(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るカテーテルが適用され、患者の心臓が弱っているときに、心機能が回復するまでの間、一時的に心臓と肺の機能を補助・代行する経皮的心肺補助法(PCPS)として使用される体外循環装置の一例を示す系統図である。
【0013】
体外循環装置1によれば、ポンプを作動して患者の静脈(大静脈)から脱血して、人工肺により血液中のガス交換を行って血液の酸素化を行った後に、この血液を再び患者の動脈(大動脈)に戻す静脈−動脈方式(Veno−Arterial,VA)の手技を行うことができる。この体外循環装置1は、心臓と肺の補助を行う装置である。以下、患者から脱血して体外で所定の処置を施した後、再び患者の体内に送血する手技を「体外循環」と称する。
【0014】
図1に示すように、体外循環装置1は、血液を循環させる循環回路を有している。循環回路は、人工肺2と、遠心ポンプ3と、遠心ポンプ3を駆動するための駆動手段であるドライブモータ4と、静脈側カテーテル(脱血用の経皮カテーテル)5と、動脈側カテーテル(送血用カテーテル)6と、制御部としてのコントローラ10と、を有している。
【0015】
静脈側カテーテル(脱血用カテーテル)5は、大腿静脈より挿入され、下大静脈を介して静脈側カテーテル5の先端が右心房に留置される。静脈側カテーテル5は、脱血チューブ(脱血ライン)11を介して遠心ポンプ3に接続されている。脱血チューブ11は、血液を送る管路である。
【0016】
動脈側カテーテル(送血用カテーテル)6は、大腿動脈より挿入される。
【0017】
ドライブモータ4がコントローラ10の指令SGにより遠心ポンプ3を作動させると、遠心ポンプ3は、脱血チューブ11から脱血して血液を人工肺2に通した後に、送血チューブ(送血ライン)12を介して患者Pに血液を戻すことができる。
【0018】
人工肺2は、遠心ポンプ3と送血チューブ12との間に配置されている。人工肺2は、血液に対するガス交換(酸素付加および/または二酸化炭素除去)を行う。人工肺2は、例えば膜型人工肺であるが、特に好ましくは中空糸膜型人工肺を用いる。この人工肺2には、酸素ガス供給部13から酸素ガスがチューブ14を通じて供給される。送血チューブ12は、人工肺2と動脈側カテーテル6を接続している管路である。
【0019】
脱血チューブ11および送血チューブ12としては、例えば、塩化ビニル樹脂やシリコーンゴムなどの透明性の高い、弾性変形可能な可撓性を有する合成樹脂製の管路を使用することができる。脱血チューブ11内では、液体である血液はV1方向に流れ、送血チューブ12内では、血液はV2方向に流れる。
【0020】
図1に示す循環回路では、超音波気泡検出センサ20が、脱血チューブ11の途中に配置されている。ファストクランプ17は、送血チューブ12の途中に配置されている。
【0021】
超音波気泡検出センサ20は、体外循環中に三方活栓18の誤操作やチューブの破損等により循環回路内に気泡が混入された場合に、この混入された気泡を検出する。超音波気泡検出センサ20が、脱血チューブ11内に送られている血液中に気泡があることを検出した場合には、超音波気泡検出センサ20は、コントローラ10に検出信号を送る。コントローラ10は、この検出信号に基づいて、アラームによる警報を報知するとともに、遠心ポンプ3の回転数を低くする、あるいは、遠心ポンプ3を停止する。さらに、コントローラ10は、ファストクランプ17に指令して、ファストクランプ17により送血チューブ12を直ちに閉塞する。これにより、気泡が患者Pの体内に送られることを阻止する。コントローラ10は、体外循環装置1の動作を制御して、気泡が患者Pの身体に混入することを防止する。
【0022】
体外循環装置1の循環回路のチューブ11(12、19)には、圧力センサが設けられる。圧力センサは、例えば、脱血チューブ11の装着位置A1、循環回路の送血チューブ12の装着位置A2、あるいは遠心ポンプ3と人工肺2との間を接続する接続チューブ19の装着位置A3のいずれか1つあるいは全部に装着することができる。これにより、体外循環装置1によって患者Pに対して体外循環を行っている際に、圧力センサによって、チューブ11(12、19)内の圧力を測定することができる。なお、圧力センサの装着位置は、上記装着位置A1、A2、A3に限定されず、循環回路の任意の位置に装着することができる。
