特許第6876829号(P6876829)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876829アレイ基板及びその製造方法並びに表示パネル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876829
(24)【登録日】2021年4月28日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】アレイ基板及びその製造方法並びに表示パネル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20210517BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20210517BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20210517BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   G09F9/30 310
   G09F9/00 338
   H01L29/78 619A
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-562455(P2019-562455)
(86)(22)【出願日】2018年4月2日
(65)【公表番号】特表2020-507817(P2020-507817A)
(43)【公表日】2020年3月12日
(86)【国際出願番号】CN2018081499
(87)【国際公開番号】WO2019029169
(87)【国際公開日】20190214
【審査請求日】2019年7月31日
(31)【優先権主張番号】201710676914.3
(32)【優先日】2017年8月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516189213
【氏名又は名称】クンシャン ゴー−ビシオノクス オプト−エレクトロニクス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Kunshan Go−Visionox Opto−Electronics Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サン ジェンシュアン
【審査官】 中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−044936(JP,A)
【文献】 特開2012−177927(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0098797(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0293883(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0015835(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00 − 9/46
H01L 51/50
H01L 27/32
H05B 33/00 − 33/28
H01L 21/336
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージエリアを有する基板と、
上記基板上に所在する金属層と、
前記パッケージエリア内のみに形成され、前記パッケージエリア内の上記金属層を覆う保護層と、
前記パッケージエリアを覆い、前記保護層に配置されたフリットと、
を備えることを特徴とするアレイ基板。
【請求項2】
上記保護層の素材が窒化シリコン、酸化シリコン及びオキシ窒化シリコンのうち一つ又はその組合せであることを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項3】
上記パッケージエリア内の上記保護層の表面であり上記金属層とは逆側にある面のうち少なくとも一部分が、凹面、凸面又は凹凸面であることを特徴とする請求項に記載のアレイ基板。
【請求項4】
上記凹面又は上記凸面が円筒、円錐、円錐台及び半球のうち1個、或いは2個以上の組合せであり、上記凹凸面が凹面及び凸面をインタレース形態にてつなぐこと又はある間隔でインタレース形態にて分布させることで形成されたものであることを特徴とする請求項に記載のアレイ基板。
【請求項5】
上記基板が表示エリア及び非表示エリアを有し、上記金属層がその非表示エリア内に形成された複数個の副層を備え、誘電体層がそれら複数個の副層の間に配置されており、それら複数個の副層が、その表示エリア内に所在する駆動チップによりもたらされる電気信号を伝送するよう構成されたファンアウトラインであることを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項6】
前記保護層は、2000Å以上4000Å以下の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載のアレイ基板。
【請求項7】
基板を準備しその基板上に少なくとも1個の金属層を形成する工程と、
上記金属層を覆う保護層を形成する工程と、
を有し、
前記基板は、パッケージエリアを有し、
前記保護層は、前記パッケージエリア内のみに形成され、前記パッケージエリア内の前記金属層を覆い、
前記保護層に配置され、前記前記パッケージエリアをフリットで覆う工程を有することを特徴とするアレイ基板製造方法。
【請求項8】
上記基板が表示エリア及び非表示エリアを有し、上記パッケージエリアがその非表示エリア内に所在しており、
上記金属層が上記非表示エリア内及び上記表示エリア内双方に形成され、
上記保護層が上記非表示エリア内及び上記表示エリア内双方に形成される方法であり、更に、上記保護層のうち上記表示エリア内コンタクトホール位置に対応する部分を除去することでそのコンタクトホールを露出させる工程を有することを特徴とする請求項に記載のアレイ基板製造方法。
【請求項9】
前記保護層は、2000Å以上4000Å以下の厚さを有することを特徴とする請求項に記載のアレイ基板製造方法。
【請求項10】
基板を準備する工程によってアレイ基板を製造する工程と、
ラスカバープレートを準備する工程と、
前記基板上に少なくとも一つの金属層を形成する工程と、
前記金属層を覆う保護層を形成する工程と、
を有し、
前記基板は、パッケージエリアを有し、
前記保護層は、前記パッケージエリア内のみに形成され、前記パッケージエリア内の前記金属層を覆い、
上記アレイ基板の前記パッケージエリア又は上記ガラスカバープレート上をフリットで覆いそれらアレイ基板及びガラス基板をパッケージングする工程と、
上記フリットに対するレーザ照射を実行する工程と、
を有することを特徴とする表示パネル製造方法。
【請求項11】
前記保護層は、2000Å以上4000Å以下の厚さを有することを特徴とする請求項10に記載の表示パネル製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の表示パネル製造方法によって形成された表示パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示はパネルディスプレイの分野、とりわけアレイ基板、その製造方法、表示パネル並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルは表示エリア(或いは能動エリア、AAエリア)及び非表示エリアを有する。表示エリアでは画素アレイを形成すべく複数個の画素が構成され、非表示エリアにはペリフェラルラインを形成すべく複数個の金属層が配置される。各画素は一般に少なくとも1個の薄膜トランジスタ並びにその薄膜トランジスタに接続された画素電極を有し、隣り合う2本のスキャニングライン並びに隣り合う2本のデータラインにより各画素が囲まれる。それらスキャニングライン及びデータラインは表示エリアから非表示エリアへと延び、非表示エリアのペリフェラルラインを介し駆動チップに電気的に接続され、それにより表示パネルの通常機構が実現される。ファンアウトラインは、スキャニングライン及びデータラインがつながる端から駆動チップ所在エリアにかけてのペリフェラルラインの集束により、形成される。即ち、複数本のペリフェラルラインが能動エリア付近の端では広い間隔、駆動チップ付近の端では狭い間隔を呈し、それによって扇形が実質的に形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
研究を通じ出願人が見いだしたところによれば、金属クラックはファンアウトライン特に金属リードではよくある現象であり、やがては表示パネルに輝線(明るい軌跡)をきたして表示パネルの歩留まりに対し多大な影響を及ぼすものである。従って、金属クラックの発生をどのようにして減らし更には避けるかが、本件技術分野に習熟した者(いわゆる当業者)が早急に解決すべき技術的課題である。
【0004】
本件開示の目的は、金属クラックの発生率を下げ表示パネルの画質を改善することができるアレイ基板、その製造方法、表示パネル並びにその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本件開示では、基板と、その基板上に所在する金属層と、その金属層を覆う保護層と、を有するアレイ基板が提案される。
【0006】
付随的には、その保護層の素材を窒化シリコン、酸化シリコン及びオキシ窒化シリコンのうち一つ又はその組合せとする。
【0007】
付随的には、その基板がパッケージエリアを有し、保護層がそのパッケージエリア内の金属層を覆うようにする。
【0008】
