(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877087
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/76 20060101AFI20210517BHJP
A01D 34/30 20060101ALI20210517BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20210517BHJP
【FI】
A01D34/76 E
A01D34/30 Z
A01D34/64 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-222214(P2015-222214)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2017-86001(P2017-86001A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年12月22日
【審判番号】不服2020-3950(P2020-3950/J1)
【審判請求日】2020年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛和
(72)【発明者】
【氏名】小池 和生
【合議体】
【審判長】
住田 秀弘
【審判官】
袴田 知弘
【審判官】
長井 真一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−218951(JP,A)
【文献】
特開2008−265685(JP,A)
【文献】
特開2009−195206(JP,A)
【文献】
特開2004−350630(JP,A)
【文献】
特開2013−192512(JP,A)
【文献】
特開2015−136305(JP,A)
【文献】
特開2010−35491(JP,A)
【文献】
実開平5−19(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/412-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前後方向に延びたフレームユニットと、
機体横断方向で前記フレームユニットから突き出しているとともに昇降機構を介して前記フレームユニットに支持されているモーアデッキと、
互いに間隔をあけて機体横断方向で順に並んでいるとともに前記モーアデッキの天壁を貫通して上方に延びている第1回転軸と第2回転軸と第3回転軸と、
前記モーアデッキの内部で前記第1回転軸と前記第2回転軸と前記第3回転軸とに取り付けられている刈刃と、
平面視で前記刈刃の回転軌跡の外側に配置されている電気モータと、
前記電気モータから上方に延びている前記電気モータの出力軸と、
前記出力軸から前記第1回転軸に動力を伝達するために前記モーアデッキの天壁の上方を延びている第1動力伝達体と、
前記第1回転軸から前記第2回転軸に動力を伝達するために前記モーアデッキの天壁の上方を延びている第2動力伝達体と、
前記第2回転軸から前記第3回転軸に動力を伝達するために前記モーアデッキの天壁の上方を延びている第3動力伝達体と、を備え、
前記第1回転軸は、機体前後方向に延びた左フレームの機体横断方向における外側に位置し、前記第3回転軸は、機体前後方向に延びた右フレームの機体横断方向における外側に位置しており、前記モーアデッキは、前記モーアデッキの天壁の外周縁から下方に延びた側壁を備え、前記側壁から外側に延びた装着台が設けられ、
前記側壁の後方領域は、平面視で、刈刃の回転軌跡に沿うように形成された複数の円弧部と当該円弧部に挟まれた直線部とによって囲まれた空間であり、複数の前記円弧部は前記直線部から後方へ延出され、
前記電気モータは前記空間における前記装着台の上面に、前記電気モータに電力を供給するインバータ部と隣り合うように配置され、
前記電気モータと前記円弧部とが側面視で重複している草刈機。
【請求項2】
前記第1動力伝達体と前記第2動力伝達体と前記第3動力伝達体とは水平配置されており、前記第1動力伝達体の前記モーアデッキからの高さは前記第3動力伝達体の前記モーアデッキからの高さと同じである請求項1に記載の草刈機。
【請求項3】