【0023】
次に、
図2〜
図5を参照して、本発明の実施形態に係るカテーテル組立体100を説明する。
図2〜
図5は、実施形態に係るカテーテル組立体100の構成の説明に供する図である。
【0024】
本実施形態に係るカテーテル組立体100は、
図2に示すように、血液を通すためのカテーテル30と、カテーテル30に挿通されるダイレーター50と、を有する。カテーテル30は、
図1の動脈側カテーテル(送血用カテーテル)6として使用されるものである。
【0025】
なお、本明細書では、生体内に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、術者が操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称する。先端部とは、先端(最先端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味し、基端部とは、基端(最基端)およびその周辺を含む一定の範囲を意味する。
【0026】
本実施形態に係るカテーテル30は、
図2に示すように、カテーテルチューブ31と、カテーテルチューブ31の先端に設けられた低減部40と、カテーテルチューブ31の基端側に配置されるクランプ用チューブ34と、カテーテルチューブ31およびクランプ用チューブ34を接続するカテーテルコネクター35と、クランプ用チューブ34の基端側に配置されるロックコネクター36と、を有している。
【0027】
カテーテル30は、
図2、3に示すように、先端から基端まで貫通し、ダイレーター50が挿通可能なルーメン30Aを有している。
【0028】
カテーテルチューブ31は、
図2〜
図5に示すように、交差するように編組されたワイヤーWからなる非コーティング部32と、交差するように編組されたワイヤーWが樹脂材料33aによって被覆されてなるコーティング部33と、を有する。
【0029】
非コーティング部32は、
図3に示すように、ワイヤーWがむき出しとなるように構成される。このため、非コーティング部32は、生体内の送血対象に配置されて、
図3に示すように、ワイヤーWの隙間Dを介して効率的に送血を行えるように構成されている(
図6(B)参照)。なお、
図3、
図5、および
図6では隙間Dは、図面上では省略して示している。
【0030】
非コーティング部32の先端32aは、
図2、
図3に示すように、先端側に向けて縮径するテーパ状に形成され、後述する先端チップ41および整流部42によって挟み込まれている。
【0031】
このように構成されたカテーテル30によれば、ダイレーター50が挿通されることによって、
図4、
図5に示すように、非コーティング部32が軸方向に伸長して、非コーティング部32の内径および外径が縮径する。
【0032】
コーティング部33は、
図2、
図3に示すように、ダイレーター50が挿通される前において、内径および外径が、非コーティング部32と略同一の径となるように構成されている。
【0033】
非コーティング部32およびコーティング部33の長さは、非コーティング部32を所望の送血対象に配置するために必要な長さに構成されている。非コーティング部32の長さは、例えば、1〜10cm、コーティング部33の長さは、例えば、10〜60cmとすることができる。
【0034】
本実施形態では、送血対象は、右心房である。カテーテル30は、非コーティング部32が右心房に配置されるように生体内に挿入して留置される。
【0035】
また、ダイレーター50をカテーテル30のルーメン30Aに挿通すると、
図4、
図5に示すように、伸縮性が高い非コーティング部32は、軸方向に伸長して内径および外径が縮径する。このとき、非コーティング部32の内周部32bは、
図5に示すように、ダイレーター50の外周部50bに密着する。この状態でカテーテル30を生体内に挿入するため、低侵襲にカテーテル30の挿入を行うことができる。
