(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る光波長変換粒子の製造方法、光波長変換含有組成物、光波長変換部材、光波長変換シート、バックライト装置、および画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。本明細書において、「シート」、「フィルム」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」は、フィルムとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられ、また「フィルム」はシートとも呼ばれ得るような部材も含む意味で用いられる。
図1は本実施形態に係る光波長変換粒子の概略構成図であり、
図2は本実施形態に係る他の光波長変換粒子の概略構成図であり、
図3は本実施形態に係る光波長変換シートの概略構成図であり、
図4は本実施形態に係る光波長変換シートの作用を示す図であり、
図5〜
図7、
図9、
図10は本実施形態に係る他の光波長変換シートの概略構成図であり、
図8は
図7の光波長変換シートのI−I線に沿った断面図である。
【0020】
<<<光波長変換粒子の製造方法>>>
光波長変換粒子は、入射する光の波長を他の波長に変換する粒子であり、光透過性の樹脂粒子と、樹脂粒子中に内包された量子ドットとを含むものである。本実施形態に係る光波長変換粒子の製造方法は、懸濁安定剤を含み、かつ25℃における粘度が0.02Pa・s以上10Pa・s以下の溶液と、量子ドットと、重合性化合物と、硫黄含有化合物、リン含有化合物、窒素含有化合物、およびカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物と、重合開始剤とを含む混合物(以下、この混合物を「光波長変換粒子用混合物」と称する。)とを混合して、懸濁重合を行う工程を含むものである。懸濁重合に先立ち、まず、上記溶液および上記混合物を用意することが好ましい。
【0021】
<<溶液>>
上記溶液は、懸濁安定剤を含み、かつ25℃における粘度が0.02Pa・s以上10Pa・s以下のものである。溶液は、懸濁安定剤と併用して、懸濁助剤を含んでいてもよい。また、溶液は、水相での重合を抑制するために、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等の水溶性無機塩類を含んでいてもよい。
【0022】
上記溶液の25℃における粘度は、0.02Pa・s以上10Pa・s以下となっているが、上記溶液の25℃における粘度を0.02Pa・s以上とすることにより、攪拌時のせん断応力が光波長変換粒子用混合物に均等に加わり、粒子径のばらつきが小さい光波長変換粒子を得ることができ、また上記溶液の25℃における粘度を10Pa・s以下とすることにより、溶液全体を均一に攪拌することができる。上記溶液の粘度は、25℃で、B型粘度計(製品名「TVB−10」、東機産業株式会社製)を用いて10回測定した粘度の平均値とする。上記溶液の25℃における粘度の下限は、0.025Pa・s以上であることが好ましく、上限は8Pa・s以下であることが好ましい。
【0023】
上記溶液を上記範囲の粘度にするためには、例えば、懸濁安定剤の種類や濃度を調節し、または増粘剤を上記溶液に添加してもよい。上記溶液中の懸濁安定剤の濃度は、上記溶液の粘度を上記範囲にする観点から、0.05質量%以上80質量%以下であることが好ましい。上記溶液中の懸濁安定剤の濃度は、上記溶液を加熱することによって溶媒を蒸発させ、残存した乾燥後の懸濁安定剤の重量を計量することによって算出することができる。上記溶液の溶媒に対する懸濁安定剤の濃度の下限は、0.1質量%以上であることがより好ましく、また上限は、70質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
上記溶液は、溶媒に懸濁安定剤を添加して得てもよいが、予め懸濁安定剤を含む溶液を作製しておき、この溶液を溶媒に添加して得てもよい。
【0025】
<溶媒>
溶液の溶媒としては、例えば、後述する光波長変換粒子用混合物がほぼ溶解しない貧溶媒が好ましい。貧溶媒の中でも、特に水が好ましい。
【0026】
<懸濁安定剤>
懸濁安定剤としては、ノニオン系水溶性高分子等の水溶性高分子が挙げられる。ノニオン系水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルアミン等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体が好ましく、ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0027】
ポリビニルアルコールとしては、例えば、ゴーセノールNH-18、N−300、NL−05、C−500、P−610、GH−23、KH−20(日本合成化学工業社製)、POVAL3−98、5−98、11−98、28−98、60−98、27−95、22−88、32−80(クラレ社製)等が挙げられる。懸濁安定剤として用いられるポリビニルアルコールは、通常、鹸化度が70モル%以上99モル%以下程度である。
【0028】
<懸濁助剤>
懸濁助剤とは、分散助剤としても知られている物質であり、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤等の低分子界面活性剤、ホウ酸、炭酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、硫酸ナトリウム等の水溶性の無機塩等が挙げられる。懸濁助剤としては、リン酸水素2ナトリウムが好ましい。懸濁助剤は、成形加工時に透明性の悪化や黄変の問題を引き起こしにくいため、重合の開始時から溶液中に存在していてもよい。
【0029】
<<光波長変換粒子用混合物>>
上記光波長変換粒子用混合物は、量子ドットと、重合性化合物と、硫黄含有化合物、リン含有化合物、窒素含有化合物、およびカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物(以下、この化合物を「特定の化合物」と称する。)と、重合開始剤とを含むものである。
【0030】
光波長変換粒子用混合物を用意する際には、ディスポカップ等の容器に、量子ドット、重合性化合物および重合開始剤を投入した後に、特定の化合物を投入してもよい。
【0031】
<量子ドット>
量子ドットは、量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)を有するナノサイズの半導体粒子である。量子ドットの粒子径および平均粒子径は、例えば、1nm以上20nm以下となっている。量子ドットは、励起源から光を吸収してエネルギー励起状態に達すると、量子ドットのエネルギーバンドギャップに該当するエネルギーを放出する。よって、量子ドットの粒子径又は物質の組成を調節すると、エネルギーバンドギャップを調節することができ、様々なレベルの波長帯のエネルギーを得ることができる。とりわけ、量子ドットは、狭い波長帯で強い蛍光を発生することができる。
【0032】
具体的には、量子ドットは粒子径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットの粒子径を変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。例えば、量子ドットが後述するCdSe/ZnSから構成されている場合には、量子ドットの粒子径が2.0nm以上4.0nm以下の場合は青色光を発し、量子ドットの粒子径が3.0nm以上6.0nm以下の場合は緑色光を発し、量子ドットの粒子径が4.5nm以上10.0nm以下の場合は赤色光を発する。なお、上記においては、青色光を発する量子ドットの粒子径と緑色光を発する量子ドットの粒子径の範囲は一部において重複しており、また緑色光を発する量子ドットの粒子径と赤色光を発する量子ドットの粒子径の範囲は一部において重複しているが、同じ粒子径を有する量子ドットであっても、量子ドットのコアの大きさによっても発光色が異なる場合があるので、何ら矛盾するものではない。本明細書における「青色光」とは、380nm以上480nm未満の波長域を有する光であり、「緑色光」とは、480nm以上590nm未満の波長域を有する光であり、「赤色光」とは、590nm以上750nm以下の波長域を有する光である。
【0033】
量子ドットとしては、1種類の量子ドットを用いてもよいが、粒子径または材料等が異なることにより、それぞれ単独の波長域の発光帯を有する2種類以上の量子ドットを用いることも可能である。
【0034】
量子ドットは、所望の狭い波長域で強い蛍光を発生することができる。このため、光波長変換シートを用いたバックライト装置は、色純度の優れた三原色の光で、表示パネルを照明することができる。この場合、表示パネルは、優れた色再現性を有することになる。
【0035】
量子ドットは、例えば、第1の半導体化合物からなるコアと、およびこのコアを覆い、かつ第1の半導体化合物と異なる第2の半導体化合物からなるシェルと、シェルの表面に結合したリガンドとから構成されている。
【0036】
コアを構成する第1の半導体化合物としては、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶が挙げられる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。これらの中でも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒子径の制御性等の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0037】
シェルを構成する第2の半導体化合物としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを構成する第1の半導体化合物よりもバンドギャップの高い半導体化合物を用いることが好ましい。これにより、量子ドットの発光効率を高めることができる。シェルを構成する第2の半導体化合物としては、例えば、ZnS、ZnSe、CdS、GaN、CdSSe、ZnSeTe、AlP、ZnSTe、ZnSSe等が挙げられる。
【0038】
コアとシェルからなるコアシェル構造(コア/シェル)の具体的な組み合わせとしては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InP/ZnSSe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0039】
リガンドは、不安定な量子ドットを安定化させるためのものである。リガンドとしては、チオール等の硫黄含有化合物、ホスフィン系化合物またはホスフィン酸化物等のリン含有化合物、アミン等の窒素含有化合物、カルボキシル基含有化合物等が挙げられる。
【0040】
量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒子径は、量子ドットの形状が球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
【0041】
量子ドットの粒子径、平均粒子径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡または走査透過型電子顕微鏡により得ることができる。また、量子ドットは粒子径によって発光色が変化するので、量子ドットの発光色の確認から量子ドットの粒子径を求めることも可能である。また、量子ドットの結晶構造、結晶子サイズについては、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒子径等に関する情報を得ることもできる。
【0042】
光波長変換粒子用混合物中における量子ドットの含有量は、重合性化合物および特定の化合物の合計質量に対して0.01質量%以上2質量%以下であることが好ましい。量子ドットの含有量を重合性化合物および特定の化合物の合計質量に対して0.01質量%以上とすることにより、充分な発光強度を得ることができ、また量子ドットの含有量を重合性化合物および特定の化合物の合計質量に対して2質量%以下とすることにより、充分な励起光の透過光強度を得ることができる。
【0043】
<重合性化合物>
重合性化合物(硬化性化合物)は、重合可能な化合物であり、例えば、ラジカル重合性化合物やカチオン重合性化合物が挙げられる。
【0044】
(ラジカル重合性化合物)
ラジカル重合性化合物は、分子内にラジカル重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。ラジカル重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。
【0045】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性モノマー、ラジカル重合性オリゴマー、またはラジカル重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。
【0046】
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルアクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0047】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、ラジカル重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーがより好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
ラジカル重合性プレポリマーは、重量平均分子量が1万を超えるものであり、重量平均分子量としては1万以上8万以下が好ましく、1万以上4万以下がより好ましい。重量平均分子量が8万以下であると、塗工適性の低下を抑制できるので、得られる光波長変換部材の外観の悪化を抑制できる。重量平均分子量が8万を超えるラジカル重合性プレポリマーを用いる場合には、上記ラジカル重合性モノマーや上記ラジカル重合性オリゴマーを混合して用いることが好ましい。多官能ラジカル重合性プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
(カチオン重合性化合物)
カチオン重合性化合物は、分子内にカチオン重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。カチオン重合性官能基としては、例えば、エポキシ基やオキセタニル基等の環状エーテル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。
【0050】
エポキシ化合物は、分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、ノボラックフェノール型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、これらの変性物等の芳香族系、あるいは、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、及びアルキレンオキサイド等の脂肪族系が挙げられる。ここで、アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等の脂肪族系エポキシ化合物、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート等の分子内に1個以上のエポキシ基と1個以上のエステル基を含有する脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
