【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・展示会名 BioJapan 2016 開催場所 パシフィコ横浜 展示日 平成28年10月12日〜14日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。本発明はまた、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書中に記載された学術文献、非特許文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0027】
〔脂質二重膜形成装置〕
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、油が収容される第1収容部と、上記第1収容部の底部に設けられ、脂質一重膜によって覆われた液滴を収容するための複数の第2収容部と、を備え、上記第1収容部の内側面は、上記第1収容部に収容された油に水溶液を加えた時に、上記水溶液から形成された上記液滴を上記第2収容部へ導くように、上記第2収容部へ向かって収束した形状となっており、上記複数の第2収容部は、上記第2収容部内に収容された上記液滴同士が接触するように配置されていることを特徴としている。
【0028】
上述したように、特許文献1に記載の技術は、脂質二重膜を作製するための大掛かりな装置が必要であった。また、非特許文献1に記載の技術は、高度な訓練を経て初めて脂質二重膜の作製が可能になるなど、熟練技術が必要であった。
【0029】
一方、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、油に水溶液を加えるのみの操作により自動的に脂質二重膜の作製を可能とするため、当該技術分野に初めて接する人であっても、手軽に脂質二重膜を作製することを可能にするという利点を有する。
【0030】
また、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、マニピュレータなどの特殊な装置を必要としないため、小型、かつ、軽量な構成とすることができるという利点を有する。
【0031】
また、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、持ち運びが可能であり、任意の場所(例えば、屋外など)での脂質二重膜の作製を可能にするという利点を有する。
【0032】
また、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、構造が平易であって安価に製造できるため、使い捨ての装置とすることを可能にするという利点を有する。
【0033】
また、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、例えば、第1収容部に収容された油に加える水溶液の量を容易に調節できるとともに、当該水溶液から形成される液滴の大きさを容易に調節することができる。液滴の大きさを調節できれば、液滴同士が接触している領域の広さを容易に調製できる。液滴同士が接触している領域の広さが大きすぎると、脂質二重膜の機能を測定するためのデータを取得する時に、当該データにノイズが混入することがある。それ故に、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、脂質二重膜の機能を測定するためのデータを取得する時に、当該データに混入するノイズを減らすことができるという利点を有する。
【0034】
図1〜
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置について説明する。
【0035】
図1の(a)は、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置の斜視図である。
図1の(b)は、
図1の(a)の脂質二重膜形成装置を鉛直上方からみた平面図である。
図1の(c)は、
図1の(b)の二重膜形成装置のA−Aにおける断面図である。
図1の(d)は、
図1の(b)の二重膜形成装置のB−Bにおける断面図である。
図1の(e)は、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置を鉛直上方からみた平面図である。
【0036】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、基板1と、当該基板1に設けられている第1収容部2、および、複数の第2収容部3と、を備える。第1収容部2は、基板1の表面の1つに形成されており、複数の第2収容部3は、第1収容部2の表面(より具体的には、第1収容部2の底部)に形成されている。なお、第1収容部2は、基板1の複数の表面に設けられていてもよい。この場合、第1収容部2の各々に生成されている複数の第2収容部3の構成を異なるものとすれば、1つの基板によって、複数種類の脂質二重膜形成装置を提供することができる。
【0037】
図2は、第1収容部2に油4が収容されており、かつ、第1収容部2底部に形成された第2収容部3に液滴5が収容される前後における、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置の長手方向における断面図である。
【0038】
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置には、油4を収容するための第1収容部2と、第1収容部2の底部に、脂質一重膜によって覆われた液滴5を収容するための複数の第2収容部3と、が設けられている。第2収容部3は第1収容部第2の底部に設けられることから、第1収容部2に油4が収容された場合には、第2収容部3に液滴5が収容されるまでの間は、第2収容部3は油4で満たされる。また、第2収容部3に液滴5が収容された後も、第2収容部3における、液滴5に占められていない空間は、油4によって満たされる。また、
