特許第6876766号(P6876766)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876766
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】半割軸受およびすべり軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 9/02 20060101AFI20210517BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20210517BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   F16C9/02
   F16C17/02 Z
   F16C33/10 Z
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-179034(P2019-179034)
(22)【出願日】2019年9月30日
(65)【公開番号】特開2021-55746(P2021-55746A)
(43)【公開日】2021年4月8日
【審査請求日】2020年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 志歩
(72)【発明者】
【氏名】天野 征治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮太
【審査官】 古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−186000(JP,A)
【文献】 特開平7−54847(JP,A)
【文献】 中国実用新案第210599874(CN,U)
【文献】 特開2014−224601(JP,A)
【文献】 特開2019−78377(JP,A)
【文献】 特開2013−36618(JP,A)
【文献】 特開平7−71458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 3/00−9/06
F16C 17/00−17/26
F16C 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸を支承するすべり軸受を構成するようになされた半円筒形状を有する半割軸受であって、
前記半割軸受は、その内周面に形成された少なくとも1つの軸線方向溝を有し、前記軸線方向溝は、前記内周面から前記半割軸受の径方向外側に後退した平滑な溝表面を有し、前記溝表面は、前記半割軸受の軸線方向に垂直な断面において前記径方向外側に向かって凸形状の曲線を形成し、また前記軸線方向に平行な断面において前記軸線方向に延びる直線を形成している、半割軸受において、
前記半割軸受は、前記溝表面に、前記溝表面から前記径方向外側に後退するように形成された複数の軸線方向細溝および複数の周方向細溝をさらに有し、前記複数の周方向細溝および前記複数の軸線方向細溝は、互いに交差するように前記半割軸受の周方向および前記軸線方向にそれぞれ延び、また
前記溝表面からの前記軸線方向細溝の深さが前記溝表面からの前記周方向細溝の深さよりも大きく、また前記溝表面上における前記軸線方向細溝の幅が前記溝表面上における前記周方向細溝の幅よりも大きい、半割軸受。
【請求項2】
前記内周面からの前記軸線方向溝の深さが2〜50μmである、請求項1に記載の半割軸受。
【請求項3】
前記溝表面からの前記周方向細溝の深さが0.05〜3μmであり、前記溝表面上における前記周方向細溝の幅が5〜85μmであり、また前記周方向細溝のピッチが5〜100μmである、請求項2に記載の半割軸受。
【請求項4】
前記溝表面からの前記軸線方向細溝の深さが0.3μm〜10μmであり、前記溝表面上における前記軸線方向細溝の幅が10〜150μmであり、また前記軸線方向細溝のピッチが10〜200μmである、請求項2に記載された半割軸受。
【請求項5】
複数の前記軸線方向溝が前記内周面に形成されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の半割軸受。
【請求項6】
前記複数の軸線方向溝が前記周方向に略等間隔に形成されている、請求項5に記載の半割軸受。
【請求項7】
前記軸線方向溝が、前記半割軸受の軸線方向のいずれの端面でも開口していない、請求項1から6までのいずれか一項に記載の半割軸受。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の半割軸受を有する、内燃機関のクランク軸を支承するための円筒形状のすべり軸受。
【請求項9】