【0051】
<特定の化合物>
特定の化合物は、硫黄含有化合物、リン含有化合物、窒素含有化合物、およびカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物であり、量子ドットの劣化を抑制するための化合物である。
【0052】
光波長変換粒子用混合物中における特定の化合物の含有量は、重合性化合物の質量に対して5質量%以上80質量%以下であることが好ましい。特定の化合物の含有量を重合性化合物の質量に対して5質量%以上とすることにより、量子ドットの劣化をより抑制でき、また特定の化合物の含有量を重合性化合物の質量に対して80質量%以下とすることにより、光波長変換粒子の形成時に充分な硬化を行うことができる。光波長変換粒子用混合物中における特定の化合物の含有量の下限は、20質量%以上であることがより好ましく、上限は60質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
(硫黄含有化合物)
硫黄含有化合物は、硫黄を含む化合物である。硫黄含有化合物としては、特に限定されないが、チオール化合物、チオエーテル化合物、ジスルフィド化合物、チオフェン化合物等が挙げられる。硫黄化合物として、チオール化合物を用いた場合には、樹脂粒子中においては、チオール化合物と重合性化合物は、チオール−エン反応により共重合体を形成していることが好ましい。チオール化合物と重合性化合物が共重合することにより、チオール化合物を樹脂粒子中に固定することができる。チオール化合物を用いる場合には、電離放射線や熱による硬化性に優れる観点からは、第1級チオール化合物を用いることが好ましいが、塗工時のポットライフや臭気抑制の観点からは、2級チオール化合物または3級チオール化合物を用いるのが好ましい。
【0054】
1級チオール化合物とは、チオール基が結合している炭素に1つの炭化水素基が結合している化合物をいう。2級チオール化合物とは、チオール基が結合している炭素に2つの炭化水素基が結合している化合物をいう。3級チオール化合物とは、チオール基が結合している炭素に3つの炭化水素基が結合している化合物をいう。チオール化合物においては、1分子中にチオール基が1以上であればよいが、量子ドットの耐熱性および耐湿熱性向上の観点から、2以上であることが好ましい。
【0055】
チオール化合物としては、特に限定されないが、光波長変換層の形成の際の硬化性や量子ドットの耐熱性および耐湿熱性向上の観点から、下記一般式(1)で示される化合物が好ましい。
【化1】
式中、R
1は水素原子、置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R
2は置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキレン基であり、R
3は炭素原子以外の原子を含んでいてもよい炭素原子数1〜15のn価の脂肪族基であり、mは1〜20の整数であり、nは1〜30の整数である。
【0056】
R
1のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。R
1のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
【0057】
R
2のアルキレン基は、直鎖状または分岐鎖状のいずれであってもよい。R
2のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピリデン基等が挙げられる。
【0058】
R
1のアルキル基やR
2のアルキレン基が置換されている場合、置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、およびフェニル基等から選択される基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、および臭素原子が挙げられる。
【0059】
R
1のアルキル基中またはR
2のアルキレン基中の1つのメチレン基または隣接しない2以上のメチレン基は、−O−、−S−、−SO
2−、−CO−、−COO−、−OCO−、−NR
4−、−CONR
4−、−NR
4CO−、−N=CH−および−CH=CH−からなる群から選択された少なくとも1つの基で置換されていてもよい(式中、R
4はそれぞれ独立して水素又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)
【0060】
R
3の脂肪族基に含まれても良い炭素原子以外の原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
【0061】
これらのうち、光波長変換粒子の形成の際の硬化性や量子ドットの耐熱性および耐湿熱性向上の観点から、R
1が置換されていてもよい炭素原子数1〜5のアルキル基であり、R
2が置換されていてもよい炭素原子数1〜5のアルキレン基であり、R
3が炭素原子数1〜10の脂肪族基であり、mが1〜10であり、nが1〜15である1級チオール化合物または2級チオール化合物が好ましい。ここでのR
2のアルキレン基中の1つのメチレン基または隣接しない2以上のメチレン基も、上記と同様の基によって置換されていてもよい。
【0062】
1級チオール化合物の具体例としては、ヘキサンジチオール、デカンジチオール、エチレングリコールビスチオグリコレート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−プロピレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,3−プロピレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。
【0063】
2級チオール化合物の具体例としては、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)等が挙げられる。3級チオール化合物の具体例としては、tert−ブチルメルカプタン等が挙げられる。
【0064】
(リン含有化合物)
リン含有化合物は、リンを含む化合物である。リン含有化合物としては、特に限定されないが、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、およびホスフィン系化合物が挙げられる。これらの中でも、光波長変換粒子の形成の際の硬化性や量子ドットの耐熱性および耐湿熱性向上の観点から、下記一般式(2)で示される化合物が好ましい。
【化2】
式中、qは0または1の整数であり、R
5〜R
7は、それぞれ独立して、水素、水酸基、置換されていてもよい炭素原子数1〜30の直鎖または分岐のアルキル基、置換されていてもよい炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルケニル基、置換されていてもよい炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数3〜6のシクロアルキル基、置換されていてもよいフェニル基、置換されていてもよいビフェニル基、置換されていてもよいナフチル基、置換されていてもよいフェノキシ基、または置換されていてもよい複素環基、または水酸基を表す。
【0065】
R
5〜R
7のいずれかが置換基を有している場合、置換基としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br)、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルケニル基、炭素数1〜6のアルキニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜6のアルキルアミノ基、ニトロ基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェノキシ基、または複素環基等が挙げられる。
【0066】
複素環基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジル基、ピラジル基、フリル基、チエニル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピロール基、ピラゾリル基、またはテトラゾリル基が挙げられる。
【0067】
リン化合物としては、具体的には、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ブチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、ジメチルビニルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルハイドロゼンホスファイト、ジオレイルハイドロゼンホスファイト等が挙げられる。
【0068】
(窒素含有化合物)
窒素含有化合物は、窒素を含む化合物である。窒素含有化合物としては、特に限定されないが、光波長変換粒子の形成の際の硬化性や量子ドットの耐熱性および耐湿熱性向上の観点から、アミン化合物が好ましい。アミン化合物としては、1級アミン化合物、2級アミン化合物および3級アミン化合物、ジアミン化合物のいずれであってもよい。
【0069】
アミン化合物としては、具体的には、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミン、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン、オレイルプロピレンジアミン等が挙げられる。
【0070】
(カルボン酸)
カルボン酸は、カルボキシル基を少なくとも1以上含む化合物である。カルボン酸は、カルボキシル基を2以上含んでいてもよく、また重合性官能基を含んでいてもよい。
【0071】
上記カルボン酸の重量平均分子量は、揮発性し難く、分散性に優れ、また作業性が容易である観点から、150以上50000以下であることが好ましい。本明細書において、「重量平均分子量」は、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒に溶解して、従来公知のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算により得られる値である。上記カルボン酸の重量平均分子量の下限は300以上であることがより好ましく、上限は10000以下であることがより好ましい。
【0072】
上記カルボン酸のカルボキシル基当量(重量平均分子量/カルボキシル基数)は、量子ドットの周囲にカルボン酸を存在させやすくする観点から、150以上50000以下であることが好ましい。上記カルボン酸のカルボキシル基当量の下限は300以上であることがより好ましく、上限は10000以下であることがより好ましい。
【0073】
上記カルボン酸の具体例としては、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ペンタエリスリトールとアクリル酸の反応物と無水コハク酸の反応物、3−ブテン酸、10−ウンデセン酸、n−オクタン酸、ステアリン酸、アジピン酸、ドデカニン酸、4,4‘−ジカルボキシジフェニルエーテル、オクタデカンニ酸等が挙げられる。これらの中でも、樹脂粒子2を構成する樹脂中へのカルボン酸の固定および量子ドットの周囲にカルボン酸を存在させやすくする観点から、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートや2−アクリロイルオキシエチルコハク酸が好ましい。
【0074】
<重合開始剤>
重合開始剤は、光または熱により分解されて、ラジカルやイオン種を発生させて重合性化合物の重合(架橋)を開始または進行させる成分である。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤(例えば、光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤)、カチオン重合開始剤(光カチオン重合開始剤、熱カチオン重合開始剤)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン等が挙げられる。
【0076】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASFジャパン社製)、NCI−930(ADEKA社製)、SPEEDCURE EMK(日本シーベルヘグナー社製)、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0077】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。これらの中でも、高分子アゾ化合物からなる高分子アゾ開始剤が好ましい。高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
【0078】
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
【0079】
上記過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0080】
上記熱ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、パーブチルO、パーヘキシルO、パーブチルPV(いずれも日油社製)、V−30、V−501、V−601、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0081】
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−170(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
【0082】
上記熱カチオン重合開始剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等の各種オニウム塩類等が挙げられる。上記熱カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトンCP−66、アデカオプトンCP−77(いずれもADEKA社製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L(いずれも三新化学工業社製)、CIシリーズ(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0083】
光波長変換粒子用混合物中における重合開始剤の含有量は、重合性化合物および特定の化合物の合計質量に対して0.01質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。重合開始剤の含有量を重合性化合物および特定の化合物の合計質量に対して0.01質量%以上とすることにより、重合性化合物を確実に硬化させることができ、また重合開始剤の含有量を重合性化合物および特定の化合物の合計質量に対して10.0質量%以下とすることにより、光波長変換部材の黄変を抑制することができる。
【0084】
<<懸濁重合工程>>
上記溶液および上記光波長変換粒子用混合物を用意した後、上記溶液と、上記光波長変換粒子用混合物とを混合して、懸濁重合を行う。これにより、硫黄、リン、および窒素からなる群から選択される1以上の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含む光透過性の樹脂粒子と、樹脂粒子中に内包された量子ドットとからなる光波長変換粒子が形成される。
【0085】
