特許第6876988号(P6876988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6876988メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のcna遺伝子の一塩基多型を利用したMRSAの血流感染のリスクを予測する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876988
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のcna遺伝子の一塩基多型を利用したMRSAの血流感染のリスクを予測する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6827 20180101AFI20210517BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALI20210517BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20210517BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20210517BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
   C12Q1/6827 ZZNA
   C12Q1/689 Z
   C12N15/09 200
   C12N15/31
   C12M1/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-56620(P2015-56620)
(22)【出願日】2015年3月19日
(65)【公開番号】特開2016-174562(P2016-174562A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2018年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】和田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 賢二
(72)【発明者】
【氏名】岩田 恭宜
【審査官】 林 康子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/154016(WO,A1)
【文献】 史達ほか,新潟医学会雑誌,2011年,第125巻,第1号,p.26-40
【文献】 Diagn Microbiol Infect Dis,2012年,Vol.74,p.363-368
【文献】 J Medical Microbiology,2006年,Vol.55, p.43-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00〜3/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)のコラーゲン付着因子(cna)遺伝子の変異を検出することを含む、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査方法であって、
a)被験体から単されたMRSAから核酸試料を調製する工程、
b)前記MRSAのコラーゲン付着因子(cna)遺伝子の変異を検出する工程、
を含み、コラーゲン付着因子(cna)遺伝子の変異が検出された場合にMRSAの血流感染のリスクが高いと評価する、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査方法であって、変異が以下の(1)〜(17)の少なくとも1つの一塩基多型部位における変異であって、cna遺伝子がコードするコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸の置換をもたらす変異である、MRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基におけるCからAへの変異、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基におけるGからTへの変異、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基におけるGからAへの変異、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基におけるGからAへの変異、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基におけるCからAへの変異、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基におけるGからTへの変異、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基におけるGからTへの変異、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基におけるAからGへの変異、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基におけるTからAへの変異、
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基におけるCからAへの変異、
(11) 配列番号1で示される塩基配列の2253番目の塩基におけるCからTへの変異、
(12) 配列番号1で示される塩基配列の1983番目の塩基におけるAからGへの変異、
(13) 配列番号1で示される塩基配列の1941番目の塩基におけるCからTへの変異、
(14) 配列番号1で示される塩基配列の1842番目の塩基におけるGからAへの変異、
(15) 配列番号1で示される塩基配列の1716番目の塩基におけるTからCへの変異、
(16) 配列番号1で示される塩基配列の1530番目の塩基におけるTからCへの変異、及び
(17) 配列番号1で示される塩基配列の12番目の塩基におけるTからCへの変異。
【請求項2】
変異が以下の(1)〜(10)の少なくとも1つの変異である、請求項1記載のMRSAの血流感染のリスクを判定するための検査方法:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基におけるCからAへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてA947Dの置換をもたらす変異、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてV758Lの置換をもたらす変異、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてE756Kの置換をもたらす変異、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてV746Iの置換をもたらす変異、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基におけるCからAへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてT663Kの置換をもたらす変異、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてV571Lの置換をもたらす変異、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてG65Vの置換をもたらす変異、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基におけるAからGへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてN64Sの置換をもたらす変異、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基におけるTからAへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてS46Tの置換をもたらす変異、及び