前記半割軸受の対からなる、請求項8に記載のすべり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸を支承するすべり軸受を構成する半割軸受に関するものである。また本発明は、この半割軸受を有し、内燃機関のクランク軸を支承する円筒形状のすべり軸受にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のクランク軸は、そのジャーナル部において、一対の半割軸受からなる主軸受を介して内燃機関のシリンダブロック下部に支承される。主軸受を潤滑するために、オイルポンプによって吐出された潤滑油が、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受の壁に形成された貫通口を通じて、主軸受の内周面に沿って形成された潤滑油溝内に送り込まれる。ジャーナル部の直径方向には第1潤滑油路が貫通形成され、この第1潤滑油路の両端開口が主軸受の潤滑油溝と連通するようになっている。さらに、クランクアーム部を通る第2潤滑油路がジャーナル部の第1潤滑油路から分岐して形成され、クランクピンの直径方向に貫通形成された第3潤滑油路に連通している。したがってシリンダブロック壁内のオイルギャラリーから貫通口を通じて主軸受の内周面に形成された潤滑油溝内に送り込まれた潤滑油は、第1潤滑油路、第2潤滑油路および第3潤滑油路を経て、第3潤滑油路の末端に開口した吐出口から、一対の半割軸受からなるコンロッド軸受の摺動面とクランクピンとの間にも供給される(例えば特許文献1参照)。このようにして、クランク軸表面と、主軸受の摺動面およびコンロッド軸受の摺動面との間に油が供給される。
【0003】
従来から、主軸受やコンロッド軸受のようなすべり軸受においてクランク軸との摺動時の焼付損傷を低減するために、すべり軸受を構成する半割軸受の摺動面に複数の微小な凹部を形成することが提案されている(例えば特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−277831号公報
【特許文献2】実開昭58−149622号公報
【特許文献3】特開2008−95721号公報
【特許文献4】特表2000−504089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2〜4に記載されるように摺動面に複数の微小な凹部を形成した従来の半割軸受では、内燃機関の運転時に(特にクランク軸が高速回転する運転条件下で)半割軸受の摺動面とクランク軸表面とが近接する動作が繰り返され、摺動面とクランク軸表面とが最接近する瞬間には凹部内で油が圧縮され高温となる。凹部内で高温となった油が半割軸受の摺動面とクランク軸表面と間に流出すると、摺動面は温度が上昇し焼付きやすくなる。さらに、油の粘度が低下するため、摺動面とクランク軸表面が直接接触し、損傷が起きやすくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって本発明の目的は、内燃機関の運転時に高温となった油を外部に排出することで焼付損傷を起こり難くする内燃機関のクランク軸のすべり軸受を構成する半割軸受、およびそのすべり軸受を提供することである。
【0007】
本発明に係る半割軸受は、内燃機関のクランク軸を支承するすべり軸受を構成するようになされている。この半割軸受は半円筒形状であり、また摺動面を含む内周面を有する。また半割軸受は、内周面に形成された少なくとも1つの軸線方向溝を有する。軸線方向溝は、内周面から半割軸受の径方向外側に後退した平滑な溝表面を有し、溝表面は、半割軸受の軸線方向に垂直な断面視において径方向外側に向かって凸形状の曲線を形成し、また軸線方向に平行な断面において軸線方向に延びる直線を形成する。半割軸受はさらに、溝表面に、溝表面から径方向外側に後退するように形成された複数の周方向細溝および複数の軸線方向細溝を有し、これら複数の周方向細溝および複数の軸線方向細溝は、互いに交差するように半割軸受の周方向および軸線方向にそれぞれ延びている。軸線方向溝の溝表面からの軸線方向細溝の深さは、軸線方向溝の溝表面からの周方向細溝の深さよりも大きく、また軸線方向溝の溝表面における軸線方向細溝の幅は、軸線方向溝の溝表面における周方向細溝の幅よりも大きい。
【0008】
本発明の一実施形態では、内周面から溝表面の最深部までの長さである軸線方向溝の深さは2〜50μmであることが好ましい。また軸線方向溝の周方向長さは、半割軸受の内径全周のうちの、中心角で約0.5〜10°の範囲内であることが好ましい(例えば軸線方向溝の周方向長さは、内燃機関の半割軸受の内径がφ50mmである場合、約1〜4mmであることが好ましい)。
【0009】