上記溶液と光波長変換粒子用混合物を混合した後かつ懸濁重合前に、溶液と光波長変換粒子用混合物からなる混合液を攪拌させることにより光波長変換粒子用混合物を溶液中に分散させることが好ましい。光波長変換粒子用混合物を溶液中に分散させる方法としては、特に限定されず、ホモジナイザーを用いて分散させる方法が挙げられる。
【0086】
懸濁重合は、紫外線等の電離放射線を照射することによって行ってもよいが、加熱によって行うことが好ましい。本明細書における電離放射線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
【0087】
懸濁重合を加熱によって行う場合には、上記混合液(懸濁液)の温度を40℃以上150℃以下の範囲内にすることが好ましい。混合液の温度を40℃以上とすることにより、重合開始剤を活性化させることができ、また混合液の温度を150℃以下とすることにより、重合性化合物、量子ドット、光波長変換粒子などの熱による劣化を抑制することができる。混合液の温度の下限は50℃以上であることが好ましく、上限は100℃以下であることが好ましい。懸濁重合は、窒素雰囲気のような、光波長変換粒子用混合物に対して不活性な不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。
【0088】
懸濁重合は、上記混合液を攪拌しながら行うことが好ましい。攪拌は、光波長変換粒子用混合物が液滴として浮上すること、および重合により生成した光波長変換粒子が沈降することを防止できる程度に行えばよい。
【0089】
懸濁重合によって得られた光波長変換粒子は、吸引濾過、遠心脱水、遠心分離等の方法により分離され、さらに、分離された光波長変換粒子を水洗し、乾燥することにより得られる。
【0090】
上記では、樹脂粒子と、樹脂粒子中に内包された量子ドットとからなる光波長変換粒子を得ているが、樹脂粒子と、樹脂粒子中に内包された量子ドットと、樹脂粒子の表面に形成されたコート層とからなる光波長変換粒子を形成する場合には、懸濁重合した後に、樹脂粒子の表面にコート層を形成する。
【0091】
コート層の機能にもよるが、コート層が樹脂粒子の形状保持機能を有する場合には、コート層は、例えば、重合性化合物を含むコート層用組成物を用いて形成することが可能である。重合性化合物は、樹脂粒子の形成に用いる重合性化合物と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。これらの中でも、樹脂粒子とコート層の密着性向上の観点から、例えば、樹脂粒子をラジカル重合性化合物から形成する場合にはラジカル重合性化合物を含むコート層用組成物を用いて形成することが好ましく、樹脂粒子をカチオン重合性化合物で形成する場合にはカチオン重合性化合物を含むコート層用組成物を用いて形成することが好ましい。
【0092】
<<<光波長変換粒子>>>
光波長変換粒子1は、上記の製造方法によって得られたものであり、
図1に示されるように、硫黄、リン、および窒素からなる群から選択される1以上の元素(以下、この元素を「特定の元素」と称する。)およびカルボン酸の少なくともいずれかを含む樹脂粒子2と、樹脂粒子2に内包された1以上の量子ドット3とを含む。また、光波長変換粒子は、
図2に示されるように樹脂粒子2の表面を覆うコート層4を備えた光波長変換粒子5であってもよい。
【0093】
光波長変換粒子1、5においては、蛍光X線分析(XRF)により測定される光波長変換粒子1中の特定の元素の含有量は、0.5質量%以上となっていることが好ましい。特定の元素の含有量を0.5質量%以上にすることにより、量子ドットの劣化を確実に抑制できる。特定の元素の含有量は光波長変換粒子20個における特定の元素の含有量をそれぞれ測定し、その平均値とする。特定の元素の含有量の測定は、蛍光X線分析装置(製品名「EDX−800HS」、島津製作所製)を用いることにより行うことができる。蛍光X線分析(XRF)により測定される光波長変換粒子1、5中の特定の元素の含有量の下限は、1質量%以上であることがより好ましく、特定の元素の含有量の上限は20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。特定の元素の含有量が20質量%以下にすることにより、光波長変換粒子の形成時に充分な硬化を行うことができる。なお、光波長変換粒子が2種以上の特定の元素を含む場合には、上記含有量は特定の元素の合計の含有量を意味するものとする。
【0094】
光波長変換粒子1、5の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましい。光波長変換粒子1、5の平均粒子径を10μm以下とすることにより、分散性が良好となる。光波長変換粒子1、5の平均粒子径の下限は、光波長変換粒子1、5の取り出し効率及び粒子同士の凝集しにくさの観点から、0.5μm以上であることが好ましい。光波長変換粒子1、5の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による光波長変換粒子の観察において光波長変換粒子20個の粒子径を測定し、その平均値を算出することで求めることができる。
【0095】
光波長変換粒子1、5の粒度分布の標準偏差は、8μm以下となっていることが好ましい。この粒度分布の標準偏差が8μm以下となることにより、ばらつきが小さい光波長変換粒子を得ることができる。光波長変換粒子の粒度分布の標準偏差は、平均粒子径を求める際に測定した光波長変換粒子の粒子径の分布に基づいて算出することができる。
【0096】
光波長変換粒子1、5の形状は特に限定されず、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状等)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状等)、平板状、りん片状、不定形状等が挙げられる。なお、光波長変換粒子1の粒子径は、光波長変換粒子1の形状が球状でない場合、同体積を有する真球状の粒子径とする。
【0097】
光波長変換粒子1、5は、1個あたり1個以上の量子ドット3を含んでいることが好ましい。光波長変換粒子1個に含まれる量子ドットの数を1個以上とすることにより、輝度の低下を抑制することができる。1個の光波長変換粒子に含まれる量子ドットの個数は、透過型電子顕微鏡または走査透過型電子顕微鏡を用いてランダムに20個の光波長変換粒子の断面を10万倍〜50万倍の倍率で撮影し、得られた断面の画像から1個の光波長変換粒子に含まれる量子ドットの個数を算出し、算出した量子ドットの個数の平均値を算出することにより求めるものとする。
【0098】
光波長変換粒子1、5は、1個あたり2個以上の量子ドット3を含んでおり、かつ1個の光波長変換粒子1に含まれる量子ドット3における量子ドット3間の平均距離が1nm以上であることが好ましい。量子ドット間の平均距離を1nm以上とすることにより、量子ドット間のエネルギー移動に起因してクエンチングを起こす濃度消光が生じにくくなるので、発光効率の低下を抑制することができる。量子ドット間の平均距離は、透過型電子顕微鏡または走査透過型電子顕微鏡を用いてランダムに20個の光波長変換粒子の断面を10万倍〜50万倍の倍率で撮影し、得られた断面の画像から量子ドット間の距離を算出し、算出した量子ドット間の距離の平均値を算出することにより求めるものとする。量子ドット3における量子ドット3間の平均距離の上限は100nm以下であることがより好ましい。
【0099】
<樹脂粒子>
樹脂粒子2は、特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含むものである。特定の元素やカルボン酸は、樹脂粒子2中に固定されていなくともよいが、特定の元素やカルボン酸の溶出を防ぐ観点から、樹脂粒子2を構成する樹脂との結合によって樹脂粒子2中に固定されていることが好ましい。樹脂粒子2を構成する樹脂に特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを固定する場合には、上記特定の化合物が、重合性官能基を有することが好ましい。重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基、エポキシ基、イソシアネート基、または水酸基が挙げられる。特定の化合物およびカルボン酸の少なくともいずれかが、重合性官能基としてイソシアネート基を含む場合、樹脂粒子2を構成する樹脂の形成に用いられる重合性化合物は水酸基を含み、また特定の化合物およびカルボン酸の少なくともいずれかが、重合性官能基として水酸基を含む場合、樹脂粒子2を構成する樹脂の形成に用いられる重合性化合物はイソシアネート基を含むことが好ましい。特定の化合物が重合性官能基を含むことにより、重合性化合物と重合し、樹脂粒子2中に特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを固定することができる。特定の化合物が重合性官能基を含む場合、特定の化合物は重合性官能基を1以上含んでいればよいが、2以上含んでいてもよい。
【0100】
樹脂粒子2が、特定の元素やカルボン酸を含んでいるか否かは、以下のようにして確認することができる。まず、後述するように量子ドットのシェルの表面には、硫黄系化合物、リン系化合物、窒素系化合物、またはカルボキシル基含有化合物等からなるリガンドが結合しているので、光波長変換粒子から特定の元素やカルボン酸が検出された場合であっても、検出された特定の元素やカルボン酸は、樹脂粒子に含まれる特定の元素やカルボン酸であるとは限らない。一方で、量子ドットのリガンドはシェルの表面に結合しており、またリガンドの配位部位の大きさは通常1nm以内程度であるので、シェルの表面から3nm以上離れた位置には存在しない。したがって、量子ドットのシェルの表面から3nm以上離れた樹脂粒子の表面または内部の任意の位置において、X線光電子分光分析(XPS)やエネルギー分散型X線分析(EDS)によって特定の元素が検出されれば、または顕微赤外分光分析(IR)によってカルボン酸が検出されれば、樹脂粒子が特定の元素やカルボン酸を含んでいると判断できる。
【0101】
<量子ドット>
量子ドット3は、上記量子ドットの欄で説明したものと同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。なお、
図1および
図2に示される量子ドット3は、第1の量子ドット3Aと、第1の量子ドット3Aとは異なる波長域の発光帯を有する第2の量子ドット3Bとから構成されている。
【0102】
<コート層>
コート層4は、樹脂粒子2の表面を被覆するものである。コート層4の機能は、特に限定されないが、例えば、コート層4は、樹脂粒子の形状保持機能、樹脂粒子中の成分の粒子外への溶出防止機能、樹脂粒子内への分散液や組成物中の成分の浸透防止機能、酸素や水蒸気に対するバリア性付与機能、樹脂粒子に入射する励起光の反射防止機能、および分散液や組成物としたときの樹脂粒子分散性付与機能の少なくともいずれかの機能を有する。
【0103】
コート層4の膜厚は、コート層4が発揮する機能にもよるが、製造のしやすさおよび樹脂粒子を適度な大きさとする観点から、10nm以上5000nm以下となっていることが好ましく、20nm以上1000nm以下がより好ましい。特にコート層4がバリア性付与機能を発揮する場合には、バリア性を保ちつつ、コート層のクラック等を防止する観点からコート層4の膜厚は50nm以上1000nm以下となっていることがより好ましい。また、コート層4が反射防止機能を発揮し、かつ屈折率が後述するバインダ樹脂<コート層<樹脂粒子の関係またはバインダ樹脂>コート層>樹脂粒子の関係を満たす場合には、光波長変換粒子1表面での反射を抑制し、励起光を効率よく樹脂粒子2内に取り込む観点からコート層4の膜厚は50nm以上300nm以下となっていることがより好ましい。コート層4の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、光波長変換粒子1の断面を撮影し、その断面の画像においてコート層の膜厚を20箇所測定し、その20箇所の膜厚の平均値とする。
【0104】
本実施形態によれば、懸濁安定剤を含み、かつ0.02Pa・s以上10Pa・s以下の粘度を有する溶液を用いて、懸濁重合を行っているので、平均粒子径が小さく、かつ粒子径のばらつきが小さい光波長変換粒子1、5を得ることができる。すなわち、懸濁安定剤を用いているので、光波長変換粒子用混合物の分散性を向上させることができるので、光波長変換粒子の平均粒子径を小さくすることができるとともに、溶液の粘度を0.02Pa・s以上10Pa・s以下にしているので、攪拌時のせん断応力が光波長変換粒子用混合物に均等に加わり、粒子径のばらつきを小さくすることができる。
【0105】
量子ドットが耐熱性試験や耐湿熱性試験によって劣化しやすいのは、以下のことが原因であると考えられる。まず、上記したように、量子ドットの表面には硫黄系化合物やリン系化合物等からなるリガンドが配位しているが、このリガンドは光や熱で脱離しやすい。リガンドが量子ドットから脱離すると、量子ドットに水分や酸素が付着しやすくなるので、量子ドットは、酸化され、劣化してしまう。これにより、量子ドットが耐熱性試験や耐湿熱性試験によって劣化してしまうものと考えられる。これに対し、本実施形態においては、特定の化合物を用いて、光波長変換粒子を形成しているので、量子ドット3を包む樹脂粒子2が硫黄、リン、および窒素からなる群から選択される1以上の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかが含まれる。したがって、量子ドット3の近傍に硫黄成分、リン成分、窒素成分およびカルボン酸の少なくともいずれかを存在させることができ、これにより優れた耐熱性および耐湿熱性を得ることができる。これは、リガンドが量子ドットから脱離した場合であっても、樹脂粒子2中に存在する硫黄成分、リン成分、窒素成分およびカルボン酸の少なくともいずれかがリガンドの役割を補助するような機能(例えば、リガンドの代わりに量子ドットに結合して、リガンドを代替する機能および酸素を捕捉する機能の少なくともいずれかの機能)を発揮するので、量子ドットの劣化が抑制されるためであると考えられる。
【0106】
本実施形態によれば、光波長変換粒子1、5が、特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含んでいるので、上記の理由から、優れた耐熱性および耐湿熱性を得ることができる。また、光波長変換粒子1、5の平均粒子径が10μm以下であるので、光波長変換粒子の平均粒子径が小さく、また光波長変換粒子の粒度分布の標準偏差が、8μm以下であるので、光波長変換粒子の粒子径のばらつきも小さい。これにより、分散性が良好な光波長変換粒子1、5を得ることができる。
【0107】
量子ドットをガラス粒子に内包させた場合には、水分や酸素の浸入を抑制できるものの、脆いので、製造時や加工時、または耐熱性試験や耐湿熱性試験の際にクラックによる欠陥が発生しやすく、安定な品質を有する光波長変換粒子が得られにくい。これに対し、本実施形態においては、量子ドット3を樹脂粒子2に内包させているので、優れた柔軟性を有し、クラックによる欠陥を抑制することができる。これにより、安定な品質を有する光波長変換粒子1、5を提供することができる。
【0108】
<<<光波長変換粒子含有組成物>>>
光波長変換粒子含有組成物は、光波長変換粒子を含んでいる。光波長変換粒子含有組成物は、光波長変換粒子の他、硬化後に後述するバインダ樹脂となる重合性化合物を含んでいることが好ましい。この場合、光波長変換粒子含有組成物は、光波長変換粒子および重合性化合物の他、重合開始剤をさらに含んでいてもよい。光波長変換粒子含有組成物は、光散乱性粒子をさらに含んでいることが好ましく、また添加剤や溶剤を含んでいてもよい。
