウムなどの金属、又はシリコーンゴムなどのゴムで製作することも可能である。
【0026】
図2は、分配装置100の上面図であり、培養プレート130が載置された基部110を示している。カバースリップ131は、この図では示されていない(プッシャ120の上の突出を含むその位置は、「窓ガラス(windowpane)」ハッシュによって表される)。これは、多くのカバースリップ131が透けていることと合致している。この実施形態では、プッシャ120は、基部100の側面にある2つの小さなタブ120a及び120bの形態をしている。しかし、プッシャ120が、基部110の長さにわたる単一の直立部材、又は110の縁に隣接しない1つ以上のタブなどの他の構成を有することも可能である。
【0027】
図1と同様に、プッシャタブ120a及び120bは退避しており、方向Dに移動して培養プレート130を方向Dに押している過程にはないことを意味する。使用時には、プッシャテーブル120a及び120bは、培養プレート130を方向Dに押すために、連携してD方向に移動する。
【0028】
図3、分配装置100を備えた装填装置200。この図は、係合位置にあるプッシャ120を示し、プッシャ120は、最下部の培養プレート130を方向Dに直立部材160とローラ220との間の精密間隙170の中へ押し込んでおり、ローラ220はまた、この図では基部としての役割を果たしている。培養プレート130の一部が精密間隙170を通過すると、ローラ210及びローラ220(そのうちの1つは機械的に駆動されていてよい)によって、分配装置100から更に引き出すことができる。次に、培養プレート130は、ピンチローラ230及び240(そのうちの一方又は双方は機械的に駆動されていてよい)によって、培養プレートリーダ内のプラテンなどの別の場所に更に搬送することができる。
【0029】
最下部の培養プレート130が精密間隙170を完全に通過すると、プッシャ120は退避位置に戻ることができ、培養プレートスタック180を方向Eに落下させて、次の最下部の培養プレート140が基部110に接触し、精密間隙170を通して分配される準備が整う。
【0030】
例示的な実施形態の列挙
この実施形態の列挙は、本発明の特定の態様の理解を助けることを意図している。限定を目的とするものではない。
【0031】
1. 第1の主面と、前縁と、後縁とを有する基部と、
基部の第1の主面上に又はその上方にあって、退避位置から係合位置に移動することができ、退避位置は係合位置よりも後縁により近い、プッシャと、
基部の前縁の近くの基部の一部の上方に少なくとも部分的に配置された直立部材であって、直立部材と基部との間の空間は、培養プレートが通過するのに十分な大きさの精密間隙を画定する、直立部材と、を備え、
プッシャ及び基部は、プッシャが退避位置にあるときに、基部は、基部の第1の主面の上に1枚以上の培養プレートを支持することができるように構成されており、1枚以上の培養プレートは、プッシャが退避位置にあるときに、プッシャの近くに配置可能な後縁と、プッシャの上に配置可能なスリップカバーとを有しており、
精密間隙の高さは、少なくとも1枚以上の培養プレートの高さ以上、かつ1枚以上の培養プレートの高さの2倍未満であり、
係合位置にあるプッシャは、1枚の培養プレートのみを少なくとも部分的に精密間隙に押し込む、培養プレート分配装置。
【0032】
2. 基部は、あるスタック高さを有するスタックの1枚以上の培養プレートを支持することができ、直立部材は、基部の第1の主面からの高さが、スタックの高さ以上である、実施形態1に記載の培養プレート分配装置。
【0033】
3. 1枚以上の培養プレートの各々はある高さを有し、
プッシャは、1枚以上の培養プレートの高さよりも低い高さを有する、実施形態1又は2に記載の培養プレート分配装置。
【0034】
4. 実施形態1〜3のいずれか一項に記載の培養プレート分配装置と、
精密間隙を少なくとも部分的に通過した培養プレートを培養プレート分配装置から遠ざけて移動させるように配置された1つ以上のローラと、を備える、培養プレートローダ。
4a. 分配された培養プレートを受け入れるためのピンチローラを更に備える、実施形態4に記載の培養プレートローダ。
【0035】
5. 実施形態1〜3のいずれか一項に記載の培養プレート分配装置又は実施形態4若しくは4aに記載の培養プレートローダを備える、培養プレートリーダ。
5a. 培養プレートを受け入れるためのプラテンを更に備える、実施形態5に記載の培養プレートリーダ。
【0036】
6. 培養プレートを分配する方法であって、
第1の主面と前縁と後縁とを有する基部上で、基部の背面に向かって、かつ基部上又はその上方に1枚以上の培養プレートに向かって配置された退避位置にあるプッシャと、部分的に基部の上方かつ基部の前縁に向かって配置されて基部との間に空間を画定する直立部材との間に、1枚以上の培養プレートの少なくとも1つの縁部に突出する突出部分を有するカバースリップを備える1枚以上の培養プレートを配置するステップであって、直立部材と基部との間の空間は、カバースリップのうちの少なくとも1つの突出部分がプッシャの上方になるように精密間隙を画定する、ステップと、
退避位置から、退避位置よりも基部の前縁により近い係合位置に移動するようにプッシャを係合させ、それによって、1枚の培養プレートのみを精密間隙を通して押し出すステップと、を含む、方法。
【0037】
7. プッシャは2つ以上のタブの形態である、実施形態6に記載の方法。
【0038】
8. 各培養プレートはある高さを有し、精密間隙は、単一の培養プレートの高さよりも大きいが、2枚の培養プレートの高さよりも小さい高さを有する、実施形態6又は7に記載の方法。
【0039】
9. 1枚以上の培養プレートは、少なくとも10枚の培養プレートを備え、
更に、少なくとも10枚の培養プレートの各々のカバースリップの突出部分が、プッシャ上で同じ方向に向いている、実施形態6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【0040】
10. 培養プレートを培養プレートリーダに装填する方法であって、
実施形態6〜9のいずれか一項に記載の方法によって培養プレートを分配するステップと、
培養プレートを基部から離れるように移動させるステップと、
培養プレートを培養プレートリーダの中に置くステップと、を含む、方法。
【0041】
11. 培養プレートを基部から離れるように移動させるステップは、1つ以上のローラに沿って培養プレートを移動させるステップを含む、実施形態10に記載の方法。
【0042】
12. 培養プレートを培養プレートリーダの中に置くステップは、培養プレートを培養プレートリーダに関連付けられたプラテン上に配置するステップを含む、実施形態10又は11に記載の方法。
【0043】
13. 微生物コロニーを計数する方法であって、少なくとも1枚の接種した培養プレートを実施形態10〜12のいずれか一項に記載の方法によって培養プレートリーダに装填するステップと、接種した培養プレート上の微生物コロニーの少なくとも一部を計数するステップと、を含む方法。
【0044】
14. 培養プレートは薄膜培養プレートである、実施形態13に記載の方法。
【0045】
15. 1枚以上の培養プレートは薄膜培養プレートである、実施形態1〜5のいずれか一項に記載の分配装置。
図1
図2
図3