(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る接合体を用いたセルスタック装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、セルスタック装置を示す斜視図である。なお、
図1において、いくつかの燃料電池セルの記載を省略している。
【0020】
[セルスタック装置]
図1に示すように、セルスタック装置100は、マニホールド2(金属部材の一例)と、複数の燃料電池セル10(電気化学セルの一例)と、接合材12とを備えている。なお、このマニホールド2、燃料電池セル10、及び接合材12が本発明の接合体に相当する。
【0021】
[マニホールド]
マニホールド2は、複数の燃料電池セル10にガスを供給するように構成されている。また、マニホールド2は、燃料電池セル10から排出されたガスを回収するように構成されている。
【0022】
図2は、マニホールドの断面図である。
図2において、一部の貫通孔のみを想像線で示している。
図2に示すように、マニホールド2は、ガス供給室21とガス回収室22とを有している。ガス供給室21には、改質器などを介して燃料ガス供給源から燃料ガスが供給される。ガス回収室22は、各燃料電池セル10にて使用された燃料ガスのオフガスを回収する。
【0023】
マニホールド2は、マニホールド本体部23と、仕切板24とを有している。マニホールド本体部23は、内部に空間を有している。マニホールド本体部23は、直方体状である。
【0024】
仕切板24は、マニホールド本体部23の空間をガス供給室21とガス回収室22とに仕切っている。詳細には、仕切板24は、マニホールド本体部23の略中央部において、マニホールド本体部23の長さ方向に延びている。なお、本実施形態では、仕切板24は、マニホールド本体部23の空間を完全に仕切っているが、仕切板24とマニホールド本体部23との間に隙間が形成されていてもよい。
【0025】
ガス供給室21の底面には、ガス供給口211が形成されている。また、ガス回収室22の底面には、ガス排出口221が形成されている。なお、ガス供給口211はガス供給室21の側面又は上面に形成されていてもよいし、ガス排出口221はガス回収室22の側面又は上面に形成されていてもよい。
【0026】
ガス供給口211は、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cに対して第1端部201側に配置されている。一方、ガス排出口221は、燃料電池セル10の配列方向(z軸方向)において、マニホールド2の中心Cに対して第2端部202側に配置されている。
【0027】
図2から
図4に示すように、マニホールド2は、天板231、底板232、及び側板233を有している。なお、この天板231、底板232、及び側板233によって、マニホールド本体部23が構成されている。底板232と側板233とは1つの部材で構成されている。天板231は、側板233の上端部と接合している。なお、天板231と側板233とが1つの部材で構成されており、底板232が側板233の下端部と接合していてもよい。
【0028】
マニホールド2は、例えば、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、又はNi基合金等によって構成されている。好ましくは、クロム含有量が16〜25wt.%程度のフェライト系ステンレス鋼によって構成される。具体的には、SUS430、SUS444、又はSUS445J1などによって構成されていることが好ましい。マニホールド本体部23と仕切板24とは同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。天板231と、底板232及び側板233とは、同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0029】
また、マニホールド2は、酸化被膜25を有している(
図9参照)。詳細には、マニホールド本体部23は酸化被膜25を有している。すなわち、天板231、底板232、及び側板233は、酸化被膜25を有している。また、仕切板24も酸化被膜25を有している。酸化被膜25は、例えば、酸化クロム(Cr
2O
3)、マンガンクロムスピネル(Mn,Cr)
3O
4、又は酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化チタン(TiO2)、酸化マンガン(MnO、Mn
2O
3、Mn
3O
4)などによって構成されている。酸化被膜25は複数の酸化物層から構成されていてもよい。また、酸化被膜25は、拡散元素が含まれた酸化物によって構成されていてもよい。
【0030】
図3に示すように、マニホールド2の天板231は、複数の貫通孔234及び複数の桟部235を有している。また、天板231は、複数の連結補強部236を有している。各貫通孔234は、マニホールド2の内部と外部とを連通している。各貫通孔234は、ガス供給室21及びガス回収室22に開口している。
【0031】
連結補強部236は、貫通孔234を配列方向(z軸方向)に横切り、一対の桟部235同士を連結している。すなわち、連結補強部236は、隣り合う一対の桟部235のうち一方の桟部235から、貫通孔234を横切って他方の桟部235まで延びている。
【0032】
貫通孔234は、貫通孔234を横切る連結補強部236によって複数の分割孔に分割されている。なお、本実施形態では、各貫通孔234は、第1分割孔234aと第2分割孔234bとに分割されている。
【0033】
図2に示すように、第1分割孔234aは、ガス供給室21と連通している。また、第2分割孔234bは、ガス回収室22と連通している。連結補強部236は、ガス供給室21とガス回収室22との境界部に配置されている。すなわち、連結補強部236は、平面視(x軸方向視)において、ガス供給室21とガス回収室22との境界部と重複している。なお、本実施形態では、連結補強部236は、平面視(x軸方向視)において、仕切板24と重複している。
【0034】
