(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876802
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】高炉出銑口温度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20060101AFI20210517BHJP
G01J 5/60 20060101ALI20210517BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20210517BHJP
F27D 21/02 20060101ALI20210517BHJP
C21B 7/24 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
G01J5/00 101D
G01J5/60 C
G01J5/00 B
F27D21/00 G
F27D21/02
C21B7/24
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-531125(P2019-531125)
(86)(22)【出願日】2017年12月11日
(65)【公表番号】特表2020-501158(P2020-501158A)
(43)【公表日】2020年1月16日
(86)【国際出願番号】KR2017014476
(87)【国際公開番号】WO2018110921
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0168767
(32)【優先日】2016年12月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウォン‐ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,サン‐ウ
(72)【発明者】
【氏名】ベ,ホ‐ムン
【審査官】
小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−177873(JP,A)
【文献】
特開2015−113476(JP,A)
【文献】
特開2016−030850(JP,A)
【文献】
特開2007−248148(JP,A)
【文献】
特開2006−119110(JP,A)
【文献】
特開2007−246959(JP,A)
【文献】
特開平09−182953(JP,A)
【文献】
特開平10−130040(JP,A)
【文献】
特開平09−256010(JP,A)
【文献】
特開2016−006221(JP,A)
【文献】
特開平03−103729(JP,A)
【文献】
特開2005−264307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00 − B22D 11/22
C21B 7/00 − C21B 9/16
C21C 5/00
C21C 5/28 − C21C 5/50
F27D 17/00 − F27D 99/00
G01J 5/00 − G01J 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉出銑口の第1及び第2波長放射エネルギーを測定し、前記第1及び第2波長放射エネルギーに基準放射率を適用して温度を測定する温度測定部と、
ズーム機能を備え、前記高炉出銑口の画像を得るカメラと、
前記画像からスラグと溶銑を識別して、前記スラグと前記溶銑の割合を算出する画像処理部と、
前記画像処理部により算出された割合と前記基準放射率に対応する基準割合の間の差に対応する補正温度を前記温度測定部によって測定された温度に適用して最終温度を算出する補正部と、
前記画像処理部の画像分析の結果に基づいて前記カメラのレンズを制御して撮影範囲の調整を行い、前記カメラを駆動させて撮影範囲の調整を行う制御部と、
を有してなることを特徴とする高炉出銑口温度測定装置。
【請求項2】
前記補正部は、前記高炉出銑口において前記スラグが前記溶銑に比べて多いほど、前記最終温度が高くなるように前記補正温度を生成することを特徴とする請求項1に記載の高炉出銑口温度測定装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記画像において、第1及び第2基準輝度(brightness)よりも高い輝度を有するピクセルと、第1基準輝度よりも高く、第2基準輝度よりも低い輝度を有するピクセルの割合を算出することを特徴とする請求項1に記載の高炉出銑口温度測定装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記画像において、第1基準輝度よりも低い輝度を有するピクセルのセットを背景として識別し、前記第1基準輝度よりも高く、第2基準輝度よりも低い輝度を有するピクセルのセットを前記溶銑として識別し、前記第1及び第2基準輝度よりも高い輝度を有するピクセルのセットを前記スラグとして識別することを特徴とする請求項1に記載の高炉出銑口温度測定装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記画像において、第1基準輝度よりも低い輝度を有するピクセルのセットを背景として識別し、前記背景の境界の位置にそれぞれ対応する基準線1及び基準線3を設定し、前記基準線1と前記基準線3の間に位置するように基準線2を設定し、前記基準線2の一部を含む分析領域を設定した後、前記分析領域において、第2基準輝度よりも高い輝度を有するピクセルと、前記第2基準輝度よりも低い輝度を有するピクセルの割合を算出することを特徴とする請求項1に記載の高炉出銑口温度測定装置。