本発明の一実施形態では、軸線方向溝の溝表面からの周方向細溝の深さは0.05〜3μmであることが好ましい。また、軸線方向溝の溝表面における周方向細溝の幅は5〜85μmであることが好ましい。さらに、周方向細溝のピッチは5〜100μmであることが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態では、軸線方向溝の溝表面からの軸線方向細溝の深さは0.3μm〜10μmであることが好ましい。また、軸線方向溝の溝表面における軸線方向細溝の幅は10〜150μmであることが好ましい。さらに、軸線方向細溝のピッチは10〜200μmであることが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、複数の軸線方向溝が半割軸受の内周面に形成されていてもよい。
【0012】
本発明の一実施形態では、複数の軸線方向溝が、周方向に略等間隔に、半割軸受の内周面に形成されていてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態では、軸線方向溝が、半割軸受の軸線方向のいずれの端面にも達しておらず、したがっていずれの端面でも開口していなくてもよい。
【0014】
また本発明は、上記半割軸受を有する、内燃機関のクランク軸を支承するための円筒形状のすべり軸受にも関するものである。換言すれば、このすべり軸受は、少なくとも一方が上記半割軸受である一対の半割軸受から構成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】内燃機関のクランク軸の軸受装置を示す概略図である。
図2】一対の半割軸受に対するクランクピンの動きを示す図である。
図3】本発明の第1実施形態による半割軸受を軸線方向から見た図である。
図4図2に示す半割軸受を内周面側から見た平面図、および軸線方向溝の溝表面の拡大図である。
図5】溝表面を拡大して示す概略斜視図である。
図6図4の線A−Aに沿った軸線方向溝の周方向断面図である。
図7図4の線B−Bに沿った軸線方向溝の軸線方向断面図である。
図8図7を拡大して示す拡大断面図である。
図9図6を拡大して示す拡大断面図である。
図10】クランク軸の高速回転時の軸線方向溝の油の流れを示す図である。
図11】クランク軸の低速から中速回転時の軸線方向溝の油の流れを示す図である。
図12】本発明の第2実施形態による一対の半割軸受およびクランクピンを軸線方向から見た図である。
図13図12に示す半割軸受を内周面側から見た平面図である。
図14】本発明の第3実施形態による一対の半割軸受およびクランクピンを軸線方向から見た図である。
図15図14に示す半割軸受を内周面側から見た平面図である。
図16】本発明の第4実施形態による一対の半割軸受およびクランクピンを軸線方向からから見た図である。
図17図16に示す半割軸受を内周面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1に内燃機関の軸受装置1を概略的に示す。この軸受装置1は、シリンダブロック8の下部に支承されるジャーナル部6と、ジャーナル部6と一体に形成されてジャーナル部6を中心として回転するクランクピン5と、クランクピン5に内燃機関から往復運動を伝達するコンロッド2とを有している。また軸受装置1は、クランク軸を支承するすべり軸受として、ジャーナル部6を回転自在に支承する主軸受4と、クランクピン5を回転自在に支承するコンロッド軸受3とをさらに有している。
【0018】
なお、クランク軸は複数のジャーナル部6と複数のクランクピン5とを有するが、ここでは説明の便宜上、1つのジャーナル部6および1つのクランクピン5を図示して説明する。図1において、紙面奥行き方向の位置関係は、ジャーナル部6が紙面の奥側で、クランクピン5が手前側となっている。
【0019】
ジャーナル部6は、一対の半割軸受41、42によって構成される主軸受4を介して、内燃機関のシリンダブロック下部81に軸支されている。図1で上側にある半割軸受41には、内周面全長に亘って油溝41aが形成されている。またジャーナル部6は、直径方向に貫通する潤滑油路6aを有し、ジャーナル部6が矢印X方向に回転すると、潤滑油路6aの両端の入口開口6cが交互に主軸受4の油溝41aに連通する。
【0020】
クランクピン5は、一対の半割軸受31、32によって構成されるコンロッド軸受3を介して、(ロッド側大端部ハウジング22およびキャップ側大端部ハウジング23によって構成される)コンロッド2の大端部ハウジング21に軸支されている。
【0021】
ジャーナル部6の第1の潤滑油路6aから分岐してクランクアーム部(図示せず)を通る第2の潤滑油路5aが形成されており、この第2の潤滑油路5aは、クランクピン5の直径方向に貫通形成された第3の潤滑油路5bに連通している。
【0022】
したがって上述したように、オイルポンプによって吐出された潤滑油は、シリンダブロック壁内に形成されたオイルギャラリーから主軸受4の壁に形成された貫通口を通じて、主軸受4の内周面に沿って形成された油溝41a内に送り込まれ、ジャーナル部6と主軸受4の間に形成される隙間に供給される。