【0036】
また、カテーテル30を生体内に留置した後、ダイレーター50をカテーテル30のルーメン30Aから抜去すると、非コーティング部32は、
図2、
図3に示すように、軸方向に伸長した状態から収縮して、非コーティング部32の内径および外径が大きくなる。このとき、非コーティング部32の内径は、ダイレーター50の外径よりも大きく構成される。
【0037】
ここで、非コーティング部32の内腔における圧力損失は、非コーティング部32の全長×(平均)通路断面積となる。すなわち、非コーティング部32の内径を大きくすることによって、非コーティング部32の圧力損失が低減される。非コーティング部32内の圧力損失が低減されると、循環回路を流れる血液の流量は増加する。このため、十分な血液の循環量を得るためには、非コーティング部32の内径を大きくする必要がある。
【0038】
一方で、肉厚が略一定の場合、非コーティング部32の内径を大きくすると、外径が大きくなるため、生体内へカテーテル30を挿入する際に患者の負担が大きくなり、低侵襲な手技の妨げとなる。
【0039】
以上の観点から、ダイレーター50が挿通される前におけるカテーテルチューブ31の内径は、例えば、4〜11mmとすることができる。また、カテーテルチューブ31の肉厚は、例えば、0.4〜0.6mmとすることができる。
【0040】
本実施形態においてワイヤーWは、公知の形状記憶金属や形状記憶樹脂の形状記憶材料によって構成される。形状記憶金属としては、例えば、チタン系(Ni−Ti、Ti−Pd、Ti−Nb−Sn等)や、銅系の合金を用いることができる。また、形状記憶樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、トランスイソプレンポリマー、ポリノルボルネン、スチレンーブタジエン共重合体、ポリウレタンを用いることができる。
【0041】
ワイヤーWが形状記憶材料によって構成されるため、カテーテル30からダイレーター50を抜去するのに伴う、非コーティング部32の軸方向に沿う収縮距離は、カテーテル30にダイレーター50を挿通するのに伴う非コーティング部32の軸方向に沿う伸長距離と同一になる。ワイヤーWの断面は、例えば円形であるが、これに限定されず、長方形、正方形、楕円形等であってもよい。
【0042】
樹脂材料33aは、塩化ビニル、シリコン・ポリエチレン・ナイロン・ウレタン・ポリウレタン・フッ素樹脂・熱可塑性エラストマー樹脂等を使用して、もしくはこれらの複合材料を用いて形成できる。
【0043】
シリコン素材は、生体適合性が高く、素材自体も柔らかいため、血管を傷つけにくい特長がある。ポリエチレン素材は、柔らかく、且つ、圧力に耐える硬さを有している。しかもポリエチレン素材は、シリコン素材に匹敵する生体適合性を持つ。ポリエチレン素材は、シリコンよりも硬く、細い血管に挿入し易い特長がある。また、ポリウレタン素材は、挿入後には柔らかくなる特長がある。樹脂材料33aとしては、これらの素材の特長を生かして適用可能な材料を使用することができる。
【0044】
また、ポリウレタン素材に親水性のコーティングを施してもよい。この場合チューブ表面が滑らかで、血管挿入が行い易く、血管壁を傷つけにくい。血液やタンパク質が付着しにくく、血栓の形成を防ぐことが期待できる。
【0045】
カテーテルチューブ31を形成する方法は特に限定されないが、例えばディップコート(浸漬法)やインサート成形などにより形成することができる。
【0046】
低減部40は、カテーテルチューブ31から流出する血液の流出速度を低減する。低減部40は、
図2〜
図5に示すように、先端チップ41と、整流部42と、を有する。
【0047】
先端チップ41は、
図2に示すように、非コーティング部32の先端側に配置される。先端チップ41は、先端側に向かって徐々に縮径された先が細い形状を備えている。先端チップ41は、
図3に示すように、非コーティング部32の先端32aを内包する。
【0048】
先端チップ41は、
図3、
図5に示すように、内部にガイドワイヤーが挿通可能な貫通孔46を有する。先端チップ41は、例えば、硬質プラスチックにより形成することができる。
