特許第6877064号(P6877064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6877064
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】折り畳み自転車
(51)【国際特許分類】
   B62K 15/00 20060101AFI20210517BHJP
【FI】
   B62K15/00
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-88372(P2020-88372)
(22)【出願日】2020年5月20日
【審査請求日】2020年9月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520177389
【氏名又は名称】菅原 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(74)【代理人】
【識別番号】100106356
【弁理士】
【氏名又は名称】松枝 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 裕
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02769905(EP,A1)
【文献】 登録実用新案第3160937(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第2409906(EP,A2)
【文献】 登録実用新案第3148062(JP,U)
【文献】 特開平6−32272(JP,A)
【文献】 特開2004−189086(JP,A)
【文献】 特開2001−71977(JP,A)
【文献】 特開2004−123089(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/199015(WO,A1)
【文献】 特開2001−58590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 13/00− 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動作により前輪と後輪を重ね合わせて折り畳み可能な折り畳み自転車において、
前記前輪を支持するヘッドチューブから後方に延びるトップチューブと、
前記トップチューブの後端と切り離し可能に結合するシートチューブと、
前記シートチューブ及び前記トップチューブそれぞれと回転可能に結合し且つ後方に延びて前記後輪を支持するシートステー部材とを備え、
前記シートチューブは、折り畳み動作により、前記トップチューブの後端から離れて前記トップチューブに対して縦方向に回転可能であって、前記シートチューブの回転に伴い、前記シートステー部材が折れ曲がり、前記後輪と前記シートチューブとの間隔が縮められ、前記後輪が前記前輪に近づくように移動され、
前記後輪の移動に伴い、前記後輪のタイヤ外周面を、後向きに反転させられた前記前輪のフロントハブの一方側に近接又は当接させて、前記前輪は前記後輪に対して傾斜して重ね合わせられて折り畳まれ
後向きに反転させられた前記前輪は、平面視において、前記後輪の幅中心に沿って前後方向に延びる中心線を横切るように前記中心線に対して傾斜して配置されることを特徴とする折り畳み自転車。
【請求項2】
前記シートチューブは、前記トップチューブに設けられた第1の回転軸に対して回転することを特徴とする請求項1に記載の折り畳み自転車。
【請求項3】
前記シートチューブから前方向に延びる第1のヒンジが前記第1の回転軸に軸支されることを特徴とする請求項に記載の折り畳み自転車。
【請求項4】
前記シートステー部材は、その先端が前記トップチューブに設けられる第2の回転軸に軸支される第1のステーと、前記第1のステーの後端に設けられる第3の回転軸に軸支され且つ前記後輪を支持する第2のステーとを有し、前記第1のステーと前記第2のステーは前記第3の回転軸で折れ曲がり可能であることを特徴とする請求項に記載の折り畳み自転車。
【請求項5】
前記第2のステーの先端に、折り畳み状態においてチェーンの緩みを抑制するためのローラが取り付けられることを特徴とする請求項に記載の折り畳み自転車。
【請求項6】
前記シートステー部材は、前記第2のステーから延びる第2のヒンジを有し、前記第2のヒンジが前記シートチューブの下端に設けられる第4の回転軸に軸支されることを特徴とする請求項4又は5に記載の折り畳み自転車。
【請求項7】
前記シートチューブの下端は、前記シートチューブの下端から後方に延びる延長部分を含むことを特徴とする請求項に記載の折り畳み自転車。