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における、CからAへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてD26Eの置換をもたらす変異。
【請求項3】
変異が以下の(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の少なくとも1つの変異である、請求項2記載のMRSAの血流感染のリスクを判定するための検査方法:
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてV758Lの置換をもたらす変異、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてE756Kの置換をもたらす変異、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてV746Iの置換をもたらす変異、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基におけるCからAへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてT663Kの置換をもたらす変異、及び
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すコラーゲン付着因子(cna)タンパク質のアミノ酸配列においてV571Lの置換をもたらす変異。
【請求項4】
シークエンス解析により変異を検出する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のMRSAの血流感染のリスクを判定するための検査方法。
【請求項5】
MRSAが血流感染のリスクが高いと評価された場合に、該MRSAは敗血症を引き起こすリスクが高いと判定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のMRSAの血流感染のリスクを判定するための検査方法。
【請求項6】
配列番号1で表されるMRSAのコラーゲン付着因子(cna)遺伝子の塩基配列の以下の(1)〜(17)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基における一塩基多型部位、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基における一塩基多型部位、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基における一塩基多型部位、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基における一塩基多型部位、
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における一塩基多型部位、
(11) 配列番号1で示される塩基配列の2253番目の塩基における一塩基多型部位、
(12) 配列番号1で示される塩基配列の1983番目の塩基における一塩基多型部位、
(13) 配列番号1で示される塩基配列の1941番目の塩基における一塩基多型部位、
(14) 配列番号1で示される塩基配列の1842番目の塩基における一塩基多型部位、
(15) 配列番号1で示される塩基配列の1716番目の塩基における一塩基多型部位、
(16) 配列番号1で示される塩基配列の1530番目の塩基における一塩基多型部位、及び
(17) 配列番号1で示される塩基配列の12番目の塩基における一塩基多型部位。
【請求項7】
配列番号1で表されるMRSAのコラーゲン付着因子(cna)遺伝子の塩基配列の以下の(1)〜(10)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基における一塩基多型部位、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基における一塩基多型部位、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基における一塩基多型部位、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基における一塩基多型部位、及び(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における一塩基多型部位。
【請求項8】
配列番号1で表されるMRSAのコラーゲン付着因子(cna)遺伝子の塩基配列の以下の(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位、及び(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のプローブ又はその標識物を標識した固定化基板からなるDNAチップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の血流感染のリスクを予測する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、1940年代に工業的に量産化に成功したペニシリンに対し、当時良好な感受性を示し、化膿傷や肺炎などの治療に奏効した。しかし、ペニシリンの普及と使用量の増加に伴い、ペニシリン耐性株が世界各地に広がっていった。これに対抗するためメチシリンが開発され、1960年頃より欧米で使用されるようになった。しかしながら、間もなくメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA: methicillin-resistant Staphylococcus aureus)が確認され、1970年代後半より海外の医療現場で大きな関心事となった。現在では、臨床分離される黄色ブドウ球菌の6割程度がMRSAと判定される事態に至っている。
【0003】
MRSAの病原性は通常の黄色ブドウ球菌と比較して特に強いわけではなく、それらと同等程度の各種感染症を引き起こす。したがって、通常の感染防御能力を有する人に対しては一般的に無害である。黄色ブドウ球菌と同様に常在菌のひとつと考えられ、健康な人の鼻腔、咽頭、皮膚などからも検出される。
【0004】
一般的には内科系より外科系の疾患を有する患者で問題となる場合が多く、例えば開腹開胸手術後の術後感染などで治療困難な例も多い。特に透析等を必要とする血液疾患やガンなどの悪性疾患を基礎疾患に持つ患者ではリスクが高くなる。また、新生児や高齢者などもハイリスクグループとなる。
【0005】
