特許第6877008号(P6877008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877008
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】硬貨類表裏取揃装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/10 20190101AFI20210517BHJP
【FI】
   G07D11/10 111
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-210160(P2017-210160)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-82880(P2019-82880A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2019年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503208150
【氏名又は名称】独立行政法人 造幣局
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真一
(72)【発明者】
【氏名】前▲高▼ 剛
(72)【発明者】
【氏名】井貫 裕介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 幸和
(72)【発明者】
【氏名】住田 成司
(72)【発明者】
【氏名】元村 俊一
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−102063(JP,A)
【文献】 特開2000−271335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入搬送路と、検出部と、分岐機構と、第1搬送路と、第2搬送路と、導出搬送路とを有する硬貨類表裏取揃装置であって、
前記導入搬送路は、複数の硬貨類を搬送して前記分岐機構へ送出し、
前記検出部は、前記導入搬送路を搬送される複数の硬貨類の表向きおよび裏向きの区別を検出し、
前記分岐機構は、前記検出部での検出結果に基づいて、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち一方である複数の硬貨類を前記第1搬送路へ送出し、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち他方である複数の硬貨類を前記第2搬送路へ送出し、
前記第1搬送路と前記第2搬送路のうち少なくとも一方で、搬送される複数の硬貨類の姿勢が変更され、複数の硬貨類が表向きまたは裏向きに揃えられた状態で前記第1搬送路および前記第2搬送路から前記導出搬送路へ送出され、前記導出搬送路において複数の硬貨類が合流する硬貨類表裏取揃装置。
【請求項2】
前記第1搬送路と前記第2搬送路の一方で、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て時計回り方向に、硬貨類が回転して姿勢が変更され、
前記第1搬送路と前記第2搬送路の他方で、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て反時計回り方向に、硬貨類が回転して姿勢が変更される、請求項1に記載の硬貨類表裏取揃装置。
【請求項3】
前記第1搬送路と前記第2搬送路の一方における、硬貨類の旋回の角度の絶対値と、前記第1搬送路と前記第2搬送路の他方における、硬貨類の旋回の角度の絶対値との和が、180度である請求項2に記載の硬貨類表裏取揃装置。
【請求項4】
前記導入搬送路における硬貨類の搬送面を導入搬送面とし、前記導出搬送路における硬貨類の搬送面を導出搬送面として、前記導入搬送面と前記導出搬送面とのなす角が90度である請求項1から3のいずれか1項に記載の硬貨類表裏取揃装置。
【請求項5】
前記第1搬送路における硬貨類の搬送距離と、前記第2搬送路における硬貨類の搬送距離が同じである請求項1から4のいずれか1項に記載の硬貨類表裏取揃装置。
【請求項6】
前記分岐機構は、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類とを、硬貨類の厚さ方向に離間させて分岐し、前記第1搬送路と前記第2搬送路とに送出する請求項1から5のいずれか1項に記載の硬貨類表裏取揃装置。
【請求項7】
前記導出搬送路において、前記第1搬送路からの硬貨類と前記第2搬送路からの硬貨類とが、ガイド板の平面上に形成された硬貨通路を通って合流し、一列に並んで搬送される請求項1から6のいずれか1項に記載の硬貨類表裏取揃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨類の表裏を取り揃える硬貨類表裏取揃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貨幣としての硬貨や遊技機のメダルなどに対して、検査・洗浄・包装などの様々な処理を行う装置が用いられている。特許文献1の装置は硬貨の検査装置である。この装置では、硬貨の一方の面をカメラで撮影した後に、捻った2枚の平ベルトで硬貨を表裏反転させ、硬貨の他方の面を別のカメラで撮影する。特許文献2の装置はメダルの研磨装置である。この装置では、メダルの一方の面を研磨した後に、メダルをコンベヤから落下させて表裏反転させ、メダルの他方の面を研磨する。特許文献3の装置は釣銭機である。この装置では、買い物客が支払った金額と請求金額との差額が、釣銭として払い出される。特許文献4の装置は硬貨の包装装置である。この装置では、入金された硬貨が分類され、金種別に包装される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第202486871号明細書
【特許文献2】特開2000−79266号公報
【特許文献3】特開2015−111342号公報
【特許文献4】特開2010−033313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献の装置では、表裏がバラバラの硬貨・メダルについて、その表裏を取揃えることは、その必要がないため、考慮されていない。特許文献1の検査装置では、装置に導入される全ての硬貨について、表裏が反転され、表面と裏面の両方が撮影される。特許文献2の研磨装置では、装置に導入される全てのメダルについて、表裏が反転され、表面と裏面の両方が研磨される。特許文献3の釣銭機から払い出される釣銭は、その姿勢や表裏がバラバラの状態で、払い出し口へ放出される。特許文献4の包装装置において、硬貨は表裏がバラバラの状態で棒状に重ねられて、包装紙に包まれる。
【0005】
紙幣については、財布に収納する際に向きや表裏を揃える習慣があり、また他人に手渡す際には向きと表裏を揃えて渡す方が礼儀正しいとされる。これらの点から、紙幣については向きと表裏を揃える装置が開発され用いられている。しかし硬貨やメダルは、小銭入れには姿勢も表裏もバラバラの状態で収納され、他人に手渡す場合でも向きや表裏を揃える習慣はない。すなわち硬貨・メダルについて、表裏を取揃える必要性は低い。
【0006】
しかし硬貨・メダルの表裏を取揃えることにより、種々の利点が生じる可能性がある。例えば製造された硬貨を検査する際、硬貨の表裏を取揃えた状態で検査装置に導入することで、検査精度を向上させたり、検査装置の構成を簡素化できる可能性がある。また硬貨・メダルの製造工程において、表裏の区別のある加工を施す場合、製造途中の円板状の部材(円形)の表裏を取揃える必要がある。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、導入された硬貨類の表裏を確実かつ高速に取揃える装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔構成1〕
