【文献】
Journal of Eukaryotic Microbiology,2007年,vol.54, no.6,p.465-467
【文献】
Journal of Eukaryotic Microbiology,2011年,vol.58, no.5,p.424-425
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
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図1】FIGURE 1は、本開示の例となる実施形態によると、下流の試験及び適用のために微生物毛状根を生じるための流れ図を示す。
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図2A】FIGURE 2Aは、本開示の実施形態によると、ナスを宿主植物として用いて、含有されるトラップの中で増殖中のキジラミ成虫を示す。
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図2B】FIGURE 2Bは、本開示の実施形態によると、ナスを宿主植物として用いて、含有されるトラップの中で増殖中の、Lso保有キジラミ成虫を示す。
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図2C】FIGURE 2Cは、本開示の実施形態によると、キジラミ曝露4週間後の健常なトマト葉を示す。
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図2D】FIGURE 2Dは、本開示の実施形態によると、キジラミ曝露4週間後のLso感染したトマト葉を示す。
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図2E】FIGURE 2Eは、本開示の実施形態によると、キジラミ曝露4週間後の健常なトマト葉を示す。
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図2F】FIGURE 2Fは、本開示の実施形態によると、キジラミ曝露4週間後のLso感染したトマト葉を示す。
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図2G】FIGURE 2Gは、感染したトマト葉及びジャガイモ葉におけるLsoのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく確認を示す。
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図3A-E】FIGURE 3A〜FIGURE 3Eは、本開示の具体例となる実施形態によると、インビトロでの微生物毛状根プラットフォームの概略図を示す。FIGURE 3Aは、本開示の実施形態によると、細いピンセットを用いて、表面を滅菌した植物組織をより小さな断片へと切断し、穏やかに損傷させることを示す。FIGURE 3Bは、本開示の実施形態によると、R.rhizogenesの懸濁液中に外植片を浸漬することを示す。FIGURE 3Cは、本開示の実施形態によると、栄養培地上で植物組織の3日間の同時培養の後の外植片を示す。FIGURE 3Dは、本開示の例となる実施形態によると、外植片の浸透圧ストレス処理を示す。FIGURE 3Eは、本開示の実施形態によると、FIGURE 3Dの処理後の栄養選択培地中での外植片のインキュベーションを示す。
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図4A】FIGURE 4Aは、本開示の実施形態によると、Rhizobium rhizogenes(ATCC15834株)を用いて形質転換したトマト外植片における毛状根のインビトロでの誘導を示す。
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図4B】FIGURE 4Bは、本開示の実施形態によると、トマト外植片における毛状根のPCR検証結果を示す。
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図5A】FIGURE 5Aは、本開示の実施形態によると、Rhizobium rhizogenesを用いて形質転換したジャガイモ外植片における毛状根のインビトロでの誘導を示す。
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図5B】FIGURE 5Bは、本開示の実施形態によると、ジャガイモ外植片における毛状根のPCR検証結果を示す。
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図6A】FIGURE 6Aは、本開示の実施形態によると、Rhizobium rhizogenes(ATCC15834株)を用いて形質転換した柑橘類(ユーレカレモン)外植片における毛状根のインビトロでの誘導を示す。
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図6B】FIGURE 6Bは、本開示の実施形態によると、Rhizobium rhizogenes(ATCC15834株)を用いて形質転換した柑橘類(ユーレカレモン)外植片における毛状根のPCR検証結果を示す。
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図7A】FIGURE 7Aは、本開示の実施形態によると、Rhizobium rhizogenesによって健常なトマトに誘導された空中の毛状根を示す。
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図7B】FIGURE 7Bは、本開示の実施形態によると、Rhizobium rhizogenesによって、Lsoがコロニー形成したトマトに誘導された空中の毛状根を示す。
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図7C】FIGURE 7Cは、本開示の実施形態によると、トマトにおける空中の毛状根のPCR検証結果を示す。
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図8A】FIGURE 8Aは、本開示の実施形態によると、Rhizobium rhizogenesによって、Lsoがコロニー形成したジャガイモに誘導された空中の毛状根を示す。
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図8B】FIGURE 8Bは、本開示の実施形態によると、ジャガイモにおける空中の毛状根のPCR検証結果を示す。
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図8C】FIGURE 8Cは、本開示の実施形態によると、ジャガイモにおける空中の、微生物毛状根のPCR検証結果を示す。
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図9A】FIGURE 9Aは、本開示の実施形態によると、Lsoがコロニー形成したトマトにおいてロックウール法を用いて誘導された、微生物毛状根を示す。
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図9B】FIGURE 9Bは、本開示の実施形態によると、ロックウール法を用いて誘導されたトマトにおける、微生物毛状根のPCR検証結果を示す。
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図10A】FIGURE 10Aは、本開示の実施形態によると、蛭石法を用いてトマト植物において誘導された、微生物毛状根を示す。
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図10B】FIGURE 10Bは、本開示の実施形態によると、蛭石法を用いて誘導されたトマトにおける、微生物毛状根のPCRの検証結果を示す。
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図11】FIGURE 11は、本開示の実施形態によると、蛭石法を用いて、Lasが感染した柑橘類(サワーオレンジ)において誘導された、微生物毛状根を示す。
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図12】FIGURE 12は、本開示の実施形態によると、蛭石マトリックス中で生育している増殖した毛状根を示す。
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図13】FIGURE 13は、本開示の実施形態によると、水耕栽培において生育している増殖した毛状根を示す。
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図14】FIGURE 14は、本開示の実施形態によると、インビトロ培養において生育している増殖した毛状根を示す。
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図15】FIGURE 15は、本開示の実施形態によると、バイオリアクタシステムにおいて生育している増殖した毛状根を示す。
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図16A】FIGURE 16Aは、本開示の実施形態によると、インビトロシステム又は植物内でのシステムから収穫した、健常な及びLsoがコロニー形成した毛状根を示す。
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図16B】FIGURE 16Bは、本開示の実施形態によると、複数ウェルプレートへと分配した、健常な及びLsoがコロニー形成した、微生物毛状根を示す。
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図16C】FIGURE 16Cは、ペニシリンを用いた毛状根の処理2日後のLso力価の定量的リアルタイムPCRの結果を示す。
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図16D】FIGURE 16Dは、ペニシリンを用いた毛状根の処理7日後のLso力価の定量的リアルタイムPCRの結果を示す。
【0015】
詳細な説明
選好性微生物(例えば、植物病原体)の莫大な経済的有意性にもかかわらず、当該選好性微生物の生物学的特徴、遺伝学的特徴、及びベクター−病原体−植物の相互作用はほとんど知られていない。この知識は、有効な疾患及び害虫駆除戦略の開発が、収量損失(おびただしい量の損失)を制限することを可能にし得る。これらの選好性微生物を特徴づける上での1つの支障(例えば、主な支障)は、当該選好性微生物が植物偏性寄生虫であるので、当該選好性微生物の天然の宿主以外で生育することができないことである。いかなる環境由来の微生物も99%超は実験室において培養することができないと概算されている。選好性微生物を培養するのに適した人工生育培地及び培養条件をつくるために数多くの試みがなされてきたが、今日まで、これらのアプローチは制限つきの成功しか収めていない。
【0016】
植物毛状根は、土壌細菌であるRhizobium rhizogenes(Agrobacterium rhizogenesから近年改定)による感染の際に、多様な植物組織から容易に誘導されることができる。その関連の同類であるA.tumefacienceと類似の様式で、R.rhizogenesは、root locus(rol)遺伝子(例えば、rolB、rolC)を植物ゲノムへとコードする、R.rhizogenesの根誘導(Ri)転移DNA(Ri−DNAプラスミド)を導入する。植物内でのrol遺伝子の発現は、植物ホルモンであるオーキシンを過剰生成し、毛状根の発芽及び増殖を導入する。
