特許第6877088号(P6877088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6877088-米ペースト及び米ペーストの製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6877088
(24)【登録日】2021年4月30日
(45)【発行日】2021年5月26日
(54)【発明の名称】米ペースト及び米ペーストの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20210517BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20210517BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20210517BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20210517BHJP
【FI】
   A23L7/10 A
   A21D2/36
   A23G3/34 105
   A23L7/109 B
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-7412(P2016-7412)
(22)【出願日】2016年1月18日
(65)【公開番号】特開2017-127204(P2017-127204A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年6月26日
【審判番号】不服2020-3638(P2020-3638/J1)
【審判請求日】2020年3月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】516017916
【氏名又は名称】株式会社中九州クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】513305618
【氏名又は名称】株式会社熊本玄米研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山下 太郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧尾 佳明
(72)【発明者】
【氏名】西山 忠彦
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 大熊 幸治
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−100094(JP,A)
【文献】 特開2006−42739(JP,A)
【文献】 特開2012−65557(JP,A)
【文献】 特公昭50−38584(JP,B1)
【文献】 特開2014−87456(JP,A)
【文献】 特開2014−79193(JP,A)
【文献】 特開2017−42052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00- 7/25
A21D 2/00- 2/40
A23G 3/00- 3/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉砕物と、水とを含有し、前記水の前記米粉砕物に対する重量比が1未満であり、前記米粉砕物に由来しない油脂成分を含有する米ペース又は前記米ペーストが冷凍状態にある冷凍米ペースト。
【請求項2】
前記油脂成分が米由来の油脂である請求項1に記載の米ペースト又は冷凍米ペースト。
【請求項3】
米粉砕物と、水とを含有し、前記水の前記米粉砕物に対する重量比が1未満であり、米ペーストを軟化させる軟化成分を含有する米ペースト又は前記米ペーストが冷凍状態にある冷凍米ペースト。
【請求項4】
前記軟化成分が、トレハロース、水あめ、及び、オリゴ糖からなる群より選ばれた1以上の物質である請求項3に記載の米ペースト又は冷凍米ペースト。
【請求項5】
前記米粉砕物の平均粒子径が10μm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の米ペースト又は冷凍米ペースト。
【請求項6】
前記米粉砕物が、微細粒子である請求項1〜5のいずれか一項に記載の米ペースト又は冷凍米ペースト。
【請求項7】
水に浸漬した米と浸漬前の米に対する重量比が1未満である水とを含む混合物が粉砕されペースト状になっている請求項1〜6のいずれか1項に記載の米ペースト又は冷凍米ペースト。
【請求項8】
前記水の浸漬前の前記米に対する重量比が0.8以下である請求項1〜7のいずれか一項に記載の米ペースト又は冷凍米ペースト。