前記第1動力伝達体と前記第2動力伝達体と前記第3動力伝達体とはベルトである請求項1または2に記載の草刈機。
【請求項4】
前記電気モータの出力軸と前記第1回転軸と前記第2回転軸のそれぞれの上端から、前記フレームユニットまでの距離が同じである請求項1から3のいずれか一項に記載の草刈機。
【請求項5】
前記電気モータは、前記モーアデッキの天壁の外側で、前記モーアデッキに固定されている請求項1から4のいずれか一項に記載の草刈機。
【請求項6】
前記電気モータの下方端部に前記モーアデッキに対する装着面が形成されており、前記装着面は前記天壁より対地高さが低い請求項5に記載の草刈機。
【請求項7】
前記装着台に前記電気モータの装着面が熱伝導可能に接触する被装着面が形成されている請求項6に記載の草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
昇降機構を介して対地高さ変更可能に機体に取り付けられたモーアデッキと、このモーアデッキの内部に配置された刈刃を回転させる回転軸に動力を与える電気モータとを備えた草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1による車両は、モーアデッキと、モーアデッキに横並びで支持され垂直方向に延びる回転軸と、この回転軸の下端に固定された刈刃とを備えている。モーアデッキの上壁面で、2つの回転軸の間に電気モータが横置きされている。電気モータの出力軸は、電気モータの両側から各回転軸に向かって水平に延びている。出力軸と回転軸とはベベルギヤで連結されており、電気モータの駆動により、刈刃が回転する。このような構成を、昇降機構を介して対地高さ変更可能に機体に取り付けられたモーアデッキを備えたモーアに採用した場合、電気モータ及びベベルギヤがモーアデッキの天壁から上方で大きなスペースを占めていることから、電気モータ及びベベルギヤと機体との間の隙間が少なく、モーアデッキの対地高さを十分に確保することが困難である。十分なモーアデッキの対地高さ(昇降ストローク)を確保するため、機体の高さを高くすれば、機体の重心が高くなるという不都合が生じる。
【0003】
特許文献2によるローントラクタ(芝刈機)は、3つの並設された刈刃を配置しているモーアデッキを備えている。中央の刈刃を下端に取り付けている中央回転軸の上端は、電気モータの出力軸に連結されている。左側の刈刃を取り付けている左回転軸及び右側の刈刃を取り付けている右回転軸はそれぞれ、中央回転軸からベルト伝動を介して動力を受けている。電気モータはモーアデッキにおける最も高い位置に配置されている。電気モータに電力を供給するコントローラは、モーアデッキの天壁上で中央回転軸と左回転軸と右回転軸とで囲まれた領域に配置され、地上高さは、電気モータよりは低い。このローントラクタにおいても、中央回転軸の上端に電気モータが配置されているので、電気モータと機体との間の隙間が少なく、モーアデッキの対地高さを十分に確保することが困難である。
【0004】
特許文献3による電動芝刈機は、3つの並設された刈刃を配置しているモーアデッキを備えている。全ての刈刃の回転軸の上端に電気モータが配置されており、各電気モータへの給電は、機体に搭載されたインバータとバッテリとからなる給電システムによって行われる。この電動芝刈機においても電気モータと機体との間の隙間が少なく、モーアデッキの対地高さを十分に確保することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8042322号明細書
【特許文献2】米国特許第8191343号明細書
【特許文献3】米国特許第8572939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のモーアデッキでは、刈刃の回転軸の上方に、ギヤ機構や電気モータなどの高さのある刈刃駆動機器が配置されているので、モーアデッキの昇降ストロークを十分に確保することが困難であった。