特許第6876807号(P6876807)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876807
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】減結合アンテナおよびその減結合方法
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20210517BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20210517BHJP
   H01P 5/16 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   H01Q1/52
   H01Q21/06
   H01P5/16 B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-536909(P2019-536909)
(86)(22)【出願日】2017年12月29日
(65)【公表番号】特表2020-504543(P2020-504543A)
(43)【公表日】2020年2月6日
(86)【国際出願番号】CN2017120320
(87)【国際公開番号】WO2018127023
(87)【国際公開日】20180712
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】201710008113.X
(32)【優先日】2017年1月5日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】康玉龍
【審査官】 赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0152523(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0006119(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/060401(WO,A1)
【文献】 特表2017−504274(JP,A)
【文献】 特表2013−526164(JP,A)
【文献】 特開2014−003670(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/043300(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0241793(US,A1)
【文献】 中国実用新案第203445240(CN,U)
【文献】 中国特許出願公開第106571526(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102104185(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第104810617(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102104193(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103855469(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/52
H01P 5/16
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナポート、減結合ネットワーク、給電ネットワーク、移相ネットワークおよび少なくとも2組のアンテナアレイを備える減結合アンテナであって、
前記移相ネットワークが前記少なくとも2組のアンテナアレイにそれぞれ接続され、
前記給電ネットワークの入力端が前記減結合ネットワークに接続され、前記給電ネットワークの出力端が前記移相ネットワークに接続され、
前記減結合ネットワークが前記アンテナポートと前記給電ネットワークとの間に設けられ、前記減結合ネットワークは、前記少なくとも2組のアンテナアレイ間で生成された結合信号を除去するように構成され、
前記減結合ネットワークは、N段の調節可能な減結合ユニットを備え、Nは正の整数であり、1段目の調節可能な減結合ユニットの入力端が第1位相遅延ネットワークを介して前記アンテナポートに接続され、N段目の調節可能な減結合ユニットの出力端が第2位相遅延ネットワークを介して前記給電ネットワークの入力端に接続され、
i段目の調節可能な減結合ユニットとi+1段目の調節可能な減結合ユニットとが第1結合同調ネットワークを介して接続され、1≦i≦N−1であり、Nは3以上であり、