【0109】
光波長変換粒子含有組成物は、懸濁安定剤を含んでいてもよい。光波長変換粒子含有組成物が懸濁安定剤を含んでいることにより、光波長変換粒子の製造時に懸濁安定剤を用いていたことが確認できる。懸濁安定剤は、光波長変換粒子含有組成物中に存在していればよく、光波長変換粒子中に存在していてもよく、また光波長変換粒子外に存在していてもよい。光波長変換粒子含有組成物が懸濁安定剤を含んでいるか否かは、以下のようにして、確認することができる。光波長変換粒子含有組成物を95℃の湯の中に入れ、攪拌速度500rpmで120分攪拌する。攪拌した湯をろ過し、ろ液を90℃で10時間乾燥させる。乾燥させて得られた固形物を赤外分光分析(IR)や核磁気共鳴分光分析(NMR分光分析)によって分析する。これにより、光波長変換粒子含有組成物中に懸濁安定剤が含まれているか確認することができる。
【0110】
光波長変換粒子含有組成物を用いて、光波長変換層を形成する場合には、光波長変換粒子含有組成物の粘度は、10mPa・s以上10000mPa・s以下であることが好ましい。光波長変換粒子含有組成物の粘度が、10mPa・s未満であると、充分な膜厚を形成することが困難な場合があり、また10000mPa・sを超えると、光波長変換粒子含有組成物を塗布する際に塗出が困難となり、レベリング性が悪くなるおそれがある。光波長変換粒子含有組成物の粘度の下限は10mPa・s以上であることが好ましく、光波長変換粒子含有組成物の粘度の上限は10000mPa・s以下であることが好ましい。
【0111】
光波長変換粒子含有組成物の全固形分質量に対する光波長変換粒子の含有量は、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。光波長変換粒子の含有量が1質量%未満であると、充分な発光強度が得られないおそれがあり、また、光波長変換粒子の含有量が40質量%を超えると、製膜時の加工が困難となる場合がある。
【0112】
光波長変換粒子含有組成物の全固形分質量に対する重合性化合物の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上99質量%以下であることが好ましい。重合性化合物の含有量を30質量%以上とすることにより、光波長変換粒子含有組成物を硬化させる際に充分な硬化性を得ることができる。なお、光波長変換粒子含有組成物がラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物の両方を含む場合には、上記含有量はラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物の合計の含有量を意味するものとする。
【0113】
<<光波長変換粒子>>
光波長変換粒子含有組成物に含まれる光波長変換粒子は、上記で説明した光波長変換粒子であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0114】
<<重合性化合物および重合開始剤>>
重合性化合物および重合開始剤は、樹脂粒子2で説明した重合性化合物および重合開始剤と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。なお、光波長変換粒子含有組成物を用いて後述する光源を形成する場合には、光源内の発光体を封止する観点から、光波長変換粒子含有組成物中の重合性化合物は、エポキシ化合物やシラノール基および/またはアルコキシシリル基を有するポリシロキサン化合物であることが好ましい。
【0115】
<<光散乱性粒子>>
光散乱性粒子は、後述する光波長変換層や光波長変換部に進入した光を散乱させることによって光の進行方向を変化させる作用を有する粒子である。
【0116】
光散乱性粒子の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.3μm以上5μm以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、光波長変換シートの光波長変換効率が不充分となることがあり、充分な光散乱性を出すためには光散乱性粒子の添加量を多くする必要がある。一方、光散乱性粒子の平均粒子径が10μmを超えると、添加量(質量%)が同じであっても光散乱粒子の数が少なくなるため、散乱点の数が減り充分な光散乱効果が得られない。
【0117】
光散乱性粒子は、アクリル樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、およびウレタン樹脂粒子等の有機粒子であってもよいが、耐熱性試験の前後における輝度変化率を小さくことができ、また光波長変換シートへの入射光を好適に散乱させることが可能となり、この入射光に対する光波長変換効率の向上を好適に図ることできることから、無機粒子が好ましい。
【0118】
無機粒子は、Al
2O
3等のアルミニウム含有化合物、ZrO
2等のジルコニウム含有化合物、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)や酸化インジウムスズ(ITO)等のスズ含有化合物、MgOやMgF
2等のマグネシウム含有化合物、TiO
2やBaTiO
3等のチタン含有化合物、Sb
2O
5等のアンチモン含有化合物、SiO
2等のケイ素含有化合物、およびZnO等の亜鉛含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、バインダ樹脂との屈折率差を大きくすることができるので、大きなミー散乱強度を得ることができる観点からも好ましい。光波長変換シート10による入射光に対する光波長変換効率の向上をより好適に図ることができることから、光散乱性粒子は、2種以上の材料からなるものであってもよい。
【0119】
光波長変換粒子含有組成物の全固形分質量に対する光散乱性粒子の含有量は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の含有量を1質量%以上にすることにより、光散乱効果を充分に得ることができ、また、光散乱性粒子の含有量を50質量%以下とすることにより、ミー散乱が起こり易くなるので、光散乱効果を充分に得ることができ、さらに加工性の低下を抑制することができる。
【0120】
<<<光波長変換部材>>>
光波長変換部材は、上記光波長変換粒子含有組成物の硬化物を含むものである。光波長変換部材は、光波長変換部材が組み込まれる箇所等によって、適宜、形状や構造を変えることができる。例えば、光波長変換部材は、次に説明するような光波長変換シート、後述する光源、または光源近傍に設置される光波長変換層であってもよい。
【0121】
<<<光波長変換シート>>>
図3に示される光波長変換シート10は、光波長変換部材の一形態であり、入射する光のうち一部の光の波長を他の波長に変換し、入射した光の他の一部および波長変換された光を出射させるシートである。
図3に示される光波長変換シート10は、光波長変換層11と、光波長変換層11の両面に設けられた光透過性基材12、13と、光透過性基材12、13における光波長変換層11側の面とは反対側に設けられた光拡散層14、15とを備えている。
【0122】
光波長変換シート10においては、光拡散層14、15の表面が光波長変換シート10の表面10A、10Bを構成している。光波長変換シート10は、光透過性基材12、13を備えているが、バリア層を備えていないので、光透過性基材およびバリア層からなるバリアフィルムを備えていない。なお、光波長変換シート10は、光拡散層14/光透過性基材12/光波長変換層11/光透過性基材13/光拡散層15の構造となっているが、光波長変換層を有していれば、光波長変換シートの構造は特に限定されない。
【0123】
光波長変換シート10においては、
図4に示されるように、光波長変換シート10の表面10Aから光を入射させた場合には、光波長変換層11中の量子ドット4に入射した光L1は光L1とは異なる波長の光L2に変換されて、表面10Bから出射する。一方、表面10Aから光を入射させた場合であっても、光波長変換層11中の量子ドット4間を通過する光L1は波長変換されずに、表面10Bから出射する。
【0124】
光波長変換シート10においては、光波長変換粒子1によって優れた耐熱性および耐湿熱性が得られるため、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率(WVTR:Water Vapor Transmission Rate)が0.1g/(m
2・24h)以上となっていてもよい。水蒸気透過率はJIS K7129:2008に準拠した手法で得られる数値である。水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(製品名「PERMATRAN−W3/31」、MOCON社製)を用いて測定することができる。従来の光波長変換シートはバリアフィルムが形成されているので、光波長変換シート10は、従来の光波長変換シートに比べて水蒸気透過率が高くなっている、すなわち、光波長変換シート10は、従来の光波長変換シートに比べて水分が透過しやすい。後述するように、光波長変換シートが、光波長変換層の他、光学部材を備えている場合には、水蒸気透過率は光学部材を含めた光波長変換シート全体での水蒸気透過率である。
【0125】
光波長変換シート10においては、光波長変換粒子1によって優れた耐熱性および耐湿熱性が得られるため、シート全体で、23℃、相対湿度90%での酸素透過率(OTR: Oxygen Transmission Rate)が0.1cm
3/(m
2・24h・atm)以上となっていてもよい。光波長変換シート10は、上記水蒸気透過率および上記酸素透過率を同時に満たすものであってもよい。酸素透過率はJIS K7126:2006に準拠した手法で得られる数値である。酸素透過率は、酸素ガス透過率測定装置(製品名「OX−TRAN 2/21」、MOCON社製)を用いて測定することができる。従来の光波長変換シートはバリアフィルムが形成されているので、光波長変換シート10は、従来の光波長変換シートに比べて酸素透過率が高くなっている、すなわち、光波長変換シート10は、従来の光波長変換シートに比べて水分のみならず酸素が透過しやすい。上記と同様に、光波長変換シートが、光波長変換層の他、光学部材を備えている場合には、酸素透過率は光学部材を含めた光波長変換シート全体での酸素透過率である。
【0126】
光波長変換シート10における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率は1g/(m
2・24h)以上となっていてもよく、また光波長変換シート10における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が1cm
3/(m
2・24h・atm)以上となっていてもよい。
【0127】
光波長変換シート10の厚みは、10μm以上500μm以下となっていることが好ましい。光波長変換シート10の平均厚みがこの範囲であれば、バックライト装置の軽量化および薄膜化に適している。
【0128】
光波長変換シート10の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、光波長変換シート10の断面を撮影し、その断面の画像において光波長変換シート10の厚みを20箇所測定し、その20箇所の厚みの平均値とする。これらの中でも、光波長変換シート10の膜厚がμmオーダーであることを考慮すると、SEMを用いることが好ましい。SEMの場合、加速電圧は30kV、倍率は1000〜7000倍とすることが好ましく、TEM又はSTEMの場合、加速電圧は30kV、倍率は5万〜30万倍とすることが好ましい。
【0129】
<<光波長変換層>>
光波長変換層11は、光波長変換粒子1と、重合性化合物の硬化物であるバインダ樹脂16とを含んでいる。
図3に示される光波長変換層11はさらに光散乱性粒子17を含んでいる。光散乱性粒子17を含むことにより、光波長変換効率を向上させることができる。なお、光波長変換層11に含まれる光波長変換粒子1は、上記光波長変換粒子の欄で説明した光波長変換粒子1と同様であり、また光波長変換層11に含まれる光散乱性粒子17は、上記光波長変換含有粒子組成物の欄で説明した光散乱性粒子と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0130】
光波長変換層11においては、蛍光X線分析(XRF)により測定される光波長変換層11中の上記特定の元素の含有量は、0.5質量%以上となっていることが好ましい。特定の元素の含有量を0.5質量%以上にすることにより、量子ドットの劣化をより抑制できる。特定の元素の含有量の測定は、蛍光X線分析装置(製品名「EDX−800HS」、島津製作所製)を用いることにより行うことができる。蛍光X線分析(XRF)により測定される光波長変換層11中の特定の元素の含有量の下限は、1質量%以上であることがより好ましく、特定の元素の含有量の上限は20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。特定の元素の含有量が20質量%を越えると、光波長変換層の形成時に充分な硬化が行われないおそれがある。
【0131】
光波長変換層11の膜厚は、10μm以上200μm以下となっていることが好ましい。この光波長変換層11の平均厚みがこの範囲であれば、バックライト装置の軽量化および薄膜化に適している。光波長変換層11の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、光波長変換層11の断面を撮影し、その断面の画像において光波長変換層11の膜厚を20箇所測定し、その20箇所の膜厚の平均値とする。光波長変換層11の平均膜厚の上限は170μm未満であることがより好ましい。
【0132】
<バインダ樹脂>
バインダ樹脂16としては、重合性化合物の硬化物を用いることができる。重合性化合物としては、上記光波長変換粒子含有組成物の欄で説明した重合性化合物と同様ものを用いることができるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0133】
<<光透過性基材>>
光透過性基材12、13の厚みは、特に限定されないが、10μm以上300μm以下であることが好ましい。光透過性基材12、13の厚みが、10μm未満であると、光波長変換シートのアッセンブリ、取扱い時における皺や折れが発生するおそれがあり、また300μmを超えると、ディスプレイの軽量化および薄膜化に適さないおそれがある。光透過性基材12、13の厚みのより好ましい下限は50μm以上、より好ましい上限は200μm以下である。
【0134】
光透過性基材12、13の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて、光透過性基材12、13の断面を撮影し、その断面の画像において光透過性基材12、13の厚みを20箇所測定し、その20箇所の膜厚の平均値とする。
【0135】
光透過性基材12、13の構成原料としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。光透過性基材12、13の構成材料としては、好ましくは、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)が挙げられる。
【0136】
<<光拡散層>>
光拡散層14、15は、表面に凹凸形状を有しており、この凹凸形状によって光波長変換シート10に入射する光および出射する光を拡散させることができる。光拡散層14、15を設けることにより、光波長変換シート10における光波長変換効率をより高めることができる。光拡散層14、15は、光散乱性粒子とバインダ樹脂とを含んでいる。