治療薬としては、バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン等の抗MRSA薬が用いられている。しかし、安全域及び有効治療域が狭いため、その血中濃度が有効域に達しないことによる耐性菌出現や、血中濃度を大きく超えてしまうことによる副作用発現の危険性がある。
【0006】
MRSAはしばしば血流感染を起こし菌血症を誘発し、さらに重篤な感染症である敗血症を誘発する。MRSAの遺伝子を検出し、MRSA感染の有無を検出する方法は報告されていた(特許文献1及び2を参照)。しかし、感染に大きく関わる臨床症状とMRSAの遺伝子特異性との相関についてはこれまで検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4579532号公報
【特許文献2】特許第5503552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、MRSAの特定の遺伝子の一塩基多型を解析し、MRSAの血流感染のリスクを評価する方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、MRSA感染症の発症/保菌とMRSAの遺伝子の関連を探るべく、MRSA株について網羅的遺伝子解析を行い、MRSAの接着やバイオフィルム形成に関与する遺伝子の1つであるcna遺伝子がMRSA感染症の発症/保菌と関連していることを見出した。類似のフェノタイプを有する遺伝子としてsdrC遺伝子、clfa遺伝子、clfb遺伝子、sdrD遺伝子、fnbA遺伝子等があるが、これらの遺伝子群と臨床像との間に関連はなかった。
【0010】
本発明者らは、クラスター解析により、血流感染を発症しやすいMRSA株群において、MRSAのcna遺伝子に一塩基多型が認められ、一塩基多型部位における変異を有するMRSA株において、血流感染を起こしやすいことを見出した。
【0011】
本発明者らは、MRSA株のcna遺伝子の一塩基多型を分析することにより、該MRSA株が血流感染を誘発するリスクを評価、判定し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)のcna遺伝子の変異を検出することを含む、MRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法であって、
a)被験体からMRSAを単離し、該MRSAから核酸試料を調製する工程、
b)前記MRSAのcna遺伝子の変異を検出する工程、
を含み、cna遺伝子の変異が検出された場合にMRSAの血液感染のリスクが高いと評価する、MRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[2] 変異が一塩基多型部位における変異である、[1]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[3] 変異がcna遺伝子がコードするCnaタンパク質のアミノ酸の置換をもたらすものである、[1]又は[2]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[4] 変異がcna遺伝子がコードするCnaタンパク質の機能ドメインのアミノ酸の置換をもたらすものである、[3]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[5] 変異が以下の(1)〜(17)の少なくとも1つの変異である、[1]又は[2]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基におけるCからAへの変異、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基におけるGからTへの変異、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基におけるGからAへの変異、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基におけるGからAへの変異、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基におけるCからAへの変異、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基におけるGからTへの変異、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基におけるGからTへの変異、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基におけるAからGへの変異、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基におけるTからAへの変異、
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基におけるCからAへの変異、
(11) 配列番号1で示される塩基配列の2253番目の塩基におけるCからTへの変異、
(12) 配列番号1で示される塩基配列の1983番目の塩基におけるAからGへの変異、
(13) 配列番号1で示される塩基配列の1941番目の塩基におけるCからTへの変異、
(14) 配列番号1で示される塩基配列の1842番目の塩基におけるGからAへの変異、
(15) 配列番号1で示される塩基配列の1716番目の塩基におけるTからCへの変異、
(16) 配列番号1で示される塩基配列の1530番目の塩基におけるTからCへの変異、及び
(17) 配列番号1で示される塩基配列の12番目の塩基におけるTからCへの変異。
【0013】
[6] 変異が以下の(1)〜(10)の少なくとも1つの変異である、[3]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基におけるCからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてA947Dの置換をもたらす変異、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV758Lの置換をもたらす変異、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてE756Kの置換をもたらす変異、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV746Iの置換をもたらす変異、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基におけるCからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてT663Kの置換をもたらす変異、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV571Lの置換をもたらす変異、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてG65Vの置換をもたらす変異、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基におけるAからGへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてN64Sの置換をもたらす変異、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基におけるTからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてS46Tの置換をもたらす変異、及び
