(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6876999
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/49 20100101AFI20210517BHJP
G01S 19/40 20100101ALI20210517BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
G01S19/49
G01S19/40
G01C21/28
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-43666(P2017-43666)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-146475(P2018-146475A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179936
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 明日香
(72)【発明者】
【氏名】塩沢 龍雄
(72)【発明者】
【氏名】江本 周平
(72)【発明者】
【氏名】坂野 肇
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩明
【審査官】
安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−068652(JP,A)
【文献】
特開2014−062777(JP,A)
【文献】
特開2015−094690(JP,A)
【文献】
特開2014−228495(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0103033(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14,
G01S 19/00−19/55,
G01C 21/00−21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の速度を観測する速度センサ(2)と、
前記移動体の角速度を観測する角速度センサ(3)と、
前記移動体の位置又は方位角のどちらか一方若しくは両方を観測するGPSセンサ(4)と、
前記GPSセンサ(4)の観測結果の誤差推定を行うカルマンフィルタ(5)と、
前記速度センサ(2)及び前記角速度センサ(3)により観測された前記移動体の速度又は角速度のどちらか一方若しくは両方により前記移動体の位置又は方位角のどちらか一方若しくは両方を求める航法演算を行い、前記航法演算において前記カルマンフィルタ(5)により誤差推定を行うことで補正された前記GPSセンサ(4)の観測結果を利用して前記航法演算の演算結果を補正する航法演算手段(7)と、
を備えるナビゲーション装置であり、
前記GPSセンサ(4)の観測結果を利用して前記航法演算の演算結果を補正しているときに、前記GPSセンサ(4)のGPS電波受信が途絶した場合には前記GPSセンサ(4)の観測結果を利用して前記航法演算の結果の補正をすることを停止するとともに前記カルマンフィルタ(5)を停止し、その後前記GPSセンサ(4)がGPS電波を受信した場合には、GPS電波を受信してから予め決められた時間が経過しており且つ前記GPSセンサ(4)の観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が予め決められた閾値(X)以内である場合に、前記カルマンフィルタ(5)を起動し前記GPSセンサ(4)の観測結果を利用して前記航法演算手段(7)は前記航法演算の演算結果の補正を開始する構成であり、
前記GPSセンサ(4)のGPS電波受信が途絶して前記カルマンフィルタ(5)を停止し、その後前記GPSセンサ(4)がGPS電波を受信して前記カルマンフィルタ(5)を起動する場合には、推定誤差共分散行列又は観測ノイズのどちらか一方或いは両方は、それぞれ予め設定されていた推定誤差共分散行列初期値及び観測ノイズ設定値を用い、
前記カルマンフィルタ(5)は、前記差に応じて前記観測ノイズ設定値を変更する機能を有しており、前記差が閾値(Y)よりも大きい場合は、前記観測ノイズ設定値を変更することで、前記カルマンフィルタ(5)における前記観測ノイズに基づく誤差推定の割合を低下させる、
ことを特徴とするナビゲーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は移動体に搭載されるナビゲーション装置に関し、特に、カルマンフィルタにより誤差推定を行うことで補正されたGPSセンサの観測結果を利用して演算結果を補正する航法演算を行うナビゲーション装置であって、GPSセンサのGPS電波受信が途絶した場合にカルマンフィルタを停止し、その後GPSセンサがGPS電波を受信した場合には、所定の条件を満たす場合にカルマンフィルタを起動するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられてきたナビゲーション装置としては、例えば以下の特許文献1等に記載された構成を