【0137】
<光散乱性粒子>
光拡散層14、15中の光散乱性粒子は、主に、光拡散層14、15の表面に凹凸形状を形成するとともに光散乱性機能を発揮するためのものである。
【0138】
光拡散層14、15中の光散乱性粒子の平均粒子径は、例えば、1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の平均粒子径が1μm未満であると、光波長変換シートの光波長変換効率が不充分となることがあり、充分な光拡散性を出すためには光散乱性粒子の添加量を多くする必要がある。一方、光散乱性粒子の平均粒子径が30μmを超えると、光拡散性能は優れたものとなるが、光拡散層の光の透過率が大幅にダウンしやすくなる。
【0139】
光散乱性粒子は、有機材料からなる粒子または無機材料からなる粒子であってもよい。光散乱性粒子を構成する有機材料としては特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、メラミン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。なかでも、架橋アクリル樹脂が好適に用いられる。また、上記光拡散粒子を構成する無機材料としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛微粒子等の無機酸化物等が挙げられる。なかでも、シリカ及び/又はアルミナが好適に用いられる。
【0140】
<バインダ樹脂>
光拡散層14、15のバインダ樹脂としては、重合性化合物の硬化物を用いることができる。重合性化合物としては、上記コート層の欄で説明した重合性化合物と同様のものを用いることができるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0141】
<<光波長変換シートの製造方法>>
光波長変換シート10は、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、光透過性基材12の一方の面に、光散乱性粒子および重合性化合物を含む光拡散層用組成物を塗布し、乾燥させて、光拡散層用組成物の塗膜を形成する。また、同様に、光透過性基材13の一方の面に、光拡散層用組成物の塗膜を形成する。
【0142】
次いで、光照射等によって、光拡散層用組成物の塗膜を硬化させる。これにより、光透過性基材12の一方の面に光拡散層14が形成されて、光拡散層14付き光透過性基材12が形成される。また、同様にして、光拡散層15付き光透過性基材13を形成する。
【0143】
光拡散層15付き光透過性基材13を形成した後、光拡散層15付き光透過性基材13における光拡散層15側の面とは反対側の面に、上記光波長変換粒子含有組成物を塗布し、乾燥させて、光波長変換粒子含有組成物の塗膜を形成する。
【0144】
光波長変換粒子含有組成物の塗膜形成後、光拡散層14付き光透過性基材12における光拡散層14側の面とは反対側の面が上記光波長変換粒子含有組成物の塗膜と接するように、上記光波長変換粒子含有組成物の塗膜上に光拡散層14付き光透過性基材12を配置する。これにより、光波長変換粒子含有組成物の塗膜が、光透過性基材12、13間で挟まれる。
【0145】
次いで、光透過性基材12を介して上記光波長変換粒子含有組成物の塗膜を加熱して、または塗膜に電離放射線を照射して、光波長変換粒子含有組成物合物を硬化させて、光波長変換層11を形成するとともに、光波長変換層11と、光拡散層14付き光透過性基材12および光拡散層15付き光透過性基材13とを一体化させる。これにより、
図3に示される光波長変換シート10が得られる。
【0146】
<<他の光波長変換シート>>
光波長変換シートは、
図5に示されるように、光波長変換層11のみ(単層構造)の光波長変換シート20であってもよい。また、光波長変換シートは、
図6に示されるように、光波長変換層11と、光波長変換層11を支持する光透過性基材31とを備える光波長変換シート30であってもよい。光透過性基材31を備えることにより、光波長変換シート20より光波長変換シートの強度を高めることができる。
【0147】
<光透過性基材>
光波長変換シート30の光透過性基材31としては、光透過性基材12、13と同様のものを用いることができるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0148】
<<他の光波長変換シート>>
光波長変換シートは、
図7および
図8に示されるように、光波長変換層11と、光波長変換層11の少なくとも一方の面側に配置され、かつ光波長変換層11と一体化された光学部材41とを備える光波長変換シート40であってもよい。
【0149】
<光学部材>
本明細書において、「光学部材」とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性など)を有する部材を意味し、光学的特性を有するシート(フィルム)状ないし板状の部材であれば、特に限定されない。光学部材としては、レンズシート、導光板および光拡散板等の光学板、ならびに反射型偏光分離シート、偏光板等が挙げられる。なお、光学部材シートが、光波長変換シートの両面側に設けられている場合には、光学部材はそれぞれ別の光学的特性を有する光学部材であってもよい。本実施形態においては、光学部材がレンズシートである例について説明する。
【0150】
光学部材41は、
図7および
図8に示されるように、光透過性基材42と、光透過性基材42の一方の面に設けられたレンズ層43とを備えている。レンズ層43は、
図7および
図8に示されるように、シート状の本体部44、および本体部44の出光側に並べて配置された複数の単位レンズ45を備えている。光透過性基材42、レンズ層43、本体部44、および単位レンズ45は、後述する光透過性基材111、レンズ層112、本体部113、および単位レンズ114と同様の構成となっているので、ここでは説明を省略するものとする。
【0151】
光波長変換シート40においては、光学部材41の一方の面に光波長変換粒子含有組成物を直接塗布、硬化させることによって光波長変換層11と光学部材41とが一体化されている。なお、光波長変換層11と光学部材41は接着層を介して貼り合わせられていてもよい。
【0152】
<<他の光波長変換シート>>
光波長変換シートは、
図9に示されるように、光波長変換層11と、光波長変換層11の両面を覆うオーバーコート層51、52とを備える光波長変換シート50であってもよい。本実施形態においては、光波長変換層11の両面にオーバーコート層51、52が形成されているが、オーバーコート層は光波長変換層の少なくとも一方の面に形成されていれば、光波長変換層11の両面に形成されていなくともよい。なお、光波長変換層の一方の面のみにオーバーコート層が設けられている場合、光波長変換層の他方の面には光透過性基材が設けられていてもよい。
【0153】
<オーバーコート層>
オーバーコート層51、52は、光波長変換層11の表面を覆い、かつ塗工によって形成された樹脂からなる層である。オーバーコート層51、52上に光拡散層等の他の層が形成されていてもよい。
【0154】
オーバーコート層51、52は、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐために設けられているものである。このようなオーバーコート層51、52を光波長変換層11の少なくとも一方の面に設けることにより、量子ドット3を水分や酸素からより保護することができ、また光透過性基材を光波長変換層11の少なくとも一方の面に設けるよりも、光波長変換シートの厚みを薄くできる。
【0155】
オーバーコート層51、52は、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐ機能以外に、何らかの機能を有していてもよい。具体的には、オーバーコート層51、52は、例えば、アンチブロッキング性、光拡散性、帯電防止性、および反射防止性等の少なくともいずれかの機能を有する層であってもよい。オーバーコート層51、52が、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐ機能およびその他何らかの機能を有する層である場合、オーバーコート層51、52には、何らかの機能を有するための材料が添加されていてもよい。
【0156】
オーバーコート層51、52の膜厚は、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐとともに、光波長変換シートを薄型化する観点から、0.1μm以上100μm以下となっていることが好ましい。オーバーコート層51、52の膜厚は、光波長変換層11の膜厚と同様の手法によって測定することができる。オーバーコート層51、52の膜厚の下限は1μm以上であることがより好ましく、上限は50μm以下であることがより好ましい。
【0157】
オーバーコート層51、52は、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート系化合物、エポキシ化合物、イソシアネートおよびポリオールの組み合わせ、金属アルコキシド、ケイ素含有樹脂、水溶性高分子、またはこれらの混合物を含むオーバーコート層用組成物を用いて形成することが可能である。これらの中でも、オーバーコート層61、62は、光波長変換層11が直接大気に暴露されるのを防ぐ観点から、アクリル酸亜鉛、アルコキシシランの加水分解生成物、ポリビニルアルコール、ポリシラザン、またはこれらの混合物を含むオーバーコート層用組成物を用いて形成されることが好ましい。
【0158】
光波長変換シート20、30、40、50においては、シート全体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m
2・24h)以上となっていてもよい。光波長変換シート20、30、40、50においては、シート全体で、23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm
3/(m
2・24h・atm)以上となっていてもよい。光波長変換シート20、30、40、50における40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率は1g/(m
2・24h)以上となっていてもよく、また光波長変換シート20、30、40、50における23℃、相対湿度90%での酸素透過率が1cm
3/(m
2・24h・atm)以上となっていてもよい。
【0159】
<<他の光波長変換シート>>
光波長変換シートは、
図10に示されるような光波長変換シート60であってもよい。この場合、光波長変換シート60の水蒸気透過率や酸素透過率は、上述した範囲内になくてよい。
【0160】
図10に示される光波長変換シート60は、光波長変換層11と、光波長変換層11の両面に設けられたバリアフィルム61、62と、バリアフィルム61、62における光波長変換層11側の面とは反対側に設けられた光拡散層13、14とを備えている。光波長変換シート60においては、光拡散層13、14の表面が光波長変換シート60の表面60A、60Bを構成している。
【0161】
<バリアフィルム>
バリアフィルム61、62は、水分や酸素の透過を抑制して、量子ドット3を水分や酸素から保護するための部材である。ここで、本明細書における「バリアフィルム」とは、部材単体で、40℃、相対湿度90%での水蒸気透過率が0.1g/(m
2・24h)未満となり、かつ23℃、相対湿度90%での酸素透過率が0.1cm
3/(m
2・24h・atm)未満となる部材を意味するものとする。バリアフィルムには、単層構造のフィルムのみならず、多層構造のフィルムも含まれる。光波長変換層11を挟持する状態でバリアフィルム61、62を設置することで、より量子ドット3の耐熱性および耐湿熱を向上させることができる。
図10に示されるバリアフィルム61、62は、光透過性基材12、13と、光透過性基材12、13における光波長変換層11側に設けられ、かつ水分や酸素の透過を抑制する機能を有するバリア層63、64とを備えている。
【0162】
バリアフィルム61、62の水蒸気透過率(WVTR:Water Vapor Transmission Rate)は、40℃、相対湿度90%の条件下において、1.0×10
−2g/(m
2・24h)以下であることが更に好ましい。なお、上記水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(製品名「PERMATRAN−W3/31」、MOCON社製)を用いて測定することができる。
【0163】
バリアフィルム61、62の酸素透過率(OTR: Oxygen Transmission Rate)は、23℃、相対湿度90%の条件下において、1.0×10
−2cm
3/(m
2・24h・atm)以下であることが更に好ましい。なお、上記酸素透過率は、酸素ガス透過率測定装置(製品名「OX−TRAN 2/21」、MOCON社製)を用いて測定することができる。
【0164】
(バリア層)
バリア層63、64は、水分や酸素の透過を抑制する機能を有する蒸着層から構成されている。蒸着層は、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法等の蒸着法で形成された層である。蒸着層は、バリア性を高めることができるという利点を有する。
【0165】
蒸着層の形成材料としては、蒸着法によって蒸着でき、かつバリア性が得られるものであれば特に限定されないが、例えば、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の無機酸化物や金属等が挙げられる。
【0166】
蒸着層の膜厚は、特に限定されないが、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。蒸着層の膜厚が0.01μm未満であると、蒸着層のバリア性能が不充分となることがあり、また1μmを超えると、蒸着層のクラック等によりバリア性能の劣化が起こりやすくなることがある。蒸着層の厚みのより好ましい下限は0.03μm以上であり、より好ましい上限は0.5μm以下である。
【0167】
蒸着層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、光波長変換シート60の断面を撮影し、その断面の画像において蒸着膜の膜厚を20箇所測定し、その20箇所の膜厚の平均値とする。また、蒸着層は、単一の層であってもよく、複数の層が積層されたものであってもよい。蒸着層が複数層積層されたものである場合、蒸着層を構成する各層は、直接積層形成されていてもよく、貼り合わされていてもよい。
【0168】
光波長変換シート10、20、30、40、50、60は、バックライト装置および画像表示装置に組み込んで使用することができる。以下、光波長変換シート10をバックライト装置および画像表示装置に組み込んだ例について説明する。
図11は本実施形態に係るバックライト装置を含む画像表示装置の概略構成図であり、
図12は
図11に示されるレンズシートの斜視図であり、
図13は
図12のレンズシートのII−II線に沿った断面図である。
図14、
図16は本実施形態に係る他のバックライト装置の概略構成図であり、
図15は
図14に示される光源の概略構成図であり、
図17は
図16に示される光学板の入光面付近の拡大図である。
【0169】
<<<画像表示装置>>>
図11に示される画像表示装置80は、バックライト装置90と、バックライト装置90の出光側に配置された表示パネル130とを備えている。画像表示装置80は、画像を表示する表示面80Aを有している。