前記N段の調節可能な減結合ユニットは、それぞれ少なくとも2つの共振ネットワークを備え、前記少なくとも2つの共振ネットワーク同士間が第2結合同調ネットワークを介して接続される
減結合アンテナ。
【請求項2】
前記アンテナアレイ間の間隔は、所定値以下である、
請求項1に記載の減結合アンテナ。
【請求項3】
i段目の調節可能な減結合ユニットとi+1段目の調節可能な減結合ユニットとが第1結合同調ネットワークを介して接続されることは、
i段目の調節可能な減結合ユニットにおける共振ネットワークが、第1結合同調ネットワークを介してi+1段目の調節可能な減結合ユニットにおける共振ネットワークに接続されることを含む、
請求項1に記載の減結合アンテナ。
【請求項4】
前記第1結合同調ネットワークおよび前記第2結合同調ネットワークは、前記共振ネットワーク内の位相を調節ための結合同調ネジを備える、
請求項1に記載の減結合アンテナ。
【請求項5】
前記共振ネットワークは、共振室と、前記共振室内に位置する柱状共振体と、前記共振ネットワーク内の周波数を調節することに用いられ、前記柱状共振体と同軸の周波数同調ネジと、を備える、
請求項1に記載の減結合アンテナ。
【請求項6】
前記アンテナポートのポート数および前記アンテナアレイのアレイ数はいずれもMであり、それに対応して、前記調節可能な減結合ユニットはM個の入力端およびM個の出力端を有し、Mは2以上の整数である、
請求項1に記載の減結合アンテナ。
【請求項7】
前記調節可能な減結合ユニットは、少なくとも2つの共振ネットワークを備え、共振ネットワーク同士間が第2結合同調ネットワークを介して接続される、
請求項1に記載の減結合アンテナ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の減結合アンテナの減結合方法であって、
減結合信号を生成するように前記減結合ネットワークを制御することと、
前記減結合信号により、前記少なくとも2組のアンテナアレイ間で生成された結合信号を除去することと、を含む、
減結合アンテナの減結合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ減結合の技術分野に関し、例えば、減結合アンテナおよびその減結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムの急速な発展に伴い、通信システムの信号容量およびスループットを向上させるために、無線周波数フロントエンドの多入力多出力(Multiple−Input Multiple−Output、MIMO)技術は、ますます業界に重視され、大規模なアレイアンテナシステムは近年の通信技術研究のホットスポットとなっている。アンテナアレイ数が増えるため、複数のアンテナが限られたスペース内に集積され、アンテナアレイ間の間隔は半波長よりも遥かに小さい。これにより、アンテナアレイ間の関連性が大きく向上し、アンテナ間の結合性が強くなる。比較的強いアンテナ結合性により、チャネル間の自己干渉が激しくなり、通信チャネルの信号対雑音比が悪化し、チャネル容量が小さくなり、放射効率が低下するだけでなく、通信システム自らのポートの定在波、システムの誤警報率の上昇等にも影響を与える。大規模なアンテナシステムを小型化するとともに、アンテナアレイ間の干渉を低減することを維持するために、アンテナアレイ間の減結合技術は研究すべき課題となっている。
【0003】
関連技術において、図1に示すように、複数のアンテナアレイは互いに独立し、アンテナアレイ間の減結合は、アンテナアレイ間の空間距離を増加することで実現されるが、アンテナアレイ数の増加に従い、アンテナの寸法はますます大きくなり、市場の応用需要を満たしにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、アンテナアレイ間で生成された結合信号を除去可能な減結合アンテナおよびその減結合方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、アンテナポート、減結合ネットワーク、給電ネットワーク、移相ネットワークおよび少なくとも2組のアンテナアレイを備える減結合アンテナであって、
前記移相ネットワークが前記少なくとも2組のアンテナアレイにそれぞれ接続され、
前記給電ネットワークの入力端が前記減結合ネットワークに接続され、前記給電ネットワークの出力端が前記移相ネットワークに接続され、
前記減結合ネットワークが前記アンテナポートと前記給電ネットワークとの間に設けられ、前記減結合ネットワークは、前記少なくとも2組のアンテナアレイ間で生成された結合信号を除去するように構成される減結合アンテナを提供する。
【0006】
好ましくは、前記アンテナアレイ間の間隔は、所定値以下である。