図4として挙げることができる。すなわち、従来のナビゲーション装置1には、速度センサ2と、例えばジャイロ等の角速度センサ3と、GPSセンサ4とが設けられている。前記角速度センサ3による角速度観測結果と前記GPSセンサ4による方位観測結果とが、角速度センサ用カルマンフィルタ5aに入力されて方位誤差推定が行われる。前記速度センサ2による速度観測結果と前記GPSセンサ4による速度観測結果とが速度センサ用カルマンフィルタ5bに入力されて速度誤差観測が行われる。
【0003】
次に、角速度観測結果と、速度観測結果と、方位誤差推定結果と、速度誤差推定結果とが誤差補正装置6に入力されることで、誤差補正後の移動体の角速度及び速度が得られる。次に、方位誤差推定結果と誤差補正後の前記移動体の角速度及び速度とが航法演算手段7に入力されることで、前記移動体の位置及び方位角が得られる。つまり、前記ナビゲーション装置1では、前記移動体の角速度観測結果と速度観測結果が、前記GPSセンサ4による観測結果及びカルマンフィルタにより補正され、航法演算手段7により航法演算が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−301541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような従来のナビゲーション装置1において、前記GPSセンサ4のGPS電波受信が途絶し、その後GPS電波を再び受信した場合には、前記GPSセンサ4により観測された前記移動体の方位及び速度の観測結果と、前記移動体の真の方位及び速度との間の誤差が大きくなる場合がある。そのため、この場合に前記移動体の角速度観測結果と速度観測結果とが前記GPSセンサ4による観測結果で補正されると、前記GPSセンサ4による観測結果の誤差により良好な補正結果が得られずに精度が悪化するという課題があった。
【0006】
また、前記移動体が建物の近傍を通過した場合等にも、前記GPSセンサ4により観測された前記移動体の方位及び速度と、前記移動体の真の方位及び速度との間の誤差が大きくなる場合がある。そのため、この場合も前記移動体の角速度観測結果と速度観測結果とが前記GPSセンサ4による観測結果で補正されると、前記GPSセンサ4による観測結果の誤差により良好な補正結果が得られずに精度が悪化するという課題があった。
【0007】
この発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、前記GPSセンサのGPS電波受信が途絶しその後GPS電波を再び受信した場合や、前記移動体が建物の近傍を通過した場合等で、前記GPSセンサによる前記移動体の位置及び速度との観測誤差が大きい場合に、前記方位センサ及び前記速度センサの観測結果を使用した位置及び方位角の航法演算結果の精度が悪化することを防止するナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るナビゲーション装置は、移動体の速度を観測する速度センサ又は前記移動体の角速度を観測する角速度センサのどちらか一方若しくは両方と、前記移動体の位置又は方位角のどちらか一方若しくは両方を観測するGPSセンサと、前記GPSセンサの観測結果の誤差推定を行うカルマンフィルタと、前記速度センサ及び前記角速度センサにより観測された前記移動体の速度又は角速度のどちらか一方若しくは両方により前記移動体の位置又は方位角のどちらか一方若しくは両方を求める航法演算を行い、前記航法演算において前記カルマンフィルタにより誤差推定を行うことで補正された前記GPSセンサの観測結果を利用して前記航法演算の演算結果を補正する航法演算手段とを備えるナビゲーション装置であり、前記GPSセンサの観測結果を利用して前記航法演算の演算結果を補正しているときに、前記GPSセンサのGPS電波受信が途絶した場合には前記GPSセンサの観測結果を利用して前記航法演算の結果の補正をすることを停止するとともに前記カルマンフィルタを停止し、その後前記GPSセンサがGPS電波を受信した場合には、GPS電波を受信してから予め決められた時間が経過しており且つ前記GPSセンサの観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が予め決められた閾値以内である場合に、前記カルマンフィルタを起動し前記GPSセンサの観測結果を利用して前記航法演算手段は前記航法演算の演算結果の補正を開始する構成であり、また、前記GPSセンサのGPS電波受信が途絶して前記カルマンフィルタを停止し、その後前記GPSセンサがGPS電波を受信して前記カルマンフィルタを起動する場合には、推定誤差共分散行列又は観測ノイズのどちらか一方あるいは両方は予め設定されていた推定誤差共分散行列初期値及び観測ノイズ設定値を用いる構成であり、また、前記カルマンフィルタは、観測ノイズ設定値を前記GPSセンサの観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差に応じて変更する機能を有しており、前記GPSセンサの観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が閾値よりも大きい場合は、前記観測ノイズ設定値を変更することで、前記カルマンフィルタにおける前記観測ノイズに基づく誤差推定の割合を低下させる構成である。