【請求項9】
前記水の浸漬前の前記米に対する重量比が0.5以上である1〜8のいずれか一項に記載の米ペースト又は冷凍米ペースト。
【請求項10】
前記米粉砕物が玄米粉砕物である請求項1〜9のいずれか一項に記載の米ペースト又は冷凍米ペースト。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の米ペースト及び冷凍米ペーストの少なくともいずれかを主原料とするパン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地。
【請求項12】
求項11に記載のパン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地を冷凍した、冷凍パン生地、冷凍麺生地、冷凍ピザ生地、冷凍まんじゅう生地、又は、冷凍ケーキ生地。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の米ペースト、冷凍米ペースト、請求項11に記載のパン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地、及び、請求項12に記載の冷凍パン生地、冷凍麺生地、冷凍ピザ生地、冷凍まんじゅう生地、又は、冷凍ケーキ生地の少なくともいずれかを主原料とする、パン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキ。
【請求項14】
求項13に記載のパン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキを冷凍した、冷凍パン、冷凍麺、冷凍ピザ、冷凍まんじゅう、又は、冷凍ケーキ。
【請求項15】
米を水に浸漬する浸水工程と、
前記浸漬工程後の米と水とを含む混合物を回転刃により粉砕してペースト化するペースト化工程と、前記混合物に油脂成分を添加する油脂添加工程とを、備える米ペーストの製造方法。
【請求項16】
前記油脂添加工程が前記ペースト化工程の中途で行われる請求項15に記載の米ペーストの製造方法。
【請求項17】
前記油脂成分添加工程後の混合物を乳化させる乳化工程を備える請求項15又は16に記載の米ペーストの製造方法。
【請求項18】
米を水に浸漬する浸水工程と、
前記浸漬工程後の米と水とを含む混合物を回転刃により粉砕してペースト化するペースト化工程と、前記混合物に米ペーストを軟化させる軟化成分を添加する軟化成分添加工程とを、備える米ペーストの製造方法。
【請求項19】
請求項15〜18のいずれか一項に記載の米ペーストの製造方法により製造された米ペーストを冷凍する冷凍工程を備える冷凍米ペーストの製造方法。
【請求項20】
請求項15〜18のいずれか一項に記載の米ペーストの製造方法により製造された米ペースト及び請求項19に記載の冷凍米ペーストの製造方法により製造された冷凍米ペーストの少なくともいずれかを主原料としてパン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地を製造する生地製造工程を備える、パン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載のパン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地の製造方法により製造されたパン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地を冷凍する冷凍工程を備える、冷凍パン生地、冷凍麺生地、冷凍ピザ生地、冷凍まんじゅう生地、又は、冷凍ケーキ生地の製造方法。
【請求項22】
請求項15〜18のいずれか一項に記載の米ペーストの製造方法により製造された米ペースト、請求項19に記載の冷凍米ペーストの製造方法、請求項20に記載のパン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地の製造方法、及び請求項21に記載の冷凍パン生地、冷凍麺生地、冷凍ピザ生地、冷凍まんじゅう生地、又は、冷凍ケーキ生地の製造方法のいずれかにより製造された冷凍パン生地、冷凍麺生地、冷凍ピザ生地、冷凍まんじゅう生地、又は、冷凍ケーキ生地を用いてパン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキを製造する、パン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキの製造方法。
【請求項23】
