特許第6876722号(P6876722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876722投写型映像表示装置とそのための映像表示方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876722
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】投写型映像表示装置とそのための映像表示方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/20 20060101AFI20210517BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20210517BHJP
   G09G 3/02 20060101ALI20210517BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20210517BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20210517BHJP
   G03B 21/62 20140101ALI20210517BHJP
   H04N 9/31 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   G09G3/20 680C
   G09G5/00 510B
   G09G3/02 P
   G03B21/00 Z
   G03B21/14 F
   G03B21/62
   H04N9/31 290
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-557498(P2018-557498)
(86)(22)【出願日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】JP2016088525
(87)【国際公開番号】WO2018116468
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】317015179
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】小澤 和弥
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/107277(WO,A1)
【文献】 特開2004−222195(JP,A)
【文献】 特開2012−058353(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/133105(WO,A1)
【文献】 特開2013−015796(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/016556(WO,A1)
【文献】 特開2004−184979(JP,A)
【文献】 特開2015−184298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00−5/42
H04N 5/66−5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
明又は半透明の映像投写スクリーンを備え、該映像投写スクリーンの背面若しくは前面に映像光を投写して表示するための投写型映像表示装置であって、少なくとも、
前記映像投写スクリーンと、
前記映像投写スクリーンに投写して表示する映像光を生成する映像光生成手段と、
生成した映像光を前記映像投写スクリーンの背面若しくは前面に向けて投写する光学手段と、を備えており、
前記映像投写スクリーンは、前記映像投写スクリーンの背面若しくは前面から入射する映像光のうち、特定の偏波の光を反射するように構成され、
前記映像光生成手段は、比視感度の高い波長の色光による表示位置認識画像を生成する手段を備え、
前記投写型映像表示装置は、その起動後、前記映像光の投写前、または前記映像光の投写開始と同時に、前記表示位置認識画像を投写する、投写型映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の投写型映像表示装置において、
記表示位置認識画像は、前記透明又は半透明の映像投写スクリーンの背面若しくは前面に投写して表示される画面の全部又はその一部に投写される、投写型映像表示装置。
【請求項3】
請求項に記載の投写型映像表示装置において、
記表示位置認識画像は、緑色の色光により構成された部分を備えている、投写型映像表示装置。
【請求項4】
請求項に記載の投写型映像表示装置において、
記表示位置認識画像は、黄色の色光により構成された部分を備えている、投写型映像表示装置。
【請求項5】
請求項に記載の投写型映像表示装置において、
記表示位置認識画像は、オレンジの色光により構成された部分を備えている、投写型映像表示装置。
【請求項6】
請求項2に記載の投写型映像表示装置において、
記表示位置認識画像は、フラッシュしながら表示される部分を備えている、投写型映像表示装置。
【請求項7】