【請求項8】
前記トップチューブは、その後端部分が前記シートチューブの周面に当接し、クランプにより前記シートチューブに脱着可能に固定されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の折り畳み自転車。
【請求項9】
前記トップチューブの下面に、折り畳み状態においてシートポストを差し込むための穴部が形成されることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の折り畳み自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳んでコンパクトにすることが可能な折り畳み自転車に関し、簡単な操作で折り畳みが可能であり、特に、折り畳んだ際の奥行き・体積を、従来に比較して極めて小さくすることが可能となる折り畳み自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車を公共の交通機関に乗せて移動するいわゆる輪行において、走行の安定性、快適性などから、16インチ(H/Eサイズ)以上の折り畳み自転車が望ましいが、日本で普及しない大きな阻害要因の1つには、折り畳みの操作が煩雑なこと、折りたたんだ際の、折り畳み形状が大きいこと、特に奥行きの長さによる床面への設置面積が大きいことが大きな要因となっている。
【0003】
市販されている折り畳み自転車の折り畳み構造のほとんどは、メインフレームのトップチューブに折り畳み構造を有し、横方向に折り畳むことで、前後のホイールを重ね合わせて、サイズを縮小するものである。図1は、従来の折り畳み自転車の、折り畳み構造の一例を示す図であり、この図に示したように、前輪と後輪のハブ同士が重なり、フレーム構造部が相互に干渉するために、折り畳んだ際の奥行き、つまり図1おける幅Wは、片軸によるフロントフォーク形状や、市販されている規格外の特殊なハブを使用しない限り、前後のホイールのハブの軸長の合計の長さが従来技術の限界となっている。また、サドルやフレーム構造部が車輪の外周部からはみ出すために、縦・横のサイズが小さくできない限界がある。例えば、非特許文献1、P43〜P44参照において、現在、市販されている英国ブロンプトン社の16インチ(W/Oサイズ)型折り畳み自転車が形状の最も小さい代表例であるが、縦580mm、横585mm、奥行きは300mmであり、また、スポーツ走行ができる折り畳み自転車として代表的な18インチ(H/Eサイズ)型の折り畳み自転車パシフックサイクルズバーティモノコックエアー(非特許文献1、P42)においては、縦600mm、横720mm、奥行きは340mmである。なお、折り畳み自転車の折り畳んだ時の大きさを表す尺度として、外接する立方体の縦・横・奥行きで表すことは広く知られている(非特許文献1参照)。
【0004】
縦横方向のサイズを小さくするためには、乗車姿勢や走行性能に影響するホイルベースを短くしたり、折り畳み機構を複雑化する必要がある。また、奥行き(厚さ)に関して、メインフレームを横に折り畳む構造においては、従来技術では特殊な形状を除いて250mmが限界となっている。さらには、折り畳みの操作には、一般にはシートポスト、ハンドルポスト、フレーム折り畳み部の最低3カ所の固定解除が必要であり、さらなる折り畳み操作の簡易化が求められている。
【0005】
これの課題に対処し、折り畳み後のサイズをより小さくした自転車として、特許文献1には、折り曲げの箇所を2箇所にした折り畳み式自転車が開示されている。しかし、ここに開示されている自転車は、構造の簡略化や奥行きのサイズの点で、なお改善の余地がある。
【0006】
特許文献2には、折り畳む方向を縦方向として、折り畳みの操作を簡略化した折り畳み自転車が開示されている。しかし、ここに開示されている自転車は、折り畳んだ状態の高さ方向のサイズの点で、車載の際の支障となる可能性がある。
【0007】
特許文献3には、折り畳む方向を縦方向として、前後のホイールがハブの中心を外して重なる構造が開示されているが、前後のホイールの側面が密着しておらず、奥行き、折りたたんだ状態の高さ方向のサイズの点で、なお改善の余地がある。
【0008】
特許文献4には、折り畳む方向を縦方向として、前後のホイールが重なる構造が開示されているが、フォークとリアフレームが相互に干渉するため、奥行きのサイズの点で、なお改善の余地がある。
【0009】
特許文献5には、奥行きを小さくする構造として、フォークとリアフレームを片側とすることで、前後のホイールが密着して重なる構造が開示されているが、市販されている一般的なハブが使用できないこと、強度と意匠の点で、なお改善の余地がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】雑誌「折り畳み自転車&スモールバイクカタログ2018」2018年5月10日発行 辰巳出版株式会社