図2では、第1収容部2は油で満たされているが、第1収容部2は油で満たされる必要はない。第1収容部2に収容される油の量は、第2収容部3に収容された液滴5を浸すことができる量であれば、特に限定されない。
【0039】
基板1の形状は、第1収容部2を形成できる限り、
図1に示されたような四角柱(例えば、直方体、および立方体)に特に限定されず、例えば、円柱、および多角柱等であってもよい。
【0040】
図1に、基板1の構成について、基板1の形状が四角柱であり、かつ、基板1が第1収容部2を一つ備える場合を例にあげて以下に説明するが、基板1の構成は、特に限定されるものではない。
【0041】
基板1の長手方向の長さをX、短手方向の長さをY、高さをZとする。基板1の長手方向Xの長さは、5mm〜100mmであることが好ましく、8mm〜75mmであることがより好ましく、12mm〜50mmであることがさらに好ましく、20〜30mmであることが特に好ましい。短手方向Yの長さは、3mm〜50mmであることが好ましく、4mm〜35mmであることがより好ましく、6mm〜25mmであることがさらに好ましく、10mm〜15mmであることが特に好ましい。高さZの長さは、0.5mm〜8mmであることが好ましく、0.6mm〜6mmであることがより好ましく、1mm〜4mmであることがさらに好ましく、1.5mm〜2.5mmであることがとくに好ましい。当該構成であれば、持ち運びが容易な脂質二重膜形成装置を実現することができる。
【0042】
基板1の材質は特に限定されないが、油4によって変形および腐食しない材質が好ましい。例えば、ガラス、プラスチック、アクリル、およびテフロン(登録商標)等があげられる。これらの中でも、耐薬品性に優れること、および光学観察を行うことから、ガラスが好ましい。
【0043】
第1収容部2の内側面は、(1)油4が収容され得る形状であり、かつ、(2)第1収容部2に収容された油4に水溶液を加えた場合に、上記水溶液から形成された、脂質一重膜によって覆われた液滴5を、第2収容部3へ導くように(より具体的に、第2収容部3へ自動的に導くように)、第2収容部3へ向かって収束した形状、となっている。上記構成であれば、液滴5を自動的に第2収容部3へ導き、当該液滴5を自動的に第2収容部3内に収容することができる。
【0044】
第1収容部2の内側面の形状は、上記(1)および(2)を満たす形状であればよく、特に限定されない。第1収容部2の内側面の形状は、例えば、球の表面の一部分(例えば、半球など)に対応する形状、円錐形状、多角推形状、および、これらの組み合わせであってもよい。この場合、第2収容部3を、例えば、第1収容部2の頂点、または、頂点近傍に設ければ、液滴5を自動的に第2収容部3へ導くことができる。
【0045】
第1収容部2の内側面の形状の例として、周囲の表面よりも窪んでいる形状である、溝があげられる。第1収容部2の内側面の表面に溝が設けられている場合には、液滴5を当該溝に沿って第2収容部3に導くことができ、第2収容部3に収容される前に液滴5同士が接触することを防ぐことができる。
図1の(e)では、第1収容部2の内側面の表面には、第1収容部2の外周から第2収容部3に向かって、第2収容部3の直径と同じ幅を有する直線状の溝が設けられているが、溝の形状は特に限定されない。溝の形状は、例えば、第2収容部3から第1収容部2の外周に向かって扇形に広がる形状であってもよい。第1収容部2の内側面の表面に、上述したような扇形に広がる形状の溝が設けられている場合には、様々な場所に形成された液滴5を、当該溝に沿って第2収容部3に安定して導くことができる。溝の高さは、特に限定されず、後述する液滴5の直径r
3より大きくてもよく、小さくてもよい。例えば、溝の高さは、液滴5の直径r
3の1/1000よりも高くてもよく、1/100よりも高くてもよく、1/10よりも高くてもよい。溝の高さが高いほど、液滴5を、当該溝に沿って第2収容部3に安定して導くことができる。
【0046】
第1収容部2の内側面の表面の形状は、特に限定されないは、凹凸が無く平面であってもよいし、凹凸が設けられていてもよい。なお、当該凹凸は、第1収容部2の内側面の表面の粗さを意図し、上述した溝とは区別されるものである。
【0047】
凹凸を設ける場合には、第1収容部2の内側面の表面全体に設けてもよいし、第1収容部2の内側面の表面の一部に設けてもよい。更に具体的に、第1収容部2の内側面に上述した溝が設けられる場合には、当該溝の表面に凹凸を設けてもよい。
【0048】
第1収容部2の内側面の表面が平面であれば、液滴5を第2収容部3に速やかに収容することができ、一方、第1収容部2の内側面の表面に凹凸があれば、液滴5の第2収容部3への収容に要する時間を長くすることができる。つまり、凹凸を設けることによって、長い時間をかけて脂質一重膜を形成したり、脂質一重膜の形成時間に差が生じるように凹凸の形状に違いを設けることによって、複数形成される液滴の形成順番を規定したりすることができる。凹凸の形状は特に限定されず、凹部の深さまたは凸部の高さの程度も、特に限定されない。例えば、凹部の深さおよび凸部の高さは、液滴5の直径r
3の、1/10以下であってもよいし、1/100以下であってもよいし、1/1000以下であってもよい。凹部の深さおよび凸部の高さを大きくすれば大きくするほど、液滴5の第2収容部3への収容に要する時間を長くすることができる。
【0049】