【0017】
ふわふわした毛状根は、正常な根と解剖学的に、形態学的に、及び代謝上同様である。毛状根は、未処置の木部構造及び師部構造によって生じる植物組織へ結合して、それにより水、栄養物質、細胞シグナル伝達の持続的な輸送を、当該構造を通じて、本明細書で示される選好性微生物として可能にする。Citrus(例えば、レモン)、Solanaceae(例えば、ジャガイモ、トマト)、Daucus(例えば、ニンジン)、Taxus、Cinchona、Gmelina、Glycine(例えば、ダイズ)、Rutaceae(例えば、バエルツリー(Bael tree))、Nyctaginaceae、及びRosaceae(例えば、リンゴ)を含むがこれらに限定されない多数の植物の属は、R.rhizogenesによって形質転換され得、毛状根を生じ得る。
【0018】
本開示は、いくつかの実施形態において、選好性微生物を(例えば、インビトロ、植物内で)培養する方法に関する。本開示は、いくつかの実施形態において、選好性微生物を培養及び特徴づけるために直接使用され得る毛状根システムに関する。本開示は、いくつかの実施形態において、選好性微生物−植物相互作用に関する高処理量の機能的な遺伝子研究及びゲノム研究に使用され得る毛状根システムに関する。いくつかの実施形態において、毛状根システムは、荒廃させる植物病を撲滅するための化学的遺伝子スクリーニング(例えば、抗生物質スクリーニング、エッセンシャルオイル、オキシリピン)に使用され得る。いくつかの実施形態によると、毛状根システムは、遺伝的に改変された植物を含み得、植物種における選好性微生物に対する、遺伝子関連の易罹患性及び/又は耐性を識別する上で有益であり得る。
【0019】
いくつかの実施形態によると、宿主植物(例えば、トマト、ジャガイモ、コショウ、柑橘類)のRhizobium rhizogenes仲介性毛状根培養は、選好性微生物(例えば、Candidatus spp.、Xylella spp.、Clavibacter spp.)に感染し得る。最適な源は、複数の感染した植物組織を試験することによって特定のセットの条件に対して識別され得る。毛状根培養技術(例えば、規模拡大及び/又は増殖するための技術)は、いくつかの実施形態によると、高処理量診断及び/又は分子レベルの特徴づけのために含まれ得る。毛状根システムに対する機能的特徴づけは、いくつかの実施形態において、候補植物及び病原体をコードする遺伝子の、遺伝的な機能獲得(例えば、過剰発現)及び機能損失(例えば、クラスター化した、規則的に空間の空いた、短鎖パリンドロミック反復関連(CRISPR/Cas)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)及びリボ核酸干渉(RNAi)ノックダウン)の試験を含み得る。遺伝子コンストラクト(例えば、代表的な遺伝子コンストラクト)又は遺伝子ライブラリは、例えば、真空浸潤を含む方法及び/又はDNA照射による何らかの所望の方法によって、確証された毛状根へと一過性に送達され得る。いくつかの実施形態において、遺伝子コンストラクトは、R.rhizogenesT−DNAへと挿入された後に、毛状根導入が実施され得、したがって、単一の工程において当該過程を完了し得る。
【0020】
いくつかの実施形態によると、毛状根システムは、ウイルス(例えば、トマト黄化壊疽ウイルス(Tomato spotted wilt virus)、キュウリモザイクウイルス(Cucumber mosaic virus)、カリフラワーモザイクウイルス(Cauliflower mosaic virus)、カブ黄斑モザイクウイルス(Turnip yellow mosaic virus))、ウイロイド(例えば、ジャガイモやせいもウイロイド(Potato spindle tuber viroid)、トマト根端発育阻止ウイロイド(Tomato apical stunt viroid)、柑橘類エクソコルティスウイロイド(Citrus exocortis viroid))、及び内部寄生性微生物(例えば、アシドボラクス・ファシリス(Acidovorax facilis)、アゾアルカス(Azoarcus)種BH72、アゾスピリルム(Azospirillum)種B510、フサリウム(Fusarium) spp.、コレトトリクム(Colletotrichum) spp.、クルブラリア(Curvularia) spp.、ボーベリア・バシアーナ(Beauveria bassiana)、レカニシリウム(Lecanicillium) spp.、ピシウム・オリガンドラム(Pythium oligandrum))を含む、何らかの所望の植物−微生物関係(例えば、導管越境コロニー形成植物細菌)に関する増殖試験及び機能試験に使用され得る。
【0021】
先行研究は、選好性の植物微生物を培養するための毛状根の適用又は当該植物微生物の研究への毛状根の適用を報告していない。したがって、毛状根が選好性微生物の増殖を支持することができることを示す本開示は、高処理量適用のための微生物毛状根の大規模増殖に及ぼす有意な影響を有し得る。開示された毛状根システムは、選好性植物病原体を培養及び増殖する上での有意な支障を解決し、選好性植物病原体の数多くの生物学的研究の開始を結果的に生じ得る。このような研究は概して、植物疾患、害虫駆除、及び農業における新たな発展変化を約束することを提唱する。
【0022】
本開示は、いくつかの実施形態において、ジャガイモ、トマト及び柑橘類などの何らかの適切な植物におけるCandidatus Liberibacter spp.微生物の毛状根培養物を確立し最適化するのを支援し得、研究者らが、開示された微生物毛状根システムを用いて遺伝的及び/又は化学的分析を実施することを可能にし得る。
【0023】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態によると、感染した植物から直接誘導される毛状根は、選好性の導管にコロニー形成する植物病原体を培養及び特徴づけるための容易な、迅速な、かつ規模拡大可能なプラットフォームを提供し得る。例えば、Lso及びLasは、テキサス州南部において蔓延しており、ジャガイモ、トマト、Citrus spp.を含むいくつかのナス科(Solanaceous)作物に感染する。したがって、テキサス州南部におけるLas感染柑橘類の樹木は、Las感染植物材料を得るために使用され得る。Las感染柑橘類樹木由来の植物組織は、Lasを検出するための確立されたDNAマーカーである16S rDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によってLasの存在について収集及び試験され得る。Las陽性柑橘類の組織は、微生物毛状根誘導についての外植片源としてさらに使用され得る。
【0024】
本開示は、いくつかの実施形態において、選好性の導管にコロニー形成する微生物(例えば、植物病原体)の迅速な培養、増殖及び機能的試験のための生物学的模倣性毛状根プラットフォームに関する。Candidatus spp.、Xylella spp.などの選好性の導管にコロニー形成する植物病原体、ウイルス、フィトプラズマ及びスピロプラズマは結果的に、年間何十億ドルもの作付け損失を生じる。これらの及び他の導管に限定された微生物(例えば、病原体)を培養することができないことは、これらの生命体を研究しようとする研究者に対する多大なる挑戦を表す。Rhizobium rhizogenesによって誘導される植物毛状根は、根と解剖学的に及び代謝上同様に組織化された安定した組織であり、当該植物毛状根は、未処置の木部構造及び師部構造を有する。いくつかの実施形態によると、感染した植物から直接誘導される微生物含有毛状根は、選好性の導管限局性植物病原体を(例えば、実験室において)培養し、増殖させ、及び特徴付けるための容易な、迅速な、及び規模拡大可能なプラットフォームを提供し得る。
【0025】
いくつかの実施形態によると、植物(例えば、ジャガイモ、トマト、柑橘類)におけるCandidatus Liberibacter spp.の微生物毛根培養物は、微生物の毛状根システムを用いて遺伝的解析を可能にし得る。選好性の導管限局性植物病原体を培養する先の挑戦を楽にすることに加えて、毛状根プラットフォームは、新規の抗微生物薬及び殺虫薬についての遺伝的及び化学的スクリーニングを含むがこれらに限定されない変化性の高処理量機能的試験のために容易に探索され得る。R.rhizogenesが、多様な単子葉植物及び双子葉植物において毛状根を有効に誘導し得るので、微生物培養のための微生物毛状根のシステム、方法、及び組成物は、真菌、ウイルス、ウイロイド、及び内部寄生性微生物などの導管にコロニー形成する植物病原体に限らない、他の農業作物と植物微生物との関係へ適用され得る。
【0026】
外植片及び/又は接種源の発生
昆虫ベクターは、植物から植物へと選好性微生物を拡大させ得る。選好性微生物によってコロニー形成された植物材料(例えば、外植片)は、いくつかの実施形態によると、選好性微生物を保有する昆虫ベクターを植物に供給することを可能にすること又は導入することによって発生し得、それにより選好性微生物を植物組織へ転移させ得る。植物導管系へいったん転移すると、選好性微生物はコロニー形成することができ及び複製することができる。
【0027】
いくつかの実施形態によると、選好性微生物を保有する昆虫ベクターは、環境(例えば、農場)から収集され得、当該昆虫ベクターが選好性微生物を保有しているかどうかを判定するために試験され得る(例えば、16S rDNA PCR)。昆虫ベクター(例えば、選好性微生物を保有する昆虫ベクター、非保有昆虫ベクター)は、いくつかの実施形態において維持され得(例えば、昆虫ケージにおいて)、及び増殖され得る。選好性微生物を保有する昆虫ベクターは、いくつかの実施形態において、実験室設定において、例えば、選好性微生物に感染した植物組織に関して非保有昆虫ベクターを供給することができることによって生成され得る。選好性微生物を昆虫ベクターへ遺伝させ、ならびに昆虫ベクター集団を維持し及び増殖するための数多くの方法が既知であり、当該方法はすべて、本開示の範囲内である。
【0028】
いくつかの実施形態において、昆虫ベクター集団は、選好性微生物によるコロニー形成の存在又は非存在について試験され得る。何らかの適切な技術、例えば、16S rDNA PCRを用いて、選好性微生物によるコロニー形成の存在又は非存在について昆虫ベクターを試験し得る。
少なくとも1つの選好性微生物を保有する昆虫ベクターは、感染していない植物に一定期間(例えば、7日間)、供給することが可能となり得、それにより少なくとも1つの選好性微生物を植物導管へと移し得る。このような方法は少なくとも、昆虫ベクターの種及び発生期、昆虫ベクター内での選好性微生物のレベル、選好性微生物が昆虫ベクター内で複製する速度、ならびに感染していない植物の種及び発生期によって変わり得る。いくつかの実施形態によると、指定の供給期間(例えば、7日間)後、微生物を保有する昆虫ベクターは、植物から取り出され得、当該植物は、コロニー形成及び/又は発症についてモニターされ得る。いくつかの実施形態において、疾患の症状は、選好性微生物によるコロニー形成を示し得る。任意の数の標準的な実験手順を用いて、植物組織内での選好性微生物の存在又は非存在を識別し得る。いくつかの実施形態によると、16S rDNA PCRを用いて、選好性微生物集団の存在又は非存在について植物組織を試験し得る。選好性微生物の存在について陽性(例えば、PCR陽性)であることを試験する植物又は植物組織(例えば、子葉)は、いくつかの実施形態によると、微生物毛状根誘導のための外植片源として使用され得る。いくつかの実施形態によると、選好性微生物を培養するための方法は、植物に選好性微生物をコロニー形成させて外植片源を発生させることを含み得る。いくつかの実施形態において、植物に選好性微生物をコロニー形成させることには、当該植物の1つ又は2つ以上の表面を、少なくとも1つの選好性微生物を保有する昆虫ベクター(例えば、Lso保有キジラミ)へ曝露することを含み得る。外植片は、いくつかの実施形態において、子葉、胚軸、未熟苗条、未熟根、成熟苗条、成熟根、又はこれらの何らかの組み合わせなどの植物組織を含み得る。
