(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ケーブルは、上記ケーブルリールにおいて、該ケーブルリールの軸方向に所定列数に並列され、並列されたケーブル列が該ケーブルリールの径方向に段重ねされて巻き取られ、
上記ケーブルリールからの繰り出し長さに応じた上記ケーブルの巻径の変化は、上記ケーブル列の段重ねの段数の変化に応じた階段的な変化である
ことを特徴とする請求項4記載のトルク制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような給電用ケーブル9を繰り出すケーブルリール8のトルク制御に必要な重量であるところの該繰り出された給電用ケーブル9の重量は、繰り出された給電用ケーブル9の長さに比例する。繰り出された給電用ケーブル9の長さは、ケーブルリール8の回転角に基づいて算出することができる。
【0007】
ただし、繰り出された給電用ケーブル9の長さは、ケーブルリール8の回転角に比例しない。これは、給電用ケーブル9は、上記ケーブルリール8において重なって巻き取られるので、巻き取られている長さによって、給電用ケーブル9の巻径が変化してしまうからである。
【0008】
したがって、繰り出された給電用ケーブル9の長さを正確に算出するには、給電用ケーブル9の巻径を正しく把握する必要がある。この点、上記特許文献1に開示された従来のトルク制御方法では、上記給電用ケーブル9の巻径が正しく把握されないので、繰り出された長さが正確に算出できず、この結果、上記ケーブルリール8のトルク制御も正確に行うことができなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上述したトルク制御方法が有する課題を解決するために提案されたものであって、例えばクレーン吊り具への給電用ケーブルを繰り出すケーブルリールのトルク制御を、ケーブルリールから繰り出された長さが正確に算出できることによって、正確に行うことができるトルク制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、ワイヤケーブルによって吊り下げ支持され該ワイヤケーブルの巻き取り及び繰り出しによって昇降操作される吊り具に下端
が接続されたケーブルの張力を所定値とするために、該ケーブルを繰り出すケーブルリールのトルク制御を行うトルク制御装置であって、上記ケーブルリールの回転角度を検出する角度検出手段と、上記ケーブルリールの巻き取りトルクを可変できる駆動手段と、上記角度検出手段から検出角度を取得し、上記駆動手段を制御して上記ケーブルリールの巻き取りトルクを制御する制御手段と、を備え、上記制御手段は、上記ケーブルの上記ケーブルリールへの最終巻取り位置
を該ケーブルリールの原点位置とし
たときの該ケーブルリールの原点位置からの積算回転角度
、及び、該積算回転角度から算出した該ケーブルリールにおける該ケーブルの巻径に
より、
これらに対応する該ケーブルの繰り出し長さに対応する繰り出された該ケーブルの重量
を算出し、
上記ケーブルリールの上記原点位置からの積算回転角度に基づいて、
上記巻き取りトルクを、繰り出された上記ケーブルの重量及び該ケーブルの巻径に
対応した巻き取りトルクに制御
することを特徴とするものである。
【0011】
この第1の発明に係るトルク制御装置では、上記ケーブルリールの
上記原点位置からの積算回転角度
に基づいて、上記巻き取りトルクを、繰り出された上記ケーブルの重量及び該ケーブルの巻径に対応した巻き取りトルクに制御
するものである。
第2の発明(請求項2記載の発明)は、ワイヤケーブルによって吊り下げ支持され該ワイヤケーブルの巻き取り及び繰り出しによって昇降操作される吊り具に下端が接続されたケーブルの張力を所定値とするために、該ケーブルを繰り出すケーブルリールのトルク制御を行うトルク制御装置であって、上記ケーブルリールの回転角度を検出する角度検出手段と、上記ケーブルリールの巻き取りトルクを可変できる駆動手段と、上記角度検出手段から検出角度を取得し、上記駆動手段を制御して上記ケーブルリールの巻き取りトルクを制御する制御手段と、を備え、上記制御手段は、数値テーブルを記憶しており、上記数値テーブルは、上記ケーブルの上記ケーブルリールへの最終巻取り位置を該ケーブルリールの原点位置としたときの該ケーブルリールの原点位置からの積算回転角度に、上記ケーブルリールの巻き取りトルクを対応させた数値テーブルであって、上記数値テーブルにおける巻き取りトルクは、上記積算回転角度、及び、該積算回転角度から予め算出した該ケーブルリールにおける該ケーブルの巻径により、これらに対応する該ケーブルの繰り出し長さに対応する繰り出された該ケーブルの重量が予め算出され、このケーブルの重量及び該ケーブルの巻径により、予め算出されたものであり、上記制御手段は、上記数値テーブルを用いて、上記ケーブルリールの上記原点位置からの積算回転角度に基づいて、上記巻き取りトルクを、繰り出された上記ケーブルの重量及び該ケーブルの巻径に対応した巻き取りトルクに制御することを特徴とするものである。
この第2の発明に係るトルク制御装置では、上記数値テーブルを用いて、上記ケーブルリールの上記原点位置からの積算回転角度に基づいて、上記巻き取りトルクを、繰り出された上記ケーブルの重量及び該ケーブルの巻径に対応した巻き取りトルクに制御するものである。
【0012】
また、第
3の発明(請求項
3記載の発明)は、上記第1
又は第2の発明において、上記吊り具の上昇限界を検出する原点検出手段を備え、上記制御手段は、上記原点検出手段により検出された上昇限界を、上記ケーブルリールの原点位置とすることを特徴とするものである。
【0013】
この第
3の発明に係るトルク制御装置では、上記ケーブルリールの原点位置を容易に定めることができる。
【0014】
また、第
4の発明(請求項
4記載の発明)は、上記第1
、第2又は第
3の発明の何れかにおいて、上記ケーブルは、上記ケーブルリールにおいて、該ケーブルリールの径方向に重ねられて巻き取られ、該ケーブルリールからの繰り出し長さに応じて、巻径が変化することを特徴とするものである。
【0015】
この第
4の発明に係るトルク制御装置では、上記ケーブルが上記ケーブルリールの径方向に重ねられて巻き取られ、繰り出し長さに応じて巻径が変化しても、上記ケーブルリールのトルク制御を正確に行うことができる。
【0016】
また、第
5の発明(請求項
5記載の発明)は、上記第
4の発明において、上記ケーブルは、上記ケーブルリールにおいて、該ケーブルリールの軸方向に所定列数に並列され、並列されたケーブル列が該ケーブルリールの径方向に段重ねされて巻き取られ、上記ケーブルリールからの繰り出し長さに応じた上記ケーブルの巻径の変化は、上記ケーブル列の段重ねの段数の変化に応じた階段的な変化であることを特徴とするものである。
【0017】
この第
5の発明に係るトルク制御装置では、並列されたケーブル列が上記ケーブルリールの径方向に段重ねされて巻き取られ、上記ケーブル列の段重ねの段数の変化に応じて巻径が階段的に変化しても、上記ケーブルリールのトルク制御を正確に行うことができる。
【0018】
また、第
6の発明(請求項
6記載の発明)は、上記第1乃至第
5の発明の何れかにおいて、上記角度検出手段は、上記駆動手段の駆動軸に取り付けられ、上記制御手段は、インバータを用いたベクトル制御により上記駆動手段のトルク制御を行い、上記インバータは、上記角度検出手段からの検出角度信号を、上記制御手段へ中継することを特徴とするものである。
【0019】
この第
6の発明に係るトルク制御装置では、上記角度検出手段は、上記ケーブルリールの回転角度の検出と、上記ケーブルの繰り出し長さの算出とに兼用されており、装置構成を簡素化することができる。
【0020】
また、第
7の発明(請求項
7記載の発明)は、上記第1乃至第
6の発明の何れかにおいて、上記吊り具は、クレーンバケットを吊り下げ支持しているクレーン吊り具であって、上記ケーブルは、上記クレーンバケットに給電する給電用ケーブルであることを特徴とするものである。
【0021】
この第
7の発明に係るトルク制御装置では、クレーン吊り具によりクレーンバケットが吊り下げ支持されたクレーンに適用することができる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明(請求項1記載の発明)に係るトルク制御装置によれば、例えばクレーン吊り具への給電用ケーブルを繰り出すケーブルリールのトルク制御を、ケーブルリールから繰り出された
