(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876968
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】MRIシステムでの定常状態グラジェントエコー取得のIHMT感度を向上させるための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20210517BHJP
G01R 33/54 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055ZDM
G01R33/54
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-555569(P2018-555569)
(86)(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公表番号】特表2019-513503(P2019-513503A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017056978
(87)【国際公開番号】WO2017182229
(87)【国際公開日】20171026
【審査請求日】2020年3月23日
(31)【優先権主張番号】16166049.3
(32)【優先日】2016年4月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516086347
【氏名又は名称】ユニバーシティ ド エクス‐マルセイユ
(73)【特許権者】
【識別番号】518369442
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(シーエヌアールエス)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジラール,オリヴィエ,マチェイ
(72)【発明者】
【氏名】デュアメル,ギヨーム,ディディエ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ムチンダ,サミラ
(72)【発明者】
【氏名】プレヴォ,ヴァレンティン,ユーゴー,ジョナス
【審査官】
後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】
O. M. Girard et al.,Whole Brain inhomogeneous MT using an ihMT prepared 3D GRE sequence at 1.5T,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med.,2015年,p.3356
【文献】
G. Varma et al.,3D Acquisition of the Inhomogeneous Magnetization Transfer Effect for Greater White Matter Contrast,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med.,2013年,p.4224
【文献】
G. Varma et al.,Assessing and Reducing the B1 Dependence of Inhomogeneous Magnetization Transfer,Proc. Intl. Soc. Mag. Reson. Med.,2014年,p.3376
【文献】
V. H. Prevost et al. ,Magnetization Transfer from Inhomogeneously Broadened Lines (ihMT) :sequence optimization for preclinical investigation at very high magnetic field(11.75T),Proc. Intl Soc. Mag. Reson. Med,2015年,p.1742
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20−33/64
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI画像を生成するための方法であって、以下のステップ:
連続する繰り返し時間(TR)において定常状態グラジェントエコーシーケンスを用いて解析下の体積のラインを取得するステップと、
各繰り返し時間において不均一磁化移動(ihMT)プレサチュレーションモジュール(TMT)を適用するステップと、