【0029】
微生物毛状根プラットフォーム
FIGURE 1は、本開示の例となる実施形態によると、1つ又は2つ以上の植物組織において選好性微生物を増殖させること102、感染した植物組織から微生物毛状根の発生を誘導すること110、微生物毛状根を増殖させること120、及び微生物毛状根を下流の試験及び応用へ適用すること130を含む、微生物毛状根プラットフォームの作業の流れ100を示す。
【0030】
FIGURE 1に示すように、いくつかの実施形態によると、選好性微生物は、1つ又は2つ以上の植物組織において増殖し得る102。子葉104、胚軸106、葉108、未熟苗条、未熟根、成熟苗条、成熟根、又はこれらの何らかの組み合わせを含む、感染した植物の1つ又は2つ以上の植物組織は、選好性微生物によってコロニー形成され得る。いくつかの実施形態によると、1つ又は2つ以上の植物組織における選好性微生物(例えば、Lso、Las)の増殖は、選好性微生物によってコロニー形成され、かつ植物組織において局給されることが公知である1つ又は2つ以上のベクター種(例えば、キジラミ)へ健常植物を曝露することを含み得る。いくつかの実施形態によると、選好性微生物を増殖させることは、無性生殖的な植物増殖の種々の方法を含み得る。いくつかの実施形態によると、選好性微生物を増殖させることは、感染した植物を環境から識別すること、及び当該識別した植物を維持することを含み得る。
【0031】
微生物毛状根プラットフォームの作業の流れ100は、微生物毛状根の発生を、感染した植物又は植物組織から誘導すること110を含み得る。いくつかの実施形態によると、微生物毛状根の発生を誘導することは、Rhizobium rhizogenesを培養することを含み得る。数多くの方法は、R.rhizogenesを培養するのに適しており、本開示によって包含されている。R.rhizogenesを培養することは、何らかの適切な培地(例えば、ルリア・ベルターニ培地(LB))中で何らかの適切な光学密度(例えば、0.3)まで増殖することを含み得る。いくつかの実施形態において、R.rhizogenesの培養物は、約0.2、又は約0.3、又は約0.4、又は約0.5、又は約0.6の光学密度まで増殖し得る。いくつかの実施形態によると、R.rhizogenesの培養物は、0.2〜0.6、又は0.3〜0.6、又は0.2〜0.4の光学密度まで増殖し得る。上昇した光学密度へ到達した際、R.rhizogenesの培養物は、培地から(例えば、遠心分離を介して)取り出され得、ある容積の植物培地(例えば、1/2のMS、1/2のB5+3%スクロース)又は水(例えば、滅菌水)中に所望の濃度へと再懸濁し得る。いくつかの実施形態において、R.rhizogenesの培養物は、約0.2、又は約0.3、又は約0.4、又は約0.5、又は約0.6の光学密度で再懸濁され得る。いくつかの実施形態によると、R.rhizogenesの培養物は、0.2〜0.6、又は0.3〜0.6、又は0.2〜0.4の光学密度で再懸濁され得る。
【0032】
いくつかの実施形態によると、R.rhizogenesの株は、具体的な特長に基づいて選択され得る。例えば、異なるR.rhizogenes株は、植物から毛状根を誘導するための異なる能力を有し得る。植物又は外植片(例えば、トマト、ジャガイモ、柑橘類)において微生物毛状根を増殖させるのに適した株は、いくつかの実施形態において、例えば、選択された外植片組織タイプ及び/又は植物種(例えば、トマト、ジャガイモ、柑橘類)における毛状根の誘導百分率に基づいて演繹的に判断され得る。評価及び/又は使用に適したR.rhizogenes株は、いくつかの実施形態において、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)15834、ATCC43056、ATCC43057、ATCC1333、K599、又はこれらの何らかの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態によると、外植片組織及びR.rhizogenes株の各組み合わせについて、誘導効率は、次の(a)外植片全体当たりの毛状根誘導百分率、(b)外植片全体当たりの毛状根発生日数、(c)単一外植片当たりの毛状根誘導頻度、及び(d)毛状根における選好性微生物(例えば、Las及びLso)個体数などのパラメータを測定することによって決定され得る。異なる試料(例えば、外植片組織タイプ、植物種タイプ)のうちでの微生物力価の正確な比較のために、いくつかの実施形態によると、定量的PCR技術(例えば、q−PCR、定量的リアルタイムPCR)を使用し得る。分散分析及びStudentのT検定などの統計分析を採用して、異なる試料間の個体数の有意差を決定し得る。
【0033】
FIGURE 1において示すように、植物内110、112、114及びインビトロ116の両アプローチを使用して、1つ又は2つ以上の感染した植物組織から直接、微生物毛状根の発生を誘導し得る。微生物毛状根の発生を誘導するための植物内アプローチは、微生物毛状根の空中誘導110、微生物毛状根のロックウール誘導112、及び微生物毛状根の蛭石誘導114を含み得る。
【0034】
微生物毛状根を誘導する植物内方法
微生物毛状根の発生を誘導すること110は、いくつかの実施形態において、感染した植物(例えば、Lso)を選択すること、及び当該感染した植物の1つ又は2つ以上の表面を調製することを含み得る(例えば、表面滅菌、創傷形成)。感染した植物を調製することは、当該感染した植物の1つ又は2つ以上の表演の表面滅菌を含み得る。いくつかの実施形態において、感染した植物の1つ又は2つ以上の表面を指定の期間(例えば、1〜10分間)、アルコール(例えば、70%エタノール)、NaClO(漂白剤)(例えば、2%、10%)、非植物毒性抗真菌薬(例えば、アンホテリシンB)、抗菌(例えば、200mg/Lセフォタキシム又は100mg/Lカルベニシリン)化合物、又はこれらの何らかの組み合わせを含む、何らかの適切な表面滅菌技術を使用し得る。
【0035】
いくつかの実施形態によると、感染した植物を調製すること(例えば、Lso又はLasによってコロニー形成)は、当該感染した植物の1つ又は2つ以上の表面を損傷させることを含み得る。はさみ、メス、ピンセット(例えば、細いゲージ)、注射器、針、又はこれらの何らかの組み合わせを含む何らかの適切なツールを用いて、感染した植物の1つ又は2つ以上の表面を損傷させ得る。感染した植物の損傷しかつ曝露された表面は、いくつかの実施形態において、R.rhizogenes形質転換及び毛状根誘導のための活性部位として機能し得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、微生物毛状根の発生を誘導すること110は、112、114、及び116においてFIGURE 1に示すように、感染した植物又は感染した植物の部分を少なくとも1つのR.rhizogenes細胞と接触させること(植物内アプローチ)を含み得る。感染した植物を少なくとも1つのR.rhizogenesと接触させることは、いくつかの実施形態によると、感染した植物の1つもしくは2つ以上の部分(例えば、損傷部位)をR.rhizogenes懸濁液(例えば、光学密度0.3)へ(例えば、空中の毛状根を発生させるために)直接曝露すること、又は感染した植物の1つもしくは2つ以上の部分をR.rhizogenes懸濁液で真空浸潤させることを含み得る。
【0037】
いくつかの実施形態によると、感染した植物の1つ又は2つ以上の部分は、R.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する懸濁液(例えば、光学密度0.3)によって直接接触し得る。種々の方法を使用して、感染した植物の1つ又は2つ以上の部分を、R.rhizogenesの少なくとも1個の細胞を含有する懸濁液と接触させ得る。いくつかの実施形態によると、感染した植物の1つ又は2つ以上の部分を接触させることは、R.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する懸濁液を損傷部位へ(例えば、滴下装置を用いて)適用すること、R.rhizogenesの懸濁液中に細い針を浸漬すること、及び当該細い針を用いて、感染した植物の1つ又は2つ以上の箇所を損傷させること、R.rhizogenesの懸濁液を、感染した植物中に注射器を用いて注射することを含み得る。FIGURE 1に示すように112、土壌レベルを上回る位置において、感染した植物を接触させることは、1つ又は2つ以上の空中の微生物毛状根を発生させ得る。
【0038】
いくつかの実施形態によると、感染した植物の1つ又は2つ以上の部分をR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞(例えば、露出した損傷部位)と接触させることは、接触部位を包むこと又は覆うこと(例えば、アルミホイルを使用)を含み得る。接触部位を包むこと又は覆うことは、いくつかの実施形態において、光への曝露を低下させ得、及び/又は所望の湿度レベルを維持し得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、感染した植物の1つ又は2つ以上の部分をR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞と接触させることは、真空圧を用いて当該感染した植物の1つ又は2つ以上の部分を浸潤させることを含み得る。FIGURE 1に示すように116、微生物毛状根の発生を誘導することは、感染した植物(例えば、苗条)の一部を取り出して損傷部位を形成すること、及び当該損傷部位をR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する溶液(例えば、光学密度0.3)と接触させることを含み得る。いくつかの実施形態において、感染した植物の一部をR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する溶液(例えば、光学密度0.3)と接触させることは、当該溶液中に損傷部位を浸漬すること、及び当該感染した植物の一部を真空環境へ一定の期間曝露することを含み得る。少なくとも1つの植物細胞をR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞で浸潤することを可能にする何らかの真空環境が使用され得る。いくつかの実施形態において、真空環境は、約20inHg、又は約25inHg、又は約30inHgであり得る。いくつかの実施形態によると、真空環境が保持され得る何らかの適切な長さの時間は、R.rhizogenesの少なくとも1つの細胞で少なくとも1つの植物細胞の浸潤を可能にする何らかの適切な長さの時間であり得る。真空が保持され得る期間は、何らかの長さの時間であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、真空は、少なくとも約30秒間、又は少なくとも約1分間、又は少なくとも約5分間、又は少なくとも約10分間、又は少なくとも約30分間、又は少なくとも約60分間、又は少なくとも約3時間、又は少なくとも約6時間、又は少なくとも約12時間保持され得る。
【0040】
いくつかの実施形態によると、FIGURE 1の114に示すように、真空浸潤の後、損傷部位をR.rhizogenesの溶液から取り出して、蛭石マトリックスに挿入することによって被覆し得る(例えば、完全に被覆、部分的に被覆)。いくつかの実施形態において、微生物毛状根の発生を誘導することは、感染した植物(例えば、根)の一部を取り出して、損傷部位を形成すること、損傷部位をR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する溶液(例えば、光学密度0.3)と接触させること、損傷部位を溶液から取り出すこと、及び損傷部位を蛭石マトリックスで被覆することを含み得る。いくつかの実施形態において、蛭石マトリックスによって被覆された感染した植物の一部は、1つ又は2つ以上の微生物毛状根の形成に適した条件において維持され得る。蛭石マトリックスは、いくつかの実施形態において、周期的に交換され得る。