ケーブルの重量及び該ケーブルの巻径が正確に算出できることによって、正確に行うことができる。
第2の発明(請求項2記載の発明)に係るトルク制御装置によれば、例えばクレーン吊り具への給電用ケーブルを繰り出すケーブルリールのトルク制御を、数値テーブルを用いることによって、正確に行うことができる。
【0023】
また、第
3の発明(請求項
3記載の発明)に係るトルク制御装置によれば、上記ケーブルリールの原点位置を容易に定めることができる。
【0024】
また、第
4の発明(請求項
4記載の発明)に係るトルク制御装置によれば、上記ケーブルが上記ケーブルリールの径方向に重ねられて巻き取られ、繰り出し長さに応じて巻径が変化しても、上記ケーブルリールのトルク制御を正確に行うことができる。
【0025】
また、第
5の発明(請求項
5記載の発明)に係るトルク制御装置によれば、並列されたケーブル列が上記ケーブルリールの径方向に段重ねされて巻き取られ、上記ケーブル列の段重ねの段数の変化に応じて巻径が階段的に変化しても、上記ケーブルリールのトルク制御を正確に行うことができる。
【0026】
また、第
6の発明(請求項
6記載の発明)に係るトルク制御装置によれば、上記角度検出手段は、上記ケーブルリールの回転角度の検出と、上記ケーブルの繰り出し長さの算出とに兼用されており、装置構成を簡素化することができる。
【0027】
また、第
7の発明(請求項
7記載の発明)に係るトルク制御装置によれば、クレーン吊り具によりクレーンバケットが吊り下げ支持されたクレーンに適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るトルク制御装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
本発明に係るトルク制御装置は、ワイヤケーブルによって吊り下げ支持されワイヤケーブルの巻き取り及び繰り出しによって昇降操作される吊り具に下端
が接続されたケーブルの張力を所定値とするために、ケーブルを繰り出すケーブルリールのトルク制御を行う装置である。
【0031】
図1は、本発明に係るトルク制御装置が適用されるクレーンの構成を示す側面図である。そして、この実施の形態に係るトルク制御装置は、本発明をクレーンに適用したものであり、
図1に示すように、上記吊り具は、クレーンバケット7aを吊り下げ支持しているクレーン吊り具7であり、ケーブルは、クレーンバケット7aに給電する給電用ケーブル9である。
【0032】
そして、クレーン11においては、上記クレーン吊り具7そのもの、及び、クレーン吊り具7から吊り下げられるクレーンバケット7aの重量は、給電用ケーブル9ではなく、ワイヤケーブル10によって支持される。上記クレーン吊り具7は、上記ワイヤケーブル10によって吊り下げ支持され、該ワイヤケーブル10の巻き取り及び繰り出しによって昇降操作される。
【0033】
また、上記給電用ケーブル9は、下端
が上記クレーン吊り具7の電源入力部に接続され、上記クレーンバケット7aの開閉等の動作に必要な電源を電源入力部に供給する。また、上記ワイヤケーブル10を巻き取るケーブルドラム5、及び、上記給電用ケーブル9を巻き取るケーブルリール8は、クレーンガーダ3上に移動可能に設置されたトロリ6に、回転操作可能に設置されている。
【0034】
そして、このトルク制御装置は、クレーン11において、クレーン吊り具7への給電用ケーブル9を巻き取り及び繰り出すケーブルリール8のトルク制御を行う。このケーブルリール8のトルク制御は、該ケーブルリール8から繰り出された給電用ケーブル9の張力を所定値として、該給電用ケーブル9に弛みを生じさせず、また、該給電用ケーブル9に不必要な荷重を与えないようにするために行う。
【0035】
そして、上記トルク制御装置は、上記ケーブルリール8から繰り出された給電用ケーブル9の重量と、上記給電用ケーブル9をクレーン吊り具7に固定するために必要な金具等のケーブル付属部品の重量との合計に基づいて、ケーブルリール8の回転駆動トルクを制御するものである。
【0036】
図2は、上記トルク制御装置の構成を示すブロック図である。この