このことから、モーアデッキの昇降ストロークを十分に確保できるように、モーアデッキと機体のフレームとの間に十分なスペースが確保される草刈機が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく草刈機の1つは、機体前後方向に延びたフレームユニットと、機体横断方向で前記フレームユニットから突き出しているとともに昇降機構を介して前記フレームユニットに支持されているモーアデッキと、互いに間隔をあけて機体横断方向で順に並んでいるとともに前記モーアデッキの天壁を貫通して上方に延びている第1回転軸と第2回転軸と第3回転軸と、前記モーアデッキの内部で前記第1回転軸と前記第2回転軸と前記第3回転軸とに取り付けられている刈刃と、平面視で前記刈刃の回転軌跡の外側に配置されている電気モータと、前記電気モータから上方に延びている前記電気モータの出力軸と、前記出力軸から前記第1回転軸に動力を伝達するために前記モーアデッキの天壁の上方を延びている第1動力伝達体と、前記第1回転軸から前記第2回転軸に動力を伝達するために前記モーアデッキの天壁の上方を延びている第2動力伝達体と、前記第2回転軸から前記第3回転軸に動力を伝達するために前記モーアデッキの天壁の上方を延びている第3動力伝達体とを備え、前記第1回転軸は、機体前後方向に延びた左フレームの機体横断方向における外側に位置し、前記第3回転軸は、機体前後方向に延びた右フレームの機体横断方向における外側に位置しており、前記モーアデッキは、前記モーアデッキの天壁の外周縁から下方に延びた側壁を備え、前記側壁から外側に延びた装着台が設けられ、前記側壁の後方領域は、平面視で、刈刃の回転軌跡に沿うように形成された複数の円弧部と当該円弧部に挟まれた直線部とによって囲まれた空間であり、複数の前記円弧部は前記直線部から後方へ延出され、前記電気モータは前記空間における前記装着台の上面に、前記電気モータに電力を供給するインバータ部と隣り合うように配置され、前記電気モータと前記円弧部とが側面視で重複している。
【0008】
この構成では、電気モータは複数の刈刃の回転軌跡の外側となるので、刈刃空間に横並びの位置まで下げて、配置することができる。これにより、電気モータが、フレームユニットの下面と干渉することによる、モーアデッキの昇降ストロークの制限は抑制される。
さらに、この構成では、機体横断方向で第2回転軸が中央に、第1回転軸が第2回転軸の横一方側、第3回転軸が第2回転軸の横他方側に配置される。その際、それぞれに取り付けられた刈刃の回転軌跡が機体前後方向(機体走行方向)で互いにオーバーラップするように配置することで、刈残しのない刈幅が得られる。なお、単一の電気モータによって刈刃を回転駆動させる場合、電気モータの回転を、中央に位置する第2回転軸に伝達し、第2回転軸から第1回転軸及び第3回転軸に分配した場合、第2回転軸に設けられる動力分配機器が大きくなる。その結果、第2回転軸の上端からフレームユニットまでの距離が短くなり、モーアデッキの昇降ストロークが十分に取れないという不都合が生じる。しかしながら、上記構成では、電気モータの回転を、機体横断方向で外側に位置する第1回転軸に伝達し、第1回転軸から第2回転軸へ、さらに第2回転軸から第3回転軸に動力が受け渡されるので、第1回転軸及び第2回転軸に設けられる動力分配機器の大きさが限定的なものとなる。その結果、モーアデッキの昇降のために比較的大きな空間が確保できる。
【0009】
好ましくは、ベルトやチェーン等によって構成される前記第1動力伝達体と前記第2動力伝達体と前記第3動力伝達体とが水平配置され、前記第1動力伝達体の前記モーアデッキからの高さは前記第3動力伝達体の前記モーアデッキからの高さと同じように、配置することが好ましい。この配置では、電気モータの回転を刈刃に伝達する動力伝達体が必要とするモーアデッキ上高さは実質的に動力伝達体2つ分の高さとなり、モーアデッキの必要昇降ストロークの確保が容易となる。
【0010】
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による草刈機に搭載されている3枚刈刃のモーアユニットの基本構造を模式的に示す斜視図である。
【
図2】刈刃の回転軌跡に対する電気モータとの位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図3】草刈機の実施形態の1つであるミッドマウント型乗用電動草刈機の側面図である。
【
図4】ミッドマウント型乗用電動草刈機の平面図である。
【
図7】モーアユニットと機体フレームとの隙間を示す側面図である。
【
図8】草刈機の電気系統及び動力系統を説明する説明図である。
【