【0041】
114においてFIGURE 1に示すように、微生物毛状根の発生を誘導することは、感染した植物の一部(例えば、苗条)を取り出して、損傷部位を形成すること、損傷部位をロックウールマトリックス中で被覆すること、及びロックウールマトリックスをR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する溶液へ曝露することを含み得る。ロックウールマトリックスをR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する溶液(光学密度0.3)へ曝露することは、十分な容積の当該溶液を提供して、ロックウールマトリックスを部分的に飽和又は完全に飽和させることを含み得る。いくつかの実施形態によると、ロックウールマトリックスによって被覆された感染した植物の一部は、R.rhizogenesと1つ又は2つ以上の植物細胞との共培養に適した条件下で共培養期間維持され得る。いくつかの実施形態によると、共培養期間は、少なくとも約12時間、又は少なくとも約24時間、又は少なくとも約48時間、又は少なくとも約72時間であり得る。共培養期間の後、いくつかの実施形態において、ロックウールマトリックスは、乾燥させられて(例えば、空気乾燥、真空乾燥)、乾燥したロックウールマトリックスを形成し得る。乾燥したロックウールマトリックスは、いくつかの実施形態によると、水分を幾分保有し得る。いくつかの実施形態において、乾燥したロックウールマトリックスは、乾燥前の同じロックウールマトリックスと比較したとき、R.rhizogenes数の減少を有し得る。いくつかの実施形態によると、ロックウールマトリックスを乾燥させることは、ロックウールマトリックスを1つ又は2つ以上の乾燥条件(例えば、温度、空気流)へ少なくとも6時間、又は少なくとも12時間、又は少なくとも24時間、又は少なくとも36時間、又は少なくとも48時間、又は少なくとも72時間の期間曝露することによって実施され得る。いくつかの実施形態において、乾燥したロックウールマトリックスは、再水和され得る。
【0042】
感染した植物(例えば、112、114、116)の1つ又は2つ以上の部分をR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞と接触させることは、微生物毛状根の形成に適した条件(例えば、インキュベータ、増殖チャンバー、温室)において接触した植物を少なくとも1つの毛状根が発生するまで維持することを含み得る。1つ又は2つ以上の微生物毛状根の発生に適した条件は、感染した植物の種、接触した感染した根の一部、感染した植物を接触させる方法、選択されたR.rhizogenes株、接触溶液中のR.rhizogenesの濃度、又はこれらの何らかの組み合わせを含む因子によって変化し得る。いくつかの実施形態によると、感染した植物は、約21℃〜約25℃の温度で維持され得る。いくつかの実施形態において、感染した植物は、いくつかの実施形態によると、24時間の期間あたり約8時間の明期〜約16時間の明期の明暗臭気を有する条件において維持され得る。いくつかの実施形態において、微生物毛状根は、感染した植物をR.rhizogenesの懸濁液と接触した約10〜21日後に現れ得る。
【0043】
微生物毛状根を誘導するインビトロでの方法
118においてFIGURE 1において示すように、微生物毛状根を誘導することは、本開示のいくつかの実施形態によると、インビトロで実施され得る。微生物毛状根のインビトロでの誘導は、いくつかの実施形態によると、R.rhizogenesの培養物を調製すること、外植片を調製すること、外植片を少なくとも1つのR.rhizogenes細胞を含有する溶液と接触させること(例えば、共培養)、及び外植片を1つ又は2つ以上の選択的条件へ曝露することを含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態によると、微生物毛状根の発生110を誘導するインビトロ法118は、選好性微生物によってコロニー形成された植物から1つ又は2つ以上の感染した組織(例えば、葉、子葉、胚軸、及び/又は根)を外植片として機能するよう選択することを含み得る。いくつかの実施形態において、微生物毛状根の発生を誘導することは、外植片を調製すること(例えば、表面滅菌、創傷形成)を含み得る。外植片を調製することは、当該外植片(例えば、子葉)の1つ又は2つ以上の表面の表面滅菌を含み得る。いくつかの実施形態において、感染した植物又は外植片の1つ又は2つ以上の表面の、アルコール(例えば、70%エタノール)、NaClO(漂白剤)(例えば、2.5%、10%溶液)、非植物毒性抗真菌薬(例えば、アンホテリシンB)、抗菌(例えば、セフォタキシム又はカルベニシリン)化合物、又はこれらの何らかの組み合わせを含有する溶液への曝露を含む何らかの適切な表面滅菌技術が、指定された期間(例えば、1〜10分間)使用され得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、外植片(例えば、子葉)を調製することは、外植片をより小さな断片(例えば、約2センチメートル(cm)長)へと切断すること、外植片の少なくとも一部を損傷させること(例えば、ピンセットを使用)、又はこれらの何らかの組み合わせを含み得る。はさみ、メス、ピンセット(例えば、細いゲージ)、注射器、針、又はこれらの何らかの組み合わせを含む何らかの適切なツールは、外植片を調製するために使用され得る。外植片(例えば、子葉)の損傷しかつ曝露された表面は、R.rhizogenesの形質転換及び毛状根誘導のための活性部位として機能し得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、微生物毛状根の発生を誘導することは、外植片(例えば、表面滅菌しかつ損傷した子葉)を少なくとも1つのR.rhizogenes細胞と接触させること(例えば、共培養すること)を含み得る(インビトロアプローチ)116。外植片(例えば、調製した外植片)をR.rhizogenesの少なくとも1つの細胞と接触させることは、いくつかの実施形態において、当該外植片又は調製した外植片を、R.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する溶液(例えば、光学密度0.3)中にある期間(例えば、20分間)浸漬することを含み得る。外植片は、いくつかの実施形態によると、R.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する懸濁液中に、何らかの期間、例えば、少なくとも1分間、又は少なくとも5分間、又は少なくとも10分間、又は少なくとも15分間、又は少なくとも20分間、又は少なくとも25分間、又は少なくとも30分間浸漬され得る。いくつかの実施形態において、外植片を接触させること(例えば、共培養すること)は、R.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する懸濁液中に外植片(例えば、調製された外植片)を約1分間〜約30分間、又は約5分間〜約25分間、又は約10分間〜約25分間、又は約15分間〜約25分間、又は約15分間〜約20分間の期間、浸漬することを含み得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、外植片を、R.rhizogenesの少なくとも1つの細胞と接触させることは、外植片を、R.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する懸濁液(例えば、光学密度0.3)から共培養培地(例えば、1/2 MS、1/2 B5+3%スクロース)へ転移させること、及び当該外植片を少なくとも12時間、又は少なくとも24時間、又は少なくとも36時間、又は少なくとも48時間、又は少なくとも72時間という期間、インキュベートすることを含み得る。外植片又は調製された外植片をインキュベートすることは、外植片及びR.rhizogenesの両方の生き残りのための何らかの適切な条件下で実施され得る。いくつかの実施形態において、外植片をインキュベートすることは、約21℃、又は約22℃、又は約23℃、又は約24℃、又は約25℃の温度で実施され得る。いくつかの実施形態によると、外植片をインキュベートすることは、約21℃〜約25℃の温度で実施され得る。共培養培地は、R.rhizogenesの増殖を可能にする何らかの培地、例えば、1/2 MS培地、1/2 B5+3%スクロース培地を含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態によると、外植片を接触させることは、R.rhizogenesの少なくとも1つの細胞を含有する懸濁液中に当該外植片を20分という期間浸漬すること、当該外植片を1/2 MS、1/2 B5+3%スクロースの共培養培地へ転移させること、及び当該外植片を21℃〜25℃の温度で72時間という期間インキュベートすることを含み得る。
【0049】
いくつかの実施形態において、接触させること及びインキュベーション後、外植片は、1つ又は2つ以上の選択的条件へ曝露され得る。いくつかの実施形態によると、外植片又は調製した外植片は、共培養培地から選択培地へと転移され得る。選択培地は、R.rhizogenes、形質転換していない組織、形質転換していない根、又はこれらの何らかの組み合わせを抑止する(例えば、これらの濃度又は増殖を低下させる)何らかの培地であり得る。いくつかの実施形態によると、選択培地は、R.rhizogenes数を抑止し得るが、選好性微生物(例えば、Lso)を抑止し得ない。いくつかの実施形態によると、種々の測定基準は、一般的な抗生物質(例えば、セファトキシム(cefatoxime)、カルベンシリン(carbencillin)及びカナマイシン)を用いた潜在的な落とし穴を回避するために使用され得る。例えば、いくつかの抗生物質は、外植片の内側に存在する選好性微生物を抑止し得る。それゆえ、いくつかの実施形態において、師部に静止性の及び/又は非植物毒性のストレプトマイシン(例えば、200mg/L濃度の)、ネオマイシン(例えば、100mg/Lの)、ペニシリン(例えば、100mg/Lの)及びハイグロマイシン(約100mg/Lの)が使用され得る。外植片は、共培養培地(例えば、約1/2 MS、1/2 B5+3%スクロース)から、R.rhizogenesを抑止し得る(例えば、R.rhizogenesの濃度又は増殖を低下させ得る)選択培地(例えば、約1/2 MS、1/2 B5+3%スクロース+200mg/Lセフォタキシム又は100mg/Lのカルベニシリン)へと転移され得る。
【0050】
いくつかの実施形態によると、接触させること及びインキュベーション後、外植片は、浸透圧ストレスへ曝露され得る。外植片を浸透圧ストレスへ曝露することは、R.rhizogenesを抑止する(例えば、R.rhizogenesの濃度を低下させる)上で有効であり得る。種々の方法が、外植片を浸透圧ストレスへ曝露するために存在する。例えば、外植片は、滅菌した脱イオン水中である期間(例えば、約30分間)反復してすすぐことによって、浸透圧ストレスへ曝露され得る。いくつかの実施形態において、外植片を浸透圧ストレスへ曝露するために使用される脱イオン水は、抗生物質化合物、例えば、200mg/Lのセフォタキシム又は100mg/Lのカルベニシリンを含み得る。
【0051】
外植片を1つ又は2つ以上の選択的条件へ接触させかつ曝露した後、外植片は、適切な増殖環境(例えば、インキュベータ、増殖チャンバー、温室)中に、少なくとも1つの毛状根が発生するまで配置され得る。外植片は、毛状根誘導のためにその後モニターされ得る。使用される植物種、外植片源、及びR.rhizogenesによって、毛状根は、いくつかの実施形態によると、2〜4週間以内で生じ得る。