第1収容部2の内側面の形状はまた、曲率半径を有する球の表面の形状であることがより好ましい。上記曲率半径は、特に限定されないが、3mm〜50mmであることが好ましく、4mm〜35mmであることがより好ましく、6mm〜25mmであることが更に好ましく、または、8mm〜16mmであることが特に好ましい。
【0050】
第1収容部2を鉛直上方から見た場合、第1収容部2の外周の形状は、
図1に示されたような、真円形に特に限定されず、例えば、楕円形、四角形、および多角形等であってもよい。
【0051】
図1に示したように、第1収容部2を鉛直上方から見た場合に、第1収容部2の外周の形状が真円である場合には、当該真円の直径をr
1と規定し、第1収容部2の外周の形状が、楕円形、四角形、および多角形等の場合には、それらの内接円の直径をr
1と規定する。
図1に示したように、第1収容部2に第2収容部3が2つ設けられている場合には、第1収容部2の直径r
1は、特に限定されないが、2.5mm〜40mmであることが好ましく、3mm〜30mmであることがより好ましく、5mm〜20mmであることが更に好ましく、7.5mm〜15mmであることが特に好ましい。
【0052】
第1収容部2の深さH
1について説明する。第1収容部2の深さH
1は、後述する第2収容部3の深さH
2との関係に基づいて、設定され得る。例えば、第1収容部2の深さH
1と第2収容部3の深さH
2との和(H
1+H
2)は、基板1の高さZを超えないように、設定され得る。
【0053】
液滴5の直径をr
3とすると、第1収容部2の深さH
1と第2収容部3の深さH
2との和(H
1+H
2)は、直径r
3よりも大きくなるように、設定され得る。本明細書において、「液滴5の直径r
3」とは、液滴5が完全な球であると仮定したときの、当該球の直径がr
3であることを意図する。直径r
3は、油4に加えられた水溶液の体積から算出することが可能である。なお、第2収容部3内に収容された液滴5は、重力または液滴5の周囲の油4等から受ける力により、完全な球の形状となることはできず、略球の形状となる。
【0054】
第1収容部2の深さH
1は、0.3mm〜6mmであることが好ましく、0.5mm〜4.5mmであることがより好ましく、0.75mm〜3mmであることがさらに好ましく、1mm〜2mmであることが特に好ましい。
【0055】
第2収容部3の内側面の形状は、脂質一重膜によって覆われた液滴5を収容できる形状であれば特に限定されない。第2収容部3の内側面の形状は、例えば、鉛直下方に向かって収束する形状であってもよい。第2収容部3の内側面の形状は、例えば、球の表面の一部分(例えば、半球など)に対応する形状、円筒形状、多角柱形状、および、これらの組み合わせであってもよい。
【0056】
第2収容部3の内側面の形状は、曲率半径を有する球の表面の形状であることが好ましい。上記曲率半径は、特に限定されないが、0.3mm〜5mmであることが好ましく、0.4mm〜3.5mmであることがより好ましく、0.6mm〜2.5mmであることがさらに好ましく、0.8mm〜1.6mmであることが特に好ましい。
【0057】
曲率半径は、液滴5の直径r
3の、0.5倍よりも大きくかつ4倍以下であることが好ましく、0.5倍よりも大きくかつ3倍以下であることがより好ましく、0.55倍以上2倍以下であることがさらに好ましく、0.6倍以上1倍以下であることが特に好ましい。曲率半径と液滴5の直径r
3との関係が上記範囲内であれば、クリアランス処理を容易に行うことができる。曲率半径は、また、当該曲率半径の球の体積が、液滴5の体積の、1倍よりも大きくかつ35倍以下となるように設定されることが好ましく、より好ましくは1.2倍以上25倍以下となるように、さらに好ましくは1.4倍以上15倍以下となるように、特に好ましくは1.7倍以上8倍以下となるように設定される。
【0058】
第2収容部3を鉛直上方から見た場合、第2収容部3の外周の形状は、
図1に示されたような、真円形に特に限定されず、例えば、楕円形、四角形、および多角形等であってもよい。
【0059】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置では、液滴5の形状を直径r
3の球とし、第2収容部3内の空間の最大内接円の直径をr
2とした場合に、r
3≦r
2を満たすことが好ましい。上記構成であれば、液滴5同士の接触面を小さく保つことが可能となる。具体的には、液滴5が重力などによって変形した場合であっても、液滴5同士の接触面を小さく保つことが可能となる。ここで、本明細書において、第2収容部3内の空間とは、第2収容部3の内側面から鉛直上方の空間を意味する。従って、第2収容部3内の空間の最大内接円の直径r
2は、
図1に示したように、第2収容部3を鉛直上方から見た場合の、第2収容部3の直径r
2に等しいものであり得る。ここで、第2収容部3の直径r
2は、第2収容部3の外周の形状が真円である場合には、当該真円の直径をr
2と規定し、第2収容部3の外周の形状が、楕円形、四角形、および多角形等の場合には、それらの内接円の直径をr
2と規定する。より具体的には、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置では、液滴5の形状を直径r
3の球としたとき、当該r
3と、第2収容部3を鉛直上方から見た場合の第2収容部3の直径r
2とが、r
3≦r
2を満たすことが好ましい。
【0060】
第2収容部3内の空間の最大内接円の直径r
2は、特に限定されないが、0.3mm〜5mmであることが好ましく、0.4mm〜3.5mmであることがより好ましく、0.6mm〜2.5mmであることがさらに好ましく、0.8mm〜1.6mmであることが特に好ましい。
【0061】