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−238085号公報
【特許文献2】特開2011−162169号公報
【特許文献3】特開2010−194179号公報
【特許文献4】登録実用新案3116838号公報
【特許文献5】特開2011−49068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、簡単な折り畳み操作により縦・横・奥行きのサイズを小さく折り畳むことができる折り畳み自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明の折り畳み自転車は、回転動作により前輪と後輪を重ね合わせて折り畳み可能な折り畳み自転車において、前記前輪を支持するヘッドチューブから後方に延びるトップチューブと、前記トップチューブの後端と切り離し可能に結合するシートチューブと、前記シートチューブ及び前記トップチューブそれぞれと回転可能に結合し且つ後方に延びて前記後輪を支持するシートステー部材とを備え、前記シートチューブは、折り畳み動作により、前記トップチューブの後端から離れて前記トップチューブに対して縦方向に回転可能であって、前記シートチューブの回転に伴い、前記シートステー部材が折れ曲がり、前記後輪と前記シートチューブとの間隔が縮められ、前記後輪が前記前輪に近づくように移動され、前記後輪の移動に伴い、前記後輪のタイヤ外周面を、後向きに反転させられた前記前輪のフロントハブの一方側に近接又は当接させて、前記前輪は前記後輪に対して傾斜して重ね合わせられて折り畳まれ、後向きに反転させられた前記前輪は、平面視において、前記後輪の幅中心に沿って前後方向に延びる中心線を横切るように(中心線の両側にまたがるように)前記中心線に対して傾斜して配置されることを特徴とする。
【0015】
具体的には、前記シートチューブは、前記トップチューブに設けられた第1の回転軸に対して回転し、前記シートチューブから前方向に延びる第1のヒンジが前記第1の回転軸に軸支される。
【0016】
さらに、前記シートステー部材は、その一端が前記トップチューブに設けられる第2の回転軸に軸支される第1のステーと、前記第1のステーの他端に設けられる第3の回転軸に軸支され且つ前記後輪を支持する第2のステーとを有し、前記第1のステーと前記第2のステーは前記第3の回転軸で折れ曲がり可能である。前記第2のステーの先端に、折り畳み状態においてチェーンの緩みを抑制するためのローラが取り付けられる。
【0017】
前記シートステー部材は、前記第2のステーから延びる第2のヒンジを有し、前記第2のヒンジが前記シートチューブの下端に設けられる第4の回転軸に軸支される。前記シートチューブの下端は、前記シートチューブの下端から後方に延びる延長部分を含む。
【0018】
前記トップチューブは、その後端部分が前記シートチューブの周面に当接し、クランプにより前記シートチューブに脱着可能に固定される。前記トップチューブ4の下面に、折り畳み状態においてシートポストを差し込むための穴部が形成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の折り畳み自転車により、両ペダルの脱着とわずか2カ所の折り畳みの操作により折り畳みが可能となり、折り畳み時の大きさは、横辺と奥行きが、重なり合った前輪・後輪の長辺および市販されているリヤハブのほぼ軸長(着脱式ペダルのペダル脱着時)内に収まり、また縦辺もトップチューブとシートチューブが平行に重なり合うことで極めて小さくすることが可能である。具体的には、16インチ型でホイルベースを102cm程度としたとき、縦辺は64cm、横辺は62cm、奥行きは20cm、体積は79、360cm3程度に折り畳みが可能で、床への設置面積は1,240cm2である。18インチ型でホイルベースを102cm程度としたとき、縦辺は70cm、横辺は68cm、奥行きは20cm、体積は95,200cm3程度に折り畳みが可能であり、床への設置面積は1,360cm2である。(英国ブロンプトン社の16インチ型折り畳み自転車においては体積は101、790cm3で床への設置面積は1,755cm2である。パシフックサイクルズバーティモノコックエアーにおいては体積は146,880cm3で床への設置面積は2,448cm2である。)