付随的には、そのパッケージエリア内の保護層の表面であり金属層とは逆側にある面のうち少なくとも一部分を凹面、凸面又は凹凸面とする。
【0009】
付随的には、それら凹面又は凸面を、円筒、円錐、円錐台及び半球のうち1個、或いは2個以上の組合せとし、凹凸面を、凹面及び凸面をインタレース形態にてつなぐこと又はある間隔でインタレース形態にて分布させることで形成する。
【0010】
対応するが如く、本件開示では更に、
基板を準備しその基板上に少なくとも1個の金属層を形成する工程と、
その金属層を覆う保護層を形成する工程と、
を有するアレイ基板製造方法が提案される。
【0011】
付随的には、その基板を、パッケージエリアを有するものとし、保護層を、そのパッケージエリア内の金属層を覆うものとする。
【0012】
付随的には、その基板を、表示エリア及び非表示エリアを有するものとし、パッケージエリアを非表示エリア内に所在させ、金属層を非表示エリア内及び表示エリア内双方に形成し且つ保護層を非表示エリア内及び表示エリア内双方に形成する方法であり、更に、保護層のうち表示エリア内コンタクトホール位置に対応する部分を除去することでそのコンタクトホールを露出させる工程を有するものとする。
【0013】
付随的には、その基板を、表示エリア及び非表示エリアを有するものとし、金属層を、その非表示エリア内に形成された複数個の副層を有するものとし、誘電体層をそれら複数個の副層の間に配置し、それら複数個の副層を、表示エリア内に所在する駆動チップによりもたらされる電気信号を伝送するよう構成されたファンアウトラインとする。
【0014】
対応するが如く、本件開示では更に表示パネルが提案される。本表示パネルは、アレイ基板及びガラスカバープレートを有し、そのアレイ基板が、基板と、その基板上に所在する金属層と、その金属層を覆う保護層と、を有し、アレイ基板又はガラスカバープレートのパッケージエリアをフリットで以て覆うことでそれらアレイ基板及びガラスカバープレートがパッケージングされたものである。
【0015】
対応するが如く、本件開示では更に、
上記アレイ基板製造方法を採用することでアレイ基板を製造し更にガラスカバープレートを準備する工程と、
そのアレイ基板又はガラスカバープレートのパッケージエリア上をフリットで覆い更にそれらアレイ基板及びガラス基板をパッケージングする工程と、
そのフリットに対するレーザ照射を実行する工程と、
を有する表示パネル製造方法が提案される。
【0016】
付随的には、7.2W〜7.5Wのレーザエネルギ並びに10mm/s〜11mm/sのレーザ移動速度で以てそのレーザ照射が実行されよう。
【発明の効果】
【0017】
従来技術とは対照的に、本件開示にて提案されるアレイ基板、その製造方法及び表示パネルによれば、基板上に金属層が形成された後にその金属層上に保護層が形成されるため、その保護層によりその金属層を守ることができ、且つ表示パネル内フリットについての後刻のレーザ照射によりその金属層に損傷が生じることを避けることができ、それにより金属クラックの発生率を下げて有益にも表示パネルの歩留まりを改善することができる。
【0018】
更に、パッケージエリア内の保護層の表面であり金属層とは逆側にある面のうち少なくとも一部分を凹面、凸面又は凹凸面とし、その面上にフリットを形成することで、それらフリット・保護層間の結合力を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】表示パネルの非表示エリアの部分構造模式図である。
図2】本件開示の一実施形態により提供されるアレイ基板製造方法のフローチャートである。
図3】本件開示の一実施形態により提供されるアレイ基板の非表示エリアの部分構造模式図である。
図4】本件開示の一実施形態により提供されるアレイ基板の頂面図である。
図5】本件開示の一実施形態により提供される表示パネルの非表示エリアの部分構造模式図である。
図6】本件開示の一実施形態により提供される表示パネルにおける金属クラックのデータダイアグラムである。
図7】本件開示の他実施形態により提供される表示パネルの非表示エリアの部分構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
表示パネル例えばOLED(有機発光ダイオード)表示パネルは、通常、互いに逆側に配設されたアレイ基板及びガラスカバープレートを有している。表示パネルは表示エリア及び非表示エリアを有していて、その非表示エリア内に設けられたパッケージエリアが、フリットで以て覆うことによるアレイ基板及びガラスカバープレートのパッケージングに用いられている。
【0021】