第2収容部3の最下部は、第2収容部3を鉛直上方から見た場合に、第2収容部3の中心に配置されていなくてもよい。ここで、第2収容部3の最下部とは、第2収容部3の最も鉛直下方の部分である。また、第2収容部3の中心とは、第2収容部3を鉛直上方から見た場合の外周の中心を意図し、外周の形状が真円である場合には当該真円の中心であり、外周の形状が、楕円形、および多角形等の場合にはそれらの内接円の中心を意図する。第2収容部3の最下部が、第2収容部3を鉛直上方から見た場合に、第2収容部3の中心に配置されていない場合には、第2収容部3の最下部は、第2収容部3を鉛直上方から見た場合に、第2収容部3の中心から、隣接する第2収容部3(より具体的に、隣接する第2収容部3の最下部)の側に向ってずれて配置されていることが好ましい。上記構成であれば、加える水溶液が少ない場合であっても、液滴5同士を接触させて、脂質二重膜を形成することが可能となる。
【0062】
隣接する第2収容部3の間の距離は、特に限定されないが、液滴5の直径r
3よりも大きいことが好ましい。「隣接する第2収容部3」とは、各々の第2収容部3に一つずつ収容される2つの液滴5が接触して脂質二重膜を形成し得る、第2収容部3の2つを意図する。また、隣接する第2収容部3の間の距離とは、隣接する第2収容部3の最下部の間の距離を意図する。第2収容部3内に収容された液滴5は、第2収容部3内で、液滴5の重心と第2収容部3の最下部とが鉛直方向から見た場合に略一致するように、安定して留められ得る。隣接する第2収容部3の間の距離は、r
3の1.05倍以上であることがより好ましく、1.1倍以上であることがさらに好ましく、1.2倍以上であることが特に好ましい。上記構成であれば、液滴5が自重で変形した場合であっても、液滴5同士の接触面を小さく保つことが可能となる。
【0063】
第2収容部3の深さH
2について
図3を参照して説明する。
図3の(a)、(d)、(e)、(f)、(i)および(j)は、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置の第2収容部の概略図である。
図3の(b)および(g)は、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置の第2収容部の長手方向における断面図である。
図3の(c)および(h)は、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置の第2収容部の短手方向における断面図である。
【0064】
更に詳細に、
図3の(a)〜(e)は、第2収容部3の深さH
2が、0<H
2<(r
3)/2を満たす場合の本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置の第2収容部を示し、
図3の(f)〜(j)は、第2収容部3の深さH
2が、(r
3)/2≦H
2満たす場合の本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置の第2収容部を示している。
【0065】
第2収容部3の深さH
2は、0<H
2<(r
3)/2を満たすものであり得る。上記構成であれば、第2収容部3同士を隔てる第2収容部3の内側面(換言すれば、壁)の高さが液滴5の半径未満であるため、
図3の(d)に示したように、隣接する第2収容部3同士の間に第2収容部3の深さH
2と同じ高さの壁が設置されている場合であっても、液滴5同士は、当該壁よりも上方にて容易に接触することが可能となる。
【0066】
また、第2収容部3の深さH
2が、0<H
2<(r
3)/2を満たす場合には、
図3の(a)に示したように、隣接する第2収容部3同士を隔てる壁を貫通するように、孔(具体的には、U型の切り込み)が設置されていてもよい。上記構成によれば、第2収容部に収容された液滴5同士は、上記孔を介して接触することが可能となるため、液滴5同士の接触面積を調節する(例えば、増大させる)ことが可能となる。
【0067】
また、第2収容部3の深さH
2が、0<H
2<(r
3)/2を満たす場合には、
図3の(e)に示したように、隣接する第2収容部3同士を隔てる壁を貫通する孔(具体的には、開口)が設置されていてもよい。上記構成によれば、第2収容部に収容された液滴5同士は、上記孔を介して接触することが可能となるため、液滴5同士の接触面積を調節する(例えば、増大させる)ことが可能となる。
【0068】
第2収容部3の深さH
2は、(r
3)/2≦H
2を満たすものであり得る。上記構成であれば、第2収容部3同士を隔てる第2収容部3の内側面(換言すれば、壁)の高さが液滴5の半径以上であるため、
図3の(i)に示したように、隣接する第2収容部3同士の間に第2収容部3の深さH
2と同じ高さの壁が設置されている場合には、当該壁によって、液滴5同士の容易な接触を防ぐことが可能となる。この場合には、液滴5の形状変化に伴って(例えば、時間の経過と共に、油4から脂質二重膜を形成可能な脂質が液滴5の界面に移行し、その結果、液滴5の界面張力が低下するなどして、脂質二重膜の面積が時間とともに増大した場合など)液滴5同士が接触可能となる。
【0069】
また、第2収容部3の深さH
2が、(r
3)/2≦H
2を満たす場合には、
図3の(f)に示したように、隣接する第2収容部3同士を隔てる壁を貫通する孔(具体的には、U型の切り込み)が設置されていてもよい。上記構成によれば、第2収容部に収容された液滴5同士は、上記孔を介して接触することが可能となるため、液滴5同士の接触面積を調節する(例えば、増大させる)ことが可能となる。
【0070】
また、第2収容部3の深さH
2が、(r
3)/2≦H
2を満たす場合には、
図3の(j)に示したように、隣接する第2収容部3同士を隔てる壁を貫通する孔(具体的には、開口)が形成されていてもよい。上記構成によれば、第2収容部に収容された液滴5同士は、上記孔を介して接触することが可能となるため、液滴5同士の接触面積を調節する(例えば、増大させる)ことが可能となる。