【0049】
硬い先端チップ41を非コーティング部32の先端に固定することで、生体内への挿入時に非コーティング部32が潰れることを有効に防止することができる。
【0050】
整流部42は、非コーティング部32の内部に設けられる。整流部42は、カテーテルチューブ31から流出する血液の流出速度が低減するように血液を整流する。整流部42は、
図3、
図5に示すように、貫通孔43と、受け面48と、基端部44と、壁部49と、を有する。整流部42は、先端チップ41と同様の材料を用いることができる。
【0051】
貫通孔43は、内部にガイドワイヤーが挿通可能である。受け面48は、整流部42の内部に設けられ、ダイレーター50の先端面50aと当接する。基端部44は、基端側に向けて縮径するテーパ状に形成される。壁部49は、整流部42の基端に設けられる。
【0052】
クランプ用チューブ34は、
図2、
図4に示すように、カテーテルチューブ31の基端側に設けられる。クランプ用チューブ34の内側には、ダイレーター50が挿通可能なルーメンが設けられている。クランプ用チューブ34は、カテーテルチューブ31と同様の材料を用いて形成することができる。
【0053】
カテーテルコネクター35は、
図2、
図4に示すように、カテーテルチューブ31およびクランプ用チューブ34を接続する。カテーテルコネクター35の内側には、ダイレーター50が挿通可能なルーメンが設けられている。
【0054】
ロックコネクター36は、
図2、
図4に示すように、クランプ用チューブ34の基端側に接続されている。ロックコネクター36の内側には、ダイレーター50が挿通可能なルーメンが設けられている。ロックコネクター36の基端側の外表面には、
図2に示すように、ネジ山が設けられた雄ネジ部36Aが設けられている。
【0055】
次に、ダイレーター50の構成について説明する。
【0056】
ダイレーター50は、
図2に示すように、軸方向に延在して設けられるダイレーターチューブ51と、ダイレーターチューブ51の基端が固定されるダイレーターハブ52と、ダイレーターハブ52の先端に設けられたネジリング53と、を有する。
【0057】
ダイレーターチューブ51は、軸方向に延在し、比較的剛性の高い長尺体である。ダイレーターチューブ51の軸方向に沿う全長は、カテーテル30の軸方向に沿う全長よりも長く構成されている。ダイレーターチューブ51は、ガイドワイヤー(図示せず)が挿通可能なガイドワイヤルーメン54を備えている。ダイレーターチューブ51は、ガイドワイヤーに導かれて、カテーテル30とともに生体内へ挿入される。ダイレーターチューブ51は、カテーテル30を生体内に留置した後に、ダイレーターハブ52を基端側に引き抜くことでカテーテル30から抜去される。
【0058】
ダイレーターチューブ51の先端は、
図2に示すように、整流部42の受け面48が当接する先端面50aを備えている。ダイレーターチューブ51は、比較的剛性が高く、手元の操作による先端側への押し込み力を整流部42へ伝達することを可能にするコシを備えている。このため、ダイレーターチューブ51は、その先端面50aを整流部42の受け面48に当接させて整流部42を先端側へ押し込むことによって、先端チップ41を先端側へ押し込み、狭い血管を拡張する役割を果たしている。
【0059】
ネジリング53は、内腔の内表面にネジ溝が設けられた雌ネジ部(図示せず)を有している。ネジリング53の雌ネジ部を、ロックコネクター36の雄ネジ部36Aに対してねじ込むことによって、ダイレーター50をカテーテル30に対して取り付け可能に構成されている。
【0060】
<カテーテルの使用方法>
次に、
図6を参照して、上述したカテーテル組立体100の使用方法について説明する。
図6(A)は、カテーテル30にダイレーター50が挿通された後の状態、
図6(B)は、カテーテル30からダイレーター50が抜去されて非コーティング部32から送血している状態を、それぞれ示している。
【0061】
まず術者は、