特に奥行き方向のサイズが極めて小さく、床への設置面積も小さくなるので、公共の交通機関を利用した輪行時の持ち運びやすさが飛躍的に改善される。本発明により、新幹線のフットスペース(縦50cm、横50cm)にも斜めに配置することで収納可能であり、一般的なコインロッカーへの収納も可能となる。また、車載にも適した(リヤシートのフットスペース及び軽自動車の荷台にも収納可能)ものである。更には、折りたたんだ形状で自走もできるので、高層マンションにおけるエレベーターによる移動、屋内での収納にも適したものとなる。このように、簡単な折り畳み操作により、縦・横・奥行きのサイズが極めて小さい折り畳み自転車が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来の折り畳み自転車の折り畳み構造の一例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における折り畳み自転車のフレーム構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における折り畳み自転車のフレームを複数のフレーム部分に分解した状態を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における折り畳み自転車のフレームを畳んだ状態を示す図。各フレーム部分が連動して折り畳まれたフレームを示す図である。
図5】本発明の実施の形態における折り畳み自転車の一例の形態を示す図で、走行可能な状態を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における折り畳み自転車の折り畳み動作及び操作を段階的に示す図である。
図7】本発明の実施の形態における折り畳み自転車の折り畳み動作及び操作を段階的に示す図である。
図8】本発明の実施の形態における折り畳み自転車の折り畳み動作及び操作を段階的に示す図である。
図9】本発明の実施の形態における折り畳み自転車の折り畳み動作及び操作を段階的に示す図である。
図10】本発明の実施の形態における折り畳み自転車の折り畳み動作及び操作を段階的に示す図である。
図11図10の折り畳まれた形態を正面とした場合において、その上方、下方、前方、後方から見た形態を示した図である。
図12図8及び図10に示す側面の反対側面から見た図である。
図13】本発明の実施の形態における折り畳み自転車のクランプ3の構造及びその固定と解除動作を示す図である。
図14】クランプ3の動作を上から見た断面図である。
図15】クランプ3の動作を側面から見た断面図である。
図16】トップチューブ4とシートチューブ14の折り曲げ機構を示す図である。
図17】本発明の折り畳み自転車のフレーム構成を底面から見た図である。
図18】本発明の折り畳み自転車の折り畳み状態における前輪と後輪の重なり位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の実施の形態について、具体的な図に基づいて説明する。
【0022】
図2は、本発明の折り畳み自転車のフレーム構成を示す図であり、図2(a)は斜視図であり、図2(b)は正面図である。図3は、本発明の折り畳み自転車のフレームを複数のフレーム部分に分解した状態を示す図である。図2を参照しつつ、図3に基づいて、折り畳み自転車のフレーム構成について説明する。折り畳み自転車のフレームは、フレーム部分A、B、C、Dを有して構成される。
【0023】
フレーム部分Aは、シートチューブ14、ダウンチューブ15、ボトムブラケット17及びシートチューブ14をトップチューブ4に対して結合部aで回転可能に結合するためのヒンジ5を有して構成される。シートチューブ14の下端部には、後述するヒンジ18が回転可能に結合する結合部dが設けられる。シートチューブ14の下端部は、その下端部から後方に突出して延びる後方延長部14aを含み、結合部dは、その後方延長部14aの先端部分に設けられてもよい。ダウンチューブ15は、シートチューブ14の下端から斜め上前方に延びてヒンジ5と結合する。後方延長部14aはチェーンステーの一部とみなすこともできる。
【0024】
フレーム部分Bは、トップチューブ4及びヘッドチューブ4aを有して構成される。へードチューブ4aからはフロントフォーク9が取り付けられる。フロントフォーク9の前方先端には前輪が取り付けられ、前輪のハブとなる。
【0025】
フレーム部分Cは、後輪を固定するリアフレームの一部としての後側シートステー6b、それをシートチューブ14の後方延長部14aに対して結合部bで回転可能に結合するためのヒンジ18を有して構成される。後側シートステー6bの後方先端には後輪が取り付けられ、後輪のハブとなる。
【0026】
フレーム部分Dは、前側シートステー6aを有して構成され、前側シートステー6aの両端部は、それぞれ結合部cで後側シートステー6bと、結合部dでトップチューブ4と回転可能に結合する。前側シートステー6aは、後側シートステー6bとトップチューブ4を接続し、前側シートステー6a及び後側シートステー6bは、シートステー部材を形成する。折り畳み動作により、前側シートステー6a及び後側シートステー6bは、結合部cで折れ曲がり可能に結合する。