【発明の効果】
【0009】
この発明のナビゲーション装置によれば、前記GPSセンサのGPS電波受信が途絶した場合には前記GPSセンサの観測結果を利用して前記航法演算の結果の補正をすることを停止するとともに前記カルマンフィルタを停止し、その後前記GPSセンサがGPS電波を受信した場合には、GPS電波を受信してから予め決められた時間が経過しており且つ前記GPSセンサの観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が予め決められた閾値以内である場合に、前記カルマンフィルタを起動し前記GPSセンサの観測結果を利用して前記航法演算手段は前記航法演算の演算結果の補正を開始するので、前記GPSセンサによる前記移動体の位置及び速度との観測誤差が大きい場合に、前記方位センサ及び前記速度センサの観測結果を使用した位置又は方位角のどちらか一方若しくは両方の航法演算結果の精度が悪化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置の航法演算手段のブロック図である。
【
図2】
図1に記載されたナビゲーション装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】この発明の実施の形態2に係るナビゲーション装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】従来のナビゲーション装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を添付図面の
図1に基づいて説明する。なお、従来例と同一または同等部分には同一符号を付して説明する。
図1は、この発明の実施の形態1に係るナビゲーション装置の構成を示す概略図である。ナビゲーション装置10は例えば車両等の移動体に設けられており、主として、前記移動体の速度を観測する速度センサ2と、前記移動体の角速度を観測する例えばジャイロ等の角速度センサ3と、GPS電波を受信することにより前記移動体の位置及び方位角を観測するGPSセンサ4と、前記GPSセンサ4の観測結果の誤差推定を行う公知のカルマンフィルタ5と、慣性航法により移動体の位置及び方位角を求める航法演算を行う航法演算手段7とから構成されている。
【0012】
前記速度センサ2が観測した前記移動体の速度vは、前記航法演算手段7に設けられた速度演算手段70に出力される。前記角速度センサ3が観測した前記移動体の角速度Ωは、前記航法演算手段7に設けられた方位角演算手段71に出力される。前記方位角演算手段71は積分器(1/s)であり、前記移動体の角速度Ωが積分されて前記移動体の航法演算結果としての方位角Ψが得られる。方位角Ψは前記速度演算手段70と前記カルマンフィルタ5に設けられた観測手段50とに出力されるとともに、前記航法演算手段7の方位角出力として出力される。
【0013】
前記速度演算手段70は、速度vと方位角Ψから、下記の式により前記移動体の南北方向の速度であるdN/dtの値と、東西方向の速度であるdE/dtの値を演算する。
dN/dt=v・cos(Ψ)
dE/dt=v・sin(Ψ)
【0014】
前記移動体の南北方向の速度dN/dt及び東西方向の速度dE/dtは、位置演算手段72に出力される。位置演算手段72は積分器(1/s)であり、前記移動体の南北方向の速度dN/dt及び東西方向の速度dE/dtが積分されて、前記移動体の航法演算結果としての南北方向の位置であるN位置N及び東西方向の位置であるE位置Eが得られる。前記移動体のN位置N及びE位置Eは、前記観測手段50に出力されるとともに、前記航法演算手段7の位置出力として出力される。
【0015】
前記カルマンフィルタ5の前記観測手段50には、前記GPSセンサ4から前記移動体の位置及び方位角の観測結果がGPSによる観測値として入力される。また、前述したように前記移動体の方位角Ψ,N位置N及びE位置Eが、前記観測手段50に入力される。前記観測手段50は、GPSによる観測値と前記移動体の方位角Ψ,N位置N及びE位置Eとの差を観測値として前記カルマンフィルタ5に設けられた誤差の推定量51へ出力する。
【0016】