図1として示したのは表示パネルの非表示エリアの部分構造模式図である。図1に示す表示パネルは、互いに逆側に配設された基板及びガラスカバープレートを有している。非表示エリアでは基板上に複数個の金属層が形成されている。図1に示されている金属層は3個のみ、即ち下部金属層11、中間金属層12及び上部金属層13のみである。それら3個の金属層は誘電体層14によって相互分離されており、パッケージエリア内の上部金属層13をフリット15で以て直に覆った上で、基板及びガラスカバープレートをパッケージングすることで、表示パネルが形成されている。金属層、例えば非表示エリア内に形成された下部金属層11、中間金属層12及び上部金属層13はファンアウトワイヤに属しており、駆動チップを表示エリア内のデータライン又はスキャニングラインに接続し、その駆動チップによりもたらされる電気信号をそのデータライン又はスキャニングラインへと伝送するのに、用いられている。
【0022】
基板及びガラスカバープレートを好適にパッケージングするため、本件開示の一実施形態に係る方式では、基板が準備され、その基板上に少なくとも1個の金属層が形成され、更にその金属層を覆う保護層が形成される。その保護層で金属層を守ることができ、後にその表示パネル内のガラスフリットにレーザが照射されたときにその金属層が損傷することを避ける(例えばレーザの前進方向に対し垂直な前進方向に沿った金属層内クラックを避ける)ことができ、それにより金属クラックの発生を減らすことができる。出願人は、更に、本方法により表示パネルでの輝線不良率が低減されることをも、予想外にも見いだしている。その原因は、金属層の損傷又はクラックによって、表示エリア内のデータライン又はスキャニングラインが信号を受信できなくなり又は不正確な受信信号となり、ひいては表示パネル上に輝線が生じうることにある。
【0023】
本件開示の内容をより明瞭且つ容易に理解しうるようにするため、以下、図面を参照しつつ本件開示の内容を子細に述べることにする。無論、本件開示はそれら具体的実施形態に限定されるものではなく、いわゆる当業者にとり周知な一般的置換もまた本件開示の保護範囲内に入るものとする。
【0024】
第2に、本件開示は模式図により詳述されている。本件開示の諸実施形態を詳述するに当たっては、例証を目的とし、それら模式図を一般的な比率に従い局所的に拡大することはしておらず、またそれらが本件開示に対する限定事項として認められるべきではない。
【0025】
図2として示したのは本件開示の一実施形態により提供されるアレイ基板製造方法のフローチャートである。図2に示すように、本件開示にて提案されるアレイ基板製造方法は、
工程S01:基板を準備し少なくとも1個の金属層をその基板上に形成する工程、並びに
工程S02:その金属層を覆う保護層を形成する工程
を有するものである。
【0026】
図3は、本件開示の一実施形態により提供されるアレイ基板の非表示エリアの部分構造模式図である。図2図3と併せ参照し、本件開示により提案されるアレイ基板製造方法を詳述すると、以下の通りとなる。
【0027】
工程S01では基板100が準備される。本実施形態ではその基板100が表示エリア及び非表示エリアを有し、その非表示エリアで表示エリアが囲まれるところ、図3にはその非表示エリアのうちパッケージエリアを含む部分のみが示されている。無論、他の諸実施形態に従い非表示エリア及び表示エリアを基板の別々の面上に所在させてもよい。例えば、非表示エリアを基板の背面上に所在させ、表示エリアの領域が非表示エリアで占められないようにすることで、解像度を改善し狭フレーム化又は無フレーム化を達成することができる。本件開示はこれに限定されない。
【0028】
基板100は透明素材、例えばガラス、石英、シリコンウェハ、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)又は金属箔で作成すればよい。基板100をリジッド(堅固)基板としてもフレキシブル(可撓)基板としてもよい。基板100の選択及び前処理はいわゆる当業者にとりなじみ深いことであるので詳述しない。表示エリアは、後に、スキャニングライン、データライン、トランジスタスイッチ又は画素電極を基板100上に形成するのに用いられ、非表示エリアは、後に、ファンアウトワイヤを基板100上に形成し表示エリアのスキャニングライン、データライン等を駆動チップに接続するのに用いられる。
【0029】
非表示エリアは更にパッケージエリアを含んでおり、そのパッケージエリアをアレイ基板形成後にフリットで以て覆いアレイ基板及びガラスカバープレートをパッケージングすることで、表示パネルを形成することができる。パッケージエリアにはファンアウトワイヤも設けられている。一実施形態に係るパッケージエリアは環状であり表示エリアを囲んでいる。図3はその非表示エリアのうちパッケージエリアを含む部分のみの断面図である。
【0030】
次に、少なくとも1個の金属層が基板100上に形成される。本実施形態では、少なくとも1個の金属層が基板100の非表示エリア内に形成される。好ましくは3個の金属層、即ち下部金属層110、中間金属層120及び上部金属層130が基板100の非表示エリア内に形成される。他の実施形態では、そのアレイ基板の実条件にもよるが、2個、4個又はより多数の金属層が形成されることもあろう。本件開示はこの点を限定するものではない。