図2に示すように、上記トルク制御装置1は、インバータ2と、制御手段となる位置変換器4とを備えて構成されている。上記位置変換器4は、記憶装置(ROM)4aを有している。また、この位置変換器4は、記憶装置4aに記憶された制御プログラムに従い、記憶装置4aに記憶された演算式や数値テーブルを用いて動作する。
【0037】
また、このトルク制御装置1は、角度検出手段となるパルスジェネレータ(PLG)12と、駆動手段となる電動機13とを備えている。上記パルスジェネレータ12は、ロータリーエンコーダである。また、上記電動機13は、ケーブルリール8を回転操作する駆動源であり、上記ケーブルリール8の巻き取りトルクを可変することができる。上記パルスジェネレータ12は、上記電動機13の駆動軸に取り付けられており、上記ケーブルリール8の回転角度を検出した検出角度信号を出力する。
【0038】
そして、パルスジェネレータ12から出力された検出角度信号は、該インバータ2によって中継され、上記位置変換器4に送られる。この位置変換器4は、パルスジェネレータ12から検出角度を取得し、演算し、上記インバータ2にアナログ制御信号を入力することにより、上記電動機13を制御して、上記ケーブルリール8の巻き取りトルクを制御する。また、上記位置変換器4は、トルク電流を高精度に制御できるインバータ2を用いたベクトル制御により、上記電動機13のトルク制御を行う。
【0039】
また、上記パルスジェネレータ12は、後述する給電用ケーブル9の繰り出し長さの算出にも使用される。このパルスジェネレータ12は、上記ケーブルリール8の回転角度の検出と、給電用ケーブル9の繰り出し長さの算出とに兼用されており、このことによって、このトルク制御装置1の装置構成が簡素化されている。
【0040】
そして、このトルク制御装置1は、上記クレーン吊り具7の上昇限界を検出する原点検出手段となる位置センサ14を備えている。上記位置変換器4は、位置センサ14により検出された上昇限界を、上記ケーブルリール8の原点位置とする。この位置センサ14により、上記ケーブルリール8の原点位置の検出を容易に行うことができる。
【0041】
図3は、上記クレーンのケーブルリールの構成(1列巻き)を示す断面図である。上記給電用ケーブル9は、このケーブルリール8において、
図3に示すように、ケーブルリール8の径方向に重ねられて巻き取られる。このとき、給電用ケーブル9の直径をφdとすると、ケーブルリール8の径方向に隣接する給電用ケーブル9の中心間距離Δdは、〔Δd=φd〕であり、ケーブルリール8の半径をR0とすると、第1重の給電用ケーブル9の巻径(半径)R1は、〔R1=R0+φd/2〕であり、第2重の給電用ケーブル9の巻径(半径)R2は、〔R2=R1+φd〕であり、第n重の給電用ケーブル9の巻径(半径)Rnは、〔Rn=R(n−1)+φd(∵nは2以上の整数)〕である。
【0042】
図4は、ケーブル繰り出し長さとケーブルリールの積算回転角度の関係(1列巻き)を示すグラフである。なお、この
図4は、上記ケーブルリール8の巻芯の直径が30cm、上記ケーブルリール8の巻き出し回転数が0〜26回転、上記給電用ケーブル9の直径が1cmとして算出したものである。この場合には、上記給電用ケーブル9は、上記ケーブルリール8からの繰り出し長さに応じて、上記ケーブルリール8が360°回転(1回転)するごとに巻径が変化する。したがって、
図4中のBに示すように、ケーブルリール8の回転角度のケーブル繰り出し長さに対する変化率(グラフの傾き)は、給電用ケーブル9のケーブルリール8からの繰り出し長さに応じて変化する。
【0043】
なお、
図4中のAは、上記給電用ケーブル9の巻径が、上記ケーブルリール8からの繰り出し長さによって変化しない場合、すなわち、「1段複数列巻」(全てのケーブル9をケーブルリール8の軸方向に並べて巻き、ケーブルリール9の径方向には重ねない)における繰り出し長さと積算回転角度との比例関係を表している。
【0044】
図5は、上記クレーンのケーブルリールの構成(複数列巻き)を示す断面図である。この実施の形態では、上記給電用ケーブル9は、上記ケーブルリール8に巻き取られている状態において、