[燃料電池セル]
図4は、セルスタック装置の断面図を示している。
図4に示すように、燃料電池セル10は、マニホールド2の天板231から上方に延びている。燃料電池セル10は、板状であって、基端部101及び先端部102を有している。燃料電池セル10は、基端部101がマニホールド2に取り付けられている。すなわち、マニホールド2は、各燃料電池セル10の基端部101を支持している。本実施形態では、燃料電池セル10の基端部101は下端部を意味し、燃料電池セル10の先端部102は上端部を意味する。
【0035】
図4及び
図5に示すように、燃料電池セル10は、支持基板4、複数の第1ガス流路41、複数の第2ガス流路42、及び複数の発電素子部5を有している。また、燃料電池セル10は、連通流路30を有している。
【0036】
[支持基板]
支持基板4は、マニホールド2から上方に延びている。支持基板4は、扁平状であり、基端部43と先端部44とを有している。基端部43及び先端部44は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)における両端部である。本実施形態では、支持基板4の基端部43は下端部を意味し、支持基板4の先端部44は上端部を意味する。本実施形態では、支持基板4は、幅方向(y軸方向)に比べて長さ方向(x軸方向)の寸法の方が長いが、長さ方向よりも幅方向の寸法の方が長くてもよい。
【0037】
図5に示すように、支持基板4は、第1主面45と、第2主面46とを有している。第1主面45と第2主面46とは、互いに反対を向いている。第1主面45及び第2主面46は、各発電素子部5を支持している。第1主面45及び第2主面46は、支持基板4の厚さ方向(z軸方向)を向いている。また、支持基板4の各側面47は、支持基板4の幅方向(y軸方向)を向いている。各側面47は、湾曲していてもよい。
【0038】
支持基板4は、電子伝導性を有さない多孔質の材料によって構成される。支持基板4は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)から構成される。または、支持基板4は、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、MgO(酸化マグネシウム)とMgAl
2O
4(マグネシアアルミナスピネル)とから構成されてもよい。支持基板4の気孔率は、例えば、20〜60%程度である。この気孔率は、例えば、アルキメデス法、又は微構造観察により測定される。
【0039】
支持基板4は、緻密層48によって覆われている。緻密層48は、支持基板4内に拡散されたガスが外部に排出されることを抑制するように構成されている。本実施形態では、緻密層48は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。緻密層48は、例えば、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、LSGM(ランタンガレート)、MgO(酸化マグネシウム)とMgAlO
4(マグネシアアルミナスピネル)、GDC(ガドリニウムドープセリア)又はLaCrO
3(ランタンクロマイト)などによって構成されている。緻密層48は、支持基板4よりも緻密である。例えば、緻密層48の気孔率は、0〜7%程度である。
【0040】
[第1及び第2ガス流路]
図4に示すように、複数の第1ガス流路41及び複数の第2ガス流路42は、支持基板4内に形成されている。第1及び第2ガス流路41、42は、燃料電池セル10の基端部101から先端部102に向かって延びている。本実施形態では、第1及び第2ガス流路41、42は、支持基板4内を上下方向に延びている。第1及び第2ガス流路41、42は、支持基板4を貫通している。
【0041】
各第1ガス流路41は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。各第1ガス流路41は、実質的に等間隔に配置されていることが好ましい。また、各第2ガス流路42は、支持基板4の幅方向(y軸方向)において互いに間隔をあけて配置されている。各第2ガス流路42は、実質的に等間隔に配置されていることが好ましい。
【0042】
第1ガス流路41は、第1分割孔234aを介して、マニホールド2のガス供給室21と連通している。第2ガス流路42は、第2分割孔234bを介して、マニホールド2のガス回収室22と連通している。
【0043】
第1ガス流路41と第2ガス流路42とは、燃料電池セル10の先端部102において互いに連通している。詳細には、第1ガス流路41と第2ガス流路42とは、連通流路30を介して連通している。
【0044】
[発電素子部]
図5に示すように、各発電素子部5は、支持基板4の第1主面45又は第2主面46に支持されている。なお、第1主面45に形成される発電素子部5の数と第2主面46に形成される発電素子部5の数とは、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。また、各発電素子部5の大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0045】
各発電素子部5は、第1及び第2ガス流路41、42が延びる方向(x軸方向)に沿って配列されている。詳細には、各発電素子部5は、支持基板4上において、基端部43から先端部44に向かって互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、各発電素子部5は、支持基板4の長さ方向(x軸方向)に沿って、間隔をあけて配置されている。なお、各発電素子部5は、後述する電気的接続部9によって、互いに直列に接続されている。
【0046】
図6は、第1ガス流路41に沿って切断した燃料電池セル10の断面図である。なお、第2ガス流路42に沿って切断した燃料電池セル10の断面図は、第2ガス流路42の流路断面積が異なる以外は、
図6と基本的に同じである。
【0047】