図11に示される画像表示装置80においては、表示パネル130の表面が表示面80Aとなっている。
【0170】
<<表示パネル>>
図11に示される表示パネル130は、液晶表示パネルであり、入光側に配置された偏光板131と、出光側に配置された偏光板132と、偏光板131と偏光板132との間に配置された液晶セル133とを備えている。
【0171】
<<バックライト装置>>
図11に示されるバックライト装置90は、エッジライト型のバックライト装置として構成され、光源100と、光源100の側方に配置された導光板としての光学板105と、光学板105の出光側に配置された光波長変換シート10と、光波長変換シート10の出光側に配置されたレンズシート110と、レンズシート110の出光側に配置されたレンズシート115と、レンズシート115の出光側に配置された反射型偏光分離シート120と、光学板105の出光側とは反対側に配置された反射シート125とを備えている。バックライト装置90は、光学板105、レンズシート110、115、反射型偏光分離シート120、反射シート125を備えているが、これらのシート等は備えられていなくともよい。本明細書において、「出光側」とは、各部材においてバックライト装置から出射する方向に向かう光が出射される側を意味する。なお、光波長変換シート10を組み込むバックライト装置は、エッジライト型に限らず、直下型のバックライト装置であってもよい。
【0172】
光波長変換シート10における光学板105側の面が表面10A(入光面)となっており、光波長変換シート10におけるレンズシート110側の面が表面10B(出光面)となっている。
【0173】
<光源>
光源100は、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯や、点状の発光ダイオード(LED)や白熱電球等の発光体を備えている。本実施の形態において、光源100は、光学板105の後述する入光面95C側に、線状に並べて配置された多数の点状発光体、具体的には、多数の発光ダイオード(LED)によって、構成されている。
【0174】
バックライト装置90においては光波長変換シート10が配置されていることに伴い、光源100は、単一の波長域の光を放出する発光体のみを用いることができる。例えば、光源は、色純度の高い青色光を発する青色発光ダイオードのみを用いることができる。
【0175】
<光学板>
導光板としての光学板105は、平面視形状が四角形形状に形成されている。光学板105は、表示パネル130側の一方の主面によって構成された出光面105Aと、出光面105Aに対向するもう一方の主面からなる裏面105Bと、出光面105Aおよび裏面105Bの間を延びる側面とを有している。側面のうちの光源100側の側面が、光源100からの光を受ける入光面105Cとなっている。入光面105Cから光学板105内に入射した光は、入光面105Cと、入光面105Cと対向する反対面とを結ぶ方向(導光方向)に光学板内を導光され、出光面105Aから出射される。
【0176】
<レンズシート>
レンズシート110、115は、入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させる機能を有する。本実施形態においては、
図12に示されるように、入射角度が大きい光L3の進行方向を変化させて出光側から出射させて、正面方向の輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)とともに、入射角度が小さい光L4を反射させて、光波長変換シート10側に戻す機能(再帰反射機能)を有している。レンズシート110、115は、光透過性基材111と、光透過性基材111の一方の面に設けられたレンズ層112とを備えている。
【0177】
(光透過性基材)
光透過性基材111は、光透過性基材12、13と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0178】
(レンズ層)
レンズ層112は、
図12および
図13に示されるように、シート状の本体部113、および本体部113の出光側に並べて配置された複数の単位レンズ114を備えている。
【0179】
本体部113は、単位レンズ114を支持するシート状部材として機能する。
図12および
図13に示されるように、本体部113の出光側面113A上には、単位レンズ114が隙間をあけることなく並べられている。したがって、レンズシート110、115の出光面110B、115Bは、レンズ面によって形成されている。その一方で、
図13に示すように、本体部113は、出光側面113Aに対向する入光側面113Bとして、レンズ層112の入光側面をなす平滑な面を有している。
【0180】
単位レンズ114は、本体部113の出光側面113A上に並べて配列されている。
図12に示されるように単位レンズ114は、単位レンズ114の配列方向ADと交差する方向に線状、とりわけ本実施の形態においては直線状に、延びている。また本実施の形態において、一つのレンズシート110、115に含まれる多数の単位レンズ114は、互いに平行に延びている。また、レンズシート110、115の単位レンズ114の長手方向LDは、レンズシート110、115における単位レンズ114の配列方向ADと直交している。
【0181】
単位レンズ114は、三角柱状であってもよいし、波状や例えば半球状のような椀状であってもよい。具体的には、単位レンズとしては、単位プリズム、単位シリンドリカルレンズ、単位マイクロレンズ等が挙げられる。なお、そのような単位レンズ形状を有するレンズシートとしては、プリズムシート、レンチキュラーレンズシート、マイクロレンズシート等が挙げられる。
【0182】
図11から理解され得るように、レンズシート110の単位レンズ114の配列方向とレンズシート115の単位レンズ114の配列方向とは交差、さらに限定的には直交している。
【0183】
<反射型偏光分離シート>
反射型偏光分離シート120は、レンズシート115から出射される光のうち、第1の直線偏光成分(例えば、P偏光)のみを透過し、かつ第1の直線偏光成分と直交する第2の直線偏光成分(例えば、S偏光)を吸収せずに反射する機能を有する。反射型偏光分離シート120で反射された第2の直線偏光成分は再度反射され、偏光が解消された状態(第1の直線偏光成分と第2の直線偏光成分とを両方含んだ状態)で、再度、反射型偏光分離シート120に入射する。
【0184】
反射型偏光分離シート120としては、3M社から入手可能な「DBEF」(登録商標)を用いることができる。また、「DBEF」以外にも、Shinwha Intertek社から入手可能な高輝度偏光シート「WRPS」やワイヤーグリッド偏光子等を、反射型偏光分離シート120として用いることができる。
【0185】
<反射シート>
反射シート125は、光学板105の裏面105Bから漏れ出した光を反射して、再び光学板105内に入射させる機能を有する。反射シート125は、白色の散乱反射シート、金属等の高い反射率を有する材料からなるシート、高い反射率を有する材料からなる薄膜(例えば金属薄膜)を表面層として含んだシート等から、構成され得る。
【0186】
<<他のバックライト装置>>
図11に示されるバックライト装置90は、光波長変換シート10を備えているが、光波長変換部材を備えていれば、バックライト装置の構造は、特に限定されない。例えば、バックライト装置は、
図14に示されるように、光波長変換シート10および光源100の代わりに、光源160を備えるバックライト装置150であってもよい。光源160は、光波長変換部材の一形態である。
【0187】
光源160は、
図15に示されるように、基板161と、基板161上に配置された開口部162Aを有する反射部材162と、基板161上かつ反射部材162の開口部162A内に配置された発光ダイオード等の発光体163と、発光体163を覆うように反射部材162の開口部162Aに充填された光波長変換部164とを備えている。
【0188】
光波長変換部164は、光波長変換層11と形状および配置箇所が異なるだけで、光波長変換部164の構成や物性は光波長変換層11と同様である。光波長変換部164は、光波長変換粒子1と、重合性化合物としてのエポキシ化合物やシラノール基および/またはアルコキシシリル基を有するポリシロキサン化合物とを含む光波長変換粒子含有組成物の硬化物であることが好ましい。光波長変換部164は反射部材162の開口部162A内に上記光波長変換粒子含有組成物を充填し、熱硬化させることによって形成することが可能である。なお、光波長変換部164を有する光源160を用いる場合には、光波長変換部164は発光体163を覆うように配置されていれば、構造は特に限定されない。
【0189】
<<他のバックライト装置>>
バックライト装置は、
図16に示されるバックライト装置170であってもよい。具体的には、
図16に示されるバックライト装置170は、光波長変換シート10の代わりに、光源100と光学板105との間に配置された光透過性の光波長変換層180を備えている。光波長変換層180は、光波長変換部材の一形態である。
【0190】
光波長変換層180は、
図17に示されるように光学板105の入光面105Cに設けられている。光波長変換層180は、長手方向が光源90の配列方向に沿うように線状に配置されている。
【0191】
光波長変換層180は、光波長変換層11と配置箇所や形状が異なるだけで、光波長変換層180の構成や物性は光波長変換層11と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0192】
本実施形態によれば、特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含む樹脂粒子2によって、量子ドット3の劣化を抑制できるので、光波長変換シート10、20、30、40、50のように、バリアフィルムを省略できる。これにより、光波長変換シートの工程を簡素化できることにより品質を良化させやすくなるとともに、光波長変換シートの薄型化を図ることができる。
【0193】
バリアフィルムを備える光波長変換シートにおいては、耐熱性試験や耐湿熱性試験を行うと、バリアフィルムにピンホールやクラック等の点状の欠点部が発生しやすい。バリアフィルムに欠点部が発生すると、そこから水分や酸素が入り込み、一部の量子ドットが劣化して、光波長変換シートにおいて点状に輝度が低下した部分(輝度欠点)が発生するおそれがある。この点状の輝度欠点は、全体的に量子ドットが劣化して、均一に輝度が低下する場合よりも、視認されやすい。これに対し、本実施形態によれば、特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含む樹脂粒子2により量子ドット3の劣化を抑制できるので、たとえ、バリアフィルム71、72に欠点部が発生して、この欠点部から水分や酸素が入り込んだ場合であっても、点状の輝度欠点を抑制することができる。
【0194】
本実施形態によれば、特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含む樹脂粒子2によって量子ドット3の劣化を抑制できるので、光波長変換シート10、20、30、40、50、60において、周縁部10C、20A、30A、40A、50A、60Cに存在する量子ドット3の劣化も抑制できる。
【0195】
光波長変換シート40においては、光波長変換層11と光学部材41が一体化されているので、光波長変換シートと光学部材とを別個独立に配置する場合に比べて、簡素化された薄型のバックライト装置を得ることができる。すなわち、光波長変換シートと光学部材とを別個独立に配置する場合には、光波長変換シートと光学部材との間には空気界面が存在するので、バックライト装置の中に比較的大きな空隙を要する。これに対し、本実施形態においては、光波長変換層11と光学部材41とが一体化されているので、光波長変換層11と光学部材41との間には空気界面が存在しない。これにより、簡素化された薄型のバックライト装置を得ることができる。
【0196】
発光ダイオード等の発光体は、発光時に熱も発する。このため、通常であれば、光源に光波長変換部を組み込む場合や光源に近接した位置に光波長変換部を配置する場合には、量子ドットの劣化を抑制するために光波長変換部を覆うバリア部材が必要となる。これに対し、本実施形態においては、光波長変換部164や光波長変換層180中の光波長変換粒子1のバインダ樹脂3により光波長変換部164や光波長変換層180における耐熱性および耐湿熱性を向上させることができるので、光波長変換部164や光波長変換層180をバリア部材で覆わなくとも、量子ドット4の劣化を抑制できる。
【実施例】
【0197】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
【0198】
<<光波長変換粒子の製造>>
下記の手順に従って、光波長変換粒子を得た。
<実施例1>
(光波長変換粒子1)
まず、500mlのセパラブルフラスコに10質量%のポリビニルアルコール水溶液47.25質量部およびイオン交換水267.55質量部を投入し、攪拌棒で攪拌して、水に対するポリビニルアルコールの濃度が1.52質量%のポリビニルアルコール水溶液Aを得た。B型粘度計(製品名「TVB−10」、東機産業株式会社製)を用いて、得られたポリビニルアルコール水溶液Aの25℃における粘度を測定したところ、粘度は0.03Pa・sであった。なお、後述するポリビニルアルコール水溶液B〜Fの25℃における粘度も上記と同じ粘度計を用いて測定した。
【0199】
一方で、ディスポカップに、緑色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径3.3nm)1.0質量部と、赤色発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒径5.2nm)1.0質量部と、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(製品名「A−DCP」、新中村化学工業社製)50質量部との混合物を投入した。次いで、これらの混合物が投入されたディスポカップにテトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)(製品名「EGMP−4」、SC有機化学社製)50質量部と熱ラジカル重合開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、東京化成工業社製)1.0質量部を投入し、攪拌して、光波長変換粒子用混合物1を得た。
【0200】
そして、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)を投入してから10分以内にポリビニルアルコール水溶液Aに光波長変換粒子用混合物1を投入した。そして、ホモジナイザーを用いて、攪拌速度7000rpmで10分間攪拌させて、懸濁させた。なお、攪拌は、セパラブルフラスコの内容物が飛散しないようにセパラブルフラスコの周りをラップで囲った状態で行われた。
【0201】
懸濁させた後、90℃のウォーターバスに光波長変換粒子用混合物1が分散したポリビニルアルコール水溶液Aが入ったセパラブルフラスコを浸した。そして、光波長変換粒子用混合物1が分散したポリビニルアルコール水溶液Aを90℃に保ちながら、攪拌速度200rpmで1時間攪拌し、懸濁重合させて、粒子状の重合物を得た。その後、攪拌しながら重合物を含むポリビニルアルコール水溶液Aが入ったセパラブルフラスコを水浴で冷却した。次いで、反応液を、メンブランフィルターを用いて吸引ろ過し、ろ過の残渣をイオン交換水で洗浄して、減圧乾燥を行い、光波長変換粒子1を得た。光波長変換粒子1においては緑色発光量子ドットおよび赤色発光量子ドットが樹脂粒子中に内包されたものであった。