図9】モーアユニットの別実施形態である2枚刈刃のモーアユニットの基本構造を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による草刈機の具体的な実施形態を説明する前に、
図1と
図2を用いて、この草刈機に搭載されているモーアユニット3の基本構造を説明する。
図1はモーアユニット3を模式的に示している斜視図である。
図2は、刈刃20の回転軌跡に対する電気モータ4との位置関係を模式的に示す平面図である。モーアユニット3のモーアデッキ30は
図1では図示されていない昇降機構によって機体から吊り下げられている。
【0013】
なお、この明細書において、機体前後方向は、機体の走行方向に沿って水平方向に延びる機体中心軸(機体長手軸とも称する)の方向であり、機体横断方向(単に横方向とも称する)とは、機体中心軸に直交して水平方向に延びる方向である。「前(前方)」は機体前後方向で前進側を意味し、「後(後方)」は機体前後方向で後進側を意味する。「左(左側)」は、機体前進方向を向いて左を意味し、「右(右側)」は、機体前進方向を向いて右を意味する。
【0014】
モーアユニット3を構成するモーアデッキ30は天壁31と側壁32を有し、地面に対して開口している内部空間を作り出す。この内部空間に3つの刈刃20が収容されている。各刈刃20は、モーアデッキ30の天壁31を貫通して上方に、実質的には鉛直方向に延びている第1回転軸21、第2回転軸22、第3回転軸23の下端に取り付けられている。
図1の例では、第1回転軸21が機体の左側、第2回転軸22が機体のほぼ中央、第3回転軸23が機体の右側に位置しており、隣り合う刈刃20の回転軌跡は、わずかにオーバーラップしており、3つの刈刃20の横方向に連続した回転軌跡がこの草刈機の刈幅となる。より詳しくは、機体横断方向で中央位置する刈刃20が左側の刈刃20及び右側の刈刃20より機体前進方向に突き出している。言い換えれば、第2回転軸22が左側の第1回転軸21及び右側の第3回転軸23より機体前後方向で前方に突き出している。これにより、モーアデッキ30の内部空間において、平面視で3枚の刈刃20の回転軌跡の外側、特に機体後方にデッドスペースが作り出される。このデッドスペースは、
図2で示されているように、平面視で中央の刈刃20の回転軌跡の後方で左側の刈刃20の回転軌跡の右側で右側の刈刃20の回転軌跡の左側に位置している。
【0015】
図1の例では、このデッドスペースにモーアデッキ30の側壁32をくい込ませることで、モーアデッキ30の中央後部に作り出される有用空間USに、電気モータ4が配置される。電気モータ4は、その出力軸41が上方、実質的には鉛直方向を向く姿勢で配置されている。その際、電気モータ4の出力軸41はモータハウジング40の上面から上方に突き出している。
【0016】
この出力軸41から、第1回転軸21、第2回転軸22、第3回転軸23への回転動力の伝達は、以下のように行われる。まず、電気モータ4の上方及びモーアデッキ30の天壁31の上方を延びている第1動力伝達体71によって、出力軸41から第1回転軸21に動力が伝達される。次いで、モーアデッキ30の左側の天壁31の上方を機体横断方向に延びている第2動力伝達体72によって、第1回転軸21から第2回転軸22に動力が伝達される。さらに、モーアデッキ30の右側の天壁31の上方を機体横断方向に延びている第3動力伝達体73によって、第2回転軸22から第3回転軸23に動力が伝達される。
【0017】
第1動力伝達体71、第2動力伝達体72、第3動力伝達体73が、チェーンやベルトなどで構成される場合、出力軸41には出力プーリ412が、第1回転軸21には入力プーリ211と出力プーリ212が、第2回転軸22には入力プーリ221と出力プーリ222が、第3回転軸23には入力プーリ231が取り付けられる。第1動力伝達体71が出力プーリ412と入力プーリ211との間に掛け回され、第2動力伝達体72が出力プーリ212と入力プーリ221との間に掛け回され、第3動力伝達体73が出力プーリ212と入力プーリ221との間に掛け回される。この構成では、第1回転軸21と第2回転軸22とに、2つのプーリが取り付けられるので、その2つのプーリの厚さ分が、モーアデッキ30の天壁31からの突き出し高さとなる。