上記目的を達成するための硬貨類表裏取揃装置の特徴構成は、
導入搬送路と、検出部と、分岐機構と、第1搬送路と、第2搬送路と、導出搬送路とを有する硬貨類表裏取揃装置であって、
前記導入搬送路は、複数の硬貨類を搬送して前記分岐機構へ送出し、
前記検出部は、前記導入搬送路を搬送される複数の硬貨類の表向きおよび裏向きの区別を検出し、
前記分岐機構は、前記検出部での検出結果に基づいて、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち一方である複数の硬貨類を前記第1搬送路へ送出し、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち他方である複数の硬貨類を前記第2搬送路へ送出し、
前記第1搬送路と前記第2搬送路のうち少なくとも一方で、搬送される複数の硬貨類の姿勢が変更され、複数の硬貨類が表向きまたは裏向きに揃えられた状態で前記第1搬送路および前記第2搬送路から前記導出搬送路へ送出され、前記導出搬送路において複数の硬貨類が合流する点にある。
【0009】
上記の特徴構成によれば、第1搬送路と第2搬送路のうち少なくとも一方で、搬送される硬貨類の姿勢が変更され、硬貨類が表向きまたは裏向きに揃えられた状態で第1搬送路および第2搬送路から導出搬送路へ送出されるから、導入された硬貨類の表裏を確実に取揃えることが可能となる。なお硬貨類とは、貨幣としての硬貨や、遊技機等のメダル、およびこれら硬貨・メダルの製造途中の部材であって円板状の部材(いわゆる「円形(えんぎょう)」)やリング状の部材を含み、更に円形状に限られず、多角形状のものも含むものとする。
【0010】
〔構成2〕
本発明に係る硬貨類表裏取揃装置の別の特徴構成は、
前記第1搬送路と前記第2搬送路の一方で、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て時計回り方向に、硬貨類が回転して姿勢が変更され、
前記第1搬送路と前記第2搬送路の他方で、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て反時計回り方向に、硬貨類が回転して姿勢が変更される点にある。
【0011】
上記の特徴構成によれば、第1搬送路と第2搬送路の一方で硬貨類が時計回り方向に回転し、他方で反時計回り方向に回転するから、硬貨類の表裏の取揃えを高速かつ確実に行うことが可能となる。
【0012】
〔構成3〕
本発明に係る硬貨類表裏取揃装置の別の特徴構成は、
前記第1搬送路と前記第2搬送路の一方における、硬貨類の旋回の角度の絶対値と、前記第1搬送路と前記第2搬送路の他方における、硬貨類の旋回の角度の絶対値との和が、180度である点にある。
【0013】
上記の特徴構成によれば、旋回の角度の絶対値の和が180度であるから、第1搬送路からの硬貨類の姿勢と第2搬送路からの硬貨類の姿勢とが同一(ただし表裏は逆)となって、その後の硬貨類の合流や搬送を容易かつ確実に行うことができる。
【0014】
〔構成4〕
本発明に係る硬貨類表裏取揃装置の別の特徴構成は、
前記導入搬送路における硬貨類の搬送面を導入搬送面とし、前記導出搬送路における硬貨類の搬送面を導出搬送面として、前記導入搬送面と前記導出搬送面とのなす角が90度である点にある。
【0015】
上記の特徴構成によれば、前記導入搬送面と前記導出搬送面とのなす角が90度であることによって、第1搬送路および第2搬送路での硬貨類の旋回角度を小さくでき、硬貨類表裏取揃装置を小型化することができる。
【0016】
〔構成5〕
本発明に係る硬貨類表裏取揃装置の別の特徴構成は、
前記第1搬送路における硬貨類の搬送距離と、前記第2搬送路における硬貨類の搬送距離が同じである点にある。
【0017】
上記の特徴構成によれば、硬貨類の搬送距離が同じであることによって、導入搬送路での硬貨類の間隔と導出搬送路での硬貨類の間隔とを容易に同じにすることができ、第1搬送路からの硬貨類と第2搬送路からの硬貨類との合流を容易に行うことが可能となる。
【0018】
〔構成6〕
本発明に係る硬貨類表裏取揃装置の別の特徴構成は、
前記分岐機構は、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類とを、硬貨類の厚さ方向に離間させて分岐し、前記第1搬送路と前記第2搬送路とに送出する点にある。
【0019】
上記の特徴構成によれば、硬貨類の厚さ方向に分岐を行うことにより、分岐を確実かつ高速に行うことができる。
【0020】
〔構成7〕
本発明に係る硬貨類表裏取揃装置の別の特徴構成は、
前記導出搬送路において、前記第1搬送路からの硬貨類と前記第2搬送路からの硬貨類とが、ガイド板の平面上に形成された硬貨通路を通って合流し、一列に並んで搬送される点にある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】硬貨類表裏取揃装置の構成を示す斜視図
図2】分岐機構、姿勢変更部および導出部の構造を示す上面図
図3】姿勢変更部の左右の搬送面の形状を示す図
図4】硬貨類の姿勢変化の概要を示す図
図5】分岐機構の動作を示す図
図6】分岐機構の動作を示す図
図7】硬貨類表裏取揃装置の構成を示す斜視図
図8】姿勢変更部の左右の搬送面の形状を示す図
図9図7のIX−IX矢視断面図
図10】硬貨類選別装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
以下図面を参照しながら、本実施形態に係る硬貨類表裏取揃装置について説明する。以下の説明では、図1に示すように、硬貨類が搬送される方向の上流側を前Fとし、下流側を後Bとする。導出部50における硬貨類の搬送面(導出搬送面55)の向く方向を上Uとし、その反対方向を下Dとする。導出搬送面55に平行かつ前後方向に直交する方向であって、後Bに向かって右方向を右Rとし、その反対方向を左Lとする。
【0024】
<硬貨類表裏取揃装置>
硬貨類表裏取揃装置100は、図1に示すように、制御部1と、導入部10と、検出部20と、分岐機構30と、姿勢変更部40と、導出部50と、確認部60とを有する。導入部10に、導入搬送路Wが形成されている。姿勢変更部40に、左搬送路X(第1搬送路の例)と右搬送路Y(第2搬送路の例)とが形成されている。導出部50に、導出搬送路Zが形成されている。硬貨類表裏取揃装置100に導入された硬貨類C1は、姿勢変更部40にて姿勢が変更され、表向きまたは裏向きに揃えられた状態で導出部50から排出される。
【0025】
本実施形態では、硬貨類とは、貨幣としての硬貨や、遊技機等のメダル、およびこれら硬貨・メダルの製造途中の部材であって円板状の部材(いわゆる「円形(えんぎょう)」)やリング状の部材を含み、更に円形状に限られず、多角形状のものも含むものとする。硬貨類は表側面と裏側面とを有する。例えば日本の硬貨の場合、年号が表示されている面が裏側面、他方の面が表側面である。
【0026】
硬貨類表裏取揃装置100において硬貨類が「表向き」である状態とは、その硬貨類が搬送される面(搬送面)に硬貨類の裏側面が接触し、表側面が外側を向いている状態をいう。硬貨類が「裏向き」である状態とは、その硬貨類が搬送される面(搬送面)に硬貨類の表側面が接触し、裏側面が外側を向いている状態をいう。例えば図1に示される硬貨類に関して、硬貨類C1は、裏側面tがベルトコンベア11に接触し、表側面hが外側を向いているから、「表向き」である。硬貨類C2は、表側面hがベルトコンベア11に接触し、裏側面tが外側を向いているから、「裏向き」である。硬貨類C3は、裏側面tがガイド板54に接触し、表側面hが外側を向いているから、「表向き」である。
【0027】
<導入部、導入搬送路、検出部>