請求項22に記載のパン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキの製造方法により製造されたパン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキを冷凍する冷凍工程を備える、冷凍パン、冷凍麺、冷凍ピザ、冷凍まんじゅう、又は、冷凍ケーキの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米ペースト及び米ペーストの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米は栄養価の高い非常に優れた食品である。また、食糧自給率の低い我が国において、実質的に100%の自給率である。その一方で、パンや麺類等の小麦を主原料とする食品の普及により、米余りの状況が生じている。そこで、米のさらなる用途拡大を目的として、小麦粉の代替原料として、米粉等の米原料を主原料とするパンや麺類等を製造することが試みられている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−187663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、米原料を用いたパンや麺類等においては、小麦と同等の食感を得るには至っていない。また、特に米原料を用いたパンの場合、小麦を主原料とした場合と比較して、成形性に乏しいことから、適用可能なパンの形状や種類に制限があるという問題があった。上記問題点に鑑み、小麦粉の代替原料としての米原料のさらなる改良が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、米ペーストにおいて、特に、水分量の抑制とデンプンのα化(糊化)を抑制することにより、特に、食感及び成形性の面で、小麦と同等の米ペーストを得ることができるとの知見を得、本発明をするに至った。
【0006】
本発明の米ペーストは、米粉砕物と、水とを含有し、前記水の前記米粉砕物に対する重量比が1未満であり、前記米粉砕物に由来しない油脂成分を含有する
また、本発明の米ペーストは、米粉砕物と、水とを含有し、前記水の前記米粉砕物に対する重量比が1未満であり、米ペーストを軟化させる軟化成分を含有する
【0007】
本構成により、比較的少ない水分量で、且つ、粒子径の小さな米の微細粒子を含む米ペーストを得ることができる。この結果、この米ペーストを、例えばパンや麺等の小麦を主原料とする食料品に、小麦の代替原料として適用する場合、小麦と同等の成形性及び食感を得ることができ、有力な小麦の代替原料とすることができる。
【0008】
上記構成において、平均粒子径が10μm以下であると好適である。
【0009】
本構成により、この米ペーストを、小麦の代替原料として適用する場合、特に好適に小麦と同等の成形性及び食感を得ることができる。
【0010】
本発明の米ペーストは、水に浸漬した米と浸漬前の米に対する重量比が1未満である水とを含む混合物粉砕されペースト状になっている
【0011】
本構成により、例えば、回転刃により粉砕を行うことにより、例えば臼等を用いる場合と比較して、水分量を抑えつつデンプンのα化(糊化)を抑制することができる。この結果、この米ペーストを、例えばパンや麺等の小麦を主原料とする食料品に、小麦の代替原料として適用する場合、小麦と同等の成形性及び食感を得ることができ、有力な小麦の代替原料とすることができる。
【0012】
本発明の冷凍米ペーストは、上記の米ペーストが、米ペーストが冷凍状態にある
【0013】
上記構成のように米ペーストを冷凍して冷凍米ペーストとすることにより、保存性及び輸送性を向上させることができる。
【0014】
上記構成において、前記米粉砕物が、微細粒子であると好適である。
【0015】
本構成により、比較的少ない水分量で、且つ、粒子径の小さな米の微細粒子を含む米ペーストを得ることができる。この結果、この米ペーストを、例えばパンや麺等の小麦を主原料とする食料品に、小麦の代替原料として適用する場合、小麦と同等の成形性及び食感を得ることができ、有力な小麦の代替原料とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記米粉砕物の平均粒子径が10μm以下であると好適である。
【0017】
本構成により、この米ペーストを、小麦の代替原料として適用する場合、特に好適に小麦と同等の成形性及び食感を得ることができる。
【0018】
上記構成において、前記水の前記米粉砕物に対する重量比が1未満であると好適である。
【0019】
本構成により、比較的少ない水分量で、且つ、粒子径の小さな米の微細粒子を含む米ペーストを得ることができる。この結果、この米ペーストを、例えばパンや麺等の小麦を主原料とする食料品に、小麦の代替原料として適用する場合、小麦と同等の成形性及び食感を得ることができ、有力な小麦の代替原料とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記水の前記米粉砕物に対する重量比が0.8以下であると好適である。