発電素子部5は、燃料極6、電解質7、及び空気極8を有している。また、発電素子部5は、反応防止膜11をさらに有している。燃料極6は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。燃料極6は、燃料極集電部61と燃料極活性部62とを有する。
【0048】
燃料極集電部61は、凹部49内に配置されている。凹部49は、支持基板4に形成されている。詳細には、燃料極集電部61は、凹部49内に充填されており、凹部49と同様の外形を有する。各燃料極集電部61は、第1凹部611及び第2凹部612を有している。燃料極活性部62は、第1凹部611内に配置されている。詳細には、燃料極活性部62は、第1凹部611内に充填されている。
【0049】
燃料極集電部61は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極集電部61は、NiO(酸化ニッケル)とY
2O
3(イットリア)とから構成されてもよいし、NiO(酸化ニッケル)とCSZ(カルシア安定化ジルコニア)とから構成されてもよい。燃料極集電部61の厚さ、及び凹部49の深さは、50〜500μm程度である。
【0050】
燃料極活性部62は、例えば、NiO(酸化ニッケル)とYSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)とから構成され得る。或いは、燃料極活性部62は、NiO(酸化ニッケル)とGDC(ガドリニウムドープセリア)とから構成されてもよい。燃料極活性部62の厚さは、5〜30μmである。
【0051】
電解質7は、燃料極6上を覆うように配置されている。詳細には、電解質7は、一のインターコネクタ91から他のインターコネクタ91まで長さ方向に延びている。すなわち、支持基板4の長さ方向(x軸方向)において、電解質7とインターコネクタ91とが交互に配置されている。また、電解質7は、支持基板4の第1主面45、第2主面46、及び各側面47を覆っている。
【0052】
電解質7は、支持基板4よりも緻密である。例えば、電解質7の気孔率は、0〜7%程度である。電解質7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質7は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。電解質7の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0053】
反応防止膜11は、緻密な材料から構成される焼成体である。反応防止膜11は、平面視において、燃料極活性部62と略同一の形状である。反応防止膜11は、電解質7を介して、燃料極活性部62と対応する位置に配置されている。反応防止膜11は、電解質7内のYSZと空気極8内のSrとが反応して電解質7と空気極8との界面に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するために設けられている。反応防止膜11は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜11の厚さは、例えば、3〜50μm程度である。
【0054】
空気極8は、反応防止膜11上に配置されている。空気極8は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極8は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極8は、LSCFから構成される第1層(内側層)とLSCから構成される第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極8の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0055】
[電気的接続部]
電気的接続部9は、隣り合う発電素子部5を電気的に接続するように構成されている。電気的接続部9は、インターコネクタ91及び空気極集電膜92を有する。インターコネクタ91は、第2凹部612内に配置されている。詳細には、インターコネクタ91は、第2凹部612内に埋設(充填)されている。インターコネクタ91は、電子伝導性を有する緻密な材料から構成される焼成体である。インターコネクタ91は、支持基板4よりも緻密である。例えば、インターコネクタ91の気孔率は、0〜7%程度である。インターコネクタ91は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ91の厚さは、例えば、10〜100μmである。
【0056】
空気極集電膜92は、隣り合う発電素子部5のインターコネクタ91と空気極8との間を延びるように配置される。例えば、
図6の左側に配置された発電素子部5の空気極8と、
図6の右側に配置された発電素子部5のインターコネクタ91とを電気的に接続するように、空気極集電膜92が配置されている。空気極集電膜92は、電子伝導性を有する多孔質の材料から構成される焼成体である。空気極集電膜92は、酸素イオン伝導性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0057】
空気極集電膜92は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜92の厚さは、例えば、50〜500μm程度である。
【0058】
[連通部材]
図4に示すように、連通部材3は、支持基板4の先端部44に取り付けられている。そして、連通部材3は、第1ガス流路41と第2ガス流路42とを連通させる連通流路30を有している。連通流路30は、各第1ガス流路41から各第2ガス流路42まで延びる空間によって構成されている。連通部材3は、支持基板4に接合されていることが好ましい。また、連通部材3は、支持基板4と一体的に形成されていることが好ましい。
【0059】
連通部材3は、例えば、多孔質である。また、連通部材3は、その外側面を構成する緻密層31を有している。緻密層31は、連通部材3の本体よりも緻密に形成されている。例えば、緻密層31の気孔率は、0〜7%程度である。この緻密層31は、連通部材3と同じ材料や、上述した電解質7に使用される材料、結晶化ガラス等によって形成することができる。