導入部10は、ベルトコンベア11と、ガイド板12と、ベルト13と、ガイド板14とを有している。ガイド板12には硬貨通路12aが形成されている。ガイド板14には硬貨通路14aが形成されている。ベルト13は図示しない駆動装置によって回転駆動される。
【0028】
ガイド板12とガイド板14との間には、検出部20が配置されている。検出部20には硬貨通路20aが形成されている。検出部20は、硬貨通路20aを通る硬貨類の表向きおよび裏向きの区別を検出する。例えば検出部20は、硬貨類を撮影するカメラを有し、撮影された硬貨類の画像を解析して、硬貨類の表裏の別を検出する。検出の結果は、制御部1へ送信される。
【0029】
硬貨類表裏取揃装置100に導入された硬貨類は、ベルトコンベア11によって後方向へ搬送される。そして硬貨類は、ベルト13とガイド板12、検出部20およびガイド板14との間に挟まれて、ベルト13によって硬貨通路12a、硬貨通路20aおよび硬貨通路14aを通って後方向へ搬送され、分岐機構30へ送出される。
【0030】
本実施形態では、導入部10のベルトコンベア11、ベルト13、硬貨通路12a、硬貨通路20aおよび硬貨通路14aによって、導入搬送路Wが構成されている。導入搬送路Wは、硬貨類を搬送して分岐機構30へ送出する。そして検出部20は、導入搬送路Wを搬送される硬貨類の表向きおよび裏向きの区別を検出する。
【0031】
なお本実施形態では、後述する姿勢変更部40の左ベルト42および右ベルト43が、姿勢変更部40から導入部10の途中まで、前方向に延びて配置されている。導入搬送路Wの途中より、硬貨類は左ベルト42および右ベルト43に左右方向に挟まれて、搬送される。
【0032】
<分岐機構>
分岐機構30は、検出部20での検出結果に基づいて、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち一方を姿勢変更部40の左搬送路X(第1搬送路の例)へ送出し、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち他方を姿勢変更部40の右搬送路Y(第2搬送路の例)へ送出する。本実施形態では、分岐機構30は、表向きの硬貨類を左搬送路Xへ送出し、裏向きの硬貨類を右搬送路Yへ送出するものとする。分岐機構30は、導入部10の後側に配置される。
【0033】
本実施形態では分岐機構30は、図1および図2に示すように、左分岐ローラ31、右分岐ローラ32、および移動機構33を有する。左分岐ローラ31および右分岐ローラ32はいずれも、円筒状のローラであって、回転軸が上下方向と平行となる姿勢にて、従動回転が可能な状態で、移動機構33に保持される。左分岐ローラ31および右分岐ローラ32はそれぞれ、上下方向に並んだ2つのローラから構成されており、それら2つのローラは、左ベルト42および右ベルト43の上側と下側に分かれて配置されている。図2に示されるように、左分岐ローラ31と左ベルト42、右分岐ローラ32と右ベルト43は、上面視で重なった位置に配置されているが、両者は上下方向に離間して配置されており、接触しない。左分岐ローラ31は、左ベルト42の左側に配置される。右分岐ローラ32は、右ベルト43の右側に配置される。
【0034】
移動機構33は、左分岐ローラ31および右分岐ローラ32を保持して、両者を左右方向に移動させる。本実施形態では移動機構33は、前後方向に延びるレバー状部材とモータ等の動力源(図示なし)を有し、レバー状部材が動力源によって前側の端部を中心に揺動することで、左分岐ローラ31および右分岐ローラ32を左右方向に移動させる。分岐機構30、および移動機構33の動作は制御部1により制御される。
【0035】
本実施形態では分岐機構30は、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類とを、硬貨類の厚さ方向(左右方向)に離間させて分岐し、左搬送路Xと右搬送路Yとに送出する。分岐機構30の動作については後述する。
【0036】
<姿勢変更部>
姿勢変更部40は、図1および図2に示すように、ベース部材41、左ベルト42および右ベルト43を有する。ベース部材41には左硬貨通路41aおよび右硬貨通路41bが形成されている。左ベルト42および右ベルト43は図示しない駆動装置によって回転駆動される。
【0037】
分岐機構30から姿勢変更部40に送出された表向きの硬貨類は、左ベルト42とベース部材41との間に挟まれて、左ベルト42によって左硬貨通路41aを通って後方向へ搬送され、導出部50へ送出される。本実施形態では、姿勢変更部40の左ベルト42および左硬貨通路41aによって左搬送路Xが構成されている。
【0038】
分岐機構30から姿勢変更部40に送出された裏向きの硬貨類は、右ベルト43とベース部材41との間に挟まれて、右ベルト43によって右硬貨通路41bを通って後方向へ搬送され、導出部50へ送出される。本実施形態では、姿勢変更部40の右ベルト43および右硬貨通路41bによって右搬送路Yが構成されている。
【0039】
図3を参照して、ベース部材41、左硬貨通路41aおよび右硬貨通路41bの形状について詳しく説明する。ベース部材41は、前後方向に延びる柱状の部材である。ベース部材41の後側の面は長方形であって、前側に進むにつれて左右方向の幅が小さくなり、前側の面は上下方向に延びる細い形状となっている。ベース部材41は、左右方向に対称な形状である。
【0040】
左硬貨通路41aおよび右硬貨通路41bは、ベース部材41の表面に形成された、底面が平坦な幅広の溝である。左硬貨通路41aおよび右硬貨通路41bの幅は、硬貨類表裏取揃装置100で取り扱われる硬貨類のうち最も直径の大きな硬貨類よりも、若干大きい。
【0041】
左搬送路Xを搬送される硬貨類は、左硬貨通路41aを通るのであるから、左硬貨通路41aの底面が、左搬送路Xの搬送面(左搬送面41c)である。右搬送路Yを搬送される硬貨類は、右硬貨通路41bを通るのであるから、右硬貨通路41bの底面が、右搬送路Yの搬送面(右搬送面41d)である。
【0042】
<右搬送路>
まず、図3に全体が示されている右硬貨通路41bについて説明し、右硬貨通路41bにより構成される右搬送路Yについて説明する。
【0043】
右硬貨通路41bは、ベース部材41の前側においては右側の側面に形成され、ベース部材41の後側においてはベース部材41の上面に形成されている。詳しくは、ベース部材41の前方の部位においては、右硬貨通路41bの底面(右搬送面41d)は、左右方向に垂直な平面、換言すれば前後・上下方向に延びる平面に沿った面となっている。ベース部材41の後方の部位においては、右硬貨通路41bの底面(右搬送面41d)は、上下方向に垂直な平面、換言すれば前後・左右方向に延びる平面に沿った面となっている。
【0044】
そして右硬貨通路41bの底面(右搬送面41d)は、その前方の端部である右入口41fから、後方の端部である右出口41hまで、滑らかに連続した曲面となっている。詳しくは右搬送面41dは、右入口41fから右出口41hへと進むにつれて、左右方向へ垂直な面から、後方向に見て反時計回りに徐々に旋回して、上下方向に垂直な面へと連続的に変化する。別な表現をすれば、右搬送面41dの法線ベクトルの向きは、右入口41fでは右方向を向いており、右入口41fから右出口41hへと進むにつれて、前側から後側を見て反時計回り方向に旋回し、右出口41hでは上方向を向いている。
【0045】
右搬送路Yを搬送される硬貨類は、右硬貨通路41bの右入口41fから右出口41hまで、右搬送面41dに沿った状態で搬送される。そうすると、硬貨類の姿勢は、右入口41fでは表側面が右方向を向いた姿勢であり、右入口41fから右出口41hへと進むにつれて、前側から後側を見て反時計回り方向に旋回し、右出口41hでは表側面が上方向を向いた姿勢となる。つまり右搬送路Yを搬送される硬貨類は、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て反時計回り方向に、回転して姿勢が変更される。右搬送路Yにおける硬貨類の旋回の角度は、時計回り方向を正として−90度であり、硬貨類の旋回の角度の絶対値は90度である。