図1の例では、第1回転軸21では、入力プーリ211が出力プーリ212の上側に配置され、第2回転軸22では、出力プーリ222が入力プーリ221の上側に配置されている。また、出力プーリ412は入力プーリ211と同じ高さになるように出力軸41に取り付けられている。これにより、第1動力伝達体71、第2動力伝達体72、第3動力伝達体73は、互いに平行で水平に延び、安定した動力伝達が可能なる。また、出力軸41、第1回転軸21、第2回転軸22、第3回転軸23のそれぞれの上端の地上高さは、ほぼ同じとなっている。
【0018】
電気モータ4は、有用空間US内でモーアデッキ30に固定された装着台34に縦置き(出力軸41が鉛直方向に延びる姿勢)で取り付けられる。このためモータハウジング40の下面はモータ装着面401として形成されている。その際、装着台34に形成された第1被装着面341にモータ装着面401が熱伝導可能に接触する。これにより、刈刃20による刈草搬送風によって冷却されるモーアデッキ30が、電気モータ4のヒートシンクとして機能する。特に、モーアデッキ30の内部空間の後部は刈刃20による搬送風流量が大きく、その側壁部分の冷却効果が高いので、当該側壁部分と装着台34とが熱伝導可能に接続されていると好都合である。
【0019】
図1の例では、電気モータ4に電力を供給する電力供給ユニット5の構成要素の1つであるインバータ部50も装着台34に取り付けられる。装着台34に形成された第2被装着面342にインバータ部50のインバータ装着面501が熱伝導可能に接触するように、インバータ部50は固定されている。したがって、モーアデッキ30は、インバータ部50のヒートシンクとしても機能可能である。インバータ部50は、一方では電気モータ4と接続され、他方では電力供給ユニット5の構成要素の1つであるバッテリ51と電力ケーブルを介して接続されている。別形態では、インバータ部50は、機体側に固定される。
【0020】
次に、図面を用いて、本発明による草刈機の具体的な実施形態の1つを説明する。
図3は、草刈機の一例であるミッドマウント型乗用電動草刈機の側面図であり、
図4は、その平面図である。
【0021】
この草刈機は、機体10の基本構造体であるフレームユニット9を備えている。このフレームユニット9は、機体前後方向に延びた左フレーム91及び右フレーム92と、これらを連結する複数のクロスフレーム93とを含む。フレームユニット9は、遊転自在なキャスタ型の左前車輪1a及び右前車輪1bとからなる前車輪ユニット1と、左後車輪2a及び右後車輪2bとからなる駆動輪ユニット2とによって対地支持される。フレームユニット9の後部には、バッテリ51が配置され、バッテリ51の前方に運転座席11が配置されている。運転座席11の後方から転倒保護フレーム12が立設されている。さらに、モーアユニット3が、前車輪ユニット1と駆動輪ユニット2との間でフレームユニット9の下方空間に昇降機構13としての昇降リンク機構を介して昇降可能にフレームユニット9から吊り下げられている。
【0022】
運転座席11の前方には運転者の足載せ場であるフロアプレートが設けられており、そこからブレーキペダル14が突き出している。運転座席11の両側には、機体横断方向の水平揺動軸回りに揺動する左操縦レバー15aと右操縦レバー15bとからなる操縦ユニット15が配置されている。さらに、運転座席11の周辺には、図示されていないが、刈刃操作レバー、モーアユニット昇降ペダルなどの操作具が配置されている。
【0023】
モーアユニット3は、
図1と
図2とを用いて説明した基本構造に準拠している。モーアユニット3は、
図5、
図6に示すように、3枚刈刃(ブレード)のサイドディスチャージタイプであり、モーアデッキ30と、3枚の回転式の刈刃20が備えられている。モーアデッキ30は、天壁31とこの天壁31の外周縁から下方に、この実施形態では外周縁から垂直下方に延びた側壁32を備えている。側壁32は、天壁31の前側の外周縁から下方に延びた前側壁321と後側の外周縁から下方に延びた後側壁322からなる。側壁32の右端領域は欠如されており、刈草排出口を形成している。
【0024】
後側壁322は、平面視で、隣接する3枚の刈刃20の回転軌跡に沿うように、左右2つの円弧部3321とその円弧を直線的に接続する直線部3322とからなる形状を有する。後側壁322の後方領域である、2つの円弧部3321と直線部3322との間に作り出される空間は、有用空間USとして利用される。この実施形態では、有用空間USに、刈刃モータとして機能する縦置きの電気モータ4及びこの電気モータ4に電力を供給するインバータ部50が配置される。このため、有用空間USには、天壁31より、ほぼ電気モータ4の高さ分だけ低くなったサブデッキが装着台34として設けられている。