【0060】
図1に示すように、各燃料電池セル10は、主面同士が対向するように配列されている。燃料電池セル10の配列方向は、マニホールド2の長手方向(z軸方向)に沿っている。本実施形態では、各燃料電池セル10は、等間隔に配置されているが、等間隔でなくてもよい。
【0061】
[燃料電池セルの取付構造]
図4に示すように、燃料電池セル10の基端面103は、天板231と対向している。すなわち、燃料電池セル10の基端部101は、貫通孔234内に挿入されていない。
図7に示すように、燃料電池セル10の基端面103は、貫通孔234を覆っている。第1分割孔234aは、複数の第1ガス流路41と連通している。また、第2分割孔234bは、複数の第2ガス流路42と連通している。本実施形態では、燃料電池セル10の基端面103は、下端面を意味する。
【0062】
燃料電池セル10の基端面103は、外周縁部と、外周縁部に囲まれた中央部とを有している。基端面103の中央部は、貫通孔234と対向している。すなわち、燃料電池セル10の基端面103は、平面視(x軸方向視)において、貫通孔234よりも一回り大きい。
【0063】
[接合材]
図8に示すように、接合材12は、燃料電池セル10とマニホールド2とを接合している。詳細には、接合材12は、燃料電池セル10の基端部101と、マニホールド2の天板231とを接合している。接合材12は、燃料電池セル10の基端部101に沿って環状に形成されている。
【0064】
図9に示すように、接合材12は、第1接合部121と第2接合部122とを有している。第1接合部121は、燃料電池セル10に接合している。詳細には、第1接合部121は、燃料電池セル10の緻密層48に接合している。好ましくは、第1接合部121は、マニホールド2には接合していない。すなわち、第1接合部121とマニホールド2との間には第2接合部122が介在している。
【0065】
第2接合部122は、マニホールド2に接合している。詳細には、第2接合部122は、天板231に接合している。より詳細には、第2接合部122は、天板231の酸化被膜25に接合している。好ましくは、第2接合部122は、燃料電池セル10には接合していない。すなわち、第2接合部122と燃料電池セル10との間には、第1接合部121が介在している。
【0066】
第2接合部122は、マニホールド2上に形成されている。第2接合部122は、膜状に形成されている。そして、その第2接合部122上に第1接合部121が形成されている。なお、第2接合部122の外周縁部は第1接合部121から露出している。第2接合部121上に形成された第1接合部121が燃料電池セル10に接合している。第1接合部121は、第2接合部122よりも厚い。燃料電池セル10とマニホールド2との間には、第1接合部121及び第2接合部122の両方が介在している。
【0067】
第1接合部121及び第2接合部122は、例えば、結晶化ガラスで構成される。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO
2−B
2O
3系、SiO
2−CaO系、SiO
2−MgO系、SiO2−ZnO−BaO系、SiO
2−B
2O
3−CaO系、またはSiO
2−MgO−CaO系が用いられる。なお、本明細書では、結晶化ガラスとは、全体積に対する「結晶相が占める体積」の割合(結晶化度)が60%以上であり、全体積に対する「非晶質相及び不純物が占める体積」の割合が40%未満のガラスを指す。なお、接合材12の材料として、非晶質ガラス、ろう材、またはセラミックス等が採用されてもよい。具体的には、接合材12は、SiO
2−MgO−B
2O
5−Al
2O
3系及びSiO
2−MgO−Al
2O
3−ZnO系よりなる群から選ばれる少なくとも一種である。
【0068】
第2接合部122は、拡散元素を含んでいる。拡散元素は、マニホールド2に形成された酸化被膜25内に拡散し得る元素である。例えば、第2接合部122は、拡散元素として、Ti,Mn,Fe,Ni,Cu,及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでいる。
【0069】
第2接合部122における拡散元素の含有率は、カチオン比で約0.01以上とすることができる。また第2接合部122における拡散元素の含有率は、カチオン比で、約0.30以下とすることができる。なお、カチオン比とは、その部材を構成する全構成元素のうち酸素を除く元素の総和に対する各元素のモル比である。この含有率は、接合材12の垂直な断面において、EDS(エネルギー分散型X線分光器)を用いて、無作為に選択した10点において特定の拡散元素の含有率をカチオン比で測定し、10個の測定値を算術平均することによって求められる。
【0070】
第2接合部122内の拡散元素のうち一部は、天板231の酸化被膜25内に拡散している。この天板231の酸化被膜25における拡散元素の含有率は、カチオン比で約0.01以上とすることができる。また、天板231の酸化被膜25における拡散元素の含有率は、カチオン比で約0.40以下とすることができる。この含有率は、第2接合部122の拡散元素の含有率と同様の方法で求めることができる。酸化被膜25が複数の酸化物層から構成される場合は、第2接合部122と接する酸化物層の含有率は、カチオン比で約0.01以上とすることができる。また、第2接合部122と接する酸化物層の含有率は、カチオン比で約0.40以下とすることができる。
【0071】
第1接合部121における拡散元素の含有率は、第2接合部122における拡散元素の含有率よりも低い。例えば、第1接合部121における拡散元素の含有率は、カチオン比で0〜0.20程度である。好ましくは、第1接合部122は、Znを含んでいない。より好ましくは、第1接合部122は、拡散元素を含んでいない。例えば、第2接合部122は、Ti,Mn,Fe,Ni,Cu,及びZnの全てを含んでいない。この含有率は、第2接合部122における拡散元素の含有率と同様の方法で求めることができる。