投写型映像表示装置により、空間内において配置された透明又は半透明の映像投写スクリーンの背面若しくは前面に映像光を投写して表示するための映像表示方法であって、
投写して表示する映像光を生成し、
生成した映像光を前記映像投写スクリーンの背面若しくは前面に向けて投写するものにおいて、
前記映像光を前記映像投写スクリーン上に投写する場合、当該映像光の投写の開始前、又は、当該映像光の投写の開始と同時に、比視感度の高い波長の色光による表示位置認識画像を前記映像投写スクリーン上に投写し、さらに、
前記映像投写スクリーンは、前記映像投写スクリーンの背面若しくは前面から入射する映像光のうち、特定の偏波の光を反射するように構成される、映像表示方法。
【請求項8】
請求項に記載の映像表示方法において、
記表示位置認識画像は、前記透明又は半透明の映像投写スクリーンの表示画面の全部又はその一部に表示される、映像表示方法。
【請求項9】
請求項に記載の映像表示方法において、
記表示位置認識画像を、緑色、黄色、オレンジの何れか一つ又は複数の色光により表示される、映像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過式の投射面に背面若しくは前面から映像を投写して映像を表示する投写型映像表示装置、及び、そのための映像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
投写型の映像表示装置は、大型でフラットな映像表示装置として比較的安価に製造することが可能であり、軽量で可搬性にも優れており、テレビジョン受像機としての利用と共に、更には、その特徴を生かして、例えば、教育現場や会議室等における映像表示装置としても幅広く利用されている。
【0003】
かかる投写型の映像表示装置により映像が拡大して投写されるスクリーンとしては、従来の一般的な非透過性のものに限られず、以下の特許文献1や2にも示されるように、設置場所等を考慮して光の透過率を変化させるものや半透過型の反射スクリーンを含め、種々の提案がなされている。更に、近年においては、建物を構成する壁や窓などの構造体をスクリーンとして利用するものとして、特に、以下の特許文献3や4には、透明性の部材に投写される映像表示システムが提案されており、更には、そのための映像表示透明部材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−128343号公報
【特許文献2】特開2006−243693号公報
【特許文献3】特開2016−95456号公報
【特許文献4】WO2015−186630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来技術においては、従来の非透過性のものに代えて、映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する半透過型や透過型のスクリーンを、更には、建物の構造体の一部である窓などをスクリーンとして利用することが可能な投写型の映像表示装置が提案されている。これにより、映像が表示されていない場合には背景が見えるため映像を投写する場所の自由度を大幅に向上することが可能となっている。しかし、以下に説明するように、映像表示装置からの映像の投写を開始する際における映像の視認性を含めた問題点に関しては全く考慮されていない。そのため、透過型のスクリーンに映像を投写可能な映像表示装置にとって必要となる様々な改良が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来技術における課題である、特に、映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する透過型又は半透過型スクリーンに映像を投写する映像表示装置における投写映像の視認性の低下を解消するために達成されたものである。これにより、映像を投写する場所の自由度の向上と共に、投写される映像の視認性をも向上することが可能な改良された投写型映像表示装置、及び、そのための映像表示方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明によれば、その一例として、空間内において配置された透明又は半透明の映像投写スクリーンの背面若しくは前面に映像光を投写して表示するための投写型映像表示装置であって、少なくとも、前記投写して表示する映像光を生成する手段と、前記生成した映像光を前記透明又は半透明の映像投写スクリーンの背面若しくは前面に向けて投写する光学手段とを備えており、前記映像光生成手段は、前記映像の観察者に当該映像が投写される位置を認識させるため映像表示位置認識画面を生成する手段を備えている投写型映像表示装置が提案される。
【0008】
また、上述した目的を達成するため、本発明によれば、投写型映像表示装置により、空間内において配置された透明又は半透明の映像投写スクリーンの背面若しくは前面に映像光を投写して表示するための映像表示方法であって、前記投写して表示する映像光を生成し、前記生成した映像光を前記透明又は半透明の映像投写スクリーンの背面若しくは前面に向けて投写するものにおいて、前記映像光を前記透明又は半透明の映像投写スクリーン上に投写する際、当該映像光の透写の開始前、又は、当該映像光の透写の開始と同時に、前記映像の観察者に当該映像が投写される位置を認識させるため映像表示位置認識画面を前記透明又は半透明の映像投写スクリーン上に投写する映像表示方法が提案される。