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における、CからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてD26Eの置換をもたらす変異。
【0014】
[7] 変異が以下の(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の少なくとも1つの変異である、[4]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法:
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV758Lの置換をもたらす変異、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてE756Kの置換をもたらす変異、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV746Iの置換をもたらす変異、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基におけるCからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてT663Kの置換をもたらす変異、及び
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV571Lの置換をもたらす変異。
[8] シークエンス解析により変異を検出する、[1]〜[7]のいずれかのMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[9] MRSAが血流感染のリスクが高いと評価された場合に、該MRSAは敗血症を引き起こすリスクが高いと判定する、[1]〜[8]のいずれかのMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
【0015】
[10] 配列番号1で表されるMRSAのcna遺伝子の塩基配列の以下の(1)〜(17)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基における一塩基多型部位、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基における一塩基多型部位、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基における一塩基多型部位、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基における一塩基多型部位、
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における一塩基多型部位、
(11) 配列番号1で示される塩基配列の2253番目の塩基における一塩基多型部位、
(12) 配列番号1で示される塩基配列の1983番目の塩基における一塩基多型部位、
(13) 配列番号1で示される塩基配列の1941番目の塩基における一塩基多型部位、
(14) 配列番号1で示される塩基配列の1842番目の塩基における一塩基多型部位、
(15) 配列番号1で示される塩基配列の1716番目の塩基における一塩基多型部位、
(16) 配列番号1で示される塩基配列の1530番目の塩基における一塩基多型部位、及び
(17) 配列番号1で示される塩基配列の12番目の塩基における一塩基多型部位。
[11] 配列番号1で表されるMRSAのcna遺伝子の塩基配列の以下の(1)〜(10)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基における一塩基多型部位、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基における一塩基多型部位、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基における一塩基多型部位、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基における一塩基多型部位、及び
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における一塩基多型部位。
[12] 配列番号1で表されるMRSAのcna遺伝子の塩基配列の以下の(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位、及び
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位。
[13] [10]〜[12]のいずれかのプローブ又はその標識物を標識した固定化基板からなるDNAチップ。
【発明の効果】
【0016】
MRSAのcna遺伝子は、MRSAの接着やバイオフィルム形成に関与する遺伝子であり、cna遺伝子の一塩基多型部位における変異が、MRSAの血流感染の起こしやすさに関連している。従って、MRSAのcna遺伝子の一塩基多型を分析することにより、MRSAの血流感染を起こすリスクを評価、判定することができる。
【0017】
特定の被験体から単離したMRSAが血流感染を起こすリスクがあると判定された場合、厳格な除菌を行ったり、あるいは、効果的な抗MRSA薬の投与計画を設計し、未然にMRSAの血流感染を防ぐことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1-1】MRSAゲノムの遺伝子挿入・欠失(indel)、一塩基変異(SNPs)とMRSA感染症発症/保菌との相関を示す図である。
図1-2】MRSAゲノムの遺伝子挿入・欠失(indel)、一塩基変異(SNPs)とMRSA感染症発症/保菌との相関を示す図である(図1−1の続き)。
図2-1】MRSA感染症発症と相関係数が高いか、又は低いSNPsをそれぞれ50変異ずつ示した図である。
図2-2】MRSA感染症発症と相関係数が高いか、又は低いSNPsをそれぞれ50変異ずつ示した図である(図2−2の続き)。
図3】遺伝子変異とMRSA感染症の発症/保菌との相関を検討した接着・バイオフィルム関連分子(Adhesion/biofilm)、薬剤感受性関連分子(Anti-micorbial resistance)、毒素関連分子(Toxin)を示す図である。
図4】96株のMRSAを遺伝子配列の相同性によりクラスター解析を行った結果を示す図である。
図5】クラスター解析により分類された各クラスターに属する患者のMRSA感染前の背景を示す図である。
図6】クラスター解析により分類された各クラスターに属する患者の臨床病態を示す図である。
図7】クラスター解析により分類された各クラスターに属する患者の感染症発症中の検査データを示す図である。
図8】クラスター解析により分類された各クラスターに属する患者から単離したMRSA株の接着・バイオフィルム形成能を示す図である。
図9】MRSAのクラスターA及びCに属する患者から単離したMRSA株のcna遺伝子領域におけるSNPsを示す図である。
図10】cna遺伝子領域の機能コドン上のアミノ酸変異を示す図である。
図11】Cnaタンパク質のホットスポットにおけるアミノ酸変異を示す図である。
図12】クラスター解析により分類された各クラスターに属する患者から単離したMRSA株の毒素産生能試験の結果を示す図である。