を含む方法であり、
各繰り返し時間の持続時間が20ミリ秒よりも長いことを特徴とする、方法。
【請求項2】
各繰り返し時間の持続時間が30ミリ秒よりも長い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各繰り返し時間の持続時間が、プレサチュレーションモジュールの持続時間よりも少なくとも4倍長い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プレサチュレーションモジュールにおいて適用される無線周波数の強度(B1)が、前記繰り返し時間(TR)の実際の値に及び前記解析下の体積に適用される静磁場(B0)の振幅に基づいて、比吸収率(SAR)の基準レベルを維持するべく調節される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数のラインが各繰り返し時間内に取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
各プレサチュレーションモジュールの持続時間が8および16ミリ秒の間で含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
各プレサチュレーションモジュールの持続時間が12ミリ秒に実質的に等しい、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各プレサチュレーションモジュールが、等間隔のHann形無線周波数パルスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
各プレサチュレーションモジュールが、1ミリ秒のピッチ間隔の12の無線周波数パルスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
各プレサチュレーションモジュールが、画像内でフィルタするべく組織の双極子秩序緩和時間よりも長いピッチ間隔の無線周波数パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記無線周波数パルスが、2.5ミリ秒よりも長いピッチ間隔にあり、これにより、筋組織が画像内でフィルタされる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記繰り返し時間が、70msを上回る範囲から選択され、生成されるコントラスト値は、無線周波数の強度の変動の影響を実質的に受けない、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴画像法(MRI)、特に、不均一磁化移動(ihMT)技術を用いる中枢神経系イメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
シングルショットMRI技術は、解析下の体積をスライスで取得していくように設計される。スライスは、繰り返し時間TRと呼ばれる連続するインターバルで取得される。このような技術は、通常は、各繰り返し時間において全体に利用可能な縦磁化M0を、信号読み出しの前に横断面へ90°傾けることにより用いる。その意味で、磁化測定は破壊的であり、ゆえに、次の読み出しの前に縦磁化を再生するのに或る時間が必要とされる。繰り返し時間TRは、顕著な回復を可能にするべく磁化の再生時間に基づいて調節され、数秒のオーダーの繰り返し時間につながる。
【0003】
対照的に、定常状態グラジェントエコーイメージング技術は、各読み出しで磁化を横断面の方へ数度だけ傾け、ゆえに、磁化は、毎回僅かにのみ減弱され、各繰り返し時間において印加される無線周波数パルス間で部分的に回復する。この手順は、或る数の繰り返し時間後に、磁化が集束し、定常状態に維持されることを可能にする。これらの技術は、10ミリ秒のオーダーの顕著により短い繰り返し時間を使用し、したがって、三次元イメージングにより適しており、この場合、体積は、連続する繰り返し時間において任意のシーケンスの個々のラインにより取得され得る。
【0004】
図1は、例えば、[“3D Acquisition of the Inhomogeneous Magnetization Transfer Effect for Greater White Matter Contrast”, Gopal Varma et al., Proceedings of the 21
st Annual Meeting of the International Society for Magnetic Resonance in Medicine(ISMRM),2013年4月]で開示される場合の、不均一磁化移動(ihMT)にあてはまる定常状態グラジェントエコーイメージングシーケンスを例示するタイムダイアグラムである。