前記誤差の推定量51へ、前記観測手段50から観測値が入力される。観測値について、前記誤差の推定量51によりカルマンフィルタを用いた誤差推定が行われる。次に、誤差推定に基づく推定誤差が前記航法演算手段7にフィードバックされ、航法演算において演算結果である前記移動体の方位角Ψ,前記移動体のN位置N及びE位置Eを補正するための補正情報として利用される。これにより、前記航法演算手段7における航法演算の演算結果が補正される。
【0017】
次に、この発明の実施の形態1に係る前記ナビゲーション装置10の、GPS電波途絶時の動作について
図2のフローチャートを用いて説明する。
前記ナビゲーション装置10が航法演算を開始すると、前記航法演算手段7と前記GPSセンサ4とが起動される(ステップS1)。次に、前記GPSセンサ4がGPS電波を受信できるかが判定される(ステップS2)。
【0018】
前記GPSセンサ4がGPS電波を受信できる場合には、前記カルマンフィルタ5が起動される(ステップS3)。次に、前記航法演算手段7の慣性航法によって求められた前記移動体の方位角Ψ,前記移動体のN位置N及びE位置Eと前記GPSセンサ4の観測値が前記カルマンフィルタ5に入力され、前記カルマンフィルタ5による誤差推定が行われて、誤差推定による推定誤差を利用して前記移動体の航法演算の結果としての方位角Ψと前記移動体のN位置N及びE位置Eが補正されて航法演算が行われる(ステップS4)。
【0019】
航法演算中は、前記ナビゲーション装置10によって前記GPSセンサ4のGPS電波受信が途絶したかが判定されている(ステップS5)。前記GPSセンサ4のGPS電波受信が途絶していない場合は、前記ステップS4の航法演算が継続される。前記GPSセンサ4の電波受信が途絶した場合、前記カルマンフィルタ5の演算が停止される(ステップS6)。次に、前記航法演算手段7により、前記GPSセンサ4の観測値及び前記カルマンフィルタ5を使用せず誤差推定を行わない、前記航法演算手段7のみによる航法演算が行われる(ステップS7)。
【0020】
前記航法演算手段7のみによる航法演算が行われているときに、前記GPSセンサ4がGPS電波を受信したら、GPS電波を受信してから例えば5秒以上が経過しているかが前記航法演算手段7によって判定される。経過している場合は、前記航法演算手段7のみで航法演算を行い得られた前記移動体のN位置N及びE位置Eから計算された前記移動体の1秒間における移動距離と、前記GPSセンサ4の観測結果から得られた前記移動体の位置から前記移動体の1秒間における移動距離とを1秒毎に前記航法演算手段7が比較し、差が予め決められた閾値X以内であるかを判定する(ステップS8)。前記ステップS8における判定が偽であれば、前記ステップS7の前記航法演算手段7による航法演算が継続される。
【0021】
前記ステップS8における判定が真である場合は、前記カルマンフィルタ5が起動される。この時、前記カルマンフィルタ5の推定誤差共分散行列及び観測値のノイズ(観測ノイズ)には、推定誤差共分散行列の初期値及び観測ノイズ設定値を使用する(ステップS9)。これにより、前記GPSセンサ4の観測値による前記航法演算の演算結果の誤差補正量が前記GPSセンサ4の電波受信が途絶した直後よりも減少する。次に、前記ステップS4から航法演算が継続されることで、前記GPSセンサ4の観測結果を利用して前記航法演算手段7は前記航法演算の演算結果の補正を開始する。上述のようにして得られた前記移動体のN位置N、E位置E及び方位角Ψを基に、前記ナビゲーション装置10は移動体のナビゲーションを行うことができる。
【0022】
このような前記ナビゲーション装置10では、前記GPSセンサ4の観測結果を利用して航法演算の演算結果を補正しているときに、前記GPSセンサ4のGPS電波受信が途絶した場合には前記GPSセンサ4の観測結果を利用して航法演算の結果の補正をすることを停止するとともに前記カルマンフィルタ5を停止し、その後前記GPSセンサ4がGPS電波を受信した場合には、GPS電波を受信してから5秒以上が経過しており且つ前記GPSセンサ4の観測結果に基づいて求められた1秒間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が予め決められた閾値X以内である場合に、前記カルマンフィルタ5を起動し前記GPSセンサ4の観測結果を利用して前記航法演算手段7は前記航法演算の演算結果の補正を開始し、また、前記GPSセンサ4のGPS電波受信が途絶して前記カルマンフィルタ5を停止し、その後前記GPSセンサ4がGPS電波を受信して前記カルマンフィルタ5を起動する場合には、推定誤差共分散行列及び観測ノイズは予め設定されていた推定誤差共分散行列初期値及び観測ノイズ設定値を用い、また、推定誤差共分散行列及び観測ノイズは予め設定されていた推定誤差共分散行列初期値及び観測ノイズ設定値を用いる構成であるので、前記GPSセンサ4による前記航法演算の誤差補正量が前記GPSセンサ4の電波受信が途絶した直後よりも減少し、前記角速度センサ3及び前記速度センサ2の観測結果を使用した位置及び方位角の航法演算結果の精度が悪化することを防止することができる。
【0023】
実施の形態2.