【0031】
好ましくは、基板100の非表示エリア内に複数個の金属層が形成されている間に、基板100の表示エリア内に複数個の金属膜層、例えばデータライン、スキャニングライン又は画素電極が形成される。即ち、データライン、スキャニングライン、画素電極その他の金属膜層が表示エリア内に形成されている間に、複数個の金属層が非表示エリア内に形成される。従って、それら複数個の金属層の素材は、同時に表示エリア内に形成されるデータライン、スキャニングライン、画素電極その他の金属膜層の素材に依存する。それら複数個の金属層の素材が互いに別になることも全く同じになることもありうる。それら複数個の金属層の素材に含まれうるものとしては、これに限られるものではないが銅、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、クロム、モリブデン、タングステン並びにそれらの合金がある。無論、それら複数個の金属層を基板100の非表示エリア内に別々に形成してもよい。
【0032】
それら複数個の金属層は誘電体層140により分離される;相異なる金属層間にある誘電体層140は、別々の工程で形成されるとはいえ、いずれも金属層を分離しうるよう構成される。そのため図3ではそれらを区別していない。ご理解頂けるように、誘電体層140の形成も表示エリアにおける絶縁層の形成と同期させる。例えば、誘電体層140のうちいずれか一層をトランジスタのゲート絶縁層、層間絶縁層等を形成するプロセスにて形成した場合、その誘電体層の素材は、同時形成されるゲート絶縁層及び層間絶縁層のそれと同じになる。誘電体層140の素材に含まれるものとしては、これに限られるものではないが酸化物や窒化物がある。無論、相異なる金属層間にある誘電体層の素材が異なっていてもよい。ご理解頂けるように、誘電体層140を複数個の金属層間に別々に形成してもよい。即ち、非表示エリア内に形成される誘電体層及び複数個の金属層を、表示エリア内の絶縁層又は金属層と同時に形成しても別々に形成してもよい。
【0033】
複数個の金属層と誘電体層とを基板100の非表示エリア内に形成する方法は、以下概述する通り、後掲の諸工程を有している。
【0034】
まず、好ましくは化学気相成長、例えば高濃度プラズマ化学気相成長(HDPCVD)、低圧化学気相成長(LPCVD)、超高真空化学気相成長(UHVCVD)等によって、第1誘電体層が基板100上に形成される。その上で、好ましくはスパッタリングによって下部金属層がその第1誘電体層上に形成され、更にその下部金属層を、例えばフォトレジストのスピンコーティング、露出、現像及びエッチングプロセスを含むパターニングプロセスを用いパターニングすることで、下部金属層110が形成される。その上で、上掲の工程を繰り返すことで、第2誘電体層が下部金属層110上に形成され、その第2誘電体層により下部金属層110が覆われる。その上で中間金属が第2誘電体層上に形成され、エッチングされて中間金属層120となる。その上で第3誘電体層が中間金属層120上に形成され、その第3誘電体層により中間金属層120が覆われる。最後に、上部金属が第3誘電体層上に形成され、エッチングされて上部金属層130となる。それら第1誘電体層、第2誘電体層及び第3誘電体層により、図3に示す誘電体層140が形成される。ご理解頂けるように、金属層は上述の三層に限定されずないので、金属層を2個だけ有するのでも4個以上の金属層を有するのでもよい。これに対応するが如く、誘電体層の個数もまた金属層の個数に従い適合的に変更することができる。
【0035】
工程S02では保護層が形成され、その保護層により金属層が覆われる。本実施形態では、非表示エリア内の複数個の金属層のうち上部金属層130の上に、保護層150が形成される。その保護層150を単層構造としてもよいし積層構造としてもよい。保護層150の素材に含まれるものとしては、これに限られるものではないが窒化シリコン、酸化シリコン又はオキシ窒化シリコン等がある。無論、保護層150の素材を、いわゆる当業者にとり既知で、その金属層が後のパッケージングにて用いられるレーザ照射で損傷することを防げる他の素材としてもよい。窒化シリコン、酸化シリコン又はオキシ窒化シリコンは本件技術分野で通例な素材であるので、本実施形態にて好適素材として用いることができる。好ましくは保護層150の厚みを2000Å〜4000Åとし、最も好ましくは保護層150の厚みを3000Åとする。その厚みの保護層150であれば、金属層がレーザ照射で損傷することを防ぐことができ、最終的に形成される表示パネルの厚みに悪影響が及ぶこともない。
【0036】
本実施形態では保護層150が化学気相成長により形成される。保護層150を形成するための条件は、好ましくは以下の通りとする:チャンバ温度を350℃〜400℃、チャンバ圧を900mTorr〜1100mTorr、膜形成時間を350秒〜450秒とし、最も好ましくはチャンバ温度を385℃、チャンバ圧を1000mTorr、膜形成時間を400秒とする。