図13】クラスター解析により分類された各クラスターに属する患者から単離したMRSA株の薬剤耐性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明は、MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus:メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)のcna遺伝子の一塩基多型を検出することにより、MRSAが血流感染を起こすリスクを評価判定する方法である。MRSAの血流感染とは、MRSAが血管内に侵入することをいい、MRSAが血液中に存在している状態を菌血症という。MRSAの血流感染は、カテーテルを介して起こることが多く、カテーテルを介して感染することをカテーテル関連血流感染(CRBSI)という。血流感染したMRSAによる感染症を敗血症といい、敗血症に罹患した患者の死亡率は高い。すなわち、MRSAが血流感染を起こした場合、敗血症を発症するリスクが高まる。本発明により、MRSAが血流感染するリスク、MRSA菌血症となるリスク、及びMRSAが敗血症を誘発するリスクを評価判定することができる。さらに、本発明において、敗血症の重症化のリスクの評価、判定も行うことができる。
【0021】
cna遺伝子領域は,細菌の接着・バイオフィルム形成に関与する遺伝子のひとつである。MRSAは株によっては、cna遺伝子領域を欠失しており、cna遺伝子領域を有するMRSAについてcna遺伝子の一塩基多型を調べればよい。
【0022】
本発明においては、MRSAのcna遺伝子の一塩基多型(SNPs)を分析し一塩基多型部位におけるcna遺伝子の変異を検出し、MRSAが血流感染を起こすリスク、MRSA菌血症となるリスク、又はMRSAが敗血症を誘発するリスクを評価判定するための検査を行い、MRSAが血流感染を起こすリスク、MRSA菌血症となるリスク、又はMRSAが敗血症を誘発するリスクを予測、評価、判定するための補助的データを取得する。評価、判定とは予測ともいう。
【0023】
本発明者らは、MRSAのcna遺伝子の一塩基多型(SNPs)が血流感染の起こしやすさと関連していることを見出し、本発明を完成させたが、ここで血流感染の起こしやすさと関連しているとは、MRSAのcna遺伝子の一塩基多型部位の変異とMRSAの血流感染のしやすさとが統計学的に関連していることをいう。
【0024】
一塩基多型の分析は、一塩基多型部位の塩基の種類、すなわちアレルを決定することをいい、1対の染色体上の一方の染色体について検出する場合も、両方の染色体について検出する場合も包含され、両方の染色体について検出する場合にも、一塩基多型部位においてホモ接合性かヘテロ接合性かの検出を含む。MRSA株から単離した試料に含まれる特定のアレルに対立する各々のアレルを検出し、遺伝子型を決定することができる。あるアレルのみが検出された場合は当該アレルをホモに有するホモ接合性であり、2つのアレルが検出された場合には該2つのアレルをヘテロに有するヘテロ接合性である。
【0025】
本発明の方法においては、被験体からMRSAを単離し、該MRSAのcna遺伝子における一塩基多型部位の変異の有無を検出する。被験体から採取した菌がMRSAであるか否かは、公知の薬剤感受性を測定する方法、PBP2'(penicillin binding protein 2')を検出する方法又はmecA遺伝子を検出する方法により判断することができる。薬剤感受性測定は、ディスク拡散法、Etest、微量液体希釈法等により行うことができる。
【0026】
具体的には、cna遺伝子の以下の(1)〜(17)の一塩基多型の少なくとも1つの一塩基多型を分析する。cna遺伝子の塩基配列を配列番号1に、cna遺伝子がコードするCnaタンパク質のアミノ酸配列を配列番号2に表す。cna遺伝子のセンス鎖の塩基配列は、MRSAゲノムのアンチセンス鎖の塩基配列の2809884番目の塩基から2812874番目の塩基配列に相当する。以下の(1)〜(17)において「2810035:G>T」等の記載は、MRSAゲノムのアンチセンス鎖の配列中の塩基番号を示すとともに、アンチセンス鎖のGがTに変異していることを示す。cna遺伝子のセンス鎖においては、例えば、「2810035:G>T」で表される一塩基多型部位の変異は配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基における多型であり、CのAへの変異になる。図2においても同様に「2810035:G>T」等で一塩基多型部位の変異を示しているが、図2の各変異は下の(1)〜(17)の変異である。
【0027】
(1)2810035:G>T
配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基における多型をいい、C(野生型)又はA(変異型)である。
(2)2810603:C>A
配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における多型をいい、G(野生型)又はT(変異型)である。
(3)2810609:C>T
配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における多型をいい、G(野生型)又はA(変異型)である。
(4)2810639:C>T
配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における多型をいい、G(野生型)又はA(変異型)である。
(5)2810887:G>T
配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における多型をいい、C(野生型)又はA(変異型)である。
(6)2811164:C>A
配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における多型をいい、G(野生型)又はT(変異型)である。
(7)2812681:C>A
配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基における多型をいい、G(野生型)又はT(変異型)である。
(8)2812684:T>C
配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基における多型をいい、A(野生型)又はG(変異型)である。
(9)2812739:A>T
配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基における多型をいい、T(野生型)又はA(変異型)である。
(10)2812797:G>T
配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における多型をいい、C(野生型)又はA(変異型)である。
(11)2810622:G>A
配列番号1で示される塩基配列の2253番目の塩基における多型をいい、C(野生型)又はT(変異型)である。
(12)2810892:T>C
配列番号1で示される塩基配列の1983番目の塩基における多型をいい、A(野生型)又はG(変異型)である。
(13)2810934:G>A
配列番号1で示される塩基配列の1941番目の塩基における多型をいい、C(野生型)又はT(変異型)である。
(14)2811033:C>T
配列番号1で示される塩基配列の1842番目の塩基における多型をいい、G(野生型)又はA(変異型)である。
(15)2811159:A>G
配列番号1で示される塩基配列の1716番目の塩基における多型をいい、T(野生型)又はC(変異型)である。