【発明の効果】
【0009】
上述した本発明によれば、特に、映像を投写する場所の自由度を向上することの可能で映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する透過型又は半透過型スクリーンに映像を投写する映像表示装置やそのための方法であって、かかる透過型又は半透過型スクリーンに映像を投写して表示する際の映像の課題を解消して、その視認性を向上することが可能となるという優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)、(b)は、本発明の原理を説明するための、リア方式の投写ボード装置(背面投写型映像表示装置)における映像の表示を説明する図である。
図2】(a)、(b)は、本発明の原理を説明するための、フロント方式の投写ボード装置(正面投写型映像表示装置)における映像の表示を説明する図である。
図3】本発明の一実施の形態になる背面投写型映像表示装置における映像表示方法の一例を示す図である。
図4】映像表示位置認識画面として使用する高い波長の色光を示す明所視標準比視感度のグラフを含む図である。
図5】(a)、(b)は、上記映像表示位置認識画面の一例を示す図である。
図6】一実施の形態になるリア方式の投写ボード装置(背面投写型映像表示装置)の全体構造を示す正面図である。
図7】本発明の一実施の形態になるリア方式の投写ボード装置(背面投写型映像表示装置)の全体構造を示す側面図ある。
図8】本発明の一実施の形態になるリア方式の投写ボード装置(背面投写型映像表示装置)の全体構造を示す上面図である。
図9】他の実施の形態になるフロント方式の小型投写ボード装置(前面投写型映像表示装置)の全体構造を示す正面図である。
図10】フロント方式の小型投写ボード装置(前面投写型映像表示装置)の全体構造を示す側面図ある。
図11】フロント方式の小型投写ボード装置(前面投写型映像表示装置)の全体構造を示す上面図である。
図12】上記リア方式及びフロント方式の投写ボード装置に使用される光走査映像投写装置を原理的に示す図である。
図13】上記光走査映像投写装置を構成する光走査部の構造の一例を示す図である。
図14】上記光走査映像投写装置を構成する光走査部の動作の一例(光走査部の位相による振り角の変化)を示す図である。
図15】上記光走査部の一般的な共振動作中における位相と振り角の関係を示す図である。
図16】上記光走査部の一般的な共振動作中における位相と走査座標の関係を示す図である。
図17】上記リア方式の投写ボード装置におけるスクリーンの具体的な構成(サーキュラーフレネルレンズ)を示す図である。
図18】上記リア方式の投写ボード装置におけるスクリーンの具体的な構成(リニアフレネルレンズ)を示す図である。
図19】(a)、(b)は、上記スクリーンのより詳細な構成を示す一部拡大断面図である。
図20】上記フロント方式の投写ボード装置におけるスクリーンの具体的な構成(サーキュラーフレネルレンズ)を示す図である。
図21】上記フロント方式の投写ボード装置におけるスクリーンの具体的な構成(リニアフレネルレンズ)を示す図である。
図22】上記スクリーンのより詳細な構成を示す一部拡大断面図である。
図23】他の実施例である投写型映像表示装置の一例を示す斜視図である。
図24】上記他の実施例である投写型映像表示装置の内部構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の図面において、共通な機能を有する構成要素については、同一符号を付して示し、かつ、一度説明したものについては、その後、その説明を省略することとする。
【0012】
まず、添付の図1には、本発明の一実施の形態である、いわゆる、リア方式の投写ボード装置(即ち、背面投写型映像表示装置)により透明又は半透明の投写スクリーン130に映像を投写する前後の状態を示している。なお、この図においては、投写スクリーン130の背後(観察者の視点Yとは反対側)には、例えば、家具や器物等の物体Sが配置されている。
【0013】
図1(a)は、映像を投写する前の状態を示しており、図からも明らかなように、観察者の眼Yには、透明又は半透明の投写スクリーン130を介して、その反対側に配置された物体Sが視野に入る。そのため、通常、観察者は、投写スクリーン130の存在にもかかわらず、むしろ、その反対側の物体Sに視点を移動し易く、即ち、観察者の眼Yから深度dの位置に視点(焦点)を移動してしまう。
【0014】
これに対し、映像を投写した後の状態では、図1(b)に示すように、投写スクリーン130上に映像が現れるのに伴い、観察者は、その視点を投写された映像へ、即ち、投写スクリーン130上に移動して、即ち、眼Yから深度d’の位置に移動する。
【0015】
