特許第6876937号(P6876937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000002
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000003
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000004
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000005
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000006
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000007
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000008
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000009
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000010
  • 特許6876937-ゴルフシャフト 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876937
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ゴルフシャフト
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/12 20150101AFI20210517BHJP
   A63B 53/10 20150101ALI20210517BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20210517BHJP
【FI】
   A63B53/12 Z
   A63B53/10 A
   A63B102:32
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-240263(P2018-240263)
(22)【出願日】2018年12月21日
(65)【公開番号】特開2020-99543(P2020-99543A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2021年3月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤原 甲介
(72)【発明者】
【氏名】井上 明久
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−94867(JP,A)
【文献】 実開昭62−128563(JP,U)
【文献】 特開2005−238517(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0197203(US,A1)
【文献】 米国特許第4000896(US,A)
【文献】 米国特許第5279879(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/12
A63B 53/10
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の素管と、
該素管の軸方向全域にわたり前記素管の外周を被覆する繊維強化プラスチック製の外層と、
前記素管と前記外層との間に介在して前記素管と前記外層との間を接着する接着層とを備え、
前記外層は、樹脂を含浸させたプリプレグシートを前記接着層を介して前記素管に巻き付けて硬化したものであり、
前記素管、前記外層、及び前記接着層を含む全体の重量が、50g〜130gであり、
前記素管の重量が、前記全体の重量の50%〜90%である、
ことを特徴とするゴルフシャフト。
【請求項2】
請求項1記載のゴルフシャフトであって、
前記素管、前記外層、及び前記接着層を含む全体の肉厚が、1.6mm未満である、
ことを特徴とするゴルフシャフト。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴルフシャフトであって、
前記素管の外周に形成されたメッキ層を備え、
前記外層は、前記メッキ層を被覆し、
前記接着層は、前記メッキ層と前記外層との間に介在して前記メッキ層と前記外層との間を接着し、
前記外層は、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化プラスチックで形成され、
前記接着層は、エポキシ樹脂及び二種以上のアミン系硬化剤を混合した混合硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物、又はエポキシ樹脂及び少なくとも一種の硬化剤を含有すると共にカーボンナノチューブを分散したカーボンナノチューブ樹脂組成物である、
