【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、MRSA感染症の発症/保菌とMRSAの遺伝子の関連を探るべく、MRSA株について網羅的遺伝子解析を行い、MRSAの接着やバイオフィルム形成に関与する遺伝子の1つであるcna遺伝子がMRSA感染症の発症/保菌と関連していることを見出した。類似のフェノタイプを有する遺伝子としてsdrC遺伝子、clfa遺伝子、clfb遺伝子、sdrD遺伝子、fnbA遺伝子等があるが、これらの遺伝子群と臨床像との間に関連はなかった。
【0010】
本発明者らは、クラスター解析により、血流感染を発症しやすいMRSA株群において、MRSAのcna遺伝子に一塩基多型が認められ、一塩基多型部位における変異を有するMRSA株において、血流感染を起こしやすいことを見出した。
【0011】
本発明者らは、MRSA株のcna遺伝子の一塩基多型を分析することにより、該MRSA株が血流感染を誘発するリスクを評価、判定し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)のcna遺伝子の変異を検出することを含む、MRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法であって、
a)被験体からMRSAを単離し、該MRSAから核酸試料を調製する工程、
b)前記MRSAのcna遺伝子の変異を検出する工程、
を含み、cna遺伝子の変異が検出された場合にMRSAの血液感染のリスクが高いと評価する、MRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[2] 変異が一塩基多型部位における変異である、[1]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[3] 変異がcna遺伝子がコードするCnaタンパク質のアミノ酸の置換をもたらすものである、[1]又は[2]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[4] 変異がcna遺伝子がコードするCnaタンパク質の機能ドメインのアミノ酸の置換をもたらすものである、[3]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[5] 変異が以下の(1)〜(17)の少なくとも1つの変異である、[1]又は[2]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基におけるCからAへの変異、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基におけるGからTへの変異、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基におけるGからAへの変異、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基におけるGからAへの変異、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基におけるCからAへの変異、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基におけるGからTへの変異、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基におけるGからTへの変異、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基におけるAからGへの変異、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基におけるTからAへの変異、
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基におけるCからAへの変異、
(11) 配列番号1で示される塩基配列の2253番目の塩基におけるCからTへの変異、
(12) 配列番号1で示される塩基配列の1983番目の塩基におけるAからGへの変異、
(13) 配列番号1で示される塩基配列の1941番目の塩基におけるCからTへの変異、
(14) 配列番号1で示される塩基配列の1842番目の塩基におけるGからAへの変異、
(15) 配列番号1で示される塩基配列の1716番目の塩基におけるTからCへの変異、
(16) 配列番号1で示される塩基配列の1530番目の塩基におけるTからCへの変異、及び
(17) 配列番号1で示される塩基配列の12番目の塩基におけるTからCへの変異。
【0013】
[6] 変異が以下の(1)〜(10)の少なくとも1つの変異である、[3]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基におけるCからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてA947Dの置換をもたらす変異、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV758Lの置換をもたらす変異、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてE756Kの置換をもたらす変異、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV746Iの置換をもたらす変異、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基におけるCからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてT663Kの置換をもたらす変異、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV571Lの置換をもたらす変異、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてG65Vの置換をもたらす変異、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基におけるAからGへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてN64Sの置換をもたらす変異、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基におけるTからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてS46Tの置換をもたらす変異、及び
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における、CからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてD26Eの置換をもたらす変異。
【0014】
[7] 変異が以下の(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の少なくとも1つの変異である、[4]のMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法:
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV758Lの置換をもたらす変異、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてE756Kの置換をもたらす変異、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基におけるGからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV746Iの置換をもたらす変異、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基におけるCからAへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてT663Kの置換をもたらす変異、及び
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基におけるGからTへの変異であって、配列番号2に表すCnaタンパク質のアミノ酸配列においてV571Lの置換をもたらす変異。
[8] シークエンス解析により変異を検出する、[1]〜[7]のいずれかのMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
[9] MRSAが血流感染のリスクが高いと評価された場合に、該MRSAは敗血症を引き起こすリスクが高いと判定する、[1]〜[8]のいずれかのMRSAの血液感染のリスクを判定するための検査方法。
【0015】
[10] 配列番号1で表されるMRSAのcna遺伝子の塩基配列の以下の(1)〜(17)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基における一塩基多型部位、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基における一塩基多型部位、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基における一塩基多型部位、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基における一塩基多型部位、
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における一塩基多型部位、
(11) 配列番号1で示される塩基配列の2253番目の塩基における一塩基多型部位、
(12) 配列番号1で示される塩基配列の1983番目の塩基における一塩基多型部位、
(13) 配列番号1で示される塩基配列の1941番目の塩基における一塩基多型部位、
(14) 配列番号1で示される塩基配列の1842番目の塩基における一塩基多型部位、
(15) 配列番号1で示される塩基配列の1716番目の塩基における一塩基多型部位、
(16) 配列番号1で示される塩基配列の1530番目の塩基における一塩基多型部位、及び
(17) 配列番号1で示される塩基配列の12番目の塩基における一塩基多型部位。
[11] 配列番号1で表されるMRSAのcna遺伝子の塩基配列の以下の(1)〜(10)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(1) 配列番号1で示される塩基配列の2840番目の塩基における一塩基多型部位、
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位、
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位、
(7) 配列番号1で示される塩基配列の194番目の塩基における一塩基多型部位、
(8) 配列番号1で示される塩基配列の191番目の塩基における一塩基多型部位、
(9) 配列番号1で示される塩基配列の136番目の塩基における一塩基多型部位、及び
(10) 配列番号1で示される塩基配列の78番目の塩基における一塩基多型部位。
[12] 配列番号1で表されるMRSAのcna遺伝子の塩基配列の以下の(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の少なくとも1つの一塩基多型部位を含むオリゴヌクレオチドであって、配列番号1の塩基配列の5〜30塩基からなる部分配列又はその部分配列に相補的な配列、或いはそれらの配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズし得る配列からなるオリゴヌクレオチド又はその標識物からなる、MRSAの血流感染のリスクを判定するための検査を行うためのプローブ:
(2) 配列番号1で示される塩基配列の2272番目の塩基における一塩基多型部位、
(3) 配列番号1で示される塩基配列の2266番目の塩基における一塩基多型部位、
(4) 配列番号1で示される塩基配列の2236番目の塩基における一塩基多型部位、
(5) 配列番号1で示される塩基配列の1988番目の塩基における一塩基多型部位、及び
(6) 配列番号1で示される塩基配列の1711番目の塩基における一塩基多型部位。
[13] [10]〜[12]のいずれかのプローブ又はその標識物を標識した固定化基板からなるDNAチップ。