【0072】
第2接合部122の厚さは、0.5μm以上とすることができ、好ましくは1μm以上とすることができる。また、第2接合部122の厚さは、1000μm以下とすることができ、好ましくは800μm以下とすることができる。
【0073】
[発電方法]
上述したように構成されたセルスタック装置100では、マニホールド2のガス供給室21に水素ガスなどの燃料ガスを供給するとともに、燃料電池セル10を空気などの酸素を含むガスに曝す。すると、空気極8において下記(1)式に示す化学反応が起こり、燃料極6において下記(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− …(2)
【0074】
詳細には、ガス供給室21に供給された燃料ガスは、各燃料電池セル10の第1ガス流路41内を流れ、各発電素子部5の燃料極6において、上記(2)式に示す化学反応が起こる。各燃料極6において未反応であった燃料ガスは、第1ガス流路41を出て連通流路30を介して第2ガス流路42へ供給される。そして、第2ガス流路42へ供給された燃料ガスは、再度、燃料極6において上記(2)式に示す化学反応が起こる。第2ガス流路42を流れる過程において燃料極6において未反応であった燃料ガスは、マニホールド2のガス回収室22へ回収される。
【0075】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0076】
変形例1
図10は、天板231に接合された第2接合部122の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した反射電子像である。
図10に示すように、第2接合部122は、界面領域122aと内部領域122bとが互いに異なる微構造を有していてもよい。
【0077】
図10には、天板231の上面231sに対して実質的に垂直な断面が図示されている。本変形例において、天板231の上面231sは酸化被膜25によって構成されている。この天板231の上面231sは、略平坦に形成されているが、微少な凹凸が形成されていてもよいし、全体的又は局所的に湾曲又は屈曲していてもよい。
【0078】
第2接合部122は、天板231の上面231sに接合される。第2接合部122は、天板231の上面231sに垂直な断面において、界面領域122aと内部領域122bとを含む。
【0079】
界面領域122aは、天板231の上面231sから5μm以内の領域である。内部領域122bは、天板231の上面231sから5μm超の領域である。内部領域122bの範囲は特に規定しなくてもよいが、後述するように、内部領域122bに含まれる結晶粒子の特性を算出する都合上、本実施形態では、天板231の上面231sから5μm超、かつ、第1接合部121との境界までの範囲を内部領域122bとして規定する。
【0080】
なお、
図10において、界面領域122aと内部領域122bとの境界は、略直線状に描かれているが、実際には天板231の上面231sに平行な線によって規定される。
【0081】
界面領域122a及び内部領域122bのそれぞれは、複数の結晶粒子によって構成される。
図10の反射電子像では、白色で表示される結晶粒子と、灰色で表示される結晶粒子と、黒色で表示される結晶粒子とが混在しているが、このように表示色が異なるのは、結晶粒子ごとに微小な質量差が存在するからである。
【0082】
界面領域122a及び内部領域122bそれぞれには、複数の棒状結晶粒子が含まれている。本明細書において、棒状結晶粒子とは、3以上のアスペクト比を有する結晶粒子を意味する。
【0083】
界面領域122a及び内部領域122bそれぞれに含まれる棒状結晶粒子は、以下の手法によって特定される。まず、反射電子検出器を用いたSEM(ZEISS社製、型式ULTRA55)によって、天板231の上面231sに対して垂直な界面領域122aの断面を5000倍で拡大した反射電子像を取得する。次に、反射電子像上において、最も明るく表示される粒子(すなわち、最高輝度で表示される粒子)を特定する。次に、最も明るく表示される粒子の電子回折パターンを走査透過電子顕微鏡(STEM)で取得して、最も明るく表示される粒子が結晶粒子であることを確認する。次に、最も明るく表示される結晶粒子それぞれについて、結晶粒子の最大フェレー径を最小フェレー径で除すことでアスペクト比を求め、アスペクト比が3以上の棒状結晶粒子を特定する。最大フェレー径は、反射電子像上において、結晶粒子を平行な2本の直線で挟んだ場合における当該2本の直線間の最大距離である。最小フェレー径は、反射電子像上において、結晶粒子を平行な2本の直線で挟んだ場合における当該2本の直線間の最小距離である。
【0084】
界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の平均配向角度は、60度以上120度以下である。これにより、界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子を、天板231の上面231sに対して立設させることができる。このため、界面領域122a内において上面231sに沿ってクラックが発生することを抑制できる。
【0085】
界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の平均配向角度は、70度以上110度以下であることがより好ましい。これにより、上面231sに沿ってクラックが発生することをより抑制できる。
【0086】
一方、内部領域122bに含まれる棒状結晶粒子の平均配向角度は、特に制限されない。後述するように、内部領域122bでは界面領域122aに比べて棒状結晶粒子がランダムに配置されていればよく、内部領域122bに含まれる棒状結晶粒子の平均配向角度は、界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の平均配向角度より大きくても小さくてもよいし、或いは同じであってもよい。
【0087】