図6(A)に示すように、カテーテル30に対してダイレーター50のダイレーターチューブ51を挿通する。ダイレーターチューブ51は、コーティング部33、非コーティング部32の内部を順に通過し、ダイレーター50の先端面50aが整流部42の受け面48に当接する。
【0062】
ここで、
図2に示すように、ダイレーターチューブ51の軸方向の全長は、カテーテル30の軸方向の全長よりも長く構成されている。このため、ダイレーター50の先端面50aが整流部42の受け面48に当接した状態で、整流部42が先端側に押圧される。これにより、整流部42および先端チップ41によって挟み込まれている非コーティング部32の先端32aが先端側に引っ張られる。これにより、カテーテル30は、軸方向に伸長する力を受け、
図6(A)に示すように、カテーテル30のうち伸縮性が高い非コーティング部32が軸方向に伸長する。その後、カテーテル30の基端をダイレーターハブ52に固定する。このとき、非コーティング部32は軸方向に伸長するとともに、内径および外径は小さくなり、非コーティング部32の内周部32bは、ダイレーター50の外周部50bに密着する。
【0063】
次に、ダイレーター50が挿通されたカテーテル30を、予め生体内の対象部位に挿入されているガイドワイヤー(図示せず)に沿って挿入する。このとき、ダイレーター50がカテーテル30に挿通されているため、非コーティング部32の外径は小さくなっており、カテーテル30の生体内への挿入を低侵襲で行うことができ、患者の身体に対する負担を抑制することができる。非コーティング部32が右心房に配置されるまでカテーテル30を生体内に挿入し、留置する。
【0064】
次に、ダイレーター50およびガイドワイヤーをカテーテル30から抜去する。この際、ダイレーターチューブ51およびガイドワイヤーは、一旦カテーテル30のクランプ用チューブ34の箇所まで抜いて鉗子(図示せず)によりクランプした後、カテーテル30から完全に抜去する。ダイレーターチューブ51がカテーテル30から抜去されることによって、カテーテル30は、ダイレーター50から受けていた軸方向に伸長する力から開放される。このため、
図6(B)に示すように、非コーティング部32が軸方向に収縮し、非コーティング部32の内径および外径は大きくなる。これにより、非コーティング部32内の圧力損失を低減し必要とする液体の流量を確保することができる。
【0065】
次に、カテーテル30のロックコネクター36を
図1の体外循環装置の送血チューブ12に接続する。脱血側のカテーテルの接続が完了したことを確認後、クランプ用チューブ34の鉗子を解放して、体外循環を開始する。
【0066】
体外循環中において、
図6(B)に示すように、血液は、例えば矢印W1、W2、W3に示すように、カテーテルチューブ31の先端から流出する。
【0067】
矢印W1に示すように、血液は、カテーテルチューブ31の基端から先端に向けて流れた後、整流部42の基端部44のテーパ状に沿って径方向の外方に向けて流れる。そして、隙間Dを通過した後、先端チップ41の基端部41aに衝突することによって、さらに径方向の外方かつ先端側に向けて流れる。
【0068】
また、矢印W2に示すように、血液は、カテーテルチューブ31の基端から先端に向けて流れた後、矢印W1によって示される血液の流れよりも基端側において隙間Dを通過し、径方向の外方かつ先端側に向けて流れる。
【0069】
また、矢印W3に示すように、血液は、カテーテルチューブ31の基端から先端に向けて流れた後、整流部42の貫通孔43および先端チップ41の貫通孔46の順に流れて、先端チップ41の先端から流出する。
【0070】
以下、低減部40が設けられることによって、血液の流出速度が低減するメカニズムについて説明する。
【0071】
例えば、基端から先端に向けて一様の内径L2を備えるカテーテル300(
図9参照)であれば、流出口301から流出する血流は高速となり、血管壁に対して血液が強く衝突する虞がある。
【0072】
これに対して、本実施形態に係るカテーテル30であれば、低減部40を備えるため、血液は、上述した符号W1、W2に示すように、径方向の外方かつ先端側に向けて流れる。すなわち、カテーテルチューブ31の内径L2に対して、血液がカテーテルチューブ31から流出する際の流出径L1は大きくなる。