【0202】
<実施例2>
(光波長変換粒子2)
ポリビニルアルコール水溶液Aの代わりに、水に対するポリビニルアルコールの濃度が4.57質量%のポリビニルアルコール水溶液Bを用いたこと以外は、光波長変換粒子1と同様の手順によって、光波長変換粒子2を得た。ポリビニルアルコール水溶液Bは、500mlのセパラブルフラスコに10質量%のポリビニルアルコール水溶液141.75質量部およびイオン交換水182.50質量部を投入して、攪拌棒で攪拌することによって得られたものであった。得られたポリビニルアルコール水溶液Bの25℃における粘度を測定したところ、粘度は0.055Pa・sであった。
【0203】
<実施例3>
(光波長変換粒子3)
ポリビニルアルコール水溶液Aの代わりに、水に対するポリビニルアルコールの濃度が7.62質量%のポリビニルアルコール水溶液Cを用いたこと以外は、光波長変換粒子1と同様の手順によって、光波長変換粒子3を得た。ポリビニルアルコール水溶液Cは、500mlのセパラブルフラスコに10質量%のポリビニルアルコール水溶液236.25質量部およびイオン交換水97.46質量部を投入して、攪拌棒で攪拌することによって得られたものであった。得られたポリビニルアルコール水溶液Cの25℃における粘度を測定したところ、粘度は0.22Pa・sであった。
【0204】
<実施例4>
(光波長変換粒子4)
ポリビニルアルコール水溶液Aの代わりに、水に対するポリビニルアルコールの濃度が18質量%のポリビニルアルコール水溶液Dを用いたこと以外は、光波長変換粒子1と同様の手順によって、光波長変換粒子4を得た。ポリビニルアルコール水溶液Dは、500mlのセパラブルフラスコにポリビニルアルコール粉末55.81質量部およびイオン交換水310.08質量部を投入して、攪拌棒で攪拌することによって得られたものであった。得られたポリビニルアルコール水溶液Dの25℃における粘度を測定したところ、粘度は6Pa・sであった。
【0205】
<実施例5>
(光波長変換粒子5)
テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)の代わりに、2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート(製品名「ライトエステルP−2M」、共栄社化学社製)を50質量部用いたこと以外は、光波長変換粒子1と同様の手順によって、光波長変換粒子5を得た。
【0206】
<実施例6>
(光波長変換粒子6)
テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)の代わりに、ステアリルアミン(製品名「ファーミン80」、花王社製)を50質量部用いたこと以外は、光波長変換粒子1と同様の手順によって、光波長変換粒子6を得た。
【0207】
<実施例7>
(光波長変換粒子7)
テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)の代わりに、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート(製品名「M−5300」、東亞合成社製)を50質量部用いたこと以外は、光波長変換粒子1と同様の手順によって、光波長変換粒子7を得た。
【0208】
<比較例1>
(光波長変換粒子8)
テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)を用いなかったこと以外は、光波長変換粒子1と同様の手順によって、光波長変換粒子8を得た。
【0209】
<比較例2>
(光波長変換粒子9)
ポリビニルアルコール水溶液Aの代わりに、水に対するポリビニルアルコールの濃度が7.62質量%のポリビニルアルコール水溶液Eを用いたこと以外は、光波長変換粒子1と同様の手順によって、光波長変換粒子9を得た。ポリビニルアルコール水溶液Eは、500mlのセパラブルフラスコに、光波長変換粒子1で用いたポリビニルアルコールよりも分子量が低いポリビニルアルコールを用いて作製された10質量%のポリビニルアルコール水溶液236.25質量部およびイオン交換水97.46質量部を投入して、攪拌棒で攪拌することによって得られたものであった。得られたポリビニルアルコール水溶液Eの25℃における粘度を測定したところ、粘度は0.01Pa・sであった。
【0210】
<比較例3>
(光波長変換粒子10)
ポリビニルアルコール水溶液Aの代わりに、水に対するポリビニルアルコールの濃度が20質量%のポリビニルアルコール水溶液Fを用いたこと以外は、光波長変換粒子1と同様の手順によって、光波長変換粒子10を得た。ポリビニルアルコール水溶液Fは、500mlのセパラブルフラスコにポリビニルアルコール粉末62.02質量部およびイオン交換水310.08質量部を投入して、攪拌棒で攪拌することによって得られたものであった。得られたポリビニルアルコール水溶液Fの25℃における粘度を測定したところ、粘度は12Pa・sであった。
【0211】
<<光波長変換粒子含有組成物の調整>>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光波長変換粒子含有組成物を得た。
<実施例8>
(光波長変換粒子含有組成物1)
・光波長変換粒子1:20質量部
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):80質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
【0212】
<実施例9〜14および比較例4〜6>
(光波長変換粒子含有組成物2〜10)
光波長変換粒子含有組成物2〜10においては、光波長変換粒子1の代わりに、表2に示される各光波長変換粒子を用いたこと以外、光波長変換粒子含有組成物1と同様の配合とした。なお、光波長変換粒子2〜10の配合量は、光波長変換粒子1と同様とした。
【0213】
<光拡散層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光拡散層用組成物1を得た。
(光拡散層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:99質量部
・光散乱性粒子(架橋ポリスチレン樹脂粒子、製品名「SBX−4」、積水化成品工業株式会社製、平均粒子径4μm):158質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184、BASFジャパン社製):1質量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン=1:1(質量比)):170質量部
【0214】
<オーバーコート層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、オーバーコート層用組成物1を得た。
(オーバーコート層用組成物1)
・アクリル酸亜鉛(製品名「ZN−DA」日本触媒社製):25質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物(製品名「アロニックス(登録商標)M−403」、東亞合成社製):5質量
・メタノール:70質量部
・ラジカル重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184、BASFジャパン社製):1質量部
【0215】
<実施例15>
大きさ7インチおよび厚みが50μmの光透過性基材としての2枚のポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の片面にそれぞれ上記光拡散層用組成物1を、塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、80℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。その後、紫外線を積算光量が500mJ/cm
2になるように照射して塗膜を硬化させることにより膜厚が10μmの光拡散層を形成し、光拡散層付きPET基材を形成した。
【0216】
次いで、一方の光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面に光波長変換粒子含有組成物1を塗布し、80℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、塗膜に他方の光拡散層付きPET基材における光拡散層側の面とは反対側の面が接するように他方の光拡散層付きPET基材を塗膜に積層した。この状態で、紫外線を積算光量が500mJ/cm
2になるように照射して塗膜を硬化させ、膜厚が100μmの光波長変換層を形成するとともに、光波長変換層と、2枚の光拡散層付きPET基材とを一体化した。これにより、実施例15に係る光波長変換シートを得た。
【0217】
<実施例16〜21および比較例7〜9>
実施例16〜21および比較例7〜9においては、光波長変換粒子含有組成物1の代わりに表3に示される各光波長変換粒子含有組成物を用いたこと以外は、実施例15と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0218】
<実施例22>
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の一方の面に光波長変換粒子含有組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、100℃で加熱して、塗膜を硬化させて、光波長変換層を形成した。そして、光波長変換層のPET基材側の面とは反対側の面に、オーバーコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm
2になるように照射して塗膜を硬化させて、膜厚5μmのオーバーコート層を得た。次いで、PET基材を剥離した後、光波長変換層のオーバーコート層側の面とは反対側の面に、オーバーコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、紫外線を積算光量が500mJ/cm
2になるように照射して塗膜を硬化させて、膜厚5μmのオーバーコート層を得た。これにより、光波長変換層と、光波長変換層の両面に形成されたオーバーコート層とからなる光波長変換シートを得た。
【0219】
<比較例10>
比較例10においては、光波長変換粒子含有組成物1の代わりに光波長変換粒子含有組成物8を用いたこと以外は、実施例21と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0220】
<実施例23>
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の一方の面にウレタンアクリレートを含むプリズム層用組成物を均一に塗布して、プリズム層用組成物の塗膜を形成し、プリズムシート用積層体を形成した。そして、所望の単位プリズムの形状に対し逆形状の凹部を有し、かつ回転する成形用型にレンズ層用組成物の塗膜が成形用型側となるようにプリズムシート用積層体を走行速度20m/分で供給して成形用型によってプリズム層用組成物の塗膜に単位プリズムの形状を賦形するとともに、PET基材を介してプリズム層用組成物の塗膜に紫外線等の光を照射して、プリズム層用組成物の塗膜を硬化させた。最後に、硬化させたプリズム層用組成物の塗膜をPET基材と共に成形用型から剥離して、PET基材の一方の面にプリズム層が形成されたプリズムシートを得た。プリズム層は、シート状の本体部と、この本体部上に並べて配置され、かつ各々が配列方向と交差する方向に延びており、頂角が90°であり、幅が47μmであり、高さが30μmである複数の三角柱状の単位プリズムを有していた。
【0221】
次いで、プリズムシートにおけるPET基材のプリズム層側の面とは反対側の面に光波長変換粒子含有組成物1を塗布して、塗膜を形成した。そして、100℃で加熱して、塗膜を硬化させることにより、プリズムシートと一体化した膜厚が100μmの光波長変換層を形成した。これにより、実施例23に係る光波長変換シートを得た。
【0222】
<比較例11>
比較例11においては、光波長変換粒子含有組成物1の代わりに光波長変換粒子含有組成物8を用いたこと以外は、実施例23と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0223】
<実施例24>
まず、2枚のバリアフィルムを次のような方法で作製した。高周波スパッタリング装置において、電極に周波数13.56MHz、電力5kWの高周波電力を印加することにより、チャンバー内で放電を生じさせて、大きさ7インチおよび厚みが50μmの光透過性基材としてのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の片面にターゲット物質(シリカ)からなる、厚みが50nmであり、かつ屈折率が1.46であるシリカ蒸着層を形成した。これにより、PET基材の一方の面にシリカ蒸着層が形成されたバリアフィルムを2枚形成した。
【0224】
次いで、両方のバリアフィルムにおけるシリカ蒸着層側の面とは反対側の面に上記光拡散層用組成物1を、塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、80℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。その後、紫外線を積算光量が500mJ/cm
2になるように照射して塗膜を硬化させることにより膜厚が10μmの光拡散層を形成し、光拡散層付きバリアフィルムを形成した。
【0225】
次いで、一方の光拡散層付きバリアフィルムのシリカ蒸着層側に光波長変換粒子含有組成物1を塗布し、塗膜を形成した。そして、塗膜における光拡散層付きバリアフィルムのシリカ蒸着層の面に、シリカ蒸着層が接するように他方の光拡散層付きバリアフィルムを積層した。この状態で、100℃で加熱して、塗膜を硬化させることにより、両方の光拡散層付きバリアフィルムに密着した膜厚が100μmの光波長変換層を形成した。これにより、実施例24に係る光波長変換シートを得た。
【0226】
<比較例12>
比較例12においては、光波長変換粒子含有組成物1の代わりに光波長変換粒子組成物8を用いたこと以外は、実施例24と同様にして、光波長変換シートを作製した。
【0227】
<光波長変換粒子の平均粒子径測定および粒度分布の標準偏差算出>
実施例1〜7および比較例1〜3で得られた光波長換粒子1〜10ならびに実施例8〜14および比較例4〜6に係る光波長変換粒子含有組成物1〜10中の光波長変換粒子1〜10の平均粒子径をそれぞれ測定するとともに、光波長変換粒子の粒度分布の標準偏差をそれぞれ求めた。具体的には、光波長変換粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による光波長変換粒子の観察において光波長変換粒子20個の粒子径を測定し、その平均値を算出することで求め、また光波長変換粒子の粒度分布の標準偏差は、平均粒子径を求める際に測定した光波長変換粒子の粒子径の分布に基づいて算出した。なお、表1および表2中の平均粒子径および標準偏差の欄における「−」は、光波長変換粒子が大きすぎて測定不能であったことを意味する。
【0228】
<光波長変換粒子における樹脂粒子中の特定の元素およびカルボン酸の確認>