【0023】
一方、潤滑油は、第1の潤滑油路6a、第2の潤滑油路5aおよび第3の潤滑油路5bを経て、第3の潤滑油路5bの端部の吐出口5cから、クランクピン5とコンロッド軸受3の間に形成される隙間にも供給される。
【0024】
一般に主軸受4およびコンロッド軸受3は、それらの摺動面とクランク軸表面(ジャーナル部6およびクランクピン5の表面)との間の油に圧力を発生させることで、クランク軸6からの動的負荷を支承する。内燃機関の運転時、主軸受4およびコンロッド軸受3の摺動面に加わる負荷の大きさおよび方向は常に変動し、その負荷と釣り合う油膜圧力を発生させるように、ジャーナル部6およびクランクピン5の中心軸線が主軸受4およびコンロッド軸受3の軸受中心軸に対して偏心しながら移動する。このため、主軸受4およびコンロッド軸受3の軸受隙間(クランク軸表面と摺動面との間の隙間)は、摺動面のいずれの位置においても常に変化する。例えば4サイクル内燃機関ではコンロッド軸受3や主軸受4に加わる負荷は燃焼行程において最大となるが、この燃焼行程中、コンロッド軸受3が支承するクランクピン5は、図2に示すように紙面上側の半割軸受31の周方向中央部付近の摺動面70に向かう方向(矢印Q)に移動し、それによりクランクピン5の表面が半割軸受31の周方向中央部付近の摺動面70と最も接近するとともに、この移動方向に負荷が加わる。
なお、燃焼行程中の主軸受4においては、図1に示す紙面下側の軸受キャップ82に組み付けられた半割軸受42の周方向中央部付近の摺動面に向かう方向に負荷が加わり、ジャーナル部6の表面は下側の半割軸受42の周方向中央部付近の摺動面と最も接近する。
【0025】
複数の微小な凹部を摺動面に形成した従来技術による半割軸受では、微小な凹部を有する半割軸受の摺動面とクランク軸表面とが、離間した状態から相対的に近接するように動き、そして最接近したとき、凹部内の油は圧縮されて高圧に、したがって高温になり、且つ摺動面とクランク軸表面との間の隙間に流出する。このため摺動面の温度が上昇し、焼付きが生じやすくなる。さらに、油の粘度が低下することにより、摺動面とクランク軸表面とが直接接触し、損傷が起きやすくなる。
【0026】
本発明は、このような従来技術の問題に対処するものである。以下、本発明の半割軸受をコンロッド軸受に適用した実施形態について説明する。しかし、本発明の半割軸受はコンロッド軸受への適用に限定されず、主軸受に適用してもよいことが理解されよう。
また、コンロッド軸受3または主軸受4を構成する一対の半割軸受のうち両方が発明の半割軸受であってもよく、あるいは一対の半割軸受のうちの一方が発明の半割軸受であり、他方が摺動面に軸線方向溝を有さない従来の半割軸受であってもよい。
【0027】
(第1実施形態)
図3は、本発明に係る半割軸受31、32の第1実施形態を軸線方向から見た図である。コンロッド軸受3は、半割軸受31、32の周方向端面76同士を突き合わせ、全体として円筒形状に組み合わせることによって構成される。本実施形態において、円筒形状の内周面7は摺動面70を有する。
【0028】
図2および3に示すように、半割軸受31、32の壁厚は周方向に亘って一定であることが好ましい。しかし、壁厚は周方向中央部で最大で、両周方向端面76側へ向かって連続的に減少していてもよい。
【0029】
図4は、1つの軸線方向溝71が摺動面70に配置された半割軸受31、32を摺動面70側から見た図である。しかし、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、例えば複数の軸線方向溝71が摺動面70の軸線方向に亘って形成されていてもよい。なお、理解を容易にするため、各図面において軸線方向溝71はノンスケールで描かれている。
【0030】
図3および4に示すように、軸線方向溝71は、摺動面70から径方向外側に向かって後退した平滑な溝表面71Sを有する。また図4の拡大図に示すように、この溝表面71Sには、半割軸受31、32の周方向に延びる複数の周方向細溝71Cと、軸線方向に延びる複数の軸線方向細溝71Aとが形成されている。したがって各周方向細溝71Cの伸長方向は、各軸線方向細溝71Aの伸長方向と垂直であることが理解されよう。
なお、複数の周方向細溝71Cは半割軸受31、32の周方向と平行な方向に延びるが、周方向に対し僅かに傾斜すること(最大1°)は許容される。同様に、複数の軸線方向細溝71Aは半割軸受31、32の軸線方向と平行な方向に延びるが、軸線方向に対し僅かに傾斜すること(最大1°)は許容される。
周方向細溝71Cは軸線方向溝71の縁から対向する縁まで延びていることが望ましく、また軸線方向細溝71Aは半割軸受31、32の一方の軸線方向端面77から他方の軸線方向端面77まで延びていることが望ましい。