界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の平均配向角度は、以下の手法で測定される。まず、上述した手法により、界面領域122aにおいて棒状結晶粒子を特定した後、界面領域122aから30個の棒状結晶粒子を無作為に選出する。次に、選出した30個の棒状結晶粒子それぞれについて、最小フェレー径を規定する2本の直線に平行な方向が、上面231sを最小二乗法で近似した直線に対して成す角度を配向角度として測定する。この際、最小フェレー径を規定する2本の直線に平行な方向の一方側(例えば、
図10では左側の角度)に統一して配向角度を測定する。そして、30個の棒状結晶粒子それぞれの配向角度を算術平均することによって、界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の平均配向角度を算出する。
【0088】
内部領域122bに含まれる棒状結晶粒子の平均配向角度は、上述した界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の平均配向角度と同じ手法で測定される。
【0089】
内部領域122bに含まれる複数の棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差は、界面領域122aに含まれる複数の棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差より大きい。すなわち、内部領域122bでは界面領域122aに比べて棒状結晶粒子がランダムに配置されている。そのため、セルスタック装置100の稼働時に、天板231の熱膨張及び熱収縮に伴って界面領域122aにクラックが発生したとしても、当該クラックが外部空間にまで進展することを抑制できる。従って、第2接合部122を貫通するクラックが発生してシール性が低下することを抑制できる。
【0090】
界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差は、棒状結晶粒子の平均配向角度を算出するために選出した30個の棒状結晶粒子それぞれの配向角度の標準偏差を算出することによって得られる。
【0091】
内部領域122bに含まれる棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差は、上述した界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差と同じ手法で測定される。
【0092】
界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差の値は特に制限されないが、例えば30以下とすることができる。界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差の値は、15以下であることが好ましい。これにより、界面領域122aにおける各棒状結晶粒子の配向角度が揃って、上面231sに沿った方向の強度が向上するため、上面231sに沿ってクラックが発生することをより抑制できる。界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の配向角度が揃っているほど好ましいため、界面領域122aに含まれる棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差の下限値は制限されないが、例えば5以上とすることができる。
【0093】
内部領域122bに含まれる棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差の値は特に制限されないが、例えば40以上とすることができる。内部領域122bに含まれる棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差の値は、50以上であることが好ましい。これにより、界面領域122aに発生したクラックが内部領域122b内を進展することをより抑制できる。内部領域122bに含まれる棒状結晶粒子の配向角度はランダムであるほど好ましいため、内部領域122bに含まれる棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差の上限値は制限されないが、例えば60以下とすることができる。
【0094】
また、界面領域122aに含まれる結晶粒子の平均粒径は、内部領域122bに含まれる結晶粒子の平均粒径より小さいことが好ましい。これにより、第2接合部122のうち界面領域122aの強度を向上させることができる。そのため、セルスタック1の稼働時に、マニホールドの熱膨張及び熱収縮による熱応力が界面領域122aに集中しても、界面領域122aにクラックが発生することを抑制できる。また、内部領域122bを形成するために過剰に微細な種結晶を用いる必要がなく、内部領域122bを焼成工程において結晶化の開始が早くなりすぎることを抑制できる。そのため、内部領域122bの流れ性が低下して流動が阻害されるのを防ぐことができるので、内部領域122bの形状を容易に制御することができる。その結果、内部領域122bのシール性を向上させることができる。以上より、第2接合部122におけるクラック抑制とシール性向上とを両立させることができる。
【0095】
界面領域122aに含まれる結晶粒子の平均粒径は、内部領域122bに含まれる結晶粒子の平均粒径の0.8倍以下であることが好ましく、0.6倍以下がより好ましく、0.4倍以下が特に好ましい。これによって、界面領域122aにクラックが発生することをより抑制できる。
【0096】
界面領域122aに含まれる結晶粒子の平均粒径は特に制限されないが、0.2μm以上2.5μm以下とすることができる。内部領域122bに含まれる結晶粒子の平均粒径は特に制限されないが、3μm以上20μm以下とすることができる。
【0097】