【0005】
シーケンスの各繰り返し時間TRは、時間T
MTにわたって持続するihMTプレサチュレーションモジュールで始まる。4つの異なるプレサチュレーションモジュールが順次に用いられる。第1の及び第3の繰り返し時間において、+5KHz及び−5KHzのそれぞれの周波数オフセットを有する台形無線周波数パルスが印加される。第2の及び第4の繰り返し時間において、+5KHzの周波数帯と−5KHzの周波数帯との両方が同時に励起されるように、オンレゾナンスのコサイン変調された台形パルスが印加される。
【0006】
プレサチュレーションモジュールに、普通はグラジェントエコー(GRE)読み出しモジュールが後続し、これはオンレゾナンスの励起パルスαで始まり、次いで、通常はスライス、位相、及び周波数という名称の、空間エンコーディングのために用いられる3つの勾配コイル制御信号の組み合わせが後続する。
【0007】
スライス信号は、z座標、すなわち、縦磁場B0に垂直な平面を選択する。この選択は、勾配パルスの振幅を通じてもたらされる。矢印で例示されるように、パルス振幅は、すべての可能なz位置を走査するべく、正の最大値と負の対称な値との間で変化し得る。同様の説明が、
図1での位相ディメンションにあてはまる。
【0008】
普通は、繰り返し時間TR内で解析下の体積の大部分、例えばスライスにおけるすべてのライン又はy座標を読み出すには時間が不足する。ここでは一度に1つだけのラインが読み出される。現在ラインは、図示される場合の位相信号のパルスの対応する振幅により選択される。
【0009】
最後に、周波数信号波形は、エコー信号の形態で、選択されたラインにおけるすべてのx位置を抽出するように構成される。周波数信号が高レベルにある状態で、エコー信号が黒い長方形のADCで示すようにサンプリングされる。エコー信号がサンプリングされた後で、スライス信号及び位相信号のそれぞれは、例示される場合の最初の選択パルスとは反対の振幅の勾配パルスを印加することにより「リワインド」され得る。
【0010】
プレサチュレーションモジュールT
MTの及び繰り返し時間TRの、それぞれ5及び12ミリ秒の例示的な持続時間が括弧内に示され、これらは上記のVarmaらによるISMRM論文で提案された値に対応する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
MRIにより中枢神経系組織を検査するための有用なコントラストは、ihMTRと表記され、パーセントで表される、ihMT比である。このコントラストは、やや低い感度を有し、最良の場合に10%に達する値をもたらす。感度を高めるための何らかの技術が非常に望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ihMTRコントラスト感度を高めるための一般的方法であって、連続する繰り返し時間において定常状態グラジェントエコーシーケンスを用いて解析下の体積のラインを取得するステップと、各繰り返し時間において不均一磁化移動プレサチュレーションモジュールを適用するステップとを含む方法が本明細書で提供される。繰り返し時間の持続時間は、20ミリ秒よりも長い、好ましくは30ミリ秒よりも長い。
【0013】
繰り返し時間の持続時間は、さらに、プレサチュレーションモジュールの持続時間よりも少なくとも4倍長くてよい。
【0014】
プレサチュレーションモジュールにおいて適用される無線周波数の強度は、繰り返し時間の実際の値に及び解析下の体積に適用される静磁場の振幅に基づいて、比吸収率の基準レベルを維持するべく調節されてよい。
【0015】
繰り返し時間は、70msを上回る範囲から選択されてよく、この場合、生成されるコントラスト値は、特に、より高い磁場強度(すなわち3T以上)で、通常はRF伝搬の影響に関連する、空間にわたる無線周波数の強度の変動(所謂RF不均一)の影響を実質的に受けない。
【0016】
複数のラインが各繰り返し時間内に取得されてよい。
【0017】
プレサチュレーションモジュールの持続時間は、8および16ミリ秒の間で含まれてよく、好ましくは12ミリ秒に実質的に等しい。
【0018】
各プレサチュレーションモジュールは、等間隔のHann形無線周波数パルス、好ましくは1ミリ秒のピッチ間隔の12個の無線周波数パルスを含んでよい。
【0019】
各プレサチュレーションモジュールは、画像内でフィルタするべく組織の双極子秩序緩和時間よりも長い、例えば2.5ミリ秒よりも長いピッチ間隔の無線周波数パルスを含んでよく、これにより、筋組織が画像内でフィルタされる。