【請求項6】
前記制御部は前記画像における前記背景の位置または前記背景の割合に基づいて前記カメラの撮影範囲を制御することを特徴とする請求項4に記載の高炉出銑口温度測定装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記画像の最大輝度、最小輝度、及び平均輝度のうち少なくとも一つに従属する前記第1及び第2基準輝度を設定することを特徴とする請求項3に記載の高炉出銑口温度測定装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記画像の最大輝度、最小輝度、及び平均輝度のうち少なくとも一つに従属する前記第1及び第2基準輝度を設定することを特徴とする請求項5に記載の高炉出銑口温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉出銑口温度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉出銑口の正確な温度を製銑工程の操業条件に迅速に反映することは、高炉炉況の安定化、生産効率性、及びエネルギー消費効率の観点において重要である。
【0003】
通常、高炉出銑口の温度は、いくつかの物質の状態を変える程に高温であるため、正確に測定するのが難しいのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高炉出銑口の温度を正確に測定することができる高炉出銑口温度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施例による高炉出銑口温度測定装置は、高炉出銑口の第1及び第2波長放射エネルギーを測定し、上記第1及び第2波長放射エネルギーに基準放射率を適用して温度を測定する温度測定部と、
ズーム機能を備え、上記高炉出銑口の画像を得るカメラと、上記画像からスラグと溶銑を識別して、上記スラグと上記溶銑の割合を算出する画像処理部と、上記画像処理部により算出された割合と上記基準放射率に対応する基準割合の間の差に対応する補正温度を、上記温度測定部によって測定された温度に適用して最終温度を求める補正部と、
上記画像処理部の画像分析の結果に基づいて上記カメラのレンズを制御して撮影範囲の調整を行い、上記カメラを駆動させて撮影範囲の調整を行う制御部と、を有してなっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、高炉出銑口の温度を正確に測定することができ、製銑工程の操業条件を迅速に反映させることができる。これにより、高炉炉況の安定化、生産効率、及びエネルギー消費効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施例による高炉出銑口温度測定装置を示す図である。
【
図2】温度測定部が測定することができる放射エネルギーの分布を示す図である。
【
図3】スラグ及び溶銑の波長別放射率の特性を示す図である。
【
図4】スラグと溶銑の割合による放射率を示す図である。
【
図5】スラグと溶銑の割合による温度差を示す図である。
【
図7】カメラにより得られた画像における輝度分析結果を示す図である。
【
図8】カメラにより得られた画像における位置分析結果を示す図である。
【
図9】カメラにより得られた画像における分析領域を示す図である。
【
図10】カメラにより得られた画像における最大輝度、最小輝度、及び平均輝度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をよりよく理解できるように説明するためのものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、明確に説明するために拡大あるいは縮小表示(または強調表示や簡略化表示)することがある。また、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0009】
図1は本発明の一実施例による高炉出銑口温度測定装置を示す図である。
【0010】
図1を参照すると、本発明の一実施例による高炉出銑口温度測定装置は、温度測定部110、割合測定部120、及び補正部130を有している。
【0011】