【0007】
好ましくは、前記減結合ネットワークは、N段の調節可能な減結合ユニットを備え、Nは正の整数であり、1段目の調節可能な減結合ユニットの入力端が第1位相遅延ネットワークを介して前記アンテナポートに接続され、N段目の調節可能な減結合ユニットの出力端が第2位相遅延ネットワークを介して前記給電ネットワークの入力端に接続される。
【0008】
好ましくは、i段目の調節可能な減結合ユニットとi+1段目の調節可能な減結合ユニットとが第1結合同調ネットワークを介して接続され、1≦i≦N−1であり、Nは3以上である。
【0009】
好ましくは、前記調節可能な減結合ユニットは、少なくとも2つの共振ネットワークを備え、共振ネットワーク同士間が第2結合同調ネットワークを介して接続される。
【0010】
好ましくは、前記i段目の調節可能な減結合ユニットとi+1段目の調節可能な減結合ユニットとが第1結合同調ネットワークを介して接続されることは、
i段目の調節可能な減結合ユニットにおける共振ネットワークが、第1結合同調ネットワークを介してi+1段目の調節可能な減結合ユニットにおける共振ネットワークに接続されることを含む。
【0011】
好ましくは、前記第1結合同調ネットワークおよび前記第2結合同調ネットワークは、前記共振ネットワーク内の位相を調節ための結合同調ネジを備える。
【0012】
好ましくは、前記共振ネットワークは、共振室と、前記共振室内に位置する柱状共振体と、前記共振ネットワーク内の周波数を調節することに用いられ、前記柱状共振体と同軸の周波数同調ネジと、を備える。
【0013】
好ましくは、前記アンテナポートのポート数および前記アンテナアレイのアレイ数はいずれもMであり、それに対応して、前記調節可能な減結合ユニットはM個の入力端およびM個の出力端を有し、Mは2以上の整数である。
【0014】
好ましくは、前記調節可能な減結合ユニットは、少なくとも2つの共振ネットワークを備え、共振ネットワーク同士間が第2結合同調ネットワークを介して接続される。
【0015】
本開示は、上記いずれか1項に記載の減結合アンテナのの減結合方法であって、
減結合信号を生成するように前記減結合ネットワークを制御することと、
前記減結合信号により、前記少なくとも2組のアンテナアレイ間で生成された結合信号を除去することと、
を含む減結合アンテナの減結合方法を更に提供する。
【発明の効果】
【0016】
本開示の技術案では、アンテナポート、減結合ネットワーク、給電ネットワーク、移相ネットワークおよび少なくとも2組のアンテナアレイを備える減結合アンテナにおいて、前記移相ネットワークが前記少なくとも2組のアンテナアレイにそれぞれ接続され、前記給電ネットワークの入力端が前記減結合ネットワークに接続され、前記給電ネットワークの出力端が前記移相ネットワークに接続され、前記減結合ネットワークが前記アンテナポートと前記給電ネットワークとの間に設けられ、前記減結合ネットワークは、前記少なくとも2組のアンテナアレイ間で生成された結合信号を除去する。本発明の技術案によれば、アンテナポートと給電ネットワークとの間に減結合ネットワークを設け、アンテナアレイ間で生成された結合信号を除去し、更に、小空間のアンテナアレイ構造を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】関連技術におけるアンテナアレイネットワークのトポロジーマップである。
図2】一実施例のアンテナアレイネットワークのトポロジーマップである。
図3】一実施例の減結合アンテナのパラメータ伝達の模式図である。
図4】一実施例の減結合ネットワーク(CNDN)行列の調節可能因子の模式図である。
図5】一実施例の減結合ネットワーク(CNDN)の実物モデル図である。
図6】一実施例の減結合ネットワーク(CNDN)の効果図である。
図7A】一実施例の減結合アンテナの構成模式図である。
図7B図7Aにおける少なくとも2組のアンテナアレイ75の構成模式図である。
図8】一実施例の減結合アンテナの減結合方法のフローチャートである。
図9図2における共振ネットワーク720の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付される図面は、参照して説明するためのものに過ぎず、本発明の実施例を限定するものではない。
【0019】
図7Aは、一実施例の減結合アンテナの構成模式図である。アンテナポート71、減結合ネットワーク72、給電ネットワーク73、移相ネットワーク74および少なくとも2組のアンテナアレイ75を備える本発明の実施例の減結合アンテナにおいて、前記移相ネットワーク74が前記少なくとも2組のアンテナアレイ75にそれぞれ接続され、前記給電ネットワーク73の入力端が前記減結合ネットワーク72に接続され、前記給電ネットワーク73の出力端が前記移相ネットワーク74に接続され、前記減結合ネットワーク72が前記アンテナポート71と前記給電ネットワーク73との間に設けられ、前記減結合ネットワーク72は、前記少なくとも2組のアンテナアレイ75同士間で生成された結合信号を除去するように構成される。