次に、この発明の
図3に示す実施の形態2に係るナビゲーション装置を示す。尚、実施の形態2において、
図1及び
図2の参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0024】
実施の形態2に係るナビゲーション装置の構成は、実施の形態1と同じである。又、
図3に示すように、前記ステップS4までの動作は実施の形態1と同じである。
【0025】
前記ステップS4の次に、前記GPSセンサ4の観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が、閾値Yよりも大きいか否かが前記航法演算手段7により判定される(ステップS10)。
【0026】
次に、前記ステップS10における判定が偽であれば、前記ステップS5の判定が行われる。前記ステップS10における判定が真であれば、前記カルマンフィルタ5における前記観測ノイズに基づく誤差推定の割合が低下するように、前記観測ノイズ設定値が前記カルマンフィルタ5により変更される(ステップS11)。その後、前記ステップS5の判定が行われる。前記ステップS5以降の動作は実施の形態1と同じである。
【0027】
前記ステップS10では、前記GPSセンサ4の観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が大きくなる場合を、前記移動体が建物の近傍を通過した場合等に前記GPSセンサ4により観測された前記移動体の方位及び速度と、前記移動体の真の方位及び速度との間の誤差が大きくなる場合とみなしている。そして、前記誤差が閾値Yよりも大きい場合に、前記カルマンフィルタ5における前記観測ノイズに基づく誤差推定の割合が低下するように、前記観測ノイズ設定値が前記カルマンフィルタ5により変更されることで、前記誤差が大きくなる場合の航法演算精度への影響を低減している。具体的には、前記GPSセンサ4の観測値に基づく前記カルマンフィルタ5から前記航法演算手段7に、フィードバックされる推定誤差の大きさを小さくして、前記航法演算の演算結果の補正量を小さくする。
【0028】
このように、前記カルマンフィルタ5は、観測ノイズ設定値を前記GPSセンサ4の観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差に応じて変更する機能を有しており、前記GPSセンサ4の観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が閾値Yよりも大きい場合は、前記観測ノイズ設定値を変更することで、前記カルマンフィルタ5における前記観測ノイズに基づく誤差推定の割合を低下させるので、前記GPSセンサ4の観測結果の誤差による観測精度の悪化を低減することができる。
【0029】
尚、実施の形態1及び2では、前記ステップS8において前記GPSセンサ4がGPS電波を受信してから5秒以上が経過しているかを判定し、経過していれば航法演算手段7のみで航法演算を行い得られた前記移動体のN位置N及びE位置Eから計算された前記移動体の1秒間における移動距離と、前記GPSセンサ4の観測結果から得られた前記移動体の位置から前記移動体の1秒間における移動距離とを1秒毎に航法演算手段7が比較していたが、前記GPSセンサ4がGPS電波を受信してからの経過時間と、前記航法演算手段7が前記移動体の何秒間の移動距離を得るかと、前記航法演算手段7が何秒ごとに前記移動体の移動距離を比較するかとのそれぞれの時間は、上述の時間に限定されるものではない。例えば前記航法演算手段7内にEEPROM等の記憶装置を設け、前記それぞれの時間を適当な任意の時間に設定するものであってもよい。
【0030】
また、実施の形態1及び2では、前記GPSセンサ4及び前記航法演算手段7は前記移動体の位置及び方位角を観測し或いは求めていたが、前記速度センサ2の観測結果に基づき前記移動体の位置だけを観測し或いは求めてもよいし、または前記角速度センサ3の観測結果に基づき前記移動体の方位角だけを観測し或いは求めてもよい。
【0031】
また、実施の形態1及び2では、前記GPSセンサ4のGPS電波受信が途絶後、前記GPSセンサ4がGPS電波を受信してその後前記カルマンフィルタ5が起動される場合に、前記カルマンフィルタ5は推定誤差共分散行列の初期値及び観測ノイズ設定値を用いていたが、推定誤差共分散行列の初期値及び観測ノイズ設定値のどちらか一方だけを用いてもよい。
【0032】