界面領域122aに含まれる結晶粒子の平均粒径は、以下の手法で測定される。まず、反射電子検出器を用いたFE−SEM(ZEISS社製、型式ULTRA55)によって、天板231の上面231sに対して垂直な界面領域122aの断面を5000倍で拡大した反射電子像を取得する。次に、反射電子像上において、最も明るく表示される粒子(すなわち、最高輝度で表示される粒子)を特定する。次に、最も明るく表示される粒子の電子回折パターンを走査透過電子顕微鏡(STEM)で取得して、最も明るく表示される粒子が結晶粒子であることを確認する。次に、最も明るく表示される結晶粒子を界面領域122aから無作為に30個選択して、各結晶粒子と同じ断面積を有する円の直径(以下、「円相当径」という。)を算出する。次に、各結晶粒子の円相当径の算術平均値(以下、「平均円相当径」という。)を算出し、この平均円相当径を界面領域122aに含まれる結晶粒子の平均粒径とする。ただし、結晶粒子の平均粒径を測定する際、界面領域122aと内部領域122bとの境界に重なっている結晶粒子は、平均粒径の測定対象から除外するものとする。また、結晶粒子の平均粒径を測定する際、円相当径が0.03μm以下の微細な結晶粒子は、平均粒径の測定対象から除外する。
【0098】
内部領域122bに含まれる結晶粒子の平均粒径は、上述した界面領域122aに含まれる結晶粒子の平均粒径と同じ手法で測定される。
【0099】
[第2接合部の形成方法]
まず、Ba、Ca、Mg、Al、La、Ti、Cr、Zr、Ce、Zn、及びBの少なくとも1種類の元素(又は酸化物)を含有する棒状の種結晶を含む界面領域用接合材を、天板231のうち第2接合部122と接合する領域にスクリーン印刷で塗布する。これにより、天板231の表面に対して立設するように棒状の種結晶が配列される。この際、スクリーン印刷に用いる製版のオープニングの大きさを調整することによって、後述する界面領域122aにおける棒状結晶粒子の平均配向角度と配向角度の標準偏差とを調整することができる。例えば、製版のオープニングを小さくするほど、棒状結晶粒子の平均配向角度を大きくすることができる。また、製版のオープニングを小さくするほど、棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差を小さくすることができる
【0100】
次に、塗布した界面領域用接合材を乾燥させることによって、第2接合部122のうち界面領域122aの成形体を形成する。
【0101】
次に、Ba、Ca、Mg、Al、La、Ti、Cr、Zr、Ce、Zn、及びBの少なくとも1種類の元素(又は酸化物)を含有する棒状の種結晶を含む内部領域用接合材を、界面領域122a上にディスペンサで塗布する。これにより、内部領域用接合材に含まれる棒状の種結晶をランダムな向きに配置させることができる。
【0102】
次に、第2接合部122の成形体に熱処理(750〜900℃、1〜10時間)を施す。この熱処理によって、界面領域122aでは、天板231の表面に対して立設するように配列された棒状の種結晶が、天板231の表面から離れる方向に向かって成長して棒状結晶粒子となる。そのため、界面領域122aでは、平均配向角度が60度以上120度以下に揃った棒状結晶粒子が形成される。
【0103】
一方、内部領域122bでは、ランダムな向きに配置された棒状の種結晶それぞれが成長して棒状結晶粒子となる。そのため、内部領域122bでは、配向角度がランダムな棒状結晶粒子が成長する。その結果、内部領域122bに含まれる複数の棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差は、界面領域122aに含まれる複数の棒状結晶粒子の配向角度の標準偏差より大きくなる。なお、界面領域122a及び内部領域122bそれぞれにおける棒状結晶粒子のアスペクト比は、熱処理のキープ時間を長くするほど大きくすることができる。
【0104】
変形例2
上記実施形態では、接合部材12は、燃料電池セル10とマニホールド2とを接合しているが、接合部材12の接合対象はマニホールド2に限定されない。接合部材12は、燃料電池セル10と、酸化被膜を有する別の金属部材とを接合してもよい。例えば、接合部材12は、燃料電池セル10と、金属製の連通部材3とを接合してもよい。この場合、連通部材3の材質は、上述したマニホールド2の材質と同様とすることができる。
【0105】
変形例3
上記実施形態では、貫通孔234は、複数の分割孔234aに分割されているが、貫通孔234の構成はこれに限定されない。例えば、貫通孔234は複数の分割孔に分割されていなくてもよい。すなわち、天板231は、連結補強部236を有していなくてもよい。
【0106】
変形例4
上記実施形態の燃料電池セル10は、各発電素子部5が支持基板4の長さ方向(x軸方向)に配列されている、いわゆる横縞型の燃料電池セルであるが、燃料電池セル10の構成はこれに限定されない。例えば、燃料電池セル10は、支持基板4の第1主面45に1つの発電素子部5が支持された、いわゆる縦縞型の燃料電池セルであってもよい。この場合、支持基板4の第2主面46に一つの発電素子部5が支持されていてもよいし、支持されていなくてもよい。
【0107】
変形例5
上記実施形態では、燃料電池セル10からのオフガスをマニホールド2のガス回収室22によって回収しているが、これに限定されない。例えば、燃料電池セル10の先端部からオフガスを排出して燃焼させてもよい。この場合、マニホールド2は、仕切板24を有しておらず、ガス供給室21とガス回収室22とに分かれていなくてよい。
【実施例】
【0108】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施例には限定されない。
【0109】
(接合体の作製)
まず、燃料電池セル10を作製した。なお、本実施例では発電素子部5などは不要であるため、燃料電池セル10は、支持基板4及び緻密層48のみを有している。まず、支持基板4を作製し、この支持基板4の外周面に緻密層48を形成した。支持基板4の材質は、MgO−MgAl
2O
4とした。緻密層48の材質は、表1に示す通りである。
【0110】
次に、マニホールド2を作製した。マニホールド2の材質は、表1に示す通りである。酸化被膜25の材質は、表1に示す通りである。
【0111】