このように、特に、映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する透明又は半透明の投写スクリーン130上に映像を拡大投写してする表示する投写型映像表示装置においては、映像の表示の前後において、観察者がその視点を移動させる必要性が生じてしまう。また、このことによれば、例えば、表示された画面の詳細が理解し難くなるなど、投写スクリーン130上に表示される画像の視認性においても問題を生じる可能性が発明者らの検討により明らかとなった。また、特に、表示画面上で所定の操作を可能とする、所謂、インタラクティブな機能を備えた投写型映像表示装置においては、操作するボタン等の位置が操作者である観察者には分かり難くなる(それまで視点を合わせていた投写スクリーン130後方の物体Sの位置と混同し易い)等の課題が指摘された。
【0016】
また、このことは、フロント方式の投写ボード装置(即ち、前面投写型映像表示装置)でも同様であり、図2(a)及び(b)にも示すように、透明又は半透明の投写スクリーン130上への映像表示の前後において、観察者は、観察者がその視点を不意に移動させる必要性が生じてしまう。
【0017】
本発明は、上述した発明者らによる検討の結果に基づいて達成されたものであり、以下にその概要について述べる。
【0018】
すなわち、上述した検討結果からも明らかなように、映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する透明又は半透明の投写スクリーン130上へ映像を投写して表示する場合、観察者に対して、予め、又は、同時に、映像が表示される投写スクリーン130の位置を視覚的に認識させることが重要であることが分かる。そこで、一例として、図3にも示すように、投写型映像表示装置、又は、その映像表示方法において、当該装置の起動の後の映像の表示を開始する期間、特に、その先頭の所定の期間、又は、同時に、観視映像に併せて表示すると良い。
【0019】
より具体的には、例えば、装置の電源スイッチがオン状態になった時点で映像観視者に対して、映像が投写される位置を認識させるための映像である映像表示位置認識画面を表示し、その後に、表示すべき映像を投写して表示する。この時、観視者に最初にマーカ(映像表示位置確認画面)を確認させ(図5(a)で示す)その後、表示すべき映像を投写する(図5(b)に示す)。
【0020】
なお、上述した映像表示位置認識画面としては、比視感度の高い波長の色である緑色(555nm)、又は、やはり比視感度の高い黄色やオレンジ色などを利用して画面を構成することができる(図4を参照)。例えば、図5(a)にも示すように、映像表示位置認識画面500として、投写スクリーン130上の表示画面の全体又はその一部(例えば、その中心部や周辺部)を、当該緑色を含む比視感度の高い色で構成した画面を使用することが考えられる。また、映像表示位置認識画面500としては、当該画面を、図5(b)にも示すように、単独ではなく、表示される映像の一部(例えば、その中心部Cや周辺部P)に、同時に、表示してもよく、更には、フラッシュやその他の方法により、映像が表示される投写スクリーン130の位置を視覚的に認識させることによっても、同様の効果が得られることは、当業者であれば当然であろう。
【0021】
続いて、上述した本発明の原理に基づく投写型映像表示装置、及び、当該装置により映像が投写される透明又は半透明のスクリーンのより具体的な例について、以下に説明する。
<実施例>
図6図8は、映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する透明又は半透明の投写スクリーン130と共に、当該スクリーンの裏面側から映像を投射するリア方式の投写ボード装置(即ち、背面投写型映像表示装置)を備えたシステムの全体構造を示す正面図、側面図、そして、上面図である。なお、この例では、投写スクリーン130として、その投写(表示)面のアスペクト比が、例えば、16:9の横長のものを示している。映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有するこの透明又は半透明の投写スクリーン130は、その周囲を支持枠111により取り囲まれていると共に、その下部の支持枠補強部材110の略中央部には、表示面側に「コ」又は「U」字状に突出したハンドル112が取り付けられている。
【0022】
映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する透明又は半透明の投写スクリーン130は、スクリーン保持部(スタンド)113により、例えば、教室や会議室などを含む室内空間内において、直立した状態、即ち、床面に垂直に配置される。より詳細には、スクリーン保持部(スタンド)113の上部には、外形が箱状のスクリーン保持部114が取り付けられており、上記の投写スクリーン130は、スクリーン保持部114の上面に、着脱自在に、搭載されて固定されている。また、このクリーン保持部(スタンド)113の下端には、その一部を切り欠いた外形略楕円状の脚部115が形成されている(図8を参照)。更に、脚部の底面には、移動用のキャスター116が設けられており、これにより、装置全体としても容易に移動可能な投射ボードを実現している。
【0023】