図5は、溝表面71Sを拡大して示す概略斜視図である。理解されるように、軸線方向溝71の平滑な溝表面71Sは複数の周方向細溝71Cと複数の軸線方向細溝71Aの間に複数の小表面71S’を有し、したがって溝表面71Sと複数の周方向細溝71Cとは、図4に示す線B−Bに沿って交互に配置されている。同様に、溝表面71Sと複数の軸線方向細溝71Aとは、図4に示す線A−Aに沿って交互に配置されている。小表面71S’は、溝や突起などの形成されていない平滑な面であるが、(周方向細溝や軸線方向細溝に比べて十分小さい)微小な凹凸が存在してもよい。
【0031】
図6は、図4に示す軸線方向溝71のA-A断面であり、図7は、図4に示す軸線方向溝71のB−B断面の拡大図である。図6に示す摺動面70からの軸線方向溝71の深さ(軸線方向溝71に隣接する摺動面70からの軸線方向溝71Aの最深部までの深さ)Dは、2〜50μmであることが好ましく、2〜25μmであることがより好ましい。また軸線方向溝71の周方向長さLは、半割軸受31の内径全周のうちの、中心角で約0.5〜10°の範囲内であることが好ましい(例えば軸線方向溝71の周方向長さLは、内燃機関の半割軸受の内径がφ50mmである場合、約1〜4mmであることが好ましい)。
軸線方向溝71の深さDが浅すぎると、軸受外部へ排出される高温油量が少なすぎてしまう。反対に深さDが深すぎると、軸受外部へ排出される油量が多すぎて摺動面への給油が極端に減ってしまう。軸線方向溝71の周方向長さLが短すぎると、軸受外部へ排出される高温油量が少なすぎてしまう。反対に軸線方向溝71の周方向長さLが長すぎると、軸受外部へ排出される油量が多すぎて摺動面への給油が極端に減ってしまう。
【0032】
図8は、図7に示す軸線方向溝71のB−B断面の拡大図である。図8に示す周方向細溝71Cの深さDC(周方向細溝71Cの長手方向に垂直な断面における、周方向細溝71Cに隣接する溝表面71Sからの周方向細溝71Cの最深部まで深さ)は、0.05〜3μmであることが好ましい。周方向細溝71Cの深さDCは、軸線方向溝71の深さDよりも小さくなされる。
また周方向細溝71Cの幅WC(溝表面71Sにおける周方向細溝71Cの軸線方向の長さ)は、5〜85μmであることが好ましい。さらに、軸線方向溝71の溝表面71Sにおける周方向細溝71Cの軸線方向のピッチPC(隣接する周方向細溝71Cの最深部の間の軸線方向の距離)は、5〜100μmであることが好ましい。
周方向細溝71Cの深さDCや幅WCが上記寸法範囲から外れて小さすぎると、内燃機関のクランク軸の低速から中速回転時に周方向細溝71Cから流れる油が極端に減少し、摺動面70への給油が不足してしまう。反対に深さDCや幅WCが大きすぎると、内燃機関のクランク軸の高速回転時に軸線方向溝71内の高温油が多く摺動面70へ送られ、外部へ排出され難くなる。
【0033】
図9は、図6に示す軸線方向溝71のA−A断面の拡大図である。図9に示す軸線方向細溝71Aの深さDA(軸線方向細溝71Aの長手方向に垂直な断面における、軸線方向細溝71Aに隣接する溝表面71Sからの軸線方向細溝71Aの最深部までの深さ)は、0.3〜100μmであることが好ましい。軸線方向細溝71Aの深さDAは、軸線方向溝71の深さDよりも小さくなされる。
また軸線方向細溝71Aの幅WA(溝表面71Sにおける軸線方向細溝71Aの周方向の長さ)は、10〜150μmであることが好ましい。さらに、軸線方向溝71の溝表面71Sにおける軸線方向細溝71Aの周方向のピッチPA(隣接する軸線方向細溝71Aの最深部の間の周方向の距離)は、10〜200μmであることが好ましい。
軸線方向細溝71Aの深さDAや幅WAが上記寸法範囲から外れて小さすぎると、内燃機関のクランク軸の高速回転時に軸線方向溝71内の高温油が外部に排出され難くなり、摺動面70へ送られてしまう。反対に深さDAや幅WAが大きすぎると、内燃機関のクランク軸の低速から中速回転時に軸線方向溝71内の油が外部に排出されすぎ、摺動面70への給油が不足してしまう。
【0034】
溝表面(周方向細溝および軸線方向細溝を除いた軸線方向溝の表面)71Sは、半割軸受31、32の軸線方向に垂直な断面(図4のA−A断面)において、半割軸受31、32の径方向外側に向かって膨出する曲線、すなわち径方向外側に凸形状の曲線である(図6参照)。なお、周方向細溝71Cおよび軸線方向細溝71Aもまた、半割軸受31、32の軸線方向に垂直な断面において、半割軸受31、32の径方向外側に膨出するように形成されている。溝表面71Sは、半割軸受31、32の軸線方向に平行な断面(図4のB−B断面)において、摺動面70から半割軸受31、32の径方向外側に後退しており、且つ軸線方向に延びる直線である(図7参照)。
【0035】