【0052】
微生物毛状根誘導効率
いくつかの実施形態において、毛状根誘導効率は、植物品種、R.rhizogenes株、及び/又は外植片源(例えば、子葉、胚軸、未熟苗条、未熟根、成熟苗条、及び成熟根)を含む種々の因子に基づいて変化し得る(例えば、有意に変化し得る)。演繹的なデータは、毛状根誘導効率を最適化するために使用され得る。異なる試料(例えば、外植片組織タイプ、植物種タイプ)間での微生物数の正確な比較のために、定量的PCR技術(例えば、q−PCR、定量的リアルタイムPCR)が、いくつかの実施形態によると、使用され得る。分散分析(ANOVA)及びStudentのT検定などの統計分析を採用して、異なる試料の間の数の有意な差を判定し得る。
【0053】
いくつかの実施形態によると、毛状根誘導効率は、使用される植物品種、外植片組織、及びR.rhizogenes株によって約10%から約90%まで及び得る。好ましい外植片組織及びR.rhizogenes株は、柑橘類、トマト、及びジャガイモなどの種々の植物における微生物毛状根誘導効率を最大化し得る。
【0054】
毛状根の確認
120においてFIGURE 1に示すように、微生物毛状根プラットフォームの作業の流れ100は、微生物毛状根(例えば、植物又はインビトロで発生した)が、R.rhizogenesによる形質転換によって誘導されたことを確認することを含み得る。種々の分子レベルの方法は、微生物毛状根(例えば、植物又はインビトロで発生した)をR.rhizogenesによる形質転換によって誘導されたことを確認する上で使用され得る。例えば、いくつかの実施形態によると、公知の根誘導(Ri)DNA遺伝子(例えば、rolB、rolC)のPCR増幅は、微生物毛状根(例えば、植物内又はインビトロで発生した)が、R.rhizogenesによる形質転換によって誘導されたことを確認するために実施され得る。
【0055】
選好性微生物による毛状根のコロニー形成の確認
微生物毛状根プラットフォームの作業の流れ100は、感染した植物から発生した微生物毛状根が、120においてFIGURE 1に示すように、選好性微生物(例えば、Lso、Las)によってコロニー形成されていることを確認することを含み得る。PCR、q−PCR、定量的リアルタイムPCR、逆転写qPCR、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、又はこれらの何らかの組み合わせを含むがそれらに限定されない数多くの化学的方法は、外植片又は感染した植物に由来する微生物毛状根が、選好性微生物によって、本開示から逸脱することなくコロニー形成されていることを確認するために使用され得る。
【0056】
選好性微生物によってコロニー形成された微生物毛状根の増殖
いくつかの実施形態によると、微生物毛状根プラットフォームの作業の流れ100は、顆粒の試験及び応用のために微生物毛状根を増殖させることを含み得る。高処理量生物学的試験のために微生物毛状根をうまく利用するために、いくつかの実施形態によると、十分に多量の微生物毛状根種菌を増殖させることが望ましくあり得る。毛状根システムは、大規模増殖を受け入れられる。いくつかの実施形態によると、収集した毛状根は、クローン増殖され得る。収集した毛状根のクローン増殖は、収集した毛状根内に含有される選好性微生物源(例えば、微生物毛状根種菌)の増加を提供し得る。本開示のいくつかの実施形態によると、微生物毛状根を増殖させることは、蛭石法122、水耕法124、インビトロ培地法126、バイオリアクタ法128、又はこれらの何らかの組み合わせを用いて実施され得る。
【0057】
いくつかの実施形態によると、微生物毛状根を増殖させることは、感染した植物又は外植片に付着した、微生物毛状根が、所望の長さに到達したときに実施され得る。いくつかの実施形態において、微生物毛状根を増殖させることは、感染した植物又は外植片へ付着した、微生物毛状根が、少なくとも約1cm、又は少なくとも約1.5cm、又は少なくとも約2cm、又は少なくとも約2.5cm、又は少なくとも約3cm、又は少なくとも約3.5cm、又は少なくとも約4cm、又は少なくとも約4.5cm、又は少なくとも約5cmの長さに到達したときに実施される。
【0058】
先に説明したように、1つ又は2つ以上の微生物毛状根を生じるために使用され得る複数の植物内アプローチがある。このような植物内で生じた微生物毛状根は、光合成活動の可能な感染した植物の少なくとも一部へなおも付着し得る(すなわち、付着した毛状根)。いくつかの実施形態によると、微生物毛状根を増殖させること121は、1つ又は2つ以上の選択的条件へ(例えば、増殖することの前に)付着した毛状根を曝露することを含み得る。いくつかの実施形態によると、付着した毛状根を1つ又は2つ以上の選択的条件へ曝露することは、付着した毛状根の1つ又は2つ以上の表面を、アルコール(例えば、70%エタノール)、NaClO(漂白剤)(例えば、2.5%、10%)、非植物毒性抗真菌薬(例えば、アンホテリシンB)、抗菌薬(例えば、セフォタキシム、カルベニシリン)化合物、又はこれらの何らかの組み合わせを含有する溶液へ、指定された期間(例えば、1〜10分間)曝露することを含み得る。いくつかの実施形態において、付着した毛状根を1つ又は2つ以上の選択的条件へ曝露することは、付着した毛状根を浸透圧ストレスへ曝露することを含み得る。付着した毛状根を1つ又は2つ以上の選択的条件へ曝露することは、いくつかの実施形態において、付着した毛状根を選択培地(例えば、約1/2のMS、1/2のB5+3%スクロース+200mg/Lセフォタキシム又は100mg/Lカルベニシリン)へ転移させて、R.rhizogenesを抑止する(例えば、R.rhizogenesの濃度を低下させる)ことを含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態によると、微生物毛状根を増殖させること121は、外植片、感染した植物、感染した植物の一部、又は付着した毛状根から1つ又は2つ以上の微生物毛状根を収集して、収集した毛状根を形成することを含み得る。微生物毛状根121を増殖させることは、いくつかの実施形態においてR.rhizogenesの濃度を低下させ得る選択的条件へ、収集した毛状根を曝露することを含み得る。いくつかの実施形態によると、収集した毛状根を1つ又は2つ以上の選択的条件へ曝露することは、収集した毛状根の1つ又は2つ以上の表面を、アルコール(例えば、70%エタノール)、NaClO(漂白剤)(例えば、2.5%、10%)、非植物毒性抗真菌薬(例えば、アンホテリシンB)、抗菌薬(例えば、セフォタキシム又はカルベニシリン)化合物、又はこれらの何らかの組み合わせを含有する溶液へ、指定された期間(例えば、1〜10分間)曝露することを含み得る。いくつかの実施形態において、収集した毛状根を1つ又は2つ以上の選択的条件へ曝露することは、収集した毛状根を選択培地(例えば、約1/2のMS、1/2のB5+3%スクロース+200mg/Lセフォタキシム又は100mg/Lカルベニシリン)へ転移させることを含み得る。いくつかの実施形態において、収集した毛状根を1つ又は2つ以上の選択的条件へ曝露することは、収集した毛状根を浸透圧ストレスへ曝露することを含み得る。例えば、収集した毛状根は、滅菌済み脱イオン水中でのすすぎをある期間(例えば、約30分間)反復させることによって、浸透圧ストレスへ曝露され得る。
【0060】
122においてFIGURE 1に示すように、微生物毛状根を増殖させることは、蛭石法1122を用いて実施され得る。蛭石法122は、いくつかの実施形態において、付着した毛状根(例えば、表面滅菌済みの、付着した毛状根)を蛭石マトリックスへ移植することを含み得る。いくつかの実施形態によると、微生物毛状根を増殖させる蛭石法122は、付着した毛状根を新鮮な蛭石マトリックスへ周期的に転移させることを含み得る。蛭石マトリックスに移植された付着した毛状根は、付着した毛状根の光合成部分の維持に適した条件に置かれ得る。例えば、蛭石毛状根は、14時間明期(強度:100μmol・m
−2・秒
−1)、10時間暗期、及び21℃〜約25℃の日周性周期を備えた増殖チャンバーの中で増殖し得る。
【0061】
いくつかの実施形態によると、微生物毛状根を増殖させることは、水耕法214を用いて実施され得る。水耕法124は、いくつかの実施形態によると、付着した毛状根()又は収集した毛状根(たとえ亜b、表面滅菌済み)を栄養素の豊富な培地(例えば、1/2のMS、1/2のB5+3%スクロース培地)中に置き、水耕栽培を生じることを含み得る。いくつかの実施形態において、栄養素の豊富な培地は、抗生物質又は抗真菌成分を含み得る。水耕栽培は、付着した毛状根又は収集した毛状根の増殖のための何らかの適切な条件で維持され得る。いくつかの実施形態において、水耕栽培は、撹拌され得る。いくつかの実施形態によると、水耕栽培は、追加の栄養源が周期的に補充され得る(例えば、新鮮培地供給)。水耕栽培は、いくつかの実施形態において、約21℃〜約25℃の温度で維持され得る。いくつかの実施形態によると、外部光源を供給することは、水耕栽培物の生育に不必要である。126においてFIGURE 1に示すように、微生物毛状根を増殖させることは、インビトロ培地法126を用いて実施され得る。インビトロ培地法126は、いくつかの実施形態によると、付着した毛状根(例えば、浸透圧ストレスへ曝露)又は収集した毛状根(例えば、表面滅菌済み)を栄養素の豊富な培地(例えば、1/2のMS、1/2のB5+3%スクロース培地)のプレートへ置き、インビトロ培養物を生じることを含み得る。いくつかの実施形態において、栄養素の豊富な培地は、抗生物質又は抗真菌成分を含み得る。インビトロ培養は、付着した毛状根又は収集した毛状根の生育のための何らかの適切な条件で維持され得る。いくつかの実施形態によると、インビトロ培地法126は、付着した毛状根又は収集した毛状根を栄養素の豊富な培地の新鮮なプレートへ周期的に移植することを含み得る。インビトロ培養は、いくつかの実施形態において、約21℃〜約25℃の温度で維持され得る。いくつかの実施形態によると、外部光源を供給することは、インビトロ培養物の生育に不必要である。
【0062】
128においてFIGURE 1に示すように、いくつかの実施形態によると、微生物毛状根を増殖させることは、バイオリアクタ法128を用いて実施され得る。バイオリアクタ法128は、いくつかの実施形態によると、付着した毛状根(例えば、浸透圧ストレスへ曝露)又は収集した毛状根(例えば、表面滅菌済み)を栄養素の豊富な培地(例えば、1/2のMS、1/2のB5+3%スクロース培地)を含有するバイオリアクタの中に置いて、バイオリアクタ培養物を生じることを含み得る。いくつかの実施形態において、栄養素の豊富な培地は、抗生物質又は抗真菌成分を含み得る。
【0063】
種々のバイオリアクタシステムは、本開示から逸脱することなく使用され得る。例えば、いくつかの実施形態において、液相及び/又は気相のバイオリアクタは、微生物毛状根を増殖させるバイオリアクタ法において使用され得る。いくつかの実施形態によると、浸潤システムのバイオリアクタ又は一時的浸潤システムのバイオリアクタ(例えば、SETISシステム)は、微生物毛状根を増殖させるバイオリアクタ法において使用され得る。いくつかの実施形態において、付着した毛状根又は収集した毛状根は、栄養素の十分な取り込みを可能にするよう算出された期間、栄養素の豊富な培地中に周期的に浸漬され得る(例えば、一時的浸潤システムのバイオリアクタ)。いくつかの実施形態において、一時的浸潤システムは、植物組織が栄養素培地中に永続的に浸漬される浸潤システムと比較すると、気体交換の改良及び低酸素/通気の問題の回避に貢献し得る。一時的浸潤システム(例えば、SETISシステム)は、高価ではなく、設立するのが簡単で、及び/又は規模拡大可能(例えば、高度に規模拡大可能)であり得る。一時的浸潤システムの個々のユニットは、いくつかの実施形態において、独立して機能するよう設計され得る。いくつかの実施形態によると、バイオリアクタの個々のユニットは、第一のバイオリアクタユニットが少なくとも第二のバイオリアクタユニットへ付着しているように積層され得る。積層したバイオリアクタセットアップは、単一のバイオリアクタユニットと比較すると、汚染がユニットからユニットへと広がるのを防止することができるので、損失を低下させ得る。