【0071】
上述した孔の大きさおよび数は、特に限定されず、適宜、所望の大きさ、および、所望の数に設定することができる。例えば、3つ以上の第2収容部3を直列に配列する場合には、末端に配置される2つの第2収容部3の各々に1つの孔を形成し、当該2つの第2収容部3の間に配置される第2収容部3に複数(例えば、2つ)の孔を形成することも可能である。勿論、本発明は、当該構成に限定されない。
【0072】
図4の(a)〜(e)は、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置の斜視図である。
【0073】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、
図4の(e)に示すように、1つの基板1あたり2つ以上の第1収容部2を有してもよい。この場合、各々の第1収容部2は2つ以上の第2収容部3を有する。
図4の(e)では、1つの基板1あたり6つの第1収容部2を含んでいるが、これに限定されず、1つの基板1あたり第1収容部2を、6つ以上有していてもよく、12個以上有していてもよく、24個以上有していてもよく、48個以上有していてもよく、96個以上有していてもよい。上述した構成であれば、1つの脂質二重膜形成装置によって、同時に複数の脂質二重膜を形成させることが可能となる。従って、後述する本発明の一実施形態に係る評価システムが、上述した構成を有する脂質二重膜形成装置を備える場合には、同時に複数の脂質二重膜について、評価を行うことが可能となる。
【0074】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置は、また、
図4の(a)〜(d)に示すように、1つの第1収容部2あたり、3つ以上の第2収容部3を有してもよい。脂質二重膜形成装置が1つの第1収容部2あたり、3つの第2収容部3を有する場合(
図4の(b))には、同時に2つ(例えば、2種類)の脂質二重膜を形成させることが可能となる。故に、後述する評価システムが、当該脂質二重膜形成装置を備える場合には、同時に2つの脂質二重膜について、評価を行うことが可能となる。例えば、3つの第2収容部3に収容された3つの液滴が、それぞれ順に、管腔(Lumen)、細胞質(Cytoplasm)、および血液(Blood)の成分組成を有するように構成すれば、上皮組織を再現することが可能となる。
【0075】
また、脂質二重膜形成装置が1つの第1収容部2あたり、4つの第2収容部3を有する場合(
図4の(c))には、同時に4つ(例えば、4種類)の脂質二重膜を形成させることが可能となる。故に、後述する評価システムが、当該脂質二重膜形成装置を備える場合には、同時に4つの脂質二重膜について、評価を行うことが可能となる。例えば、4つの第2収容部3が有する4つの液滴が、それぞれ時計回りに、内リンパ液(Endolymph)、血管条(Stria vascularis)、外リンパ液(Perilymph)および有毛細胞(Hair cell)の成分を有するように構成すれば、器官を再現することが可能となる。
【0076】
1つの第1収容部2あたりに含まれる第2収容部3は、2つ以上である限り特に限定されず、3つであってもよく、4つ以上であってもよく、9つ以上であってもよい。
【0077】
〔脂質二重膜形成方法〕
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成方法は、上記〔脂質二重膜形成装置〕に記載された本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置を用いた、脂質二重膜形成方法であって、第1収容部に収容されている油に水溶液を加える工程を有することを特徴としている。
【0078】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成方法では、一つ以上の脂質二重膜が形成される限り、形成される脂質二重膜の数に上限はない。すなわち、上述したように、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置が、複数の第1収容部を有する場合、および/または、1つの第1収容部あたり3以上の第2収容部を有する場合には、二つ以上の脂質二重膜を形成することができる。
【0079】
上記「第1収容部に収容されている油に水溶液を加える工程」において、油に水溶液を加える方法は、最終的に第1収容部に収容された油の中で水溶液から液滴が形成される結果となる限り、特に限定されない。上記方法は、例えば、マイクロピペットまたはシリンジなどによって油へ水溶液を滴下する方法(以下、滴下方法とも称する)であってもよいし、または、マイクロピペットまたはシリンジの先端を油の中に挿入し、油の中に水溶液を注入する方法(以下、注入方法とも称する)であってもよい。
【0080】
滴下方法によって油へ滴下された水溶液は、油内に進入し液滴を形成する。注入方法によって、油の中に注入された水溶液は、油内で液滴を形成する。より具体的に、滴下方法または注入方法などの方法によって油内に配置された水溶液では、その後、油内または水溶液中に含まれる、所望の脂質が上記水溶液の界面に移動して、当該脂質によって脂質一重膜が形成される。その結果、水溶液の表面に脂質一重膜が配置されている液滴が形成される。上記脂質一重膜によって覆われた液滴は、その後第2収容部3に収容され、そこで他の、脂質一重膜によって覆われた液滴と接触し、脂質一重膜間の相互作用によって自動的に脂質二重膜を形成する。
【0081】