【0046】
<左搬送路>
次に左硬貨通路41aについて説明し、左硬貨通路41aにより構成される左搬送路Xについて説明する。ベース部材41が左右方向に対称な形状であることから、左硬貨通路41aと右硬貨通路41bとは左右方向に対称な形状である。
【0047】
左硬貨通路41aは、ベース部材41の前側においては左側の側面に形成され、ベース部材41の後側においてはベース部材41の上面に形成されている。詳しくは、ベース部材41の前方の部位においては、左硬貨通路41aの底面(左搬送面41c)は、左右方向に垂直な平面、換言すれば前後・上下方向に延びる平面に沿った面となっている。ベース部材41の後方の部位においては、左硬貨通路41aの底面(左搬送面41c)は、上下方向に垂直な平面、換言すれば前後・左右方向に延びる平面に沿った面となっている。
【0048】
そして左硬貨通路41aの底面(左搬送面41c)は、その前方の端部である左入口41eから、後方の端部である左出口41gまで、滑らかに連続した曲面となっている。詳しくは左搬送面41cは、左入口41eから左出口41gへと進むにつれて、左右方向へ垂直な面から、後方向に見て時計回りに徐々に旋回して、上下方向に垂直な面へと連続的に変化する。別な表現をすれば、左搬送面41cの法線ベクトルの向きは、左入口41eでは左方向を向いており、左入口41eから左出口41gへと進むにつれて、前側から後側を見て時計回り方向に旋回し、左出口41gでは上方向を向いている。
【0049】
左搬送路Xを搬送される硬貨類は、左硬貨通路41aの左入口41eから左出口41gまで、左搬送面41cに沿った状態で搬送される。そうすると、硬貨類の姿勢は、左入口41eでは表側面が左方向を向いた姿勢であり、左入口41eから左出口41gへと進むにつれて、前側から後側を見て時計回り方向に旋回し、左出口41gでは表側面が上方向を向いた姿勢となる。つまり左搬送路Xを搬送される硬貨類は、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て時計回り方向に、回転して姿勢が変更される。左搬送路Xにおける硬貨類の旋回の角度は、時計回り方向を正として+90度であり、硬貨類の旋回の角度の絶対値は90度である。
【0050】
姿勢変更部40は、左搬送路Xおよび右搬送路Yを搬送された硬貨類を、導出部50へ送出する。
【0051】
<導出部、導出搬送路、確認部>
導出部50は、ガイド板52と、ベルト53と、ガイド板54とを有している。ガイド板52には硬貨通路52aが形成されている。ガイド板54には硬貨通路54aが形成されている。ベルト53は図示しない駆動装置によって回転駆動される。
【0052】
ガイド板52とガイド板54との間には、確認部60が配置されている。確認部60には硬貨通路60aが形成されている。確認部60は、硬貨通路60aを通る硬貨類の表向きおよび裏向きの区別を検出して、硬貨類表裏取揃装置100にて硬貨類の表裏の取揃えが適切に行われたか否かを確認する。例えば確認部60は、硬貨類を撮影するカメラを有し、撮影された硬貨類の画像を解析して、硬貨類の表裏の別を検出する。検出の結果は、制御部1へ送信される。
【0053】
導出部50に導入された硬貨類は、ベルト53とガイド板52、確認部60およびガイド板54との間に挟まれて、ベルト53によって硬貨通路52a、硬貨通路60aおよび硬貨通路54aを通って後方向へ搬送され、硬貨類表裏取揃装置100から送り出される。
【0054】
本実施形態では、導出部50のベルト53、硬貨通路52a、硬貨通路60aおよび硬貨通路54aによって、導出搬送路Zが構成されている。姿勢変更部40の左搬送路Xおよび右搬送路Yから、これら搬送路を搬送された硬貨類が、導出搬送路Zへ送出される。
【0055】
ここで硬貨通路52a、硬貨通路60aおよび硬貨通路54aの底面が、導出搬送路Zにおける硬貨類の搬送面(導出搬送面55)となる。図1および図4に示されるように、本実施形態では、導入搬送面15は、前後・上下方向に延び左方向を向いた面である。導出搬送面55は、前後・左右方向に延び上方向を向いた面である。すなわち本実施形態では、導入搬送面15と導出搬送面55とのなす角が90度となっている。そうすると、硬貨類表裏取揃装置100から導出される硬貨類と、硬貨類表裏取揃装置100に導入される硬貨類とのなす角は、90度となる。
【0056】
<硬貨類の搬送・姿勢変更>
ここで図4を参照して、硬貨類表裏取揃装置100での硬貨類の搬送および姿勢変更について説明する。導入搬送路Wを搬送される硬貨類は、ガイド板14の硬貨通路14aを通って搬送されるから、硬貨通路14aの底面(導入搬送面15)と平行な姿勢をとる。図1および図4に示されるように、導入部10の硬貨通路14aの底面(導入搬送面15)は、左向きの面、詳しくは左右方向に垂直な平面、つまり前後・上下方向に延びる平面に沿った面である。図4に示される硬貨類C4は、その裏側面tが導入搬送面15と接触し、表側面hが外側を向いている(左方向を向いている)から、硬貨類C4は導入搬送路Wにおいて「表向き」の状態である。
【0057】
「表向き」である硬貨類C4は、分岐機構30により左搬送路Xへ送出されて、硬貨類C5の位置に至る。硬貨類C5は、その裏側面tが左搬送面41cと接触し、表側面hが外側を向く(左方向を向く)姿勢をとっている。そして硬貨類C5は、左搬送面41cに沿った状態で左搬送路Xを左出口41gまで搬送されて、導出搬送路Zへ送出される。その間に硬貨類C5は、前側から後側を見て時計回り方向に旋回する。そして硬貨類C5の姿勢が、表側面hが左方向を向いた姿勢から、表側面hが上方向を向いた姿勢へと変更される。そして硬貨類C5は、表側面hが上を向いた姿勢にて、導出搬送路Zへ送出される。
【0058】
すなわち左搬送路Xを搬送される硬貨類C5は、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て時計回り方向に、回転して姿勢が変更される。左搬送路Xにおける硬貨類C5の旋回の角度は、時計回り方向を正として+90度であり、硬貨類C5の旋回の角度の絶対値は90度である。
【0059】
次に、図4に示される硬貨類C4が「裏向き」である場合を考える。硬貨類C4が「裏向き」である場合とは、硬貨類C4の表側面hが導入搬送面15と接触し、裏側面tが外側を向いている(左方向を向いている)場合である。
【0060】
「裏向き」である硬貨類C4は、分岐機構30により右搬送路Yへ送出されて、硬貨類C6の位置に至る。硬貨類C6は、その裏側面tが右搬送面41dと接触し、表側面hが外側を向く(右方向を向く)姿勢をとっている。そして硬貨類C6は、右搬送面41dに沿った状態で右搬送路Yを右出口41hまで搬送されて、導出搬送路Zへ送出される。その間に硬貨類C6は、前側から後側を見て反時計回り方向に旋回する。そして硬貨類C6の姿勢が、表側面hが右方向を向いた姿勢から、表側面hが上方向を向いた姿勢へと変更される。そして硬貨類C6は、表側面hが上を向いた姿勢にて、導出搬送路Zへ送出される。
【0061】
すなわち右搬送路Yを搬送される硬貨類C6は、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て反時計回り方向に、回転して姿勢が変更される。右搬送路Yにおける硬貨類C6の旋回の角度は、時計回り方向を正として−90度であり、硬貨類C6の旋回の角度の絶対値は90度である。
【0062】
左搬送路Xで搬送された硬貨類は、左出口41gから導出搬送路Zへ送出される。右搬送路Yで搬送された硬貨類は、右出口41hから導出搬送路Zへ送出される。これら硬貨類は、ガイド板52の硬貨通路52aを通って、図4に示される硬貨類C7の位置に至る。ここで硬貨通路52aは、図4に示されるように、後方向へ進むにつれて左右方向の幅が小さくなる。これにより、左搬送路Xからの硬貨類と右搬送路Yからの硬貨類とが合流し、一列に並んで導出搬送路Zにて搬送される。つまりガイド板52の硬貨通路52aにより、左搬送路Xからの硬貨類と右搬送路Yからの硬貨類とを合流させ、これら硬貨類を一列に並んで搬送する「合流搬送部」が構成されているといえる。