【0020】
他の利点及び特徴は、例示の目的のためだけに提供され添付図に表される本発明の特定の実施形態の以下の説明からより明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】前述の、従来のihMTにより作成された定常状態グラジェントエコーイメージングシーケンスを例示するタイムダイアグラムである。
【
図2】ihMTRコントラストの感度を向上させる定常状態グラジェントエコーイメージングシーケンスを例示するタイムダイアグラムである。
【
図3A】
図2のシーケンスを用いて得られる感度向上を示すシミュレーション結果グラフである。
【
図3B】
図2のシーケンスを用いて得られる感度向上を示すシミュレーション結果グラフである。
【
図4】
図2のシーケンスを実施するときの取得時間を減少させるために用いられ得る定常状態グラジェントエコーイメージングシーケンスを部分的に例示するタイムダイアグラムである。
【
図5A】プレサチュレーションモジュールにおける異なる数のパルスを用いて得られる感度向上を示す実験結果グラフである。
【
図5B】プレサチュレーションモジュールにおける異なる数のパルスを用いて得られる感度向上を示す実験結果グラフである。
【
図6】プレサチュレーションモジュールにおけるパルス間隔の関数としての異なる双極子秩序緩和時間に伴う組織の感度の変動を例示するグラフである。
【
図7A】経時的に積分したときの、しかし異なる繰り返し時間値を有する、プレサチュレーションモジュールにおいて伝達される同じ平均RFパワーを用いる2つのイメージングシーケンスを概略で示す図である。
【
図7B】経時的に積分したときの、しかし異なる繰り返し時間値を有する、プレサチュレーションモジュールにおいて伝達される同じ平均RFパワーを用いる2つのイメージングシーケンスを概略で示す図である。
【
図8】
図7A及び
図7Bに示すようにプレサチュレーションモジュールにおける異なるピーク振幅を用いるシーケンスに関する平均RFパワーの関数としてのihMTRコントラストの変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に例示したような、MRIに関する不均一磁化移動(ihMT)定常状態グラジェントエコーシーケンスでは、繰り返し時間TRをできる限り短くするのが通例である。この目的のために、繰り返し時間は、プレサチュレーションモジュールの持続時間T
MTに超過してシングルライン読み出しシーケンスの持続時間を足すことにより、できる限り近接して選択される。この選択の第1の理由は、より短い繰り返し時間が、総取得時間を減少させることになり、したがって、モーション感度を低下させることである。第2の理由は、半固形物を特徴づけるのに用いられるihMTモデルに由来する。
【0023】
白質及び灰白質などの半固形物は、双極子秩序β及び半固体ゼーマン秩序M
ZBと呼ばれる2つの相互接続された区画を含むプールによりモデル化される。これは双極子秩序を測定しようとするものであるが、直接測定することはできない。ihMT技術は、双極子秩序を表す磁化を、液体ゼーマン秩序M
ZAと呼ばれる区画により形成された液体プロトンプールへ移動するように設計され、この場合、値はMRIを通じて直接取得することができる。
【0024】
双極子秩序は、各プレサチュレーションモジュールによる構築後に、灰白質及び白質に関して6〜10ミリ秒のオーダーの短い寿命又は緩和時間(T1D)を有する。プレサチュレーションモジュールは、双極子秩序を完全に減衰する前に再生するべく、次々に十分に近接して繰り返されるべきであると考えられ、これが、なぜ繰り返し時間をできる限り短くするべきかの説明である。
【0025】
本発明者らは、この見解を疑い、対照的に、繰り返し時間を長くすることを提案する。実際には、本発明者らは、ihMT技術は、双極子秩序を直接測定しないが、液体プールに移動される場合のその影響に注目した。移動される影響は、実際には、1秒のオーダーのはるかにより長い緩和時間を有し、理論的には、1秒もの長さの繰り返し時間が、感度の僅かな損失を伴って用いられ得ることを意味する。
【0026】
本発明者らによって行われたシミュレーション及び実験は、より長い繰り返し時間が、以下に示すように感度をさらに高め得ることを証明する。
【0027】
図2は、ihMTRコントラストの感度をそのように向上させる定常状態グラジェントエコーイメージングシーケンスを例示するタイムダイアグラムである。このダイアグラムは、
図1のダイアグラムに基づいており、異なる要素だけが示されている。本発明者らは、20ミリ秒よりも長い繰り返し時間TRが、ihMT信号の感度を改善し得ることを見出した。