液滴の表面に脂質一重膜層が形成される時間(換言すれば、脂質一重膜層形成時間)は、油または水溶液に予め含まれている、脂質一重膜を形成可能な脂質の濃度、脂質一重膜を形成可能な脂質の、油の種類、および/または、その他の成分によって変化する。第2収容部において、液滴が他の液滴と接触する前に、これらの液滴の表面には脂質一重膜が形成されている必要がある。従って、油または水溶液に予め含まれている、脂質一重膜を形成可能な脂質の濃度、脂質一重膜を形成可能な脂質の、油の種類、および/または、その他の成分を適宜調整することによって、脂質一重膜層形成時間を調整すればよい。
【0082】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成方法では、上記脂質一重膜層形成時間を変化させるために、水溶液を加える油の位置を任意に決定することが可能である。具体的には、水溶液を加える油の位置として、第2収容部からの距離(具体的に、脂質二重膜形成装置を鉛直上方から見た場合の第2収容部からの距離)を変化させることにより、脂質一重膜層形成時間を変化させることが可能である。より具体的には、第2収容部からの距離が遠い位置の油に水溶液を加える場合には、第2収容部からの距離が近い位置の油に水溶液を加える場合と比較して、脂質一重膜層形成時間を長くすることができる。
【0083】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成方法で使用する油は、特に限定されないが、リン脂質、ヘキサデカン、デカン、スクアレン、シリコンオイル、およびミネラルオイル等があげられる。これらの中でも、形成された脂質一重膜に入り込まず、形成された脂質一重膜が生体膜に近い膜構造となること、および揮発性の低さからヘキサデカンが好ましい。
【0084】
油には、脂質一重膜を形成可能な脂質が含まれていてもよい。別の構成としては、水溶液に、脂質一重膜を形成可能な脂質が含まれていてもよい。別の構成としては、油および水溶液の両方に、脂質一重膜を形成可能な脂質が含まれていてもよい。油が脂質一重膜を形成可能な脂質を含む場合には、水溶液に脂質一重膜を形成可能な脂質が含まれていない場合であっても、液滴が脂質一重膜で覆われることが可能になる。
【0085】
上記脂質一重膜を形成可能な脂質としては、脂質二重膜を形成できる限り特に限定されないが、例えばリン脂質、およびコレステロールがあげられる。リン脂質としては、特に限定されないが、例えば、ホスファチジルコリン、ジフィタノイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、およびホスファチジルグリセロール等があげられる。
【0086】
油が脂質一重膜を形成可能な脂質を含む場合、当該脂質の濃度は特に限定されないが、10mg/ml〜200mg/mlであることが好ましく、15mg/ml〜150mg/mlであることがより好ましく、25mg/ml〜100mg/mlであることがさらに好ましく、40mg/ml〜60mg/mlであることが特に好ましい。上記構成であれば、水溶液が脂質一重膜を形成可能な脂質を含まない場合であっても、短時間(例えば、10秒未満)の脂質一重膜層形成時間を実現できる。
【0087】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成方法で使用する水溶液は、水を主成分とする溶液であれば特に限定されず、水溶液は様々な成分(例えば、塩、塩基、糖、脂質、およびタンパク質など)を含んでいてもよい。水溶液の組成は、適宜設定されることが可能であり、例えば、特定の細胞質ゾルの成分、血液成分、またはリンパ液成分など生体内の特定の環境の成分を模した組成であってもよい。
【0088】
水溶液に含まれる塩としては、特に限定されないが、生体中に含まれる塩などから適宜選択され、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、およびリン酸塩等の金属塩、ならびにアミノ酸塩等があげられる。
【0089】
水溶液に含まれる塩基としては、特に限定されないが、グアニン、アデニン、チミン、およびシトシン等があげられる。
【0090】
水溶液に含まれる脂質としては、特に限定されないが、コレステロール、糖脂質、リン脂質、および複合脂質等があげられる。これら脂質成分の中には、形成された液滴において、液滴と油との界面に移動し、脂質一重膜の成分になり得るものもある。そのような、脂質一重膜の成分になり得る脂質は、コレステロール、糖脂質、リン脂質、および複合脂質等である。つまり、本発明の一実施形態では、液滴を覆っている脂質一重膜は、コレステロール、糖脂質、リン脂質、および複合脂質等の脂質を含んでもよい。
【0091】
水溶液は、脂質一重膜を形成可能な脂質を含んでもよい。水溶液が脂質一重膜を形成可能な脂質を含む場合には、油に脂質一重膜を形成可能な脂質が含まれていない場合であっても、液滴が脂質一重膜で覆われることが可能になる。水溶液に含まれる脂質一重膜を形成可能な脂質としては、油に含まれる脂質一重膜を形成可能な脂質と同様の物質をあげることができ、上述した通りである。
【0092】
水溶液が脂質一重膜を形成可能な脂質を含む場合、当該脂質の濃度は特に限定されないが、10mg/ml〜200mg/mlであることが好ましく、15mg/ml〜150mg/mlであることがより好ましく、25mg/ml〜100mg/mlであることがさらに好ましく、40mg/ml〜60mg/mlであることが特に好ましい。上記構成であれば、水溶液が脂質一重膜を形成可能な脂質を含まない場合であっても、短時間(例えば、10秒未満)の脂質一重膜層形成時間を実現できる。
【0093】
水溶液に含まれるタンパク質としては、特に限定されないが、酵素タンパク質、輸送タンパク質、および膜タンパク質等があげられる。これらのタンパク質は、脂質二重膜内に埋め込まれ、これによって、細胞膜を再現することができる。