温度測定部110は、高炉出銑口10の温度を測定する。例えば、上記温度測定部110は、互いに異なる2つの波長の放射エネルギーを測定して温度に換算する2波長温度計で実現することができる。
【0012】
割合測定部120は、高炉出銑口10のスラグ(slag)と溶銑の割合を測定する。例えば、上記割合測定部120は、高炉出銑口10の画像を得て、上記画像を分析することにより、スラグと溶銑の割合を測定する。
【0013】
補正部130は、割合測定部120によって測定された割合に対応する補正温度を、温度測定部110によって測定された温度に適用することにより最終温度を求める。
【0014】
温度測定部110によって測定される温度は、スラグと溶銑の割合に応じて実際の温度と異なっている。上記補正部130は、かかる上記温度測定部110による測定温度を補正することにより、実際の温度にさらに近い最終温度を求めることを可能にしている。これにより、高炉出銑口10の温度を正確に測定することができる。
【0015】
図2は温度測定部が測定する放射エネルギーの分布を示す図である。
図2には、特定温度Tの黒体(Blackbody)の波長(λ)による放射エネルギー(E
λ,b(λ,T))と特定温度Tの実際の表面(Real surface)の波長(λ)による放射エネルギー(E
λ(λ、T))を示している。
【0016】
ここで、実際の表面の放射エネルギー(E
λ(λ,T))は、黒体の放射エネルギー(E
λ,b(λ,T))と放射率(ε
λ)の積として定義することができる。
【0017】
放射率が設定された2波長温度計は、特定温度における第1波長(λ
1)の放射エネルギー(E
λ1)と第2波長(λ
2)の放射エネルギー(E
λ2)を測定し、両方の放射エネルギー間の差異に対応する温度を求める。ここで、上記差異の値と上記温度との間の関係は、ステファン−ボルツマンの法則によって設定される。
【0018】
これは、下記数学式(1)で一般化することができる。ここで、第1波長(λ
1)の放射率(ε
1)を第2波長(λ
2)の放射率(ε
2)で割った値を放射率比と定義する。
【数1】
【0019】
温度測定部は、高炉出銑口の第1及び第2波長放射エネルギー(E
λ1,E
λ2)を測定し、上記第1及び第2波長放射エネルギー(E
λ1,E
λ2)に基準放射率を適用することで温度に換算することができる。例えば、上記温度測定部は、上記高炉出銑口のスラグと溶銑の割合が上記基準割合のときの放射率を上記基準放射率として設定する。
【0020】
一方、高炉出銑口において、出銑初期のスラグの割合は、出銑末期のスラグの割合よりも大きいことがある。したがって、上記基準割合は、上記高炉出銑口の出銑が中間程度進んだときの平均的なスラグの割合として設定される。
【0021】
図3は、スラグ及び溶銑の波長別放射率の特性を示す図である。
図3には、スラグ(slag)と溶銑(Steel)のそれぞれの波長(Wavelength)による放射率(Emissivity)を示している。
【0022】
ここで、スラグの放射率は波長による影響をほとんど受けず、溶銑の放射率は波長による影響を比較的大きく受ける可能性がある。すなわち、スラグの放射率比は1に近いことがあるが、溶銑の放射率比は1に近くない可能性がある。
【0023】
したがって、上記数学式(1)は、スラグの放射率と溶銑の放射率が反映されると下記数学式(2)で表現することができる。ここで、mは溶銑の放射率、ε
sはスラグの放射率、A
mは溶銑の面積比、及びAsはスラグの面積比であり、溶銑の面積比とスラグの面積比の合計は1である。
【数2】
【0024】
図4は、スラグと溶銑の割合による放射率を示す図である。
図4には、スラグの割合(Slag Ratio)による全放射率(e−Slope)を示している。
【0025】
全放射率は、スラグの割合が高いほどスラグの放射率比に近い1になる。
【0026】
図5は、スラグと溶銑の割合による温度差を示している。
図5には、スラグの割合(Slag Ratio)による温度差(Temp.Difference)を示している。
【0027】
ここで、温度測定部に設定された基準放射率は、スラグの割合が40%のときの放射率比で仮定することができる。
【0028】
例えば、それぞれのスラグの割合は温度差と対応している。補正部は、割合測定部によって測定された割合に対応する温度差により負の補正温度となることがある。
【0029】
一例として、上記補正部は、割合測定部によって測定されたスラグの割合が基準割合に比べて大きいほど補正温度を大きく、割合測定部によって測定されたスラグの割合が基準割合に比べて小さいほど補正温度を小さくする。
【0031】
図6を参照すると、割合測定部120は、カメラ121、画像処理部122、及び制御部123を有している。
【0032】
カメラ121は、高炉出銑口10の画像を得ることができる。例えば、上記カメラ121は、毎秒200回撮影できる高速カメラであることができ、ズーム(zoom)機能を備えることができる。