【0027】
フレーム部分A、B、C、Dは、結合部(回転軸)a、b、c、dにおいて回転可能に連結され、折り畳みの動作において、一体となって連動する。本発明において、フレーム部分A、B、C、Dの各部位の形態、結合部a、b、c、dの最適な位置を設定することにより、各フレーム部分の干渉を回避しながら、奥行きを薄くしてコンパクトな折り畳みを可能とする折り畳み構造となる。
【0028】
図4は、本発明における折り畳み自転車のフレームを畳んだ状態を示す図であり、各フレーム部分が連動して折り畳まれた状態を示す。フロントフォーク9の先端部前輪取り付け位置、リアフレームの後輪取り付け位置が最適な位置に配置され、例えば縦方向の長さを640mm、横幅を620mm、奥行きを200mm程度に納めることが可能となる。
【0029】
図5は、本発明における折り畳み自転車の一例の形態を示す図で、走行可能な状態(折り畳まれていない展開状態)を示す。本発明にかかる折り畳み自転車において、シートチューブ14から横方向に延びるヒンジ5は、トップチューブ4の下部と二重構造で密着して重なり、結合部aを中心として回転可能に結合される。トップチューブ4は、その後端すなわちヘッドチューブ4aと反対側端部が、シートチューブ14の周面に当接し、クランプ3によって脱着可能に固定される。クランプ3の構造については後述する。これにより、ダウンチューブ15とシートチューブ14とトップチューブ4とが一体となってメインフレームを構成し、フロントフォーク9を介してフロントホイール10が取り付けられる。また、ハンドルポスト2がヘッドチューブ4aに取り付けられ、さらに、シートポスト1がシートチューブ14に取り付けられる。シートポスト1は、シートクランプ1aによりシートチューブ14に対して抜き差し可能又は伸縮可能にシートチューブに固定される。チェーンリング12及びクランク16がボトムブラケット17を回転軸にしてに取り付けられる。
【0030】
また、後側シートステー6bとヒンジ18が一体となったリアフレームにおいて、ヒンジ18の先端は、フレーム部分Aのシートチューブ14の後方延長部14aに位置する結合部(回転軸)bに回転可能に結合され、後側シートステー6bとヒンジ18の接続部分はリアフレームの結合部(回転軸)cとなり、リアフレームの結合部cとトップチューブ4の結合部(回転軸)dは、前側シートステー6aを介して回転可能に結合され、後側シートステー6bにリアホイール(後輪)11が取り付けられる。なお、リアホイール11は、チェーンリング12とスプロケット13に取り付けられたチェーンにより駆動される。
【0031】
図6乃至図10は、本発明における折り畳み自転車の折り畳み動作及び操作を段階的に示す図である。図5に示した走行可能な状態から、まず、図6に示すように、クランプ3の固定を解除し、シートチューブ14をトップチューブ4との結合から解放し、縦方向に回転することで、トップチューブ4とシートチューブ14の当接面での固定が解除され、ヒンジ部5が結合部aを軸にトップチューブ4に対して回転しながら、縦方向に折れ曲がり、トップチューブ4とシートチューブ14は切り離される。また、この動作と連動し、トップチューブ4との結合部bと後側シートステー6bとの結合部cに回転可能に取り付けられた前側シートステー6aの回転動作を介して、リアフレームすなわち後側シートステー6bに取り付けられたリアホイール11がシートチューブ14側に近づく動作が行われる。また、この回転動作により、トップチューブ4の下部に二重構造に重なっていたヒンジ5も、結合部aを軸に回転し、トップチューブ4との重なりが外れるように回転し、図7に示すように、リアホイール11とシートチューブ14との間隔が縮められ、リアホイール11はシートチューブ14と接するほど接近した状態まで折り畳まれる。なお、シートポスト1は、シートクランプ1aの解除によりシートチューブ14に対して伸縮自在となる。
【0032】
図16は、トップチューブ4とシートチューブ14の折り曲げ機構を示す図(透視図)である。トップチューブ4は、図5の展開状態では、その端部がシートチューブ14の周面に当接して、クランプ3により固定される。また、ヒンジ5は、トップチューブ4の下部と重なり合って密着している。図6の折り畳み状態において、クランプ3の固定を解除することで、ヒンジ5は結合部aを軸に回転しながら、トップチューブ4はシートチューブ14から切り離され、縦方向に折り曲がる。また、トップチューブ4の結合部bと後側リアステー6bの結合部cに回転可能に取り付けられた前側シートステー6aを介して、後側リアステー6bに取り付けられた後輪11がシートチューブ14に接近する動作が行われる。トップチューブ4とシートチューブ14を互いに切り離す操作は、クランプ3による固定解除後に、トップチューブ4側及びシートチューブ14側の少なくともどちらか一方を縦方向に回転させればよい。