【0037】
好ましくは、保護層150が非表示エリア内の上部金属層130上に形成されている間に表示エリア内でも保護層が形成される。即ち、保護層が基板100全体に亘り同時形成されるのであり、表示エリア内コンタクトホール配設位置にてその保護層をエッチングしてそのコンタクトホールを露出させることで、表示エリアの接続に対するその保護層の影響を避けることができる。表示エリア内保護層形成に先行する膜層は限定されない。例えば、データラインが表示エリア内に形成されている間に上部金属層が非表示エリア内に形成され、その後、保護層を直に形成する場合は、保護層が表示エリア内のデータライン上に形成され、他の膜層(例.スキャニングライン)をデータライン上に形成してから保護層を表示エリア内に更に形成する必要がある場合は、保護層が表示エリア内のスキャニングライン上に形成される。
【0038】
保護層150の形成先は上部金属層130上であり、その保護層150を用いその金属層を守り、後のレーザ照射中の金属層へのレーザの影響を避けることで、金属クラックの発生を避け、金属クラックの発生率を下げて、ついには表示パネルの歩留まりを改善することができる。
【0039】
その上で保護層150をパターニングしてもよい。好ましいことに、保護層150をエッチングし、パッケージエリア内の上部金属層130上にある保護層150のみを留め置くことができる(図3参照)。図4は本件開示の一実施形態により提供されるアレイ基板の頂面図である。図4に示すアレイ基板は表示エリア10及びその表示エリア10を囲む非表示エリア20を有している。その非表示エリア20内にはパッケージエリア30及びバインディングエリア40が設けられている。パッケージエリア30は環状で、表示エリア10を囲んでおり、またバインディングエリア40は非表示エリア20内、パッケージエリア30とアレイ基板の一辺の縁との間に所在している。好ましくは、保護層150をそのパッケージエリア30内のみに形成する。こうすることで、金属クラックの発生を減らせるだけでなく、非表示エリアの残りエリアにて保護層の形成により静電欠陥が引き起こされること、例えばバインディングエリア40内の検出回路(CT回路)がその保護層で覆われたことで静電欠陥が引き起こされることを、避けることもできる。無論、非表示エリアの残りエリア内の保護層150をエッチングしなくてもよい。即ち、保護層150を非表示エリア全体に所在させるのである。こうすると、輝線の発生を減らすことができるが、静電欠陥の発生は増えることとなろう。即ち、パッケージエリア上での保護層150の形成による金属クラック発生の低減に加え、非表示エリアの残り位置における保護層の形成により、輝線の発生を減らすことができる。
【0040】
保護層150がエッチングされる際に、表示エリアの保護層を同時にエッチングしてもよい。即ち、保護層形成後に、表示エリア内コンタクトホール所在位置にある保護層をエッチングすることが必要であり、そうしないとそのコンタクトホールを露出させることができない。そのエッチングプロセスにて、パッケージエリアを除く非表示エリア内残りエリア内の保護層をエッチングにより除去してもよいし、表示エリア内の全ての保護層を除去してもよいのであり、これは現実の状況により左右される。
【0041】
具体的には、保護層150上をフォトレジスト層で覆い、それをマスクによって露出させる。ポジ型フォトレジストの場合、そのマスクにより表示エリア内のコンタクトホールのみを露出させても、表示エリア全体を露出させても、パッケージエリアを除く非表示エリアの他エリアを露出させても、パッケージエリアを除く全エリアを露出させてもよい。用いられるマスクは具体的状況に従い定まる。その上で、その露出済フォトレジスト層を現像することでパターン化フォトレジスト層が形成される。その後、そのパターン化フォトレジスト層をマスクとして用い保護層がエッチングされる。最後に、残りのフォトレジスト層が剥ぎ取られて所要保護層パターンが形成される。
【0042】
注記すべきことに、パターン化フォトレジストをマスクとして用い保護層をエッチングするプロセスにてその保護層下の他層が損傷することは、防がれるべきである。例えば、パッケージエリアを除く非表示エリア内の他エリアにて保護層がエッチングされる際に保護層下の上部金属層が損傷することは、防がれるべきである。この問題を解決するにはエッチング選択比を調整すればよく、適切なエッチング選択比を選択して保護層をエッチングすることで、保護層向けには高いエッチング速度としつつ、他の膜層向けには低いエッチング速度とし又は他の膜層がエッチングされないようにすることができる。例えば、保護層をプラズマエッチングでエッチングし、そのエッチングガスを、これに限られるものではないがCHF(ペンタフルオロエタン)、H(水素)及びAr(アルゴン)の混合物を含むものとし、他の膜層に対する保護層のエッチング選択比を5:1より大きくするのが望ましい。