【0021】
本構成により、水分量を特に少なくすることができ、この米ペーストを、小麦の代替原料として適用する場合、特に好適に小麦と同等の成形性及び食感を得ることができる。
【0022】
上記構成において、前記水の前記粉砕物に対する重量比が0.5以上であると好適である。
【0023】
上記のように、米ペースト中の水分量をある程度抑えることで、小麦と同等の成形性及び食感を得ることができる。その一方で、水分量が不足すると、米ペースト(米ペースト製造中の混合物)の粘度が高くなり(流動性が低下し)、摩擦熱等により発熱が大きくなり、米ペーストの温度が大きく上昇する。この結果、米ペースト中のデンプンがα化(糊化)する恐れがある。この場合、例えばパン等の最終製品において、小麦を主成分とする食品と同等の食感等が得られない恐れがある。そこで、本構成のように、水の米粉砕物に対する重量比を0.5以上とすることにより、水分量をある程度抑えつつも、米ペーストの温度上昇を抑制して、米ペースト中のデンプンがα化(糊化)することを防止することができる。
【0024】
上記構成において、前記米粉砕物に由来しない油脂成分を含有すると好適である。また、前記油脂成分が米由来の油脂であると好適である。
【0025】
上記構成のように、油脂成分を含むことにより、米を粉砕する際に、米粒子との間の摩擦を低減することができ、かつ、米ペースト全体の粘度を低くすることができ、米ペーストの温度上昇を緩和することができる。この結果、米ペースト中のデンプンのα化(糊化)を抑制することができる。また、油脂成分が乳化することにより、米粉砕物と水分とが均等に混合された米ペーストを得ることができる。
【0026】
上記構成において、米ペーストを軟化させる軟化成分を含有すると好適である。また、軟化成分が、トレハロース、水あめ、及び、オリゴ糖からなる群より選ばれた1以上の物質であると好適である。
【0027】
本構成により、米ペースト(米ペースト製造中の混合物)の粘度を低下させることができる。この結果、米ペースト中の水分量を低下させつつ、摩擦熱の影響によるデンプンのα化(糊化)を抑制することができる。
【0028】
上記構成において、前記米粉砕物が玄米粉砕物であると好適である。
【0029】
玄米は特に栄養価の高い食品であり、栄養価の高い米ペーストを得ることができる。ところで、一般的に、玄米を粉砕する場合には、糠成分が粉砕にこびりついて適切に粉砕を行うことができないという問題が生じうる。しかしながら、本構成のように、水分量を適切に調整し、回転刃を用いて粉砕することにより、玄米の糠成分がこびりつくことを防止して適切に粉砕を行うことができる。
【0030】
上記の米ペースト及び冷凍米ペーストは、これらを主成分とするパン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地に適用することができる。
【0031】
また、上記パン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地を冷凍した冷凍パン生地、冷凍麺生地、冷凍ピザ生地、冷凍まんじゅう生地、又は、冷凍ケーキ生地とすることができる。
【0032】
上記の米ペースト及び冷凍米ペーストは、これらを主成分とするパン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキに適用することができる。
【0033】
また、上記のパン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキを冷凍した冷凍パン、冷凍麺、冷凍ピザ、冷凍まんじゅう、又は、冷凍ケーキとすることができる。
【0034】
本発明の米ペーストの製造方法は、米を水に浸漬する浸漬工程と、前記浸漬工程後の米と水とを含む混合物を回転刃により粉砕してペースト化するペースト化工程と、前記混合物に油脂成分を添加する油脂添加工程と、を備える。
【0035】
本構成により、回転刃により粉砕を行うことにより、例えば臼等を用いる場合と比較して、水分量を抑えつつデンプンのα化(糊化)を抑制することができる。この結果、この米ペーストを、例えばパンや麺等の小麦を主原料とする食料品に、小麦の代替原料として適用する場合、小麦と同等の成形性及び食感を得ることができ、有力な小麦の代替原料とすることができる。
【0036】
【0037】
上記構成のように、油脂添加工程を含むことにより、米を粉砕する際に、米粒子との間の摩擦を低減することができ、米ペーストの温度上昇を防止することができる。この結果、米ペースト中のデンプンのα化(糊化)を抑制することができる。
【0038】