【0033】
トップチューブ4側又はシートチューブ14側の回転動作により、シートポスト1は、トップチューブ4の下側まで回転する。トップチューブ4の下面には、折り畳み状態においてシートポスト1を差し込むための穴部4bが形成されており、図8(a)に示すように、シートポスト1をシートチューブ14に対して縮めるように押し込むことで、シートポスト1の下端部を、内部が空洞のトップチューブ4に設けられる穴部4bに嵌合させる。この操作により、トップチューブ4とシートチューブ14とは折畳状態で固定され、折り畳んだ状態でのホイールを回転させて移動が可能となる。
【0034】
図17は、本発明の折り畳み自転車のフレーム構成を底面から見た図であり、トップチューブ4の下面側に穴部4bが設けられる。また、図12(a)は、図8(a)に示す側面の反対側面から見た図である。また、図8(a)に示す折り畳み操作の途中段階において、折り畳み自転車は、自走可能な形態となっている。
【0035】
図8(b)は、図8(a)の部分拡大図であって、この折畳状態におけるチェーン19の配置について詳細に示した図である。チェーンリング12と後側シートステー6bとの間隔も縮まり、後側シートステー6bの先端部に取り付けられたローラ6cにチェーン19が挟み込まれて配置される構造である。ローラ6cは回転軸cの近傍に配置され、ローラ6cにより、チェーン19の回転が可能となり、折り畳み状態におけるチェーン19の緩みが解消される。
【0036】
図9は、フロントホイール(前輪)10を後ろ向きに回転し、リアホイール(後輪)11と重ね合わせる段階を示した図である。図18に示すように、後輪11のタイヤ外周面を前輪10のフロントハブの一方側に近接又は当接させ、後輪11に対して前輪10は約25度傾斜して重ね合わせられて折り畳まれる。前輪10と後輪11のハブ同士の幅方向の位置を最大限に近づけることができ、前輪10と後輪11が重なり合った幅方向長さ(厚さ)を極限まで短く(薄く)することができる。
【0037】
図10は、ハンドルポスト2を折り畳むことで、折り畳み操作のすべてが完了し、持ち運びや車載に適したコンパクトな折り畳みの最終形態を示した図である。また、図12(b)は、図10に示す側面の反対側面から見た図である。
【0038】
図11は、図10の図を正面とした場合において、その上方、下方、前方、後方から見た形態を示した図である。
【0039】
図13(a)〜(c)は、本発明にかかる折り畳み自転車のシートポスト1、トップチューブ4及びシートチューブ14を一カ所で固定するクランプ3の構造及びその固定と解除動作を示す図である。また、図14(a)〜(c)は、クランプ3の動作を上から見た断面図であり、それぞれ図13(a)〜(c)に対応する。クランプ3は、シートクランプ1aと一体的もしくは隣接して形成され、シートチューブ14の外周に回転可能に取り付けられ、シートクランプ1aの締めを解除することで、シートチューブ14の締め付けを解除し、クランプ3を左右に回転させることで、トップチューブ4とシートチューブ14のヒンジ5の固定を解除する。
【0040】
図15(a)、(b)はクランプ3の動作を側面から見た断面図である。図15(a)は固定された状態を示し、図15(b)は解除された状態を示す。シートチューブ14の外周を回転可能に取り付けられ、トップチューブ4の先端の固定用の爪(フランジ)4cを挟み込み回転することにより固定と解除が行われる。上述の図16は、クランプ3による固定が解除され、トップチューブ4とシートチューブ14が折り曲げられた状態を斜めから見た透視図である。
【0041】
なお、前側シートステー6aは、内部にゴムクッションを取り付けることで、サスペンションの役割を果たすようにしてもよい。
【0042】
図18は、本発明の折り畳み自転車の折り畳み状態における前輪と後輪の重なり位置を示す図である。本発明の折り畳み自転車は、前輪10と後輪11を重ね合わせる縦折の折り畳み自転車であって、奥行きを小さく(薄く)する構造として、図18に示すように、後輪の中心を通る直線(中心線)Lの線上にヘッドチューブ位置P(ヘッドチューブの平面視における投影面)が設定され、縦方向に折り畳むことで、前輪と後輪を約25度ずらしながら前輪・後輪をその中心部であるハブの位置に極限まで近づけて重ね合わせて配置すことを可能とする。後向きに反転させられた前輪は、平面視において、後輪の幅中心に沿って前後方向に延びる中心線Lを横切るように(中心線Lの両側にまたがるように)中心線Lに対して傾斜して配置される。折り畳み状態において、奥行きを概ねリヤハブの軸長(市販のスプロケットが装着できるリヤハブを使用して外装変速機を有する)内である約200mm内(脱着式ペダルを使用し、ペダルをはずした状態)、例えば縦横幅を約620mm(16インチのタイヤの外径である395mmから重ねた長さを設定)に納め、また、フレーム、ハンドル、ハンドルポスト、シート、シートポスト、クランクなどのすべての構造物を、おおよそ当該寸法の四角形の中にはみ出さずに納めることが可能とする。