更に、上記スクリーン保持部114の背面側には、その詳細構造は後に説明する光走査型の映像投写装置をその内部に配置するための部材、即ち、プロジェクタ設置部117が、着脱可能に設けられている。なお、符号118は、プロジェクタ設置部117の一部であって、光走査型の映像投写装置の収納空間を形成する壁部を示している。上述した構成によれば、図にも明らかなように、プロジェクタ設置部117の上に載置するだけで、光走査型の映像投写装置を上記投写スクリーン130に対して所望の位置に配置させることが可能となる。また、図中の符号119は、上記プロジェクタ設置部117の一部に取り付けられ、光走査型の映像投写装置からの映像光を外部に(即ち、投写スクリーン130に向けて)透過させるための透過窓を示しており、例えば、単なる空間として、あるいは、ガラスなどの透明体を嵌め込んでもよい。
【0024】
図9図11は、本発明の他の実施の形態である、例えば、テーブル等の上面に搭載可能な卓上用の小型の投写型映像表示装置であり、上記の実施例とは異なり、スクリーンの表面側から映像を投射する、いわゆる、フロント方式の投写ボード装置(即ち、前面投写型映像表示装置)の全体構造を示す正面図、側面図である。これらの図においても、参照符号130は、映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する透明又は半透明の投写スクリーンを示している。この投写スクリーン130は、その周囲を支持枠111により取り囲まれていると共に、その下部の支持枠補強部材の略中央部には、略楕円形状のスクリーン保持部114が設けられており、上記の投写スクリーン130は、スクリーン保持部114の上に、着脱自在に固定されている。
【0025】
なお、この例では、スクリーン保持部114の前面側には、光走査型の映像投写装置をその内部に配置するための部分、即ち、プロジェクタ設置部117が配置されている。また、図10には、光路折り返しミラー3がプロジェクタ設置部117から飛び出ている様子が示されており、図11には、映像投写装置の上面図が示されている。
<投写型映像表示装置>
続いて、図12には、上述したリア方式及びフロント式の投写ボード装置(背面及び前面投写型映像表示装置)において、所望の映像を上記投写スクリーン130に対して投写する光走査型の映像投写装置を構成する光走査映像投写装置10の一例を原理的に示す。即ち、図において、回動軸を有する走査ミラー(光走査部)1により光源部4からのレーザ光を反射させることによって、レーザ光を走査させることができる。概念的には、変調された各画素201が、走査軌跡202に沿って、像面上で二次元状に走査されることとなり、所望の映像が上記投写スクリーン130に表示される。
【0026】
なお、図中の符号300は、走査ミラー(光走査部)1や光源部4を制御するための制御部であり、例えば、図示のように、所定の演算処理を実行するCPU301、記憶部を形成するRAM302やROM303等により構成される。この制御部300は、上記走査ミラー(光走査部)1の動作を制御すると共に、外部からの映像信号に基づいて光源部4からのレーザ光の発生を制御し、もって、所望の映像光を投写する。
<映像表示位置認識画面>
加えて、制御部300は、CPU301により、予め記憶部であるROM303等に格納された指令を実行することによって、上記図3にも述べた映像表示位置認識画面の表示を実行する。なお、その一例を図5にも示した映像表示位置認識画面は、例えば、予め、記憶部であるROM303等に格納しておくことによれば、容易に形成することが可能であろう。
【0027】
次に、図13を用いて、上記光走査部1での二次元状の偏向作用の詳細について説明する。図の光走査部1において、レーザ光を反射角度で偏向する走査ミラー面1aは、同軸上に走査ミラー面1aを挟んで対向して配置された第1のトーションバネ1bに連結されている。トーションバネ1bは保持部材1cに連結されており、更に、保持部材1cは第2のトーションバネ1dに連結されている。そして、それぞれのトーションバネ1bと1dに関して略対称な位置には、図示しないが永久磁石とコイルが配置されている。これらのコイルは走査ミラー1のミラー面1aに略平行に形成されており、走査ミラー1のミラー面1aが静止した状態にあるときに、ミラー面1aと略平行な磁界を生じさせる。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則によって、ミラー面1aと略垂直なローレンツ力が発生する。
【0028】
これにより、ミラー面1aは、ローレンツ力と、トーションバネ1bと1dの復元力がつりあう位置まで回動する。トーションバネ1bに対しては、ミラー面1aが持つ共振周波数でコイルに交流電流を供給することによって、ミラー面1aは共振動作を行う。同様に、トーションバネ1dに対しては、ミラー面1aと保持部材1cを合わせた共振周波数でコイルに交流電流を供給することによって、ミラー面1aとトーションバネ1bと保持部材1cは共振動作を行う。これによって、2方向について、異なる共振周波数による共振動作が可能となっている。
【0029】
より詳細には、図14において、光走査部の反射面である走査ミラー1の回動角をβ/2とすれば、反射光線の角度である走査角はその2倍でβ変化する。ここで、走査ミラー1と像面20の間になんら光学要素を配置しない場合は、走査角βは像面20での入射角αに等しくなる。従って、ある投射距離に対する走査像の大きさは走査ミラー1の回動角β/2で決まってしまう。