【0020】
本発明の実施例において、好ましくは、図7Bに示すように、前記少なくとも2組のアンテナアレイ75は、複数のアンテナ素子7511を備えてもよく、アンテナアレイ751間の間隔は所定値以下である。
【0021】
アンテナアレイ751間の間隔が所定値以下であれば、アンテナ構造の小型化の要求を満たすことができる。
【0022】
本発明の実施例において、好ましくは、図2に示すように、前記減結合ネットワーク72は、N段の調節可能な減結合ユニットを備え、Nは正の整数である。
【0023】
1段目の調節可能な減結合ユニット721の入力端が第1位相遅延ネットワーク10を介して前記アンテナポート71に接続され、N段目の調節可能な減結合ユニット72Nの出力端が第2位相遅延ネットワーク20を介して前記給電ネットワーク73の入力端に接続される。
【0024】
Nの値は、実際の減結合パラメータに基づいて決定してもよい。
【0025】
本発明の実施例において、好ましくは、i段目の調節可能な減結合ユニット72iとi+1段目の調節可能な減結合ユニット72(i+1)とが第1結合同調ネットワーク30を介して接続され、1≦i≦N−1であり、Nは3以上である。
【0026】
本発明の実施例において、好ましくは、前記調節可能な減結合ユニットは、少なくとも2つの共振ネットワーク720を備え、共振ネットワーク720同士間が第2結合同調ネットワーク40を介して接続される。
【0027】
本発明の実施例において、好ましくは、前記i段目の調節可能な減結合ユニット72iとi+1段目の調節可能な減結合ユニット72(i+1)とが第1結合同調ネットワーク30を介して接続されることは、
i段目の調節可能な減結合ユニット72iにおける共振ネットワーク720が結合同調ネットワークを介してi+1段目の調節可能な減結合ユニット72(i+1)における共振ネットワーク720に接続されることを含む。
【0028】
本発明の実施例において、好ましくは、前記第1結合同調ネットワーク30および第2結合同調ネットワーク40は、共振ネットワーク720における位相を調節するための結合同調ネジである。
【0029】
本発明の実施例において、好ましくは、図9に示すように、前記共振ネットワーク720は、共振室7201と、前記共振室7201内に位置する柱状共振体7202と、共振ネットワーク720における周波数を調節することに用いられ、前記柱状共振体7202と同軸の周波数同調ネジ7203と、を備える。
【0030】
本発明の実施例において、好ましくは、前記アンテナポート71のポート数と少なくとも2組のアンテナアレイ75のアレイ数とは、いずれもMであり、それに対応して、前記調節可能な減結合ユニットは、M個の入力端およびM個の出力端を有し、M≧2である。
【0031】
本発明の実施例の減結合アンテナは、減結合ネットワークによってアンテナの減結合機能を実現する。該減結合アンテナは、予め設定された減結合パラメータに従って減結合ネットワークにおける各ネットワークの設計を行った後に、アンテナポートと前記給電ネットワークとの間に対応する減結合ネットワークを追加し、減結合ネットワークにおける同調ネジを調節することにより、アンテナシステムの減結合を実現する。
【0032】
以下、適用例を参照しながら、本発明の実施例の形態について説明する。
【0033】
図1に示すように、MIMOアンテナシステムについては、M個のアンテナチャネルを有し、各アンテナチャネル同士間が互いに独立し、Mが正の整数であると仮定する。図1において、COMが合波を表し、DIVが分波を表し、ANT+45°およびANT−45°はそれぞれ1本のアンテナ信号を表す。通常の場合、MIMOアンテナシステムは、アンテナアレイ間の空間間隔を広げることでアンテナアレイ間の結合を減少させ、この時、MIMOアンテナシステムのネットワーク特徴行列は、全ての行列要素がゼロに近いと表現される。アンテナアレイ数の増加に従い、アンテナアレイ間の距離が小さくなり、アンテナアレイ間の結合が大きくなる。この時、MIMOアンテナシステムのネットワーク行列は、対角成分がゼロに近く、非対角成分がゼロではないことを特徴とする1つの非ゼロ行列になる。MIMOアンテナシステムが小型体積の要求を満たすとともに、信号整合の要求を満たすために、MIMOアンテナシステムの後端に、図1および図2に示す減結合ネットワーク72(decoupling network、CNDN)のような調節可能な減結合ネットワークを導入する必要があり、減結合ネットワーク72のネットワーク行列SDは1つのN×Nの行列であり、該行列内の行列要素は調節可能である。図2において、p1、p2は減結合ネットワーク72の入力端を表し、p3、p4は減結合ネットワーク72の出力端を表す。