【0064】
バイオリアクタ培養物は、付着した毛状根又は収集した毛状根の生育のための何らかの適切な条件で維持され得る。いくつかの実施形態において、バイオリアクタ培養物は通気され得る。いくつかの実施形態によると、バイオリアクタ培養物は、追加の栄養源を周期的に補充され得る(例えば、新鮮培地の供給)。バイオリアクタ培養物は、いくつかの実施形態において、約21℃〜約25℃の温度で維持され得る。いくつかの実施形態によると、外部光源を供給することは、バイオリアクタ毛状根培養物の生育に不必要である。
【0065】
いくつかの実施形態によると、微生物毛状根を増殖させることは、比較的短期間で達成され得る。いくつかの実施形態において、微生物毛状根の集団は、感染した植物又は外植片から微生物毛状根の増殖した塊へと約6〜10週間で生じ得る。
【0066】
毛状根遺伝的スクリーニングシステム
130において、FIGURE 1に示すように、選好性の小胞限局性植物微生物を培養する先の挑戦を楽にすることに加えて、毛状根プラットフォームは、新規の抗菌薬及び殺菌薬のための遺伝的及び化学的スクリーニングを含むがこれらに限定されない、主な変化を生じさせる高処理量の機能的研究のために容易に開発され得る。R.rhizogenesが多様な単子葉植物及び双子葉植物において毛状根を有効に誘導し得るので、微生物培養のための微生物毛状根のシステム、方法、及び組成物は、真菌、ウイルス、ウイロイド、及び内部寄生性微生物などの導管にコロニー形成する植物性細菌に限らない、他の農業作物と植物微生物との関係へ適用され得る。
【0067】
いくつかの実施形態によると、アッセイは、132においてFIGURE 1に示す空中毛状根又は134においてFIGURE 1に示すロックウール法もしくは蛭石法を用いて生じる微生物毛状根など、植物組織へ付着したままである微生物毛状根を用いて実施され得る。いくつかの実施形態において、アッセイは、多重ウェルアッセイが示されている136においてFIGURE 1に示すように、収集した微生物毛状根を用いて実施され得る。
【0068】
微生物毛状根のシステム、方法、及び組成物は、いくつかの実施形態によると、選好性微生物を培養するために、及び/又は選好性微生物の主な変化を生じさせる生物学的及び遺伝的研究を可能にするために、植物病理学において長く存在している問題を解決し得る。例えば、微生物毛状根のシステムは、新規の耐性遺伝子、抗菌化合物、殺菌薬などの迅速なスクリーニングのために展開され得る。このようなスクリーニングは、ZC及びHLBなどの荒廃させる疾患と戦うのに役立ち得る。微生物毛状根は、宿主−病原体−ベクター間で生じる相互作用をより良好に理解するために活用されることもできる。それゆえ、本明細書に開示される微生物毛状根のシステム、方法、及び組成物は、潜在的に交配させる選好性の植物病原体の駆除戦略を開発する上で助力することによって、米国の農業及び植物疾患管理を進行させ得る。
【0069】
本明細書に開示される微生物毛状根のプラットフォーム及びシステムは、新規の耐性遺伝子及び抗菌化合物の識別に対するプログラムへと統合され得る。例えば、当該システムは、植物(例えば、トマト、ジャガイモ、柑橘類)の微生物毛状根システムにおける候補疾患の耐性遺伝子及び抗菌分子(例えば、抗生物質、エッセンシャルオイル、オキシリピン)の迅速な機能的及び化学的遺伝的スクリーニングを達成するのに役立ち得る。R.rhizogenesが多様な双子葉植物及び単子葉植物において毛状根を有効に誘導し得るので、開示された原理は、真菌、ウイルス、ウイロイド、及び有益な内部寄生菌などの導管限局性植物性細菌に限らない、他の作物と植物微生物との関係のための微生物毛状根システムも確立し得る。いくつかの実施形態において、毛状根システムは、植物病原体(例えば、経済的に重要な植物病原体)及びこれらの対応する疾患(例えば、ゼブラチップ(ZC)、HLB)を研究するために使用され得る。
【0070】
本開示は、いくつかの実施形態において、選好性の導管にコロニー形成する植物微生物(例えば、病原体)の迅速な培養、増殖、及び機能的研究のための微生物毛状根プラットフォームに関する。いくつかの実施形態によると、コロニー形成された植物から直接誘導される、微生物によりコロニー形成された毛状根は、選好性の導管限局性植物微生物を培養し、増殖させ、及び特徴づけるための容易な、迅速な、及び規模拡大可能なプラットフォームを提供し得る(例えば、実験室における)。
【0071】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態によると、遺伝的解析(例えば、導入遺伝子の機能の解析)は、微生物毛状根システムを用いて実施され得る。いくつかの実施形態において、毛状根システムは、遺伝子修飾された植物をR.rhizogenesを用いて形質転換することによって、遺伝子修飾された植物から毛状根を培養することを含み得る。例えば、植物の広範な複合体、トラムトラック及びがらくた(BTB)ドメインファミリータンパク質、NRP1、又は緑色蛍光タンパク質(GFP)を過剰発現するよう遺伝子修飾された植物は、毛状根の産生を誘導するために、R.rhizogenesの株を用いて形質転換され得る。いくつかの実施形態において、R.rhizogenesによって遺伝子修飾された植物は、選好性微生物(例えば、Las、Lso)によってコロニー形成され得る。
【0072】
毛状根システムは、いくつかの実施形態において、植物を、1つ又は2つ以上の修飾されたT−DNAプラスミドを有するR.rhizogenes株を用いて形質転換することを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、修飾されたR.rhizogenesが形成され得る。修飾されたR.rhizogenesは、いくつかの実施形態において、各々、標的遺伝子(例えば、NRP1、GFP)、CRISPR/Cas、TALEN、又はRNAiコンストラクトのうちの少なくとも1つをコードする1つ又は2つ以上のT−DNAプラスミドを含み得る。いくつかの実施形態によると、毛状根システムは、各々が標的遺伝子、CRISPR/Cas、TALEN、又はRNAiコンストラクトのうちの少なくとも1つをコードする第一の修飾されたT−DNAプラスミド及び第二の修飾されたT−DNAプラスミドを有するR.rhizogenes株を用いて植物を形質転換することを含み得る。R.rhizogenesは、T−DNA及びRi−DNAを植物細胞へ同時に転移させることができるので、修飾されたR.rhizogenesを用いた植物の形質転換は、標的遺伝子、CRISPR/Cas、TALEN、又はRNAiコンストラクトのうちの少なくとも1つを発現する(例えば、過剰発現する)毛状根産生植物の作出を結果的に生じ得る。
【0073】
いくつかの実施形態によると、標的遺伝子(例えば、NPR1、GFP)、CRISPR/Cas、TALEN、又はRNAiコンストラクトのうちの少なくとも1つをコードする1つ又は2つ以上のT−DNAプラスミドは、緩徐な真空浸潤又はDNA照射を用いて毛状根へと一過性に送達され得、それにより遺伝子修飾された毛状根を形成し得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、標的遺伝子(例えば、NPR1、GFP)、CRISPR/Cas、TALEN、又はRNAiコンストラクトのうちの少なくとも1つをコードするT−DNAプラスミドは、レポーター遺伝子/マーカー遺伝子(例えば、GFP、β−グルクロニダーゼ[GUS]、抗生物質耐性遺伝子)をさらに含み得る。微生物毛状根の誘導及び選択のための標準的な抗生物質の使用が制御されているので、修飾されたT−DNAコンストラクトを保有する微生物毛状根を識別するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)系又はGUS系のスクリーニングが使用され得る(例えば、任意に、排他的に)。
【0075】
いくつかの実施形態において、標的遺伝子()、CRISPR/Cas、TALEN、又はRNAiコンストラクトのうちの少なくとも1つを用いた毛状根の形質転換は、逆転写PCR(RT−PCR)、PCR、DNA配列決定、サザンブロット分析、ノザンブロット分析、及び/又はウェスタンブロット分析を用いて確認され得る。空のベクター又はGFP含有二進法T−DNAベクターを用いて同時に形質転換した又は浸潤させた毛状根は、陰性対照として使用され得る。当業者は、標的遺伝子を用いた形質転換に関する他の確認方法が、本開示から逸脱することなく使用され得ることを理解するであろう。
【0076】
標的遺伝子()、CRISPR/Cas、TALEN、又はRNAiコンストラクトのうちの少なくとも1つの評価は、選好性の植物微生物をコロニー形成された毛状根システムの力価の定量的な分析を含み得る。例えば、耐性機序に関与する標的遺伝子は、標的遺伝子を含有していないコロニー形成されたと比較すると、選好性の植物微生物の力価が低くあり得る。選好性の植物微生物の力価の評価は、定性的又は定量的な評価を含み得る。
【0077】
例として、毛状根システムは、NPR1、GFP遺伝子の遺伝的解析を実施するために使用され得る。広範な複合体、トラムトラック及びがらくた(BTB)ドメインファミリーのタンパク質は、植物において十分に保存されており、多様な植物シグナル伝達経路に関与している。例えば、植物BTBタンパク質であるNPR1は、サリチル酸メチル−ジャスモン酸エステル、活性酸素種、及びシロイヌナズナにおける創傷形成を含む、多様な無生物性及び生物性ストレスシグナルによって調節され得る。それゆえ、選好性植物微生物(例えば、Lso、Las)に対する応答におけるNPR1遺伝子の潜在的な役割を評価するために、毛状根システムが使用され得る。例えば、ジャガイモ、トマト、及び柑橘類植物の個々のLso病原体又はLas病原体が培養されたジャガイモ、トマト、及び柑橘類植物は、NPR1遺伝子又はGFP遺伝子を含有するT−DNAプラスミドを有するR.rhizogenes下部を用いて形質転換され得る。Lso及びLasに及ぼすNPR1の効果を判定するために、NPR1を過剰発現する毛状根における細菌力価を定量化し、GFPのみを発現する対照毛状根と比較し得る。例えば、結果的に生じる力価は、NPR1遺伝子の発現(例えば、過剰発現)が、毛状根におけるLso及びLasに対する耐性(又は許容性)を促進したことを示し得る。総合的に、これらの試験は、開示した微生物毛状根を用いた迅速な機能的応用を提供し得る。
【0078】
本開示の利益を享受する当業者によって理解されるであろうように、選好性の植物病原体を培養するための他の等価の又は代替的な組成物、装置、方法、及びシステムは、本明細書に含有される説明から逸脱することなく想起されることができる。したがって、本開示を示され及び説明されているように実施する様式は、実例となるのみであるものとして解釈されることになっている。
【0079】
当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、工程の性質、数、及び/又は配置の種々の変更を行い得る。開示された各方法及び方法工程は、いくつかの実施形態によると、その他の開示された方法又は方法工程とともに、及びいかなる順序においても実施され得る。動詞「し得る」が現れている場合、任意の及び/又は許容的な条件を伝えることが企図されているが、当該動詞の使用は、別段の記載がない限り、操作性のいかなる欠如も示唆するものとして企図されることはない。「を有する」又は「を含む」などのオープンタームが使用されている場合、本開示の利益を享受する当業者は、開示された特長又は工程が、さらなる特長又は工程と任意に組み合わされ得ることを認識するであろう。このような選択肢は、作用されない場合があり、実際、いくつかの実施形態において、開示されたシステム、組成物、装置、及び/又は方法は、本明細書に開示される特長又は工程を越えたその他の特長又は工程を排除し得る。列挙されていない要素、組成物、装置、システム、方法、及び方法工程は、所望のように又は必要なように、含まれ得又は排除され得る。当業者は、本開示の組成物、装置、及び/又はシステムを調製し及び使用する方法において種々の変更を行ってもよい。