【0030】
次に、図15及び図16を用いて、走査ミラー1の動作である一般的な共振作用について説明する。回動角±β/2の走査ミラー1を共振動作、即ち、正弦波状に駆動した場合、走査ミラー1の向きは、±β/2の範囲で正弦波状に変化する。具体的には、回動角±5.3度の走査ミラー1を用いた場合の例を図15に示すが、走査角は2倍で±10.6度となり、像面での入射角も±10.6度となる。そして、図16の走査座標は、光学要素の配置分の空間を確保した場合での像面での走査座標であるが、図15と似た正弦波状の特徴を持っている。
【0031】
なお、走査ミラー1の駆動方式には、正弦波状の回動角変化となる共振型ミラー以外には、ノコギリ波状の回動角変化となるガルバノミラーも存在するが、高解像度の表示には、駆動周波数が大きい共振型ミラーが適している。
【0032】
また、上記の説明では、上記映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する投写スクリーン130に対して映像を投写する光走査映像投写装置10は、投写スクリーン130の下部、より具体的には、その背面側において周囲の一部に隣接して、即ち、スクリーンの下辺に沿って略中央部に設けられたプロジェクタ設置部117の内部に配置されるとした。しかしながら、光走査映像投写装置10は、上記の例に限定されることなく、上記に代えて、例えば、スクリーンの上辺又は側辺に沿って設置してもよいことは、当業者にとっては当然であろう。また、後にも述べるが、スクリーンの周囲の一部に隣接して設けられる光走査映像投写装置10は、上述した1台にのみ限定されるものではなく、複数台を設置してもよい。
<映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する透明又は半透明スクリーン>
続いて、図17図18には、上記のリア方式の投写ボード装置(背面投写型映像表示装置)における映像が投写されていない場合に背景が見える透過特性を有する透明又は半透明の投写スクリーン130の具体的な構成を示す。この投写スクリーン130は、例えば、ポリカーボネートなどの板又は、PETシートなどのシート状の樹脂材料やガラス板により構成されている。その裏面(即ち、観察者側と反対の光源側)には、図からも明らかなように、連続する三角形(ノコギリ波状)の断面を有し、上述した走査画面を形成する光(レーザ光)を屈折させて観察者(即ち、視聴者)側に向かう光に変更する作用を持つ光路変更手段61が多数形成されている。即ち、この光路変更手段61により、走査画面に略垂直な方向に方向変換され走査画像観視側に出射する。この光路変更手段61の具体例としては、例えば、図17に示すような(偏心)サーキュラーフレネルレンズとして形成してもよく、あるいは、図18に示すようなリニアフレネルレンズとして形成してもよい。
【0033】
更には、図19(a)にも示すように、これらの光路変更手段61の間に、所定の距離の平坦部62を設けて形成してもよい(半透明型)。なお、これら光路変更手段61は、本例では、一例として、30μm〜100μm程度のピッチ(間隔)で形成されている。加えて、図19(b)にも示すように、投写スクリーン130の裏面(即ち、光路変更手段61が形成された面)には、透明な板状の保護板65が設けられてもよい。
【0034】
また、図20図21には、上記のフロント方式の投写ボード装置(前面投写型映像表示装置)における投写スクリーン130の具体的な構成を示す。この投写スクリーン130は、その裏面(即ち、観察者側と反対側)には、連続する三角形(ノコギリ波状)の断面を有し、前面(観視側)から入射する上述した走査画面を形成する光(レーザ光)を屈折させて観察者(即ち、視聴者)側に向かう光に変更する作用を持つ光路変更手段61が多数形成されている。即ち、この光路変更手段61により、走査画面に略垂直な方向に方向変換され走査画像観視側に出射する。この光路変更手段61の具体例としては、例えば、図20に示すような(偏心)サーキュラーフレネルレンズとして形成してもよく、あるいは、図21に示すようなリニアフレネルレンズとして形成してもよい。
【0035】
更に、図22にも示すように、これらの光路変更手段61の間には、所定の距離の平坦部62を設けて形成してもよい(半透明型)。なお、これら光路変更手段61は映像光線が全反射するように素材の屈折率とフレネル角を最適化してもよく、上記の図19(b)に示しように金属膜又は特定の偏波に対して反射率が高くなる金属多層膜から形成される反射膜64を設けてもよい。この光路変更手段61は本例では、一例として、30μm〜100μm程度のピッチ(間隔)で形成されている。加えて、投写スクリーン130の裏面(即ち、光路変更手段61が形成された面)には、透明な板状の保護板65が設けられている。
【0036】