図5に示すように、該ケーブルリール8の軸方向に所定列数に並列され、並列されたケーブル列がケーブルリール8の径方向に段重ねされて巻き取られている。ここで、上記給電用ケーブル9の直径をφdとすると、ケーブルリール8の径方向に隣接する給電用ケーブル9の中心間距離Δdは、〔Δd=φd・sin60°=φd・(√3)/2≒0.866・φd〕であり、ケーブルリール8の半径をR0とすると、第1段の給電用ケーブル9の巻径(半径)R1は、〔R1=R0+φd/2〕であり、第2段の給電用ケーブル9の巻径(半径)R2は、〔R2=R1+0.866・φd〕であり、第n段の給電用ケーブル9の巻径(半径)Rnは、〔Rn=R(n−1)+0.866・φd(∵nは2以上の整数)〕である。
【0045】
なお、上記給電用ケーブル9は、上記ケーブルリール8に巻き取られている状態において、偶数段と奇数段ではケーブル列の列数が異なる。この条件下で、上記給電用ケーブル9の全長繰り出しから最終巻取り位置まで、巻径と段数が増減する給電用ケーブル9の繰り出し長さを段数ごとに算出する。
【0046】
図6は、上記ケーブル繰り出し長さとケーブルリールの積算回転角度の関係(複数列巻き)を示すグラフである。なお、この
図6は、上記ケーブルリール8の巻芯の直径が30cm、上記ケーブルリール8の巻き出し回転数が0〜26回転、上記給電用ケーブル9の直径が4cmとし、
図6中のBは、上記給電用ケーブル9の列数が交互に4列及び5列、段数を6段として算出したものである。この場合には、上記給電用ケーブル9は、ケーブル列の段重ねの段数の変化に応じて巻径が変化する。したがって、
図6中のBに示すように、ケーブルリール8の回転角度のケーブル繰り出し長さに対する変化率(グラフの傾き)は、給電用ケーブル9のケーブル列の段重ねの段数の変化(巻径変化ポイント)において、階段的に変化する。言うまでもなく、巻径変化ポイントと次の巻径変化ポイントとの間は、給電用ケーブル9の巻径は変化しないので、ケーブルリール8の回転角度のケーブル繰り出し長さに対する変化率(グラフの傾き)は一定である(
図6において直線である)。なお、
図6中のAは、上記給電用ケーブル9の巻径が、上記ケーブルリール8からの繰り出し長さによって変化しない場合、すなわち、「1段複数列巻」(全てのケーブル9をケーブルリール8の軸方向に並べて巻き、ケーブルリール9の径方向には重ねない)における繰り出し長さと積算回転角度との比例関係を表している。
【0047】
このように、上記給電用ケーブル9の直径と上記ケーブルリール8の巻取り幅から算出される巻取り段数において、該給電用ケーブル9の巻取り段数の変化に伴って巻径も階段的に変化する。そのため、このトルク制御装置1においては、上記給電用ケーブル9の繰り出し長さと、該給電用ケーブル9の巻取り段数の関係を考慮して、ケーブルリール8の回転トルクを制御する。
【0048】
図7は、ケーブル繰り出し長さと所要巻き取りトルクの関係を示すグラフである。先の
図5に示したように、上記給電用ケーブル9が上記ケーブルリール8の軸方向に所定列数に並列され、並列されたケーブル列がケーブルリール8の径方向に段重ねされて巻き取られる場合においては、
図7に示すように、給電用ケーブル9の繰り出し長さと、ケーブルリール8の所要巻き取りトルクとの関係は、ケーブル列の段重ねの段数の変化(巻径変化ポイント)において、階段的に変化するものとなる。所要巻き取りトルクとは、給電用ケーブル9に弛みが生じず、また、給電用ケーブル9に不必要な荷重がかからないような、ケーブルリール8の回転トルクである。この所要巻き取りトルクは、上記給電用ケーブル9の繰り出し長さに対応する繰り出された該給電用ケーブル9の重量と、該給電用ケーブル9の巻径とによって決定される。
図7によれば、段数変化(巻径変化ポイント)において巻径が階段的に変化し、この変化が所要巻き取りトルクに影響すること、また、各段ではそれぞれ巻径が異なるので、上記給電用ケーブル9の繰り出し長さに対する所要巻き取りトルクの変化率(グラフの傾き)が異なることがわかる。
【0049】
なお、所要巻き取りトルクは、上記ケーブルリール8から繰り出された給電用ケーブル9の重量と金具等のケーブル付属部品の重量との合計と、該ケーブルリール8の回転トルクによって生ずる張力とがつり合うトルクである。したがって、所要巻き取りトルクは、上記給電用ケーブル9の巻径と張力とに基づいて算出することもできる。
【0050】