周方向細溝71CのピッチPCおよび軸線方向細溝71AのピッチPAが上記寸法範囲から外れて大きすぎ、且つ周方向細溝71Cの幅WCおよび軸線方向細溝71Aの幅WAが小さすぎる場合、平滑な溝表面71Sが極端に大きくなる。この場合、摺動面70とクランクピン5が最接近した際に溝表面71S上の油に圧力が発生するが、周方向細溝71Cの幅WCが小さいためクランク軸の低速から中速回転時に摺動面70への給油が少なくなり、また軸線方向細溝71Aの幅WAが小さいためクランク軸の高速回転時に高温となった油の排出量が少なくなる。このように、溝表面71Sが極端に大きくなると摺動面70とクランクピン5が直接接触しやすくなる。
反対に周方向細溝71CのピッチPCおよび軸線方向細溝71AのピッチPAが上記寸法範囲から外れて小さすぎ、且つ周方向細溝71Cの幅WCおよび軸線方向細溝71Aの幅WAが大きすぎる場合、溝表面71Sが極端に小さくなる。この場合、圧力が発生する範囲が小さく、クランクピン5の支承が不十分となるため、摺動面70とクランクピン5が直接接触しやすくなる。
また、溝表面71Sがない(軸線方向細溝71Aが周方向に直接連なるように、および/または周方向細溝71Cが軸線方向に直接連なるように配置される)場合、摺動面70とクランクピン5が最接近した際に軸線方向溝71内で油が圧縮され難く、圧力が発生し難くいため、摺動面70とクランクピン5が直接接触しやすくなる。
【0036】
本実施形態では、軸線方向細溝71Aは、軸線方向溝71の溝表面71Sからの深さDAが軸線方向細溝71Aの伸長方向(長手方向)に亘って一定であり、且つ幅WAが軸線方向細溝71Aの伸長方向に亘って一定であるように形成されている。なお、軸線方向細溝71Aの断面形状はU形状であることが好ましいが(図9参照)、U形状に限定されず、他の形状であってもよい。
しかし、軸線方向細溝71Aの深さDAや幅WAは、軸線方向細溝71Aの伸長方向に沿って変化していてもよい。この場合、軸線方向細溝71Aの深さDAおよび幅WAは上述のとおり最大溝深さおよび最大溝幅であり、これらの最大値が上記寸法範囲内であることが好ましい。
【0037】
また本実施形態では、周方向細溝71Cは、軸線方向溝71の溝表面71Sからの深さDCが、周方向端部を除き周方向細溝71Cの伸長方向(長手方向)に亘って一定であり、且つ幅WCが周方向細溝71Cの伸長方向に亘って一定であるように形成されている。なお、周方向細溝71Cの断面形状もまたU形状であることが好ましいが(図8参照)、U形状に限定されず、他の形状であってもよい。
しかし、周方向細溝71Cの深さDCや幅WCは、周方向細溝71Cの伸長方向に沿って変化していてもよい。この場合、周方向細溝71Cの深さDCおよび幅WCは上述のとおり周方向細溝71Cの最大溝深さおよび最大溝幅であり、これらの最大値が上記寸法範囲内であることが好ましい。
【0038】
本実施形態のコンロッド軸受3は、一対の半割軸受のそれぞれの周方向端面76を突き合わせ、全体として円筒形状に組み合わせることによって形成される。一対の半割軸受のうちの両方が本発明の半割軸受31、32であることが好ましいが、一方のみが本発明の半割軸受31、32であってもよい。半割軸受31、32は、Cu軸受合金またはAl軸受合金である摺動層を有していてもよい。あるいは、半割軸受31、32は、Fe合金製の裏金層上にCu軸受合金またはAl軸受合金の摺動層を有していてもよい。また、円筒形状の内周面の摺動面70および溝表面71S(摺動層の表面)に、軸受合金よりも軟質なBi、Sn、Pbのいずれか1種からなる、あるいはこれら金属を主体とする合金からなる表面部や、合成樹脂を主体とする樹脂組成物からなる表面部を有していてもよい。但し、軸線方向溝71の溝表面71Sは、このような表面部を有さない方が好ましい。軸線方向溝71の溝表面71Sや、周方向細溝71Cおよび軸線方向細溝71Aの表面が軟質であると、軸線方向溝71の平滑な溝表面71Sに塑性変形や過度な弾性変形などが発生し、油圧が十分に発生せず、摺動面70と軸5が接触しやすくなるからである。
【0039】
上記のとおり本発明の半割軸受には、平滑な溝表面71Sを有する軸線方向溝71が摺動面70に形成され、さらに複数の周方向細溝71Cおよび軸線方向細溝71Aが溝表面71Sに形成されるが、この半割軸受により焼付損傷が減少する理由を以下に説明する。
内燃機関のクランク軸が高速回転する運転条件において、軸線方向溝71を有する半割軸受31の摺動面70とクランクピン5の表面は、離間した状態から相対的に近接して動作する。図2は、摺動面70とクランクピン5の表面とが最近接した状態を示す。このとき、軸線方向溝71内の油は圧縮されて高圧となり、したがって高温となるが、半割軸受31、32を内周面側から見た図10に矢印Mで示すように、高温の油は軸線方向溝71の表面に形成された軸線方向細溝71Aに誘導されて、大部分が外部へ軸線方向に排出される。