【0094】
膜タンパク質としては、限定されず、各種イオンチャネル、膜貫通接着タンパク質、トランスポータ、および膜貫通型輸送タンパク質等があげられる。また、上記タンパク質は、膜タンパク質であるか否かが不明なタンパク質、膜タンパク質であるが機能未知なタンパク質、または、機能が未知なタンパク質であってもよい。
【0095】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成方法ではまた、脂質二重膜を形成すると同時に、または、脂質二重膜が形成された後に、例えば、自由拡散、および/または、マイクロピペットなどを用いて、膜タンパク質を脂質二重膜に埋め込むことが可能である。
【0096】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成方法ではまた、脂質二重膜が形成された後に、脂質二重膜を形成する液滴内に、任意の成分を添加することが可能であり、または、液滴から任意の成分を回収することも可能である。この場合には、例えば、マイクロピペットなどを用いて、液滴内に任意の成分を注入、または、液滴内の任意の成分を吸引すればよい。
【0097】
〔評価システム〕
本発明の一実施形態に係る評価システムは、上記〔脂質二重膜形成装置〕に記載された本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置を含むことを特徴としている。
【0098】
本発明の一実施形態に係る評価システムは、さらに電極(換言すれば、各種変化を測定し得るセンサー)を備えることが好ましい。上記電極は、第2収容部内に配置されることがより好ましい。上記構成により、複数の液滴5の間に形成された脂質二重膜を介した液滴間の物質の移動、または、当該脂質二重膜に含まれる膜タンパク質の機能等を、電気的に解析することが可能となる。例えば、脂質二重膜に含まれる各種イオンチャネルを介した液滴間の各種イオンの流出入を電気的に解析することが可能となる。
【0099】
上記電極を第2収容部内に配置する方法は特に限定されず、電極を、マニピュレータによって脂質二重膜形成装置の周囲から第2収容部内に挿入してもよく、または、第2収容部内に予め配置されていてもよい。電極がマニピュレータによって第2収容部内に挿入される場合には、電極は可動であるため、任意の位置および時間に、電極を第2収容部内に挿入することが可能である。一方、電極が第2収容部内に予め配置されている場合には、(1)マニピュレータなどを必要とすることなく、第2収容部内に収容された液滴5内に電極を配置することが可能であること、および、(2)電極と一緒に脂質二重膜形成装置を持ち運ぶことが可能であること、などの利点を有する。
【0100】
電極の配置形態としては、特に限定されないが、脂質二重膜形成装置の第2収容部の底部に電極が配置されていることが好ましい。
【0101】
図5は、本発明の一実施形態に係る評価システムに含まれる脂質二重膜形成装置の第2収容部の長手方向における断面図である。
【0102】
図5では、本発明の一実施形態に係る評価システムが含む脂質二重膜形成装置において、基板1が有する第1収容部2に設けられた第2収容部3の底部に電極6が配置されている。
【0103】
上記構成により、電極6は、液滴5が第2収容部3に収容された後、液滴5の自重によって、液滴5の表面に形成されている一重膜を貫通し、液滴5内に配置されることが可能となる。
【0104】
電極6の構成としては、特に限定されず、適宜、市販の電極を用いることができる。
【0105】
電極6は、第2収容部3の各々に配置されていてもよいし、2つ以上の第2収容部3に配置されていてもよい。例えば、3つ以上の第2収容部3を直列に配置する場合、少なくとも、両端に配置された2つの第2収容部3に電極6を配置することが可能である。当該構成によれば、複数の脂質二重膜を介した物質の移動等を、電気的に解析することができる。
【0106】
電極6に接続される電源または計測機器は、評価システムに含まれていてもよい。あるいは、評価システムに含まれていない電源または計測機器を用いてもよい。
【0107】
電極6と、電源または計測機器とは、常に接続されている形態であってもよいし、任意の時宜および時間に接続される形態であってもよい。電極6と、電源または計測機器とが任意の時宜および時間に接続される場合には、電極6は、電源または計測機器と着脱可能な接点を有することが可能である。上記構成であれば、電極6を有する複数の脂質二重膜形成装置を、任意の順番、時宜および時間で、電源または計測機器と接続することが可能である。
【0108】
本発明の一実施形態に係る評価システムとしては、本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置を含む限り特に限定されないが、具体的には、(1)電気的変化測定装置、(2)放射性同位元素の評価装置、(3)臭いセンサー装置、および(4)DNAシークエンサー(例えば、Byley H., Sequencing single molecules of DNA, Curr. Opin. Chem. Biol., 10(6), 628-637, 2006を参照)などがあげられる。
【0109】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置を含む電気的変化測定装置の場合には、上記電極(換言すれば、各種変化を測定し得るセンサー)によって、脂質二重膜によって隔てられた水溶液間の様々な変化(例えば、イオン量、および/または、イオンの電荷の変化)を測定すればよい。