ことを特徴とするゴルフシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の素管を繊維強化プラスチック製の外層で被覆したゴルフシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフシャフトとしては、金属製のゴルフシャフトの打感を残しつつ軽量化を図るために、金属製の素管を薄肉化すると共に外側を繊維強化プラスチック製の外層で被覆した複合シャフトがある。
【0003】
このような複合シャフトでは、長さにもよるが、50g〜130g程度にまで軽量化すると、ゴルフクラブに必要な曲げ剛性を確保することが困難になり、打感が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平5−34672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、50g〜130gの複合シャフトにおいて、ゴルフクラブに必要な曲げ剛性を確保することが困難であり、打感が悪くなる点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、50g〜130gの複合シャフトにおいて、ゴルフクラブに必要な曲げ剛性を確保し良好な打感を得るため、金属製の素管と、該素管の軸方向全域にわたり前記素管の外周を被覆する繊維強化プラスチック製の外層と、前記素管と前記外層との間に介在して前記素管と前記外層との間を接着する接着層とを備え、前記外層は、樹脂を含浸させたプリプレグシートを前記接着層を介して前記素管に巻き付けて硬化したものであり、前記素管、前記外層、及び前記接着層を含む全体の重量が、50g〜130gであり、前記素管の重量が、前記全体の重量の50%〜90%であることをゴルフシャフトの特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、50g〜130gの複合シャフトにおいて、ゴルフクラブに必要な曲げ剛性を確保し良好な打感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ゴルフシャフトの側面図であり、(A)はゴルフシャフトの全体、(B)は(A)の一部を拡大して示す(実施例1)。
図2図1のゴルフシャフトの概略縦断面図である(実施例1)。
図3図2のIII−III線に係るゴルフシャフトの概略横断面図である(実施例1)。
図4図1のゴルフシャフトにおいて、素管の重量の割合が50%のときの外層、素管、及び全体の肉厚を示す図表である(実施例1)。
図5】ゴルフシャフトの製造工程を示す概略縦断面図である(実施例1)。
図6】積層される複数枚のプリプレグを示す展開図である(実施例1)。
図7】ゴルフシャフトの剛性分布を概略的に示すグラフである(実施例1)。
図8】製造過程における剛性分布の変化を示すグラフである(実施例1)。
図9】変形例1に係り、ゴルフシャフトの製造時の第1のプリプレグに接着層シートを貼り付けた状態を示す断面図である(実施例1)。
図10】変形例2に係り、積層される複数枚のプリプレグを示す展開図である(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、50g〜130gの複合シャフトにおいて、ゴルフクラブに必要な曲げ剛性を確保し良好な打感を得るという目的を、軸方向全域が繊維強化プラスチック製の外層によって被覆された金属製の素管の重量をゴルフシャフトの全体の重量の50%〜90%とすることにより実現した。
【実施例1】
【0010】
[ゴルフシャフトの構造]
図1は、ゴルフシャフトの側面図であり、(A)はゴルフシャフトの全体、(B)は(A)の一部を拡大して示す。図2は、図1のゴルフシャフトの概略縦断面図である。図3は、図2のIII−III線に係るゴルフシャフトの概略横断面図である。なお、図1図3は、各部の寸法が一致していないが基本的に同一構造である。
【0011】
ゴルフシャフト1は、管状に形成され、軸方向の先端1aがゴルフクラブのヘッドが取り付けられる部分、軸方向の基端1bがゴルフクラブのグリップが取り付けられる部分となっている。
【0012】
このゴルフシャフト1は、全体の重量が50g〜130gに設定されている。本実施例では、ゴルフシャフト1が約90gに設定されている。ゴルフシャフト1の先端1aから基端1bまでの長さは、長さが41インチとなっているが、これに限定されるものではない。
【0013】
本実施例のゴルフシャフト1は、複合シャフトであり、素管3と、メッキ層5と、外層7と、接着層9とを備えて構成されている。
【0014】
素管3は、金属製であり、横断面における断面形状が円形の中空管状シャフトからなる。本実施例の素管3は、スチール製となっている。ただし、素管3は、他の金属、例えばアルミニウム合金やチタン等で形成してもよい。
【0015】
素管3の重量は、ゴルフシャフト1の全体の重量の50%〜90%となっている。本実施例では、素管3の重量が約70gであり、ゴルフシャフト1の全体の重量が約90gであるため、素管3の重量がゴルフシャフト1の全体の重量の約77.78%となっている。
【0016】