【0063】
ここで本実施形態では、左搬送路Xと右搬送路Yとを形成するベース部材41が、左右方向に対称な形状となっている。これにより、左搬送路X(第1搬送路の一例)における硬貨類の搬送距離と、右搬送路Y(第2搬送路の一例)における硬貨類の搬送距離は、同じである。そうすると、左搬送路Xでの硬貨類の搬送速度と右搬送路Yでの硬貨類の搬送速度とを同じにする(すなわち、左ベルト42および右ベルト43の走行速度を同じにする)ことで、左搬送路Xを硬貨類が通過するのに要する時間と、右搬送路Yを硬貨類が通過するのに要する時間とが等しくなる。そうすると、導入搬送路Wで2つの硬貨類がある間隔で搬送され、分岐機構30が両者を左搬送路Xと右搬送路Yとに分けて送出した場合でも、導出搬送路Zでの2つの硬貨類の間隔は、導入搬送路Wでの間隔と等しくなる。すなわち、左搬送路Xからの硬貨類と右搬送路Yからの硬貨類とが合流する際、両者の衝突・接触が抑制され、スムースな合流が可能となる。
【0064】
また以上述べたように、本実施形態の姿勢変更部40では、導入搬送路Wにて「表向き」である硬貨類は、左搬送路Xにて+90度旋回して、「表向き」の状態で導出搬送路Zへ送出される。導入搬送路Wにて「裏向き」である硬貨類は、右搬送路Yにて−90度旋回して、「表向き」の状態で導出搬送路Zへ送出される。つまり本実施形態の硬貨類表裏取揃装置100では、左搬送路X(第1搬送路の例)と右搬送路Y(第2搬送路の例)の両方で、搬送される硬貨類の姿勢が変更され、硬貨類が表向きに揃えられた状態で左搬送路Xおよび右搬送路Yから導出搬送路Zへ送出される。
【0065】
右搬送路Y(第1搬送路と第2搬送路の一方)で、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て反時計回り方向に、硬貨類が回転して姿勢が変更される。左搬送路X(第1搬送路と第2搬送路の他方)で、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て時計回り方向に、硬貨類が回転して姿勢が変更される。
【0066】
そして左搬送路X(第1搬送路と第2搬送路の一方)における、硬貨類の旋回の角度の絶対値(90度)と、右搬送路Y(第1搬送路と第2搬送路の他方)における、硬貨類の旋回の角度の絶対値(90度)との和は、本実施形態では、180度である。
【0067】
<分岐機構の動作>
次に図5および図6を参照して、分岐機構30の動作について説明する。
【0068】
図5は、分岐機構30が硬貨類C8を左搬送路Xへ送出する状態を示している。硬貨類C8は、表側面hが左方向を向いた状態であるから、表向きの硬貨類である。左分岐ローラ31および右分岐ローラ32は、移動機構33により、左方向(図5の上方向)へ移動されている。特に、右分岐ローラ32の左側の端部が、ベース部材41の先端よりも左側に位置している。左ベルト42と右ベルト43とに挟まれて前側から搬送されてきた硬貨類C8は、右分岐ローラ32と接触して、左ベルト42と左搬送面41cとの間に導かれる。この動作により、硬貨類C8は右分岐ローラ32によって硬貨類C8の厚み方向に押されて、左搬送路Xの左入口41eへ送出される。
【0069】
図6は、分岐機構30が硬貨類C9を右搬送路Yへ送出する状態を示している。硬貨類C9は、表側面hが右方向を向いた状態であるから、裏向きの硬貨類である。左分岐ローラ31および右分岐ローラ32は、移動機構33により、右方向(図6の下方向)へ移動されている。特に、左分岐ローラ31の右側の端部が、ベース部材41の先端よりも右側に位置している。左ベルト42と右ベルト43とに挟まれて前側から搬送されてきた硬貨類C9は、左分岐ローラ31と接触して、右ベルト43と右搬送面41dとの間に導かれる。この動作により、硬貨類C9は左分岐ローラ31によって硬貨類C9の厚み方向に押されて、右搬送路Yの右入口41fへ送出される。
【0070】
以上述べたように本実施形態の分岐機構30は、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類とを、硬貨類の厚さ方向(左右方向)に離間させて分岐し、左搬送路X(第1搬送路の一例)と右搬送路Y(第2搬送路の一例)とに送出する。
【0071】
<第2実施形態>
以下の第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0072】
本実施形態の硬貨類表裏取揃装置100は、図7に示すように、制御部1と、導入部10と、検出部20と、分岐機構30と、姿勢変更部40と、導出部50とを有する。導入部10に、導入搬送路Wが形成されている。姿勢変更部40に、左搬送路X(第1搬送路の例)と右搬送路Y(第2搬送路の例)とが形成されている。導出部50に、導出搬送路Zが形成されている。硬貨類表裏取揃装置100に導入された硬貨類C10は、姿勢変更部40にて姿勢が変更され、表向きまたは裏向きに揃えられた状態で導出部50から排出される。
【0073】
<導入部、導入搬送路、検出部>
導入部10は、ベルトコンベア11と、分離ローラ11aと、ガイド板12と、ベルト13とを有している。分離ローラ11aは、ベルトコンベア11の上方に硬貨類一枚分の間隔を空けて対向配置され、硬貨類の搬送方向と逆向きに回転している。分離ローラ11aは、ベルトコンベア11の上に多数の硬貨類が乱雑に重なって載っている場合であっても、分離ローラ11aの下を通過するときに搬送方向と逆向きの回転により二層目以上の硬貨類の送り出しを防止し、硬貨類を一層状態にして1枚ずつ送り出すことを可能としている。ガイド板12には硬貨通路12aが形成されている。ベルト13は図示しない駆動装置によって回転駆動される。
【0074】
硬貨類表裏取揃装置100に導入された硬貨類は、ベルトコンベア11と分離ローラ11aとによって一層状態にされて後方向へ搬送される。そして硬貨類は、ベルト13とガイド板12との間、およびベルト13と検出部20との間に挟まれて、ベルト13によって硬貨通路12aおよび硬貨通路20aを通って後方向へ搬送され、分岐機構30へ送出される。
【0075】
本実施形態では、導入部10のベルトコンベア11、分離ローラ11a、ベルト13、硬貨通路12a、および硬貨通路20aによって、導入搬送路Wが構成されている。
【0076】
<分岐機構>
本実施形態の分岐機構30は、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち一方を、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て時計回り方向に回転させて、左搬送路X(第1搬送路の例)と右搬送路Y(第2搬送路の例)のうち一方へ送出し、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち他方を、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て反時計回り方向に回転させて、左搬送路Xと右搬送路Yのうち他方へ送出する。
【0077】
本実施形態では分岐機構30は、図7および図9に示すように、左分岐ローラ31、右分岐ローラ32、および移動機構(図示なし)を有する。左分岐ローラ31および右分岐ローラ32はいずれも、円筒状のローラであって、回転軸が左右方向と平行となる姿勢にて、従動回転が可能な状態で、移動機構に保持される。左分岐ローラ31および右分岐ローラ32は、左右に並んだ状態で、導入搬送路Wの直ぐ後側であって、姿勢変更部40のベース部材41の直ぐ前側に配置される。
【0078】