【0028】
ihMT定常状態グラジェントエコーシーケンスにおいて慣習的に用いられる繰り返し時間は、20ミリ秒よりも低く、例えば、前述のVarmaによる論文では12ミリ秒である。論文[“Whole Brain inhomogeneous MT using an ihMT prepared 3D GRE sequence at 1.5T”, Olivier Girard et al., ISMRM 2015]は、19ミリ秒の繰り返し時間を提案する。
【0029】
図3A及び
図3Bは、10から200ミリ秒までの間で変化する繰り返し時間TRと共に得られる感度向上を示すシミュレーション結果グラフである。
【0030】
本明細書でのすべてのシミュレーション及び実験は、強度B0=1.5Tの静磁場で行った実験から導出されるRFエネルギー強度で行われる。検査した組織は、PTと表記される錐体路という名称の白質線維束であり、これは従来の方法で10%付近の最高ihMTR値をもたらす組織である。プレサチュレーションモジュールは、変調されたパルスではなくRFパルストレインを含む。
【0031】
図3Aでは、y軸は、ihMTRコントラスト又は感度をパーセントで表す。実線の曲線は、繰り返し時間だけが変化している、すなわち、シミュレーションの全体を通して用いられるプレサチュレーションモジュールが同じ特徴、特に一定振幅を有する場合の、感度の推移を表す。プレサチュレーションモジュールは、実際は、上記のGirardらによるISMRM論文で開示されたような、すなわち、それぞれ0.5ミリ秒の幅を有する、1ミリ秒のピッチ間隔の、6つのHann形パルスである。
【0032】
無線周波数パルス振幅B1は、シミュレーションでは、二乗平均平方根(RMS)値が、19ミリ秒の繰り返し時間にわたって5.4μTを達成するように設定される。したがって、RMS値は、TRが19ミリ秒を上回って増加するときに減少し、TRが19ミリ秒を下回って減少するときに増加する。
【0033】
感度は、低下しないが、20から30ミリ秒までの間のTRに関して10%を超える最大へ、したがって、20ミリ秒を下回る従来の繰り返し時間の範囲で達成されるよりも高い値へさらに高まることを特筆することができる。
【0034】
感度は、プレサチュレーションモジュールにより移動されるエネルギーに伴い或る程度まで高まることが知られている。実際には、伝達できるエネルギーは、患者の安全性を保証する認可された比吸収率(SAR)に制限される。TR=19msに関して達成される上記の5.4μTのRMS値は、例示的なSARの基準レベルに対応する。
【0035】
図3Bは、繰り返し時間に伴うSARの変動を例示する。y軸上の値は、正規化したSAR因子である、すなわち、実際のSAR値と、TR=19msに関する5.4μTのRMS B1値に関して得られる基準SARレベルとの比である。実線の曲線は、
図3Aの一定振幅の曲線に対応する。SARは、繰り返し時間に反比例して減少する。基準SAR(1.0)が、TR=19msに達して10%のihMTR値(
図3Aにおいて)をもたらすのに対して、SARは、同じihMTR値をもたらすときTR=30msに関してたったの0.65である。この利用可能なSARのマージンは、個々に又は組み合わせて適用され得る2つのタイプの向上のための余地を残す。
【0036】
第1に、より高感度を追求するべく、利用可能なSARマージンを費やして、プレサチュレーションモジュールにおけるエネルギーを増加させてよい。
【0037】
第2に、ihMTR感度を維持しながら、しかしより高い信号対ノイズ比を与えながら、同じくSARマージンを費やして、縦磁場B0を増加させてよい。
【0038】
図3A及び
図3Bでの「一定のSAR」と付された点線の曲線は、第1の選択肢に対応する。プレサチュレーションモジュールのパルス振幅B1は、パルスのRMS値が一定に維持されるようにTRに伴い増加する。
図3Bに示すように、このSARは、したがって、このTR範囲にわたって基準レベルで一定のままである。
【0039】
図3Bに示すように、感度は、TRが20msを超えて増加する際に迅速に増加し、30msを超えるTRに関して以前は達成できなかった値に達する。60から80msまでの間のTRに関して17%に近い最大に達する。
【0040】
さらなる措置なしでの繰り返し時間TRの増加は、総取得時間を明らかに増加させる。従来の短い繰り返し時間では、毎回ラインを1つだけ取得することができた。しかしながら、20ms以上もの長さの持続時間では、各繰り返し時間内に複数のラインを取得するのに十分な時間がある。
【0041】