(16)2811345:A>G
配列番号1で示される塩基配列の1530番目の塩基における多型をいい、T(野生型)又はC(変異型)である。
(17)2812863:A>G
配列番号1で示される塩基配列の12番目の塩基における多型をいい、T(野生型)又はC(変異型)である。
【0028】
上記一塩基多型部位における塩基の変異を検出すればよい。
これら17の一塩基多型のうち、(1)〜(10)の変異は以下のCnaタンパク質のアミノ酸変異を伴うミスセンス変異である(図9〜11)。
【0029】
(1)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列の947番目のアラニン(A)のアスパラギン酸(D)への置換(A947D)
(2)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列の758番目のバリン(V)のロイシン(L)への置換(V758L)
(3)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列の756番目のグルタミン酸(E)のリジン(K)への置換(E756K)
(4)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列の746番目のバリン(V)のイソロイシン(I)への置換(V746I)
(5)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列の663番目のトレオニン(T)のリジン(K)への置換(T663K)
(6)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列の571番目のバリン(V)のロイシン(I)への置換(V571L)
(7)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列のCnaタンパク質の65番目のグリシン(G)のバリン(V)への置換(G65V)
(8)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列のCnaタンパク質の64番目のアスパラギン(N)のセリン(S)への置換(N64S)
(9)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列のCnaタンパク質の46番目のセリン(S)のトレオニン(T)への置換(S46T)
(10)配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列のCnaタンパク質の26番目のアスパラギン酸(D)のグルタミン酸(E)への置換(D26E)
【0030】
このうち、(2)V758L、(3)E756K、(4)V746I、(5)T663K及び(6)V571Lの5つの変異は、配列番号2に表されるアミノ酸配列の第533番目から905番目の配列からなるCnaタンパク質の機能ドメインにおける変異である(図11)。
【0031】
MRSAのcna遺伝子において、上記(1)〜(17)の一塩基多型部位における少なくとも1つの塩基の野生型から変異型への変異を検出すればよい。特に、Cnaタンパク質のアミノ酸の置換を伴う(1)〜(10)の変異を検出することが好ましく、さらに、Cnaタンパク質の機能ドメインに存在するアミノ酸の置換を伴う(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の変異を検出すればよい。すなわち、(1)〜(17)の一塩基多型部位における、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個若しくは又は17個の部位における変異を検出すればよく、あるいは、(1)〜(10)の一塩基多型部位における、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個若しくは10個の部位における変異を検出すればよく、あるいは、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の一塩基多型部位における、1個、2個、3個、4個若しくは5個の部位における変異を検出すればよい。
【0032】
また、MRSAのcna遺伝子がコードするCnaタンパク質における(1)〜(10)の一塩基多型により生じるアミノ酸の変異を検出してもよく、好ましくは(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の一塩基多型により生じるアミノ酸変異を検出すればよい。
【0033】
上記のcna遺伝子の一塩基多型部位に変異がある場合、MRSAは血流感染を起こすリスクが高く、菌血症を誘発するリスクが高く、さらに敗血症を誘発するリスクが高いと評価判定することができる。
【0034】
また、上記一塩基多型の代わりに、上記一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型を分析してもよい。上記一塩基多型と連鎖不平衡にある一塩基多型とは、上記遺伝子多型と関連性のある遺伝子多型であり、具体的には、上記遺伝子多型がXである場合には、常に別の遺伝子多型がYとなるという関係が成立するものである。
【0035】
本発明において、上記の(1)〜(17)の一塩基多型は、被験体に感染したMRSAが血流感染するリスク、MRSA菌血症となるリスク、及びMRSAが敗血症を誘発するリスクを判定するための遺伝子マーカーということができる。
【0036】
本発明の方法においては、最初に被験体から試料を採取し、該試料中のMRSAの存在を確認する。試料としては、咽頭若しくは鼻腔ぬぐい液、咽頭若しくは鼻腔洗浄液、鼻腔吸引液、唾液、便、便懸濁液、尿、痰等が挙げられる。単離したMRSA株のcna遺伝子の上記の一塩基多型を分析する。cna遺伝子の一塩基多型の分析の前に、単離したMRSAがcna遺伝子領域を有しているか否かを検出してもよい。MRSAがcna遺伝子領域を有していない場合、以後の一塩基多型の分析を行う必要はない。
【0037】
MRSAのcna遺伝子の一塩基多型の解析は、通常の遺伝子多型解析方法によって行うことができる。例えば、サンガー法、ジデオキシ法、サイクルシークエンス法、Maxam-Gilbert法(化学分解法)等の公知の方法により直接配列決定するシークエンス解析による解析法、遺伝子多型に特異的なプローブや該プローブを固定化したマイクロアレイ(DNAチップ)などを用いるハイブリダイゼーション法、遺伝子多型に特異的なプライマーを用いる種々の方法があげられ、さらに具体的に、PCR法、LAMP法、制限断片長多型(RFLP)を利用する方法、NASBA法、LCR法、SDA法、変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE)、ミスマッチ部位の化学的切断を利用した方法(CCM)、プライマー伸長法(TaqMan(登録商標)法)、PCR-SSCP法、SNaPshot法、MassArray法、一本鎖コンフォメーション多型解析(SSCP;single strand conformation polymorphism)、Invader法、シングルヌクレオチドプライマー法、Pyrosequncing法、SNP-IT法、BeadArray法、Scorpion法、MADI-TOF/MS法等が挙げられる。
【0038】