なお、素管3の重量比は、素管3(ゴルフシャフト1)の長さ、素管3の縦断面形状、外層7及び接着層9の曲げ剛性及び重量等のゴルフシャフト1のパラメータを考慮して、上記50%〜90%の範囲内において適宜設定すればよい。
【0017】
本実施例の素管3は、段付き形状であり、複数の直管部11と隣接する直管部11間を接続する複数のテーパ管部13とで形成されている。
【0018】
直管部11は、肉厚及び内外周の径が一定の部分である。隣接する直管部11間では、素管3の先端3a側に位置する直管部11に対して基端3b側に位置する直管部11の内外周の径が大きくなっていると共に肉厚が薄くなっている。
【0019】
各テーパ管部13は、隣接する直管部11の径の違い及び肉厚の違いを吸収するものであり、先端3a側から基端3b側に向けて内外周の径が漸次径が大きくなっていると共に肉厚が漸次薄くなっている。テーパ管部13の軸方向の長さは、直管部11よりも短い。
【0020】
本実施例の素管3において、外径が最も大きい部分で14.50mmとなっており、この部分での肉厚が0.206mmとなっている。一方、外径が最も小さい部分で8.00mmとなっており、この部分での肉厚が0.294mmとなっている。
【0021】
なお、素管3は、段付き形状のものに限られず、外周の径が一定のストレート形状や全体としてテーパ管形状とすることも可能である。また、素管3の肉厚は、軸方向で一定にしたり、あるいは部分的に変動させることも可能である。さらに、素管3の横断面における断面形状は、円形に限らず楕円形など適宜選択することができる。
【0022】
メッキ層5は、素管3の外周面3cの全体に設けられており、素管3の表面を構成している。なお、メッキ層5は、素管3の防錆等のために設けられるものであり、アルマイト処理、陽極酸化処理、化成処理等の他の処理に置き換えることや、省略することも可能である。
【0023】
メッキ層5としては、例えば、銅、ニッケル、クロム、亜鉛、スズ、金等のメッキとすることができるが、本実施例においてニッケルメッキを2層重ねた上にクロムメッキを施している。
【0024】
メッキ層5の肉厚は、素管3の肉厚に対してごく薄く、各ニッケルメッキが0.005mm、クロムメッキが0.0003mmとなっており、合計約0.0103mmとなっている。ただし、メッキ層5の肉厚は、これに限られるものではない。
【0025】
外層7は、素管3の軸方向全域にわたって素管3の外周(メッキ層5)を被覆する繊維強化プラスチック製である。なお、「素管3の外周を被覆する」とは、素管3を周方向全域で覆うことを意味する。このため、外層7は、管状に形成されている。
【0026】
外層7の材質は、特に限定されるものではないが、本実施例においてエポキシ樹脂をマトリックス樹脂とすると共に繊維シートを強化材とする繊維強化プラスチックで形成されている。
【0027】
本実施例の外層7は、後述するプリプレグ17(図5及び図6)を接着層9を介して素管3に巻き付け加熱することによって形成される。プリプレグ17は、硬化剤を含有する樹脂(本実施例においてエポキシ樹脂)を繊維シートに含浸させた繊維強化プラスチックシートである。
【0028】
外層7に用いられる硬化剤は、本実施例において、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドアミン等の内から選択された一種類であるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
繊維シートには、各種の繊維シートを採用可能であり、例えば、金属繊維、ボロン繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミクス繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、その他の高強力合成繊維などのシートを使用することができる。無機繊維は軽量かつ高強力であることから好ましく使用される。中でも、炭素繊維は、比強度、比剛性に優れるので最適である。従って、本実施例では、繊維シートとして炭素繊維シートを用いている。
【0030】
なお、図1において外層7は、メッキ層5に倣って形成されており、段付き形状になっている。ただし、外層7は、ゴルフシャフト1の製造時に切削されるため、切削態様にもよるが、実際は、段付き形状とはなっていないことが多い。
【0031】
これに応じ、外層7の肉厚は、軸方向において変動するが、素管3の肉厚よりも厚い範囲に設定されている。本実施例において、外層7の肉厚は、最も厚い部分で約0.700mm、最も薄い部分で約0.330mmとなっている。ただし、設計によっては、外層7の肉厚を1.300mm〜0.200mmの範囲にしても良い。
【0032】
接着層9は、素管3と外層7との間に介在し、素管3と外層7との間を接着する管状となっている。本実施例の接着層9は、素管3外周のメッキ層5に倣って形成されており、段付き形状になっている。
【0033】
接着層9の肉厚は、ほぼ一定であり、外層7及び素管3の肉厚よりも薄い。本実施例の接着層9の肉厚は0.02mm程度となっている。接着層9の肉厚は、これに限られるものではなく、素管3と外層7との間を接着できる範囲で変動することが可能である。
【0034】