【0043】
加えて、保護層150をエッチングする工程にて、パッケージエリア内の保護層150を部分エッチングすることで、パッケージエリア内保護層150の表面であり上部金属層130とは逆側にある面のうち少なくとも一部分を、凹面、凸面又は凹凸面としてもよい。即ち、保護層150の表面であり上部金属層130とは逆側にある面のうち少なくとも一部分を非平面とすることで、より良好な結合力を、後刻被覆されるフリットとその保護層150との間にもたらすことができる。即ち、フリット・保護層間結合力がその非平面の働きで強まり、最終的に形成される表示パネルの信頼性が改善されることとなる。
【0044】
好ましいのは、その凹面又は凸面を円筒、円錐、円錐台及び半球のうち1個とし又は2個以上の組合せとすること、並びに凹面及び凸面をインタレース形態にてつなげることで凹凸面を形成することであるが、凹面及び凸面をある間隔でインタレース形態にて分布させることで凹凸面を形成してもよい。例えば、凹面は保護層150の表面に形成された複数本の溝で形成される。それらの溝の寸法及び形状は同じでも異なっていてもよい。例えば、凸面は保護層150の表面上に形成された複数個の突起で形成される。それらの突起の寸法及び形状は同じでも異なっていてもよい。凹凸面は、保護層150の表面上に形成された複数本の溝及び複数個の突起により共同形成される。同様に、それらの溝及び突起の形状及びサイズは限られない。
【0045】
無論、保護層150をパッケージエリア内のみに形成してもよく、そうすることで、その保護層150がエッチングされることが防がれ、生産時間及びコストを短縮・低減することができる。例えば、パッケージエリアを露出させるマスクを作成し、そのマスクをマスクとして用い堆積・成長を実行することで、保護層を形成することができるが、その方法で作成される保護層の精度は比較的低くなる。製品仕様があまり高度でない場合や機器の能力が良好である場合に、マスクプレートを化学気相成長と組み合わせる方法を用いパッケージエリア内に保護層を形成するとよい。無論、保護層形成後にエッチングするのかそれとも所要個所のみに保護層を形成するのかは実条件に従い決められるべきであり、本件開示にて限定されるものではない。無論、いわゆる当業者にとり既知な他方法を用い保護層を形成してもよい。
【0046】
最終的には図4に示した構造が形成される。保護層150が形成された後、パッケージング前に、基板100の表示エリア内における各膜層の作成を完了させる。その作成方法はいわゆる当業者にとりなじみ深いものであるので詳述しないが、こうして最終的にアレイ基板の作成が完了する。
【0047】
対応するが如く、本件開示では更に、上述したアレイ基板製造方法を内包する表示パネル製造方法が提案されている。本表示パネル製造方法は、
アレイ基板の作成を完遂させ更にガラスカバープレート200を準備する工程と、
それらアレイ基板又はガラスカバープレート200のパッケージエリア上をフリット160で覆い更にそれらアレイ基板及びガラス基板200をパッケージングする工程と、を有している。フリット160で覆うことで、アレイ基板及びガラスカバープレート200をパッケージングして表示パネルを形成し、最終的には図5に示す構造を形成することが可能となる。フリット160をレーザ照射で熔融させることで、保護層150により金属層を守り、金属層におけるクロックを避け、クラックの発生率を下げて、表示パネルの歩留まりを改善することができる。
【0048】
図6として示したのは、本件開示の一実施形態により提供される表示パネルにおける金属クラックのデータ模式図である。図6に示すように、一例としてあるサイズ例えば5.5インチ(1インチ=約2.5cm)の表示パネルを採り上げ、パッケージエリアの上部金属層上に保護層を形成した上で確認を実行したところ、従前の20%(保護層非形成時)に比べクラックの発生率が顕著に下がっていた。指摘すべきことに、図の表内のローたる7.5W 11mm/sはレーザ照射の条件を表しており、そのうち7.5Wがレーザエネルギ、11mm/sがレーザ移動速度を表している。図から読み取れるように、保護層の形成を踏まえ、レーザ照射条件を調整することで、クラック現象を完全に避けることができる。より良好なレーザ照射条件は、レーザエネルギが7.2W〜7.5W、レーザ移動速度が10mm/s〜11mm/sというものである。
【0049】