上記構成において、前記油脂添加工程が前記ペースト化工程の中途で行われると好適である。
【0039】
本構成により、油脂成分を効果的に分散させることができる。
【0040】
上記構成において、前記油脂成分添加工程後の混合物を乳化させる乳化工程を備えると好適である。
【0041】
上記構成のように、乳化工程を備えることにより、油脂成分が乳化して、米粉砕物と水分とが均等に混合された米ペーストを得ることができる。
また、本発明の米ペーストの製造方法は、米を水に浸漬する浸水工程と、前記浸漬工程後の米と水とを含む混合物を回転刃により粉砕してペースト化するペースト化工程と、前記混合物に米ペーストを軟化させる軟化成分を添加する軟化成分添加工程とを、備える。
【0042】
上記構成において、米ペーストを冷凍する冷凍工程を備えることができる。
【0043】
本構成により、保存性及び輸送性に優れた冷凍米ペーストを得ることができる。
【0044】
上記の米ペースト及び冷凍米ペーストの少なくともいずれかを主成分として、パン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地を製造する生地製造工程を備えることができる。
【0045】
また、上記パン生地、麺生地、ピザ生地、まんじゅう生地、又は、ケーキ生地を冷凍する冷凍工程を備えることができる。
【0046】
また、上記米ペースト、冷凍米ペースト、生地、及び、冷凍生地の少なくともいずれかを用いて、パン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキを製造することができる。
【0047】
また、上記のパン、麺、ピザ、まんじゅう、又は、ケーキを冷凍する冷凍工程を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明による米ペーストの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(米ペースト)
この米ペーストは、米を粉砕した米粉砕物と、水とを含有する。ここで、米ペーストとは、米粉砕物が水に均等に分散している状態をいう。この米ペーストは、特に限定はされないが、例えばパン等の小麦を主成分とした食料品において小麦の代替原料として用いることができる。米粉砕物としては、特に限定はされないが、微細粒子が好ましく、さらに好ましくは単粒でんぷん状態とされている。その平均粒子径は、でんぷんの平均粒子径と近似した平均粒子径であることが好ましく、その平均粒径(直径)は10μm以下であることが好ましい。
【0050】
米粉砕物としては、米を粉砕して得られた微粒子であれば特に限定はされないが、例えば、玄米、白米等の粉砕物を用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。特に限定はされないが、玄米は栄養価が高く特に好適に用いることができる。なお、粟、稗、豆類等のグルテンを含まない穀物の粉砕物を混合してもよい。このような穀物を混合することにより、栄養価を高めることができる。
【0051】
以下、米として玄米(玄米粉砕物)を用いた場合を例に説明するが、白米等の玄米以外の米の場合も同様である。
【0052】
玄米粉砕物の乾燥重量に対する水の重量比は、1未満が好ましい。さらに好ましい、重量比はこの米ペーストが用いられる最終製品により異なるが、例えば、最終製品がパンである場合には、玄米粉砕物の乾燥重量に対する水の重量比は、さらに好ましくは0.85以下である。重量比をこのように設定することにより、小麦を主成分とするパンと同等のパンを製造可能な米ペーストを得ることができる。
【0053】
また、最終製品が麺の場合には、玄米粉砕物の乾燥重量に対する水の重量比は、さらに好ましく0.8以下であり、特に好ましくは0.65以下である。重量比をこのように設定することにより、小麦を主成分とする麺と同等の麺を製造可能な米ペーストを得ることができる。
【0054】
また、米ペーストにおける玄米粉砕物の乾燥重量に対する水の重量比は、パンの場合及び麺の場合の何れの場合においても、重量比は、0.5以上が好ましく、さらに好ましくは、0.59以上である。このように設定することにより、米ペースト製造時の温度の上昇を抑制して、米ペースト中のデンプンがα化(糊化)することを防止できる。
【0055】