接着層9は、特に限定されるものではないが、素管3外周のメッキ層5と外層7とに対する密着性が高いものが好ましい。本実施例の接着剤は、エポキシ樹脂及び二種以上のアミン系硬化剤を混合した混合硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物からなっている。この接着層9は、メッキ層5と外層7とに対する密着性がメッキ層5と外層7とを直接密着させる場合の密着性に対して高いものとなっている。
【0035】
本実施例の接着層9には、クリヤ塗料を用いている。具体的には、クリヤ塗料の液状のエポキシ樹脂及び液状の混合硬化剤を2:1の割合で混ぜた接着層液剤15(図5)が加熱により硬化して形成されたものとなっている。
【0036】
液状のエポキシ樹脂は、樹脂成分を73.96%(重量)、溶剤を25.77%(重量)、添加材を0.27%(重量)の割合で含有している。液状の硬化剤は、樹脂成分を64.82%(重量)、溶剤を26.82%(重量)、添加材を8.36%(重量)の割合で含有している。
【0037】
従って、硬化前の接着層液剤15は、上記混合により、樹脂成分が70%(重量)程度、溶剤が26%(重量)程度、添加剤が3%(重量)程度となっている。なお、上記成分の含有割合は、一例であり、適宜変更することが可能である。
【0038】
接着層液剤の樹脂成分は、エポキシ樹脂及びアミン系硬化剤である。アミン系硬化剤としては、例えば脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドアミン等である。二種以上のアミン系硬化剤は、アミン系硬化剤から選択された異なる二種以上のアミン系硬化剤をいう。
【0039】
本実施例では、脂肪族ポリアミンであるトリエチレンテトラミン及びポリアミドアミンの二種類が用いられている。このときの配合割合は、ポリアミドアミンがトリエチレンテトラミンよりも多くなるように設定されている。具体的には、ポリアミドアミンに対してトリエチレンテトラミンが4%(重量)程度となっている。
【0040】
接着層液剤の溶剤は、キシレン、メチルイソブルチルケトン、イソブタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、トルエン等である。接着層液剤の添加剤は、シランカップリングのようなカップリング剤等とすることができる。
【0041】
[素管の重量比]
本実施例のゴルフシャフト1では、上記のとおり、素管3の重量がゴルフシャフト1の全体の重量の50%〜90%となっている。
【0042】
この素管3の重量比が90%を超えると、ゴルフシャフト1の全体の重量を50g〜130gに抑えるための素管3の薄肉化により、ゴルフクラブに必要なゴルフシャフト1の曲げ剛性を確保することが困難になる。このため、ゴルフシャフト1は、素管3の重量比の上限を90%としている。
【0043】
ゴルフクラブに必要なゴルフシャフト1の曲げ剛性は、ボールを打つ際の衝撃に対する耐性である。このため、素管3の重量比が90%を超えたゴルフシャフト1は、かかる曲げ剛性を確保できず、打感の悪化やゴルフクラブの使用に際して損傷等のリスクが生じることになる。
【0044】
一方、素管3の重量比が50%未満となると、素管3、外層7及び接着層9を含むゴルフシャフト1の全体の肉厚を1.6mm未満(小数点第2位を切り捨てた場合の1.5mm以下)にすることが困難になる。
【0045】
ゴルフシャフト1は、全体の肉厚を1.6mm未満にすると打感が良好になるため、素管3の重量比の下限を全体の肉厚を1.6mm未満にすることが可能な50%としている。
【0046】
図4は、素管2の重量比が50%のときの外層7、素管3、及び全体の肉厚を示す図表である。なお、図4では、ゴルフシャフト1の重量が50gの場合と130gの場合とにおいて、それぞれゴルフシャフト1の長さが45インチ、40インチ、35インチに対する外層7、素管3、及びそれらの合計である全体の肉厚を示している。
【0047】
図4のように、素管3の重量比を50%とした場合は、ゴルフシャフト1の重量が50g及び130gの双方において長さが45インチ、40インチ、35インチの何れにおいても、肉厚を1.6mm未満にすることができている。
【0048】
ここで、素管3の比重は、本実施例において外層7の比重の約5倍である。このため、130g、35インチの場合において、素管3の肉厚を少しでも減少させて重量比を低下させると、外層7の肉厚が大幅に増加することになり、メッキ層5及び接着層9の肉厚もあるので、全体の肉厚を1.6mm未満とすることができなくなる。これにより、素管3の重量比は、50%が下限となることがわかる。
【0049】
[ゴルフシャフトの製造]
図5は、ゴルフシャフト1の製造工程を示す概略断面図である。
【0050】
本実施例の製造では、まず、図5(A)のように、段付き形状を有し外周面3cにメッキ層5が形成された素管3を用意する。この素管3のメッキ層5の表面に、図5(B)のように、液状のエポキシ樹脂に液状の硬化剤を混合した接着層液剤15を塗布する。接着層液剤15の塗布は、例えばしごき塗装によって行うことができる。ただし、吹き付け塗装等の他の塗布方法を用いることも可能である。