【0110】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置を含む放射性同位元素の評価装置の場合、上記電極(換言すれば、各種変化を測定し得るセンサー)によって、脂質二重膜によって隔てられた水溶液間の様々な変化(例えば、放射性同位元素の量の変化)を測定すればよい。
【0111】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置を含む臭いセンサー装置の場合、上記電極(換言すれば、各種変化を測定し得るセンサー)によって、脂質二重膜によって隔てられた水溶液間の様々な変化(例えば、臭い物質の量の変化)を測定すればよい。
【0112】
本発明の一実施形態に係る脂質二重膜形成装置を含むDNAシークエンサーの場合、上記電極(換言すれば、各種変化を測定し得るセンサー)によって、脂質二重膜によって隔てられた水溶液間の様々な変化(例えば、イオン量、および/または、イオンの電荷の変化)を測定すればよい。
【0113】
本発明の一実施形態は、以下のように構成することも可能である。
【0114】
[1]油が収容される第1収容部と、上記第1収容部の底部に設けられ、脂質一重膜によって覆われた液滴を収容するための複数の第2収容部と、を備え、上記第1収容部の内側面は、上記第1収容部に収容された油に水溶液を加えた時に、上記水溶液から形成された上記液滴を上記第2収容部へ導くように、上記第2収容部へ向かって収束した形状となっており、上記複数の第2収容部は、上記第2収容部内に収容された上記液滴同士が接触するように配置されていることを特徴とする、脂質二重膜形成装置。
【0115】
上記構成によれば、油に加えられた水溶液は、脂質一重膜によって覆われた液滴を形成する。当該液滴では、脂質の疎水性領域が油に対向するように配置され、脂質の親水性領域が水溶液に対向するように配置されている。当該液滴は、第1収容部の内側面に沿って第2収容部へ向かって移動した後、第2収容部内に収容される。複数の第2収容部に収納された液滴同士は接触し、このとき、液滴の外側に配置されている脂質一重膜同士も接触する。上述したように、脂質一重膜では、脂質の疎水性領域が油に対向するように配置され、脂質の親水性領域が水溶液に対向するように配置されているので、脂質一重膜同士が接触している領域では、脂質の疎水性領域同士が対向するように配置され、脂質の親水性領域が水溶液に対向するように配置されている。これによって、細胞膜の構造と同様の脂質二重膜が形成される。
【0116】
[2]上記液滴の形状を直径r
3の球とし、上記第2収容部内の空間の最大内接円の直径をr
2とした場合に、r
3≦r
2を満たすことを特徴とする、[1]に記載の脂質二重膜形成装置。
【0117】
第2収容部内に収容された液滴は、重力によって、球状の形状から扁平な形状に変化し得る。上記構成であれば、扁平な形状の液滴を、第2収容部内に収容することができる。
【0118】
[3]上記第2収容部の深さH
2は、0<H
2<(r
3)/2を満たすことを特徴とする、[1]または[2]に記載の脂質二重膜形成装置。
【0119】
上記構成によれば、第2収容部内に収容された液滴の上側の広い領域が、第2収容部の上に露出され、露出した液滴の部分同士が容易に接触することができる。
【0120】
[4]上記第2収容部の深さH
2は、(r
3)/2≦H
2を満たし、上記第2収容部同士を隔てる壁面に、当該壁面を貫通する孔が形成されていることを特徴とする、[1]または[2]に記載の脂質二重膜形成装置。
【0121】
上記構成によれば、(i)第2収容部内に収容された液滴の上側の狭い領域が、第2収容部の上に露出された場合、または、(ii)第2収容部に収容された液滴の上側の領域が、第2収容部の上に露出されない場合であっても、孔を介して、液滴同士が容易に接触することができる。
【0122】
[5][1]〜[4]の何れか1つに記載の脂質二重膜形成装置を用いた、脂質二重膜形成方法であって、上記第1収容部に収容されている油に水溶液を加える工程を有することを特徴とする、脂質二重膜形成方法。
【0123】
上記構成によれば、油に加えられた水溶液は、脂質一重膜によって覆われた液滴を形成する。当該液滴では、脂質の疎水性領域が油に対向するように配置され、脂質の親水性領域が水溶液に対向するように配置されている。当該液滴は、第1収容部の内側面に沿って第2収容部へ向かって移動した後、第2収容部内に収容される。複数の第2収容部に収納された液滴同士は接触し、このとき、液滴の外側に配置されている脂質一重膜同士も接触する。上述したように、脂質一重膜では、脂質の疎水性領域が油に対向するように配置され、脂質の親水性領域が水溶液に対向するように配置されているので、脂質一重膜同士が接触している領域では、脂質の疎水性領域同士が対向するように配置され、脂質の親水性領域が水溶液に対向するように配置されている。これによって、細胞膜の構造と同様の脂質二重膜が形成される。
【0124】
[6][1]〜[4]の何れか1つに記載の脂質二重膜形成装置を含むことを特徴とする、評価システム。
【0125】
上記構成によれば、脂質二重膜を容易に形成することができるので、脂質二重膜自体の機能、および、脂質二重膜に埋め込まれた膜タンパク質の機能など、脂質二重膜に関連する様々な機能を、容易に(例えば、簡便な装置を用いて、および/または、実験室では無く現場にて)評価することができる。
【0126】
[7]上記評価システムは、さらに電極を備えていることを特徴とする、[6]に記載の評価システム。
【0127】
上記構成であれば、第2収容部内に収容された液滴の各々の内部に電極を配置することが可能となる。従って、電極間の電圧および/または電圧を測定することによって、複数の液滴間に形成された脂質二重膜を介した物質(例えば、イオン、薬剤、毒物など)の移動等を評価することができる。