また、水分量をこのように設定することや後述する浸水工程を経ることにより、水分を介さずに玄米を粉砕することに比べ、デンプン粒子が損傷することを防止することができる。デンプン粒子が損傷した場合、デンプン粒子の表面が凸凹になり、この凸凹部分で吸水することとなる。このため、米ペーストを製造する際に、各デンプン粒子間に均等に存在してペースト状にするのに必要な水に加え、デンプン粒子の表面の凸凹部分に吸水される水が必要になる。この結果、デンプン粒子が損傷している場合、デンプン粒子が損傷していない場合と同等の粘度を有する米ペーストを製造するために必要な水分量が増加し、このような米ペーストを用いたパン等の最終製品は、小麦を主成分とする最終製品と同等の食感等を得ることができない。また、デンプン粒子が損傷している場合、後述するペースト化工程において摩擦熱が発生しやすくなり、デンプンのα化(糊化)を促進する原因ともなる。一方、上記においては、デンプン粒子の損傷を防止することにより、比較的少ない水分量で好適な米ペーストを得ることができある。
【0056】
米ペーストは、特に限定はされないが、上記の主成分以外に、例えば、油脂成分や軟化成分を含むことができる。
【0057】
油脂成分は、特に限定はされないが、例えば、乾燥基準の米粉砕物(浸水前の玄米)の重量に対する重量比が、0.01〜0.2程度となるようにすればよく、好ましくは0.05〜0.1である。油脂成分を含むことにより、玄米を粉砕する際に(後述する粉砕工程)において、粉砕機の回転刃10と米粒子との間の摩擦を低減することができ、米ペーストの温度上昇を防止することができる。この結果、米ペースト中のデンプンのα化(糊化)を抑制することができる。また、回転刃10と米粒子との間の摩擦を低減することにより、デンプン粒子の損傷を防止することができる。また、油脂成分が乳化することにより、米粉砕物と水分とが均等に混合された米ペーストを得ることができる。油脂成分としては、特に限定はされないが、例えば、米抽出油等の植物由来油を用いることができる。
【0058】
軟化成分は、特に限定はされないが、例えば、乾燥基準の米粉砕物(浸水前の玄米)の重量に対する重量比が、0.03〜0.2程度となるようにすればよく、好ましくは0.03〜0.1である。軟化成分を含むことにより、米ペーストの粘度を低くする(流動性を高める)ことができ、より少ない水分量においても、米ペースト中のデンプンのα化(糊化)を抑制することができる。軟化成分としては、特に限定はされないが、トレハロース、水あめ、オリゴ糖、デキストリン、マルトース類等を用いることができる。
【0059】
上記のようにこの米ペーストは、米粉砕物及び水以外の成分も含むことができる。つまり、米粉砕物及び水以外の成分を含むものであっても、米を主成分とするものであれば、本発明の米ペーストに含まれる。ここで、「米を主成分とする」とは、乾燥基準で(米ペースト中の水分を除去した状態で)、米粉砕物の重量百分率が50%以上のことであり、好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0060】
(米ペーストの製造方法)
本発明の米ペーストの製造方法を、図1に基づいて、以下に説明する。
1次洗浄工程において、例えば、流水により玄米の洗浄を行う。この際、適宜、稿屑等の不純物の除去を行う。洗浄後の玄米を浸水する浸水工程を行う。浸水工程において、特に限定はされないが、常温で一昼夜程度浸水を行うことが好ましい。浸水工程後、浸漬水を除去する。浸漬水を除去後、流水により洗浄を行う。洗浄後の玄米及び水を粉砕機1に投入する。この際、必要に応じて軟化成分を添加する。その後、粉砕機1中の米を粉砕してペースト化するペースト化工程を実行する。
【0061】
ペースト化工程は、特に限定はされないが、混合工程、粉砕工程、乳化工程等を備える。乳化工程は、比較的低回転速度で粉砕機1の回転刃10を回転させることにより、主に粉砕機1中の内容物を混合する工程である。混合工程において、特に限定はされないが、例えば1000〜2000rpmで回転刃10を回転させることができ、1800rpm程度で回転刃10を回転させることが好ましい。
【0062】
粉砕工程は、回転刃10を混合工程における回転速度よりも高回転速度で回転させることにより、主に、玄米を粉砕する工程である。粉砕工程において、特に限定はされないが、例えば3000〜4000rpmで回転刃10を回転させることができ、3600rpm程度で回転刃10を回転させることが好ましい。
【0063】
ペースト化工程において、油脂成分添加工程が実施される場合、特に限定はされないが、例えば、上記の粉砕工程の後に行うことができる。
【0064】
乳化工程は、回転刃10を回転させることにより、油脂成分添加工程により添加された油脂10を乳化させる工程である。乳化工程において、特に限定はされないが、例えば3000〜4000rpmで回転刃10を回転させることができ、3600rpm程度で回転刃10を回転させることが好ましい。
【0065】
特に限定はされないが、ペースト化工程(混合工程、粉砕工程、乳化工程)において、米ペースト(粉砕機中の混合物)の温度が、好ましくは50℃を超えないように、さらに好ましくは45℃を超えないように、特に好ましくは40℃を超えないように、回転刃10の回転数を調整するとよい。このようにすることにより、米ペースト中のデンプンのα化を抑制することができる。