【0051】
接着層液剤15は、上記のように、クリヤ塗料であり、液状のエポキシ樹脂及び液状の混合硬化剤を2:1の割合で混合したものとなっている。
【0052】
次いで、図5(C)のように、接着層液剤15が塗布されたメッキ層5の表面にプリプレグ17を巻き付けて巻付品19を形成する。
【0053】
本実施例においては、所定の裁断形状と寸法を有する複数枚のプリプレグをメッキ層5を有する素管3に対して順次巻き付けて積層する。
【0054】
図6は、積層される複数枚のプリプレグを示す展開図である。
【0055】
本実施例では、例えば図6のような裁断形状と寸法とをもつ第1〜第6のプリプレグ17a〜17fを素管3の軸方向の所定位置に順次巻き付ける。
【0056】
第1のプリプレグ17aは、繊維が軸方向に対し±45°の方向に配向された2枚のプリプレグを貼り合わせたもので、素管3の軸方向の全体に巻き付けられる。
【0057】
第2のプリプレグ17bは、繊維が軸方向に配向された1枚のプリプレグからなり、第1のプリプレグ17aと同様に素管3の軸方向全体に巻き付けられる。
【0058】
第3のプリプレグ17cは、繊維が軸方向に配向された1枚のプリプレグからなり、素管3の中間部から基端3bに巻き付けられるものである。この第3のプリプレグ17cは、第4のプリプレグ17dに貼り合わされる。
【0059】
第4のプリプレグ17dは、第2のプリプレグ17bと同様に繊維が軸方向に配向された1枚のプリプレグからなり、第3のプリプレグ17cが貼り合わせられた状態で素管3の軸方向全体に巻き付けられる。
【0060】
第5のプリプレグ17eは、繊維が軸方向に配向された1枚のプリプレグからなり、素管3の先端3aから中間部に巻き付けられる。
【0061】
第6のプリプレグ17fは、繊維が軸方向に配向された1枚のプリプレグからなり、第5プリプレグ17eよりも更に短い先端3aから中間部までの範囲に巻き付けられる。
【0062】
こうして第1〜第6のプリプレグ17a〜17fが素管3に対して積層状態で巻き付けられて図5(C)の巻付品19が形成される。なお、第1〜第6のプリプレグ17a〜17fとしては、四軸や三軸のような多軸織物を用いることも可能である。また、プリプレグ17の層の数や形状並びに巻き付け順序等は、一例であり、ゴルフクラブの性能等により任意に決めることが可能である。
【0063】
かかる巻付品19は、図5(D)のように、外周に保持用のポリプロピレン等のテープ21が巻き付けられ、プリプレグ17の巻き付け状態が保持されることになる。
【0064】
そして、テープ21が巻かれた巻付品19は、加熱炉中にて加熱されて、プリプレグ17及び接着層液剤15を硬化させて外層7及び接着層9が形成される。
【0065】
その後は、テープ21を取り外し、外層7を切削して所望の特性を得るための調整が行われる。かかる切削時には、外層7に残ったテープ21の巻き付け痕が除去されるので、品質を向上することができる。
【0066】
こうして、金属製の素管3が繊維強化プラスチックの外層7によって被覆されたゴルフシャフト1が製造される。
【0067】
[軽量化と剛性分布]
図7は、ゴルフシャフトの剛性分布を概略的に示すグラフである。図7では、縦軸が曲げ剛性(EI)、横軸が先端からの距離を示す。
【0068】
図7において、スチール1、スチール2、実施例品は、何れも41インチのゴルフシャフトであり、スチール1及びスチール2がスチール製のゴルフシャフトを示し、実施例品が上記のように金属製としてのスチール製の素管3に繊維強化プラスチックの外層7を巻いた実施例1に係るゴルフシャフト1を示す。
【0069】
41インチのゴルフシャフトにおいては、スチール製の場合、図7の特性(剛性分布)を得るには肉厚の調整により重量が120gとなった。スチール製では、目的の特性を得ることと軽量化との両立が難しく、図7の特性を維持しながらこれ以上の軽量化は困難であった。
【0070】
これに対し、実施例品では、スチール製の素管3を薄肉にして外周に繊維強化プラスチックの外層7を巻き、この外層7を研磨することで図7のようにスチール製のゴルフシャフトと同等の特性を得ながら重量を90gに抑えることができた。
【0071】
図8に製造過程における剛性分布の変化を示す。なお、図8は、図7と同様、縦軸が曲げ剛性(EI)、横軸が先端からの距離を示す。
【0072】
実施例品の素管3は、スチール1及びスチール2に対して薄肉化されたことで、図8のように先端3aから基端3bまでほぼ直線状に剛性が増加するものとなっている(図8の素管)。このときの素管3の重量は、本実施例において70gである。
【0073】
そして、この素管3に外層7を巻いて目的の剛性分布に倣った剛性分布を得ているが、このときの剛性分布は目的の剛性分布よりも全体として高めに設定されている(図8の未研磨品)。その後、外層7を切削することで図7に対応する特性が得られている(図8の研磨品)。このときのゴルフシャフト1の重量が90gとなっている。
【0074】
[実施例1の効果]
本実施例のゴルフシャフト1は、金属製の素管3と、この素管3の軸方向全域にわたり素管3の外周を被覆する外層7と、素管3と外層7との間に介在して素管3と外層7との間を接着する接着層9とを備え、素管3、外層7、及び接着層9を含む全体の重量が50g〜130gであり、素管3の重量が全体の重量の50%〜90%である。