このため高温の油が摺動面70に流出せず、摺動面70の温度上昇を抑制できるので、焼付損傷を低減することができる。このとき、軸線方向細溝71Aの深さは周方向細溝71Cの深さよりも大きいことが必要である。もし周方向細溝71Cが軸線方向細溝71Aよりも深いと、軸線方向溝71内で高温となった油が周方向細溝71Cに誘導され、摺動面に流れてしまい、外部に排出され難い。それゆえ、油が軸線方向細溝71Aに誘導され、外部に排出されやすくなる為に、
軸線方向細溝71Aの深さ>周方向細溝71Cの深さ
という関係が必要である。
【0040】
またクランク軸が低速から中速回転する内燃機関の(常用)運転条件においては、摺動面70とクランクピン5の表面が近接する動作時でもそれらの間の隙間が大きく、軸線方向溝71内の油が高温にならない。このとき、軸線方向溝71の溝表面71Sに周方向細溝71Cも形成されているため、軸線方向溝71の軸線方向端部における油の外部への排出の抵抗となり、油は図11に矢印Nで示すように周方向細溝71Cに誘導されて摺動面70へ送られる。したがって摺動面70に潤沢な油が供給され、焼付損傷を起き難くさせることができる。
【0041】
軸線方向溝71が溝表面71Sのみからなる場合、または溝表面71Sに軸線方向細溝71Aのみが形成され、周方向細溝71Cが形成されていない場合、クランク軸が低速から中速回転する内燃機関の(常用)運転条件において摺動面70とクランクピン5の表面が近接する動作時にも、油は軸線方向溝71により外部に排出されてしまう。
【0042】
また、軸線方向溝71の溝表面71Sに周方向細溝71Cのみが形成され、軸線方向細溝71Aが形成されていない場合、クランク軸が連続して高速回転する内燃機関の運転条件において軸線方向溝71内で高温となった油は周方向細溝71Cによって摺動面側へ送られ、外部に排出され難くなる。
【0043】
また、周方向細溝71Cが軸線方向細溝71Aよりも深い場合、軸線方向溝71内で高温となった油は周方向細溝71Cに誘導されて摺動面に流れてしまうため、外部に排出され難い。
【0044】
軸線方向溝71が平滑な溝表面71Sを有することで、摺動面70とクランクピン5の表面が最接近する瞬間に軸線方向溝71内の油が圧縮され高圧となるが、軸線方向溝71内で瞬間的に高圧となった油により、軸線方向溝71に隣接する摺動面70とクランクピン5の表面が直接接触することが防止される。
【0045】
(第2実施形態)
以下、本発明の非限定的な他の実施形態について説明する。
図12および13は、複数の軸線方向溝71が内周面の全周に亘って設けられた半割軸受31を示す。なお、半割軸受31、32の内周面7は、摺動面70と、両周方向端面76に隣接して形成されたクラッシュリリーフ72とを有している。他の構成は既に説明した半割軸受31、32と同じである。
この実施形態では、形状や寸法が同じである複数の軸線方向溝71が内周面7のほぼ全面に略等間隔に設けられている。なお、図13は、半円筒形状の半割軸受31を内周面側からから見た平面図であり、このため周方向端面76付近の軸線方向溝71の形状は歪んで描かれている。また図13では、周方向細溝71Cおよび軸線方向細溝71Aは省略され、示されていない。
【0046】
クラッシュリリーフ72は、半割軸受31、32の周方向端部領域において壁部の厚さを本来の摺動面70から径方向に減じることによって形成される面のことであり、例えば一対の半割軸受31、32をコンロッド2に組み付けた時に生じ得る半割軸受31、32の周方向端面76の位置ずれや変形を吸収するために形成される。したがってクラッシュリリーフ72の表面の曲率中心位置は、その他の領域における摺動面70の曲率中心位置と異なる(SAE J506(項目3.26および項目6.4)、DIN1497、セクション3.2、JIS D3102参照)。一般に、乗用車用の小型の内燃機関用軸受の場合、半割軸受の円周方向端面におけるクラッシュリリーフ72の深さ(本来の摺動面からクラッシュリリーフ72までの距離)は0.01〜0.05mm程度である。
【0047】
4サイクル内燃機関の中でも高回転型のエンジンではクランク軸が触れ回る傾向があり、半割軸受31、32の全周で摺動面70とクランクピン5の表面が接近し、直接接触が生じやすい。本実施形態の半割軸受31、32の軸線方向溝71は、半割軸受31の全周に設けられているため、クランク軸が連続して高速回転する内燃機関の運転条件においても、軸線方向溝71内で高温となった油を排出する箇所が多くなる。したがって摺動面70の温度上昇を抑制することができ、半割軸受31の摺動面70とクランクピン5の表面とが直接接触し難くなる。
【0048】
なお、軸線方向溝71の形成範囲は、半割軸受31の内周面7の周方向中央部付近のみに限定されず、周方向の任意の範囲に形成することができる。さらに、軸線方向溝71はクラッシュリリーフ72に形成されていてもよい。また、図12および13には5つの軸線方向溝71が描かれているが、これに限定されない。