実施例1〜7および比較例1〜3で得られた光波長換粒子1〜10ならびに実施例8〜14および比較例4〜6に係る光波長変換粒子含有組成物1〜10中の光波長変換粒子1〜10において、光波長変換粒子の樹脂粒子から上記特定の元素またはカルボン酸が検出されるか否かそれぞれ確認した。具体的には、まず、光波長変換粒子含有組成物1〜10においては、光波長変換粒子含有組成物1〜10から光波長変換粒子1〜10をそれぞれ取り出した。そして、実施例1〜7および比較例1〜3で得られた光波長換粒子1〜10ならびに実施例8〜14および比較例4〜6に係る光波長変換粒子含有組成物1〜10中の光波長変換粒子1〜10において、エネルギー分散型X線分析装置(製品名「JEM−2800」(100mm
2シリコンドリフト検出器(SDD)搭載)、日本電子社製)を用いて、加速電圧100kVおよび測定時間30秒の条件下で、量子ドットのシェルの表面から3nm以上離れた樹脂粒子の表面または内部の任意の位置において、硫黄元素、リン元素、および窒素元素の少なくともいずれかが検出されるか否か確認した。また、赤外顕微鏡(製品名「Nicolet iN10」、Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、量子ドットのシェルの表面から3nm以上離れた樹脂粒子の表面または内部の任意の位置において、カルボン酸が検出されるか否か確認した。確認基準は以下の通りとした。
○:硫黄元素、リン元素、窒素元素およびカルボン酸のいずれかが検出された。
×:硫黄元素、リン元素、窒素元素およびカルボン酸のいずれも検出されなかった。
【0229】
<光波長変換粒子の分散性評価>
実施例8〜14および比較例4〜6に係る光波長変換粒子含有組成物1〜10を観察して、光波長変換粒子1〜10の分散性を評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:光波長変換粒子の凝集が観察されず、または若干の凝集が観察されたが実用上問題ないレベルであった。
×:光波長変換粒子の凝集が多数確認された。
【0230】
<特定の元素の含有量測定>
実施例1〜7および比較例1〜3で得られた光波長換粒子1〜10ならびに実施例8〜14および比較例4〜6に係る光波長変換粒子含有組成物1〜10中の光波長変換粒子1〜10において、光波長変換粒子1〜10に含まれる特定の元素の含有量を、蛍光X線分析装置(製品名「「EDX−800HS」」、島津製作所製)を用いて測定した。特定の元素の含有量は、光波長変換粒子20個における特定の元素の含有量をそれぞれ測定し、その平均値とした。
【0231】
<水蒸気透過率および酸素透過率測定>
上記実施例15〜24および比較例7〜12に係る光波長変換シートにおいて、水蒸気透過率および酸素透過率をそれぞれ測定した。光波長変換シートの水蒸気透過率は、JIS K7129:2008に準拠して、水蒸気透過率測定装置(製品名「PERMATRAN−W3/31」、MOCON社製)を用いて、40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。また、光波長変換シートの酸素透過率は、JIS K7126:2006に準拠して、酸素ガス透過率測定装置(製品名「OX−TRAN 2/21」、MOCON社製)を用いて23℃、相対湿度90%の条件下で測定した。
【0232】
<耐熱性試験後における輝度維持率測定>
上記実施例15〜24および比較例7〜12に係る光波長変換シートにおいて、光波長変換シートを80℃の環境下に500時間放置する耐熱性試験を行い、光波長変換シートにおける耐熱性試験前の輝度に対する耐熱性試験後における輝度の維持率を調べた。具体的には、まず、Kindle Fire(登録商標)HDX7のバックライト装置を用意し、耐熱性試験前の光波長変換シートをこのバックライト装置に組み込んだ。このバックライト装置は、発光ピーク波長が450nmの青色発光ダイオード、導光板、第1のプリズムシート、および第2のプリズムシートをこの順に備えているものであった。
【0233】
実施例15〜22、24および比較例7〜10、12においては、青色発光ダイオード側が入光面となるように導光板を配置するとともに、導光板の出光面上に実施例15〜22、24および比較例7〜10、12に係る光波長変換シート、第1のプリズムシート、第2のプリズムシートをこの順で配置して、バックライト装置を得た。なお、第2のプリズムシートは、単位プリズムの配列方向が第1のプリズムシートの単位プリズムの配列方向と直交するように配置された。
【0234】
実施例23および比較例11においては、青色発光ダイオード側が入光面となるように導光板を配置するとともに、導光板の出光面上にプリズムシートにおけるプリズム面が出光側となるように実施例23および比較例11に係る光波長変換シート、第2のプリズムシートをこの順で配置して、バックライト装置を得た。なお、第2のプリズムシートは、単位プリズムの配列方向が実施例23および比較例11に係る光波長変換シートにおけるプリズムシートの単位プリズムの配列方向と直交するように配置された。このようにして、実施例23および比較例11に係る光波長変換シートが組み込まれたバックライト装置を得た。
【0235】
そして、光波長変換シートを組み込んだバックライト装置の青色発光ダイオードを点灯させ、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、光波長変換シートの厚み方向から、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0236】
次いで、バックライト装置から耐熱性試験前の光波長変換シートを外し、この光波長変換シートに、光波長変換シートを80℃の環境下に500時間放置する耐熱性試験を行った。そして、耐熱性試験後の光波長変換シートを上記と同様に上記バックライト装置に組み込んだ。この状態で、上記と同様に、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、光波長変換シートの厚み方向から、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0237】
測定したこれらの輝度から、耐熱性試験前の輝度に対する耐熱性試験後の輝度の維持率をそれぞれ求めた。輝度維持率は、輝度維持率をAとし、耐熱性試験前のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度をBとし、耐熱性試験後のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度をCとし、下記式によって求めた。
A=C/B×100
【0238】
<耐湿熱性試験後における輝度維持率測定>
上記実施例15〜24および比較例7〜12に係る光波長変換シートにおいて、光波長変換シートを60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐湿熱性試験を行い、光波長変換シートにおける耐湿熱性試験前の輝度に対する耐湿熱性試験後における輝度の維持率を調べた。具体的には、まず、Kindle Fire(登録商標)HDX7のバックライト装置を用意し、耐湿熱性試験前の光波長変換シートを上記耐熱性試験と同様にこのバックライト装置に組み込んだ。
【0239】
そして、光波長変換シートを組み込んだバックライト装置の青色発光ダイオードを点灯させ、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、光波長変換シートの厚み方向から、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0240】
次いで、バックライト装置から耐湿熱性試験前の光波長変換シートを外し、この光波長変換シートに、光波長変換シートを60℃、相対湿度90%の環境下に500時間放置する耐熱性試験を行った。そして、耐湿熱性試験後の光波長変換シートを上記と同様に上記バックライト装置に組み込んだ。この状態で、上記と同様に、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、光波長変換シートの厚み方向から、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
【0241】
測定したこれらの輝度から、耐湿熱性試験前の輝度に対する耐湿熱性試験後の輝度の維持率をそれぞれ求めた。輝度維持率は、輝度維持率をDとし、耐湿熱性試験前のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度をEとし、耐湿熱性試験後のバックライト装置の発光面から出射する光の輝度をFとし、下記式によって求めた。
D=F/E×100
【0242】
<点状の輝度欠点評価>
実施例15〜24および比較例7〜12に係る耐熱性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、バックライト装置における発光時の発光面に点状の輝度欠点が存在するかを目視で観察し、評価した。また、実施例15〜24および比較例7〜12に係る耐湿熱性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、同様に、バックライト装置における発光時の発光面に点状の輝度欠点が存在するかを目視で観察し、評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:点状の輝度欠点が確認されなかった。
△:点状の輝度欠点が数点確認された。
×:点状の輝度欠点が多数確認された。
【0243】
<光波長変換シートの周縁部の劣化幅測定>
実施例15〜24および比較例7〜12に係る耐熱性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、バックライト装置における発光時の発光面における輝度分布を、光波長変換シートの厚み方向から、2D色彩輝度計(製品名「UA−200」、トプコンテクノハウス社製)を用いて、測定した。そして、測定した発光面の輝度分布から、発光面の中央部の輝度に対して輝度が80%となる発光面の位置(輝度80%位置)を求め、発光面における輝度80%位置に最も近い端から輝度80%位置までの最短距離を求めた。そして、この最短距離をランダムに20箇所について求め、この20箇所の最短距離の平均値を、光波長変換シートの周縁部の劣化幅とした。また、実施例15〜24および比較例7〜12に係る耐湿熱性試験後の光波長変換シートを組み込んだ上記のバックライト装置を用いて、同様にして、発光面の輝度分布を測定し、発光面の中央部の輝度に対して輝度が80%となる発光面の位置(輝度80%位置)を求め、発光面における輝度80%位置に最も近い端から輝度80%位置までの最短距離を求めた。
【0244】
以下、結果を表1〜表4に示す。
【表1】
【0245】
【表2】
【0246】
【表3】
【0247】
【表4】
【0248】
以下、結果について述べる。表1から分かるように、実施例1〜7に係る光波長変換粒子1〜7は、比較例2および3に係る光波長変換粒子9、10よりも、平均粒子径が小さく、かつばらつきが小さかった。また、表2から分かるように、実施例8〜14に係る光波長変換粒子含有組成物1〜7に含まれている光波長変換粒子1〜7は、比較例5および6に係る光波長変換粒子含有組成物9、10に含まれている光波長変換粒子9、10よりも、平均粒子径が小さく、かつばらつきが小さかった。なお、比較例3に係る光波長変換粒子10および比較例6に係る光波長変換粒子含有組成物10に含まれている光波長変換粒子10においては、粘度が高すぎることによりゲル状の塊りが形成され、このために粒子径が大きくなりすぎたと考えられる。
【0249】
また、表2から分かるように、実施例8〜14に係る光波長変換粒子含有組成物1〜7においては、比較例5および6に係る光波長変換粒子含有組成物9、10よりも、光波長変換粒子の分散性が優れていた。
【0250】
さらに、表3および表4から分かるように、実施例15〜23に係る光波長変換シートにおいては、特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含む樹脂粒子中に量子ドットが内包された光波長変換粒子1〜7を用いているので、量子ドットを内包する樹脂粒子を用いているが、樹脂粒子が特定の元素およびカルボン酸のいずれも含まない比較例7、10、11に係る光波長変換シートに比べて、耐熱性試験後および耐湿熱性試験後の輝度維持率が高かった。また、実施例24に係る光波長変換シートにおいては、特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含む樹脂粒子中に量子ドットが内包された光波長変換粒子1を用いているので、量子ドットを内包する樹脂粒子を用いているが、樹脂粒子が特定の元素およびカルボン酸のいずれも含まない比較例12に係る光波長変換シートに比べて、耐熱性試験後および耐湿熱性試験後の輝度維持率が高かった。これは、実施例1〜7に係る光波長変換粒子1〜7の耐熱性および耐湿熱性が高く、また特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかが、量子ドットの劣化を抑制できることを意味している。
【0251】
実施例15〜23および比較例7〜11に係る光波長変換シートにおいては、バリアフィルムを用いていなかったので、点状の輝度欠点は確認されなかった。また、実施例24に係る光波長変換シートにおいては、バリアフィルムを用いているが、特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含む樹脂粒子中に量子ドットが内包された光波長変換粒子1を用いているので、点状の輝度欠点は確認されなかった。これに対し、量子ドットを内包する樹脂粒子を用いているが、樹脂粒子が特定の元素およびカルボン酸のいずれも含まない比較例12に係る光波長変換シートにおいては、点状の輝度欠点が確認された。これは、樹脂粒子中の特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかが、量子ドットの劣化を抑制できることを意味している。
【0252】
実施例15〜23に係る光波長変換シートにおいては、特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかを含む樹脂粒子中に量子ドットが内包された光波長変換粒子1〜7を用いているので、周縁部の劣化は抑制されていた。これに対し、量子ドットを内包する樹脂粒子を用いているが、樹脂粒子が特定の元素およびカルボン酸のいずれも含まない比較例7、10、11に係る光波長変換シートにおいては、周縁部の劣化が確認された。これは、周縁部のような量子ドットが酸素や水蒸気に多く曝される環境においても、樹脂粒子中に特定の元素およびカルボン酸の少なくともいずれかが含まれていれば、量子ドットの劣化を抑制できることを意味している。また、比較例12に係る光波長変換シートは、バリアフィルムによって中央部の劣化が比較的抑制されたが、周縁部の劣化が抑制されなかった。
【0253】
実施例1〜6に係る光波長変換粒子1〜6および実施例8〜13に係る光波長変換粒子含有組成物1〜6に含まれる光波長変換粒子1〜6においては、蛍光X線分析により測定された特定の元素の含有量が、0.5質量%以上であった。これに対し、比較例1に係る光波長変換粒子8および比較例4に係る光波長変換粒子含有組成物8に含まれる光波長変換粒子8においては、蛍光X線分析により測定された特定の元素の含有量が、いずれも0.5質量%未満であった。なお、光波長変換粒子8において、光波長変換粒子8を形成する際に用いた光波長変換粒子用混合物に特定の元素が含まれていないにも関わらず、特定の元素の含有量が0質量%となっていないのは、量子ドット自体に硫黄成分が含まれていたためであると考えられる。
【0254】
上記実施例においては、緑色発光量子ドットや赤色発光量子ドットのコア材料としてCdSeを用いているが、コア材料としてInP、InAs等の非Cd系材料を用いても、上記実施例と同様の結果が得られた。