また、上記位置変換器4は、先ず、上記給電用ケーブル9のケーブルリール8への最終巻取り位置を、該ケーブルリールの原点位置とする。次に、上記位置変換器4は、ケーブルリール8の原点位置からの積算回転角度に対応するケーブルリール8における給電用ケーブル9の巻径を算出する。そして、この位置変換器4は、上記ケーブルリール8の積算回転角度及び給電用ケーブル9の巻径に対応する給電用ケーブル9の繰り出し長さを算出する。また、この位置変換器4は、上記給電用ケーブル9の繰り出し長さに対応する繰り出された該給電用ケーブル9の重量を算出する。そして、この位置変換器4は、繰り出された上記給電用ケーブル9の重量及び該給電用ケーブル9の巻径に基づいて、所要巻き取りトルクを算出し、上記ケーブルリール8のトルク制御を行う。
【0051】
なお、これら位置変換器4による算出は、全てを都度行う必要はなく、予め算出しておき、これを数値テーブルにして記憶しておけば(つまり、
図7に示したグラフを作成して記憶しておけば)、ケーブルリール8の積算回転角度のみを求め、その積算回転角度に対応した所要巻き取りトルクを数値テーブル(または、グラフ)から決定することができる。このように、上記位置変換器4は、入力された積算回転角度に基づいて所要巻き取りトルクを決定して、電圧や電流等のアナログ量でインバータ2に入力する。
【0052】
また、上記給電用ケーブル9の繰り出し長さは、上記電動機13の駆動軸に取り付けられたパルスジェネレータ12により、最終巻取り位置を原点として、この原点からの回転角を積算することで算出する。最終巻取り位置は、クレーン吊り具7の上昇限界となるため、上昇限界到達の検出に合わせて積算回転角度を初期化することにより、回転角の誤差を修正することができる。なお、上記積算回転角度は、振動や歯車のバックラッシュ等の外的要因で誤差が生じる場合があるため、所定条件下で補正することが望ましい。
【0053】
図8は、上記トルク制御装置の動作を示すフローチャートである。上記位置変換器4の動作の一例として、
図8に示すように、ステップst1で動作を開始すると、給電用ケーブル9の全長、直径とケーブルリール8の巻幅との関係より、巻取段数と段ごとの列数を決定する。
【0054】
なお、ここでは、全段数を3段とする。以下の説明において、「COUNT」は上記パルスジェネレータ12からのパルスのカウント積算値、「L3−2」は3段目から2段目に突入するカウント値、「L2−1」は2段目から1段目に突入するカウント値である。〔0<L3−2<L2−1<最大繰り出し時の「COUNT」〕となる。
【0055】
そこで、ステップst2では、巻数と1巻あたりのカウント増加値より、「L3−2」と「L2−1」を算出する。また、ステップst3では、各段のトルク算出計算式を登録する。トルク算出計算式は、「TnF」をn段目が全て巻いてある時の所要巻取りトルク、「TnL」をn段目が全て巻き出された時の所要巻取りトルク、「CnF」をn段目突入時のカウント値、「CnL」をn段目終了時のカウント値として、以下の〔式1〕で示される。
【0056】
【数1】
【0057】
そして、ステップst4では、パルス入力によりカウントを積算する。また、ステップst5では、「COUNT>L3−2」か否かを判別し、「NO」ならばステップst6に進み、「YES」ならばステップst8に進む。ステップst6では、3段目の所要トルクとカウント値の比例直線からトルクを算出して、ステップst7に進む。ステップst7では、所要トルクをアナログ量で出力して終了する。
【0058】
また、ステップst8では、「COUNT>L2−1」か否かを判別し、「NO」ならばステップst9に進み、「YES」ならばステップst10に進む。ステップst9では、2段目の所要トルクとカウント値の比例直線からトルクを算出して、ステップst7に進む。また、ステップst10では、1段目の所要トルクとカウント値の比例直線からトルクを算出して、ステップst7に進む。
【0059】
以上、本発明に係るトルク制御装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上述の実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において、適宜その構成を変更することができる。