続いて、接合材12を用いて、燃料電池セル10をマニホールド2の天板231に接合した。各実施例では、接合材12は第1接合部121及び第2接合部122を有している。一方、比較例1,3,5,7,9、11,13,15,17,19,21、23、25、27、29では、接合材12は第1接合部121のみを有しており、第1接合部121によって燃料電池セル10と天板231とを接合した。比較例2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22、24、26,28,30では、接合材12は第2接合部122のみを有しており、第2接合部122によって燃料電池セル10と天板231とを接合した。なお、各実施例及び比較例では、その他の構成は基本的に同じとした。
【0112】
各実施例及び比較例において、第1接合部121は、主成分をMgOとし、拡散元素を有していない。すなわち、第1接合部121は、Ti,Mn,Fe,Ni,Cu,及びZnのいずれも有していない。また、各実施例及び比較例において、第2接合部122は、主成分をMgOとし、拡散元素を含んでいる。第2接合部122が有する拡散元素は表1に示す通りである。
【0113】
各実施例では、マニホールド2の天板231上に第1接合部121を塗布して乾燥させ、その第1接合部121上に第2接合部122を塗布して乾燥させた。そして、この接合材12に対して熱処理(850℃、2時間)を施すことによって、接合材12を硬化させた。
【0114】
(評価方法)
以上のように作製した接合体に対して、以下の方法によって、燃料電池セル10およびマニホールド2に対する接合材12の耐久性を評価した。まず、作製した接合体を電気炉に投入し、大気雰囲気中において850℃で1000時間加熱した。次に、大気雰囲気中で加熱・冷却サイクルを50回繰り返した。加熱・冷却サイクルは、昇温速度100℃/hで750℃まで昇温して、750℃で30min保持する加熱工程と、その後、降温速度100℃/hで100℃まで降温して、100℃で30min保持する冷却工程とを含む。そして、接合体の外観を目視することによって、外観上で確認できる剥離の有無を確認するとともに、接合体の表面を光学顕微鏡で観察することによって、微視的な剥離の有無を確認した。続いて、加熱・冷却サイクルの昇温、降温速度を200℃/hに設定し、同様の方法によって、耐久性の評価を行った。そして同様に、接合体の外観を目視することによって、外観上で確認できる剥離の有無を確認するとともに、接合体の表面を光学顕微鏡で観察することによって、微視的な剥離の有無を確認した。
【0115】
以上の結果を表1に示した。なお、表1における「〇」は、昇温・降温速度100℃/h、及び200℃/hのいずれの耐久試験においても燃料電池セル10又はマニホールド2に対して接合材12の剥離が発生しなかったことを意味する。表1における「△」は、昇温・降温速度100℃/hの耐久試験において燃料電池セル10又はマニホールド2に対して接合材12の剥離が発生しなかったが、昇温・降温速度200℃/hの耐久試験では、燃料電池セル10又はマニホールド2に対して接合材12の剥離が発生したことを意味する。また、表1における「×」は、昇温・降温速度100℃/hの耐久試験において燃料電池セル10又はマニホールド2に対して接合材12の剥離が発生したことを意味する。なお、各実施例及び比較例の酸化被膜25内における拡散元素の含有率は、別途サンプルを用意して算出した。具体的には、各実施例及び比較例と同様の方法によりサンプルを作製し、850℃1000時間の熱処理を加えた。そして、加熱・冷却サイクルを実施せずに酸化被膜25内における拡散元素の含有率を算出し、表1に示した。含有率は接合材12の垂直な断面において、酸化被膜25の無作為に選択した10点において拡散元素の含有率をカチオン比で測定し、10個の測定値を算術平均することによって求めた。
【0116】
【表1】
【0117】
表1から分かるように、比較例1,3,5,7,9、11,13,15,17,19,21、23、25,27,29では、接合材12がマニホールド2から剥離している。これは、上記各比較例の接合材12が第1接合部121のみであるため、マニホールド2の酸化被膜25内に拡散する拡散元素がなく、マニホールド2との密着性が低いためであると考えられる。
【0118】
一方、比較例2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22、24、26,28,30では、接合材12が燃料電池セル10から剥離している。これは、第2接合部122内の拡散元素が、緻密層48内に拡散して緻密層48と反応層を形成し、この結果、剥離が生じたものと考えられる。
【0119】
これら各比較例に対して、各実施例では、接合材12が第1接合部121及び第2接合部122を有することによって、燃料電池セル10からの剥離を抑制できるとともに、マニホールド2からの剥離を抑制することができた。
【0120】
上述したように、各実施例において接合材12はマニホールド2から剥離しなかった。これは、第2接合部122の拡散元素がマニホールド2の酸化被膜25内に拡散し、マニホールド2との密着性が向上されたためであると考えられる。
【0121】
さらに、実施例2〜15において、昇温・降温速度200℃/hの耐久試験での接合材12の燃料電池セル10からの剥離を抑制できた。これは、第2接合部122における拡散元素の含有率を、カチオン比0.01以上にすることによって、酸化被膜へ拡散元素を十分に拡散させることができ、第2接合部122と酸化被膜25との密着性を向上できたためだと考えられる。
【0122】
また、各実施例において接合材12は燃料電池セル10から剥離しなかった。これは、接合材12の第2接合部122ではなく第1接合部121が燃料電池セル10と接合していることによって、拡散元素が緻密層48内に拡散することを抑制しているためであると考えられる。なお、第1接合部121に拡散元素が入っていても、第1接合部121における拡散元素の含有率が第2接合部122における拡散元素の含有率よりも低ければ、拡散元素の緻密層48への拡散を抑制できるため、接合材12が燃料電池セル10から剥離することを抑制できる。