また、シークエンス解析による解析法の1つとして、数千万のDNA断片の塩基配列を同時並行的に決定することができる次世代シーケンサー(第2世代シーケンサー)を用いた方法も利用できる。次世代シーケンサーとしては、Genome Sequencer FLX(GD FLX)(Roche社)、Illumina HiSeq/MiSeq(Illumina社)、Genome Analyzer IIx(GAIIx)(Illumina社)等を用いることができる。
【0039】
シークエンス解析による解析法は公知の方法で行えばよく、具体的には、一塩基多型部位の5’側の数十塩基の位置に設定したプライマーを使用してシークエンス反応を行い、その解析結果から、一塩基多型部位の塩基を決定すればよい。
【0040】
プローブやマイクロアレイを用いる方法は、一塩基多型部位を含むcna遺伝子配列の一部配列に対応するオリゴヌクレオチド又はその相補的配列、或いはそれらの配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズする配列からなるオリゴヌクレオチドからなるプローブを用いて行うことができる。すなわち、MRSAから単離した核酸試料、あるいは単離核酸試料をPCR等の公知の方法により増幅した核酸試料とプローブとをハイブリダイゼーションさせ分析すればよい。ハイブリダイゼーションの条件は、一塩基多型を区別するのに足りる条件である。例えば遺伝子多型部位が特定の塩基の場合にはハイブリダイズするが、他の塩基の場合にはハイブリダイズしないような条件、例えばストリンジェントな条件が挙げられる。このような条件は当業者ならば適宜設定することができる。一例として、ストリンジェントな条件としては、約5〜6×SSC中において、約60℃以上、好ましくは約65℃以上、さらに好ましくは約70℃以上でハイブリダイゼーションを行う条件をいう。また、ストリンジェントな条件は、約0.1〜1×SSC中において、約40〜70℃、好ましくは約50〜67℃、さらに好ましくは約60〜65℃で洗浄処理を行うことを含むものであってもよい。
【0041】
プローブの一端を基板に固定することによりDNAチップ(マイクロアレイ)を作製し、該DNAチップを用いてもよい。この場合、DNAチップには、1つの遺伝子多型部位に対応するプローブのみが固定されていても、複数の遺伝子多型部位に対応するプローブが固定されていてもよい。プローブを固定化する基板としては、ニトロセルロース膜、スライドガラス、マイクロビーズ等が挙げられる。DNAチップを作製する際、プローブとなるオリゴヌクレオチドは基板上で合成してもよく、あるいは合成したオリゴヌクレオチドを基板上に固定化することもできる。市販のアレイヤー等を用いることによりプローブであるオリゴヌクレオチドを吸着や共有結合を利用して固定化することできる。このようなDNAチップを用いた遺伝子多型の検出は、例えば「DNAマイクロアレイと最新PCR法」、村松正明及び那波浩之監修、秀潤社、2000年、第10章などに記載されている。一塩基多型を検出するためのプローブは、蛍光物質、酵素、化学発光物質、放射性同位体等で標識されていてもよい。標識は、フルオレセイン、Cy3、Cy5、ローダミン等の公知の標識物質を用い、公知の方法で行うことができる。
【0042】
cna遺伝子の一塩基多型を検出するためのプローブは、一塩基多型の配列情報に基づいて適宜設計することができる。プローブとしては、cna遺伝子の一塩基多型部位を含む塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列、あるいはそれらの配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る配列からなる、塩基長が5〜50、好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜25のヌクレオチドを用いることができる。
【0043】
本発明の方法で用いるプローブとして、配列番号1で表されるMRSAのcna遺伝子の塩基配列の以下の(1)〜(17)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブが挙げられる。
【0044】
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基における一塩基多型部位
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基における一塩基多型部位
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基における一塩基多型部位
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基における一塩基多型部位
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における一塩基多型部位
(11) 配列番号1で示される塩基配列の2253番目の塩基における一塩基多型部位
(12) 配列番号1で示される塩基配列の1983番目の塩基における一塩基多型部位
(13) 配列番号1で示される塩基配列の1941番目の塩基における一塩基多型部位
(14) 配列番号1で示される塩基配列の1842番目の塩基における一塩基多型部位
(15) 配列番号1で示される塩基配列の1716番目の塩基における一塩基多型部位
(16) 配列番号1で示される塩基配列の1530番目の塩基における一塩基多型部位
(17) 配列番号1で示される塩基配列の12番目の塩基における一塩基多型部位
【0045】
この中でも、(1)〜(10)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブが好ましく、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブがさらに好ましい。
【0046】
プライマーを用いる方法は、一塩基多型部位を含むMRSAのcna遺伝子配列の一部にアニーリングするプライマーを用いて、被験体から単離したMRSAの核酸を増幅させて行う。プライマーは、MRSAのcna遺伝子の一塩基多型部位の塩基を同定できるプライマーであり、cna遺伝子の一塩基多型部位を含む配列を有する領域を増幅することのできる配列である。このようなプライマーは、一塩基多型部位を含む配列を含んでいてもよく、また一塩基多型部位を含む領域の3’側と5’側の両端に設定されたフォワードプライマーとリバースプライマーのプライマー対であってもよい。プライマーとしては、cna遺伝子の一塩基多型部位を含む塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列或いはストリンジェント条件下でそれらの配列にハイブリダイズし得る塩基長5〜50、好ましくは10〜30、さらに好ましくは15〜25であるヌクレオチドを用いることができる。
【0047】
上記のプローブ又はプライマーはMRSAのcna遺伝子の塩基配列の一塩基多型部位を含む連続した塩基配列において、数個、好ましくは1個又は2個、特に好ましくは1個のミスマッチを有していてもよい。
【0048】
本発明は、MRSAのcna遺伝子の一塩基多型を分析するために用いるプローブ及び一塩基多型を分析するために一塩基多型部位を含むDNA断片の増幅に用いるプライマー、好ましくは、少なくとも一対のプライマーセットを包含する。また、本発明はプローブを固定化したDNAチップをも包含する。さらに、プローブ、DNAチップ、プライマー等を含むcna遺伝子の一塩基多型部位を解析するためのキットも包含する。該キットは、他に一塩基多型の解析に使用される制限酵素、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、核酸標識分子、緩衝液、該キットの取扱説明書等を含んでいてもよい。