【0080】
また、範囲が提供された場合、本開示の終了点は、詳細な実施形態によって所望の又は要求されるような正確な値及び/又は概算値として処理され得る。終了点が概算値である場合、自由度の程度は、範囲の桁に比例して変化し得る。例えば、一方で、約5〜約50の範囲の脈絡における約50の範囲終了点は、50.5を含み得るが、52.5も55も含み得ず、もう一方で、約0.5〜約50の範囲の脈絡における約50の範囲終了点は、55を含み得るが、60も75も含み得ない。さらに、いくつかの実施形態において、範囲終了点を混合及び合致させることは望ましくあり得る。また、いくつかの実施形態において、開示された各形象(例えば、実施例、表、及び/又は図面のうちの1つ又は2つ以上における)は、範囲(例えば、示された値±約10%、示された値±約50%、示された値±約100%)及び/又は範囲終了点の基礎を形成し得る。前者に関して、実施例、表、及び/又は図面において示される50という値は、例えば、約45〜約55、約25〜約100、及び/又は約0〜約100の範囲の基礎を形成し得る。
【0081】
選好性微生物を培養するための装置及び/又はシステムの全部又は部分は、使い捨て可能、使用可能、相互交換可能、及び/又は置き換え可能であるよう構成及び配置され得る。明白な変更及び改変を伴うこれらの等価物及び代替物は、本開示の範囲内に含まれるよう企図される。したがって、上述の開示は、添付の特許請求によって説明されるような本開示の範囲を説明する目的であるよう企図されているが、これに限定されない。
【0082】
発明の名称、要約、背景技術、及び見出しは、規制に準拠して及び/又は読者の簡便性のために提供されている。これらは、従来技術の範囲及び内容に関する許可を含まず、開示された実施形態すべてに対して適用可能な制限を含んでいない。
【0083】
実施例
実施例1:外植片及び/又は接種源の作出
FIGURE 2A〜FIGURE 2Gは、毛状根方法及びシステムにおける外植片としての使用のための選好性微生物によってコロニー形成された植物を作出するための昆虫ベクターを保有する選好性微生物を使用する例を示す。具体的には、FIGURE 2A及びFIGURE 2Bは、Texas A&M AgriLife Center−Weslacoの昆虫ケージに維持された、Lso保有ジャガイモ及びLso非含有ジャガイモのキジラミコロニー(Centralハプロタイプ)を示す。キジラミは、2007年にテキサス州ダルハート市近郊の商用ジャガイモ畑から元来収集した。FIGURE 2A及びFIGURE 2Bに示すように、キジラミに卵黄を給餌し、制御された生育チャンバー中で25℃で、12:12の明暗(L:D)時間の照明期間で、かつ約50%の相対湿度で維持した。周期的に、キジラミコロニー(例えば、Lso保有、Lso非含有)を、16S rDNA PCRを用いて、Lsoコロニー形成の有無について試験した。
【0084】
外植片材料を作製するために、10匹のLso保有成キジラミを、2〜3か月齢のジャガイモ植物及びトマト植物を含有するケージへと放出し、給餌させておいた。対照として、10匹のLso非含有キジラミを、2〜3か月齢のジャガイモ植物及びトマト植物を含有する別個のセットのケージへと放出し、給餌させておいた。3日間の期間後、キジラミを除去し、感染したジャガイモ植物及びトマト植物における葉の症状(黄化病及び壊死)をモニターした。FIGURE 2D及び2Fにおいてそれぞれ示されるように、典型的な疾患症状は、Lso保有キジラミの給餌へ曝露されたトマト植物及びジャガイモ植物に給餌後2〜4週間以内に現れ始めた。対照的に、Lso非含有キジラミ給餌へ曝露されたトマト植物(FIGURE 2C)及びジャガイモ植物(FIGURE 2E)は、疾患症状を呈しなかった(それぞれ、FIGURE 2C及びFIGURE 2E)。
【0085】
FIGURE 2Gに示されるように、感染した植物(例えば、FIGURE 2Dにおけるトマト及びFIGURE 2Fにおけるジャガイモ)におけるLsoの存在は、16S rDNAのPCR増幅によって確認された。Lso感染に対して陽性であると試験された植物材料を外植片源(インビトロでのアプローチ用)として、及び微生物毛状根誘導のためのコロニー形成された植物(植物内でのアプローチ用)として使用した。
【0086】
実施例2:Rhizobium rhizogenesの培養
R.rhizogenesの新鮮な培養物を約0.3の光学密度(OD)になるまで培養した。この培養物を遠心分離によってペレット化し、R.rhizogenes細胞を滅菌済み1/2 MS培地又は1/2 B5+3%スクロース培地中で0.3のO.D.になるまで再懸濁した。
【0087】
実施例3:微生物毛状根のインビトロでの誘導
子葉、胚軸、未熟苗条、及び未熟根の領域を含む、健常植物及びLsoがコロニー形成した植物の一部を収穫した。当該植物部分を、70%エタノール、2.5%又は10%NaClO、及び水を含有する溶液を用いて表面滅菌した。FIGURE 3Aに示されるように、表面滅菌済み植物の一部を、メスを用いて各々約2cmの長さを有する断片へと切断した。さらに、断片の各々を滅菌した1本の細いピンセットを用いて緩徐に損傷させ、調製された外植片を作製した。
【0088】
FIGURE 3Bに示されるように、調製された外植片を実施例2に説明したように調製された懸濁液中への浸漬によって、R.rhizogenesの懸濁液と接触させた。浸漬した外植片を20分間という時間撹拌した。FIGURE 3Cに示されるように、次に、外植片をR.rhizogenesの懸濁液から取り出し、1/2 MS培地又は1/2 B5+3%スクロース培地のプレート上へ置いた。この外植片を約21〜25℃で72時間プレート上でインキュベートし、それにより、当該外植片及びR.rhizogenesを共培養させておいた。
【0089】
共培養後、この外植片を浸透圧ストレスへ供し、R.rhizogenesの濃度を低下させた。FIGURE 3Dにおいて示されるように、この外植片を1/2 MS培地又は1/2 B5+3%スクロース培地のプレートから取り出し、ある容積の滅菌済み脱イオン水中に入れた。この滅菌済み脱イオン水中の外植片の懸濁液を約30分間撹拌した。次に、FIGURE 3Eに示されるように、この外植片を取り出し、1/2 MS又は1/2 B5+3%スクロース+200mg/Lセフォタキシム又は100mg/Lカルベニシリンの選択培地へと移した。
【0090】
次に、この外植片を含有する選択培地のプレートを25℃のインキュベータ中に置き、毛状根誘導をモニターした。使用した植物種、外植片源、及びR.rhizogenes株によって、毛状根は、2〜6週間以内に生じた。
【0091】
FIGURE 4Aは、Rhizobium rhizogenes(ATCC15834株)を用いて形質転換したトマト外植片における毛状根のインビトロでの誘導を示す。FIGURE 5Aは、Rhizobium rhizogenesを用いて形質転換したジャガイモ外植片における毛状根のインビトロでの誘導を示す。FIGURE 6は、Rhizobium rhizogenes(ATCC15834株)を用いて形質転換した柑橘類(ユーレカレモン)外植片における毛状根のインビトロでの誘導を示す。
【0092】
これらの構造は、公知の根誘導(Ri)DNA遺伝子rolB及びrolCのPCR増幅を用いて毛状根と確認された。
【0093】
FIGURE 4Bは、rolB及びrolCが、形質点した毛状根についてのマーカー遺伝子である、Rhizobium rhizogenes(ATCC15834株)を用いてインビトロで誘導されたトマト毛状根のPCR確認結果を示す。FIGURE 4Bに示されるように、レーンWTは、R.rhizogenesで形質転換されていなかった野生型トマトに由来するDNAのPCR増幅を示し(陰性対照)、レーン1は、R.rhizogenesのCastlemart株によって形質転換された外植片の毛状根に由来するDNAのPCR増幅を示し、レーン2は、カリフォルニア大学82(UC82)製のR.rhizogenesによって形質転換された外植片の毛状根に由来するDNAのPCR増幅を示し、レーン3は、R.rhizogenesのUC82株によって形質転換された第二の外植片の毛状根に由来するDNAのPCR増幅を示し、レーンRhは、R.rhizogenes細胞に由来するDNAのPCR増幅を示す(陽性対照)。
【0094】
FIGURE 5Bは、rolB及びrolCが、形質転換された毛状根についてのマーカー遺伝子である、Rhizobium rhizogenes(ATCC15834株)を用いて形質転換した外植片に由来するジャガイモ(アトランチック)毛状根のPCR確認を示す。FIGURE 5Bにおいて示される5つのレーンのうち、レーンWTは、野生型ジャガイモに由来するDNAを表し(陰性対照)、レーン1は、ジャガイモ毛状根試料1を表し、レーン2は、ジャガイモ毛状根試料2を表し、レーン3は、ジャガイモ毛状根試料3を表し、レーンRhは、R.rhizogenes細胞を表す(陽性対照)。
【0095】
FIGURE 6Bは、Rhizobium rhizogenes(ATCC15384株)を用いて形質転換した外植片に由来する柑橘類(ユーレカレモン)の毛状根のPCR確認を示す。FIGURE 6Bに示されるrolB及びrolCの各々についての2つのレーンのうち、HR(毛状根)と標識されたレーンは、毛状根に由来するDNAを表し、レーンWTは、野生型柑橘類に由来するDNAを表す(陰性対照)。
【0096】
実施例4:空中の微生物毛状根の植物内導入及び導入遺伝子送達
健常植物(対照)及びLso感染した植物を選択し、選択植物表面を70%エタノール、2.5%又は10%NaClO(漂白剤)、及び水を含有する溶液を用いて表面滅菌した。R.rhizogenesの懸濁液を、実施例2において説明した通り調製した。
【0097】
空中の微生物毛状根の誘導は、Lsoによってコロニー形成された植物の表面滅菌済み領域の茎組織及び/又は葉組織を、R.rhizogenes溶液中に浸漬した針を用いて緩徐に損傷させることによって実施した。使用したR.rhizogenes株は、Ri−DNAプラスミド及びT−DNAプラスミドを両方とも含有しており、T−DNAプラスミドは、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードしていた。健常植物も実験対照としての使用のために、先に説明した方法を用いて空中の毛状根形成について誘導した。露出した損傷部位をアルミホイルに巻き、光への曝露を低下させ、露出領域における所望の湿潤レベルを維持するのを助けた。これらの植物を各植物種について適切な温度、光、及び湿度の条件を有する生育チャンバーの中で維持した。植物を微生物毛状根の形成についてモニターした。FIGURE 7Aは、健常トマト植物における空中の毛状根の形成を示す。FIGURE 7Bは、Lsoによってコロニー形成されたトマト植物における空中の微生物毛状根の形成を示す。FIGURE 8Aは、Lsoによってコロニー形成されたジャガイモ植物における空中の微生物毛状根の形成を示す。
【0098】