【0025】
装着台34は、後側壁322から外側に延びており、後側壁322の左側の円弧部3321と右側の円弧部3321とを連結するロッド状の支持枠343と、支持枠343と後側壁322の直線部3322とを接続するブリッジプレート344とからなる。さらに、プレート状の装着ブラケット345が支持枠343とブリッジプレート344とに接合されている。この装着ブラケット345には、互いに段差を持って水平に延びた第1被装着面341と第2被装着面342とが形成されている。電気モータ4は、円筒状のモータハウジング40とモータハウジング40から上方に、この実施形態では垂直上方に延びた出力軸41を備えている。モータハウジング40の下方端部にはモータ装着面401が形成されており、このモータ装着面401は、電気モータ4の装着台34への装着の際に、第1被装着面341と面接触する。インバータ部50も長方形状のハウジングの下面にインバータ装着面501を形成しており、インバータ部50の装着台34への装着の際に、このインバータ装着面501が第2被装着面342と面接触する。これにより、鋼板製の装着台34を含むモーアデッキ30全体が電気モータ4及びインバータ部50のヒートシンクとして機能する。
【0026】
各刈刃20は、機体横断方向で左から横並びしている、第1回転軸21、第2回転軸22、第3回転軸23の下端領域に固定されている。第1回転軸21、第2回転軸22、第3回転軸23は、天壁31を貫通して、モーアデッキ30の天壁31から突き出している。
【0027】
電気モータ4の出力軸41の上端領域には、出力プーリ412が取り付けられている。
第1回転軸21の上端領域には、入力プーリ211と出力プーリ212とが、入力プーリ211が上側となる二段重ねで取り付けられている。第2回転軸22の上端領域には、入力プーリ221と出力プーリ222とが、入力プーリ211が下側となる二段重ねで取り付けられている。第3回転軸23の上端領域には、入力プーリ231が取り付けられている。
【0028】
出力プーリ412と入力プーリ211は同じ対地高さであり、それらに第1ベルト(第1動力伝達体71の一例)が水平に掛けられている。同様に、出力プーリ212と入力プーリ221は同じ対地高さであり、それらに第2ベルト(第2動力伝達体72の一例)が水平に掛けられ、出力プーリ222と入力プーリ231は同じ対地高さであり、それらに第3ベルト(第3動力伝達体73の一例)が水平に掛けられている。これにより、
図7に示すように、電気モータ4から刈刃20への動力伝達を行うベルトなどの構成部材は、モーアデッキ30の天壁31の上面に比較的平坦に配置されており、このことは、モーアデッキ30の昇降ストロークの十分な確保に貢献している。入力プーリ221と出力プーリ222とを含む第2回転軸22の上端領域は、フレームユニット9の真下に位置するにもかかわらず、当該上端領域とフレームユニット9との間に十分な隙間(
図7で斜線で示されている)が形成されている。なお、図では、電気モータ4、インバータ部50、さらには、電気モータ4から刈刃20への動力伝達を行うベルトなどの構成部材は露出しているが、実際には、それぞれ、ここでは図示されていないカバーによって覆われる。
【0029】
第1回転軸21、第2回転軸22、第3回転軸23は、ベアリングを用いて天壁31に回転可能に支持されている。また、
図6に示すように、帯板状の刈刃20の両端部に切断刃先20aが形成されており、さらに各切断刃先の背後側に形成された起風羽根20bが形成されている。草刈り作業時には、刈刃20が回転しながら草刈機が走行することで刈刃20によって切断処理された刈草は、刈刃20の起風羽根20bによって発生した搬送風により、モーアデッキ30内のバッフルプレートに案内されてモーアデッキ30の内部を通り抜けて、排出口からモーアデッキ30の横外側に放出される。
【0030】