【0049】
Cnaタンパク質の変異の検出は、被験体から単離したMRSAよりタンパク質を抽出し、該タンパク質中にアミノ酸の変異を有するCnaタンパク質が存在するか否かを調べればよい。例えば、変異アミノ酸を有するCnaタンパク質とは結合するが、変異を有しない野生型のCnaタンパク質と結合しない抗Cnaタンパク質抗体を用いて抗原抗体反応を利用したイムノアッセイ法により変異タンパク質を検出することができる。抗原抗体反応を利用したイムノアッセイとしては、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)、イムノドットブロット、イムノクロマトグラフィー、ラテックス等の粒子を利用した凝集法、ウエスタンブロット等が挙げられる。また、Cnaタンパク質を単離し、アミノ酸配列を決定し、変異アミノ酸を有するか否かを調べてもよい。
【0050】
特定の被験体から単離したMRSAが血流感染を起こすリスクがあると判定された場合、厳格な除菌を行うことにより未然にMRSAの血流感染を防ぐことができる。特にカテーテルを介した血流感染がしばしば起こることに鑑み、カテーテルの除菌は効果的である。さらに、効果的な抗MRSA薬の投与計画を設計し、未然にMRSAの血流感染を防ぐことも可能になる。
【実施例】
【0051】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0052】
対象と方法
患者背景およびMRSA採取
MRSAは1998年から2003年までに金沢大学附属病院にて加療を受けた患者より分離・培養された96株を用いた。グラム染色およびスタフィスライドテストを用いたコアグラーゼ産生試験によりMRSAを同定した。薬剤感受性はMicroScan WalkAway 96Plus (SIEMENS, Munich)を用いて計測した。毒素の同定には、SET-RPLA, EXT-RPLA及びTST-RPLA (DENKA, Tokyo)を用いた。それぞれ、使用説明書通りに操作した。
【0053】
患者の基礎検査値はMRSAが培養された時点、あるいはそれ以前のものを用いた。MRSA感染症発症中の検査値は、抗MRSA薬を投与中の値を用いた。また、MRSA感染症により死亡した患者の検査値は、除いて解析を行った。MRSAの感染発症は、抗MRSA薬(バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン、ダプトマイシン、リネゾリド)の使用、あるいは無菌検体からのMRSA培養陽性とした。
【0054】
バイオフィルムアッセイ
バイオフィルム形成能は96穴プレートへの接着にて測定した。既定の濃度に希釈したMRSAを96穴プレートへ播種し、一晩インキュベーションした。翌日、PBSにて洗浄後、接着した菌を100%エタノールにて固定した。クリスタルバイオレットを用いて染色後、プレートリーダーにて595nmの波長で計測し、接着菌を測定した。
【0055】
DNAシーケンス
MRSAのDNAはNucleo Spin Tissue kit (MACHREY-NAGEL, Duren)を用いて抽出した。抽出したDNAよりTruSeq DNA HT Sample Prep Kit (Illumina, San Diego, CA)を用いてライブラリを作成後、Hiseq (Illumina)により網羅的遺伝子解析を行った。遺伝子の変異はレファレンスゲノム(HO 5096 0412)を用いて検討した。
【0056】
統計解析
統計ソフトはStatViewを用いた。統計解析にはANOVA, Kruskal-Wallis,およびカイ2乗検定を用いた。
【0057】
結果
接着・バイオフィルム関連遺伝子領域の遺伝子変異がMRSA感染症の発症/保菌と相関した
96株の網羅的遺伝子解析により、1871か所の遺伝子挿入・欠失(indel)、89091か所の一塩基変異(SNPs)が認められた。これらの変異と、MRSA感染症発症/保菌との相関を検討した。図1−1及び図1−2にはMRSA感染症発症と相関係数の高いおよび低いindel とその遺伝子領域を、それぞれ50変異ずつ示す。それらのうち21か所がaで示す、接着・バイオフィルム関連分子をコードする遺伝子領域であった。bの4か所は毒素関連領域、cの1か所は薬剤耐性関連領域であった。図2−1及び図2−2には、同様にMRSA感染症発症と相関係数の高いおよび低いSNPs その遺伝子領域を、それぞれ50変異ずつ示す。それらのうち17か所がaで示す、接着・バイオフィルム関連分子をコードする遺伝子領域であり、bの2か所は毒素関連領域、cの1か所は薬剤耐性関連領域であった。なお今回、検討した接着・バイオフィルム関連分子(Adhesion/biofilm)、薬剤感受性関連分子(Anti-micorbial resistance)、毒素関連分子(Toxin)を図3に示した。
【0058】
クラスター解析による群分けはcna遺伝子領域の有無と一致した
96株を遺伝子配列の相同性によりクラスター解析を行った。これらのクラスター分類と接着・バイオフィルム関連分子であるcna領域の有無が一致し、主に4つのクラスターに分類された(図4)。他、図3に示す接着・バイオフィルム関連分子遺伝子領域の有無とクラスター分類は一致しなかった。各クラスターの患者背景を図5に示す。クラスターAで平均年齢が低く、クラスターBではアルブミン値が低い結果であった。
【0059】
血流感染を発症しやすい一群が認められ、この群にはcna領域が認められた
ついで、これらの群における臨床病態について検討を行った。cna領域を認めるクラスターC群で、有意に血流感染の発症率が高かった(図4及び図6)。その原因としてカテーテル感染によるものが多かった。また、同群は、抗MRSA薬を使用する率が高かった。一方、死亡率、死亡あるいは感染症のためにICU入室する率はほぼ同等であった(図6)。感染症発症中の検査データを図7に示す。クラスターCでは発症中の血小板がクラスターBに比較し低値であった。
【0060】
クラスターCのMRSA株の特徴
プレートバイオフィルムアッセイにより測定した各クラスターの接着・バイオフィルム形成能を図8に示す。クラスターCは高い接着能を示した。一方、クラスターAの株もcna遺伝子領域を持つが、接着能は低かった。そこで、クラスターAとクラスターCのcna遺伝子領域について検討を進めた。クラスターCの全株に存在し、クラスターAには存在しないcna遺伝子領域のSNPsが17か所認められた(図9)。図9の右の数字はMRSAのゲノム配列のアンチセンス鎖における塩基番号である。そのうち、10か所はアミノ酸変異を伴う、ミスセンスバリアントであった。また、これらのミスセンスバリアントのうち5か所は、cna遺伝子領域の機能コドン上に存在していた(図10)。さらに、タンパク構造予測に基づく構造分析では、これらの変異が一部集中しており、ホットスポットを形成していた(図11)。一方、毒素産生能試験では、クラスターC株が特異的にエンテロトキシンAを産生していた(図12)。また、薬剤耐性試験では、クラスターC株はゲンタマイシンに対する耐性が低い一方、レボフロキサシン、エリスロマイシンに対しては高い耐性を示した(図13)。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明により、MRSAの血流感染を未然に防止することができ、MRSAの感染の拡大を防ぐことができる。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]