この構造は、公知の根誘導(Ri)DNA遺伝子rolB及びrolCのPCR増幅を用いて微生物毛状根と確認された。FIGURE 7Cにおいて示されるように、空中の微生物毛状根組織のPCR確認は、FIGURE 7A及びFIGURE 7Bにおいて示される微生物毛状根に由来するDNA試料を用いて実施した。プライマーは、Lsoの16S rDNA(16S rDNAと記された行において標識)、毛状根形質転換に由来するrolB及びrolCのマーカー遺伝子、内在性トマト遺伝子RPL(対照)、及びT−DNAプラスミドにおいてコードされたGFP遺伝子を増幅するよう設計した。健常植物DNAを表すFIGURE 7Cのレーンは、次のとおりである。WTは、野生型トマト植物に由来するDNAを表し(陰性対照)、CLは、健常トマト葉に由来するDNAを表し(陰性対照)、CHRは、健常毛状根に由来するDNAを表す(16SrDNAプライマーについての陰性対照)。DNAを、Lso感染したトマトの上部葉(TL)、Lso感染したトマトの中部葉(ML)、及びLso感染したトマトに由来する空中の微生物毛状根(HR)を含む、Lso感染した植物組織からも抽出した。FIGURE 7Cにおいて示されるように、CHR試料及びHR試料は、rolB遺伝子及びrolC遺伝子を複製し、したがって、これらが実際に毛状根であることを示した。HRは、16S rDNAセグメントを増幅したが、CHRは増幅せず、HRがLsoによりコロニー形成されていることを確立した。
【0099】
Ri−DNAプラスミド(rolB及びrolCをコード)及びT−DNAプラスミド(GFPをコード)の両方の同時形質転換を確認するために、別個のPCRゲルを電気泳動した。このゲルについて、T−DNAベクターを含むプラスミドDNA(Vと標識)を、GFPプライマーセットを用いて抽出し及び増幅した。FIGURE 7Cにおいて示されるように、このことは、GFPの増幅についての陽性対照として機能した。FIGURE 7Cは、CHR試料及びHR試料において、GFP遺伝子が増幅されたことを示しており、Ri−DNA及びT−DNAが空中の毛状根の発生中に同時形質転換されたことを確立している。
【0100】
FIGURE 8Bは、FIGURE 8Aにおいて示されるLso感染したジャガイモから採取した21日齢のLso感染した空中の微生物毛状根の試料における16S rDNAのPCR増幅を示す。RPL遺伝子の増幅は、陽性対照として機能した。FIGURE 8Cは、健常(「H」)ジャガイモ植物及びLso感染した(「L」)ジャガイモ植物に由来する毛状根組織におけるrolB、rolC、及びGFP遺伝子のPCR増幅を示し、したがって、Ri−DNA及びT−DNAが空中の毛状根の発生中に同時形質転換されたことを確立している。
【0101】
実施例5:ロックウール法を用いた微生物毛状根の植物内誘導及び導入遺伝子送達
健常トマト植物(対照)及びLso感染したトマト植物を選択し、選択植物表面を70%エタノール、2.5%又は10%NaClO(漂白剤)、及び水を含有する溶液を用いて表面滅菌した。R.rhizogenesの懸濁液を実施例2において説明した通り調製した。R.rhizogenesは、Ri−DNAプラスミド(rolB遺伝子及びrolC遺伝子を含んでいる)及びGFPをコードするT−DNAプラスミドを両方とも含有していた。
【0102】
選択されたトマト植物の苗条部分を、メスを用いて取り出し、この苗条の損傷した部分をロックウールマトリックス中に挿入した。ある容積のR.rhizogenes懸濁液を用いてロックウールマトリックスを飽和させ、このマトリックスを培養容器中に置き、高湿レベルを維持した。R.rhizogenesを健常トマト植物及びLso感染したトマト植物の損傷した部位とともに72時間共培養させておいた。72時間後、ロックウールマトリックスを取り出し、ロックウールを乾燥させておき、それによりR.rhizogenesのほとんどを殺滅した。ロックウールマトリックスを雰囲気環境へおよそ24時間曝露した後、再水和させた。この処理された苗条及びロックウールマトリックスを、栄養溶液(1/2 MS又は1/2 B5)を有する新たなプラスチック製のマジェンタ色の箱型培養容器へと移し、日周性の生育チャンバー中に置き、微生物毛状根の発生についてモニターした。
【0103】
FIGURE 9Aは、Lso感染したトマト植物における微生物毛状根の発生を示す。
【0104】
PCR確認を実施して、微生物毛状根コンストラクト、Lsoによる微生物根コロニー形成、ならびにRi−DNA及びT−DNAの両プラスミドを用いた同時形質転換を確認した。FIGURE 9Bは、健常(「H」)ジャガイモ植物及びLso感染した(「L」)ジャガイモ植物に由来する毛状根組織におけるrolB遺伝子、rolC遺伝子、及びGFP遺伝子のPCR増幅を示し、したがって、Ri−DNA及びT−DNAが、R.rhizogenesとの共培養の間に同時形質転換されたことを確立している。予期した通り、16SrDNAは、Lso感染した微生物毛状根においてのみ増幅された。
【0105】
実施例6:蛭石法を用いた微生物毛状根の植物内誘導及び導入遺伝子送達
健常植物(対照)及びLso感染した植物を選択し、選択植物表面を70%エタノール、2.5%又は10%NaClO(漂白剤)、及び水を含有する溶液を用いて表面滅菌した。R.rhizogenesの懸濁液を実施例2において説明した通り調製した。R.rhizogenesは、Ri−DNAプラスミド(rolB遺伝子及びrolC遺伝子を含んでいる)及びGFPをコードするT−DNAプラスミドを両方とも含有していた。
【0106】
選択された植物の苗条部分を、メスを用いて取り出し、当該苗条の損傷した部分をR.rhizogenes懸濁液中に浸漬した。約30inHgの真空環境を発生させ、30分間保持した。真空放出後、苗条をR.rhizogenes懸濁系から取り出し、蛭石マトリックスの中に置いた。この苗条を25℃で明期14時間後の暗期10時間の明暗周期の生育チャンバー中の被覆したトレイ中に置いた。この苗条を微生物毛状根の発生についてモニターした。
【0107】
FIGURE 10Aは、蛭石法を用いて誘導されたトマト植物からの微生物毛状根の生育を示した。PCR確認を実施して、微生物毛状根コンストラクト、Lsoによる微生物根コロニー形成、ならびにRi−DNA及びT−DNAの両プラスミドを用いた同時形質転換を確認した。FIGURE 10Bは、健常(「H」)トマト植物及びLso感染した(「L」)トマト植物に由来する毛状根組織におけるrolB遺伝子、rolC遺伝子、及びGFP遺伝子のPCR増幅を示し、したがって、Ri−DNA及びT−DNAをR.rhizogenesとの共培養中に同時形質転換したことを確立している。予期した通り、16S rDNAは、Lso感染した微生物毛状根においてのみ増幅された。
【0108】
FIGURE 11は、蛭石法を用いた柑橘類(サワーオレンジ)の苗条からの微生物毛状根の発生を示す。
【0109】
実施例7:毛状根の増殖−蛭石法
収集した毛状根は、クローン増殖され得る。収集した毛状根のクローン増殖は、収集した毛状根内に含有される選好性微生物源(例えば、微生物毛状根接種源)の増加を提供し得る。
【0110】
実施例4において先に説明した通り、健常トマト植物及びLso感染したトマト植物の両方から発生した毛状根を増殖のために選択した。トマト植物を空中の毛状根が発生した部位のすぐ下で切断し、当該植物の下部茎及び根部分を廃棄した。空中の毛状根へ付着した苗条部分を維持した(すなわち、付着済み毛状根)。
【0111】
空中の毛状根を70%エタノール溶液、2.5%又は10%漂白剤溶液中に浸漬した後、脱イオン水ですすぐことによって、当該根を表面滅菌した。次に、付着済み毛状根を蛭石マトリックス中へと移植した。移植した付着済み毛状根を25℃で14時間明期後の10時間暗期の明暗周期を有する生育チャンバー中に置いた。この苗条を毛状根の増殖についてモニターした。FIGURE 12は、蛭石含有ポットの底部から生育する増殖した毛状根を示す。
【0112】
実施例8:微生物毛状根の増殖−水耕法
実施例4において先に説明したように、健常トマト植物及びLso感染したトマト植物の両方から発生した毛状根を増殖のために選択した。トマト植物の空中の毛状根が少なくとも3cmの長さに到達したとき、当該毛状根を収集した。収集した空中の毛状根を、70%エタノール溶液、2.5%又は10%漂白剤溶液中に浸漬した後、脱イオン水ですすぐことによって表面滅菌した。次に、収集した毛状根を、1/2 MS又は1/2 B5+3%スクロース+200mg/Lセフォタキシム又は100mg/Lのカルベニシリン、及び2.5mg/LのアンホテリシンBを含有するビーカーの中に置いた。水耕栽培物を25℃で、50rpm又は100rpmで緩徐に撹拌しながら維持した。FIGURE 13は、水耕栽培において生育している増殖した毛状根を示す。
【0113】
実施例9:微生物毛状根の増殖−インビトロ法
実施例4において先に説明した通り、健常トマト植物及びLso感染したトマト植物の両方から発生した毛状根を増殖のために選択した。当該トマト植物の空中の毛状根が少なくとも3cmの長さに到達したとき、当該毛状根を収集した。収集した空中の毛状根を、70%エタノール溶液、2.5%又は10%漂白剤溶液中に浸漬した後、脱イオン水ですすぐことによって表面滅菌した。次に、収集した毛状根を、1/2 MS又は1/2 B5+3%スクロース+200mg/Lセフォタキシム又は100mg/Lのカルベニシリン、及び2.5mg/LのアンホテリシンBを含有するプレート上に置いた。このインビトロ培養物を25℃で維持した。FIGURE 14は、水耕栽培において生育している増殖した毛状根を示す。栄養培地は、毎週、新鮮培地と交換した。
【0114】
実施例10:微生物毛状根の増殖−バイオリアクタ法
健常トマト植物及びLso感染したトマト植物の両方から発生した毛状根を、実施例9において先に説明した通り、バイオリアクタ法を用いた増殖のために選択した。この毛状根をインビトロ培養物又は植物内法から収集し、収集した根を70%エタノール溶液、2.5%又は10%漂白剤溶液中に浸漬した後、脱イオン水ですすぐことによって表面滅菌し、1/2 MS又は1/2 B5+3%スクロース+200mg/Lセフォタキシム又は100mg/Lのカルベニシリン、及び2.5mg/LのアンホテリシンBを含有するSETISシステムの中に置いた。このバイオリアクタ培養物を25℃で維持した。FIGURE 15は、バイオリアクタシステムにおいて生育している増殖した毛状根を示す。栄養培地は、3〜4週間ごとに新鮮培地と交換した。
【0115】
実施例11:高処理量抗菌アッセイ
微生物毛状根を用いて、Lsoがペニシリンなどの抗菌薬によって抑止されるかどうかを分析した。FIGURE 16Aにおいて示されるように、健常毛状根及びLsoによりコロニー形成された微生物毛状根をインビトロ増殖物又は植物内増殖物のいずれかから収集した。毛状根を、構造上の完全性を損なうことなく、等量に分離し及び秤量した(例えば、50mg/ウェルあたり又は100mg/ウェルあたり)。健常毛状根及びLsoによりコロニー形成された微生物毛状根をFIGURE 16Bにおいて示されるように、複数ウェルプレート中へ3つ又は4つ以上の生物学的複製物へと同様に分配した。2ミリリットルの1/2 MS培地又は1/2 B5培地を複数ウェルプレートの対照ウェルの各々の中へと置き、毛状根を浸漬し、これは陰性対照として機能した。2ミリリットルの1/2 MS培地又は1/2 B5+100mg/Lペニシリン培地を複数ウェルプレートの各実験ウェル中へと置き、毛状根を浸漬した。複数ウェルプレートを真空環境に置き、25inHgの圧力を15〜30分間という期間、抜去した。毛状根を有する複数ウェルプレートをアルミホイルで被覆して、光への曝露及び抗生物質の起こり得る分解を防止した。次に、毛状根の個々の処理物を有する複数ウェルプレートを25℃の温度で振盪器の緩徐な振盪(50rpm)で2日間及び7日間という期間インキュベートした。
【0116】
定量的リアルタイムPCFを用いて、16s rDNA配列を増幅するプライマーを用いてLso力価を評価した。FIGURE 16C及びFIGURE 16Dにおいて示されるように、ペニシリンへ曝露したLsoによりコロニー形成された微生物毛状根は、2日間及び7日間の曝露後にいずれもペニシリンへ曝露されていない、Lsoによりコロニー形成された微生物毛状根よりも有意に低いLso力価を示した。