【0043】
本発明の折り畳み自転車は、トップチューブ4とシートチューブ14に、二重構造で回転可能に密着する折り畳み機構のヒンジ5を有し、結合部aを中心に回転することで、トップチューブ4とシートチューブ14が切り離れ、図17で示された位置に前輪と後輪が約25度の開きで重なり合って配置される。
【0044】
ヒンジ5は、シートチューブ14とダウンチューブ15とともに三角形構造を形成し、シートチューブ14とダウンチューブ15の共通する下端部にはボトムブラッケット17が形成され、ヒンジ5とトップチューブ4が二重構造で密着した状態で固定されることで一体化し、メインフレームを構成する。
【0045】
また、リアフレームを形成する後側リアステー6bは、その前側先端の結合部cが設けられる部分から延びるヒンジ18を有し、ヒンジ18は、シートチューブ14の後方延長部に設けられる結合部bに回転可能に取り付けられ、結合部cと結合部dを接続する前側シートステー6aの回転とともに、折り畳み動作において、トップチューブ4がシートチューブ14と切り離れて回転する動作と連動しながら、後側リアステー6bがシートチューブ14側に近接し、前輪と後輪の車輪が図17で示した位置に配置される。すべての構造物が、干渉せずに、前後のハブに接して重なり合った両輪の長辺およびクイックリリースを使用したリアハブの軸長(着脱式ペダルを使用しペダル脱着時)の幅内に集約することで、折り畳み時の奥行き、および体積が極めて小さくすることが可能となることを特徴とする折り畳み構造である。
【0046】
また、本発明は、ハンドルを前輪に折り重ねる従来の折り畳み構造とシートポストが差し込まれるシートチューブ14にクランプ3が一体的に形成され、シートポストの固定と解除、また、クランプ3を回転させることで、トップチューブ4とシートチューブ14の固定と解除を可能にし、さらにヒンジ5の結合部aを軸とした回転を可能とし、わずか2カ所の固定部を解除することで、部品の着脱もなく、折り畳むことを可能とする。
【0047】
以上に説明したように、本発明によれば、従来に比較して折り畳んだ形態のサイズが極めて小さい薄型の折り畳み自転車が提供でき、輪行の普及、更には、折り畳んだ形態での自走も可能であり、高層マンションにおけるエレベーターによる移動、屋内での収納にも適したものとなり、自転車の用途拡大に寄与するところは大きいと言える。
【0048】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1:シートポスト、1a:シートクランプ、2:ハンドルポスト、3:クランプ、4:トップチューブ、4a:ヘッドチューブ、4b:穴部、4c:爪、5:ヒンジ、6a:前側シートステー、6b:後側シートステー、6c:ローラ、9:フロントフォーク、10:フロントホイール(前輪)、11:リアホイール(後輪)12:チェーンリング、13:スプロケット、14:シートチューブ、14a:後方延長部、15:ダウンチューブ、16:クランク、17:ボトムブラケット、18:ヒンジ、19:チェーン、a:結合部(回転軸)、b:結合部(回転軸)、c:結合部(回転軸)、d:結合部(回転軸)
【要約】
【課題】簡単な折り畳み操作により縦・横・奥行きのサイズを小さく折り畳むことができる折り畳み自転車を提供する。
【解決手段】回転動作により前輪と後輪を重ね合わせて折り畳み可能な折り畳み自転車は、前輪を支持するヘッドチューブから後方に延びるトップチューブと、トップチューブの後端と切り離し可能に結合するシートチューブと、シートチューブ及びトップチューブそれぞれと回転可能に結合し且つ後方に延びて後輪を支持するシートステー部材とを備え、シートチューブは、折り畳み動作により、トップチューブから切り離されるとトップチューブに対して縦方向に回転可能であって、シートチューブの回転に伴い、シートステー部材が折れ曲がり、後輪とシートチューブとの間隔が縮められ、後輪が前輪に近づくように移動され、後輪の移動に伴い、後輪のタイヤ外周面を、後向きに反転させられた前輪のフロントハブの一方側に近接又は当接させて、前輪は後輪に対して傾斜して重ね合わせられて折り畳まれる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17
図18