【0034】
図3に示すパラメータ伝達模式図を参照し、図3におけるa1、a2は2ポートのネットワークの入射信号を表し、b1、b2は2ポートのネットワークの反射信号を表す。本発明の実施例は、減結合アンテナアーキテクチャーにおける複数のネットワーク行列について以下のように定義する。
【0035】
Sは、減結合ネットワーク72が追加されたアンテナアーキテクチャーのネットワークパラメータである。ここで、アンテナアーキテクチャーは2組の以上アンテナアレイを含む。
は、減結合ネットワーク72のネットワークパラメータである。
は、アンテナアーキテクチャーのネットワークパラメータである。
Γinは、減結合ネットワーク72が追加されたアンテナアーキテクチャーSの反射係数である。
Γは、アンテナアーキテクチャーSの反射係数である。
【0036】
以上の定義に基づき、減結合ネットワーク72のネットワークパラメータSは、式(1)に示すように、散乱パラメータ行列によって表示できる。
【0037】
【数1】
ただし、S11は減結合ネットワーク72における1番目のポートの反射係数を表し、S22は減結合ネットワーク72における2番目のポートの反射係数を表し、S12は1番目のポート〜2番目のポートの伝達係数を表し、S21は2番目のポート〜1番目のポートの伝達係数を表す。
【0038】
アンテナポート71と給電ネットワーク73との間に減結合ネットワーク72を追加した後に、マイクロ波ネットワーク理論に基づき、行列Sおよび行列Sで行列Sを特徴付けることができ、行列Sの式は式(2)である。
【0039】
【数2】
【0040】
減結合ネットワーク72が追加されたアンテナアーキテクチャーSの反射係数Γinの式は式(3)である。
【0041】
【数3】
ただし、ΓはアンテナアーキテクチャーSの反射係数である。
【0042】
本発明の実施例において、合理的な減結合ネットワークSを設計するために、減結合ネットワーク72が追加されたアンテナアーキテクチャーSの反射係数Γinをゼロ行列に等しくするまたは接近する必要があり、減結合ネットワーク72が追加されたアンテナアーキテクチャーSの反射係数Γinは、アンテナアレイ間の信号の結合度を表す。
【0043】
これにより、Γin=0(全ての結合を除去するという理想的な条件)である場合、アンテナアーキテクチャーSの反射係数Γと減結合ネットワークのネットワークパラメータSとの関係が以下のように得られる。
【0044】
【数4】
【0045】
つまり、実際の減結合アンテナアーキテクチャーの設計において、1つの減結合ネットワークSを設計すれば、アンテナアレイ間で生成された結合信号の除去を実現できる。
【0046】
本発明の実施例において、減結合ネットワークSは、アンテナアーキテクチャーによって動的調節を行うことができ、減結合ネットワークSのパラメータの調製可能をどのように実現するかについては、図4を参照すればよい。図4は、本発明の実施例の4ポートの減結合ネットワーク72のトポロジーマップであり、減結合ネットワーク72は1つの4ポートの結合行列Mで表すことができる。
【0047】
【数5】
ただし、Mは1つの4×4ポートの直接結合ゼロ行列であり、Mは1つの6×6の共振結合行列であり、Mpnは入力/出力(I/O)ポートの結合行列である。
【0048】
本発明の実施例において、共振結合行列MのネットワークパラメータSは以下のように表示することができる。
【0049】
【数6】
ただし、Iは4×4の位相検出行列であり、jは虚部の記号であり、sは減結合ネットワーク72の周波数変数であり、であり、fは周波数を表し、fは減結合ネットワーク72の中心周波数であり、BWは減結合ネットワーク72の帯域幅である。
【0050】
マイクロ波ネットワーク理論によれば、調節可能な減結合ネットワーク72のネットワークパラメータSは以下のように表される。
【0051】
【数7】
θ1およびθ2は、第1位相遅延ネットワーク10の位相角を表し、θ3およびθ4は、第2位相遅延ネットワーク20の位相角を表す。
【0052】
図4において、共振結合行列Mは以下のように表すことができる。
【0053】
【数8】
ただし、M11、M22、M33、M44、M55、M66は、各共振室体の自己結合行列パラメータを表し、M12=M21、M23=M32、M34=M43、M45=M54、M56=M65、M25=M52、M16=M61は、隣接する共振室体の結合行列パラメータを表し、他の結合行列パラメータは、ここでいずれも0で表す。該共振結合行列Mにおける自己結合行列パラメータおよび結合合行列パラメータは、調節可能因子βでパラメータの調節可能を実現する。行列Mの行列パラメータを変えることにより、減結合ネットワークSのパラメータの調節可能を実現する。