【0049】
(第3実施形態)
図14および15は、複数の軸線方向溝71が内周面の周方向の一部に設けられた半割軸受31を示す。半割軸受31、32の内周面7は、摺動面70と、両周方向端面76に隣接して形成されたクラッシュリリーフ72とを有している。他の構成は既に説明した半割軸受31、32と同じである。なお、図14では、周方向細溝71Cおよび軸線方向細溝71Aは省略され、示されていない。
この実施形態では、形状や寸法が同じである複数の軸線方向溝71が、内周面7の周方向の一部に設けられている。なお、図15は、半円筒形状の半割軸受31を内周面側からから見た平面図であり、このため周方向端面76付近の軸線方向溝71の形状は歪んで描かれている。
【0050】
本実施形態の半割軸受31は、内周面7の一部に複数の軸線方向溝71が設けられているため、クランク軸が連続して高速回転する内燃機関の運転条件においても、軸線方向溝71内で高温となった油を排出する箇所が多くなる。したがって摺動面70の温度上昇を抑制することができる。さらに、内周面7の全周に亘って軸線方向溝71を形成した場合と比較して、摺動面70によりクランクピン5を支承する能力が高いため、半割軸受31の摺動面70とクランクピン5の表面とが直接接触し難くなる。
なお、運転時に半割軸受31、32の内周面7の周方向中央部に近いほどクランクピン5の表面との接触が生じやすい仕様の内燃機関の場合、本実施形態とは異なり、複数の軸線方向溝71を、半割軸受31の内周面7の周方向中央部近くに配置することもできる。
【0051】
上述のように内燃機関の仕様によって軸線方向溝71の位置や数を変更することができる。また軸線方向溝71はクラッシュリリーフ72に形成されてもよい。図14および15には6つの軸線方向溝71が描かれているが、これに限定されない。
【0052】
(第4実施形態)
図16および17は、軸線方向溝71が半割軸受31の軸線方向端面77に達しておらず、軸線方向溝71が軸線方向に閉塞された実施形態を示す。これにより、油が過剰に排出されることが防止される。
なお、図17では、周方向細溝71Cおよび軸線方向細溝71Aは省略され、示されていない。また図16および17には1つの軸線方向溝71が描かれているが、これは一例にすぎず、軸線方向に閉塞された構成は、上述のいずれの実施形態にも適用することができる。本実施例において、軸線方向溝71は、その軸線方向長さL2の中央が半割軸受31の軸線方向長さL1の中央と一致するように形成される。また軸線方向溝71は、その軸線方向長さL2が、半割軸受31の軸線方向長さL1の70%〜95%となるように形成されることが望ましい。
【0053】
本実施形態では、周方向細溝71Cは、軸線方向溝71の溝表面71Sからの深さDCが、周方向端部を除き周方向細溝71Cの伸長方向(長手方向)に亘って一定であり、且つ幅WCが周方向細溝71Cの伸長方向に亘って一定であるように形成されている。なお、周方向細溝71Cの断面形状はU形状であることが好ましいが、U形状に限定されず、他の形状であってもよい。
しかし、周方向細溝71Cの深さDCや幅WCは、周方向細溝71Cの伸長方向に沿って変化していてもよい。この場合、周方向細溝71Cの深さDCおよび幅WCは上述のとおり周方向細溝71Cの最大溝深さおよび最大溝幅であり、これらの最大値が上記寸法範囲内であることが好ましい。
【0054】
上記説明は、本発明の半割軸受を内燃機関のクランク軸のクランクピンを支承するコンロッド軸受に適用した例を用いてなされているが、本発明の半割軸受は、クランク軸のジャーナル部を支承する主軸受を構成する一対の半割軸受の一方または両方に適用することもできる。また半割軸受は、例えば油穴や油溝をさらに有していてもよく、また軸線方向溝71を除く摺動面の全体に半割軸受の周方向に延びる複数の微細溝部を有していてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 軸受装置
2 コンロッド
3 コンロッド軸受
31、32 半割軸受
4 主軸受
41、42 半割軸受
41a 油溝
5 クランクピン
5a、5b 潤滑油路
5c 吐出口
6 ジャーナル部
6a 潤滑油路
6c 入口開口
7 内周面
70 摺動面
72 クラッシュリリーフ
71 軸線方向溝
71C 周方向細溝
71A 軸線方向細溝
71S 平滑面
71S’ 小表面
76 周方向端面
D 軸線方向溝の深さ
DA 軸線方向細溝の深さ
DC 周方向細溝の深さ
WA 軸線方向細溝の幅
WC 周方向細溝の幅
PA 軸線方向細溝のピッチ
PC 周方向細溝のピッチ
L 軸線方向溝の周方向の長さ
L1 半割軸受の軸線方向の長さ
L2 軸線方向溝の軸線方向の長さ
Q クランクピンの移動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17