移動機構は、モータ等の動力源を有し、左分岐ローラ31および右分岐ローラ32を保持して、両者を上下方向に移動させる。分岐機構30、および移動機構33の動作は制御部1により制御される。
【0079】
図9を参照して、分岐機構30の動作について説明する。図9は、分岐機構30が硬貨類C11を右搬送路Yへ送出する状態を示している。左分岐ローラ31は、移動機構により、その上端が導入搬送路Wの導入搬送面(図7に示す硬貨通路12aおよび硬貨通路20aの底面)と同じ高さとなる位置に、配置されている。右分岐ローラ32は、移動機構により、その上端が左分岐ローラ31の上端よりも低くなる位置に、配置されている。
【0080】
この状態で裏向きの硬貨類が導入部10から分岐機構30へ送出されると、硬貨類の左側は左分岐ローラ31の上端と接触し、硬貨類の右側は右分岐ローラ32の上端と接触する。そうすると硬貨類は、図9に示す硬貨類C11のように、右下がりの姿勢となる。そして硬貨類は、ベルト13および右ベルト43によって後方向へ送られて、右搬送路Yの右入口41fに達し、ベース部材41の右側面(右搬送面41d)に沿う姿勢となる。このとき、硬貨類C11の表側面hが右搬送面41dに接触し、裏側面tが右搬送面41dの外側を向く。本実施形態では、図9に示されるようにベース部材41の右側面(右搬送面41d)は右下がりに略45度傾斜した平面となっているから、硬貨類C11の裏側面tは、右斜め上略45度の方向を向く。
【0081】
図7に示されるように、導入搬送路Wを搬送される裏向きの硬貨類は、裏側面tが導入搬送面の向き(上向き)を向いている。そして分岐機構30へ送出された裏向きの硬貨類は、上述の通り、右側が下方向に下がって右下がりの姿勢となる(図9参照)。そしてその硬貨類は、右搬送路Yへ送出されると、裏側面tが右搬送面41dの外側を向く姿勢となる。つまり分岐機構30は、裏向きの硬貨類を、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て時計回り方向に回転させて、右搬送路Yへ送出する。本実施形態では、回転の角度は時計回り方向を正として+略45度である。
【0082】
分岐機構30が硬貨類を左搬送路Xへ送出する場合は、次の様な動作となる。右分岐ローラ32が、移動機構により、その上端が導入搬送路Wの導入搬送面(硬貨通路12aおよび硬貨通路20aの底面)と同じ高さとなる位置に、配置される。左分岐ローラ31は、移動機構により、その上端が右分岐ローラ32の上端よりも低くなる位置に、配置される。
【0083】
表向きの硬貨類が導入部10から分岐機構30へ送出されると、硬貨類の左側は左分岐ローラ31と接触し、硬貨類の右側は右分岐ローラ32と接触する。そうすると、硬貨類が左下がりの姿勢となる。そして硬貨類は、ベルト13および左ベルト42によって後方向へ送られて、左搬送路Xの左入口41eに達し、ベース部材41の左側面(左搬送面41c)に沿う姿勢となる。このとき、硬貨類の裏側面が左搬送面41cに接触し、表側面が左搬送面41cの外側を向く。本実施形態では、図9に示されるようにベース部材41の左側面(左搬送面41c)は右上がりに略45度傾斜した平面となっているから、硬貨類の表側面は、左斜め上略45度の方向を向く。
【0084】
導入搬送路Wを搬送される表向きの硬貨類は、表側面が導入搬送面の向き(上向き)を向いている。そして分岐機構30へ送出された表向きの硬貨類は、左側が下方向に下がって左下がりの姿勢となる。そしてその硬貨類は、左搬送路Xへ送出されると、表側面が左搬送面41cの外側を向く姿勢となる。つまり分岐機構30は、表向きの硬貨類を、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て反時計回り方向に回転させて、左搬送路Xへ送出する。本実施形態では、回転の角度は時計回り方向を正として−略45度である。
【0085】
<姿勢変更部>
姿勢変更部40は、図7に示すように、ベース部材41、左ベルト42および右ベルト43を有する。左ベルト42および右ベルト43は図示しない駆動装置によって回転駆動される。
【0086】
図8を参照して本実施形態のベース部材41の形状について詳しく説明する。ベース部材41は、前後方向に延びる柱状の部材である。ベース部材41の前側の面は三角形であって、後側へ進むにつれて左右方向の幅が小さくなり、後側の面は上下方向に延びる細い形状となっている。ベース部材41は、左右方向に対称な形状である。
【0087】
分岐機構30から姿勢変更部40に送出された表向きの硬貨類は、左ベルト42とベース部材41との間に挟まれて、ベース部材41の左側面の上を滑って後方向へ搬送され、導出部50へ送出される。すなわち本実施形態では、姿勢変更部40の左ベルト42およびベース部材41の左側面(左搬送面41c)によって左搬送路Xが構成されている。
【0088】
分岐機構30から姿勢変更部40に送出された裏向きの硬貨類は、右ベルト43とベース部材41との間に挟まれて、ベース部材41の右側面の上を滑って後方向へ搬送され、導出部50へ送出される。すなわち本実施形態では、姿勢変更部40の右ベルト43およびベース部材41の右側面(右搬送面41d)によって右搬送路Yが構成されている。
【0089】
図8に示されるように、ベース部材41の右側面(右搬送面41d)は、ベース部材41の前方の部位においては、右下がりに略45度傾斜した平面となっている。ベース部材41の後方の部位においては、左右方向に垂直な平面、換言すれば前後・上下方向に延びる平面に沿った面となっている。そして右搬送面41dは、その前方の端部である右入口41fから、後方の端部である右出口41hまで、滑らかに連続した曲面となっている。詳しくは右搬送面41dは、右入口41fから右出口41hへと進むにつれて、右下がりに略45度傾斜した平面から、後方向に見て時計回りに徐々に旋回して、左右方向に垂直な面へと連続的に変化する。別な表現をすれば、右搬送面41dの法線ベクトルの向きは、右入口41fでは右斜め上に略45度の方向を向いており、右入口41fから右出口41hへと進むにつれて、前側から後側を見て時計回り方向に旋回し、右出口41hでは右方向を向いている。
【0090】
右搬送路Yを搬送される硬貨類は、右入口41fから右出口41hまで、右搬送面41dに沿った状態で搬送される。そうすると、硬貨類の姿勢は、右入口41fでは裏側面が右斜め上略45度の方向を向いた姿勢であり、右入口41fから右出口41hへと進むにつれて、前側から後側を見て時計回り方向に旋回し、右出口41hでは裏側面が右方向を向いた姿勢となる。つまり右搬送路Yを搬送される硬貨類は、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て時計回り方向に、回転して姿勢が変更される。右搬送路Yにおける硬貨類の旋回の角度は、時計回り方向を正として+略45度であり、硬貨類の旋回の角度の絶対値は略45度である。
【0091】
一方、ベース部材41の左側面(左搬送面41c)は、ベース部材41の前方の部位においては、左下がりに略45度傾斜した平面となっている。ベース部材41の後方の部位においては、左右方向に垂直な平面、換言すれば前後・上下方向に延びる平面に沿った面となっている。そして左搬送面41cは、その前方の端部である左入口41eから、後方の端部である左出口41gまで、滑らかに連続した曲面となっている。詳しくは左搬送面41cは、左入口41eから左出口41gへと進むにつれて、左下がりに略45度傾斜した平面から、後方向に見て反時計回りに徐々に旋回して、左右方向に垂直な面へと連続的に変化する。別な表現をすれば、左搬送面41cの法線ベクトルの向きは、左入口41eでは左斜め上に略45度の方向を向いており、左入口41eから左出口41gへと進むにつれて、前側から後側を見て反時計回り方向に旋回し、左出口41gでは左方向を向いている。
【0092】