【0073】
ここで、一般的に流量が一定の場合、流路面積が大きくなると流速は小さくなるため、本実施形態に係るカテーテル30によれば、比較例に係るカテーテル300と比較して、カテーテル30からの血液の流出速度を低減して、血管壁に対する血液の衝突を和らげることができる。
【0074】
体外循環が終了したら、カテーテル30を血管から抜去し、挿入箇所に必要に応じて外科的手技により止血修復する。
【0075】
以下、
図7〜
図9を参照して、実施形態に係るカテーテル30および比較例に係るカテーテル300の先端から水を流出させた際の流出速度の視認確認を行った結果を説明する。具体的には、約6mmの内径を備えるカテーテル30およびカテーテル300を準備して、流量が4L/minとなるように水を供給した。
【0076】
図7は、実施形態に係るカテーテル30の先端近傍における写真である。
図8は、実施形態に係るカテーテル30の先端から水が流出する様子を示す写真である。
図9は、比較例に係るカテーテル300の先端から水が流出する様子を示す写真である。
【0077】
この結果、
図9に示す比較例に係るカテーテル300の先端から水が流出する流出速度に対して、
図8に示す実施形態に係るカテーテル30の先端から水が流出する流出速度が低減することを確認した。また、
図8に示すように、カテーテルチューブ31の内径L2に対して、血液がカテーテルチューブ31から流出する際の流出径L1が大きくなることを確認した。
【0078】
以上のように、本実施形態に係るカテーテル30は、血液を通し、ダイレーター50が挿通されることによって軸方向に伸長するカテーテル30である。カテーテル30は、軸方向に延在するカテーテルチューブ31と、カテーテルチューブ31の先端に設けられ血液の流出速度を低減する低減部40と、を有する。カテーテルチューブ31は、交差するように編組されたワイヤーWからなる非コーティング部32と、非コーティング部32の基端側に設けられ、交差するように編組されたワイヤーWが樹脂材料33aによって被覆されてなるコーティング部33と、を有する。このように構成されたカテーテル30によれば、カテーテルチューブ31の先端に、血液の流出速度を低減する低減部40が設けられるため、カテーテル30からの血液の流出速度を低減して、血管壁に対する血液の衝突を和らげることができる。
【0079】
また、非コーティング部32の先端32aは、先端側に向けて縮径するテーパ状に形成される。この構成によれば、カテーテルチューブ31の基端から先端に向けて流れた血液は、テーパ状に形成された先端32aに衝突して、径方向の外方に向けて流れることになる。このため、非コーティング部32の先端32aが先端側に向けて縮径しない構成と比較して、血液は径方向の外方に向けて流れることになり、血液の流出速度がより低減される。
【0080】
また、低減部40は、非コーティング部32の内部に設けられ流出速度を低減するように血液を整流する整流部42を備える。このため、より好適に血液の流出速度が低減される。
【0081】
また、整流部42の基端部44は、基端側に向けて縮径するテーパ状に形成される。この構成によれば、カテーテルチューブ31の基端から先端に向けて流れた血液は、
図6(B)の符号W1に示すように、テーパ状に形成された基端部44に沿って径方向の外方に向けて流れることになる。このため、基端部が基端側に向けてテーパ状に形成されない構成と比較して、血液は径方向の外方に向けて流れることになり、血液の流出速度がより低減される。
【0082】
また、低減部40は、非コーティング部32の先端側に設けられる先端チップ41を備え、先端チップ41は、非コーティング部32の先端32aを内包する。このため、容易な構成によって、先端チップ41が非コーティング部32の先端32aに固定される。
【0083】
また、ワイヤーWは形状記憶材料によって構成される。このため、カテーテル30からダイレーター50を抜去した際に、カテーテルチューブ31は、軸方向に収縮し内径および外径が拡径して好適に元の形状に戻る。したがって、圧力損失をより好適に低減することができる。
【0084】