【0066】
上記工程を経て、玄米及び水の混合物がペースト状になる。なお、上記においては、混合工程、粉砕工程、乳化工程が順次実行される例を説明したが、実際には、ペースト化工程において、米及び水の混合物の撹拌、米の粉砕、及び油脂成分の乳化は同時進行的に起こり得る。したがって、混合工程、粉砕工程、乳化工程が同時並行的に実行される形態を排除するものではない。
【0067】
また、上記においては、ペースト化工程が、混合工程、粉砕工程、乳化工程を含む場合を例に説明したが、上記の混合工程に相当する工程において、若しくは、混合工程の後に、玄米を粗粉砕する粗粉砕工程を実行してもよい。粗粉砕工程は、特に限定はされないが、上記の混合工程と同程度の回転刃10の回転速度で実行し、その後粉砕工程と度同程度の回転刃10の回転速度で実行することができる。このように比較的高回転速度で回転刃10を回転させる粉砕工程に先立ち、比較的低回転速度で回転刃10を回転させる粗粉砕工程を実行することにより、粉砕前の玄米が高回転速度の回転刃10にはじかれて粉砕を行うことができないという事態が生じるのを防止することができる。この結果、適切に粉砕を行うことができる。
【0068】
ペースト化工程後の米ペーストの温度は、特に限定はされないが、45℃程度であり、ある程度流動性を有している。このペースト化工程後の米ペーストに対して冷却工程を実行する。冷却工程においては、特に限定はされないが、例えば、冷凍庫において、ペースト化工程後の米ペーストを急冷する。冷却工程を経て、米ペーストの流動性が低下してペースト状となる。この米ペーストは、例えば、冷蔵庫において、低温保存することができる。なお、米ペーストを冷凍庫に引き続き保管することにより(冷凍工程を実行すること
【0069】
(米ペーストのパンへの利用)
上記の米ペースト及び冷凍米ペーストは例えば、パン生地における小麦粉の代替原料として利用することができる。この米ペーストを主原料としてパン生地を製造する場合、イースト、脱脂粉乳、食塩、砂糖などの糖類、バターなどの油脂類、牛乳、卵、野菜ペースト、焙煎炊飯玄米などの水飯米、塩麹等の麹類、大豆粉、豆乳等の副原料を添加する副原料添加工程を実施する。添加するこれらの副原料は、小麦を用いた場合のパン生地と同様の副原料であり、上記に限らず、小麦を用いた場合のパン生地に添加するものであれば上記に限らず添加することができる。なお、必ずしも必須の成分ではないが、パン生地にグルテン等の小麦由来成分を加えてもよい。
【0070】
グルテンを加えることにより、生地の成形性が増し、小麦を主原料とするパン生地同様に種々のパンに用いることができる。また、食感をより一層、小麦を主原料とするパンに近づけることができる。上記のパン生地は、発酵工程、成形工程、焼成工程等を経て、パンに加工される。なお、これらの工程は、小麦を主原料とするパンの場合と同様であるので詳細は省略する。なお、上記において、パン生地製造後、又は、成形工程実行後焼成工程実行前に冷凍工程を実行して冷凍パン生地を製造することができる。また、焼成工程実行後のパンを冷凍して冷凍パンとすることができる。
【0071】
ここで、「米ペーストを主原料とする」とは、乾燥基準で、パン生地中の米ペーストに含まれる米由来原料の重量と小麦由来原料の重量に対する米ペーストに含まれる米由来原料の重量の重量百分率が50%以上のことであり、好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【0072】
(米ペーストのその他の利用)
米ペースト及び冷凍米ペーストは、パン以外の小麦を主原料とする食品にも適用可能である。例えば、ラーメン、パスタ、うどん等の麺、ピザ、肉まん、アンまん等のまんじゅう、ケーキ等に適用可能である。これらについても副原料を添加することで、それぞれの生地とすることができる。添加すべき副原料及び副原料手化後の工程については、小麦を主原料とする場合の公知の方法と同様であるので省略する。これらも、冷凍工程を実行することにより、冷凍生地、又は冷凍食品とすることができる。このように、パン以外の小麦を主原料とする食品についても、米ペースト及び冷凍米ペーストを用いて、米ペーストを主成分とする食品とすることができる。ここで、「米ペーストを主原料とする」とは、乾燥基準で、食品生地中の米ペーストに含まれる米由来原料の重量と小麦由来原料の重量に対する米ペーストに含まれる米由来原料の重量の重量百分率が50%以上のことであり、好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
【符号の説明】
【0073】
1 粉砕機
10 回転刃
図1