左搬送路Xを搬送される硬貨類は、左入口41eから左出口41gまで、左搬送面41cに沿った状態で搬送される。そうすると、硬貨類の姿勢は、左入口41eでは表側面が左斜め上略45度の方向を向いた姿勢であり、左入口41eから左出口41gへと進むにつれて、前側から後側を見て反時計回り方向に旋回し、左出口41gでは表側面が左方向を向いた姿勢となる。つまり左搬送路Xを搬送される硬貨類は、搬送方向に沿った回転軸の回りに、搬送方向の上流側から下流側を見て反時計回り方向に、回転して姿勢が変更される。左搬送路Xにおける硬貨類の旋回の角度は、時計回り方向を正として−略45度であり、硬貨類の旋回の角度の絶対値は略45度である。
【0093】
<導出部>
左搬送路Xを搬送された硬貨類と、右搬送路Yを搬送された硬貨類とは、ベース部材41の後側で合流し、左ベルト42および右ベルト43に挟まれて後方向へ搬送される。すなわち本実施形態の導出部50は、左ベルト42および右ベルト43の、ベース部材41の後側の部位が、これに相当する。左ベルト42および右ベルト43によって、導出搬送路Zが構成されている。
【0094】
導出搬送路Zにおける硬貨類の搬送面(導出搬送面)は、図7に示されるように、左右方向に直交する平面であって、前後・上下方向に延びる平面である。すなわち本実施形態では、導入搬送面15と導出搬送面55とのなす角が90度となっている。そうすると、硬貨類表裏取揃装置100から導出される硬貨類と、硬貨類表裏取揃装置100に導入される硬貨類とのなす角は、90度となる。
【0095】
本実施形態では、左搬送路Xを搬送された硬貨類と、右搬送路Yを搬送された硬貨類との合流は、第1実施形態とは異なる態様で行われる。図7に示すように、右搬送路Yにおいて硬貨類は、右ベルト43と右搬送面41dとの間に挟まれて搬送される。硬貨類が後方に進んでベース部材41を通り過ぎると、硬貨類は左ベルト42と右ベルト43との間に挟まれて、導出搬送路Zを搬送される。左搬送路Xにおいて硬貨類は、左ベルト42と左搬送面41cとの間に挟まれて搬送される。硬貨類が後方に進んでベース部材41を通り過ぎると、硬貨類は左ベルト42と右ベルト43との間に挟まれて、導出搬送路Zを搬送される。つまり、ベース部材41の存在する区間では硬貨類は厚さ方向(左右方向)に離間して搬送され、ベース部材41を通り過ぎると、硬貨類は厚さ方向に合流して、導出搬送路Zを搬送される。換言すれば、左搬送路Xの左搬送面41cと、右搬送路Yの右搬送面41dとは、ベース部材41の下流側で面の法線方向に合流し、導出搬送路Zの導出搬送面となる。
【0096】
<硬貨類の搬送・姿勢変更>
ここで図7を参照して、本実施形態における硬貨類表裏取揃装置100での硬貨類の搬送および姿勢変更について説明する。導入搬送路Wを搬送される硬貨類は、硬貨通路12aおよび硬貨通路20aの底面(導入搬送面)と平行な姿勢をとる。導入搬送面は、上向きの面、詳しくは上下方向に垂直な平面、つまり前後・左右方向に延びる平面に沿った面である。図7に示される硬貨類C10は、その表側面が導入搬送面と接触し、裏側面tが外側を向いている(上方向を向いている)から、硬貨類C10は導入搬送路Wにおいて「裏向き」の状態である。
【0097】
「裏向き」である硬貨類は、分岐機構30にて、前側から後側を見て時計回り方向に略45度旋回され、右搬送路Yに送出される。そして右搬送路Yにて、右搬送面41dに沿って、前側から後側を見て時計回り方向に略45度旋回され、導出搬送路Zへ送出される。つまり「裏向き」の硬貨類は、分岐機構30および姿勢変更部40にて、前側から後側を見て時計回り方向に90度旋回され、導出搬送路Zへ送出される。
【0098】
次に、図7に示される硬貨類C10が「表向き」である場合を考える。硬貨類C10が「表向き」である場合とは、硬貨類C10の裏側面が導入搬送面と接触し、表側面が外側を向いている(上方向を向いている)場合である。
【0099】
「表向き」である硬貨類は、分岐機構30にて、前側から後側を見て反時計回り方向に略45度旋回され、左搬送路Xに送出される。そして左搬送路Xにて、左搬送面41cに沿って、前側から後側を見て反時計回り方向に略45度旋回され、導出搬送路Zへ送出される。つまり「表向き」の硬貨類は、分岐機構30および姿勢変更部40にて、前側から後側を見て反時計回り方向に90度旋回され、導出搬送路Zへ送出される。
【0100】
第1実施形態と同様に、本実施形態では、左搬送路Xと右搬送路Yとを形成するベース部材41が、左右方向に対称な形状となっている。これにより、左搬送路X(第1搬送路の一例)における硬貨類の搬送距離と、右搬送路Y(第2搬送路の一例)における硬貨類の搬送距離は、同じである。そうすると、左搬送路Xでの硬貨類の搬送速度と右搬送路Yでの硬貨類の搬送速度とを同じにする(すなわち、左ベルト42および右ベルト43の走行速度を同じにする)ことで、左搬送路Xを硬貨類が通過するのに要する時間と、右搬送路Yを硬貨類が通過するのに要する時間とが等しくなる。そうすると、導入搬送路Wで2つの硬貨類がある間隔で搬送され、分岐機構30が両者を左搬送路Xと右搬送路Yとに分けて送出した場合でも、導出搬送路Zでの2つの硬貨類の間隔は、導入搬送路Wでの間隔と等しくなる。すなわち、左搬送路Xからの硬貨類と右搬送路Yからの硬貨類とが合流する際、両者の衝突・接触が抑制され、スムースな合流が可能となる。
【0101】
また以上述べたように、本実施形態の硬貨類表裏取揃装置100では、導入搬送路Wにて「表向き」である硬貨類は、分岐機構30にて−略45度、左搬送路Xにて−略45度、合わせて−90度旋回して、裏側面が右向きの状態で導出搬送路Zへ送出される。導入搬送路Wにて「裏向き」である硬貨類は、分岐機構30にて+略45度、右搬送路Yにて+略45度、合わせて+90度旋回して、裏側面が右向きの状態で導出搬送路Zへ送出される。つまり本実施形態の硬貨類表裏取揃装置100では、左搬送路X(第1搬送路の例)と右搬送路Y(第2搬送路の例)の両方で、搬送される硬貨類の姿勢が変更され、硬貨類の表裏が揃えられた状態で左搬送路Xおよび右搬送路Yから導出搬送路Zへ送出される。
【0102】
<第3実施形態>
図10を参照しながら、上述した分岐機構30を利用して構成される硬貨類選別装置200について説明する。硬貨類選別装置200は、複数の分岐機構30(30a〜30g)と、識別部70と、複数の搬送路80(80a〜80q)と、複数の収納部90(90a〜90h)と、制御部1とを有する。硬貨類選別装置200は、導入された硬貨類の種別を検出し、その検出結果に基づいて、種別毎に硬貨類を収納部90に収納する。
【0103】
識別部70は、硬貨類選別装置200に導入された硬貨類の種別を検出する。例えば識別部70は、硬貨類を撮影するカメラを有し、撮影された硬貨類の画像を解析して、硬貨類の種別を検出する。検出の結果は、制御部1へ送信される。
【0104】
分岐機構30は、上述の第1実施形態と同様の構成を有する。すなわち分岐機構30は、識別部70での検出結果に基づいて、硬貨類を下流側の2つの搬送路80の何れかへ送出する。例えば分岐機構30aは、硬貨類選別装置200へ導入された硬貨類のうち、収納部90a〜90dへ収納される種類の硬貨類を、搬送路80aへ送出し、収納部90e〜90hへ収納される種類の硬貨類を、搬送路80bへ送出する。分岐機構30bは、搬送路80aから導入された硬貨類のうち、収納部90a〜90bへ収納される種類の硬貨類を、搬送路80cへ送出し、収納部90c〜90dへ収納される種類の硬貨類を、搬送路80dへ送出する。分岐機構30dは、搬送路80cから導入された硬貨類のうち、収納部90aへ収納される種類の硬貨類を、搬送路80gへ送出し、収納部90bへ収納される種類の硬貨類を、搬送路80hへ送出する。搬送路80gで搬送された硬貨類は収納部90aへ収納される。搬送路80hで搬送された硬貨類は収納部90bへ収納される。その余の種別の硬貨類についても同様に、複数の分岐機構30によって各搬送路80へ送出され、各収納部90へ収納される。
【0105】