図4は、複数のラインが1つの繰り返し時間TR内に取得される定常状態グラジェントエコーイメージングシーケンスを部分的に例示するタイムダイアグラムである。このダイアグラムは、プレサチュレーション位相T
MT及び第1のラインの取得に関して
図1のダイアグラムと類似している。
【0042】
前述のGirardによるISMRM論文で用いられたものに対応するプレサチュレーションモジュールがより詳細に例示されている。このプレサチュレーションモジュールは、それぞれ6RFパルスのトレインを含む4つの可能なモジュールのうちの1つである。パルスは、Hann形であってよく、0.5ミリ秒の幅を有し、1msのピッチ間隔にあってよい。図示されたモジュールは、例として、正のオフセットのパルスで始まる、交番する周波数オフセット±Δf、例えば±7KHzを伴うパルスを含む。他のモジュールは、異なる一連の周波数オフセットを伴うパルスを有する。
【0043】
点線の突起により示されるように、スライス信号、位相信号、及び周波数信号のうちの1つ又はいくつかは、残留横信号(residual transversal signals)を相殺するのに役立つ無線周波数パルスΔfと時間においてインターリーブされる、所謂「スポイラー勾配」パルスを伝達し得る。
【0044】
プレサチュレーションモジュールの後に、いくつかのラインが読み出され、繰り返し時間TRの終了までの残りの利用可能な時間を埋めてよい。各ラインは、
図1のシングルラインの読み出しに関するシーケンスと類似した、すなわち、励起パルスαで始まり、スライス信号及び位相信号のそれぞれにおける振幅パルス、及び周波数信号のパターンが後続するシーケンスにおいて読み出されてよい。各読み出しシーケンスは、スライス信号及び位相信号のそれぞれにおいてリワインドパルスで終わってよい。
【0045】
位相パルス及びスライスパルスの振幅は、所望のライン取得シーケンス又は軌道を説明するために例示されるように1つの読み出しから次の読み出しで変化する。
【0046】
この手順では、より長い繰り返し時間の使用は、総取得時間を増加させない。実際には、
図1のような従来のシーケンスでは各ラインに1つのプレサチュレーションモジュールが用いられるのに対して、複数のラインの読み出しに1つのプレサチュレーションモジュールが用いられるので、総取得時間がさらに減少し得る。
【0047】
プレサチュレーションモジュールは、慣習的には、単一のコサイン変調された台形パルス又は6周波数オフセットパルスのトレインのいずれかをそれぞれ用いる、5ミリ秒のオーダーの短さであった。
【0048】
図5A及び
図5Bは、変化するプレサチュレーションモジュール持続時間に基づく実験結果のihMTR対TRグラフである。変化する数のパルスのパルストレインで実験を行い、この場合、パルスは、同じ幅(0.5ms)を有し、同じピッチ間隔(1ms)である。パルス振幅は、5.4μTの一定のRMS B1値を達成するべく変えることができる。同様の結果が、変化する幅のコサイン変調されたパルスで期待され得る。
【0049】
実際には、基準SARを超えずに5.4μTのRMS B1値を達成するために、さらなる最適化、所謂部分フーリエブースト技術が実施されてよい。このような技術は、取得される場合の読み出し信号が、解析下の体積のフーリエ変換を期せずして表すことに基づいている。空間フーリエ変換では、最も代表的なデータは中央に集中している。フーリエドメインにおいて或る程度まで周辺データを無視することは、逆変換後に満足のいく画像をもたらす。
【0050】
部分フーリエブースト技術は、解析下の体積の中心線の取得の際にのみRFエネルギーを印加する。最初に、これらの中心線が取得され、その後、プレサチュレーションモジュールにおけるゼロ振幅パルスを用いて残りの周辺ラインが取得され、これにより、SARが低下する。
【0051】
図5A及び
図5Bに示された例では、部分フーリエブースト技術は、センターアウトスクエアスパイラル(center−out square spiral)取得軌道を用いて、位相(y)ディメンションとスライス(z)ディメンションとの両方において、50%の真ん中のラインに適用される。
【0052】
図5Aは、完全を期すためにTukey形パルスを考察する。実際は、パルスは慣習的にはHann形である。Tukey形パルスは、より広く、したがって、より多くのエネルギーを伝達する。
【0053】
点線の曲線は6パルスに対応し、実線の曲線は12パルスに対応する。6パルス曲線は、50ms付近のTRに関して最大を呈し、一方、12パルス曲線は、75ms付近のTRに関して僅かにより大きい最大を呈する。したがって、6ではなく12パルスの選択が、結果的に感度の認知できる向上をもたらす。