なお、これらの光路変更手段61を形成する傾斜面63には、上述したように例えば、アルミニウムなどの金属膜やTi,Nb,Siなどの金属多層膜が形成されており、これにより、光(レーザ光)の反射面を形成する。なお、本実施例のような斜投写光学系を用いる場合には、特に、フレネル中心が走査画面から外れるような偏心フレネルレンズが好適であろう。他方、リニアフレネルレンズによれば、例えば、ロール工程などにより、その製造が比較的容易であり量産にも適していることから、大型のスクリーンを安価に製造することが可能である。
【0037】
また、投写スクリーン130の光路変更手段61が形成された面に設けられた透明な板状の保護板65によれば、投写スクリーン130を裏側からの機械的な衝撃に対して保護することができる。また、光路変更手段61を外気から遮蔽するここによって空気中の塵等が堆積し難くなり、投写スクリーン130を長期間にわたって良好な状態に維持することも可能となる。
【0038】
このような投写スクリーン130によれば、入射面での反射損失を低減するために全反射方式を採用すれば、反射損出の少ない優れた走査画像を得ることが可能な、換言すれば、光の利用効率の高い超低消費電力の装置を実現することが可能となる。
【0039】
また、その一方で、上記図17図22に示した半透明型のシートからなる投写スクリーン130によれば、映像が投写されていない場合、投写スクリーン130は観察者側から見て透明又は半透明となる。したがって、装置が配置される室内における存在感などを含めて、背面投写型映像表示装置全体の意匠性についても様々な改良が可能となるという利点が得られるであろう。
【0040】
なお、上記に示した投写スクリーン130においても、光路変更手段61の傾斜面63に形成するアルミニウムなどの金属膜の厚さを適宜設定することによれば、所望の透明度(半透明の度合)を得ることが可能となる。一例として、例えば、アルミニウムの金属膜の厚さを略70nm〜80nmとすることによれば、光に対して透過率が50%であり、反射率が50%の投写スクリーン130が得られる。
【0041】
加えて、光走査型映像投写装置から射出されて上記投写スクリーン130の光路変更手段61により所定の方向に反射されるレーザ光は、その反射特性を考慮すれば、S偏光波であることが好ましい。そのため、光走査型映像投写装置の出力部に、P偏光波をS偏光波に変換するためのフィルター等を設けてもよい。
【0042】
以上からも明らかなように、上述した本発明になるリア方式及びフロント方式の投写ボード装置(背面/前面投写型映像表示装置)によれば、走査ミラー(光走査部)により光源部からのコヒーレント光の利用により、即ち、レーザ光を反射させることによって走査させて映像を上述した透明又は半透明の投写スクリーン130上に表示することが可能となる。これにより、可搬性に優れ、消費電力の低減が可能で、かつ、装置の小型・軽量化や意匠性をも含めて、改良された背面投写型映像表示装置が提供されることとなる。
【0043】
また、以上に述べた投写スクリーン130に加えて、上述した従来技術に記載された構造の透明又は半透明型のシートからなるスクリーンを採用することも可能である。更には、建物を構成する透明又は半透明の壁(パーティション)や窓などの構造体をスクリーンとして利用することも可能である。
【0044】
なお、上述したように、投写スクリーン130上へ映像を投写して表示する際には、観察者に対して、予め、又は、同時に、映像が表示される投写スクリーン130の位置を視覚的に認識させるための、所謂、映像表示位置認識画面500を表示する(上記図5を参照)。これにより、例えば、透明又は半透明の窓や壁(パーティション)をスクリーンとして利用して映像を表示する場合でも、観察者に対して違和感を与えることなく、映像を投写して表示することが可能となる。
<その他の実施例>
以上の説明では、背面投写型映像表示装置においては、光源部からのコヒーレント光であるレーザ光を走査ミラー(光走査部)により走査させて映像を形成するものとして述べた。しかしながら、本発明は、それにのみ限定されることなく、例えば、添付の図23図24に示すように、光源P0からの光を液晶表示素子(液晶パネル)P1により映像光に変調した後、レンズL1〜L14やミラー103等を含む光学系を介して透明又は半透明の投写スクリーン130上に投写して表示する一般的な映像投写装置400を採用することも可能であることは言うまでもなかろう。
【0045】
なお、その際においても、スクリーン上へ映像を投写して表示する際には、観察者に対して、予め、又は、同時に、映像が表示されるスクリーン位置を視覚的に認識させるための、所謂、映像表示位置認識画面500(上記図5を参照)を表示する。このことにより、観察者に対して違和感を与えることなく、映像を投写して表示することが可能となる。
【0046】
以上、種々の実施例について詳細に説明したが、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために装置全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
130…投写スクリーン(透明又は半透明スクリーン)、10…光走査映像投写装置、1…光走査部、1a…走査ミラー、400…投写型映像投写装置、500…映像表示位置認識画面。
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