【0033】
画像処理部122は、上記画像からスラグと溶銑を識別してそれらの割合を算出することができる。例えば、上記画像処理部122は、プロセッサ、メモリ、入力デバイス、出力デバイス、及び通信接続を含むコンピューティング環境で実現することができる。
【0034】
制御部123は、画像処理部122の画像分析の結果に基づいて、カメラ121の撮影範囲を制御することができる。例えば、上記制御部123は、カメラ121のレンズを制御して撮影範囲のサイズを調整することができ、カメラ121を駆動させて撮影範囲の位置を調整することができる。
【0035】
図7は、カメラにより得られた画像における輝度分析結果を示す図である。
図7には、画像の一例、上記画像の位置による輝度を示すグラフの一例、第1基準輝度(Threshold;1)の一例、第2基準輝度(Threshold;2)の一例、及びスラグ(Slag)と溶銑(Iron)の境界地点に対応する輝度の一例が示されている。
【0036】
例えば、割合測定部に含まれる画像処理部は、画像において、第1及び第2基準輝度(brightness)よりも高い輝度を有するピクセルと、第1基準輝度よりも高く、第2基準輝度よりも低い輝度を有するピクセルの割合を算出することができる。
【0037】
一例として、割合測定部に含まれる画像処理部は、画像において、第1基準輝度(Threshold;1)よりも低い輝度を有するピクセルのセットを背景として識別し、第1基準輝度(Threshold;1)よりも高く、第2基準輝度(Threshold;2)よりも低い輝度を有するピクセルのセットを溶銑(Iron)として識別し、第1及び第2基準輝度(Threshold;1及びThreshold;2)よりも高い輝度を有するピクセルのセットをスラグ(Slag)として識別する。
【0038】
一方、上述のピクセル及び後述のピクセルは、一つのピクセルだけでなく、互いに隣接する複数のピクセルで構成されたピクセルのセットであることができる。
【0039】
図8は、カメラにより得られた画像における位置分析結果を示す図である。
図8には、画像の一例、及び上記画像で設定される基準線1から基準線3の一例が示されている。
【0040】
例えば、割合測定部に含まれる制御部は、画像において背景に対応する暗い領域の全位置に応じてカメラの撮影範囲を調整することができる。画像は、基準線1の下側領域、基準線1と基準線2の間の領域、基準線2と基準線3の間の領域、及び基準線3の上側領域に分割することができる。上記制御部は、基準線1の下側領域における暗い領域の割合と基準線3の上側領域における暗い領域の割合の間の差が大きいほど、カメラの撮影範囲を多く移動させることができる。
【0041】
一方、上記基準線1から基準線3は、画像処理部の分析結果に基づいて設定することができる。例えば、上記基準線1から基準線3は、画像においてスラグまたは溶銑と背景の間の境界の全体的な位置に基づいて設定される。次いで、基準線2が、上記基準線1から基準線3の中心線に設定される。上記基準線2は、下記の分析領域の設定に用いられることができる。
【0042】
図9は、カメラにより得られた画像における分析領域を示す図である。
図9には、画像の一例、及び上記画像で設定される分析領域の一例を示している。
【0043】
例えば、割合測定部に含まれる画像処理部は、背景に対応する暗い領域の境界の位置にそれぞれ対応する基準線1及び基準線3を設定し、上記基準線1と上記基準線3の間に位置するように基準線2を設定し、上記基準線2の一部を含む分析領域を設定する。その後、上記分析領域において第2基準輝度よりも高い輝度を有するピクセルと、上記分析領域において第2基準輝度よりも低い輝度を有するピクセルの割合を算出する。
【0044】
これにより、画像処理部の画像処理に要する時間を短くすることができ、画像処理部の分析精度を向上させるためのビデオ集中分析の実現が容易にすることができる。
【0045】
一方、上記分析領域は、基準線1から基準線3を設定することなく、第1基準輝度よりも低い輝度を有するピクセルが実質的に含まれていない領域のうちからランダムに選択することもできる。
【0046】
図10は、カメラにより得られた画像における最大輝度、最小輝度、及び平均輝度を示す図である。
図10には、画像の位置による溶銑の輝度、画像の輝度、及びスラグの輝度が示されている。
【0047】
例えば、割合測定部に含まれる画像処理部は、画像の最大輝度、最小輝度、及び平均輝度のうち少なくとも一つに従属する第1及び第2基準輝度を設定する。
【0048】
カメラによって得られた画像の全体的な輝度は、高炉出銑口の環境によって異なることがある。上記全体的な輝度は、最大輝度、最小輝度、及び平均輝度に反映される。
【0049】
これにより、本発明の一実施例による高炉出銑口温度測定装置は、高炉出銑口の流動的な環境にもかかわらず、高炉出銑口の温度を正確に測定することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。