【0054】
少ない数の実験ポイントに起因する不正確さを念頭に置いて、12パルス曲線の最大は、TR軸において6パルス曲線の最大よりもおよそ2倍遠くにあるように見える。また、12パルス曲線は、6パルス曲線よりも2倍広いドーム形状を有するように見える。したがって、ドームの幅及び最大の位置は、パルスの数、又はより一般にはプレサチュレーションモジュールの長さT
MTと相関する。
【0055】
これらの発見は、良好な繰り返し時間TRを選択するための、プレサチュレーションモジュールの長さから独立した、一般的ルールにつながる。7T
MTにほぼ等しいTRが良好な結果をもたらすことが
図5Aから分かる。より一般には、TRは、T
MTの倍数であってよく、その倍率は、後述するようにプレサチュレーションモジュールの構成に依存する。
【0056】
図5Bは、より慣習的なHann形パルスを考察し、6、12、及び18パルスのプレサチュレーションモジュールに関して得られる曲線を示す。
【0057】
6パルス曲線は、
図3Aのシミュレーション条件に対応する実験条件で得られた(点線の曲線)。利用可能な実験ポイントは、シミュレートした結果よりも高い。
【0058】
12パルス曲線は、TR≧50msに関して最大値に達し、一方、18パルス曲線は、75ms付近のTRに関して最大値に達する。
【0059】
12パルス曲線は、本明細書で報告される実験で達成される最高値、すなわち15%以上に達する。したがって、
図3Bは、6又は18ではなく12パルスのあたりで顕著な改善が達成されることを示す。これはTukey形パルス(
図5A)にも当てはまる。したがって、8〜16パルスは、伝統的な6パルスよりも良好な感度結果を達成し得ることが予測できる。
【0060】
上記のパルスの数の説明は、他のタイプのプレサチュレーションモジュールに関する持続時間の観点で変換され得る。説明したパルスは1msのピッチ間隔及び0.5msの幅を有するので、8から16までの間のパルスの数の選択は、7.5から15.5ミリ秒、したがって、およそ8および16ミリ秒の間のプレサチュレーションモジュール持続時間T
MTの選択へ変換される。同様に、12パルスの選択は、およそ12ミリ秒のプレサチュレーションモジュールの選択へ変換される。
【0061】
パルス形状は最大の位置に対する影響を有することが
図5A及び
図5Bから分かる。
図5Bでは、ほとんどの実験ポイントを有する18パルス曲線に基づいて、最適なデューティ比T
MT/TRは、
図5Aでの1/7ではなく1/4のあたりであるように見える。実際には、最大の位置は、プレサチュレーションモジュール内のエネルギー分布と共に変化する。例えば、Tukey形パルス(
図5A)は、Hann形パルス(
図5B)よりも、より広いがより低い振幅パルスで同じエネルギーを伝達し、ihMTR曲線のドームがより広くなり、ドームの頂上がさらに遠くなる。
【0062】
プレサチュレーションモジュールに関するどのような構成が用いられても、20msよりも長い、好ましくは30msよりも長いTR、及び1/4よりも小さいデューティ比T
MT/TRの選択が、一般に、満足のいく結果をもたらすであろう。
【0063】
図6は、ここでは3つの異なる組織タイプ(筋Mu、皮質灰白質cGM、及び被膜内(intra−capsule)白質IC)に関する6つのHann形パルスを用いる、パルスに関する異なる間隔ピッチ値Δtを考察する。0のΔtは、単一のコサイン変調されたパルスに対応する。
【0064】
ihMTR値はすべて、ピッチの増加に伴い減少する。短いΔt値に関して、筋組織感度Muは、灰白質感度cGMの近くで始まるが、感度Muは、感度cGMよりも速く低下することを特筆することができる。Δt=2.5msで、感度Muは、その最初の振幅の半分に達した。実際には、2.5msは、おおよそ、筋組織における双極子秩序の緩和時間T1Dである。
【0065】
パルス間隔の増加に伴う全体的な感度の低下は、より短い繰り返し時間がより良好であったという従来の見解につながり得た別の理由である。実際に、より近い間隔の無線周波数パルスで達成されるより良好な結果は、より近い間隔のプレサチュレーションモジュールで期待されている良好な結果につながることができたが、これは上記で実証した場合に当てはまらない。
【0066】
従来の条件下(すなわち、0又は1msのΔt)では、筋から灰白質を区別することは、解析下の体積に両方が存在する場合、ihMTR値が近接しているので難しい場合がある。このような状況下で灰白質をより良好に区別するために、筋組織の双極子秩序緩和時間、すなわち2.5msよりも長いΔtを選択することにより、Mu信号をフィルタすることが提案される。