表1として示したのは、本件開示の一実施形態により提供される表示パネルについての信頼性結果である。表1に示すように、本件開示により提供されたアレイ基板製造方法により製造される表示パネルの信頼性は確認されている。例えば、温度を60℃、湿度を90%RH、試験時間を120Hとして調温調湿試験を実施したところ、60Hまで試験が実施された時点で10個の表示パネルのうち1個にR/G/B暗点(赤/緑/青暗点)が現れた。研究により判明したところによれば、その不良点はアノード製造又はアノードエッチングの異常により生じたアノード黒点であって、クラックに関係するものではない。温度を60℃、試験時間を120Hとして高温動作試験を実施したところ、新たな異常は現れなかった。温度を70℃、試験時間を120Hとして高温貯蔵試験を実施したところ、やはり新たな異常は現れなかった。従って、パッケージエリアの上部金属層上に保護層を形成する方法は、クラックの発生率を低減させることができ且つ他の異常が生じないものであると、結論づけることができる。
【0050】
【表1】
【0051】
対応するが如く、本件開示では更に、上記アレイ基板製造方法を採用することで製造されるアレイ基板が提案されている。本アレイ基板は、
基板と、
その基板上に所在する金属層と、
その金属層を覆う保護層と、
を有する。
【0052】
具体的には、図3に示すように、本アレイ基板は、表示エリア及び非表示エリアを有する基板100(図3には非表示エリアのうちパッケージエリアを含む部分のみが示されている)と、その基板100の非表示エリア内に所在する複数個の金属層、好ましくは三層即ち下部金属層110、中間金属層120及び上部金属層130と、を有しており、更に、それら3個の金属層間に所在し下部金属層110及び中間金属層120を囲み且つ下部金属層110・基板100間に所在する誘電体層140を有しており、更にはその上部金属層130上に保護層150を有している。
【0053】
本実施形態では、保護層150がパッケージエリア内の上部金属層130の上方のみに所在している。他の諸実施形態では、保護層150がパッケージエリアを除く非表示エリア内の他エリアに所在することもありうるし、保護層150が表示エリア内に所在することもありうる。無論、表示エリア内コンタクトホール配設位置にある保護層150を除去することで、表示エリアの電極への悪影響を避ける必要がある。
【0054】
対応するが如く、本件開示では更に、上記表示パネル製造方法を採用することで製造される表示パネルが提案されている。本表示パネルは、
基板、その基板上に所在する金属層、並びにその金属層を覆う保護層、を有するアレイ基板と、
その保護層上に所在するフリットと、
そのフリット上に所在するガラスカバープレートと、
を有している。
【0055】
具体的には、図7として示したのは本件開示の他実施形態により提供される表示パネルの非表示エリアの部分構造模式図であり、アレイ基板の非表示エリア内の金属層及び保護層が表示エリア内の金属層及び保護層と同じ工程にて形成されている。
【0056】
図7に示すように、本表示パネルは、
表示エリア及び非表示エリアを有する基板300(図6には非表示エリアのうちパッケージエリアを含む部分のみが示されている)と、基板300の非表示エリア内に順に所在する第1誘電体層310、第2誘電体層320及び第3誘電体層330と、第3誘電体層内に所在する下部金属層340と、第3誘電体層330上に所在する中間金属層350と、第3誘電体層330上及び中間金属層350上に所在する第4誘電体層360と、第4誘電体層360上に所在する上部金属層370と、を有するアレイ基板を有している。更に、その第1誘電体層310、第2誘電体層320、第3誘電体層330及び第4誘電体層360が皆、表示エリア内の誘電体層又は絶縁層と同じ工程にて形成されている。その誘電体層の好適素材は酸化シリコン又は窒化シリコンであり、アレイ基板は更に、第4誘電体層360上及び上部金属層370上に所在する保護層380と、
保護層380上に所在するフリット390と、
ガラスカバープレート400と、を有しており、そのガラスカバープレート400及びアレイ基板がフリット390を介しパッケージングされている。
【0057】
総括すると、本件開示により提案されるアレイ基板、その製造方法、表示パネル並びにその製造方法では、基板上に金属層が形成された後にその金属層上に保護層が形成されるため、その保護層でそれら金属層を守ること、並びに後にその表示パネル内のガラスフリットにレーザが照射されたときに表示パネル内で金属層に損傷が生じることを避けることができ、それにより金属クラックの発生率を下げて有益にも表示パネルの歩留まりを改善することができる。
【0058】
更に、パッケージエリア内の保護層の表面であり金属層とは逆側にある面のうち少なくとも一部分を凹面、凸面又は凹凸面とすることで、その面上にフリットが形成されたときのフリット・保護層間結合力を改善することができる。
【0059】
上掲の記述は、専ら本件開示の好適諸実施形態についての記述であって、本件開示の技術的範囲を限定するものではない。以上開示された内容に従いいわゆる当業者がなすどのような改変又は修正も諸請求項の保護範囲に属している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7