本実施形態に係る分岐機構30は、図1図2図5および図6に示される第1実施形態に係る分岐機構30と同様の構成・機能を有する。すなわち分岐機構30は、複数の分岐ローラと移動機構とを有する。分岐ローラは、移動機構により図10の上下方向、詳しくは下流の2つの搬送路80のいずれかの近傍へ移動する。例えば分岐機構30aが硬貨類を搬送路80aへ送出する際には、複数の分岐ローラがいずれも搬送路80aの近傍(図10の上方向)へ移動する。分岐ローラに接触した硬貨類は、分岐ローラによって硬貨類の厚み方向に押されて、搬送路80aの方へ送出される。より詳しくは分岐ローラは、
硬貨類を、下流側の2つの搬送路80を仕切る仕切部材(第1実施形態のベース部材41に相当)の、左右(図10の上下)いずれかの側面に沿わせる。換言すれば分岐機構30は、上流側の搬送路80からの硬貨類を下流側の2つの搬送路80へ分岐させるに際して、硬貨類の厚み方向へ分岐させる。
【0106】
本実施形態では、搬送路80は、駆動されるベルトと仕切部材の側面とによって構成されている。分岐機構30によって搬送路80へ送出された硬貨類は、ベルトと仕切部材の側面とに挟まれて、ベルトにより強制的に下流側へ搬送される。
【0107】
従来の硬貨類選別装置は、硬貨類を穴の空けられた搬送路へ導き、重力の作用で硬貨類を穴から落下させる、というものであった。このような装置では、穴による選別の後の硬貨類の挙動が、重力による自由落下となるため、不安定・不確実なものとなってしまう問題がある。また選別のための穴を一平面上に配置するため、設置面積が大きくなってしまう。また選別に重力を利用する点からも、装置のレイアウトにも制約条件が課されてしまう。
【0108】
これに対し、本実施形態の硬貨類選別装置200および分岐機構30には、以下の利点がある。レイアウトの自由度が高くなり、また硬貨類の落下を利用しないため機構配置の向きに重力による制約条件がない。硬貨類の直径によらず確実な分岐が可能であり、小径から大径まで幅広い寸法の硬貨類に適用可能である。また分岐後の搬送がベルトにより強制的に行われるため、分岐後の硬貨類の挙動が安定する。
【0109】
本実施形態に係る分岐機構30は、上流側から導入された硬貨類を、下流側の2つの搬送路へ送出する。分岐機構30は、硬貨類を分岐部材(分岐ローラ)に接触させて、硬貨類をその厚み方向へ移動させて、下流側の搬送路へ導く。分岐機構30は、2本のベルト(左ベルト42および右ベルト43)と、2本のベルトの間に配置された仕切部材(ベース部材41)とを有する。分岐機構30の上流側では、硬貨類が2本のベルトに挟まれて搬送される。分岐機構30の下流側では、硬貨類は、2本のベルトのうちの一方と、仕切部材の側面との間に挟まれて搬送される。
【0110】
<他の実施形態>
<1>上述の第1実施形態と第2実施形態は、次の点で共通する。硬貨類の搬送路が、導入搬送路Wから、左搬送路Xと右搬送路Yとに分岐して、下流で導出搬送路Zへ合流している。そして左搬送路X(第1搬送路の例)と右搬送路Y(第2搬送路の例)の両方で、搬送される硬貨類の姿勢が変更され、硬貨類が表向きに揃えられた状態で左搬送路Xおよび右搬送路Yから導出搬送路Zへ送出される。これを改変して、左搬送路Xと右搬送路Yの一方のみで硬貨類の姿勢が変更されるよう硬貨類表裏取揃装置100を構成することも可能である。
【0111】
<2>第1実施形態に係る硬貨類表裏取揃装置100は、搬送面の向きと硬貨類の表裏との関係に着目すると、次の様に説明することも可能である。分岐機構30は、表向きの硬貨類を左搬送路Xへ送出する際、硬貨類の裏側面を左搬送路Xの左搬送面41cに接触させる。分岐機構30は、裏向きの硬貨類を右搬送路Yへ送出する際、硬貨類の裏側面を右搬送路Yの右搬送面41dに接触させる。左搬送路Xと右搬送路Yとが合流する位置では、左搬送面41cと右搬送面41dとは同じ方向(右方向)を向いた状態となっている。これにより、導出搬送路Zでは、左搬送路Xからの硬貨類と、右搬送路Yからの硬貨類とは、共に表向き(あるいは共に裏向き)となる。
【0112】
つまり、第1実施形態に係る硬貨類表裏取揃装置は、次の様に構成される。導入搬送路は、硬貨類を搬送して分岐機構へ送出し、
検出部は、導入搬送路を搬送される硬貨類の表向きおよび裏向きの区別を検出し、
分岐機構は、検出部での検出結果に基づいて、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち一方を第1搬送路へ搬送面に対して表向きの状態で送出し、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち他方を第2搬送路へ搬送面に対して表向きの状態で送出し、
第1搬送路の搬送面と第2搬送路の搬送面とが同じ方向を向いた状態で、第1搬送路と第2搬送路とが合流する。
【0113】
<3>第2実施形態に係る硬貨類表裏取揃装置100は、搬送面の向きと硬貨類の表裏との関係に着目すると、次の様に説明することも可能である。分岐機構30は、表向きの硬貨類を左搬送路Xへ送出する際、硬貨類の裏側面を左搬送路Xの左搬送面41cに接触させる。分岐機構30は、裏向きの硬貨類を右搬送路Yへ送出する際、硬貨類の表側面を右搬送路Yの右搬送面41dに接触させる。左搬送路Xと右搬送路Yとが合流する位置では、左搬送面41cは左方向を向いた状態となり、右搬送面41dは右方向を向いた状態となっている。換言すれば、左搬送面41cと右搬送面41dとは逆の方向を向いた状態、つまり背中合わせの状態となっている。そうすると、左搬送路Xの硬貨類は表側面が左方向を向いた状態となり、右搬送路Yの硬貨類は裏側面が右方向と向いた状態となる。すなわち、左搬送路Xの硬貨類も右搬送路Yの硬貨類も、いずれも表側面が同じ方向(左方向)を向いた状態となり、表裏が揃った状態となる。これにより、導出搬送路Zでは、左搬送路Xからの硬貨類と、右搬送路Yからの硬貨類とは、共に表向き(あるいは共に裏向き)となる。
【0114】
つまり、第2実施形態に係る硬貨類表裏取揃装置は、次の様に構成される。導入搬送路は、硬貨類を搬送して分岐機構へ送出し、
検出部は、導入搬送路を搬送される硬貨類の表向きおよび裏向きの区別を検出し、
分岐機構は、検出部での検出結果に基づいて、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち一方を第1搬送路へ搬送面に対して表向きの状態で送出し、表向きの硬貨類と裏向きの硬貨類のうち他方を第2搬送路へ搬送面に対して裏向きの状態で送出し、
第1搬送路の搬送面と第2搬送路の搬送面とが逆の方向を向いた状態で、第1搬送路と第2搬送路とが合流する。
【0115】
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 :制御部
10 :導入部
11 :ベルトコンベア
11a :分離ローラ
12 :ガイド板
12a :硬貨通路
13 :ベルト
14 :ガイド板
14a :硬貨通路
15 :導入搬送面
20 :検出部
20a :硬貨通路
30、30a〜30g:分岐機構
31 :左分岐ローラ
32 :右分岐ローラ
33 :移動機構
40 :姿勢変更部
41 :ベース部材
41a :左硬貨通路
41b :右硬貨通路
41c :左搬送面
41d :右搬送面
41e :左入口
41f :右入口
41g :左出口
41h :右出口
42 :左ベルト
43 :右ベルト
50 :導出部
52 :ガイド板
52a :硬貨通路
53 :ベルト
54 :ガイド板
54a :硬貨通路
55 :導出搬送面
60 :確認部
60a :硬貨通路
70 :識別部
80、80a〜80h:搬送路
90、90a〜90h:収納部
100 :硬貨類表裏取揃装置
200 :硬貨類選別装置
C1〜C11:硬貨類
h :表側面
t :裏側面
W :導入搬送路
X :左搬送路
Y :右搬送路
Z :導出搬送路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10