【0067】
より一般には、ピッチΔtに関する所与の選択は、該ピッチよりも短い双極子緩和時間を有するすべての組織からの信号を減弱させる及び/又はフィルタすることになる。
【0068】
例えば
図3A及び
図3Bに関連して前述したように、基準SARが総じて重視されるようにプレサチュレーションモジュールの磁気RFパルス振幅B1を選択することが望ましい。この制約を達成するために、プレサチュレーションモジュールの有効幅は通常は一定であることから、RFパルス振幅が、用いられる繰り返し時間値TRに伴い増加され得る。これは、両方とも全体としては同じ磁気RFエネルギーを伝達する、以下で例示する2つのタイプのイメージングシーケンスにつながる。
【0069】
図7Aでは、より低い範囲、例えば20ms付近の繰り返し時間TRが用いられ、所与の時間間隔にわたって分散した多くの低エネルギーRFパルス(黒色で例示される)につながる。このようなシーケンスは、「分散したRFエネルギー」シーケンスと呼ばれることになる。
【0070】
図7Bでは、より高い範囲、例えば100ms付近の繰り返し時間TRが用いられ、所与の時間間隔にわたって離間された少ない高エネルギーRFパルスにつながる。このようなシーケンスは、同じエネルギーが実質的により少ないパルスで伝達されることから、「集中したRFエネルギー」シーケンスと呼ばれることになる。
【0071】
これらの2つのタイプのシーケンスは、全体としては同じRFエネルギーを伝達するが、RFパルス振幅の望ましくない変動に対するihMTRコントラストの感受性への異なる影響を有するように見える。
【0072】
図8は、例示的な分散したRFエネルギーシーケンス(太線)及び例示的な集中したRFエネルギーシーケンス(点線)に関するRMSパルス振幅の関数としてのihMTRコントラストの変動を示すグラフである。分散したRFエネルギーシーケンスに関して24msの繰り返し時間を用い、集中したRFエネルギーシーケンスに関して140msの繰り返し時間を用いた。パルスのB1 RMS値は、B0=1.5Tで取得したデータに関して2から5.5μTまでの間で変化する。
【0073】
図示されるように、ihMTRコントラストは、分散したRFエネルギーシーケンスが用いられるときにB1 RMS値に伴い実質的に直線的に変化する。集中したRFエネルギーシーケンスが用いられるとき、ihMTRコントラストはより高い値で開始し、この例ではB1 RMSがおよそ4μT RMSに達するとき、プラトーとなる傾向がある。
【0074】
結果として、十分なパワーをもつ集中したRFエネルギーシーケンスを用いるとき、ihMTRコントラストは、パルス振幅B1の望ましくない変動の影響を受けなくなる。
【0075】
この特性は、RF不均一の影響に対する感受性を軽減するべく任意の磁場強度で、特に、より高い静電場強度(例えば3T以上)で用いられ得る。2.2μTの公称B1 RMS値及び19msの繰り返し時間(したがって、分散したRFエネルギーシーケンス)を用いてB0=3T(これに関してより低いB1 RMSパワーが通常は用いられる)で実験を行った。これらの条件下で、サンプル脳画像における白質の平均ihMTRコントラストは、0.059の傾きで変化した。傾きは、本明細書では、公称B1 RMS値の各パーセント変動に関するihMTRコントラストのユニットで表される。
【0076】
260msの繰り返し時間(したがって、集中したRFエネルギーシーケンス)を用いて、同じ条件で、0.0035の傾きが得られ、これは、大きさが1桁以上小さく、パルス振幅B1の望ましくない変動に対する低減した感受性を実証する。
【0077】
前述の改善を与える「集中した」RFエネルギーシーケンスを「分散した」RFエネルギーシーケンスから区別する繰り返し時間閾値は、公称B1 RMS値、静磁場強度B0、プレサチュレーションモジュールの幅、そしてまた所望のihMTR感度利得などの、特定の用途のいくつかのパラメータに依存する。前述の例では、B1 RMS>4μTに関してB0=1.5Tで140ms及び2.2μT付近のB1 RMSに関してB0=3Tで260msの繰り返し時間で良好な結果が達成されたが、或る場合には、70msもの短さの繰り返し時間、すなわち、最良の感度利得が達成されるTR値で明白な改善が達成され得る(
図3A)。
【0078】
普通は、公称B1 RMS値は、静磁場強度B0に応じて基準SARに関して調節されることになる。このような条件で、感度利得(ここでは70msのあたりのより低い繰り返し時間)とパルス振幅B1(ここでは140ms以上のあたりの繰り返し時間)のスプリアス変動への耐性との間の妥協を達成するべく所望の繰り返し時間が実験的に求められ得る。