【0075】
従って、本実施例のゴルフシャフト1は、50g〜130gの複合シャフトにおいて、ゴルフクラブに必要な曲げ剛性を確保し良好な打感を得ることができる。
【0076】
[変形例1]
変形例1は、接着層9の材質を、上記実施例1に対して変更し、カーボンナノチューブ樹脂組成物としたものである。なお、変形例1は、接着層9の材質を除いて実施例1と同様であるため、構造については実施例1の図1図3を参照して重複した説明を省略する。ただし、接着層9の肉厚は、実施例1において約0.02mmであったのに対し、本変形例において約0.06mmとなっている。
【0077】
カーボンナノチューブ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び少なくとも一種の硬化剤を含有すると共にカーボンナノチューブを分散したものである。
【0078】
本変形例において、硬化剤としては、アミン系硬化剤だけでなく、酸無水物系硬化剤等を用いることも可能である。接着層9に分散されるカーボンナノチューブは、外径が0.5〜100nm程度であり、長さが数nm〜数mm程度のものとなっている。
【0079】
本変形例の接着層9は、ゲル状の接着層シート23が加熱により硬化することで形成されている。硬化前において、接着層シート23は、カーボンナノチューブを0.5〜10%(重量)、好ましくは1〜5%(重量)の割合で含有した樹脂フィルムである。なお、上記成分の含有割合は、一例であり、適宜変更することが可能である。
【0080】
図9は、ゴルフシャフト1の製造時の第1のプリプレグ17aに接着層シート23を貼り付けた状態を示す断面図である。
【0081】
ゴルフシャフト1の製造時には、接着層シート23を第1のプリプレグ17aに貼り付けておき、接着層シート23により第1のプリプレグ17aを素管3のメッキ層5に貼り付ける。その後は、実施例1と同様にして、第2〜第6のプリプレグ17b〜17fを積層して巻付品19を形成し、テープ21で巻き付け状態を保持した後に加熱し、硬化した外層7を切削することによって所望の特性を得る。
【0082】
かかる変形例1においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。また、変形例1では、接着層9がエポキシ樹脂及び少なくとも一種の硬化剤を含有すると共にカーボンナノチューブを分散したカーボンナノチューブ樹脂組成物であるため、実施例1よりも強度を高くすることができる。
【0083】
[変形例2]
変形例2は、外層7のプリプレグ17の積層数を、上記実施例1に対して変更したものである。図10は、変形例2に係る積層される複数枚のプリプレグを示す展開図である。なお、変形例2は、プリプレグ17の積層数及び裁断形状を除いて実施例1と同様であるため、構造については実施例1の図1図3を参照して重複した説明を省略する。
【0084】
本実施例では、図10のような裁断形状と寸法とをもつ第1〜第5のプリプレグ17a〜17eを素管3の軸方向の所定位置に順次巻き付ける。
【0085】
第1のプリプレグ17aは、実施例1と同様、繊維が軸方向に対し±45°の方向に配向された2枚のプリプレグを貼り合わせたもので、素管3の軸方向の全体に巻き付けられる。第1のプリプレグ17aは、基端3b寄りの中間部から先端にかけて漸次幅(巻き付け時の素管3の周方向での寸法)が小さくなっている。
【0086】
第2〜第4のプリプレグ17b〜17dは、繊維が軸方向に配向された1枚のプリプレグからなり、第1のプリプレグ17aと同様に素管3の軸方向全体に巻き付けられる。
【0087】
なお、第2及び第3のプリプレグ17b及び17cは、同一形状であり、先端3a及び基端3bの幅が第1プリプレグ17aよりもわずかに大きく形成されている。第4のプリプレグ17dは、先端3a及び基端3bの幅が第2及び第3プリプレグ17b及び17cよりもわずかに大きく形成されている。
【0088】
第5のプリプレグ17eは、繊維が軸方向に配向された2枚のプリプレグからなり、素管3の先端3aから先端3a寄りの中間部までの範囲(先端部)に巻き付けられる。
【0089】
第5のプリプレグ17eは、同一の三角形状の2枚のプリプレグが完全に重ならずにずらされており、重なり目を分散させている。
【0090】
なお、第1〜第5のプリプレグ17a〜17eの形状及び枚数は、実施例1と同様、ゴルフシャフト1の特性に応じて適宜設定することが可能である。例えば、第5のプリプレグ17eは、台形形状等とすることも可能である。
【0091】
こうして第1〜第5のプリプレグ17a〜17eが素管3に対して積層状態で巻き付けられて図5(C)のような巻付品19が形成される。
【0092】
かかる変形例2においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 ゴルフシャフト
3 素管
5 メッキ層
7 外層
9 接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10