図8に示すように、左後車輪2aと右後車輪2bとをそれぞれ回転駆動する電気モータである左モータ81と右モータ82が装備されている。左モータ81と右モータ82はそれぞれ独立的に走行用インバータ部52を介して供給される電力量によってその回転速度が変化する。これにより、左後車輪2aと右後車輪2bの回転速度を相違させることができ、この左右後車輪速度差によって草刈機の方向転換が行われる。なお、この実施形態では、左モータ81と左後車輪2aとの間及び右モータ82と右後車輪2bとの間の動力伝達のために、それぞれ走行駆動機構53が設けられている。左モータ81と右モータ82とがインホイールモータである場合、走行駆動機構53を省略することが可能である。走行のための左モータ81と右モータ82、刈刃モータである電気モータ4への給電制御は、ECUとも呼ばれるコントローラ6によって行われる。
【0031】
〔別実施の形態〕(1)上述した実施形態では、モーアユニット3は、3枚刈刃(ブレード)のサイドディスチャージタイプであったが、その他のタイプのモーアユニット3を採用することも可能である。
図9には、その他のタイプのモーアユニット3として、2枚刈刃(ブレード)サイドディスチャージタイプが示されている。この別実施形態では、モーアデッキ30の内部空間に2つの刈刃20が機体横断方向で横並び配置されている。各刈刃20は、第1回転軸21と第2回転軸22の下端に取り付けられている。第1回転軸21が左フレーム91から左側に離れて位置しており、第2回転軸22は右フレーム92のほぼ下方に位置している。電気モータ4の出力軸41は左フレーム91と右フレーム92との間の下方に位置している。電気モータ4の上方及びモーアデッキ30の天壁31の上方を延びている第1動力伝達体71によって、出力軸41から第1回転軸21に動力が伝達される。さらに、モーアデッキ30の左側の天壁31の上方を機体横断方向に延びている第2動力伝達体72によって、第1回転軸21から第2回転軸22に動力が伝達される。ここでも、第1動力伝達体71及び第2動力伝達体72としてベルトが採用されている。出力軸41には出力プーリ412が、第1回転軸21には入力プーリ211と出力プーリ212が、第2回転軸22には入力プーリ221が取り付けられている。第1動力伝達体71が出力プーリ412と入力プーリ211との間に掛け回され、第2動力伝達体72が出力プーリ212と入力プーリ221との間に掛け回されている。この構成では、第1回転軸21に2つのプーリが取り付けられるので、第1回転軸21は第2回転軸22よりモーアデッキ30の天壁31からの突き出しが大きくなる。しかしながら、第1回転軸21は、左フレーム91からさらに左側に離れているので、モーアデッキ30を上昇させても、入力プーリ211及び出力プーリ212がフレームユニット9に干渉することはない。また、電気モータ4の配置は、刈刃20の配置とは無関係に配置することができるので、電気モータ4の出力軸41がモーアデッキ30の上昇時にフレームユニット9と干渉しない位置に配置することは容易である。
(2)上述した実施形態及び別実施形態では、インバータ部50はモーアデッキ30に配置されていたが、これに代えて機体10に配置してもよい。
(3)上述した実施形態では、駆動輪ユニット2の左後車輪2aと右後車輪2bとが独立して駆動可能な、いわゆるゼロターン型車両であったが、左後車輪2aと右後車輪2bとが差動機構によって連結されている車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、刈刃を電気モータによって駆動する草刈機に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
9 :フレームユニット
10 :機体
13 :昇降機構
20 :刈刃
21 :第1回転軸
211 :入力プーリ
212 :出力プーリ
22 :第2回転軸
221 :入力プーリ
222 :出力プーリ
23 :第3回転軸
231 :入力プーリ
3 :モーアユニット
30 :モーアデッキ
31 :天壁
32 :側壁
321 :前側壁
322 :後側壁
3321 :円弧部
3322 :直線部
34 :装着台
341 :第1被装着面
342 :第2被装着面
343 :支持枠
344 :ブリッジプレート
345 :装着ブラケット
4 :電気モータ
40 :モータハウジング
401 :モータ装着面
41 :出力軸
412 :出力プーリ
50 :インバータ部
71 :第1動力伝達体
72 :第2動力伝達体
73 :第3動力伝達体
US :有用空間