尚、本発明によるナビゲーション装置の要旨としては、以下の通りである。すなわち、前記移動体の速度を観測する前記速度センサ2と、前記移動体の角速度を観測する前記角速度センサ3と、前記移動体の位置又は方位角のどちらか一方若しくは両方を観測するGPSセンサ4と、前記GPSセンサ4の観測結果の誤差推定を行う前記カルマンフィルタ5と、前記速度センサ2及び前記角速度センサ3により観測された前記移動体の速度又は角速度のどちらか一方若しくは両方により前記移動体の位置又は方位角のどちらか一方若しくは両方を求める航法演算を行い、前記航法演算において前記カルマンフィルタ5により誤差推定を行うことで補正された前記GPSセンサ4の観測結果を利用して前記航法演算の演算結果を補正する航法演算手段7とを備えるナビゲーション装置であり、前記GPSセンサ4の観測結果を利用して前記航法演算の演算結果を補正しているときに、前記GPSセンサ4のGPS電波受信が途絶した場合には前記GPSセンサ4の観測結果を利用して前記航法演算の結果の補正をすることを停止するとともに前記カルマンフィルタ5を停止し、その後前記GPSセンサ4がGPS電波を受信した場合には、GPS電波を受信してから予め決められた時間が経過しており且つ前記GPSセンサ4の観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が予め決められた閾値X以内である場合に、前記カルマンフィルタ5を起動し前記GPSセンサ4の観測結果を利用して前記航法演算手段7は前記航法演算の演算結果の補正を開始するように構成されており、前記GPSセンサ4のGPS電波受信が途絶して前記カルマンフィルタ5を停止し、その後前記GPSセンサ4がGPS電波を受信して前記カルマンフィルタ5を起動する場合には、推定誤差共分散行列又は観測ノイズのどちらか一般または両方は予め設定されていた推定誤差共分散行列初期値及び観測ノイズ初期値を用いる構成であり、また、推定誤差共分散行列及び観測ノイズは予め設定されていた推定誤差共分散行列初期値及び観測ノイズ設定値を用いる構成であり、また、前記カルマンフィルタ5は、観測ノイズ設定値を前記GPSセンサ4の観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差に応じて変更する機能を有しており、前記GPSセンサ4の観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差が閾値Yよりも大きい場合は、前記観測ノイズ設定値を変更することで、前記カルマンフィルタ5における前記観測ノイズに基づく誤差推定の割合を低下させるように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によるナビゲーション装置では、GPSセンサの観測結果を利用して航法演算の演算結果を補正しているときに、GPSセンサのGPS電波受信が途絶した場合にはGPSセンサの観測結果を利用して航法演算の結果の補正をすることを停止するとともにカルマンフィルタを停止し、その後GPSセンサがGPS電波を受信した場合には、GPS電波を受信してから5秒以上が経過しており且つGPSセンサの観測結果に基づいて求められた1秒間における移動体の移動距離と航法演算に基づく移動体の一定時間における移動距離との差が予め決められた閾値以内である場合に、カルマンフィルタを起動し前記GPSセンサの観測結果を利用して航法演算手段は航法演算の演算結果の補正を開始し、また、GPSセンサのGPS電波受信が途絶してカルマンフィルタを停止し、その後GPSセンサがGPS電波を受信してカルマンフィルタを起動する場合には、推定誤差共分散行列又は観測ノイズのどちらか一方あるいは両方は予め設定されていた推定誤差共分散行列初期値及び観測ノイズ初期値を用い、また、カルマンフィルタは、観測ノイズ設定値をGPSセンサの観測結果に基づいて求められた一定時間における前記移動体の移動距離と前記航法演算に基づく前記移動体の一定時間における移動距離との差に応じて変更する機能を有しており、GPSセンサの観測結果に基づいて求められた一定時間における移動体の移動距離と航法演算に基づく移動体の一定時間における移動距離との差が閾値よりも大きい場合は、観測ノイズ設定値を変更することで、カルマンフィルタ5における観測ノイズに基づく誤差推定の割合を低下させるので、角速度センサ及び速度センサの観測結果を使用した位置及び方位角の航法演算結果の精度が悪化することを防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1,10 ナビゲーション装置
2 速度センサ
3 角速度センサ
4 GPSセンサ
5 カルマンフィルタ
7 航法演算手段
X,Y 閾値