以上、実施形態を通じて本発明に係るカテーテルを説明したが、本発明は実施形態および変形例において説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0085】
図10は、変形例1に係るカテーテルの先端近傍を示す側面断面図であって、
図11は、変形例2に係るカテーテルの先端近傍を示す側面断面図である。
図10または
図11に示すように、整流部142、242は、上述した実施形態に係る整流部42と比較して、軸方向に長く形成されていてもよい。
【0086】
図12は、変形例3に係るカテーテルの先端近傍を示す側面断面図である。上述した実施形態では、整流部42の基端部44は直線状に縮径するように設けられていたが、整流部342の基端部344は、
図12に示すように、径方向の外方に向けて湾曲しつつ縮径する形状であってもよい。
【0087】
図13は、変形例4に係るカテーテルの先端近傍を示す側面断面図である。上述した実施形態では、整流部42の基端部44は直線状に縮径するように設けられていたが、整流部442の基端部444は、
図13に示すように、径方向の内方に向けて湾曲しつつ縮径する形状であってもよい。
【0088】
図14は、変形例5に係るカテーテルの先端近傍を示す側面断面図である。
図15は、変形例5に係るカテーテルの先端から水が流出する様子を示す写真である。上述した実施形態では、低減部40は、先端チップ41と、整流部42と、を有していたが、低減部は、
図14に示すように、先端チップ41のみを有していてもよい。このとき、血液は、上述した矢印W1、W3に示す流れとなる。このような構成を備えるカテーテルに対して、流出速度の視認確認を行った。この結果、
図9に示す比較例に係るカテーテル300の先端から水が流出する流出速度に対して、
図15に示すカテーテルの先端から水が流出する流出速度が低減することを確認した。また、
図15に示すように、カテーテルチューブ31の内径に対して、血液がカテーテルチューブ31から流出する際の流出径が大きくなることを確認した。
【0089】
図16は、変形例6に係るカテーテルの先端近傍を示す側面断面図である。上述した実施形態では、整流部42は、
図3に示すように、壁部49を有した。しかしながら、整流部542は、
図16に示すように、壁部を有することなく、整流部542の基端部544における基端544aが、軸方向に平行な断面視で、鋭角形状を備えていてもよい。この構成によれば、壁部を有していないため、壁部における血液の衝突がなくなるため、よりスムーズに血液が流れることになる。
【0090】
また、上述した実施形態では、低減部40は、先端チップ41と、整流部42と、を有していた。しかしながら、低減部40は、整流部42のみを有していてもよい。
【0091】
また、上述した実施形態ではカテーテル30は、経皮的心肺補助法に適用されたが、開心術にも用いることができる。
【0092】
また、ワイヤーWを構成する材料は、変形して元の形状に戻る復元力を備え、かつ、樹脂層を補強する機能を備える材料であれば形状記憶材料に限定されず、例えば、公知の弾性材料により構成することができる。
【0093】
また、上述した実施形態では、非コーティング部32の先端32aは、先端側に向けて縮径するテーパ状に形成されたが、先端側に向けて縮径していなくてもよい。
【0094】
また、上述した実施形態では、整流部42の基端部44は、基端側に向けて縮径するテーパ状に形成されたが、基端側に向けて縮径していなくてもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、ダイレーター50の先端面50aは、整流部42の受け面48に当接させて、非コーティング部32を軸方向に伸長させたが、ダイレーター50の挿入に伴って、非コーティング部32を軸方向に伸長させることができる限り、ダイレーター50の先端面50aは、カテーテル30の任意の箇所に当接させ得る。
【0096】
本出願は、2016年9月14日に出願された日本国特許出願第2016−179988号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。