【0054】
図5は、減結合ネットワークの実物モデル図である。ここで、行列内の各自己結合行列パラメータM11、M22、M33、M44、M55、M66については、周波数同調ネジ7203によってその値の変化量を変え、行列内の各結合合行列パラメータM12=M21、M23=M32、M34=M43、M45=M54、M56=M65、M25=M52、M16=M61については、結合同調ネジ7204によってその値の変化量を変え、同調ネジの深さを制御することによって共振結合行列Mモデルのパラメータを変え、アンテナアーキテクチャーのネットワークパラメータSとのマッチングを実現することにより、調節可能な減結合ネットワークSが追加された新規なマルチアンテナアーキテクチャーポートの反射係数Γinがほぼゼロになる。
【0055】
図6は、本発明の実施例の減結合ネットワークの効果図である。図6に示すように、横軸は周波数を表し、縦軸は結合度を表す。本例において、アンテナポートが2ポートであり、S21が2ポートの間の結合度を表すと仮定し、図から分かるように、減結合ネットワーク72を追加する前に(S21が相殺される前の曲線に対応する)、結合度が比較的高く、減結合ネットワーク72を追加した後に(S21が相殺された後の曲線に対応する)、結合度が著しく低下し、アンテナポートにおける結合信号の除去を実現し、更に、小空間のアンテナアレイ構造を設計することができる。
【0056】
図8は、本発明の実施例の減結合アンテナの減結合方法のフローチャートであり、該減結合アンテナは、上記いずれか1種の減結合アンテナであり、図8に示すように、前記方法は以下のステップを含む。
【0057】
ステップ810において、減結合信号を生成するように前記減結合ネットワークを制御する。
【0058】
ステップ820において、前記減結合信号により、前記少なくとも2組のアンテナアレイ間で生成された結合信号を除去する。
【0059】
一実施例は、減結合アンテナの減結合方法を更に提供し、該減結合アンテナは上記いずれか1種の減結合アンテナであり、該方法は、ステップ1)およびステップ2)を含む。
【0060】
ステップ1)において、アンテナポートと給電ネットワークとの間に減結合ネットワークを設ける。
【0061】
本発明の実施例において、好ましくは、アンテナポートと給電ネットワークとの間に減結合ネットワークを設けることは、
アンテナポートと給電ネットワークとの間に、N段の調節可能な減結合ユニットを設けることを含む。
ここで、Nは正の整数であり、1段目の調節可能な減結合ユニットの入力端が第1位相遅延ネットワークを介して前記アンテナポートに接続され、N段目の調節可能な減結合ユニットの出力端が第2位相遅延ネットワークを介して前記給電ネットワークの入力端に接続される。
【0062】
ステップ2)において、前記減結合ネットワークにより、少なくとも2組のアンテナアレイ間で生成された結合信号を除去する。
【0063】
本発明の実施例において、好ましくは、前記調節可能な減結合ユニットは少なくとも2つの共振ネットワークを備える。
ここで、共振ネットワーク同士間が第1結合同調ネットワークを介して接続される。i段目の調節可能な減結合ユニットにおける共振ネットワークは、第2結合同調ネットワークを介してi+1段目の調節可能な減結合ユニットにおける共振ネットワークに接続される。
【0064】
本発明の実施例において、前記第1結合同調ネットワークおよび前記第2結合同調ネットワークは結合同調ネジであり、前記共振ネットワークは、共振室と、前記共振室内に位置する柱状共振体と、前記柱状共振体と同軸の周波数同調ネジとを備える。
【0065】
減結合ネットワークにより、上記少なくとも2組のアンテナアレイ間で生成された結合信号を除去することは、
前記結合同調ネジによって共振ネットワークにおける位相を調節し、前記周波数同調ネジによって共振ネットワークにおける周波数を調節し、上記少なくとも2組のアンテナアレイ間で生成された結合信号を除去することを含む。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示は、アンテナポートと給電ネットワークとの間に減結合ネットワークを設けることにより、アンテナアレイ間で生成された結合信号の除去を実現し、更に、占有空間の小さいアンテナアーキテクチャーを設計することができる減結合アンテナおよびその減結合方法を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9